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宇宙人東京に現わる

日本初の本格的カラー空想科学映画

高い知性を持ち、地球に友好的な宇宙人が、地球人に姿を変え、原水爆の危険性を警告に来ると言うもので、着想そのものは「地球の静止する日」(1951)や「地球最後の日」(1951)辺りをヒントにしたものと思われる。

ただ、この作品、どうにもすっきりしない部分があり、それは、接近する新惑星が地球と衝突しそうなので、世界中の原水爆を使ってそれを破壊せよと提案する宇宙人が、直接、核保有国に行かず、日本の博士の所へと来ると言う奇妙な設定になっている所。

要は、唯一の被爆国である日本に核廃絶の声を拡げさせ、世界に訴えよと言うテーマ性をアピールするためなのだが、地球消滅と言う最大級の危機を前に、いくら何でも回りくど過ぎるだろう。

パイラ人は、実は地球人に嫌がらせをやっているのでは?とも解釈できるような展開である。

実際、劇中でも、日本の提案など諸外国には相手をされず、結局、世界が動き出したのは、地球に接近する新天体の存在が確認されたからと言うことになっており、これでは、日本の核廃絶運動など無力であると言っているようにも見える。

さらに不思議なのは、劇中、あれほど宇宙人が否定していた新元素ウリュウム101が、破壊兵器として人類を救うと言う展開になっている所。

これでは、結果的に、核兵器も使い方次第で役に立つと言う風に解釈できるどころか、何だか、劇中の小村博士などのセリフを聞いていると、今の日本では、強力な破壊兵器になる新元素を発見しても実用化などできないと言っているようにも聞え、核アレルギー批判なのか?とも解釈できるような部分さえある。

新元素の発見者松田博士の後半の誘拐劇なども、ハラハラさせるためだけの通俗要素に過ぎず、犯人たちのその後の顛末も全く無視されているし、そうした博士のピンチを、通信機器の指輪と言うものを手渡しているはずの宇宙人が最後の最後まで気づかず、最後は博士を安全な所に保護するどころか、1人で町中に放りっぱなしと言う間抜けや非人情振りも解せない。

何だか、核廃絶運動を拡げようと言うテーマを映画化しようとしたのだろうが、結果的にあまり成功していない感じがあるのだ。

核の平和利用を推進している風にも受け取れるが、これも何だか中途半端で分かり難い。

戦後の多くの日本の戦争映画に似て、日本の庶民は戦争や核実験の被害者であると言う視点で描かれているため、核に対する姿勢も、どこか他人事と言うか…、他国が悪い、日本は悪くない…、日本が出来ることと言っても抗議するくらい…みたいに見えてしまう部分があり、そこが荒唐無稽なフィクション設定と言うこととも相まって、反原水爆メッセージ映画としては弱い部分ではないかとも感じる。

ただ、ストーリー的にはともかく、絵的には面白い部分が多く、前半のいかにも日本風な庶民の下町生活と宇宙人と言う異物とのミスマッチ感や、中盤から挿入される、ドキュメンタリー風の町中の庶民の姿など、なかなか力が入っている部分もある。

岡本太郎氏の色彩設計も面白く、宇宙船の中はモノクロ調に押さえられ、その中で、唯一、パイラ人の一つ目だけが青く光るなどと言う演出は洒落ているし、最後の方でミニチュア特撮も見られる。

パイラ人が地上に出現する際の音や、無表情な女性宇宙人のキャラ、モダンなデザインの宇宙船内部の描写など、後の「昭和ガメラシリーズ」に受け継がれる要素がいくつも散見できたりするのも興味深い。

今のVFXやアクション主体の派手なSF映画などを見慣れた目には、酷くテンポの悪い古くさい映画に見えるかも知れないが、「ゴジラ」(1954)の2年後の作品などと言う辺りも含め、日本のこの手のジャンルを語る上で欠かせない重要な作品ではないかと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、大映、中島源太郎原案、小国英雄脚本、島耕二監督作品。

青い蛇の目傘の雨が降っている。

ホームに到着する電車に、傘をさしていた赤い着物の女性が駆け寄る。

改札口で待っている子供たち。

小村先生!と呼びかけた新聞記者日出野(杉田康)は、どうせいつもの所へ寄ってらっしゃるんでしょう?一緒しましょうと言うと、笠を持ってない小村芳雄(見明凡太朗)に自分の傘をさしてやる。

駅前の飲屋街の一角に「宇宙軒」と書かれた赤ちょうちんが下げられる。

あら先生、お帰りなさい、あいにく降り出しましたね…と、店に入って来た天野と日出野記者に割烹着を来たお花お花(岡村文子)が声をかける。

外は雨でも、「宇宙軒」ではいつもお日様が出てますから、気がかラットするでしょう?と言いながら、お花が指だした青地の暖簾には、宇宙軒の文字の横に笑顔の太陽と月のイラストが白で染め抜かれていた。

止せやい!先生は毎日望遠鏡で空を覗いているんだから、たまには雨でも降らなきゃ休めないよ、小村と一緒にカウンターに座った日出野記者が口を挟む。

そうだわね、先生、お疲れ休めに、熱いの、つけましょうか?と笑ったお花は奥へ引っ込む。

社から持って来た4版のほやほやですと言いながら、日出野記者は新聞を取り出して見せ、また、円盤が出ましたよと教える。

新聞には「空飛ぶ円盤 東京にも出現!目撃者さらに増加」の見出しが載っていた。

先生、この円盤って、一体何者なんです?と日出野記者が聞くと、さあ、何者かね?とタバコを吸い始めた小村ははぐらかす。

本当は先生には検討がついてるんでしょう?某国の新兵器なんてはっきり言っちゃ具合が悪いかも知れないが…、ちょっとそのご返事だけでも聞かせてもらえませんか?などと日出野記者が食い下がると、言ってあげたいのは山々だが…と小村はとぼけるので、頼みますよ、城北天文台一の小村博士語るってことで記事にすると、局長ものなんですがねと日出野記者はねばる。

そりゃそうだろうけど、僕に分かってさえいたら教えてあげたいんだが…と小村博士が言うので、それじゃ、本当に先生にも分かっちゃいないんですか?と日出野記者は落胆の表情になる。

学者と言うものは融通がきかんものでね。九分通り分かっていても、後の一部画分からなけりゃ、まるっきり分からんことと同じなんだよと小村が言うので、そんなことで…と日出野記者は呆れるが、日出野さん、しつこいわね…とお花が口を出して来る。

学者が政治家みたいに、平気で本音を言ったらえらいことになるわよとお花は言う。

そこに入って来た三吉三吉(渡辺鉄弥)が、日出野さんいたんですか?この間の話、頼みますよと声をかけて来たので、何だっけ?と日出野がとぼけると、ちぇっ!もう忘れてらぁ~、これですよと言いながら、三吉は、カメラを撮るポーズをしてみせる。

