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犯行現場

同じ脚本家の作品「犯罪6号地」(6月22日公開)とほぼ同じメンバーが同じ役柄を演じており、11月9日公開の本作は、オリジナルながらその続編みたいな位置づけだと思われる。

ただし、「犯罪6号地」では台東署が舞台だったのに対し、今回は「新宿署」が舞台のようで、冒頭から、歌舞伎町の新宿ミラノ(当時はミラノ座)前の公園が映し出される。

大きく「MILANOZA」とネオン文字が出ているが、当時は大映も関係していたのだろうか?

「MILANOZA」は何度も大写しされるのとは対称的に、逆側の「コマ劇場」の方は全く写されないのも奇妙である。

湯川慎一と言う少年を演じている六本木真と言う青年は、キャストロールで(新人)と出て来るので、ひょっとするとこれがデビュー作なのかもしれない。

その姉柾子を演じている岸正子と言う女優さんは、島耕二監督「男は騙される」で、主人公を演じる菅原謙二の色っぽい従兄弟を演じていた人。

化粧の違いなのか、この作品ではやや地味な印象になっている。

その柾子が勤めている映画館には、岸恵子と川口浩主演で市川崑監督版の「おとうと」(1960)のポスターが貼ってあり、明らかに大映の劇場を使用していると思われる。

慎一の恋人役久子を演じているのは、この後、TVの青春ものなどでも活躍することになる弓恵子さんで、ちょっときりっとした目つきの女優さんである。

17才の少女役を演じているが、ご本人は当時24才くらいだったはず。

トルコ風呂(今のソープランド)などと言う風俗がいかにも当時らしいが、1人800円で身体をマッサージしてもらっている様子しか描写されていないので、当時の本当の内情に関しては不明。

ただし、ヤクザが経営していると言う事から、大体の想像はでき、当時から怪し気な商売だったのだろう。

話自体は、1人の素行不良の青年が連続殺人の容疑者として疑われると言う、さほど珍しくない展開だが、当時の若者の生態の一端を描くと共に、捜査する所轄刑事と本庁の刑事の軋轢が今回も描かれている。

ただし、「犯罪6号地」の時のような、元顔なじみだった2人が所轄と本庁刑事に分かれ、その後、又事件をきっかけに再会すると言う説明がきちんとされていないので、本作だけを観ている人には、両者の対立が良く飲み込めないかも知れない。

事件の方は、良く分かるような、分からないような、やや曖昧な展開になっているが、実直そうな高松英郎演じる刑事の活躍を観ているだけでも楽しめる。

本作でヤクザを演じている村上不二夫さんは、TVの「遊星王子」(1958)の主人公を演じたヒーロー役者なのだが、イケメンと言う感じではなく、基本的には悪役の方が似合う個性派の方である。

ヤクザが似合うような方がスーパーヒーローを演じていたと言うことの方が、今となっては驚きである。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1960年、大映、阿部桂一脚本、阿部毅監督作品。

大勢の警官や刑事が、歌舞伎町のナイトクラブで、キスし合ったりたむろしていた若者たちを一斉に補導し、トラックの荷台に乗せる。

その中には、少年課の応援に駆り出された捜査係の青山秀夫(高松英郎)刑事の姿もあった。

少年、少女を乗せた警察のトラックが、ミラノ座とコマ劇場前の公園を走り出す。

署に戻って来た青山が担当したのは、北村久子(弓恵子)と言う、前にも一度補導されている17歳の少女だった。

男と雑魚寝してたそうじゃないか。そう言うのが、悪い事を始める第一歩なんだ!と説教すると、御節介ね、お説教聞かされる理由なんてないわ!と久子も言い返すので、今度ふしだらな事をやったら鑑別所行きだぞと脅し、帰らせる。

そこにやって来たのは山本捜査係長(見明凡太朗)で、捜査係のベテランも、少年課の手伝いじゃ大変だなと笑って来るが、その時、係長、殺しです!と部下が報告に来たので、何!場所は?と山本は顔色を変える。

「南国荘」と言うアパートが現場だった。

被害者は、福本町子(三保まりこ)と言う21歳になる女性で、キャバレー「ファンキー」のホステスだった。

店の名前を聞いた青山は、その店はチンピラのたまり場ですと、現場にやって来た大久保捜査一課長(原田玄)や山本係長に伝える。

そこに、発見者の6号室の女と管理人のおばさんが連れて来られたので事情を聞くと、発見者は被害者と同じ店のホステスらしく、昨日風邪気味で店を休んだ被害者を、店が終わった夜の1時過ぎくらいに見舞いに来たら、部屋に灯りが点いていたので、ドアを開けて中を観て、死体を発見したのだと言う。

