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早射ち野郎

日活の無国籍映画…と言うか、日本製西部劇

日本人が日本を舞台として演じているのに、何故か、山の中にある町は西部劇風だし、登場人物たちも皆西部劇風の出で立ちと言うシュールな世界である。

主人公の「エースのジョー」こと鏑木は、ライフルと拳銃を常に持っている風来坊。

拳銃の方は、不法所持として、途中で警官に取り上げられるが、ライフルの方は猟銃扱いなのか、そのまま携帯を許されている。

町の警官も西部劇風なら、町からジープでやって来る刑事たちも、何故か全員西部劇風の出で立ちと言うのが不思議なのだが、そう言うナンセンスさ、「西部劇ごっこ」を楽しめなければこの作品自体が楽しめない。

悪役たちも典型的な悪役風に仕立てられており、分かり易いと言ったら、これほど分かり易い勧善懲悪劇もない。

流れ者の風来坊なども、ダム工事で賑わう即製の町ではいそうな感じ。

この映画の主役は、若き日の宍戸錠で、その敵として登場している実弟の郷鍈治は、キャストロールで(新人)と出て来るので、これがデビュー作かと思ったが、調べてみるとデビューはもっと早く、1960年の「強熱の季節」と言う作品らしい。

しかし、この作品ではまだセリフも少なく、いかにも端役の1人と言った印象。

同じように、セリフが少なく、端役に近い印象で出ているのが、若き日の吉永小百合さんなのだが、この当時の小百合さんは天使のように可愛らしい美少女だ。

新人警官を演じている杉山俊夫の恋人役で、町で診療所を営んでいる下條正巳の娘と言う役所だが、正に光り輝くような美しさに驚かされる。

過日、宍戸錠さんの御自宅が全焼した際、吉永さんが支援なさったなどという記事を読んだ時、単に日活の後輩としての間柄だったからかな?と想像していたが、ちゃんと共演なさっていたことを始めて知った。

この当時の小百合さんは、共演した大人たちからさぞ可愛がられただろうと思う。

この作品でのヒロインは、笹森礼子さん演じる戸川令子のような気がするが、出番はそう多くなく、もう1人南田洋子さん演じる踊り子ジェーンもおり、ダブルヒロインのような印象もある。

もう1人印象に残るのは、令子の幼い甥っ子?役の三郎を演じている江木俊夫さんだろう。

とにかく愛らしい坊やで、セリフもちゃんと言えている。

江木俊夫さんと言えば、後のフォーリーブスの1人だが、TVの「マグマ大使」など子役としても活躍しており、小林旭と共演した「大草原の渡り鳥」(1960)や、黒澤明の「天国と地獄」(1963)でも、確かガンマンスタイルの三船敏郎の息子役を演じていたと記憶している。

よそ者に偏見を持つ、嫌な町長を演じている浜村純さんや、善人を装っている悪人を演じている金子信雄さんなど、この和製西部劇ごっこを楽しんでいるように見える。

こういう破天荒な娯楽作品を、今でももっと見たいものである。

▼▼▼▼▼ストーリーを最後まで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、日活、三原貞修原作、山崎巌脚色、野村孝監督作品。

夕日の丘をバックに真っ赤な文字タイトル

その丘を、別の馬を引き馬に乗って歩くカウボーイ姿のシルエット

ダム工事人が集まるとある山の中の西部劇を思わせる町にやって来たカウボーイ姿の男に、何ごとかと街の人々が集まって来る。

男が引っ張って来たもう一匹の馬の上には、怪我をした男が手を縛られ腹這いで乗せられていたからだ。

馬に乗って来た、ひげ面に黒のカウボーイ姿の男は、派出所はどこだい?と集まって来た町民たちに聞くが、その中にいた町長品川安造(浜村純)や、建設会社役員ら街のお偉いさんたちや現場監督庄司(弘松三郎)らは、流れ者の男をうさん臭そうに睨みつけ、自分たちの身分を明かす。

警官に事情を説明したいんだと男が言うので、品川町長は、付いて来なさいと言い、自分たちを先頭に、街の一角にあるダム工事建設事務所にやって来る。

事務所じゃないかと男が不満を漏らすと、ダムが出来るまで、仮の派出所として一部屋借りているんだと言う。

馬を降りたカウボーイ姿の男は、一緒に付いて来た町民たちに、連れて来た馬に乗せた男を降ろしてくれと頼み、事務所の中でチェスをして遊んでいた連中に、警官を呼べよと声をかける。