あ、そうか、引き受けた!と日出野が答えると、じゃあ、頼みます!と言い残し、御用聞きは店を出て行く。

何の約束したの?とお花が聞くと、日出野は、三吉、カメラキ○ガイなんですよ、それで、今に空飛ぶ円盤を撮ってみせるから、うちの新聞に出してくれって言う訳だと教える。

ま、あの子まで円盤!とお花は笑っていると、そこに。一番のようを忘れてたと言いながら、又、三吉が戻って来て、あのね先生、お嬢さんから電話があって、今夜牛込の叔父さんの家を廻って帰るから、ごはん、ここですませて下さいって…と伝えたので、小村は、ああ…、ありがとうと答える。

倅は又、日出野に、きっとですよ!と念を押し、帰って行く、

牛込の叔父さんと言うと?とパイプをくゆらせていた日出野が聞くと、わしの従兄弟で、物理学をやっている松田だと小村博士は答える。

ああ、松田英輔博士ですか…と日出野も名前は知っていた。

その牛込の松田英輔(山形勲)の家に邪魔していた小村多恵子(永井ミエ子)は、松田の妻清子(平井岐代子)が用意していたご馳走を見て感激していた。

松田が葡萄酒を勧めると、頂くわ!でも、その代わりってのがあるんでしょう?と多恵子は笑う。

こいつ!ご馳走で釣るような叔父さんじゃないぞ!と松田は怒った振りをし、2人で笑い出す。

すると、清子が、だけどね、多恵ちゃん…と言いだしたので、そら来た!と多恵子は笑う。

笑い事じゃないわよ、いつまで幼稚園の先生をやっているつもりなの?あなたは…と清子は聞く。

だって、私、子供好きですもん…と多恵子が答えると、そんな事言って、本当は好きな方がどなたかあるんじゃない?と清子は、黙ってしまった多恵子の茶碗を受け取る。

それを観ていた松田は、図星らしいぜ、この分じゃ、お前の持って来た縁談も受け付けないよ…と清子に笑いながら言う。

多恵子の意地悪!とても良いご縁談なのよ…と、ごはんをよそった茶碗を渡しながら清子はがっかりしたように言う。

その頃、城北天文台では、巨大天体望遠鏡を覗き込んでいた磯辺徹(川崎敬三)が、星空を移動する謎の白い光点をで発見。

さらにその白い光から、いくつもの別の白い光点が発射されている様を目撃する。

その内の一つが飛来した都内では、電気が点滅する現象が起こり、「宇宙軒」の提灯も点滅する。

茶漬を啜り込んでいた小村博士と、酒を飲んでいた日出野は、店の電気の異常を不思議がっていたが、店内で音楽を流していたラジオの調子もおかしくなる。

うるさいわね、どうしたのかしら?とお花がラジオのスイッチを廻して見るが、ラジオからは雑音が流れるばかり。

日出野は、店の外に出て、周囲の様子をうかがうが、電気は元に戻っていた。

食事を終えた小村は、そんな日出野に挨拶して帰って行く。

謎の電波は天文台もキャッチしており、望遠鏡を覗いていた磯辺は、この異常事態を伝えるため、小村先生の所へすぐうかがいますと電話してくれたまえ!と同僚に声をかけ、その場を離れる。

その間も、望遠鏡の中に見えていた白い光点から、続々と別の白い光が分離していた。

小村博士が店の前を通って帰っていた三河屋でも、三吉が雑音を流すラジオを直そうと四苦八苦していたが、やがて元のようにラジオは音楽を流し始める。

そこに電話がかかって来たので、三吉が出ると、小村先生がいるかとの連絡だったので、「宇宙軒」で飲んでらしましたよと倅は答える。

小村は、三河屋の横から入った路地の途中にある自宅に帰宅する。

「宇宙軒」では、近頃、ちっとも魚が入らなくて…、東京湾なんて、魚がみんなどっかに行ってしまうんじゃないかって言ってるんだって…とぼやきながら、テーブル席に移動した日出野に、お花が肴を運んで来る。

日出野は、円盤のせいだね…などと言うので、私もそう思うわ…とお花が答えていると、そこに、今晩わ!と言ってやって来たのが多恵子だった。

あら、ついさっきお帰りになりましたよとお花が言うと、ごはんは?と多恵子が聞くので、おすみになりましたとお花は答える。

店の外に出た多恵子を追って来たお花は、お嬢様、牛込の話ってご縁談?と聞くので、そうなの…と多恵子は答える。

そりゃ、よございましたねとお花がお愛想を言うと、良くはないわ、ちっとも…と多恵子は言う。

そこに、お嬢さん!と近づいて来た三吉が、先生は?と聞くので、今、帰ったんですって、何か用?と多恵子が教えると、徹さんから電話があって、急用が出来たからすぐ会いに来るんですって…と倅は伝える。

すると、徹さんが?と喜んだ多恵子は、すぐに、さようならと挨拶し、急ぎ足で近くの自宅に帰ると、急いで鏡台の前で化粧を直す。

すでに磯辺が来ていたので、いらっしゃい!と挨拶に顔を出すと、多恵子、今、大事な話をしているんだから、向うへ行っておいでと父親の小村に言われてしまう。

多恵子がつまらなそうな顔をして障子を閉めて部屋を出ると、じゃ、君は、どっかの国が上げた人工衛星だと言うんだね…と小村は磯辺に聞く。

まあ、一般常識に考えてのことなんですが…と磯辺は慎重に答える。

そうだとすると、前もって通告があるはずだろう?人工衛星でないとすると…と小村は考え込む。

先生!荒唐無稽に過ぎるようですが、この頃の円盤騒ぎに関係ないものでしょうか?と磯辺は言うと、そう言うことは、科学者として言うべきことではないだろうと小村は言い聞かせる。

多恵子が赤い着物に着替え終わった時、円盤だ!と叫ぶ、三河屋の三ちゃんの声が聞こえたので、表に出た多恵子が、三ちゃん、どこ?と聞くと、物干し台でカメラを構えた三ちゃんが、ここですよ、上がってらっしゃい!と声をかける。

私が望遠鏡で見たのと同じです!と、縁側から小村と共に夜空を流れた光点を見ていた磯辺もつぶやく。

流星じゃありませんね?と磯辺が言うと、そう…、隕石の類いじゃないことは確かだ…、確かにこの目で見た…、しかし、今の学説を覆す知識は自分にはないんだと小村は悔し気に答える。

じゃ、やっぱり円盤じゃないと言われるんですか?と磯辺が問うと、否、円盤でないと言うことを否定できなくなったと小村は力なく言うにで、僕、見てきますと言い残し、磯辺は飛び出して行く。