その間、死体を検分していた鑑識医(湊秀一)が大久保課長に、凶器は細身の短刀で、心臓を一突きされており、死後10時間は経過していると報告する。

犯行時刻は、夕べの8時頃と言うことだった。

ドアの外から覗き込んでいた管理人のおばさんが、あの子にはチンピラの取り巻きがいてね…と教える。

そんな中、室内を捜査していた松井刑事(早川雄三)が、大量の株券を見つけたので、随分貯め込んでいるね~と大久保は感心する。

これは、痴情か怨恨と観て良いですねと青山が言うと、まだ早いよ!と本庁の刑事足立健二(友田輝)が答えたので、青山はむっとする。

アパートの裏を探していた刑事が、靴の足跡を発見したので、それを型に取り、写真に撮ったものを、翌日から青山たちは靴磨き(小杉光史)などに見せ、心当たりがないか聞いて廻る。

チンピラが良く履く靴だとまでは分かったが、それ以上は何も分からない。

「ファンキー」のホステスが住むアパートに町子の事を聞きに行った青山だったが、そこにいるホステスは口が堅かった。

しかし、あの子、慎ちゃんの方が金を貸してたんじゃないの?と、側にいた別のホステスがうっかり口を滑らせたので、青山は目を光らせる。

その後、「ファンキー」に行ってみると、小山()らチンピラが集まって、写真をネタに脅せば10万は堅いなどと相談していたので、デカが来たと分かると、みんな緊張する。

江崎(有川雄)と言う顔見知りのチンピラに慎ちゃんと言うのは?と聞くと、その店のバーテンをやっている湯川慎一(六本木真)の事だと言う。

青山は慎一に署まで同行してもらい、事情を聞く事にする。

ちょうどその時、チャコこと北村久子が店にやって来て、刑事に連れて行かれる慎一を観て驚くが、心配するな、何でもないと言って、慎一は店を後にする。

取調室に連れて来られた慎一に、アパートから刑事が持って来た靴の他に靴はないんだな?と念を押した刑事らは、町子との関係を聞くが、どうってことないよ…などと慎一がとぼけるので、町子から10万近く金を借りてることになっているな?彼女は誰にでも金を貸すのかね?本当のことを言わないと、気味の不利になるんだよと青山は攻める。

後輩の刑事は、金を返せないから、みち子を殺したんだろ!と決めつけ、これはお前の部屋にあったんだ。被害者の傷口ともぴったり合う!と言いながら、ドスを出してみせる。

夕べ8時までどこにいた?と青山が聞くと、博打をやっていたんだ。5時から9時くらいまで、東西組の賭場にいたと慎一は言う。

その時、別の刑事が入って来て、青山に何事かを耳打ちし、青山は会議室にいた山本係長の元へと向かう。

実は、渋谷で金財龍と言う朝鮮人が殺されたのだと言う。

早速、その現場に行き、捜査をしていた渋谷署の刑事と合流した青山は、非常階段を下りて行く若い男を観たと言う目撃者の話を聞いている刑事の横で、手配していた福本町子殺しの犯人のものと思われる靴と同じ足跡が見つかったと聞かされる。