すると、姿を現したのは、小田(杉山俊夫)と言う新人警官と、その恋人らしい少女真山美佐(吉永小百合)だったので、男は相手の頼りなさに唖然としながらも、山の中で突然撃って来たので、こいつで撃ち返したら、撃って来たこいつが谷に落ちたんだと怪我人を指しながら説明すると、こいつが撃って来た目的はこのバッグを守る為だったんだろうが、これは三日前にこの街から盗まれた給料だろう?と言いながら、札束の詰まったボストンバッグを取り出す。

そして、犯人を捕まえたら賞金20万くれるんだろう?と、賞金稼ぎが書かれたポスターを出して見せる。

カウボーイ姿の男を机に座らせ、名前を小田が聞くと、トランプのスペードのエースを取り出し、エースのジョーって言うのが通り名だなどと答えたので、ふざけるな!と小田は怒り、住所を聞いても、現住所はないなどと言う。

免許証の提示を求めると、鏑木と言う名前が判明したので、名前はあるじゃないか!と小田は、嘗めた態度の鏑木を叱りつける。

そこにやって来た町長や老人たちも、横柄なこと言いやがって!と鏑木に文句を言って来る。

とにかく、すぐには金は払えない。襲撃されたジープの運転手しか顔を見てないからだと小田は言い、崖崩れで道が塞がれたので、街から警官隊が来るのは2日かかると町長たちも説明する。

そんな中、犯人は2人だったはずで、こいつが犯人の仲間じゃないか?等と一緒に付いて来た役員津田(深見泰三)らが言い出したので、犯人自ら金を返しに来るはずないだろう?と鏑木は呆れるが、逃げ切らないと分かったので、ごまかそうとしているのかも知れないなどと疑念を口にする。

鏑木は小田に向い、坊や、こいつらに俺を怒らせないようにしてくれと文句を言うと、銭をもらうまで2日でも3日でも待ちますぜと言い残し、仮派出所を出て行く。

キャバレー「ブルー・スター」の前に差し掛かった鏑木の前に、店の中から飛び出して来た女が二人、人の客を取りやがって!と取っ組み合いのけんかを始めたので、それを止め、俺は生まれつき、けんかは弱いんだなどと2人をなだめ、その店に入ってみる。

カヌンターにやって来た鏑木は、隣で飲んでいた見知らぬ男の酒瓶を勝手に取り上げ飲もうとしたので、先客は文句を言うが、お前さんもダムの工事人とも見えない流れ者だろう?と鏑木は挑発する。

出て行け!とその先客は怒って鏑木につかみ掛かるが、その手を掴んで出て行ってもらおうか?と先客に言葉をかけたのは、店の主人三島(金子信雄)だった。

三島は時々、ああ言う得体の知れない男が来るんですよと鏑木に詫びると、自らの名を名乗る。

そこに、外で情報を聞いたらしいホステスたちが戻って来て、その人、強盗を捕まえた人なんですって!1500万入りのボストンバッグを持って来たんですって!と騒ぎながら鏑木の廻りに集まって来る。

中でも、外でけんかを止められた踊り子ジェーン(南田洋子)は、すっかり鏑木を気に入ったようで、好きっ!と言いながら抱きつく素振りを見せながらも、鏑木のシャツの中に手を突っ込み、金を探ろうとする。

事務所に戻った三島は、そこで待っていた役員中山(山田禅二)から、あんなどこの馬の骨か分からぬ男は信用できん!と鏑木のことを聞かされるが、強盗を捕まえたのなら、街に取って功労者じゃないですかとなだめる。

その夜の「ブルー・スター」は、時ならぬ鏑木人気で盛り上がり、その騒動を聞きつけ、町民たちが何ごとかと店の前まで集まって来るほどだった。

翌日、ダムの工事現場の下流の川で魚を、即製の木の銛で突いて捕っていたのは鏑木だった。

そんな鏑木に玩具の拳銃を突きつけて来たのは、近所に住む少年三郎(江木俊夫)だった。

気配に気づき、一瞬、転がって拳銃を避けようとした鏑木だったが、相手が子供と知ると、素直に手を挙げて降参する。

三郎は銃を突きつけながら近づいて来ると、欲も僕の秘密の場所を荒したな!ただじゃおかないぞ!謝るか?と文句を言って来たので、鏑木が謝ると、じゃあ、お魚の獲り方を教えろ!僕一度も獲ったことないんだと威張るので、お易い御用だ!と笑った鏑木は、三郎に銛打ちの要領を教え始める。

