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花嫁のおのろけ

「花嫁シリーズ」第二弾

前作「抱かれた花嫁」(1957)のタイトルも意味不明だったが、今回のタイトルも意味不明で、この花嫁とは誰を指すのかさえ分からず、意味ありげなタイトルで観客の好奇心をくすぐる作戦だっただけなのかもしれないとさえ思う。

今回の主人公は、女性ではなく男性(高橋貞二)らしいのだが、ヒロイン風の岡田茉莉子とのダブル主演のような雰囲気もある。

らしいと言うのは、画面的に目だっているのはショートヘアが可愛い盛りの岡田茉莉子さんなのだが、キャストロールで彼女の名前が最初に出る訳でもなく(確か4番目くらい)、物語自体も彼女メインの視点で描かれている訳でもないからだ。

全体としてはラブコメなのだろうが、ラストが意外と言うか…、え?これで良いの?と言うような、ハッピーエンドに見えない釈然としない終わり方になっているので、どうもすっきりしないものが残る。

中核となっている主役のキャラ設定とそのドラマに、今ひとつ惹き付けられるものがないからではないかと思う。

前作「抱かれた花嫁」(1957)のヒロインの恋人同様、今回の主役も、浮世離れした学者みたいな設定になっているため、どうにもリアリティに乏しく、性格的にも、始終くよくよ考え込んでいるようなタイプなので、感情移入し難いのだ。

内容も前作同様、ある家庭を中心に、若者から中年までのいくつかの世代の恋愛が平行的に描かれており、幅広いターゲットを狙ったものだと分かるし、一つ一つのエピソードは楽しいのだが、人物の相関関係が良く分からないことも乗り難い要因の一つのように感じる。

まず、ゲスト的に登場してい佐田啓二演ずる熊沢伝七、阿部米子夫婦と武夫や三吉家族の繋がりが良く分からないので、岡田茉莉子さん演ずる米子の妹役の英子と武夫の関係も、最初から馴れ馴れしそうな割に分からない。

冒頭で、主役の弟の結婚式に英子も武夫も出席しているので、親戚らしいと言うことは分かるのだが、観た感じ、兄妹のように馴れ馴れしい。

三吉が米子と伝七の離婚届に判子を出していると言うのも良く分からず、三吉が2人の仲人だったと言うことなのだろうか?

キネ旬データのあらすじで確認してみると、何と、武夫と米子は「復従姉」の関係だと書かれているが、今度はその「復従姉」とはどういう関係なのか分からない。

「また従兄弟」の事なのか?

かつては恋人同士だったようなので、あまり近い親戚と言う訳でもないのだろうが、その辺の説明を劇中では全くしていないため、武夫と米子とのエンディングの急展開も今ひとつピンと来ないのだと思う。

となると、武夫と英子は、親戚と言ってもかなり遠い関係のように思えるのだが、それにしては妙に親し過ぎる。

三吉が、戦争中捕虜になった武夫のことを米子に話しているで、戦争の爪痕と言うか、その辺のことが米子と伝七の不和の原因に関係するようにも感じるのだが、その辺もイマイチ理解できないまま。

全体的に、お涙ちょうだいとかじめじめしないよう、暗い雰囲気にならないように、からっと描いてあるのは好ましいし、面白おかしいエピソードの羅列にはなっているのだが、登場する誰1人として、その心理に迫るような描き方がないため、どのキャラクターに対しても感情移入し難い。

結局、岡田茉莉子さん演じる英子は、姉とおじさん?の仲を取り持つキューピッドとなるべく、自らは身を引いた…と言うことなのだろうが、その辺の悲劇性も、ラストのコミカル芝居でからりと処理してみたと言うことなのだろう。

ただ、見ている方としては、めでたしめでたしと言う感じに見えないのがちょっと残念な気もするし、あれはあれで、余韻を含んだ良い終わり方だったのかも知れない…とも感じる。

それでも、この手の時代のプログラムピクチャーを観ていると、当時の風俗や流行が分かるので興味深い。

この作品では、やたらと人工衛星ネタを言っている。

ソビエトの「スプートニク」の打ち上げがあったのが1957年10月4日らしいので、1958年1月3日公開のこの作品で早速使っている訳だが、当時、毎週のように新作が封切られていた時代だからこそ出来る演出だろう。

民謡酒場なども珍しいのだが、この時代から「女性専用車」が国鉄の電車に存在した事を知ったのは一番の驚き。

捕鯨船団の出航をラジオニュースで生放送していたのも、時代を感じさせる。

この当時の捕鯨への国を挙げての意気込みのようなものを感じる。

フランスかぶれをからかったように描いているのも面白い。

なお、富士銀行やプラチナ万年筆のように、タイアップ企業の名前が画面に堂々と出て来るのも当時らしい。

銭湯の女将役で出ている宮城千賀子も、この当時は色っぽくもきれいだし、なよなよしたオネエっぽいキャラを演じている南原伸二も見物。

ストーリー的には、若干釈然としない所もあるが、愛らしい岡田茉莉子さんを見られるだけでも価値がある作品ではないだろうか。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1958年、松竹、椎名利夫+中村定郎脚本、野村芳太郎監督作品。