つまり、二つの殺人事件は同一犯人である可能性が高いと言うことだった。

青山は、慎一の姉である柾子(岸正子)が働いていた映画館に行ってみて、慎一君の生活を知ってたんですね?と聞く。

この事務所に勤めて3年になると言う柾子は、あの子は素直な弟なんですと弁護する。

帰りがけ、青山は受付の娘に、ここの経営者は元東西組の神崎さんですね?と確認して帰る。

その足で、青山は、東西組の事務所に向い、政はいるかね?と中に入って聞くと、そこにいた北見(村上不二夫)が、奥から政(藤山浩二)を呼ぶ。

夕べ御開帳していたそうだな?慎ちゃんって子は来ていたか?と聞くと、政は嫌な顔をするが、5時から9時頃までいたと答える。

その間、ずっといたのか?と念を押すと、それがさっぱりと政ははぐらかす。

博打の件は又ゆっくり聞くとしようと言い残し、ひとまず青山は組を出て行く。

パチンコをしていたチンピラに、夕べの慎一の事を聞いても同じ答えだったので、本部に戻った青山は大久保捜査部長に、慎一の事件当夜のアリバイはあると報告する。

それを聞いていた足立刑事は、しかし、証言者が証言者だからね…とヤクザやチンピラの言葉に不信感を示すが、山本係長は、一応信用して良いだろうと青山に答える。

そこに鑑識から電話がかかり、電話を取った山本係長は、金財龍殺害に使われた凶器は、慎一の持っていたドスと同一だったとの報告を受ける。

決まったな…と足立が言うので、まだクロと決まった訳じゃないと青山は反論するが、湯川が犯人じゃないと言う確証もないじゃないか!動機は常置か怨恨、これは大体、あんたが言っていた事じゃないか?奴は灰色だよと足立は言い返す。

そうした青山と足立の言い合いを聞いていた大久保課長は、この際、湯川を泳がして様子を見てみようと言い出す。

あんまり姉さんを心配させるなと言いながら、慎一から預かっていた所持品を返す青山だったが、鍵型のペンダントを見つけ、これは何だ?と聞くと、欲しけりゃあげますよと慎一は答える。

ミラノ座の前の公演でチャコこと久子と会った慎一は、腹が減ったと言い、「ファンキー」にやって来ると、そこに姉の柾子が待ち受けていたので、姉さんなんかが来る所じゃないよと不機嫌になる。

それでも、柾子が一緒に家に帰りましょうと勧めると、外へ飛び出して行く慎一。

それを追って柾子も外に出て、とにかく帰ってゆっくり話しましょう。そんなに姉さんが嫌い?と慎一を説得しようとするが、そんなまじめ腐った顔を見ると反吐が出そうだよ!と慎一は言い返す。心配して見せから追って来た小山が、慎ちゃんにも考えがあると思うから、少し考えた方が良いぜと柾子に言う。

柾子は泣きながら帰ることにするが、その様子を物陰から観ていた男がいた。

一方、管轄のトルコ風呂にやって来た青山は、そこでマスターとマネージャーに会うが、それは東西組の神崎(大山健二)と西岡(伊東光一)だったので、面白いもんだな…、そう言う訳か…と店の事情を察する。

その店で働いていたのが北村久子だった。

福本町子と金財龍の合同捜査本部が立上がる。

そこに呼びだされた神崎と西岡は、トルコ風呂を金財龍さんから譲渡された手続きをうかがいたいと攻めると、金財龍さんから、郷里に帰るので譲りたいと話を持ちかけられたと神崎は鷹揚に答え、同行して来た弁護士は、登記書と2300万の受領書などを提出する。

それにざっと目を通した山本係長は、借受金の2300万の出所は?と聞く。

すると、弁護士は用意して来た明細書を全部出して見せ、佐久間剛造氏から借りたと言う。

ヤクザのシンパとして知られる佐久間が相手では調べようがなかった。

話を一緒に聞いていた青山は、話が出来過ぎですよ?と係長に話しかける。

町子が奴らの仕事を知っていたとしたら、殺される理由にはなったはずだ。

しかし、足立の方は、慎一の線をもう少し推してみましょうと大久保課長に勧める。

金財龍と町子と慎一の三角関係を中心に、もう1度、湯川を洗ってみようと大久保課長も応じる。

足立刑事は、慎一の住まいのアパートへ行ってみる。

管理人(竹里光子)が言うには、部屋代を全部払い、旅行して来ると言って1時間くらい前に出て行ったと言う。

足立がその話を聞いている間、慎一の部屋を調べていた別の刑事が、窓から、シーツから反応が出ました!と叫ぶ。

逃亡の恐れありと言う事で、ただちに湯川慎一の緊急手配の指令が飛ぶ。

その頃、北村久子と一緒に駅にいた慎一は、大阪に行こうと思いつき、久子に切符を買いに行かせていたが、そこに駆けつけた刑事たちによって逮捕される。

それに気づいた久子は、何するの!手を離して!と慎一をかばおうとする。

その後、捜査本部の山本係長は鑑識からの電話を受け、シーツに付いていた血液は、洗濯されていて反応が弱く、血液型までは特定出来ないとの連絡を受ける。

シーツが洗濯屋に出されていたとまでは気づかなかったのだ。

取調室に連れて来られた慎一は、20万と言う金はどうしたんだ?と青山や足立たちから追求されていた。

青山が、あんな良い姉さんがいながらmどうして優しくしてやらないんだ?君はクズだぞ!と叱りつけると、あいつはそんなまじめな女じゃありませんよ、あいつは金財龍の妾なんだよ!だから俺、あいつの所をおん出たんだ!と慎一は言う。

