白夜館

 

 

 

幻想館

 

プリンセス トヨトミ

 

奇想天外な設定なのだが、今ひとつその奇想に乗り切れないのは、根本的な発想部分に、ナンセンスと解釈しても無理があるからだと思う。

特に話の肝となっている、父から子への伝承、男同士の繋がりの必要性を説く部分が、何だか古くさい年寄りの説教みたいに感じられ、郷愁はあるが、今の時代、説得力に欠けるのが致命的だと思う。

そもそも、父親が自分の死期を予期して、子供に密かに家代々の秘密を語り継ぐなどと言う事自体がナンセンスで、人は自分の死ぬ時期など想像もしないし、出来ないのが普通だからだ。

もちろん中には、不治の病に犯され、死期を悟る人もいるかもしれないが、今の医学では、かなり延命が出来る中、大半の人に取って、子供に秘密を打ち明けるタイミングなど見極めにくいはずである。

また、子の立場からしても、ある程度の年齢になれば、親を客観視するようになるはずで、父の言う事を鵜呑みにするなどと言う事はしなくなるのが普通だと思う。

親の意思と言うのは言葉で伝えるものではなく、その生き方全てから子供が自然に学んで行くものではないか?

親の背中を見て育つ…と言うのはそう云う事だろう。

それなのに、現代社会で一つの大きな自治体の成人男性全員が、親から子への言葉の伝承を守っている…などと言うのは、いくら奇想ロマンスと言っても不自然すぎて白けてしまう。

劇中では異端者のような描き方になっている松平のような事例の方が、現実では圧倒的に多いのではないかと思う。

現実には少ないから、理想としてのメッセージなのだとしてもピンと来ない。

また、大都会であればあるほど、地方からの流入者の割合が多いはずで、いざ鎌倉と言うときに、大阪中が空っぽになるなんてどう考えてもあり得ないだろう。

劇中では、大阪には大阪出身者しか住んでいないかのような描写になっているのも奇妙すぎる。

さらに、一地方自治体が独立するという発想自体に、他の地方に住むものが共感できるか? 何かロマンを感じるか?と言う疑問もある。

かつて、確か、井上ひさしさんの「吉里吉里人」と言う似たような発想の小説があったが、残念ながら未読なので、この作品と比較できないのが残念。

まあ、そうした辺りは、あら探し、揚げ足取りになるかもしれないので一応留保するとしても、本作は歴史ロマンの要素が強いのに、予算の関係なのか過去の再現シーンは貧弱で、その分、説明台詞で補おうとしているため、全体的に役者がしゃべっているシーンばかりが目立ち、映画的な見せ場が乏しいように感じる。

アクション的な見せ場と言えば、子供の喧嘩シーン程度である。

後は、すっとぼけた綾瀬はるかさんのキャラで持たせている感じ。

ボランティアエキストラを使った集団シーンが最大の見せ場のつもりなのかもしれないが、見ている方にさほどの感激はない。

むしろ、富士山の白い十字架と言う謎の方が気になり、意味ありげな割りには何の解決やヒントもないまま終わっているので、歴史に疎い当方などは歯痒さだけが残るだけである。

おそらく、原作の小説として読めば色々夢が膨らむ楽しい設定になっていたのだろうが、中途半端な映画化になってしまったために、今ひとつ心に響かない凡作になってしまったような気がする。

ただし凡作とは感じても、決して駄作と言う意味ではない。

見応えこそあまりないが、まぁTVのSPドラマ程度のつもりで見れば、それなりに楽しめなくもない作品だと思う
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2011年、フジテレビジョン 関西テレビ放送 東宝、万城目学原作、鈴木雅之監督作品。

この事は誰も知らない…

2011年 大阪 7月8日金曜日、午後4時のことである… 無人になった大阪の様子 大阪が全部停止した…

そんな中、呆然と大阪の町を見渡す鳥居忠子(綾瀬はるか)

1615年 大阪

大阪夏の陣だ…

家康により、豊臣家は断絶した…

大阪城落城…

逃げる国松とその母伊茶(菊池桃子)

途中、ひょうたんを落としてしまう。

抜け穴の所へやって来た伊茶は、逃げなさいと国松を穴の中に入れると、自らは穴の外で逃げようとするが、そこにやって来た鎧武者に見つかり惨殺される。

鎧武者は、側にあった抜け穴の中を覗き込むと、そこには逃げずに立ちすくんでいた国松の姿が見える。

月曜日

「鬼の松平」と呼ばれている会計検査院調査官松平元(堤真一)は、うっかり部屋に忘れて来た携帯を人に届けられて恐縮していた。

一方、キャリーケースを持って東京駅に向かっていた鳥居忠子(綾瀬はるか)は、新人調査官で日仏ハーフの旭ゲーンズブール(岡田将生)に、旭君、いきなり副長と組む事になり、緊張してるでしょう?まだ誰も見た事ないのよ、副長の笑顔!何かあったら私がフォローするからね!などと先輩面をしていた。

