白夜館

 

 

 

幻想館

 

ビッグゲーム 大統領と少年ハンター

一見、ハリウッド映画に良くある大統領襲撃ものとかエアフォースワンもののようだが、これはフィンランドやイギリス、ドイツが手を組んだヨーロッパ映画のようだ。

伝統行事としての狩りを単独で行おうとしていた少年の一夜の成長物語と大統領襲撃ものが巧くミックスされている。

善くも悪くも「ハリウッド映画ってこんな感じだよね」と考えた外国人が作っているような印象で、ご都合主義も含めて全体的にパターン通り…と言うか、それにしてはクライマックスはやや迫力不足かな?と感じないでもないが、それなりの予算にしては手堅くまとめてあると思う。

ただし、サミュエル・L・ジャクソン以外は、あまり馴染みのないキャスティングなので、興行的には不利かもしれない。

いわゆる可愛い子役タイプではないオスカリ役の子の個性が妙に印象に残る。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

2015年、フィンランド+イギリス+ドイツ映画、ヤルマリ・ヘランダー脚本+監督作品。

部屋に入ってきたのは、ひげを蓄えた父親のタピオと息子のオスカリ(オンニ・トンミラ)だった。

その部屋の壁にかかっていたのは、過去、13才の誕生日に山で獲物を仕留めて一人前になった漁師たちの写真だった。

知っている者はいるか?と父親から聞かれたオスカリは、いるよ、父さんだ!と一枚の写真を見る。

そこには、今日の自分と同じ13才になった若き日の父親が大きな熊の頭部を背中に背負って、弓を片手に得意げに岩の上に立っている姿だった。

お前も13才だ。伝統を引き継ぐんだ。山に入ったら、頭を使わず身体を動かすんだと父親は言い聞かす。

僕の写真も飾られるの?とオスカリが聞くと、お前1人だと父親は言い、部屋を出ようとしたので、オスカリはもう少しいて良い?と聞き、父親が出て行った後、部屋に1人残ると、父親の写真を壁から外し、じっくり見る。

そこには、タピオ 1968年と書かれていた。

山の空撮を背景にキャストロール

山道を進む車両隊

タピオの運転する車に乗っていたオスカリは、カセットテープから聞こえて来る初心者狩猟者向けガイドをヘッドホンで聴いていた。

ヘッドホンを外したオスカリは、父親にシカの鳴きまねをしてみせる。

タピオはそんなオスカリに地図を手渡す。

そこには赤い印がついており、タピオは、2人の秘密だ。そこにはヘラジカの大物がいる。夜明けを待て!風下にいろ!日が変わったらいよいよ狩りの始まりだ!とオスカリに言い聞かせる。

タイトル

フィンランド北部

地元の猟師仲間たちが乗った車両が集まった岩場の上には長老が猟銃を片手に立っていた。

それを合図に、オスカリはトラクターに股がってエンジンをかけようとするが、何故か車は動かない。

見かねたタピオは、トラクターの燃料コックを開けと教える。

トラクターは動き出し、ヘラジカの角が飾られていた岩場に来ると、そこに置いてあった弓を手に取り、弦を引こうとするが、力が弱くて思うように引けない。

側からその様子を観ていたタピオも長老も、見ていられないと言う表情になる。

オスカリ、諦めな!と声をかけた長老は連れて帰れとタピオを説得する。

これまでにも帰った者はいると長老が言うので、誰だ?とタピオが聞くと、クーシストの子だ、車椅子じゃ無理だと長老は説明し、皆の前で恥をかかせるなとタピオに言い聞かす。

しかしタピオは、熊を倒した俺が鍛えたんだぞ!と言うことを聞かない。

森の中で迷子になっても知らんぞ…と長老は案ずるが、諦めたように分かったと言うとタピオと握手するが、責任は持たんぞと釘を刺すのも忘れなかった。

そして長老は集まった猟師たちを前に、狩人の血を受け継ぐために、先人たちと同じくこの場所に立つ!今から森に入った者は、明朝、ふさわしい獲物を見つけて来る。

それを皆に分け与える!旅立つ時は少年だが、戻ったときは一人前の男だ!と挨拶し、空に向かって猟銃を撃つ。

洗面所の鏡の前で、胸に残った傷を気にしながら薬を飲んだ警備官のモリス(レイ・スティーヴンソン)は、スーツを着てネクタイを締めると、洗面所を出て飛行機の機内に姿を現す。

