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メリー・ポピンズ リターンズ

60年代の日本でもヒットした「メリー・ポピンズ」(1965)の半世紀以上ぶりの続編。

それなりに昔の作品と雰囲気を合わせようとする努力は見られるが、名画座などの「珍品特集」で、最初の映画の直後に作られながらヒットしなかったので長らく忘れ去られていた幻の続編を初めて見たような印象に近く、確かにこれじゃヒットしなかっただろうな…と言いたくなるような出来になっている。

決して出来が悪いと言うわけでもなく、こちらが歳をとったせいという部分もあるとは感じるが、作品世界そのものが今の時代にマッチしてないような気がするのだ。

「Q」役でお馴染みのベン・ウィショーが出ているからというわけではないが、例えば同じ60年代に日本でもヒットした「007」などを考えると、キャストスタッフを次々に入れ替えながらシリーズを重ねていることもあるが、近作は初期のものとかなりテンポや描き方が違っている。

シリーズ作品というものは常に公開する時代の感覚に合わせるものだ。

しかし本作は続編設定ということもあり、良くも悪くも60年代の映画に近づきすぎており、その分今見ると古臭く感じられる。

興行的なヒットと言うのは時代性と切り離せず、ある時代にフィットして当たっても数年後にはもう時代に合わなくなっているなどと言うことも珍しくない。

やはり半世紀以上も前の作品の続編という企画自体に無理があったのではないか?

2D風アニメ部分などにノスタルジーは若干感じるが、今ものすごく新しいものを見たというインパクトがないのだ。

本当にこんな続編を待っていた人がいたのだろうか?

「おばあちゃんの知恵」とでも言うか、本作でメリー・ポピンズが教えている幼心を忘れかけた大人とこれから大人になってゆく子供達へのメッセージは、良くも悪くもあくまでも日々の生活を心がけ一つで豊かにしようと言う慎ましやかな考え方なので、今でも通じる大切なものではあるのだが、子供向けでも視覚効果など過剰な刺激で見せていく映画が主流となった今見ると生ぬるく感じないではない。

あくまでも遠い古き良き時代の子供向けファンタジーなのだ。

おそらくそうした印象は、前作を知っている、知らない、どちらの客にも共通して感じられるのではないだろうか?

話もなんとなく暗い上に、オチも最初からほぼ予想できるような子供向けの展開なので、ものすごく魅力的な話とも言い難い。

メリー・ポピンズ役のエミリー・ブラントは良く健闘していると感じるが、シーンによっては美人特有のやや表情に冷たさが出ているように見えなくもない。

ジュリー・アンドリュースとは違う個性で、好みもあるだろうが、万人がとっつきやすい庶民派とは言い難いような気もする。

画面的にはそれなりに手間がかかっているように見えるだけに、それが結果的に成功していないように感じられるのが残念。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2019年、イギリス映画、P・L・トラバース原作、デヴィッド・マギー+ロブ・マーシャル+ジョン・デルーカ原案、 デヴィッド・マギー脚本、ロブ・マーシャル監督作品。

街灯のガラス窓を磨いていたジャック(リン=マニュエル・ミランダ)は、夜が明けたロンドンの町の街灯の明かりを次々に消して行く。

その姿を見かけた近所の子供達もジャックの後についてくる。

梯子を積んだ自転車に乗ってやって来たジャックはフィデリティ銀行の前を通り過ぎ、公園の中を通過する時、芝生の世話をしていた管理人に挨拶する。

やがて船のチェリー通りにやってきたジャックに牛乳配達の男が「お早う、ジャック!」と声をかけてくる。

ひときわ目立つ帆船の甲板を再現した家の屋上に車椅子に乗った元海軍のブーム提督 (デビッド・ワーナー)を押してきた一等航海士ビナクル(ジム・ノートン)の姿を見かけたジャックは思わず微笑む。