そこへ刑事が入って来て足立に耳打ちをする。

夕べ、姉さんの所へ行ったな?嫌な姉さんの所へ!何しに行った?姉さんに会いたいか?今来ているぞ。会えるはずないな!お前の姉さんは死んだよ!と足立刑事が言い出したので、青山は仰天し、慎一は、俺じゃない!と机に泣き崩れる。

線路脇の土手に湯川柾子の絞殺死体はあった。

死亡推定時刻は夕方の7時から7時半の間くらいと鑑識が伝える。

現場に駆けつけて来た青山は、死体の様子がきれいなので、どこか他所で殺して、ここには込んで来たのですねと山本係長に話しかける。

柾子の部屋には鍵がかかっており、あの金はやっぱり、柾子の金だろうと捜査本部に戻って来た足立が言うと、金を取るだけのためなら殺しはしないだろうと青山が反論する。

人情論では困るよと足立が言い返すと、所轄は土地の人間を観る目があるんだと青山も負けていない。

2人の言い合いを聞いていた大久保課長は、決め手はまだ何もない。そういきり立つな。協力してやってくれと注意する。

映画館の話では、柾子は20万の金を持っていたそうで、湯川の持っていた金がそうなんじゃないかなどと話し合っていたが、そこに慌てて刑事が駆け込んで来て、慎一が逃げた!と言う。

さらに、鑑識から連絡が入り、柾子の死体には、馬糞や馬の気が付着していたと言うではないか。

青山は直ちに鑑識に電話を入れ、馬の種類が分かるかと聞くと、馬糞から餌の種類が分かり、それは競馬場の馬だと言う。

ただちに青山は後輩刑事を連れ、競馬場を廻って、柾子の写真に見覚えがないかと聞き回るが、なかなか手応えはなかった。

最後の競馬場の係員も写真に見覚えがないと立ち去りかけるが、途中で立ち止まり、戻って来てもう1度写真を確認すると、昔、うちにいた素行不良で首になった馬丁の女だと思い出す。

北見と言う男だと分かり、直ちに青山は、本部の山本係長に電話で知らせる。

すぐ手配する!と答えた山本係長は、北見と町子との関係、さらには金との三角関係を良く洗ってくれと、出かけようとするヤマさんこと山崎刑事(南方伸夫)と松井刑事(早川雄三)に声をかける。

東西組に出向いた松井刑事が、北見はどこに行った?と聞くと、政は、一昨日からいない。兄貴は姉さんを連れて釣りに行ったんだろうなどと言う。

その知らせを受けた本部では、直ちに北見を指名手配しようと言うことになるが、本庁の足立が捕まえる理由は?と聞くと、何でも良い、この間の博打で良いと大久保課長は言う。

出かけようとしていた青山は、女連れで当の北見が署にやって来たので驚く。

釣りの格好とアイスボックスを持っており、高浜に旅行に行ってた。泊まったのは小沢荘と言う旅館。、途中で若い者に会ったら、こちらで探していると言うので来たと言う。

すぐさま、高浜に飛んだ青山は、小沢荘で女将に事情を聞くと、確かに北見と女はここに泊まり、奥様の方は船に酔うとかでここにずっといましたが、ご主人の方は1人で6時の船で海に出た、ただ、途中で岬を観たいと言い、2時半頃宿を出て、朝8時頃帰って来たと証言する。

その後、浜辺にいた漁師(佐々木正時)に、真っ赤な網のリュック背負っていた男を見かけなかったか?と聞くが、はっきりした証言は得られない。

地元のバス停で、時刻表を観ていた青山の元に戻って来た後輩刑事は、ハイヤーを雇った気配はないと言う。

バスも、6時5分、10時5分、2時5分、6時5分の1日4本しかなく、宿を2時半に出ているのなら、6時5分のバスしかなかったはずで、それに乗ったのでは、7時の殺しに間に合うはずがなかった。