その飛行機は大統領専用機「エアフォースワン」だった。

モリスは、目覚めて自室内でくつろいで新聞を読んでいたムーア大統領(サミュエル・L・ジャクソン)に会いに行く。

後1時間でヘルシンキですと聞かされたムーア大統領は、又会議か…とうんざりしたように吐き捨てると、私をかばって君は撃たれた。今回の任務で去るとは残念だとモリスに話しかけるが、部屋を出かけたモリスは、人生は短い。好きなものを食べてくださいと言い残していく。

その頃、単身山に登って来たオスカリは、木の根っこにシカの首の皮をかぶせた目印がある場所にやって来る。

そのシカの首を、本物のシカに見立て、矢を放ってみたオスカリだったが、弓は木の根っこに届かなかった。

苛立ったオスカリは、木の根っこのすぐ側まで近づき、ようやく二度目の矢を命中させると、ナイフを取り出し、木の根っこをシカの身体に見立て、その心臓をえぐり出し、動いていた心臓を自ら食べてみせるジェスチャーをすると、空に向かって雄叫びを挙げる。

ラップランドへようこそ!と愛想良く客たちに挨拶したヘリの操縦士は、ハンターグループのリーダーとして乗り込んでいたハザル(マフメット・クルトゥルス)から、禁漁区に無理矢理降りろと命じられる。

着陸したヘリから降り立ったハザルは、部下が用意したチェアに腰を降ろすと、双眼鏡のようなものを覗き始めたので、それは双眼鏡か?よ横に立って見ていた操縦士が聞くと、目標補足システムだとハザムは答え、その横では部下たちが持って来たケースを開け始める。

そのケースの中に入っていたのは、中国製地対空ミサイルだ。これでここから民間機を撃つ。飛行機にはミサイル探知装置が付いているが、そのシステムが無効になっていたら威力はないとハザルから聞いた操縦士は、あんたらはテロリストか?と唖然とする。

狩猟目的のグループと思い込んでいたからだ。

ハザムは、お前は今から逃げろ、俺たちはお前を殺すつもりだと脅したので、操縦士は半信半疑の表情の中、そろりそろりと走り始め、やがて無我夢中で丘を駈け下る。

その操縦士の姿を目標補足装置で見ていたハザムは、やおら地対空ミサイルを取り出して担ぐと、その場で発射する。

ミサイルは、操縦士が逃げた方角へ飛び、森の中で爆発する。

それを観たハザムは、テスト成功と自分のスマホに打込む。

その頃、そのハザムのいる山の方向に向かっていたエアフォースワンの中では、モリスが暗証カードを使い操縦席に入り、パイロットたちにより一層の安全飛行を願い出た後、外に出た所で、ミサイルに捕捉されたが、回避装置が作動しない!護衛のF-18も捕捉されている!とモニター係が騒ぎ始めたことに気づく。

モリスは乗務員たちに、緊急脱出を指示、スーツに着替え、靴を履きかけていた大統領を脱出カプセルに移動させ、地上でお会いしましょう!と、何ごとかと戸惑う大統領に言葉をかけた後、ハッチを閉めるとカプセルを機外に放出する。

あまりに慌ただしい行動だったので、ムーア大統領は左の靴を部屋に置いたままだった。

モリスは、他の警護官たちにも、カピセルの後を追うように指示。

パラシュートを開いたクレイら警護官が外に飛び出すが、何故かパラシュートは開かなかった。

それに気づいた最後の警護官が機上で騒ぎ出すが、その場でモリスが射殺。

モリス自身はパタシュートを背負い、ゆっくり機外へ身を投げる。

落下するモリスを囲むように地上から複数のミサイルが打ち上げられ、頭上で大爆発が起きる。

地上の山の中をトラクターで進んでいたムスカリは、空から巨大な光が落下して来たことに気づく。

それは、墜落して来たエアフォースワンの機体だったが、その衝撃でムスカリも吹き飛ばされる。

訳も分からず起き上がったムスカリは、周囲の木々が燃えていることに気づく。

ワシントンD.C. 国防総省

エアフォースワンの脱出プロトコルが作動したと、CIAの情報部門長ハーバー(フェリシティ・ハフマン)が慌てた様子で連絡に来る。

36分前に振動をキャッチ、大統領期と護衛機が一挙に姿を消した。9.11以後最大のテロです!との報告を受けた作戦本部内では、単なる事故だろうと最初はたかをくくっていたが、5機同時に消息を絶つなど到底考えられないことに気づく。