その河原に血相を変えて近づいて来た小田や品川町長たちとすれ違ったのは、子供を連れた分校の戸川令子先生(笹森礼子)で、何ごとかと振り返る。

河原で三郎と魚突きをしていた鏑木の元にやって来た小田や品川町長たちは、側にあった「禁漁区」の看板を指差し、鏑木に厳しく抗議する。

泊まる所がないので、餌くらい自分で獲ってどこが悪い?と鏑木が抗議すると、鏑木に対し偏見を持っている中山が。こんな奴を野放しにする方が悪いなどと言い猟銃を突きつけて来る。

小田も、強盗が誰なのかまだ分からないので、留置所に入っていてもらおうなどと言うので、捕まえて来たのに何故だ!と、中山の猟銃を奪い取り反論する。

そこに、止めて下さいとやって来たのが三郎の叔母でもある戸川先生だったので、そんなにこの男が気に入ったのなら、あんたの家に泊めてやったらどうだい?と中山がからかって来る。

一瞬、言葉を失った令子だったが、お引き受けします!部屋が空いておりますので…と答える。

その言葉に甘え、三郎の家に泊まりに行った鏑木が、良くこんな所に1人で住んでいるね?とヒゲを剃りながら聞くと、私の故郷ですから…、この家も、立ち退きの保証金で、最近亡くなった兄が建てたんです。姉も2年前に亡くなったので、あの子を育てないといけませんから…と、丹羽で遊んでいた三郎を見ながら令子は答える。

それを聞いていた鏑木が、拳銃ごっこが好きな子に悪い子はいないよ。今に立派なタフガイになるぜ、俺みたいな…と笑顔で答えると、ひげ剃り顔を初めて観た令子は、驚いたような嬉しいような顔になる。

その後、鏑木はウクレレを自ら奏で、「10人のインディアン」を三郎に歌って聞かせてやる。

歌い終えた鏑木は、令子に、「ブルー・スター」と言うキャバレーはいつ出来た?と聞く。

半年ほど前よ。三島さんは良い人よ、学校にピアノを寄付してくれたの。派出所までお金を出してくれたりして…。でもあの店にはいかがわしい女たちが出入りしてるので、出入りなさらないでねと令子は答える。

その頃、恋人美佐の家でもある真山診療所に来ていた小田巡査は、鏑木が街に連れて来て、そのまま入院していた小平(上野山功一)の様子を観た後、美佐の父親真山医師(下條正巳)の勧めもあり、美佐に送ってもらい帰ることにしていた。

そんな一瞬の隙を狙い、小平が入院していた病室に侵入して来たのは、「ブルー・スター」で鏑木ともめた男佐伯(溝井哲夫)だった。

人の気配に気づき、ベッドの中で一瞬目覚めた小平は、佐伯の顔を見ると笑顔になるが、次の瞬間、佐伯はいきなり動けない小平に殴り掛かって行く。

翌日、「ブルー・スター」空出て来たジェーンが、子犬に餌をやっている所に鏑木がやって来る。

ジェーンは大喜びで、あんた!と抱きつくが、そこにジープに乗った小田がやって来たので、どうした?と鏑木は聞く。

それどころじゃない!と答えた小田の様子が尋常ではないので、何か大変なことが起きたと悟った鏑木もジープに乗り込み、一緒に真山診療所へ向かう。

その頃、三島の部屋に来ていた佐伯は、三島から甥っ子を見て来いと命じられ、自分の甥を撃つかね?と渋っていた。

すると三島は、今絵がボストンバッグを棄てるから厄介なことになったんだ!と怒鳴りつけ、今度待ちから2500万のボーナスが運ばれて来る。今度こそ成功させるんだ!と言うので、それまで反抗的だった佐伯は、俺も仲間に入れてくれ!と急に下手に出て来る。