富士山をバックに「グランドスコープ」の文字が飛び出して来て、「松竹映画」の文字に変わる。

タイトル

イーストマン松竹カラー

結婚式場の廊下にモーニング姿でやって来たメガネの男、広瀬武夫(高橋貞二)は、入る部屋が分からず、取りあえずドアを開けると、全く見知れぬメンバーだったので詫びて、隣の部屋に入ろうとするが、又しても別の家族。

首を傾げて廊下に出た武夫に、やあ、石井家のものです。うちでも女房に双子が生まれたばかりでめでたいこと続きですな!などと話しかけて来た男がいたので、武夫はここの家族じゃありませんと詫びる。

こりゃ失礼!と詫びた相手も、今日は混んでますね…と苦笑する。

通りかかった会場の係員に広瀬家の部屋は?と聞くと、手に持ったノートを調べながら、広瀬平八郎、井上浩子さんですね。何しろ今日は大安で、150組もございますと係員も確認に迷うほど。

で、部屋は?と武夫がいら立って聞いていると、武夫さん!こっちよ!記念写真、あなた待ちよ!と声をかけて来たのは、阿部英子(岡田茉莉子)だった。

逆さまに写った家族集合写真のポーズを付け終え、いざシャッターを切ろうとしていた写真屋は、そこに、武夫と英子が飛び込んで来たので、困りますな、今頃入られては…とぼやきながら、新郎と新婦の衣装を手直しする。

そんな中、お時間ですよ!と係員が声をかけて来たので、慌てて写真屋はカメラの前に戻り、シャッターを切る。

その頃、式場の専属神主や巫女たちは、控え室で急いで握り飯を頬張っていたが、係員が途中で呼びに来たので、こんなに忙しくちゃ敵わんとぼやきながら慌てて出て行く。

新郎広瀬平八郎(石浜朗)と新婦井上弘子(瞳麗子)の前でお祈りを始めた神主の顔のヒゲに、飯粒がたくさん付いたままなのに気づいた英子は、思わず吹き出してしまい、横に座っていた武夫に、静かにしなさい!と注意される。

その武夫に、何しとる?と横から注意したのは、武夫の父親広瀬三吉(日守新一)だった。

武夫は、これで平八郎も一人前か…と父親に囁きかける。

式の後、平八郎と弘子は、外で待機していたハイヤーに飛び乗り、英子が荷物を渡してすぐに発射する。

それを見送った武夫は、あいつ、お父さんに挨拶もしないとは…と嘆くが、三吉は気にしてない様子。

2人とも学生で早いと思ったけど…と三吉が目を細めると、今頃大学生で結婚なんてアメリカじゃ良くあることよ。大学の先生でまだ結婚しない方がおかしいわと英子は武夫の事を当てこする。

女嫌いか?と三吉が案ずると、お父さまの息子でそんなはずないでしょう?と英子はからかう。

駐在武官でパリにおった頃は女と良く遊んだものだ。32にもなってガールフレンドの1人もおらんとは…と三吉が嘆くと、武夫さん、学校でモルモット相手じゃ無理よと英子は答える。

その後、洋裁店をやっている姉米子(小林トシ子)の店に戻って来た英子だったが、そこにやって来たのは、米子の夫熊沢伝七(佐田啓二)だった。

なかなか忙しいらしいねと英子に言いながら、店の二階へ上がりかけた伝七は、英ちゃんに良い物やるよと言い、チューリップの花を二本差し出す。

何?と英子が聞くと、ゴムさと伝七は笑い、二階へ登る。

伝七を初めて観たらしい客は、そのイケメン振りに、なかなか良さそうじゃない?と英子に囁きかけて来る。

そこにやって来たのが、さっき別れたばかりの武夫で、まだモーニング姿のまま。

どう?とゴム製の造花を差し出すと、良い匂いだなどと武夫は造花に鼻をくっつけ言うので、鼻炎ねと英子は嘆く。

武夫は、この店で借りたモーニングを返しに来たので、着替えようと更衣室に入りかけるが、そこで先に着替え中だった女性客が悲鳴をあげる。

バカね、こっちよ!と英子は隣の更衣室を指差す。

二階では、武夫さん、モーニング返しに来たわよと米子が伝七に話しかけていた。

又、船に乗るの?と米子が聞くと、鯨を捕りに行くのさと伝七は答える。

そこに上がって来た英子が、どうして来なかったの?と聞くと、私たちのような日々の入ったのが言っても演技悪いでしょう?と米子は笑って答える。

今頃二人とも、箱根ホテルで何してるのかな〜…と英子は想像していた。

(空想)湖が見えるベランダでいちゃついていた平八郎と弘子は、なかなか自分に気づかずいら立ったボーイが皿を叩いたので、ようやく気づいて振り返ると、何かお飲物は?と聞かれたので、シャンパンを…と答える。