サンドイッチを食べていたメガネの情報分析官ハーバート(ジム・ブロードベント)は、敵はミサイルを使用したはずで、だとすると、その輸送に5~10人は必要になる。防衛システムが作動しなかったのは身内に裏切り者がいると即座に推理すると、ただちに大統領を見つけて連れて帰る!と指示を出す。

その頃、モリスは、パラシュートが木に引っかっていた。

自らベルトを外し、地上に落下したモリスは、心臓の薬を飲むと、無線で、こちらエージェントEM!至急応答せよ!と呼びかけるが、誰も応答がなかったので、全員死んだと確信し、良かったと漏らす。

そして、別の番号を呼び出すと、大統領は地上だ。作戦遂行とメール送信する。

オスカリは、森の中に落ちていた緊急脱出カプセルに怖々近づいていた。

カプセルをノックしてみると、中から叩き返す音がしたので、驚いて飛び退くオスカリ。

やがて、ドアの曇ったダラス窓に、中の誰かが指で「1492↓」と書いたので、オスカリはその←の方角にあったドアの暗証番号ボタンをその数字通りに押してみると、ドアが開く。

救助が車で中でお待ち下さいと女性の声のガイドが聞こえる中、ムーア大統領は地上に出るが、左足は靴下のままだった。

照明灯を焚いて周囲を見回したムーアだったが、周囲には誰の姿もなかったので、姿を見せてくれ!と呼びかける。

すると、ムーアの足下に紙コップが落ちて来たので、何ごとかと拾い上げてみると、そのコップの底には糸が付いており、糸電話のようだったので耳に当ててみる。

「テスト123…」などと言う声が聞こえたので、誰かね?何語なんだ?出て来てくれないか?と苛立ったようにムーアは答える。

何と言う惑星から来たんだと聞こえたので、地球だよと呆れて答えたムーアは、子供か?と問いかける。

平和の使者か?などと聞いて来たので、呆れながらも、そうだ…と説明しようとしたムーアだったが、その途端糸が切れてしまう。

出て来てくれないか!と再度、漆黒の森の中に呼びかけてみると、弓を構えたオスカリが用心深そうに姿を現す。

あんた、誰だ?と弓で狙いながらオスカリが聞いて来たので、私を知らんのか?ウィリアム・アラン・ムーア、アメリカの大統領だと答えると、証拠を見せろと言うので、仕方なく、自分のスーツの内ポケットに入っていたパスポートを取り出して投げてみせる。

動くな!と制しながら、用心深くそれを拾い上げたオスカリは、中に貼ってある写真と目の前の人物が同一人物であることにようやく納得したようで、怪我は?と聞きながらパスポートを投げて返す。

ムーアは、ない。困っていると呼びかける。

その間も国防総省では、発信装置から脱出ポッドの位置が分かったので、現地に救助隊を送るよう指示する。

ノルウェイのとある農場の庭先では、犬が興奮して吼えており、家の中から出て来た農民が、庭に穴が出来ていた落下物を、恐る恐る鋤の先で持ち上げてみる。

それは、脱出ポッドの発信装置だった。

怪訝そうな農民は、突然頭上から照明を当てられたので唖然とする。

駆けつけた救助隊のヘリだった。

照明で地上を照らしながら、チヌーク1!発信器は脱出ポッドから外れたようで、現場にポッドはない!と、ヘリの救助隊は国防総省に連絡する。

作戦本部では、この報告に落胆した陸軍大将(テッド・レヴィン)がヘリに戻るよう指示を出す。

副大統領(ヴィクター・ガーバー)はこの顛末に苛立ち、早くこの問題を解決しろ!と陸軍大将に命じる。

森の中の脱出カプセルの前で待っていたモリスの背後に、頭上からロープが数本垂れ下がり、それを伝って、ハザルたちテロリストグループが降りて来る。

国防総省内の作戦本部では、情報分析官ハーバートが、敵の目的は大統領暗殺だろうか?と想像を口にしていた。

その頃、カピセルの前に立ったハザルは、これ以上のビッグゲームはない!と愉快そうに宣言していた。

国防総省内で、情報部門長が、大統領を人質にして要求を突きつける気ね!と推理していた。

脱出ポッドの前では、テロリストたちが写真撮影用の照明を設置し、ハザルがドアを開けてみるが、中には大統領はいなかった。

その頃、森の中でムーア大統領を連れて歩いていたオスカリは、僕がいなければ、この森で生きる可能性はゼロだなどと自慢げに説明していたので、ムーアが何から守る?と聞くと、クマだとオスカリは教える。