翌日の新聞は、円盤が霞ヶ関にも目撃例があったとか、東京湾にも落下、認められない漁師の証言、東京湾の珍事、沈黙を守る天文台…などと書かれ、某国の新兵器か?と言った見出しが踊る。

そりゃあもちろん、天文台として憶測に類することを発表できんと言うことも分かりますが、方々に円盤が現れれ、人心に不安を巻き起こしている以上、職責上からも何らかの…などと、城北天文台に駆けつけた新聞記者から迫られた磯辺は、その職責にかけ、全員が究明にいずれ、今,台長以下全員が究明に当たっている所です。ま、いずれ、科学者の立場からの発表が出来ると思いますが…、それまでは…などと天文台の職員が答えると、それはいつのことなんですか?などと記者から問いつめられる。

職員たちは、メキシコの天文台でも昨夜、同様の目撃があったとの連絡を受けていた、

そんな天文台に松田博士が訪れ、小村博士と合流する。

海外との通信を担当していた職員が、インドの天文台でも見たそうですと磯辺に伝える。

それでだな、円盤の実態をつかみたいと思っているんだが、どうしたら良いだろう?…と松田博士と、下の階に降りて来た小村は相談する。

そうだな…、ロケットを上昇させ写真を撮るしかあるまい、ちょうど内の大学のロケット隊が気象観測中だから高島博士に連絡してみよう…と松田は答える。

その直後、ロケット打ち上げの実験をやっていた高島博士(河原侃ニ)は、松田から連絡を受ける。

その頃、川縁で釣りをしていた2人の男は、川辺に浮かんでいる円盤を発見、驚いて逃げ出すが、その男たちとすれ違った子供連れの父親が観た時には、既に円盤は水の中に姿を消した後だった。

夜、港で荷揚げをしていた船員(原田玄)たちも、海面に浮かぶ円盤を目撃

海辺の宴会場で、炭坑節を歌いながら踊っていた酔客たちの1人(泉静治)から逃げ出そうとしていた芸者(花村泰子)も、何か異様なものを目撃、悲鳴をあげる。

城北天文台の小村から、高島博士に連絡してくれと依頼された連絡係は、ロケットの発射地へ、準備はできたかと確認を入れる。

準備良し!との学生の声

望遠鏡を覗いていた小村博士は、白い光がはっきり確認できたので、用意!と連絡員を通じて発射現場に伝え、やがて、発射を命じる。

現場の連絡員がそれを伝えると、高島博士が旗を振り、ロケットは発射される。

翌朝、港の埠頭に集まる船員たち

現場には、新聞記者も集まっており、徹の父で生物学の磯辺直太郎博士を呼び寄せた警官が、バカバカしいようなことなんですが…と恐縮しながら言うには、その岸壁に怪物の這ったような痕があるのですと言う。

岸壁の排水口付近を見下ろした磯辺博士は、助手の吉田にガイガーカウンターを出させる。

城北天文台では、写真が撮れたなんて言うのは全く君のお陰だよと、小村がややって来た高島博士に礼を言っていた。

ちょうど良い時にロケットのテストをやっていたものだから…と高島は答え、一緒に待ち構えていた松田博士は、まだ現像できんなのかな?と少し苛立っていた。

出来上がった写真を鑑定した小村、高島、松田らは、強い光点は確認できたものの、現在発表されている限り、人工衛星にこれほど強い光源体がないはずだよ、これでは、はっきり実態がつかめないと松田博士が指摘するだけだった。

協力が無駄になってすまんと恐縮する高島博士に、いやいやとねぎらった小村は、とにかく、各国にこの写真を送って問い合わせてみることにしようと提案する。

椅子に腰掛けた小村は、白衣を脱ぎかけ前を通りすぎようとしていた磯辺に、徹君、お父さんは警察の依頼で播州丸の実地検証に行かれたそうだが、その結果は聞いたかね?と声をかけるが、いいえ、昨日から僕は家に帰ってないものですから…と磯辺が答えると、そうだったね…、すまん、すまん…と小村は苦笑する。

地球に降りた怪物だなんて、おとぎ話みたいな話に引っ張りだされた君のお父さんも気の毒だよ…、今頃お母さんとお茶でも飲みながら笑い話をしているよと松田博士は徹に話しかけ笑う。

しかし、帰宅した徹は食卓を見て、お父さんはまだですか?仕事?と聞くと、あの怪物がどうのこうのとおっしゃって…と母、徳子(目黒幸子)から聞かされる。

それで分かったんですか?正体が…とい側が聞くと、一度も部屋から出てらっしゃらないから…と徳子は言うだけ。

父親直太郎の部屋に行ってみた磯辺は、おお、いつ帰った?と振り返った直太郎から声をかけられたので、たった今ですと答えると、円盤の実態はつかめたかね?と聞かれる。

いいえ、ダメなんです。お父さんの方は分かりましたか?と磯辺が聞くと、いや、見当がつかんのだと言い、腕時計を見て、おお、もうこんな時間かと驚く。

ごはんが冷たくなったって、又お母さんに怒られますよと磯辺は笑う。

そうか…と笑いながら、食卓へ向かおうとした直太郎は、庭先の柱に青い炎のようなものを発見、徹にガイガー感知器を求める。

一方、小村の方も帰宅していた。

出迎えた多恵子が、「宇宙軒」寄って来たの?と聞くと、いや…と言うので、じゃ、一本つけましょうか?と言うと、飲みたくない…と、小村博士は疲れ切ったように答え、奥へ向かう。

小村の着物を持って奥へ向かおうとした多恵子は、障子の奥に光る怪し気な光を発見する。

恐る恐る障子を開けてみた多恵子が見たのは、青い一つ目を動かす人手のようなものだったので、思わず悲鳴をあげ腰を抜かした多美子がひっくり返した鉄瓶が、長火鉢の上でひっくり返り蒸気を上げる。

どうした!と駆けつけて来た小村は、障子の奥の台所を覗くが、そこにはもう何もいなかったが、窓ガラスの上の桟の部分に青い炎のようなものが揺らめいていた。

世界会議総本部 正体不明の滞空物に対し、人工衛星の上昇中止を、全加入国に通告する…と言う着ジが世界中の新聞に掲載される。

世界会議は重ねて警告を発する。

人工衛星の上昇を24時間以内に中止せぬ場合は、世界会議連合軍がこれを三連式ロケット砲により攻撃する用意ありとの放送も流される。

二本の新聞には「謎の光体遁走す 世界会議の警告により ついに正体不明の光体姿を現す」と言った見出しが躍る。

とうとう円盤も出なくなったよ、良かったな~と、翌朝、新聞を見るサラリーマンたちが駅前で話ししていた。

そんな駅前に、人気歌手青空ひかり(苅田とよみ)のショーの立て看板が置いてあった。

帝都劇場で踊っていた人気歌手、青空ひかりは、舞台袖で青白く光る炎を発見、悲鳴をあげたので、楽団員や観客たちも騒然となる。

城北天文台の望遠鏡を監視していた磯辺は、また白い光点が見えたので、先生!又現れました!と知らせる。

芝浦に停泊中の貨物船播州丸、そして河口湖、及び琵琶湖に現れたのと同じと思われる怪物が、今晩、帝都劇場の青空ひかりの舞台に現れて、どう劇場を混乱に陥れました…と臨時ニュースを報ずるラジオの前にいた「宇宙軒」の女将お花は、嫌ねえ、世の中悪くなると、変なものが出て来るのね…、円盤なんてとか化物…、ああ、嫌だ嫌だ…とぼやく。