だったら、つまらんいざこざを起こさず、様子を見て来いと三島は言い聞かせる。

襲撃された小平の病室に鏑木と一緒に駆けつけて来た小田は、夕べ誰かに鈍器で殴られたらしいと真山医師から聞かされ、もはや助かる見込みはないと知ると、誰がやったんだ!君はどこにいた?と鏑木に聞く。

俺にはアリバイがあるぜと答えた鏑木は、町を当たりな。共犯者がいるってことよと教えてやり、躊躇する小田に、実地を踏まないと出世しないぜと発破をかける。

その時、銃声が聞こえたので、驚いて診療所の玄関を出てみると、玄関前に佐伯が倒れており、その背後に猟銃を持った三島が立っており、窓からあんたを狙っていたんだ。銀行強盗ですよと小田に言うが、小田はその三島に、銃を捨てろと呼びかける。

その時、レストラン「新竹」の店の影から小田を狙っている銃に気づいた鏑木が発砲し、その場に向かうが、既に相手は逃げ去った後だった。

戻って来た鏑木は、廻りを気をつけるんだ!と小田に注意すると、この坊やを借りてくぜ、危なっかしくて見てられねえやと美佐に告げ、小田を連れて行く。

その後、鏑木は、山の中に作った動くドラム缶を的にし、小田に銃の撃ち方を教え始める。

そのことを、仲間たちから聞いた品川町長は驚き呆れる。

好き勝手なことをやっている鏑木に偏見を持つお偉いさん連中は、流れ者を町から追い出しましょう!といきり立つが、道路が貫通するまで待つしかないと品川町長はなだめる。

森の中で拳銃を的に当てるコツを教わった小田だったが、練習を終えると、拳銃不法所持で預かっとこうと言い、今度はこれだと言いながら、早撃ちのコツを教えようとしていた鏑木の銃を受け取る。

その後、一緒に、三島を留置している仮派出所に戻って来た小田は、ソファで寝ている鏑木にそっと毛布をかけてやるが、鏑木が起きていたことに気づくと照れながら、どうして俺をかばってくれたんだ?と聞く。

鏑木は、あんたが死ぬと、賞金をもらえないからさと答え、何故警官になったんだ?と逆に聞いて来る。

親爺が刑事で、ある事件で殉職したんだ。親爺はかっこ良く、いつか親爺のようになれたらと思っていたからさと小田が答えると、自信がつけば良い警官になれるさと鏑木は励まし、一緒にウィスキーで乾杯する。

翌日、2人の男が、「ブルー・スター」にやって来ると、バーテンの佐東(待田京介)が、待ってたぜと声をかける。

仮派出所では、すっかり意気投合した小田と鏑木が、小田が奏でるギターで一緒に歌を歌っていた。

そこにやって来た町長の品川らは、小田くんに用があるんだ、君は座を外してくれと鏑木を追い出すと、何故、あんな男と仲良くしているんだ?意味の命を助けたのは三島さんじゃないか!それをよりによって留置場に入れるなんて!あんな風来坊に銃を教わるとは!と説教をし始める。

一緒に付いて来たお偉いさん連中も、あんたは我々の公僕だろう!と文句を言う。

そんな中、牢に入れられていた三島は、良いんですよ。出る所に出たら、藁市の潔白は証明されるんですから…と鷹揚に笑いながら、町長たちに言葉をかけて来る。

小田も、鏑木さんはあなたたちの言うような人じゃありませんと反論する。

その頃、鏑木は「ブルー・スター」にやって来て、派出所の小田!野田入りで飲みに来たのさと洒落たことを言い、断然タイプだわ!と女たちが集まって来たので、ジェーンが又恋人気取りで割り込んで来て、あんたって素敵ね!と媚を売り、二階が空いてるわよと鏑木を誘う。

その時、バーテンの知り合いらしい2人組の1人が、いきなり背後から、椅子を鏑木の頭に叩き付けて来る。

一瞬、気絶したかに思えた鏑木だったが、すぐに立上がると、ばかやろう!俺の頭は石より固いんだ!と言いながら、殴り掛かって来た2人組とけんかを始める。

やがて鏑木は、持っていたトランプを投げる技を披露すると、相手が取り出した銃を奪い取ってしまい、ハジキってものはそう簡単に振り回すものじゃねねいんだ!どうせ叩けば誇りが出る身体だろう?と威嚇し、2人の流れ者を店から追い出す。