経験はあるのか?とムーアが聞くと、ないけど、父さんは倒したとオスカリが答えたので、ムーアは気を利かし、立派な父親らしいとお世辞を言い、名前を聞くと、父はタピオ、自分はオスカリと答える。

ムーアは、ビルと呼んでくれと話しかけるが、大統領の方が良いと言うオスカリは、自分のことはレンジャーと呼んでくれと注文をつける。

ムスカリのトラクターの場所に来たムーアは喜び、自ら運転席に座ると、近くの町は?と聞くが、首を振ったムスカリは教えないと言い、僕には任務がある。今日、誕生日なんだ。降りて!森は大きい。あなたは迷子になると忠告する。

ここは僕の森だ。僕に従って!後ろに乗って!とムーアに指示したオスカリは、自分が運転席に乗りエンジンの燃料コックを開くと、フィンランドへようこそ!大統領!と挨拶し、毛布を後の荷車に乗ったムーアに投げて渡すと出発する。

その頃、脱出カプセルの周辺を調べていたモリスは、小さな靴の誰かが大統領を助けた…と呟いたので、イウォークか?とハザルは冗談で返す。

モリスは、そんなハザルに向き合うと、俺の心臓の側には破片が残っている。いつ死ぬか分からん。俺がくたばる前に送金しろ!と指示する。

アメリカの救援部隊のことが気になるハザルは、アメリカはいつ気づく?と聞くと、夜明け前までは追って来ないとモリスは答える。

国防総省では、ここ数日、フィンランド北部にいる可能性のある外国人を検索し、狩猟グループがあることに気づく。

ハーバートはライブ映像が見たいと言い出し、ロシアの監視衛星をフィンランドに向かわせ、その映像を本部内のモニターに流す準備をさせる。

夜の森の中を進んでいたオスカリは、父からもらった地図の赤いばってん印の位置を確認し、ここだ!僕と父さんの秘密だよ。狩りに最高の場所さ。ここでキャンプだとムーアに説明しながら、ある高台に降り立つ。

事情を知らないムーアは唖然としながらも、ムスカリの指示通り、その場で火を焚き、ソーセージを焼いて一緒に食べることにする。

力を持っているって、どんな感じ?とムスカリが聞くと、力は短命、今じゃ、ピザも頼めないとムーアは冗談めかして答え、何故そんな質問を?と逆に問いかける。

父さんは力がある。父さんを知らない?タピオって言うんだけどとオスカリが言うので、すまんが聞き覚えがないと正直にムーアが答えると、狩りを知らないからだと不満そうに言いながら、オスカリは、壁から剥がして持って来た父の13才の時の写真をムーアに見せる。