するとカウンターで飲んでいた日出野も、そのお陰で小村先生も「宇宙軒」に来なくなるし…、ねえ…と茶化す。

お花がテーブル席の客に注文を運んでいた時、また、ラジオの調子がおかしくなる。

東京湾の海中から浮上した円盤は、空に向かって飛び去って行く。

宇宙空間に浮かんだ、奇妙な形の母船に到着する円盤

母船内の室内に出現したヒトデ型の身体の中央に巨大な一つ目があるパイラ星人は、視察の報告を聞こう。我々パイラ星人の訪問の意図を伝えたか?と同じ形態の上司から聞かれたので、地球人が、私どもを一目見るなり激しい恐怖を示すのです。それはまるで醜悪極まりないものを見たような目ですと報告する。

すると、聞いた上司は、何?彼らは我々パイラ人を醜いと言うのか、それほど彼らは美しいのか?と問う。

とんでもない、ご覧下さい。彼らの理想の美人と言うのはこれですと報告した部下が上司に見せたのは、青空ひかりの写真だった。

これが?これが美人か?顔の真ん中にこんな出っ張りがあるではないか?と上司は地球人の容姿を見て驚く。

こんな醜悪な顔を持っているとは可哀想な種族だと上司は地球人に同乗する。

しかし、このまま地球の危機を見捨てては、宇宙道徳に背くと言うものだ…と上司は言う。

すると、部下の1人が、名案があります。誰か醜いものになることを我慢するのですと言い出し、つまり、地球人の姿の変身して地球にもぐり込むんですと提案する。

それを聞いた上司は、これと言って他に方法は考えられん、地球に入れば地球に従えと言うことわざもある。誰がその嫌な役目を勤めるかが問題だ…と答える。

すると、誰かと言うより、言い出した私が…と提案者自らからが志願したので、君の犠牲的精神はパイラの歴史に残るだろうと感激した上司は、では変身機の用意をしたまえと部下たちに指示する。

2人の上司と6人の部下たちは、一斉に室内から姿を消して行く。

円筒型の変身機に入ったパイラ星人は、徐々に人間の形に変化して行く。

最初の1人が変身したのは青空ひかりの姿だった。

紅葉美しい日光に総出で遊びに出て来ていた小村博士、松田博士、磯辺博士の三家族。

見たまえ、奥さんたち、いかにも平和そうじゃないかと小村が、草原で談笑する清子と徳子たちの様子を近くで眺めながら言うと、しかし、良かったね、こうしてお互い和やかな気持ちになれて…と磯辺博士も言う。

いや~、全く一時はどうなるかと思ったよ…、あれはどう考えても人工衛星じゃないからね…と、他の2人と歩き始めた松田博士も答える。

播州丸に現れた怪物なんて、考えただけでぞっとするよと磯辺博士は言う。

こんなこと考えたくないんだが、もしあの円盤が他の星から来たものだとすると、どんな目的で来ているのか?これが掴めないんだ…と松田博士が言うと、地球攻略じゃないのか?と小村が答える。

それを聞いた徹博士は、え?そんなことになったら、この地球はどうなるんだ?と不安そうに振り返る。

破滅さ…、あっという間に宇宙から消えてしまうんだよ…と小村博士は真顔で答える。

急にみんな黙り込んでしまったので、それも僕の想像だよと小村博士は笑ってごまかす。

それより、あれ以来円盤も出なくなったし、なんてことはないさ…と小村が続けると、松田博士と徹博士もほっとしたように笑い出す。

そこに、愉快そうな声ですこと、近頃、研究室では笑い声なんか聞かれませんでしたわ…、皆さん、学生時代のピクニックでも思い出しているんじゃありません?などと言いながら、清子と徳子たちが戻って来る。

いや、日光を楽しんでいるのは若い御両名の方ですよ…と良いながら、松田博士がステッキで、徹と美恵子の方を指してみせる。

中禅寺湖でボートをボートを漕いでいた徹と多恵子はかえろうとしたその時、湖に浮かんでいた女性を発見、助けあげて岸辺まで運んで来ると、父親の磯部博士がどうしたんだ?と聞くので、浮いてたんですと徹は答える。

そこに駆けつけて来た新聞記者が、野次馬の中に割り込み、何です?と事情を聞くと、水死人だよと野次馬が教えたので、覗き込むと、別の野次馬の娘が、あら?青空ひかりだわと言いだしたので、記者は驚く。

急いで東京の劇場へ向い、青空ひかりが普通に踊っているのを見た記者は、舞台裏に戻って来たひかりを捕まえると、大変なことが持ち上がったんだよ!あんた日光で死んだんだよと教える。

私が?と驚いたひかりは、その場で失神してしまったので、踊り子たちは悲鳴をあげる。清子

その頃、ひかりにそっくりな娘は、無事意識が戻って、徹と恵美子ら家族と一緒に機関車で東京へ向かっていた。

何を聞いても全然分からんとはどういうことなんだろう?と小村博士が近くの座席で不思議がると、自分の名前も分からんのは記憶喪失と言う他ないね…と松田博士は言う。

可愛そうね…と妻たちは同情し、何とかならんもんかな?と小村博士は考え込む。

どうせ私たち、子供がないんですから、身元が分かるまで預かりましょうよと清子が松田博士に提案する。

どうしたもんだろう?と丸だが磯辺に話しかけると、ずっと背後のひかりそっくりの娘に気を取られていた磯辺博士は、何のことだい?と聞き返す。

そんな中、徹と恵美子の前に座っていたひかりそっくりの娘が立上がってデッキに向かったので、どこにいらっしゃるの?と多美子は声をかけるが、娘は何も答えず車両から出て行く。

徹のコートを着せてもらっていたその娘は、デッキで1人になると、指にはめた指輪に向い、地球人の中に入り込むのに成功しましたと連絡する。

良い子が住んでる良い町は~♪と幼稚園児が輪になって歌っていた。

その輪の真ん中でオルガンを弾いていた美恵子に、磯部さんから電話はありましてね、帰りにテニスコートの方へ廻って下さいってとの伝言を聞いた恵美子は、嬉しそうに返事をする。