署では、山本係長が北見に柾子の事を聞いていたが、去年別れたと言うので、暴力でものにしたと聞いたが?とかまをかけると、向うで惚れたんですよ。刑事さんは作り話が巧いからな…と北見は平然と答え、夕べも良く寝てないんで帰して下さいよと頼む。

それ以上、北見を足止めする証拠もなかったので、ひとまず解放する事にする。

一方、足立刑事は、まだ慎一を取り調べていた。

もしお前が黙っていても調べれば分かるんだ!朝まで良く考えろ!と、黙秘を続けている慎一に足立は冷たく当たる。

刑事部屋に戻った足立は、高浜から戻って仮眠していた青山の後輩刑事が起きたのに出会う。

高浜は不便な所で、今朝の3時頃に戻って来たが、成果はなかったと後輩刑事は言う。

青山の狙いを足立が嘲ると、足立さんは湯川が犯人だと決めつけているからのんきなんですと後輩刑事は言い返す。

そこに、湯川が逃げたと刑事が知らせに来る。

青山たちは一斉に、逃げ出した湯川慎一を探しに歩き回る。

新聞記者たちから追求された大久保課長は、都内に潜伏している情報があったと答える以外答えようがなく、山本係長は、我々は今ホシを追っているんですよ。少し時間をくれませんかと記者たちに頼む。

手掛かりがない青山は、1人800円の自費を出し、久子が働いているトルコ風呂に客として行く。

久子を指名し、久子のマッサージを受けながら、隠すと慎一君のためにならないよ。どこに隠れているんだ?と聞くが、久子は知らないと言うだけなので、分かったら知らせてくれよと頼むしかなかった。

その夜、久子はタクシーで、目の不自由な叔父の家にやって来ると、ラジオから慎一逃亡のニュースが流れる中、二階に上がり、そこで寝ていた慎一の姿をじっと見守る。

捜査本部では、なかなか慎一が見つからないので、いら立った刑事が室内を歩き回るので、山本係長が、うるさい!座ってろ!と叱りつける。

青山は、もう1度高浜にやって下さいと係長に頼むが、湯川がホシでないのならどうして逃げるんだ?北見がシロと行ったのは君だぜ?と青山に絡んで来る。

偽装かも知れないんだ。そもそも慎一が逃げ出したのには、君の取り調べ方にも一因がある!と青山もやり返す。

慎一は、町子から借りた10万を返すために姉から金を借りたんだな…と大久保課長が言うと、でも、北見と別れた柾子が何故金を借りたんでしょう?と松井刑事が発言する。

ヤマさんも、柾子が北見とは別れてなかったんですかね?と疑問を口にし、ともかく柾子は重要な役割を担っているのかも知れん…と大久保課長は言う。

山本係長は、昔なら、北見を締め上げたんだがな~…と乱暴なことを言う。

刑事たちは全員苛ついていた。

その頃、トルコ嬢の久子は、客から財布から金を盗んだと騒がれ、支配人を呼びだされていた。

署に連れて来られた久子に青山が、あんな大金を何に使うつもりだったんだ?湯川に渡すつもりだったんだろう?これ以上慎一君を苦しめるのか?湯川に会ったんだな?と聞くと、私…、一緒に遠くに行くつもりだったと久子が言うので、逃げたらかえって湯川の不利にだけなんだよと言い聞かす。

慎ちゃんを死刑にしないで!と久子が訴えるので、君は本当に湯川がやったと思っているんだな?と青山が聞くと、だって…、私…、観たんだもの…、金さんのアパートにマッサージで呼ばれて行ったら、もう金さんは部屋で死んでいた。その時、暗闇のベランダから慎ちゃんが飛び降りて逃げたの。派手なジャンパーを着てた慎ちゃんだったと久子は言う。

今どこにいるんだと聞くと、笹塚のおじさんの家にいます…と久子は打ち明ける。

すぐに、その叔父の家の二階に久子と共に向かった青山たちだったが、慎一の姿はなかった。

久子も、今朝までいたのに…と戸惑っているので、噓じゃないだろうね?と青山は念を押す。

ただちに、付近一帯を警官たちも捜査するが、廃墟の跡地に身を隠していた慎一は、それに気づき、逃亡を図る。

大久保課長は、廊下でまたもや新聞記者たちに捕まるが、黙って会議室に入るしかなかった。

一方、松井刑事たちは、北見と情婦が泊まっていたホテルを夜も見張っていた。

窓からそれに気づいた情婦は、まだデカの奴がいるわ。これじゃどこにも出られやしないと、ベッドで寝ていた北見に愚痴り、あんた、やったんじゃないの?と聞く。

すると北見は、冗談じゃない。お前だって、魚喰ったじゃないかと言うので、そりゃそうだけど…、あんた、あの女とよりを戻したと聞いたよとすねてみせるので、北見は情婦を抱き寄せてキスをする。