13才になると森に送られるんだとオスカリが説明すると、今回は君の番か?とムーアも少し理解し始める。

明日僕は男になる!戻ったら僕も一人前だ!この国では力がないと相手にされないとムスカリが言うので、強く見えることが大事なんだとムーアが言い添える。

どういうこと?とオスカリが不思議がると、一般教書演説をやる前、小便がしたくなり、トイレに行ったんだが、少し漏らしてしまった。

ズボンの前は濡れているが、宣言しない訳にいかない。

それで、原稿で前を隠しながら壇上に向い、宣言を読み上げたんだが、その時にはもう心も手も震えていなかった。

でも内心はビビっていた。小便をちびった大統領なんて呼ばれるんじゃないかと恐れたんだ。

外見上は自信に満ちあふれていた。

結局、誰にも気づかれずことは終わった…、この秘密を世界中で知っているのは2人だけだ。秘密守れるか?とムーアは話し終える。

オスカリは苦笑しながら、口にチャックをする真似をし、その手をたき火の火の中に棄てるジェスチャーをしてみせる。

翌朝、毛布に包まって寝入っていたムーアは、側から異様な声を聞き驚いて目覚める。

それは、先に起きたオスカリのシカの鳴きまねだった。

起き上がったムーアは、そんなオスカリに、誕生日おめでとう!と声をかける。

先に出発したオスカリは、大統領のものらしい靴の片方を見つけたので、今日はついてるね!とムーアに声をかける。

その後も、オスカリは鹿の鳴き声をしてみるが、それに気づいたのはモリスとハザルたちだった。

ある場所にやって来たオスカリは、不思議なものを発見する。

作動しているコンプレッサの付いた大きなアイスボックスだった。

ボックスの蓋を開けてみると、矢の突き刺さった鹿の首が入っており、その矢には手紙が付いていたので、拡げて読んでみると、「誕生日おめでとう 父より」と書かれてあった。

タピオが、どうせオスカリには獲物は捕れないだろうと案じ、前もって用意しておいてくれた獲物だと分かる。

その頃、ムーア大統領は、近くの岩に叩き付けられ死亡していた護衛官たちを発見していた。

パラシュートを調べてみると、開かないようにヒモに細工が施されていた。

フと気がつくと、昨夜自分たちがキャンプをしていた場所にモリスたちがやって来ていたので、ムーアは思わず岩陰に隠れる。

モリスはたき火跡に残っていたパックジュースの空箱を見つけ、小さな靴を見つけたぞ、ヘリを呼べ!とハザルに命じる。

ムーアはそっとオスカリの所にやって来るが、何故かオスカリは泣いており、1人にしてくれと言う。

僕のためにシカを…と言いながら、オスカリが渡した手紙を読んだムーアは薄々事情を察する。

僕は役立たずだ…と、父親にも信用されていなかった自分をオスカリは恥じていた。

気持ちは分かる…と慰めたムーアは、これを受け取ってくれと言うと、星条旗柄のバッジをオスカリに付けてやり、君が私を見つけて守った証しだと伝える。

さらにムーアは、飛行機墜落は事故じゃない。犯人が私を探している。ここからは別行動だと言い聞かせるが、でも大統領は?とオスカリは心配そうに聞く。

自分で守る!とムーアは答えるが、そんな2人の場所に、モリスが近づいて来る。

心臓の薬を取り出して飲みながら、モリスは、ハザル!見つけたぞ!と下の方へ声をかける。

そして、イォーク、とっとと失せろ!とオスカリに呼びかけるが、オスカリは果敢にも弓を引いて来る。

大統領、逃げて!とオスカルはムーアに呼びかけるが、オスカルが放った矢はモリスには届かなかった。

ムーアは、先ほど、墜落死した護衛官が持っていた機関銃を撃とうとするが、引き金を引いても弾は出なかった。

その機関銃を奪い取ったモリスは、撃つ前にボルトを引くんだ!と、銃の扱いに疎いムーアをバカにすると、弾をあらぬ方向に撃ち尽くす。

何故こんなことをする?とムーアが聞くと、殴ってみろ!とモリスは威嚇して来る。

ムーアは、側にいたオスカリの目を気にしながらも、モリスを殴るが、モリスはその何杯もの力でムーアを殴り返して来たので、堪り兼ねたムーアはその場で倒れ込んでしまう。

モリスは、いつまでもその場に残っていたオスカリの頬を殴りつける。

鼻血を出したオスカリは、すごすごとその場を離れて行く。

その頃、国防総省内では、ロシアの監視衛星映像を見ており、国籍不明のヘリが大統領失踪地域を飛んでいるのを発見する。

拡大した所、モリスに殴られ、山の中で倒れていたムーアの姿を発見する。

テロリストたちのヘリが、そのモリスとムーアがいた場所に着陸する。

そのヘリから降り立ったハザルの映像を見たハーバードは、アラブの石油王の息子でサイコですと直ちに判読する。

そのハザルは、倒れていたムーアを引き起こすと、部下に自分とのツーショット写真をその場で撮らせる。

その後、ハザルは、横に置いてあったフリーザーを見つけると、嬉しそうに、人間の死体の扱い方を習ったが、剥製にするには死体は新鮮さが重要だと言い、俺は金持ちだ。1000万ドルを送金したとモリスに伝えると、ムーアには箱に入れと命じる。