幼稚園の帰りにテニスコートにやって来た恵美子は、そこで徹とテニスをしていた、あのひかりそっくりな娘が、とんでもない動きでボールを打ち返しているのを見て驚く。

そんな中、徹に電話がかかって来る。

コートで待っていた娘が,一瞬ぎょっとするが、振り向いちゃいけない、そのままで板前!と言う声が彼女の心の中で聞える。

その声の主は近くに現れた男で、僕は地上派遣員第二号(八木沢敏)だと名乗ると、第三号、第四号も来ている。全て君の任務遂行を援助するためだと教える。

男は伝え終わると、林の中に静かに後ずさりし、そのまま姿を消して行く。

レストルームで電話をし終えた徹の側にやって来た美恵子は、何かあったの?と聞く。

親父からの電話なんだけど、何か変なんだよと徹は答える。

あの人ね…と徹がコートの方を指差したので、ああ。銀子さんと美恵子は答える。

名前を忘れた娘は、天野銀子と言う仮名で家族間で呼ばれるようになっていたのだ。

その銀子さんのラケットと帽子をすぐ持って来いと言うんだよと徹は怪訝そうに言う。

へえ、それがどうかしたの?と美恵子は言うが、それが分からないんだ、ギンコさんが握った方を触らないで持って来いと言うんだよと徹は教えるので、おかしいわね…、まるで探偵小説みたい…と美恵子も戸惑う。

そこに銀子が戻って来たので、帰りましょうと徹は誘うが、近くにいた女子高生たちが、銀子を青空ひかりと勘違いし、殺到する。

徹と恵美子は、銀子を取り巻いた女子学生たちに、違うんだ!と言いながら押しのけようとするが、気がつくと、銀子はいつの間にか外に出ていたので、女子高生たちはサインを求めて後を追って行く。

そんな徹が持ち帰ったラケットの握り手の部分を調べ始めた磯部博士に、お父さん、どうかしたんですか?と徹は尋ねる。

どうも変なんだと言うので、このラケットがですか?と徹が聞くと、いや、あの女がだよ…と磯部博士は言う。

何かあったの?と座敷にいた徳子も声をかけて来るが、銀子さんのことでちょっと…と答えた徹は、父親の書斎に付いて行く。

持って来た銀子のテニス帽も父に渡した徹は、変だと言えば、今日、不思議なことがあったんですよと徹は教える。

どんなことだ?と磯部博士が聞くと、あの銀子さんがボールを受ける時、人間業では出来ないくらい高く飛び上がったんです。それから、僕は見てないんですけど、部屋のドアを開けないで出て行ったような気がするんですと伝えると、磯部博士は強い興味を示し、やっぱりそうか…とつぶやく。

その頃、銀子は、書斎で書き物をしていた松田博士の部屋に、ドアも開けずにすっと姿を現していた。

彼女に気づいた松田が、君、どっから入って来た?と聞くと、そっからですと銀子がドアを指したので、そうかな〜?ちっとも音がしなかったように思うがな…と松田博士は不思議がる。

銀子は、テーブルの上に置いてあった松田のノートを一目見るなり、その場で破ったので、気づいた松田が、何をするんだ!と怒ると、どうしてこんな恐ろしいものを書くんです!と銀子も言い返す。

それは僕の研究材料だ!君なんかには関係ないと松田は言うが、私には関係なくても、この地球に住んでいる人たちのとっては重要なことなんです!と銀子も譲らない。

何?君にその方程式が分かるもんか…と松田は指摘するが、分かります、ウリュウム元素101でしょう!と銀子が答えたので、松田は驚く。

地球なんか、これっぽっちで吹っ飛ぶ爆発物ですと銀子は言う。

君は一体何者だ!と松田博士が聞くと、それでなくても地球は水爆を作って脅かしっこをしているのに、それ以上のことを考えるなんて恐ろしいことですと銀子が言うので、僕は何も爆発物としては考えていないと松田は否定し、煙草を灰皿に捨てている間に、銀子は姿を消してしまう。

そこへ清子が入って来たので、大体君は…言いながら振り返った松田博士は驚く。

磯部さんからお電話です、すぐ天文台に入らして下さいって言ってきましたよ…と清子は伝えに来たのだった。

松田は、部屋に残されていた銀子のテニスウェアを確認しながら戸惑う。

天文台に来た磯部博士は、銀子のラケットや帽子の準備をしていたが、そんな様子をソファで眺めていた恵美子は、おじ様、どうかなさったの?と隣に座っていた徹に聞く。

何にも話を聞いてないんだけど、あの銀子さんのことらしいんだよと徹は答える。

電話したんだから、腰を降ろして少しは落ち着いたらどうだと、コップの水を飲みながらうろつき回っていた磯部博士に声をかける小村博士。

そこに、松田博士がやって来て、話って何だ?と磯部博士は緊張した顔で聞く。

そんな松田の様子を観ていた小村は、今日は何の日だ?みんな興奮したりして…と苦笑するが、分からない…、僕にはどうしても分からないんだ…と松田は呆然とした表情で答える。

何かあったんだね?と磯部博士が聞くと、例のウリュウム101の方程式を一目見ただけで分かるんだよ…と松田博士は答える。

あの女だろ?と磯部博士が指摘すると、そうだよと松田が答えると、当然だよ、あの女は人間じゃないんだと磯部博士は言い出す。

それを聞いた松田、小村、徹、恵美子らは仰天する。

だから今日は何の日だいと聞いてるんだ、エイプリル・フールじゃあるまい?などと小村は笑ってごまかそうとするが、ま、聞いてくれた前、僕は中禅寺湖のときからおかしいと思っていたんだ…と磯部博士は説明しだす。

あの時、立ち会ってくれた医者が、人間ならとても生きて行けないくらい白血球が多いと言ってたんだよ、それがどうだね、あの通り元気じゃないか…と磯辺は指摘する。

しかし、それだけでは断定できないだろう?と小村博士が椅子に腰掛けて反論すると、まあこれを見てくれた前と言いながら、磯部博士はカバンから取り出したラケットの指の痕を示す。

どうだい?どの指にも指紋がないだろう?と磯辺は言う。

しかし、小村博士はまだ信じかねているようだたので、それだけでし尿で機内なら、これを見てくれた前と言い。磯部博士はカバンから2枚のプレパラートを取り出し、こっちは帽子の汗からにじんだ微粒子、こっちは、この間、芝浦の岸壁から削り取って来たものと言って、松田博士と徹に見せ、どうだい?全く同室のものだろう?と聞く。