(現実)弘子と平八郎は、ホテルではなく、薄汚い掘建て小屋の前でたき火を起こしていた。

何でこんな所に泊まるんだよと不満顔の平八郎に、だって、宿屋ホテルは3000円よ、ここだったら300円よ!としっかり者の弘子が言い聞かせる。

小屋に入ると、蜘蛛の巣が張ったようなあばら屋で、さらに、新婦の弘子がいきなりノートを取り出して勉強を始めようとしたので、止めろよと平八郎は止めるが、私たち、すぐに就職試験よ。いつまでもお父さんの世話にはなれないわと弘子は言う。

それでも、平八郎は、キスしてやろうか?などと迫って来たので、そう馴れ馴れしくしないでよ!結婚したからって、何から何まで命令できると思ったら大間違いよ!と弘子は怒ってみせる。

しかし、いつの間にか、平八郎は弘子の膝枕で横になっており、キスしようとすると、平八郎が目を見開いているので悪趣味よ!などと弘子は文句を言って立上がる。

そんないちゃいちゃを繰り返すうちに、いつしか小屋の中でキスする二人のシルエットが窓ガラスに写っていた。

英子は、勝手知ったる他人の家…などと言いながら、武夫の家で台所で勝手に料理を作っていた。

そこにやって来た三吉に、焼き上がった肉を喰わせると、旨い!英子ちゃん、ちょっとした腕だよと三吉は関心しながらも、フランス語の本を読んでいるので、フランス語お出来になるんじゃなかったの?と英子は聞く。

通訳をやろうと思っているんだが、苦労しているよと三吉が言うので、向うではどんな人を口説いたの?と英子が聞くと、そう言うことを言うと海軍少将の権威に関わると笑って三吉はごまかす。

なかなか台所に武夫がやって来ないので、三吉と英子で部屋に様子を観に行くと、火鉢を前に、割烹着を来た武夫が何事かを考えている様子。

手伝わないなら、こんなの脱いでよと英子は割烹着を脱がせるが、武夫は無抵抗なまま。

元気がないので、熱でもあるんじゃないのか?と三吉が聞くと、英子も舌出してごらんなさいなどと言って来る。

何だかだるいんじゃない?と英子が言い出すと、顔色が悪くなって来たなどと三吉も勝手に診断し出し、お父さん、話があるんですと武夫が言っても、寝かせようと英子と言い、布団を敷いて、無理矢理武夫を寝かせる。

東京A57よと英子が言うので、何だね、その爆撃機みたいなのは?と三吉が聞くと、流行性感冒よ、今年のは死ぬのよなどと英子は脅かす。

お父さんに話があるので、英ちゃん、遠慮してくれと武夫が言うので、英子は部屋の外に出るが、武夫は、何だ?と聞いて来た三吉に、結婚したいんですと相談する。

それを聞いた三吉が、何だと言いながら笑い出したので、廊下で待っていた英子も気になり、どうしたの?と部屋の中を覗くと、武夫が結婚したいんだとと三吉が教えたので、英子も一緒になって笑い出す。

翌朝、大学に出勤するため、地元の駅に向かいながら、笑われても仕方ない…と武夫は考えていた。

今まで、おれは一家の経済を支えて来た。結婚なんて考えている暇はなかった…。実際、結婚と言うのは人生の中で素晴らしいことに違いない。

弟の結婚を見てそう思った。

今度こそ俺の番だ!そう決心した!と武夫が決意を固め、電車に乗り込むが、ここは「女性専用車」ですよと注意されて慌てる。

考え事をしたまま乗り込んだので気づかなかったらしい。

武夫は、東京の議事堂近くにある「世界結婚教育学園」と言う婦人専門校(?)にやって来る。

そこでは、教室ごとに、女性たちの美容体操講座、美容クリームの塗り方講座、男たちに対するウィンクの仕方講座などの授業が行われており、武夫が受け持っていたのは、結婚の生理の授業だった。

武夫は、独身女性たちを前に、恥ずかしそうに、世界中の民族がどのように子供の誕生を考えているかの紹介をしていた。

しかし、結婚を意識するようになった武夫には、授業を受ける女生徒たち1人1人の態度までもが悩ましく感じるようになっていた。

そんな女性との1人が挙手し、先生!質問があるんですけど…と発言し、先生はどうして独身なんですか?結婚経験がない先生が結婚の生理を教えるのはおかしくないですか?

今は人工衛星が飛ぶ時代です。

授業も、事実に基づいた客観的事実を教えるべきではないでしょうか?何なら私たち、モルモットになりましょうか?などとからかって来たので、武夫は返事に窮する。

昼休み、英子にレストランに呼びだされた武夫は、走り回ってたのよと文句を言われ、結婚するって本当?姉さんなんて、風邪が頭に来たんじゃないかって言ってたわよとからかいながら、持って来た写真を取り出して見せる。

何だ?と武夫が聞くと、見合い写真だと言う。

その時、他のテーブルに座っていた客が、写真は出来たかい?と英子に声をかけて来たので、英子は席を離れてその人の前に行っておしゃべりを始めるが、カウンターにいた武夫が写真を見比べているうちに、空いた隣の英子の席に今来た男性客が座りカレーを注文したことに気づかず、話しかけようとした武夫は、いつの間にか英子が別人にすり替わっていたので驚く。