やむを得ず、ムーアがフリーザーの中に入ると、ハザルが蓋を閉めてしまう。

国防総省の中では、陸軍大将が、救援ヘリの到着は30分後ですと副大統領に報告していた。

父が遺してくれたシカの頭を背中に背負い、鼻血を出したオスカリは、じっと父タピオの写真を見つめていた。

オスカリは、背負っていたシカの頭をその場に棄てる。

国防総省内のモニターを見ていた副大統領たちは、あれは何だ!と驚いていた。

ヘリが吊り上げたフリーザーを前に、崖の上に立っていたオスカリだった。

自ら戦って勝ち取るんだ!そう決意したオスカリは、崖から大きくジャンプすると、ヘリがワイヤーで持ち上げていたフリーザーボックスに飛び移る。

ふたを開けられたムーアは、そこにオスカリが載っていることに気づき驚く。

森は与えてくれた!熊取も大きな獲物を!あなただ!大統領!とオスカリはムーアに語りかける。

ヘリに乗っていたハザルは、いきなりヘリの動きが遅くなったので、招からざる客だ。森に戻してやれ。たたき落すんだ!とパイロットに命じる。

ムーアは、レンジャー!無理するな!とオスカリに呼びかけるが、オスカリは勇敢にもボックスにしがみついたまま、ヘリが低空飛行を始める。

やがて、森の中に振り落とされたオスカリだったが、ボックスの中の大統領に飛び降りて!と声をかける。

しかし、ムーアに地上に飛び降りる勇気はなかった。

ヘリに乗っていたモリスは、撃て!と命じ、森の中にいたオスカリ目がけて機銃掃射を浴びせる。

それでもオスカリは、斜めに倒れていた木を駆け上がり、ヘリに持ち上げられていたフリーザーボックスに再度飛びつく。

フリーザーの中に飛び込んだオスカリは、蓋を閉めて!とムーアに頼む。

私は、地上最高軍の司令官だぞ…、しかし誰も来ない…とムーアは自嘲気味にため息をつく。

本当に強くならないと…とオスカリがムーアに言い聞かす。

ヘリからフリーザーボックス目がけて撃って来たので、強くなるってこれからさと言うと、オスカリは、ボックスをヘリが持ち上げているヒモをナイフで切断する。

フリーザーは地上に落下し、崖を転がりながら落ち始める。

その映像を国防総省内で見ていたハーバーとは、何をしてるんだ?と唖然とする。

フリーザーボックスは崖から落下し、下の谷川に落ちて流される。

やがて、フリーザーボックスは湖面に浮かび上がったので、そっと蓋を開けたムーアとオスカリは周囲の様子をうかがう。

周囲の水面には魚が浮かんでおり、すぐ側に見えたのは、大きな尾翼、墜落したエアフォーズワンであった。

墜落現場見つけました!と国防総省内のモニターを観ていたハーバートが告げるが、そのハーバートが周囲に気づかれぬようにそっとスマホを打ち始めたことに副大統領は気づく。

モリスたちのヘリが近づいて来たので、湖に飛び込んだオスカリとムーアは、水没していたエアフォースワンの中に入り込む。

ハーバーとは湖中の様子を見るために、モニター画像を熱感知映像に切り替えるように指示する。

機内に何とか侵入できたムーアは、二階へオスカリを上がらせ、ここで軍を待とう。君を父の元へ送ると約束する。

その時、天井から何か物音が聞こえて来たので、ムーアは嫌な予感がすると呟くが、次の瞬間、天井部分を焼き取って穴が出来ると、そこからハザルが降りて来る。

ムーアとオスカリは、今天井を爆破した衝撃で吹き飛ばされ気絶していた。

殺すしかなくなった…、当初は七日後に殺す予定だったんだが…と、先に気づいたムーアに話しかけたハザルは、私は敵ではないと弁解しながら、持ち込んだ時限爆弾のタイマーを押す。