そうした鳥井の先輩面に朝日は苛立ったように、朝日はファーストネームです、ゲーンズブールと呼んでくださいと言うので、言いにくいじゃない!私も下の名前呼んで良いわよと忠子が言うので、僕は鳥居さんの下の名前知りません!と朝日はなおも苛つく。

その頃、大阪のとある企業では、質問は僕がする、お前らは全員チャックや!来るのは会計検査員や!と一人の社員が他の社員たちに言い渡していた。

新幹線で、松平、旭、忠子の3人は大阪に向かっていた。

日本中の嫌われもんやな…と噂する大阪人たち 松平は、一人アイスキャンデーを食べていた。

忠子は、私、子供の頃、不思議なものを見た事があるの、電車の窓から富士山の下に白い十字架がたくさん立っているのが見えたのよ…、もう20年以上前見ただけなんだけどね、今でも必ず探しちゃうのよね~などと旭に話しかけていた。

そんな話を聞くともなく聞いていた松平は、大阪城が赤く燃え上がるイメージを思い浮かべていた。

通天閣

大阪に到着した3人は、早速予定していた企業の会計実地検査を開始する。

予期していたとは言え、社員たちは慌てふためく。

その後、次の検査対象だった空堀中学校へやって来た3人は、何人かの生徒たちが校庭の一隅に集まっているのに気づく。

何かと話しかけてくる忠子に、足手まといにしか見えないな…とぼやく旭だったが、その時、忠子は、その人ごみの真ん中で倒れ込んでいた一人のセーラー服の人物が、ライン引き用の白い石灰を全身にかけられ横たわっていたのに気づくと、苛めだと察し、何やってるんですか!と叱りながら近づいて行く。

その時、いち早くそのセーラー服の人物に駆け寄って助け起こしたのは、同級生の橋場茶子(沢木ルカ)だった。

虐められていたのは真田大輔(森永悠希)、先週、いきなりセーラー服を着て来たんです。女の子になりたいと思うとるそうです。苛めの原因になるんやないかとは思ったんですが…と、職員室でその話を聞いた中学校長(宇梶剛士)が忠子たちに打ち明ける。

その中学校の会計監査を始めようとしたとき、急に忠子がトイレに行きたいと出て行ったので、ミラクル鳥居さんのせいで10分待ちです…と旭はぼやく。

しかし、トイレに行った忠子は、トイレ前をあれこれ裏話をしながら通り過ぎて行った女子事務員の話を聞いてしまったので、結果的に不当事項を発見でき、会計検査は10分短縮できた。

結果、昼時に空堀商店街にやって来た3人だったが、「太閤」と言うお好み屋を発見した忠子は、あの店美味しそうじゃない!先にお昼食べません?と提案するが、松平は無視して、その店の向かい側にある「財団法人 OJO(大阪城跡整備機構)」の入り口ブザーを押す。

なかなか返事がないので、他に入り口があるのかな~?などと忠子は周囲を探し始めたので、やけに熱心ですねと旭が皮肉ると、腹が減っているんだろ…と松平は見抜く。

やがて中から返事が聞こえたので、会計検査員です!と名乗ると、扉を開けて出て来た老人が経理担当の長曽我部(笹野高史)と名乗り、3人を中に招き入れる。

通された応接室で社員数を聞くと、人員は21名ですと長曽我部は答える。

一応、社員の部屋を覗かせてもらうと、社員たちが事務仕事をしているので、問題ないと判断し、その建物を後にした松平たちは、先ほどの「太閤」で昼食を取る事にする。

うれしそうに忠子は、豚玉とイカ玉のお好み焼きを注文する。 松平が無表情に食べるので、副長、まずいんですか?と忠子が聞くと、そんなことないと言うので、だったら、そんな顔しないでください!と忠子は注意する。

その後、松平は、ない!携帯!と言いながら胸ポケットを触り、「OJO」だ!と気づくと、一人店を出て、向かいの建物のブザーを押す。

しかし、今度はいくら押し続けても何の返事もないので、戸を開け、勝手に中に入ってみる。

すると、不思議な事に、建物内には全く人影がいないではないか。

声をかけようにも、受付にも誰もいないので、仕方なく勝手に二階に上がり、先ほどの応接室に来ると、案の定テーブルの上に携帯が置いてあったので回収し帰ろうとするが、どうも気になる。

人の気配が全くしないのだ。 先ほどの社員部屋をそっと開けて中をのぞくと、人っ子一人いなくなっていた。

念のため、先ほど長曽我部からもらった名刺に書いてあった電話番号に電話をかけてみると、OJOですと言う返事が聞こえたので、すぐに切った松平は、部屋の中の電話をかけようとしてみるが通じてない。