席に戻って来た英子も驚いたようで、そこ、私の席なんですけど?と男性客に注意したので、客はふて腐れたように別のテーブルへと移動する。

英子はまだ武夫が見合い相手を絞りきれないので、こん中から一枚選んで!とトランプのように用意して来た写真を裏返して拡げさし出す。

武夫はその中の1枚を引こうとするが、不器用なのか2枚一緒に引っ張り出してしまったので、両方の相手と会う事にし、英子は頼まれた仕事があるのでと言い残し会社へ帰ってしまう。

その日帰宅した武夫は、キッチンでジュースを仲良く飲んでいた平八郎と弘子が、父さんは?と部屋に声をかけに来たので、ようやく2人がいたことに気づき、帰ってたのか…と答える。

父さん、戸締まり忘れていないんだよと平八郎が言っている時、勝手口から洗面器を手にした三吉が帰ってくる。

どうやら銭湯に行っていたらしい。

三吉も平八郎と弘子が新婚旅行から帰って来たのを始めて知るが、弘子からいちゃつかれた平八郎が、それをごまかすために、床に釘が出てるのかな?などと足下を見ながらごまかしたので、安普請だ。まだ月賦も残っているし…と三吉は答える。

三吉がキッチンから出て行くと、あなた、何か隠し事ない?系統にパーの血筋ない?お父さんもお兄さんも変じゃない?と弘子が聞いて来る。

それを聞いた三吉は、そう言えば…、実は…、結婚前に言っとけば良かったんだが…、医者が言ったんだよ…と思わせぶりな前振りをした上で、君は日本一健康優良児だって!と笑って答える。

そして、親父には恋人がいるんだよ。今の所心配ないから放っといているんだけど…と打ち明ける。

そんな弟夫婦の会話を他所に、武夫は自室で、英子から渡された2枚の見合い写真を見入っていた。

後日、武夫は、英子に連れられ、見合い第一号の春子の家に来ていた。

英子が武夫を、大学を三番でご卒業なさいましたと先方の母親に伝えると、武夫が慌てて、クラスが3人しかいなかったので…とフォローする。

茶を差し出した春子が一旦部屋を出て行くと、次に菓子を持って現れた娘を、母親は秋子でございますと紹介し、どちらがお好みでしょうか?と言い出す。

暫く事態に気づかない武夫は、甘いものの方が…などと茶菓子の話だと思って返事をするが、英子に促されて相手を見ると、二人並んで座った春子と秋子は双子の姉妹だったのだ。

武夫はつい、僕はどちらでも良いです…と答えてしまったので、春子と秋子は笑い出して部屋から逃げて行く。

結局、その話は流れてしまい、英子はどちらでもなんて言うんですもの…と帰り際呆れるが、武夫は、こっちにしてみれば同じだもの…と答えるしかなかった。

次に会いに行った見合い第2号は、「プラチナアネストペン」を店頭で販売していた女店員山田洋子(川口のぶ)だった。

英子に背中を押され、その洋子の前に立った武夫に、洋子は、万年筆を書き味を披露するように、紙に「収入はおいくら?」と書いて来る。

ざっと3万くらいですが…と武夫が答えると、「私をお望みの理由は?」と、洋子はまた紙に書いてみせる。

その掛け合いを横から見ていた英子が割って入ると、自分でその万年筆を奪い、「望みません」と紙に書込むと、このペン安物ですね。ネジも緩んでいるし…と言いながら洋子の顔にペンを振って、インクを振りかけると、武夫を引っ張ってさっさと立ち去る。

英子はそのまま、勤め先である「婦人画報社」の前に来ると、ちょっとここで待っててと武夫を残し、自分は会社に入って行く。

表で待たされた武夫は、すぐ横に停まっていた車の横に立っている女性に目を奪われる。

その女性はこちらを向き、微笑みながら近づいて来たので、武夫は喜ぶが、実は彼女が微笑みかけて近寄ったのは、「婦人画報社」から出て来た別の男性だった事が分かる。

編集部にやって来た英子は、そこで編集長と話していた2人のモデルに、あんたたち、独身だったっけ?違うわよねなどと言いながら、ゲイっぽい編集者の福田清(南原伸二)に、「生活館」の写真、私にやらせてよねと話しかけ、頼みがあるんだ。見合い相手を探しているのと告げる。

すると、福田は、英ちゃんの相手?と興味を示して来たので、ううん、私は相手が15人もいるのよと英子が答えると、私は何番目?と聞くので、16番目!と答える。

え?私、15人に入ってないの?とショックを受けた様子の福田が、1番目は誰なの?と聞くと、英子は壁に貼られた「皇太子妃は誰に?」と書かれたポスターを見ながら皇太子殿下!と答える。

その福田を連れ、会社の前で待っていた武夫に、キューピット役よと英子が紹介すると、汚いキューピットだけど…と福田は照れ、私なんか人工衛星みたいなもので、好きな人の周りをぐるぐる回るだけなのなどと自己紹介する。