青山は、翌日も、馴染みの靴磨き(志保京助)に、何か情報はないかと聞いていたが、旦那、あいつを知りませんか?小山の奴、最近ばりっとしやがって、叩きでもやらかしたんじゃないですかね?と近くで靴を磨いていたチンピラの方を観ながら囁きかける。

その後、ミラノ座前の公園で女に小山の事を聞くと、小山は北見にやけに可愛がられているのだと言う。

松井と山崎刑事は、北見の情婦がアパートに帰ってくるのを見届けるが、そこに久子がやって来る。

ストッキングを履いていた情婦の部屋に来た久子は、お姉さん、慎ちゃん知らない?と聞くが、情婦は知らないと言う。

しかし、室内に派手なジャンパーが置いてあるのを見つけた久子は、知らないなんて噓でしょう?と問いつめようとするが、背後に入って来た松井刑事が、面白そうな話だな…と言いながら、そのジャンパーを久子から取り上げる。

そのジャンパーには人間のものと思われる血液のシミが付着していた。

そのジャンパーの事を情婦に見せ、湯川はいつ来たんだ?と青山が聞くと、小山が置いてったんですと言う。

ヤマさんとすぐさま東西組に出向き、小山に北見の事を聞くとちょっと出ていると言う。

ジャンパーを見せて事情を聞くと、慎一が飯代がないと言うので、カタに取ったんだと言う。

この間の博打か?と青山が確認すると、13日の夜だと言う。

直ちに青山は、金と町子のときも小山は来てなかったようですと山本係長に電話を入れる。

山本係長は、君たちはすぐに小山を追ってくれと指示する。

小山は、とある廃屋跡地に牛乳と食料を持って来ると、草むらの中に隠れていた地下室に入って行く。

慎ちゃん!と暗闇の中で呼びかけると、猫を抱いた慎一が隠れていた。

小山がびくついているので、どうしたんだ?つけられたのか?と慎一が聞くと、政の奴が俺を捜してるんだと言うので、何かあったのか?と慎一は聞く。

慎ちゃん…、俺…、北見に殺されるかも知れないんだ…、殺しをやったのは俺なんだ!と小山が言い出したので、驚いた慎一は、良くもおめおめとやって来れたな!と驚き飛びかかる。

しかし、小山は、姉さんをやったのは俺じゃないんだ!信じてくれ!俺、「ファンキー」のあの子好きだったんだと町子の事を打ち明け、一生一度のつもりで金を殺したんだ。北見に頼まれたから…、金をやったら匿ってやると言われたから…と、町子と金殺しを認める。