事務机の引き出しを開けてみると、どの机も中は空っぽだった。 「太閤」から出て来た忠子と旭は、狐に化かされたような表情で立っていた松平を見つけると、携帯、ありましたか?副長!と声をかけてくる。

その頃、蜂須賀!と叫びながら、商店街にやって来た茶子は、大輔を虐めていた不良男子生徒蜂須賀 勝(上村響)の顔に飛び蹴りを加えていた。

火曜日 大阪城前広場のベンチに腰掛け、ソフトクリームを食べる松平は、また、赤く燃え上がる大阪城のイメージを思い浮かべながら、昨日の事を思い浮かべていた。

(回想)2時間後、忠子たちを伴い再び「OJO」を訪れた松平たちを出迎えた長宗我部は、携帯が?と驚く。

2時間前の事ですと松平が説明すると、みんな昼食をとりに出てたんでしょうと長宗我部は答える。

頂いたお名刺に書かれた電話番号にもお電話したんですが…と言うと、留守のときは携帯に転送するようになっているんですと長宗我部は言う。

社員部屋には、午前中と同じく社員たちが揃っていた。

引き出し?と長宗我部は不思議がり、自ら、近くの事務机の引き出しを開けてみせるが、中には事務用品が普通に入っていた。

現場確認を行いますので立ち会いをお願いしますと忠子が申し出る。

しかし、何も問題は見つからなかった。

続いて、「OJO」から3000万の融資を受けていると言う漆原修三教授(江守徹)のところへ話を聞きに行く松平たち。

漆原教授は、整理をしようとしたら余計に散らかったと言いながら、本の山の下に埋もれていた。

松平は、「OJO」の補助金の使い道を調べに来ましたと説明するが、そうした中、「大坂夏の陣」のついて書かれた本を発見する。

その後も、アルバイトに払ったと言う長宗我部の言葉を確認するため、手分けして関連会社の名簿に載った名前に片っ端から電話してみる事にする。

町では、鼻にでかい絆創膏を貼った蜂須賀勝とその不良仲間たちが茶子を追いかけ回していた。

また「太閤」でお好み焼きを食べる事にした忠子は、みんなランチ食べに出ていたんですよ…と、「OJO」での不思議な出来事を結論づけようとしていた。

いくら調べても、「OJO」に怪しい部分は見つけられなかったである。

しかし松平は、あのときも俺はこの席に座っていた…、出て来たら見えると答える。

開け放った入り口前のテーブルの外を向いた席に松平は座っていたからだ。

路地を挟んで向かいにある「OJO」の入り口は丸見えの位置だった。

彼らはどこへ消えたんだ? でも、ボランティアの人たちも、全部電話しましたよ、これでOJOが嘘をついているとしたら、大阪中が口裏を合わせていることになりますよと忠子は不満そうに言う。

その時、店に帰って来たセーラー服の中学生は、頭を虎刈りにされていた。

この店は、虐められていた真田大輔の家だったのだ。

そこにやって来た茶子も大輔の髪を見て驚くが、これは茶子には関係ない!と大輔は叫ぶ。

あんた!危ない目にあったらどないするの?あんたも一言言ってやってよ!と母親の竹子(和久井映見)が、奥でお好み焼きを妬いていた父親の真田幸一(中井貴一)に声をかける。

しかし、幸一は、お待たせしました!と忠子たちのテーブルに注文のお好み焼きを運んで来ただけで、茶子ちゃん、お好み食べて行き!と誘うが、いらんわ!と言い捨てて、茶子は帰って行く。

水曜日 チャコには関係ない!何もするな!と大輔は、中学校の校庭で蜂須賀に頼んでいた。

何でもするから!とその場で土下座をした大輔を見た強は、大紋盗って来い、うちの事務所にかかっている命より大事な大紋や!と無茶ぶりをする。

そこにたまたまやって来た忠子たちは、それを目撃し、大輔君!と呼びかける。

逃げて行った不良たちを見ながら大輔に近寄った忠子が、今のが蜂須賀って言う子ね?と聞く。 蜂須賀の親はやくざの親分らしかった。

そんな中学校の片隅にあった扉を目にした松平は、この扉見た事あるな…とつぶやくと、秀頼が逃げたって言う抜け穴ですよと教師が教える。

しかし、その後、会いに行った漆原教授はその話を聞くと、国松だよ、秀頼の子!と訂正してくる。

六条河原で首を切られたと言われているが、実は身代わりだったんだ、偽情報を流したんだよと言う。

さらに漆原は、抜け穴は三本あったと言い、その位置の可能性を説明しだす。

真田丸が破壊されたので、城の西側を迂回して近くの海に逃げたはず…などと言うので、今のどの辺りですか?と松平が聞くと、空堀商店街の辺りだと言う。

「OJO」の入り口は一つだけ、彼らはどこに消えたのか?松平は自問していた。

「これでOJOが嘘をついているとしたら、大阪中が口裏を合わせていることになりますよ」と言った忠子の言葉が蘇ってくる。

歩きながらぼんやりしている松平に気づいた忠子が、副長、どうしたんですか?と声をかけて来たので、先に帰ってくれと言うと、副長は?と聞いて来たので、「OJO」は嘘をついている…、鳥居、お前の言う通りだ。