その後、福田が武夫を連れて来たのは競馬場だった。

馬はお好き?と福田が聞くと、解剖はしたことありますけど…などと福田が答えるので、福田は面食らう。

そんな福田は、真っ赤なコートを着て競馬を見物していた敬子(朝丘雪路)と言う娘を武夫に紹介する。

私、4-2よ、あなたは?と敬子が聞いて来たので、年のことを聞かれたのかと勘違いした武夫は3-2ですと答える。

じゃあ、賭けて!と敬子が言うので、僕と結婚してくれますか?と武夫は申し込む。

レースが始まり、結果は4-2だったので、武夫は、じゃあ、結婚はダメか…と落胆するが、一緒にいた福田は、なかなか有望じゃない!あなたの印象でも聞いてくるわと言い、立ち去った敬子の後を追って行く。

1人客席に取り残された武夫は、所在なげに双眼鏡で場内の女性たちを観察していたが、そんな中、清掃をしている男が父親の三吉であることに気づく。

その日、三吉と一緒に銭湯に出かけた武夫は、今日のガイドはどうでした?と聞いてみる。

三吉は外国人相手にガイドをしていると言っていたからだった。

三吉が適当にごまかして来たので、後片付け大変でしょうね?と皮肉を言い、今日、僕、競馬場に行ったんですよと打ち明けた武夫は、何もあんな仕事しなくても…と言い聞かせようとするが、気持ちはありがたいけど、仕事をしないとがっくりするから…、運動のつもりだよと三吉は言う。

その時、男湯にやって来た客(坂本武)が、持って来た土産を番台に座っていたきれいな女将(宮城千賀子)に手渡したのが見えたので、あいつはわしのライバルだよ。エビで鯛を釣るつもりか?と武夫に語りかける。

浪花節を唸りながら得意げに洗い場に入って来たその男が、三吉と武夫が浸かっていた湯船に入ると、ぬるい!と言い出したので、三吉は負けじと、熱い!と言いながら水道の蛇口を捻って水を出す。

ある日、富士銀行の入社試験にやって来た平八郎は、先に面接室に入った妻の弘子のことが気になって、ドアの隙間から中を覗こうとしていたが、先に終わった男子学生が中からドアを開けたので頭にぶつけてしまう。

その後、リクルートスーツを着た弘子も出て来たので、面接で聞かれた質問の答え合わせを始める。

「ライカ」って、人工衛星に乗った犬のことよね?と弘子が言うと、カメラか石鹸の名前だと思ったけど…と平八郎は答える。

「ネール」は?と弘子が聞くので、インドの大統領だろう?平八郎が答えると、首相よと弘子が訂正する。

7月14日は?と聞かれた平八郎が、終戦記念日!と答えたので、パリ祭よ!と弘子は訂正する。

じゃあ、10月4日は?と弘子が聞くと、その場にいた別の学生が、人工衛星を打ち上げた日だろう?と答える。

全然正解を答えられなかったことを知った平八郎は、悔し紛れに、じゃあ、11月16日は?と弘子に聞く。

弘子は、11月16日?と考え始め、その場にいた他の就活生たちも、11月16日って何だっけ?と考え始める。

弘子はすぐに気づいたようだったが、君の誕生日だよ。他のことは分からなくても、そういうことは知ってるんだと笑う。

その場にいた学生たちも誘い、今夜、弘子の誕生パーティを開かないかと言うことになったので、お金は大丈夫?と弘子は心配する。

その後、洋裁店で仕事をしていた米子は、誰かが店に来た気配がしたので、どなた?と聞くと、集金です!と言うので、電気?水?と聞き返すと、お祝いをもらいに来ましたと言う平八郎だったことが分かる。

延滞料も含めて頂かないと…などと言うので、奥さんもまだ紹介しないで…と米子が睨むと、弘子ですと平八郎は、店内を見ていた客のような新妻を紹介する。

店の二階に上がった平八郎と弘子は、パチンコの練習やろうと言い出し、指相撲を始めるが、そこにお金を持って来た米子は、まあ、何やってるの?と当てられたので睨みつける。

金の入った封筒を受け取った平八郎は、下から、米子さん!と呼ぶ父親の声が聞こえて来たので、いけない!親父だ!と慌てて逃げ出す。

階段を登って来た三吉は、平八郎夫婦とすれ違ったので、お前たち、何しに来たんだ?と怪しむが、二階にいた米子が、お祝い下さいって!と笑って教える。

ろくな所が似ないね…と苦笑した三吉は、ところで用事って?そこまでアルバイトに来たついでに寄ったんだよと聞くと、おじ様の判子が頂きたいんですと米子は言う。

すると、真顔になった三吉は、もう考える余地はないのかね?と聞き返し、さんざん考えた末なんです…と米子も答え、差し出して見せたのは熊沢伝七との離婚届だった。

ヨーロッパでは、金曜日の結婚すると縁起が悪いと言うけれど、君たちの結婚式も確か金曜日だったね…と三吉は言い、バーナード・ショーが言ったんでしたっけ?と米子も教養がある所を見せる。

日本でも、月月火水木金金と言っていたように、あの頃は金曜日が多かった…、死んだ婆さんは嫁は米子が良いと言ってたんだがな〜…、武夫の奴、あっさり捕虜になっちまって…、あいつも、もう8人も見合いしているとか…、今は9人目が進行中なんだ…と三吉は打ち明ける。