その後、ジェーンと二人で二階へ上がろうとすると、三郎が、ちょっと、おじちゃん!と言いながら店にやって来たので、鏑木は三郎の元へ行ってしまい、ジェーンは悔しがる。

三郎と一緒に店の外に出た鏑木は、そこに令子が来ていることに気づく。

何故、喧嘩なんてなすったの?何故、あんな所へ出入りなさるの?あなたのことについて町で色々噂されているのご存知?あなたを信用した私の立つ瀬がないじゃありませんか!と令子は抗議をして来る。

ご馳走はどうするの?と三郎が聞くと、余計なことを言わなくて良いの!と注意し、犬にやるわと令子が言うので、あの店に出入りするのには訳があるんだ…と言い残し、鏑木が立ち去ってしまったので、三郎は、おじちゃん!と寂し気に呼びかける。

その夜、鏑木は、1人馬に乗って山の中を走り、丘の上から無言で周囲を見渡す。

一方、鏑木を家から追い出す形になってしまった令子は、1人家の中でしょげていた。

翌日、ようやく道路が開通し、町から警察の主任の木村刑事(高原駿雄)が、給料を強盗に奪われた運転手を伴いジープで町にやって来る。

小田巡査と共に、真山診療所に安置されていた小平と佐伯の遺体を襲われた運転手に確認させると、両者とも強盗犯人だとの証言が得られる。

その時、待ってた甲斐があったってものだと言いながらカーテンの背後から鏑木が現れたので、仮派出所で強盗犯逮捕の賞金の20万円が支払われることになる。

金を手にした鏑木は、これさえ手に入れば、こんな町に用はないんだと言いながら、派出所を出て行こうとするが、そこに1台のジープが突っ込んで来たので、鏑木は驚いて飛び退く。

ジープは壁に激突し停まるが、乗っていた検察会社社員原(雪丘恵介)たちは、最初から大怪我をおっていたようで、その場に崩れ落ちる。

派出所から飛び出して来た小田が気づき、部屋の中に運び入れて訳を尋ねると、原は、明々後日のダム工事2周年記念海洋のボーナスを運んで来る途中、ダルマ峠の曲がり道で襲われ、覆面をした2人組に襲撃されたのだと言う。

木村主任は、工藤刑事に本署に電話するよう命じると、仮派出所を捜査本部にすることにする。

その場に来ていた工事会社の連中も、俺たちもやろう!と捜査に協力を申し出る中、牢に入っていた三島も、私も連れてって下さい。実は死んだその二人を観たことがあるんです。2、3日前から家に泊まっており、別々に出て行ったんですが、ある場所で落ち合おうと言ってました。私を連れて行ってくれたらその場所を教えますと申し出る。

小田は、一応、殺人容疑者を出すのはまずいと反対するが、品川町長らが、主任さん、三島さんは小田くんを助けてやったんですよ!罪もない人を捕まえるなんて、人権蹂躙ですよ!と木村刑事に文句を言うので、木村主任は小田に、三島を牢から出すように命じる。

外にいた鏑木は、捜索隊の中に三島が混じっていることに気づくと、釈放して良いのか?と、出て来た小田に聞く。

それを聞いた三島は、あんたにとやかく言われる筋合いはないと鏑木に言い放ち、捜索隊の一向に加わる。

木村主任は工藤刑事に、この男に注意しておけと鏑木のことを命じ、強盗の捜索に出かけて行く。

それを、美佐と共に見送る鏑木は、巧くやってくれると良いが…と、小田の活躍に期待する。

その後、馬に乗って三郎たちを探していた鏑木の元に、郵便配達のジープに乗った三郎が近づいて来て、お手紙!今着いたんだよ!と差し出す。

それを受け取った鏑木は、これを待っていたんだと言いながら、「警視庁」と書かれた手紙の封を開ける。

中から、一枚の写真がこぼれ落ちるが、そこに写っていたのは三島の写真だった。

それを確認した鏑木は、畜生!やっぱりそうだったのか!と悔しがり、三郎に、捜索隊が行った場所を聞くと、この馬やるよと言って、自分が乗っていた馬に三郎を乗せ、馬を叩いて走らせると、坊や〜!良い子になるんだぞ〜!と声をかけ、自分は郵便配達のジープに乗り込み、捜索隊が強盗犯を捜していた河原に向かう。