大阪中が口裏を合わせているのかもしれん…と松平は答える。

その後、一人で「OJO」に乗り込んだ松平は、以前来たときに見た謎の扉の前で、長宗我部に、あの扉の向こうを見せていただきたいのですと頼む。

しかし、長宗我部は、あの扉は封鎖されているのです。老朽化がひどいので…などと言うので、あの時、みんなはあの扉の向こうの通路を使って、すみやかにどこかへ移動したのでしょう?と松平は突っ込む。

本当に、抜け穴の向こうに何があるんです?と聞くが、長宗我部は分からないとの帰るだけなので、現場確認として、扉を開く事を要請します!と命じると、会計検査員にそんな権限ないはずです、帰ってください!と長宗我部は拒否する。

その時、長宗我部さん、良いんですよ、私が案内しますと言葉をかけて来たのは、「太閤」の主人真田だった。

さすが松平や、良くここが分かりましたねと感心してみせた真田は、長宗我部から鍵を受け取り、扉を開いてみせる。

その向こうには、赤絨毯が引かれた長い通路が続いていた。

その頃、大阪城前広場にいた旭は松平に携帯をかけていたが、全く通じなかった。 さ棚に案内される形でろうかを歩き始めた松平だったが、廊下は異様に長く、なかなか向こう側にたどり着かなかった。

途中、車いすに乗った老人と、それを押す男とすれ違う。

やがて、ようやく広い部屋のような所にたどり着いたので、真田は、長々と歩かせてしまって申し訳ありません、到着しましたと詫びる。

この建物、どこかで見た事ありませんか?と真田が言うので、国会議事堂?と松平がつぶやくと、そう、ここは大阪国の国会議事堂です。

そして私が、大阪国総理大臣、真田幸一です!と真田は名乗る。

大阪城広場の屋台から、たこ焼きを買う忠子。

松平は、その真下にある部屋の中で、何気なく上を見上げていた。 あなた方は一体何者なんです?と松平が改めて聞くと、あるものを守る存在です。

「OJO」というのは守るものそのもの…、「OJO」…、王女ですと真田は答える。

順を追って説明しましょう、大坂夏の陣を知っていますね?と真田は続ける。 今から400年前、夏の陣で淀君は自決…、国松は首を切られ、豊臣家は断絶した…と言われています。

しかし、国松の血筋は今も密かに生き続けているのです。 大阪城を造ったのは誰か知ってますか?と真田が言うので、秀吉では?と松平が答えると、徳川家康ですと真田は訂正する。 大阪の町人は、昔から陽気な性格でした。

莫大な費用をかけ、家康が大阪城を気づくと、太閤はん、可哀想やな…と豊臣方に同情するようになろ、その後、豊臣の子孫を増やして行きました。

その拠点はここです。本物の大阪城と呼んでいますと真田が話終えたので、本物の豊臣が生きていると?と松平は信じられないようにつぶやく。

明治維新を迎えるにあたり、大阪国は、独立を認めて欲しいと時の政府に申し入れしました。

そんな事!と松平は信じかねていたが、これがその時の条約書ですと真田は一冊の書状を取り出す。

「大阪国独立条約書」と書かれてあった。 新政府は、当時予算不足に悩まされており、大阪国の要求を飲むしかなかったのでしょう、本物ですよと真田は言う。

話が本当なら…、豊臣の末裔を守るため…と?と松平が聞くと、姫が危機に陥ったら、男たちは立ち上がり、女は家で待つのです!と真田は言うので、立ち上がると言うのは、戦う…と言う意味なんですか?と松平は確認する。