その9人目となる敬子とレストランで会っていた武夫だったが、旨そうに料理を食べている敬子に、一緒に映画でも行きませんか?と誘うと、敬子は焦ったように、後15分で人と会わなければいけないの。重大な話で結婚のことなの。私がその人と結婚するの!その人、あなたより、月給が371円だけ高いの。今それだけの違いでも、先に行くと差が出るでしょう?福田さんに宜しく!と言いながら立上がると、さっさと帰ってしまう。

あっけにとられて見送った武夫だったが、ボーイが持って来た請求額の5800円を聞くと、随分喰ったな〜…とがっかりする。

かくして9回目の見合いにも失敗した武夫を慰めようと、屋台のおでん屋に誘った英子は、元気出せよ!と、おでんを皿に盛ってやりながら慰めながらも、目鼻もちゃんとついているし、身体も別に悪くない…、どうしてそんなに女にモテないの?一度医者に診てもらったら?などと辛辣なことを言ったりもする。

その頃、平八郎と弘子夫婦は、自宅に学生仲間を呼んで、弘子の誕生会をやっていた。

平八郎は仲間たちに、国鉄は新婚旅行が半額になるって知ってた?学割でね…などと笑わせ、三吉もやって来て合流すると、箱根ホテルがいかに豪華だったかを弘子と共に話し始める。

もちろん、全部噓だった。

人工衛星の玩具が飾ってあるバーに武夫とやって来た弘子は、メニューを開いて、「ダイモスカクテル」って何?と聞くと、火星の衛星だと言う。

「フェーベ」は?と聞くと土星の衛星と言い、「カリストカクテル」も聞くが、結局「スプートニク」と言うカクテルを注文することにする。

そして、まだ気落ちしている武夫に、忘れろよ、しつこいよ!と励ますが、人工衛星に乗ってみたい…などと武夫が言うので、ダメよ、厭世的になっちゃ…、でも憂鬱だろうね?分かるよ、分かる!といい加減に慰める英子は、今夜はエスカレーターで行こう!と言い出したので、何のこと?と武夫が聞くと、はしごしちゃうよ!と言うことらしかった。

続いて2人が言ったのは、民謡酒場だった。

日本中の男と女の比率知ってる?と武夫が聞いて来たので、1:1.2だって、さっき言ってたじゃないと答えた英子は、くよくよするなよ!踊ろう!と武夫の腕を引き、店内の踊りの輪に加わる。

平八郎たちが歌を歌って盛り上がっている自宅に帰って来た武夫は、玄関で暫くしゃがみ込んでいたが、思わず、うるさい!と学生たちに怒鳴りつけてしまう。

どうしたんだろう?と三吉が案じ、9回目もダメね…、あれじゃ延長戦ね…と弘子が察する。

あれだけ飲めれば大したことないと言った三吉は、武夫の部屋を覘きに行くと、どうした?武夫…と声をかける。

分かっとるよ…と三吉がなだめると、すみません、怒鳴るつもりはなかったんです…と武夫は詫びる。

考えてみたら、お前の学生時代は、あんなに騒ぐことなどなかった…、母さんが生きとったら、お前に嫁探しまでさせはせんだった…と三吉が同情すると、延長戦ですと武夫が答えたので、何だ、聞いとったのか…と三吉は笑う。

英子の方も泥酔して、姉の洋裁店に帰って来たので、何かあったの?と米子が聞くと、5000円札使っちゃった…と英子は言う。

そんなことは良いから、誰と一緒だったの?豊根子が聞くと、16番目!全然可哀想なんだ!お嫁さんになってあげようかな…、武夫さんよなどと言いながら、英子がベッドに潜り込んだので、えっ!武夫さん?と米子は驚く。

ああ言う手もあるんだわね。同情させて…などと英子は言いながら眠ろうとするので、今まで付き合ってたの?前から好きだったの?まだ話してないの?と聞きながら、米子は持って来たコップの水を飲ませる。

それを飲みながら、英子…、武夫さんのこと、愛してもいないし、愛してなくもない…、何だかほんわかして来たのなどと英子は言うだけで寝入ってしまったので、しょうがない人ね…と米子は呆れる。

翌朝、武夫の家にやって来た英子は、庭先でたき火を仕掛けていた三吉を見つけ、武夫さん、どうしてる?と聞くと、もう学校に行ったよと言う。

英子が、今年しぁ豊年だよ〜♪と口笛で吹き始めると、良いもの見せてやろうかと、三吉が焼きかけた紙を差し出して来る。

ラブレターだ、傑作だよと言うので、英子が読んでみると、優しいあなた…、遠くに離れていても、空に瞬く星のように私を見つめてくれます…などと甘い文言が書かれていたので、平八郎さん?と聞くと、武夫に来たんだ。戦地にいる時、もらったらしいよと言う。

驚いちゃいかんよ。書いたのは…、君の姉さんだと三吉は打ち明ける。

その日、授業を終えた武夫は、一人教室に残っていた女学生から、お話があるんですけどと言われる。

恋愛による苦悩は胃潰瘍の原因になるっておっしゃったけど、先生みたいに魅力的な方が、結婚できないのは変だってみんな言ってますのよと言うので、僕も結婚相手を捜しているんだと武夫は真剣に答えるが、私、次のレッスンの練習をしていただけなの。ごめん遊ばせ!と言われてしまう。