じゃあ、お父さん、銀子さんは一体何者なんでしょう?と徹が聞くと、宇宙人だよ!他の星から来た宇宙人だよ!と磯部博士は断定する。

しかし、火星にしろ木星にしろだな、太陽系の星の中で生物の住めそうな星は、相当、我々でも観察しているつもりなんだが…と小村博士は言う。

いや、まだあるんだ。これとテニスをした時、一瞬楽々とジャンプしたそうなんだが、これも引力が違う星から来た関係と推測できないこともない…と磯辺博士は続ける。

つまり彼女は、この間の円盤でやって来た宇宙人の変身じゃないかと疑う根拠は十分あるんだよと磯部博士が言うので、じゃあ、銀子さんは、宇宙人が人間に化けたと言うんですね?と徹が聞くと、そうとしか考えられんじゃないか…と磯部博士は言う。

その時、突然、聞き慣れぬ音が聞こえて来たので、全員何ごとかと驚く。

次の瞬間、天文台に出現したのは。黒い衣装を着た銀子だった。

君は!と磯部博士が指差すと、ご推察の通り、私は地球人ではありませんと銀子は答える。

君はやっぱり宇宙人なのかね?と松田博士が聞くと、そうです、私は,パイラと言う星に住むパイラ人ですと銀子は言う。

パイラ?そんな星は太陽系にはないが…と小村博士が聞くと、もっとずっと遠いんです。地球にあるどんな望遠鏡からも観えないくらい遠くの星ですと銀子は言う。

どうしてあなたは地球に来たんですか?と徹が聞くと、地球上に何度も爆発による原子雲を見たからですと銀子は言うので、ばかな!そんな遠い所から見えるはずがない!と小村が否定すると、いいえ、パイラの文明は地球が問題ではないくらい進んでいますと銀子は言う。

天文台からはっきり地球を観測されることからも、パイラの文明が進んでいることがお分かりでしょう…と銀子は言うので、小村博士は、信じられない…、僕には信じられない…とつぶやく。

君はど僕の方程式を一目見ただけで、どうしてウリュウム101だと分かったんですか?と松田博士が聞くと、昔、パイラの学者が発見したんですが、危険だからと言って、すぐその方程式は焼き捨て、それっきりウリュウムの研究はやめてしまいました。そして、もっと安全でエネルギーの強いオリュウムを発見して以来、パイラの文化はその原子力の平和利用によって素晴らしく高まったんですと銀子は言う。

では聞くが、そのパイラ人がなぜこの地球に来たんですか?と磯部博士が問うと、地球に好意を持っているからです。宇宙の中で地球はパイラと同じ条件を持っているたった一つの星です。その地球が原水爆の誤った使い方で壊滅に瀕しようとしています。

パイラでは数世紀前に原水爆の危機にさらされた時代がありましたが、パイラ人は賢明でした。その否を悟って平和利用に切り替えたからこそ高度な文明が発展したんです。

それじゃあなぜ、その危険な爆発物を持っている国に行かなかったんですか?と小村博士が聞くと、持っている国は結局目が覚め難いものです。原水爆の恐ろしさを本当に知るものは、この地球上でその被害を味わったただ一つの国、日本だと思ったからです。

しかし、日本が原水爆の廃止を叫んだところで、どうなるもんですか…と小村博士は哀し気に言う。

どうにもならないことも知っています。しかし、地球上にある原水爆全部を使ってでも対抗しなければ、地球が壊滅すると言う事実が、数刻前、宇宙に起こったのですと銀子が言い出したので、聞いていたものたちは驚く。

何です?それは…と松田博士が聞くと、他の太陽系から飛んで来た新天体Rと言う星が、今、地球と衝突する軌道を走っているのですと銀子は言うので、全員慌てふためく。

その後、松田、小村、磯辺、の三博士たちは、臨時ニュースの生放送に出演する。

本日、三博士連名の書簡が世界会議に提出されました。それは、地球上にある原水爆を使用に対する申し入れであります。

その使用はもちろん破壊のためではなく、破壊を免れるためであります。(町中の色んな場所でスピーカーから放送が流れる様子を背景に)

それは、他の天体から飛び込んで来たRと言う星が、地球と衝突する軌道を走っているからです。

その衝突は、今日より90日後と計算されてされております。

新天体Rを避けるには、多量の原水爆を発射して、それを粉砕するか軌道をずらせるより他はないと言うのです。

この事実は、従来我が国の上空にしばしば姿を現した円盤の搭乗員パイラ人からの誠意を込めた贈物だと言うことです。

この新天体Rは地球のどの望遠鏡からも見えません。ただ、パイラ人の宇宙船から観測されるだけです。

そんな放送をしていたトランジスタラジオのスイッチを切った、ハイキングに来た娘は、バカバカしい、作り話の放送なんて…と良い、何?パイラって?パイラってゴロが面白いじゃないかと、仲間たちは冗談の種にする。

ラジオを切った娘は、川向こうの山に向かって、パイラ〜!と呼び掛け、山彦を聞いて喜ぶ。

天文台には多くのマスコミ関係者や軍人たちが詰め掛け大混乱になる。

そんな中、松田博士ら三博士が登場し、皆さん!残念ながら、世界会議から私たちの書簡を黙殺してきましたと発表する。

理由は、パイラ人の存在を確認しないと言うのです。

騒然とする中、この席上にいられる方はパイラの存在を確認していられるでしょうが、まだ世界はおろか、日本の隅々では、Rの出現などは笑い話だと思われている現状ですと松田博士は言う。

従ってこれが事実であることを日本中に行き渡らせて、国全体の世論として、諸外国にもう1度交渉するより方法はありません。

それに、荒唐無稽な作り話でない証拠には、今日から15日目には、新天体Rが地球から見えると言うことをお伝えしたいのですと松田博士は説明する。

その発言はすぐさま新市場に掲載される。

新聞の号外売りが、新天体Rの接近を告げる。

町中の人々が新聞報道を見て緊張し始める。

「新天体R天文台より望見の日いよいよ明日に迫る」とのビラが貼られた日の出村役場

いよいよ明日見えると言うことになったんですが、その対策はどう言うことになっているんですか?と記者から聞かれた小村博士は、それは原水爆の威力に頼る他はないですと答える。

外国から何か通知がありましたか?との質問には、まだありません。しかしRとの接近が事実であると確認されたら、地球を守るためにも原水爆を発射してくれると信じておりますと答える小村

発射してくれなかったらどうなるんです?との問いには、それは…、地球と共に我々も粉々になるだけです…と小村が言うので、冗談じゃない!何とかなりませんか!とマスコミや軍人たちは騒然となる。

日本には原水爆より威力があるものを発見した人がいるのですが…と小村が言うと、それは誰です!と記者たちは色めき立つ。

いや、それも単に爆発物としてではなく、偶然発見したんですと小村は補足するが、誰です、それは?と聞かれるたので、松田英輔博士ですと小村は答える。

輪転機が廻る

あなたのことが夕刊に出てますわ…と新聞を松田の書斎に持って来る清子

何が載ってるんだね?と松田博士が聞くと、あなたが水爆以上のものを発見なさったって…と愉快そうに清子が教えると、そんなこと書いたって、今更何になるんだ。今の日本じゃ現物が出来る訳じゃなし、ただ学者の机上の空論みたいなものだよ…と松田博士は憮然とする。