その後、串揚げ屋で旭と忠子に会った松平は、旭は明日、調べてもらいたい事がある。

「OJO」の過去を調査して、法人許可を取った時、不自然な事がないか調べてくれ。どんな小さな事でも良いと頼む。

私は何をしたら良いんですか?と聞いて来た忠子には、「太閤」を調べてくれ、朝から晩まで…と松平が言うので、何で?と不思議がる。

木曜日 忠子は、指示通り、開店直後から「太閤」に入ると豚玉を注文する。

旭の方は、大阪城前広場のベンチでソフトクリームを食べながら、何でこれがそんなに好きなんだろう?と自問していた。

松平は、漆原教授をまた訪ね、先生、本当に国松が生きていたとして、その後、どうなってるんでしょう?と質問していた。

漆原は、歴史なんてものは、権力を持ったものが好き勝手に書き換えているものもある。

隠された歴史なんて死ぬほどあるってことだと答える。

その頃、ずっと一人でお好み焼きを食べ続けていた忠子に、真田は、もう気兼ねなく落ち着いてくださいと苦笑しながら言い聞かす。

すると落ち着いたかのような表情になった忠子は、ネギ焼きお願いします!と注文する。

その後、松平と空堀商店街で落ち合った旭は、「OJO」の過去の記録を調べた結果、35年前の記録…、昭和50年9月6日頃から飛んでいますと報告する。

それを聞いた松平は、その意味を考え始める。

大変ですね~、会計検査の仕事も…と、「太閤」で真田が忠子に話しかけていた時、大輔助君いますか?と茶子が店にやって来る。 真田はいつものように、茶子ちゃん、お好み食べて行きと声を掛け、茶子は一旦テーブルに座る。

しかし、二階から下りて来た母親の竹子が、大輔、具合悪いから会えへんって…と伝えると、お好みもう良いわと言った茶子は、店を飛び出して行く。

忠子も一緒に店を出て、チャリにまたがった茶子に、大輔君と喧嘩でもしたの?と声をかける。

何か知らんけど、避けられてる…と茶子が言うので、困った事ない?蜂須賀とか言うこの事で… この間、学校で見ちゃった…。

大紋盗って来いって言われてた。それが出来たら茶子ちゃんに手出さないと…と忠子が教えると、自分の事は自分でカタ付けるわ!と言い残し、茶子はチャリを漕いで去ってゆく。

真田に松平から電話が入り、明日の午後5時大阪府庁へ来てください。

会計検査員としての結果をお伝えしますと言って来る。

金曜日 大阪府庁のエレベターで松平と旭は一緒になる。

鳥居さんから電話がありまして、今日は用があるって…、子供たちの事に首を突っ込んでるんですよと旭が言う。

そこに、うるさいおばさん連中が乗り込んで来たので、今日は検査報告をするんだ。

鳥居が来るまで自由行動にする!と言う松平の言葉は聞こえにくくなる。

その後、二人は降りたエレベーター前で一旦分かれる。

学校から帰って来た大輔を待っていたのは、いつもとは全く違い、スーツ姿になった父の真田だった。

お前、礼服持っているか?詰め襟や…と真田が聞くと、嫌や!と大輔は拒否したので、まあええ、一緒に来いと言葉をかける。

何で?と大輔が聞くと、何でもええ!今からお前に大事な事を伝える。

何があっても最後まで聞くんや…と真田は言い聞かし、目の前の「OJO」に向かう。

その頃、松平の方は死んだ父親の墓参りに来ていた。 死ぬ直前、父から電話があったのだが、悪いけど忙しいからと一方的に切ってしまった時の事を松平は思い出していた。

そんな松平の様子を、側の高台の所から監視していたのは旭だった。

茶子はチャリに乗って、どこかへ向かっていた。

赤い絨毯の通路に大輔を連れて来た真田は、議事堂方向へ向かって歩きながら、お父ちゃんはおじいちゃんに連れられてここへ来たんや…、そうや、大輔、お前に頼みたい事があるんや。

姫を守って欲しい!これは真田家の末裔の勤めや…と話していた。

それって、王女のミニ何か起こるってこと?と大輔が聞くと、分からん、王女に何かあったら、お前は全力で守るんや!お前は王女の事、良う知っとる…と真田が教えたので、ええっ!まさか…と大輔は驚く。

せや…、茶子ちゃんや!と真田は打ち明ける。

その茶子は、背負ったリュックにバットを突っ込み、蜂須賀興行のビルの前にやって来ていた。

そこにタクシーが近づいて来て降り立ったのは忠子だった。

子供でも、相手はやくざよ!と言いながら、蜂須賀組に乗り込もうとしていた茶子を止めようとする。

すると茶子は、助けて!誘拐です!と騒ぎだし、掴まれた忠子の手を振りほどこうとする。

忠子は、ただのしまい原価です!と周囲の野次馬に弁解しながら、無理矢理茶子をタクシーに引っ張り込むと、そのまま走り出す。

その時、忠子は自分の身分証明書と携帯をその場に落として来た事に気づいていなかった。 その直後、消化器を持ったセーラー服の大輔が、突然蜂須賀組の事務所に乱入してくる。