教室の外では、他の女学生も教室の中の様子をうかがっており、完全にからかわれていたのだった。

一方、出版社の編集部に戻って来た英子に、おヒロ一緒に食べない?と福田が誘って来たので、食べたくない。口説いてもダメよ、今日は!と英子は先に断る。

良いじゃないのさ!とそれでも福田は誘い、レストランに来るが、英子は三杯目のコップの水を福田に勧めながら、今日は日が悪かったわね。他に好きな人がいたら諦めるって言ったじゃないと言い聞かせていた。

それを聞いた福田は、そうかな…、ダメなのかね…としょげ返る。

あんたなんか、良い家のお坊ちゃんなんだから…と英子は慰めるが、あんただけなの、ワイフにしたいのは…と福田は訴える。

もう少し待ってね、その内、出来ないこともないかも知れないから…などと英子はごまかし、一緒に店の外に出る。

その時、英子に、もしもし、そこのあなた!と声をかけて来たのは易者(伊藤雄之助)だった。

何か悩みがあるようだな?と言う易者は、英子の手のひらをみると、相手は年上の男性!顔は端正、頭は明晰だろう?などと言うので、まあ、そんな所かな?と英子は答えるが、あなたの愛人はあなたの目を盗んで浮気をしてるなどと易者は言うので、違うようよと洋子は答える。

次に、福田の手相を見た易者は、これは太閤秀吉と同じだ。違うのは、対抗はまっすぐ伸びていたこの線は、こっちに伸びているなどと言いながら英子の方を指したので、嘘つき!と福田はバカにするが、あんたは良き父親になる。あんた方は将来良い夫婦になるなどと易者は言うので、ちょっと気を良くした福田は英子と一緒に帰って行く。

易者は、そんな二人に、見料寄越せよ!と呼びかけるが、もう二人は立ち去っていたので、運の良い奴等が…と易者はぼやく。

帰宅した武夫は、弘子に手紙が来てたよと渡す。

それは、銀行の採用試験の結果通知だった。

開封してみると、弘子は受かったと書かれていたが、平八郎の方は不採用だったらしく、不満そうに、お前も辞めちゃえよなどと言って来る。

それでも弘子は、私だけでも就職できたんだからお祝いしましょうよ。私たち、卒業後は独立したいんでしょう?と言うと、このオタンコナス!などと言いながら平八郎は弘子を突き飛ばす。

怒った弘子がキャベツを手にすると、投げてみろよ!と平八郎が挑発して来たので、とうとう弘子はキャベツを投げつける。

キッチンの物音に気づき、何ごとかと様子を観に来た武夫は、弘子に長ネギを投げ返している平八郎の姿を見つける。

人が銀行おっこった気持ちも分からないで!出て行け!などと平八郎は興奮しており、弘子は勝手口から出ようとしていた。

外は雨が降って来たので、弘ちゃん、降って来たぜ…と武夫は止めようとするが、平八郎は、おい、傘あるぜと言いながら手渡したので、弘子はそれを持って出て行ってしまう。

良いのかお前、と、ふて寝した平八郎に武夫が聞くと、良いんだよ、あんな奴…と平八郎はふて腐れている。

本当に良いのか?迎えに行ってやれと武夫は言い聞かすが、帰って来なくても良いよなどと平八郎が言うので、本当か?と再確認した武夫は、そう言えば、大した女房じゃないな…、このままいなくなった方が良いのかも知れんな…、荷物は明日にでも送り出そう。荷物があると、離婚の時に面倒になるなどとわざと言う。

すると、そんなに悪い奴かな…と戸惑いながら起き上がった平八郎は、兄さん、女性に対する余裕が出来て来たね。見合いして来たから…などと言うので、早く迎えに行ってやれと武夫は言い聞かす。

暗い夜道を商店街の方へ向かった平八郎は、魚屋の前で佇んでいる弘子に出会ったので、何してるんだ?と声をかけると、夕食、何にしようか…と考えており、シャケの切り身4つ!と注文する。

買物を終えた弘子は、お父さんの所に、傘を届けましょうか?と心配するが、もう止んでるよ、帰ろうと平八郎は言う。

その頃、三吉は、銭湯の女将と相合い傘で帰って来ていた。

そうですか!浪花節はお嫌いですか!と嬉しそうに三吉が確認すると、そうなんですよ、どういう訳か、あれを聞くと気持ちが悪くなるんですよ。私はシャンソンが好きで、なくなった主人とパリに行ったことがあるんですよ、15年も前に…と女将が言うので、私も行ってました。懐かしいですな…、ブルゴーニュの森…などと会話が弾んでいた。