そこに、名刺を持った女中が、この方が、旦那様にお目にかかりたいと見えてますけどと伝えに来る。

今日は誰にも会わないと言ったろう!と松田は叱るが、はい…、でも、何ですか、重大なご用件のようで…と女中は言う。

誰だい?と松田が聞くと、ジョージ斎藤と書いてありますと女中は名刺を読むので、仕方ない、お通ししなさいと松田は命じる。

どうも落ちついておられない。すぐ天文台に行くから車を呼んでおいてくれと清子に頼み、松田は部屋を出て行く。

すぐ出かけるので、早くご用件を承りましょうと言いながら、松田博士はジョージ斎藤なる人物(斎藤紫香)と対面する。

じゃあ、簡単に、ざっくばらんにやっつけましょうと応じた斎藤なるサングラス姿の怪し気な人物は、夕刊で見たんですが、あなたが発見した新エネルギーの権利を売ってもらいたいんですと言い出す。

え!権利を売れ?と松田が驚くと、金になります、大金になりますよと斎藤は言うので、君は一体何者だ!と松田博士は気色ばむ。

ま、救いの神くらいに思って下さいなどと斎藤は言うので、これを買ってどうしようって言うんだ?と松田が聞くと、欲しがっている国はいくらでもありますよ等と言うので、それでも君は日本人か!と松田は起こって立上がる。

始めから日本人と入ってませんと斎藤がとぼけると、じゃあ、どこだ!と松田が迫ると、生まれは天国ですなどと斎藤が言うので、ばかな!帰ってくれ!君と話している暇はないんだ!と松田は苛立ったように言う。

そんな断り方なさると、後で後悔しますよと斎藤は愉快そうに答えるので、何でも良いから、早く帰ってくれたまえ!と松田は言う。

いずれ又お目にかかります…と笑いながら斎藤は帰って行く。

そこにやって来た清子が、あの方誰ですの?と聞くと、悪魔だよ!と松田は吐き捨てるように答える。

翌日、いよいよ今日です!天文台は新天体Rを捉えようと苦心しておりますと臨時ニュースが町中に流れる。

町中で、民衆が空を見上げる。

バス会社や学校でも、空を見上げる人々

藁葺き屋根の上に上って空を見上げる農民たち

飼い犬も空を見上げ吼え、屋根の上の白い猫も不安そうな様子

城北天文台で終日望遠鏡を覗いていた小村博士が、ついに、見えた!と声を発する。

望遠鏡の中に現れた赤い星を確認した小村は、磯辺博士らに順番に見せていき、大変なスピードで進んでおりますと集まったマスコミ陣に発表する。

徹は、駆けつけていた清子、徳子、美恵子らの元に近づく。

海外との連絡員は、接近するRを発見したとの報告を海外へ連絡する。

先生!Rとぶつかるのはいつなんですか?と記者が聞くと、50日後に衝突するはずだが、それまで地上にあるものみなやられるだろうと小村博士は答える。

地下に潜っても助かりませんか?との問いには、一時は良いでしょうが、結局衝突すれば同じです。原水爆の発射以外助かる道はありませんと小村は答える。

記者たちが騒然とする中、また臨時ニュースが流れる。

ただ今、外伝の伝える所によりますと、各国国防省は原水爆発射についてもっら慎重に討議中との発表がありましたとニュースは言う。

先生!何とかなりませんか!と松田博士に詰め寄る記者

皆さん、何にしても退避の体勢を取らなければ仕方ないでしょう!と軍人らしき人物が言い出す。

町は退避する民衆たちで大混乱になる。

美恵子も、疎開する親から幼稚園児を預かることになる。

地下鉄になだれ込む民衆

走る機関車の窓から荷物を捨て、飛び降りる人々

混乱する「長寿園」と言う老人ホーム

仏に祈る僧侶たち

太鼓を叩く信者たち

道路を逃げる民衆に逆行し、歩いていた松田博士を見つけた乗用車が停まると、中から降りて来た2人の男が、いきなり松田博士を拉致して車に押し込めて走り去る。

天文台では、望遠鏡を覗いていた徹が、Rの速度は秒速200kmと小村に伝える。

この分だと、明後日あたり、肉眼で見えるようになるかも知れないな…と、双眼鏡で確認した小村はつぶやく。

どっからも連絡ないね?と所員たちに確認した小村は、すぐ地下室に退避できるようすぐ準備しときたまえを命じる。

徹たちは重要記録を地下室に運び入れる作業を始める。

その頃、とある部屋に連れ込まれ抵抗していた松田博士は、静かにしたまえ!と近づいて来たのが、ジョージ斎藤なる人物だと気づく。

やっぱり又、お目にかかりましたね…と言う斎藤に、こんな所に連れて来て、僕をどうすると言うんだ?と松田が問うと、先日の商談を続けようと言うんですと斎藤は答える。

断る、悪党め!人を誘拐しておいて!と松田は興奮するが、誘拐?これは穏やかでない言葉ですな…、私は親切で言ってるんですよ、貧乏な学者生活しているより、大金を掴んで、南米なりどこなりで贅沢に暮らしたらどうですなどと斎藤は言う。

帰してくれ!僕は忙しいんだ!と松田が言うと、新エネルギーの方程式をお書きになりゃ、車でお送りしますよと斎藤は言う。

突然立上がって窓の所に近づいた松田博士だったが、そこは、廃ビルの上階だと気づく。

嘲るように笑い出した斎藤は、羽でもなけりゃ出られませんよと言う。

君はどんなことをしたって、僕から聞き出すことは出来ないよと、窓ガラスを割った木片を投げ捨てた松田博士に、言わなきゃ、痛い目に遭いますぜ…と斎藤は嘲る。

どうせRが地球にぶつかれば、お互いに生きてはいられないんだから、君の勝手にしたまえ!と松田が言うと、あんたらがこしらえた科学小説のようなものを信じてちゃ、金儲けは出来ないよ!と斎藤は答え、部下2人に、やっつけろ!と命じる。

その頃、恵美子は、親から預かった子供他を、城北天文台の地下室に入れていた。

その天文台に先に到着していた磯辺博士は、清子から電話を受け、奥さんも早くいらっしゃいと勧めていた。

松田は?と小村が聞くと、早く家を出たそうだよと磯辺は言う。

とにかく世界会議が受け付けないとなると、松田の例のウリュウム101に頼るしかないからな…と小村は言う。

しかし、松田自身も、今の日本じゃどうにもならんだろう…と磯辺はつぶやく。

廃屋の松田博士は、猿ぐつわをかまされ、ソファに縛り付けられていた。

松田は、思わず窓の外の空を見る。

町中は無人と化していた。

接近するアールの影響で強まる風雨

地下室に退避していた幼稚園児は、強風で窓が壊れたので、反対側に逃げ出す。

所員たちが、急いで窓を塞ぐ。

もんぺ姿で地下室に来ていた清子が、どうしたのかしら、うちは…と松田博士のことを案じるので、大丈夫ですよ、奥さん、きっと近くの地下室に入ってらっしゃるんですよと徳子が慰める。