子供を連れ道を歩いていた令子は、向い側から走って来た馬に乗っているのが三郎と気づき、止めて降ろしてやりながら、鏑木さんは?と聞く。

おじちゃんは、今度は本当にお別れだと言って、この馬をくれて行っちゃったと答えた三郎は泣き出す。

河原にいた小田に、三島は?と鏑木が聞くと、ずらかられたよ!と言うではないか。

町の「ブルー・スター」では、踊子(メリー・真珠)が踊っていた。

カウンターではジェーンが1人トランプ占いをしており、恋人来ると言う卦が出たので喜ぶと、そのカードを横から取り上げたのは鏑木だったので、さらに喜び頬にキスをする。

そこへ、捜索隊が帰って来た!との声が外から聞こえて来る。

鏑木は、バーテンの佐東に、あんたも言ってると思っていたんだがな、三島と一緒にと話しかけ、借金を払いに来たのさ。立つ鳥後を濁さずってね…と言うと、今までつけで飲んで来た酒代を払い、出て行こうとしたので、ジェーンは思わず、私もつれてって!私と生活すると最高だよ!と追いすがろうとする。

しかし、鏑木は、お前は、化粧なしの方がきれいだぜ。男と女は、会えば別れる運命なのさ…、そんなしょっぱい顔をすんなよ!と泣き出しそうなジェーンに告げ、店を後にする。

既に暗くなって来た中、捜索隊が収穫もなく、町に戻って来る。

木村主任は、街道を手配して下さい。強盗犯の1人は重傷ですと、仮派出所内から町の本署に電話をする。

小田が成果を出せなかったことにいら立った木村主任は、今度は自分が指揮を執ると言い出し、品川町長たちは声高に、小田の悪口を言い始める。

1人孤立する小田を見かね、何を言うか!三島を牢から出すよう許可を出したのはあんたたちじゃないか!空威張りばかりして!と抗議したのは真山医師だった。

そんな父と小田と一緒に外に出た美佐は、私、父さんがあんなに言ってくれて嬉しかったわ。もっとファイトを持って!と小田を励ます。

しかし小田は、ファイトだけじゃ自信を持てないんだ…、鏑木さんがいないんじゃ何も出来ないんだ!と自分に非力さを悔しがる。

そこにやって来た令子が、私がいけなかったんですと真山医師に話しかけると、2人はまだ話があるようだから…と、美佐と小田をその場に残し、真山医師は令子と一緒に診療所へ帰ることにする。

三島と鏑木さんには何かあったようなんです。配達人が警視庁からの手紙を鏑木さんに渡したそうですと令子は打ち明けると、あの男は刑事かも知れんね。又来るさ。くよくよせず元気を出したまえ。悩みがあったら来なさい。病気を治すばかりが医者じゃないと真山医師は令子を慰め、診療所の前で別れる。

令子と別れ、玄関先に来た真山医師は、突然、暗がりから出て来た男松井(郷英治)に、先生ですか?付き合ってもらいましょうか?と拳銃を突きつけられる。

翌朝、町長たちを先頭に、再び強盗犯捜索に向かおうとしていた町に、馬に乗って戻って来たのは鏑木だった。

鏑木は荷車を曳いており、その上に横たえられていたのは真山医師の遺体だった。

牧場近くで見つけたんだと鏑木は説明するが、町長たちは鏑木がやったのではないかと怪しむ。

鏑木は冷静に、撃たれた弾の光景と自分が持っているライフルでは違うと説明、小田も遺体を見るとすぐに、レミントンでやったんだなと気づくと、美佐に、あれから、先生が家に帰らないって言ってたね?と確認する。

事態の緊急性を感じた木村主任は、小田に本隊の指揮をとらせ、自分は峠を固める。見つけたら、狼煙を三発揚げるんだと指示を出し、捜策に出かけようとする。

その時、待ちな!と呼びかけた鏑木は、3、4人で行った方が良い。大勢で行くと、かえって相手に余計な警戒をされることがあると小田に忠告する。

その後、山に出かけて行く捜索隊を、三郎ら子供たちが見つけ、手を振る。

一方、1人別行動を取っていた鏑木は、令子と道で遭遇し、診療所の先生を運んで来たとか?と話しかけられる。

実は、バーテンを付けてたんだと話し始めた鏑木は、実は俺の兄貴も殺されたんだと打ち明ける。

5年前、ある男を上げたんだ。俺はその頃、小田のように新米のデカだった。アパートに帰る途中で撃たれた。撃たれたのは俺じゃなく兄貴だった。俺は必死に犯人を捜したが、ファイトだけは一人前でも銃の腕が付いていなかった。