家の前で、そんな二人を待ち受けていた弘子は、お二人がキスでもするんじゃないかと思ってましたわとからかって来る。

あら、雨上がってますのねと呟いた女将は、会釈をして帰って行き、三吉は、アデュー!アデュー!と別れを惜しむ。

雨なんかさっきから止んでましたよと弘子が呆れたように教えると、知っとたんだよと三吉が憮然としたように答えたので、思わず笑ってしまう。

家に入った三吉が、武夫はまだ戻らんのか?と聞くと、さっき英子さんから電話があって出て行かれましたわと弘子は教える。

英子が武夫を連れて来たのは、あの易者の所だった。

武夫の手相を見た易者は、君は見合いを9回やっとるねなどと言うので、横で聞いていた英子は、そんなことまで分かるんですか!と驚いてみせる。

この縁談は整わない。別な線じゃよ…、あんたは若い頃恋愛していたと言い、これ以上知りたかったら見料を…と催促したので、英子は、二重取り?と呆れてみせる。

好きな人があったんだろ?あんた、今でもその人が好きなのか?などと易者は武夫に詰め寄るが、もう良いわと横から止めた英子は、行きましょう!と武夫を連れて去って行く。

そして、お店でも行く?姉さん、今頃どうしているだろ…?気になる?などと、英子はわざとらしく武夫に話しかける。

武夫は、伝さん、そろそろ船に乗る頃だろう…と武夫は答える。

その伝七は、米子の洋裁店に花を持って来ていた。

ちょうど花屋の前を通ったので…と伝七は言うが、私がこの花好きなの、覚えていてくれたのね…と米子は感激する。

出発は、この25日…、船団が横須賀に来るんだと伝えた伝七は、米子が入れていたコーヒーの砂糖を、もう一杯と頼んでいた。

変わったんだよ、甘いものが好きになった…。半年間船の上では甘いものが食べられないからだろう。

南氷洋のもっと先に行く…、そう言い残した伝七がすぐに帰ろうとするので、その背中を見た米子は、あら、凄いフケ…と言いながら、上着の背中を払ってやるが、船出のお見送りしないわよと寂し気に告げる。

25日の横須賀港

埠頭に集まった大勢の見送り人に見送られ、出航する捕鯨船の船上に伝七の姿もあった。

第二日新丸を始め、大洋漁業の船が出港しました!捕鯨日本の名も高らかに…と告げるラジオニュースを、米子は店の二階で聞いていた。

そこに英子がやって来る。

兄さんが船乗りじゃなかったら、姉さん、別れなかったかも知れないわね…と英子が話しかけると、そんなことないわ、性格上のものよ…と米子は答える。

姉さん、これからずっと1人?妹として聞いておかなくちゃ…と英子が聞くと、当分1人でいるわよと米子が答えたので、困ったな…、英子、ミスしちゃったかな?姉さんに会わせたい人連れて来たのと言い出した英子は、遠い〜遠い〜日の頃〜♪と歌い始める。

あなたは私の思い出をみんな持っていらしたのね?遠く離れていても、空の星のように私を見ていて下さるのね、ラララ〜♪と英子が歌を挟みながら米子のラブレターを読み出したので、英ちゃん、そんなものどこから見つけて来たの?と米子は驚く。

森永の球形広告塔が間近に見えるビルの屋上に米子を連れて来た英子は、お〜い!お待ちどう!10人目のお見合いの相手を連れて来たわよ!と呼びかける。

それを聞いて驚いたのは、待っていた武夫と、連れて来られた米子だった。

姉さん、好きだったんでしょう?と米子に話しかけた英子は、でもあなた…と言いかけた姉に、私には16番目がいるの!武夫さんも姉さんが好きなのよ。2人でこの手紙でも及び遊ばせ!と言いながら、持って来たラブレターを放り投げた英子は、バイバイ!と言って去って行く。

武夫は驚いたように、屋上に散らばったラブレターを拾い集めて行く。

最期の一枚が見当たらなかったが、小さな女の子が持っていたので、こら!と言いながら取り戻す。

口笛を吹きながら帰る英子はどこか寂し気だった。

米子は武夫に、この手紙覚えている?でも今の私はそんな心境じゃないわ。もう少し経たなくちゃ…と伝えると、武夫も、分かるよ…と答える。

米子は持っていた風船を空に放すと、どっか行きましょう?と武夫を誘う。

外階段を降り出した米子が、2人だけで遊ぶのどれくらいかしら?と聞くと、12年5ヶ月と3日半!さっきから計算してたんだと武夫は即答する。

その後、英子は福田を連れて、あの易者の元へやって来ていた。

福田の手相を見た易者は、えらく変わっとる!縁談すぐ近くだな。相手はすぐ近くにいる。3m以内などと言い出したので、福田はきょとんとなる。

案外近くにいるかも知れないな、運命線が一方に伸びとると言いながら英子の方を指すと、あんたがこのご婦人の運命線だと断定する。

それを聞いていた英子は、そう出てるんじゃ仕方ないわね〜…、しようがないわよ、運命だもの…と言うので、驚いた福田は嬉しそうに微笑むと、お父さんに紹介したいんだ!と言いながら、英子を連れ去って行く。

残った易者は、ああいう風に運命を先に教えてもらえればいつでも当たるんだ…と呟きながら、今受け取った札束を天眼鏡で覗き込み、こら本物だ!と嬉しそうに笑う。

タイトルと終の文字


 

 

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