組事務所でそんな騒ぎが起きているとは夢にも思わず、蜂須賀強はビルに近づいていた。

消化器の中身をぶちかけ、子分たちがひるんだ好きに、壁にかけてあった組の大紋をはぎ取った大輔は、窓の所に行くと、その看板を外に放り投げる。

落下した大紋は、ちょうど真下に来ていた強の頭を直撃する。

その直後、大輔自身も窓から飛び降りて脱出する。

王女が拉致されました!現場にこれが落ちとりました!と青ざめた長宗我部が真田に報告する。

身分証明書には鳥居忠子の顔写真と名前、職場が明記されていた。

鳥居さんに電話してくれと言いながら松平が府庁に戻って来たので、今までどこに行ってたんです?と旭が聞くと、ちょっと親戚の墓参りだと言うので、松平さんの親戚って、官僚とかすごい人たちばかりだそうですね~と旭はうらやましがる。

その時、松平に真田から電話が入り、どういう事ですか?松平さん…、王女を連れ去ったと言う報告がありました。あなたたちは大きな間違いを犯しました。我々は立ち上がります!と、何の事か分からず困惑する松平に、真田は一方的に宣言する。

その後、商店街の店頭にひょうたんが吊るされる。

ひょうたんや! 大阪人がみんな立ち上がるぞ!

道に置いてあるひょうたん

ひょうたんや!

「太閤」のチャリの買い物かごに入れてあるひょうたん 男たちは一斉に同じ方向に突き進んで行く… 大阪城が赤く光っていた。

警察署の受付にもひょうたんが置いてあった。

取調室で取り調べを受けていた大輔だったが、その部屋にもひょうたんが持ち込まれ、それに気づいた担当刑事も無言で部屋を出て行く。

大阪中の駅や商店街から人の姿が消えてなくなる。

そんな大阪の異変を府庁の窓から見ていた旭は、一体何が起こっているんです!「OJO」から何を言われたんです!と松平に問いかける。 すると松平は、お前は何を言われたと思う?と逆に旭に質問してくる。

俺に「OJO」から電話がかかって来た時、お前は、長曽我部さんからですとお前は言って電話を寄越したはずだ。その直後、お前は、真田さんは何と言って来たんですか?と聞いて来たが、何故、お前は真田と言った?「OJO」と真田とのつながりをお前は知らないはずだ。 お前は何を隠している!と松平は旭に聞く。

その頃、忠子の泊まっているホテルに連れて来られていた茶子は、入り口を塞いで逃げるのを防いでいた忠子に、何でそんなにおせっかい焼くの?と聞く。 何か気になるのよね~、茶子ちゃんの事…と忠子は言う。

その直後、茶子は隙を見て逃げ出そうとする。 府庁では、旭が松平に、見たかったんです、ずっと前から…と話し始めていた。

お前、大阪国の人間だろう!報告してたんだろ!と松平が指摘すると、手伝いしているつもりだったんです。「OJO」に副長の携帯を置いて来たのも僕です…などと旭が言い出したので、鳥居に王女を誘拐させたのもお前か?と聞くと、王女も自分自身のことは知りませんと旭が言うので、お前の目的は何だ?と松平が問いかけると、大阪国は独立させるべきなんです、本当の意味で!と旭は言い放つ。

恐る恐る取調室から出て来た大輔は、警察署内に誰もいなくなっている事に気づく、 いくら政府に承認されていると言っても、属国にすぎない…と旭は松平に話していた。

語り継がれているだけでは納得できない、あんな頼りない総理大臣に任せておけない!僕が会計検査員になったのは政府から独立しているからです。 あなたと大阪国に迫れば、大阪国を全国に知らしめる事が出来ます!と旭は言う。