そして、ここ、チャコだけには知らせといた方が良いんじゃないか?俺、言って来るよ…と言い残し、小山は地下室を出て行く。

トルコ風呂の前で青山は見張っていると、近づいて来た神崎が、からかうように、まだ捕まりませんか?大変ですななどと話しかけて来たので退散する事にする。

小山の行方は杳として分からず、郷里に帰ったと言う知らせもなかった。

本部では、小山と北見はグルに違いなく、小山は消されるかも知れませんと青山は大久保課長に伝える。

その後、後輩刑事と共に外に出かけた青山は、ゴミ箱を漁っていた野良犬を観て、犬を使ってみよう!と思いつく。

その後、警察犬のシェパードに、小山が着ていた慎一のジャンパーの匂いを嗅がせ、動きを追う。

警察犬は、廃墟の地下室の中に入るが、又外に出て、とある工事現場にやって来る。

青山が働いていた工事関係者に聞くと、ここは東西組のビルが建つと言う。

懐中電灯を持って工事現場の中を探す青山だったが、小山の姿を見つけることは出来なかった。

その後、中央競馬新宿馬券売り場や競馬場に来た青山だったが、小山の姿はなかった。

その時、大穴間違いなしだ買わないか?と声をかけられた青山は、その男が持っていた競馬新聞の馬の名前を観ているうちに何かを思いつく。

走っていた競馬馬の輸送車の前に、パトカーが立ちふさがり停める。

運転手に、山野鉄太郎さんですね?と問いかけた青山は、北見を馬と一緒に運んだでしょう?と問いかけると、運転手はうなだれる。

その後、本部では大久保課長が東西組全部を逮捕しようと指示していた。

青山始め、刑事たちは全員防弾チョッキを着用する。

後輩刑事は青山に、やっぱり俺たちが勝ちましたね!と足立の事を念頭に嬉しそうに言うが、みんな一緒に捜査してるんだ、勝ち負けはないと青山は諌める。

そこに、北村久子がやって来て、慎ちゃんが北見を殺すと言って、1人でトルコに乗り込んで行ったと知らせる。

その頃、馬丁の鉄ちゃんが捕まったと聞いた北見は、しゃべるぜ、あいつ!と慌て、急いで逃げ出そうと、ロッカールームに来るが、そこに待ち受けていたのがナイフを手にした湯川慎一だった。

姉さんをやったの、お前だろ!トルコ風呂を取り上げようとしたな?姉さんから手紙をもらっていたんだ!サツに言うだけじゃ終わらせない。俺の手にかかって死ね!ずたずたにしてやる!と慎一は叫び、ナイフを突き立てて来る。

北見は必死に戦い、慎一の手からナイフをたたき落すと、慎一が拾い上げようとするのを必死に止める。

ナイフを何とか握った慎一は、手元が狂い、アランドロンの「太陽がいっぱい」の写真が貼ってあったロッカーに突き刺す。

その隙に、拳銃をロッカーから取り出した北見が慎一の頭を殴りつける。

床に落ちていた柾子の手紙を拾い上げた北見は逃げ出そうとするが、表には既にパトカーが到着していたので、非情階段を登り、開店前のキャバレーのフロアにやって来る。

ドアから中を用心深く覗き込むと、暗闇の中、次々と警官や刑事がなだれ込んで来る。

青山が到着すると、後輩刑事が、確かに潜んでいますと言うので、青山は一発威嚇射撃をしてみる。

しかし、ドアの後から中を覗き込んでいた北見は動かないので、近くに転がっていた洋酒の瓶を拾い上げた青山は、それを暗闇に放ってみる。

すると、その音に驚いた北見が発砲したので、その音を目がけ青山が撃ち、北見は右手を撃たれ銃を落とす。

青山は、出て来い!と声をかけるが、北見はそのまま、非常口から外に出ると、隣のビルの三角屋根に飛び移って逃げようとする。

そこに駆けつけて来た青山も、同じように隣のビルに飛び移ろうとするが、距離が足りず、屋根の端から落ちかける。

それを北見が狙い撃とうとしたので、足立が発砲し、命中した北見は、三角屋根を滑り落ち、ビルの下に落下する。

すぐに、足立たちが三角屋根のビルに飛び移り、落ちかけていた青山を引っ張り上げる。

青山はありがとうと感謝するが、足立の方も、すまん…と自分の推理の間違いを詫びる。

神崎と西岡も捕まり、本部に連れて来られたので、神崎は虚勢を張る。

そこに、松井刑事が弁護士も連れて来る。

弁護士はみんなを釈放してくれ!と居丈高に言って来るが、文句があるなら法廷で言ってもらおうと大久保課長は言い放ち、あんたを共犯として逮捕しますと言いながら、青山は弁護士にも手錠をかける。

柾子は、金財龍の印鑑を盗んだと手紙で認めていると青山は言い渡す。

佐山剛造がその気になれば、あんたたちの首など全員すっ飛ぶぞ!と弁護士は息巻くが、佐山は一足先に捕まったよと大久保課長が教える。

その後、東西組のビル建設工事現場で、青山や足立、山本係長などが見守る中、ある床面を掘削機で壊していた。

北村久子と湯川慎一も見守っていた。

やがて、コンクリートの床面の下から、靴を履いた足が見つかる。

その靴を脱がせ、裏面を確認する山本係長が、間違いないと言う風に頷く。

歌舞伎町のミラノ座前の公園に来た後輩刑事は、どうして湯川のシーツから反応が出たんでしょう?と不思議がる。

人間の体液なんてちょっとした事で付くことがあるよ。問題は血液型が合うかどうかだと答え、一緒に歩く。


 

 

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