あの時、犯人を捕まえていたら俺は一人前になっていただろう。

三島を観た時、俺はピンと来た。もしやと思って、警視庁に照会してみたんだ。

それを聞いた令子は、ごめんなさい。そんな苦労も知らずに…と謝るが、兵器だった。あんたにだけはいつか言おうと思っていたからと明るく言い放った鏑木は、牧場はこっちの道だったねと確認する。

その時、子供たちが駈けて来て、先生!大変だよ!三郎ちゃんが捜索隊に付いて行っちゃったんだ!犯人を捕まえるんだって!と言うではないか。

それを知った鏑木は、三郎を探しに出かける。

捜索隊の後を、馬に乗って付いて行っていた三郎は、途中でウサギを見つけたので、好奇心に駆られ、その後を追い始める。

その頃、山小屋に隠れていた三島は、店にいる2人に金を渡し、町を出させろとバーテン佐東に命じていた。

佐東が小屋を出ようとした時、迫って来た小田たち捜索隊に気づく。

山小屋に近づいた小田は、木村主任が来るまで様子を見ようと、4、5人の捜索隊に言い聞かせ、草むらに身を潜めさせる。

その様子を山小屋の窓から観ていたバーテンは、応援を呼びに行きやがったな…と悔しがる。

三島は、怪我をして横たわっていた仲間を殴りつけると、こいつがゴジを踏んだものだからこんなことになったんだ!と怒り、裏道から逃げるんだと言い出す。

その頃、三郎を探していた鏑木は、森の中に落ちていた血染めの拳銃を見つける。

どうやら、怪我をした強盗が落として行ったものらしい。

ウサギを追っていた三郎は、山小屋の裏から逃げ出そうとしていた三島たちとばったり遭遇してしまう。

山小屋に近づいた鏑木は、三郎の名を呼ぶが、いきなり、山小屋の影から三島たちが発砲して来たので身を伏せる。

山小屋の方からの銃声に気づいた小田は、仲間たちに見張りを頼み、自分だけ様子を見て来ることにする。

鏑木は、持っていたライフルを撃って応戦するが、すぐに弾切れになったので、弾を詰める間、隠れていた木の上に自分のテンガロンハットを置いて相手の目をくらます。

それに気づかず、帽子を狙って撃っていた三島は、突然間近に出現した鏑木に驚く。

しかし、鏑木は、バーテンの佐東と松井に三郎が掴まっていることに気づく。

銃を棄てろ!と迫られたので、やむなくライフルを置くが、死んでもらおうと言いながら三島が銃を向けて来た時、突然大きな音が鳴り響いたので、一瞬空を見上げる。

それは合図の狼煙を上げた音だった。

その隙に、おじちゃん!と言いながら逃げ出した三郎が鏑木に抱きついて来る。

吉田!年貢の納め時だ!俺を覚えてないか?と鏑木が言うと、しばし、顔を見ていた三島こと吉田が、過去を思い出したかのように驚く。

お前に兄貴を殺された鏑木だ!と叫んだ時、鏑木さん!と呼びかけながら小田が近づいて来る。

形勢不利と悟った三島こと吉田が逃げ出したので、小田に後を追わせた鏑木は、その場に残っていた佐東と松井相手に殴り合いを始める。

やがて、小田が戻って来たので、三島はどうした?と2人を倒した鏑木が聞くと、逃げられたと言うではないか。

その後、町に捜索隊が戻って来る。

捉えられて連行されて来た佐東の姿を、「ブルー・スター」前でじっと見つめる風来坊2人。

令子が三郎に駆け寄ると、おじちゃんに助けてもらったんだ!と三郎は嬉しそうに言う。

鏑木さんは?と令子が聞くと、三島を追って行ったと答えた小田は、仮派出所の中で待っていた美佐に、君の気持ちは分かるけど、手当てしてやってくれと、連れて来た佐東と松井を託す。