その頃、「OJO」にいた長宗我部は、もし会談が決裂したら何もかもお終いじゃ!と怯えていた。

総理、あなたは何故、あの時あの男を入れたりしたんです?と長宗我部に聞かれた真田は、入れなくても、大阪国は見つかっていたよ。

私が信じるのは嘘をつかない人間だ!松平は嘘をつくような男ではない!と答える。

府庁の松平も旭に、お前は頼りないと言うけれど、あの男は手強い!と真田の事を認めて、行こう!大阪国が我々を待っている!と旭に指示する。

大輔が女の子になりたいと初めて打ち明けたのは小2の時やった…と、忠子のホテルでは茶子が打ち明け始めていた。

これから毎日、神社にお参りするって行ってたけど、それから7年間、大輔は毎日お参りしてるんや。大輔は真剣なんや!と茶子は言う。

うちの両親、子供の頃、交通事故で死んだんや…と言う茶子に、大輔君の事が好きなのね…と忠子が口を挟むと、兄弟みたいなもんや…と茶子は答える。

窓から外に目をやった忠子は、大阪城の周りが集まった大阪国民で埋まっていたのに気づき、ちょっとここで待ってて!と茶子に言い残し、部屋を出て行く。

大阪府庁前にも人が集まり、玄関先に到着した真田は、マイクを使う事を許してくださいと集まった民衆に話しかけていた。

真田と民衆の間には、長宗我部以下「OJO」とその関連企業の関係者が立って会談を見守る事になる。

その場で真田と向かい合った松平も、松平元(あずみ)会計検査員ですと、集まった民衆を前に自己紹介をする。

監査結果を申し上げると、大阪国を決して認める事は出来ない!と松平が発表すると、群衆から抗議の声が起こる。

大阪城が赤く燃えるように染まる。

王女のアンオピを知りたいと真田総理が聞くと、大丈夫、王女は無事ですと松平が答えると、部下に王女を拉致させた事がどうしても分からん?と真田は言う。

35年前もこうやって押し出したのか?と松平が責めると、長宗我部たちの顔に動揺が浮かぶ。

私自身が見たんだ!と松平が言うと、ご両親は?と真田が聞いて来たので、父は大阪出身です!と松平は答え、お父様は生きておられますか?と真田が聞くと松平は首を横に振ったので、なんちゅうこっちゃ!と長宗我部は嘆く。

忠子は「太閤」の店の前まで来ていた。

その後を茶子も付いて来ていたが、町に人影が消えていたので、鳥居さん、どうなってるんですか?これ…と聞くと、忠子も、分かんない…と言うしかなかった。

「OJO」は不適切な出費をしており、これを公表する!と松平は言い渡していた。

会計監査員は、内閣からも独立しているんです。国の支出を監査しているんです! そもそも一生自分の身分を知らない王女なんて、他の日本国民に正々堂々と説明できますか?と松平が攻めると、我々は王女だけを守っているんじゃない、もっと大切なものをを守っているんですと真田は言いだす。

ここに集まった大阪国の男たち、20代、30代は少なく、ほとんど40代ばかりでしょう?若いものは資格がないからですよと真田は説明する。

大阪国の男になるには条件があり、一つは14歳…、つまり元服を超えている事… もう一つは、父親がこの世を去っている事… 先日あなたが歩いた大阪国の廊下は生涯二度しか通らない道です。

一度めは父親に連れられて来られる時、二度目は自分の子を連れて行く… ここからは大阪国総理ではなく一人の男として言う、公表されたら大阪国は滅びてしまう!一度壊れたら二度と再建できない!と真田は訴える。 しかし松平は、何故信じている?あの道を1回通っただけなのに…、私にはとても信じられない!と反論する。

それは、父親の言葉だからだ。あなたは大人になって、父と話した事がありますか?父と子の話は2人だけの記憶になり、そこで託された事は2人だけの約束になる…と真田は言う。

いつ、子に大阪国の事を伝えるかと言えば、自分の死を確信したときだ!子は目の前にいる父の覚悟を知る。

未来を託された事を知る!一生忘れない事になる… そう熱弁を振るう父真田の言葉を、民衆にまぎれて府庁の前に来ていた大輔もしっかり聞いていた。 父から子へ…、大阪国の真実を伝える。

我々が400年伝えて来た事だ… あなたは無駄な事だと言うかもしれないが、これからも王女を守る。一番大切なものとして…、これがすべての答えだ!と真田は締めくくる。

いつの間にか、忠子と茶子も、大阪府庁前にやって来ていた。

松平さん、あなたのお父さんも、あなたに何かを伝えようとしたんじゃないですか?と真田が問いかけた時、出て行け!お前なんか大阪から出てけ!と民衆が騒ぎだす。

何しに来たんや!ここはお前の来る所ではない!帰れ!と罵声が飛び交う。

君もあの廊下を歩いたのか!と松平が聞いた時、民衆の中から発砲音が響き渡る。

それを聞き、驚いて立ちすくむ忠子と茶子 撃たれた松平はその場に崩れ落ちる。

茶子が光ったように見えた。

こら!何してる?家帰れ!と怒声が上がる。

(回想)父の康(平田満)から珍しく職場に電話が入った時、松平は、今、仕事中なんや?と迷惑そうに答える。

会うて話したい事があるんや…、週末、大阪に来られんか?もう何年も会うてないさかい、来てくれ、頼む!大事な話なんや…と、父は病院の公衆電話からかけて来ていた。

その後、松平が会った父親は、病室のベッドで既に息絶えていた。

(回想明け)今、松平自身が、同じように病院のベッドに横たわっていた。

大輔と茶子も寄り添って病院の待合室で待っていたが、そこに真田がやって来たので、これからどないなるの?戦争になるの?と大輔が聞くと、そんなことになるわけない…と真田は答え、大輔、自分に素直に生きることや、青の覚悟があるのやったら、好きにやれ、けど、男や牢が女や牢が、王女守らんといけん、それだけは意識しといてくれ…と言い聞かす。

その時、病室から出て来た旭が、真田さん!副長が目を覚ましました!とうれしそうに伝える。 病室に入った真田は、怪我をさせてしまって申し訳ありませんでしたとベッドの松平に詫びる。