そこへ、Rが急に速度を増したと言う連絡を所員が小村博士に伝えに来る。

望遠鏡の所へ戻って来た小村が、望遠鏡をのぞくと、もうRの姿は鮮明に見えており、地球衝突まで後20日しかないと言う所員の最新の計算を聞き驚く。

僕たちはどうすれば良いんだ?と磯部博士が聞くと、諸外国の原水爆発射を待つしかない…と小村博士は力なく答える。

その時、臨時ニュースが流れ、ついに世界会議は日本の書簡を受け入れました。本日日本時間の午後8時、地球の各地から一斉にアールに目がけて、原水爆を発射すると発表されましたと言うので、博士たちや所員は大喜びする。

徹はすぐに地下室にいる避難民たちに、皆さん安心して下さい、今夜8時、世界寿から打ち上げる原水爆でアールを粉砕するそうですと伝える。

恵美子が万歳と言うと、子供たちも一斉に万歳!とはしゃぎ始め、徹も思わず、万歳と唱和する。

夜になり、ろうそくを灯して、子供たちは寝る仕度を始める。

夜の8時直前、望遠鏡の前で固唾を飲んで結果を待ち受ける小村博士以下天文台職員たち

8時の時報が鳴り、望遠鏡を覗いていた小村博士は、Rの表面上で爆発する原水爆にひかりを認めるが、効果がないことを知る。

地下室では、そして小人たちは、お姫様と別れるのが哀しくて、みんなでおいおい泣きました。やっとのことでお国に帰ったお姫様はいつまでもいつまでも国中の人たちに慕われました。めでらし、めでたし…と、恵美子が子供たちに絵本を読んで聞かせていた。

子供たちを寝かしつけた恵美子は、徹が降りて来たので近寄ると、大変なんだ、いくら打ち上げてもアールには何の影響もないんだと聞かされ愕然とする。

その後も、原水爆が各地からRに打込まれるが、Rに変化はなかった。

サングラスをして望遠鏡を覗くようになっていた小村博士は、光の強さが早くなった!と汗まみれで報告する。

衝突まで後5日に迫っていた。

再びう望遠鏡を覗こうとした小村博士は、過労のため倒れてしまう。

地上では、カラスや飼い犬、金魚などが、Rの接近に夜気温上昇で倒れて行っていた。

やがて、海の水位が上昇し、あちこちで洪水が起こる。

天文台の地下室も温度が上昇しており、扇風機が回る中、恵美子たちはぐったりした子供たちを必死に介抱していた。

そんな中、ネズミが出たと園児たちが騒ぎだす。

一緒に避難していた磯部博士や清子や徳子たは、倒れた小村を看病していた。

そんな天文台本館にも、洪水の水が迫り、窓から大量の水が地下室に流入して来る。

恵美子たちは園児を1階へ登らせ、所員たちは全員で窓の水を食い止めようとする。

小村を助け起こした磯辺らは、この事態に立ち尽くすだけだった。

無人と化した町中にある廃ビルの上では、松田博士が椅子に縛られたまま取り残されていた。

松田博士は、椅子を自ら倒すが、その時、外壁が崩壊しだしたことに気づきパニックになる。

博士の足下までビルが壊れていたからだった。

天文台に避難していた園児たちは熱さと恐怖で泣き出していたが、それを「良い子の住んでる良い町は〜♪」と歌で必死でなだめる恵美子たち。

そんな歌声を聴きながら、松田君のウリュウムがあったらなぁ〜…と、ぐったりした磯部博士はつぶやく。

その時、円盤の近づく音が聞え、銀子と三人の男の姿をしたパイラ人たちが出現する。

皆さん、元気を出して下さいと銀子は磯辺らに励ますが、松田先生はどうしましたか?と聞く。

どうしたんだか、姿を見せないんですと磯部博士が答えると、松田先生は私たちが探しますと銀子が言うので、しかし、そう簡単に居所は分からんでしょう?と磯辺が聞くと、先生には私たちの指輪を渡してありますから、私たちのレーダーでその指輪を探せば分かりますと銀子は言う。

そして消えて行く4人

崩壊しかけたビルの室内で椅子と共に倒れた松田博士は息も絶え絶えの状態だった。

そこに出現した4人

先生、しっかりして下さい!地球を救うには、先生のウリュウム元素より他にありません!早く方程式を言って下さい!と銀子は呼びかける。

天文台の水浸しの地下室にいた園児たちも、熱で憔悴し切っていた。

松田!松田はどうしたんだ…と、朦朧としながらつぶやく小村博士

無人の町を1人彷徨っていた松田は、近くのガスタンクが突然爆発を起こしたので、その爆風で壊れた瓦礫に巻き込まれていた。

園児たちは泣きわめき、恵美子たちに抱きついていた。

そんな天文台にたどり着いた松田は、螺旋階段を降り地下室にやって来たので、それに気づいた小村博士は、松田!と呼びかける。

所員たちが駆け寄り、憔悴し切った松田のに手を貸しながら、小村博士の側に連れて来る。

その時、又不思議な音が聞こえて来たので、松田博士は左手の小指にはめていた指輪の蓋を開ける。

すると、地球の皆様!地球の皆様!と呼びかける銀子の声が聞こえて来る。

松田博士が発見された新エネルギーの爆弾は、やっとパイラの宇宙船の中で完成されました。今、発射の準備をしておりますと言うので、それを聞いた三博士たちは喜んで手を取り会う。

今、発射します!皆様、Rを見ていて下さいと銀子は言って来る。

良し!と所員たちは一斉に、板で塞いでいた窓の所に駆け寄ると、板の一部を外し、サングラスをかけて外の新天体Rを見守る。

次の瞬間、パイラの宇宙母船から発射されたミサイルがRを直撃し、Rはひび割れると爆発する。

その衝撃で地下室内も崩壊する。

外が明るくなった中、埃まみれになった室内で起き上がる所員たち

外では青空が広がり、ウサギや狸など、野性の動物たちが地上に姿を現していた。

木の枝で小鳥がさえずり始めた中、幼稚園児たちが歌う「良い子が住んでる良い町は〜♪」と言う可愛らしい歌声が聞えて来る。

水辺では、カニや亀も這い出していた。

すっかり荒れ果てた外観になった城北天文台の入口から園児たちが元気な声で飛び出して来る。

青空の下、迎えに来た親たちと合流する子供たち


 

 

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