そんな中、中山たちお偉いさんは、三島は我々の手で捕まえようと言い出すし、町民たちが、佐東たちをリンチしようとなだれ込んで来たので、小田は、今、警官隊が来る!となだめようとする。

その時、リンチなんてつまらない真似はやめなと言いながらやって来たのは鏑木だった。

三島は町に逃げ込んだぜと鏑木は小田に教える。

三島こと吉田は、「ブルー・スター」に舞い戻っており、用心棒として呼び寄せた風来坊2人を呼び寄せる。

小田は、徹底的に町を調べよう!とみんなに協力を要請するが、品川町長たちは誰も口を開こうとはしなかった。

町民たちは役に立たないと察した鏑木は、こいつはあんたの領分だぜと小田に伝える。

小田も覚悟を決め、ガンベルトを腰に卷くので、美佐が付いて行こうとするが、追うんじゃねえ!奴が一人前の警官になるかならないかの境目なんだと鏑木は言い聞かせ、美佐を止める。

鏑木さん!と助けを求めるように美佐が呼びかけると、鏑木は黙って、自分もガンベルトを腰に巻き、派出所を出て行った小田の後をそっと付いて行く。

小田が通りに出ると、町人たちはみんな家の中に隠れ、窓から様子をうかがい始める。

鏑木は、物陰に隠れながら、1人通りを歩き始めた小田の様子を見張る。

ゆっくり道の端を進んでいた小田は、急に立て看板が倒れてもびくつく有様だった。

「ブルー・スター」の店の前まで来た小田は、店の中から急に子犬が飛び出して来たので、又立ちすくむ。

店の中に入って様子を見た小田だったが、誰もいなかったのか、すぐに店から出て来るが、そんな小田を、向いの「オリオン食堂」の屋根の上から狙っていた男がいた。

用心棒の1人おかっぱ頭の男だった。

その狙撃手の影が地面に落ちているのに気づいた鏑木は、小田!と呼びかけながら、転がりながら、狙撃して来たおかっぱ頭の男を撃つ。

おかっぱ頭の男は、屋根から地面に転がり落ちて来る。

小田は、間一髪、路地の樽の後に隠れるが、通りの真ん中に腹這いで倒れていた鏑木を案じ、名前を呼びかける。

次の瞬間、鏑木は、もう1人の用心棒も撃ち落とし立上がる。

その時、三島が銃を持って出て来たので、小田!撃て!と鏑木は叫ぶ。

小田は三島を撃って倒す。

良くやった!と鏑木は褒め、鏑木さん、ありがとう!と小田は感謝するが、な〜に、俺は何もやってない。君は今日から一人前の警官なんだと鏑木は励ます。

翌日、町の公民館で行われた「ダム工事2周年記念祝賀会」には、町民たちがほとんど集まっている中、品川町長が、小田巡査に犯人逮捕の表彰状を手渡し、正式に派出所に送り込むと町民たちに知らせる。

外で令子と会った鏑木が、この町じゃもう俺は用なしさと言うと、私も町の小学校に転校することになったので、明日一緒に行きましょうと令子は言う。

すると、鏑木は、良かった。あんたはこんな山の中でくすぶるような人じゃないぜと喜ぶ。

小田巡査は、町民たちから胴上げをされていた。

翌日、おじちゃん、どこにもいないんだよ!と困惑顔の三郎が町中に集まっていた小田や美佐の元にやって来る。

それを聞いたジェーンが、どこを探してもいないのかい?と困惑すると、これ以上探しても無駄よ…、あの方はもうこの町には用のない方なのと令子が言い出す。

それでも、あたいが行って、あの人を連れ戻してやるわとジェーンは出かけようとする中、僕たちは何も出来なかった…と小田は悔む。

私たちは何一つあの方にしてあげられなかったけど、あの方はいろんなことを私たちに残して行ってくれたわ。小田さんには勇気を。私たちには人を信じることの大切さを…、それが、あの方の贈り物なんだわ…と令子は言う。

坂根峠と道しるべが立つ場所で馬から町を振り返っていた鏑木は、馬を出発させる。

(宍戸錠の歌が流れる中)夕日の丘を馬で進む鏑木のシルエット


 

 

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