そして、少し時間をくれませんか?この騒ぎを収集しますと真田が頼むと、何のお話ですか?「OJO」の検査は何も問題なかったんです。東京へ帰ります…、私は大阪国なんて知らない…、何も見てないし、聞いてない…、我々の負けだな…と松平は答える。

土曜日 大阪府庁前に集まっていた大阪国民の前に姿を現した真田は、無言のまま笑顔になったので、その意味を解した民衆たちは一斉に歓声を上げる。

痛みますか?すみません、こんな事になって…と、病室では旭が松平に詫びていた。

うちの親父はガキの頃から会社が倒産して、それからはろくに働きもしないで家でゴロゴロしていた…と松平は話しだす。

官僚なんかなれっこない… 大学の時、両親が離婚し、俺はおふくろと暮らそうと思った。

大学の同級生の親たちは、みんな立派な肩書き付けた奴ばかりで、自分の父親がみすぼらしく見えた…、足を引っ張られるんじゃないかって…、いつしか、親に関しては都合の良い嘘をつくようになって…、縁も切れてるし、何のためらいもなかった。

お前の聞いた噂は全部でたらめだったと言う事さ… そんな親父から、電話がかかって来たんだ、大事な話があるから大阪に来て欲しいって… それまでも二三度あったんだが、金くれとか、バーで女に会わせるとか、鬱陶しい話ばかりだったんだ。

だから、その電話もいつものように無視した… あのときの親父、自分が死ぬって分かっていたんだ…、だから、俺をあの廊下に連れて行こうとしてたんだ。 父親から与えられたものなんか何もないと思っているから、最後に会いに行かなかったのは悔やんでいないが、あの廊下を歩かなかった事は後悔している。

大阪国の存在が必要なのかどうかは良くわからない… しかし、それを信じている人がいて、それを守っている事は理解している…、それだけだ。 お前の期待に応えられなかったけどな…と松平は旭に伝える。

「太閤」、いつものようにセーラー服を着た丸刈りの大輔が自室から降りて来たので、あんた、また、そんな格好して…、また、学校で虐められるで!と母の竹子は案ずるが、大輔は全く気にしないような笑顔で、行ってくるで!と声をかけて出かけてゆく。

気をつけてな…と見送る真田。 そんな父子の関係を見た竹子は、まったく大阪の男は…とあきれる。 店の前で待っていた茶子は、いきなり大輔のスカートを大きくまくり上げたので、何すんねん!と大輔は怒るが、急がんと遅刻するで!と茶子は笑顔で答える。

「OJO」では、長宗我部が通路の扉の鍵を開けながら、お1人で宜しいんですか?と、まだ左手を三角巾で吊っている松平に聞いていた。

すぐに戻ります!と声をかけて通路に入った松平は、赤い絨毯を踏みしめ歩き始めるが、その横には父親康も笑顔で一緒に歩き始めていた。

やがてその幻影は消え去るが、松平は誰かと一緒に歩いているように、通路の右側を進んで行く。

その後、大阪城前広場にやって来た松平は、東京に戻ったら辞表出しますと旭が言い出したので、その必要はない、お前のような優秀な奴を手放せない。俺を騙せるようになったら一人前だと答える。

忠子はと言えば、2人が座っていたベンチの後ろの屋台でたこ焼きを買っていた。

何で鳥居さんと組んでいるんですか?と旭はまだ納得できないように聞くが、松平は何も答えなかった。

そんな2人の所に戻って来た忠子は、買って来たばかりのたこ焼きを、松平の口に運んでやる。

駅に向かう途中、松平たちは、学校に向かっていた茶子と大輔に出会う。

大輔は、すんませんでしたと頭を下げてくるが、茶子の方は屈託無さげに、さようなら!とだけ挨拶して、二人は仲良く登校して行く。

そんな二人とすれ違った旭は、ふと振り返って、さようならプリンセス…とつぶやくと、それに気づいたように、茶子も振り返る。

帰りの新幹線の中、また松平はアイスキャンデーを食べていたが、ふと窓から富士山に目をやると、そのしたの方にたくさんの白い十字架が見えたので驚き、忠子に教えようとするが、忠子は旭と寄り添うように眠っていたので、微笑む。

大坂夏の陣 逃げなさい!と抜け穴に押し込んだ国松に叫ぶ伊茶 その伊茶が、抜け穴の前から逃げようとして、やって来た鎧武者(堤真一?)に斬られる。

鎧武者は抜け穴の中を覗き込み、そこに国松の姿を発見すると、行け!と声をかける。

そして、他の仲間たちが、国松はいたか?と探しにくると、ここにはいない!他を探せ!と鎧武者は命じる。

そして、その後、鎧武者は、一人で抜け穴の入り口を見つからないように塞ぐのだった。
 


 

 

inserted by FC2 system