どういう意味だ?とムーアが聞くと、いきなり取り出したナイフでハザルは襲いかかって来る。

ナイフを何とか避けたムーアだったが、ハザルは執拗に殴り掛かって来て、近くにあったワイヤーでムーアの首を絞めて来る。

その時、ハザルの頭を、金属ボウルのようなもので殴りつけたのは、気がついたオスカリだった。

不意を討たれ、思わず倒れたハザルだったが、近くに落ちていた機銃を拾い上げ、引き金を引くが弾が出ない。

そのハザルの手から機銃を奪い取ったムーア大統領は、ボルトを引け!と言いながら、安全装置を引くと、ハザルに機銃掃射を浴びせる。

ハザルは即死したが、湖の上にホバリングしていたヘリからモリスが撃って来る。

機体が爆発するから早く脱出しろ!と、同乗していたテロリストたちに命じるが、ハザルを待つと言って抵抗したので、モリスはその場で、操縦士以外のテロリストたちを射殺して行く。

その時、エアフォースワンの機内で操縦席の脱出装置に乗ったムーアとオスカリが、スイッチを押して湖上高く飛び上がる。

操縦席からパラシュートが開き、ゆっくり降りて来る中、オスカリハ全身の力を込めて矢を放つ。

その矢は、ヘリの側面にぶら下がっていたモリスの胸に命中するが、力はなく、傷を付けることもなく落ちる。

蚊にでも刺されたくらいの表情でそれを笑ったモリスだったが、次の瞬間、心臓の発作を起こし、苦しさのあまり、ヘリから手を離し落下して行く。

そのモリスの身体を包み込むように、湖中に沈んでいたエアフォースワンが大爆発を起こす。

昨日、オスカリを見送った場所で、車に乗ってオスカリの帰りを待っていたタピオと長老は、突然降って来た雨の中、魚や人の腕らしきものがボンネットに落ちて来たので唖然とする。

そうなっているんだ?とタピオは呟くが、次の瞬間、窓ガラスをノックされたので振り向くと、そこには機銃をこちらに向けた特殊部隊らしき武装軍人がいた。

その場にいた他の猟師たちも、同じ武装軍人たちに全員車の外に引きずり出され、手を頭の後に組まされ整列させられる。

その救出舞台からの連絡を国防総省内で受けたハーバーとは、副大統領に就任宣言をと勧める。

副大統領は不本意そうに、紙と我が国のために…と宣言をし始める。

特殊部隊は、遺体を探します!と国防総省に連絡していたが、その時、空から降りて来たパラシュート付きの操縦席を猟師たちが見つける。

昨日、オスカリが弓を引けなかった出発地点に降り立った脱出装置を唖然として見守る猟師たちだったが、その出発地点に姿を現したのはオスカリとムーア大統領だった。

その姿を見たタピオは、息子だ!と驚き、近づく。

近づいて来た父を見たオスカリは、父さん、彼はビルだと、横に立っていたムーアを紹介する。

ムーアは、タピオだね?聞いてるよ、立派な息子だ。凄腕なのは君と同じだとオスカリを褒める。

オスカリ、偉いぞ!と父は褒め、握手をする。

背後では、仲間が持っていた新聞の表紙を飾っていた大統領の写真を見た長老が、目の前にいるのが本物のムーア大統領だと知って唖然としていた。

チーム1より、大統領は無事です!と救援部隊が国防総省に連絡する。

その連絡を受けたハーバートがそっとトイレに向かったので、その後を追った副大統領は、鏡の前でスーツに着替えていたハーバートに、大失敗だなと話しかける。

あんたの就任もな…。ハザルとは15年の付き合いだった…。大統領を殉職にするつもりがヒーローにしてしまったとハーバートは答える。

我々の身は大丈夫か?と副大統領が案ずると、ハザルもモリスも死んだ…、そしてあんたも…と言ったハーバートは、突然副大統領を押したので、後に転んだ副大統領は洗面台の角に後頭部を打ち付け床に転げ落ちる。

質問に答えましょう…と言いながら、洗面台に置いてあったソープ液を手に取ったハーバートは、そのソープ液を即死した副大統領の靴の裏のヘリに塗り付けると、真相は闇の中ですと言い捨てて、トイレを出て行く。

無数のヘリ部隊が大統領の元に飛来して来る様子を背景に、オスカリとムーア大統領は、狩りの出発地点に立ち、写真に収まる。

オスカリには名誉勲章が綾得られた。

猟師たちの勇姿の写真が飾られた壁には、最高の獲物アメリカ大統領を救ったオスカリの写真も飾られていた。


 

 

inserted by FC2 system