提督の家の隣りのバンクス家の二階の窓から子供達の顔が見えたので、街灯に梯子をかけていたジャックは、やあ子供達!と声をかけ、路上の街灯の明かりを消す。

ディズニー・プレゼンツの文字

油絵で描かれた物語の大筋を背景にタイトル

ロンドン チェリー通り 世界恐慌時代

屋上に鎮座したブーム提督はビッグベンから聞こえてきた時報が間違っとる!と文句を言っていたが、大砲を撃つ準備をしていたビナクルがバンクスの家の前に車が止まったと提督に教える。

車から降りてきたのは眼鏡をかけた白人のグッディング(ジェレミー・スウィフト)と黒人のフライ(コブナ・ホルドブルック=スミス)だった。

マイケル・バンクス家では、キッチンの水道が破裂した!とお手伝いのエレン(ジュリー・ウォルターズ)が憤慨しながら玄関ホールに出てくる。

それを聞いたこの家の主人マイケル・バンクス(ベン・ウィショー)と姉のジェーン・バンクス(エミリー・モーティマー)は驚いたように応接間から姿を見せる。

騒ぎを聞きつけ二階から降りてきたマイケルの長女アナベル・バンクス(ピクシー・デイヴィーズ)は修理屋への電話をかけ始める。

長男のジョン・バンクス(ナサナエル・サレー)とキリンのぬいぐるみを手にした次男のジョージー・バンクス(ジョエル・ドーソン)も降りてくる。

そんなバンクス家の玄関ドアがノックされる。

アナベルからお客様よと教えられたエレンは、ドアを少し開け、外に立っていたグッディングとフライを見ながら、お客さん、何の用?今は日曜の8時よ!と訪問時間の非常識さを咎めるように聞く。

グッディングがバンクス氏にお話が…と答え他ので、一旦ドアを閉めたエレンはキッチンにいたマイケルを呼びに行く。

外でずっと待たされていたグッディングがまたノッカーを叩いたので、エレンがドアを開けると、差し押さえの件で…とフライが言うので、エレンは応急措置をしてキッチンから出てきたマイケルに来客のことを知らせる。

玄関前に立たされっぱなしだった訪問客は自分たちは弁護士だとマイケルに明かし中に入れてもらう。

するとエレンが、キッチンが水浸しになってニシンとママレードしか買い置きの材料がなく、これでは朝食は作れないとぼやいていたので、3人の子供達は公園を抜けて朝食の買い出しに行くことにする。

応接間に案内された弁護士2人は、出かけようとしていたジェーンが低賃金世帯を守る組合のチラシを手にしていたので、奥さんは労働組合員なんですか?と驚いたようだった。

するとマイケルは妻は昨年亡くなりました、ジェーンは僕の姉ですと弁護士たちに教える。

弁護士はマイケルに返済が3ヶ月遅れていますと通達する。 マイケルが詫びながら遅れている分を支払おうとすると、銀行側としては全額まとめてお支払いただきたいと弁護士側が言い出したので、それを聞いたマイケルは、全額?年収よりも多い!銀行で働いているのに?と言い返す。

マイケルは今、フィデリティ銀行で臨時の出納係をさせて貰っているだけで本職は画家だった。

株券は?父さんが遺してくれたものがあるはずだとマイケルが言い出した時、隣の提督が放った大砲の轟音で家中が揺れる。

弁護士は動揺するが、お隣の提督が時報を知らせているんですとジェーンが説明する。 白人弁護士が通知書ですと言いながらマイケルに渡すと、随行していた黒人弁護士のフライは証書を見つけてくださいと忠告し2人の弁護士は帰ってゆく。

ジェーンがマイケルに、なぜ借金のことを話してくれなかったの?と責めると、心配させたくなかったんだ…、思い出の家を失いたくない…、でもお金がないんだ、証書を見つけないと!とマイケルは冷静を装い答える。

ジェーンは、大切な家を失うのよ!冷静な振りはやめて!と叱るが、その話を買い物に行く為玄関前に集まって来ていた3人の子供達もしっかり聞いていた。

とりあえず子供達は朝食用の買い物に出かけることにし、ジェーンとマイケルは父親の株券を探す為、二階と屋根裏にそれぞれ向かう。

公園の中を通り過ぎる3人兄弟だったが、末っ子のジョージーは「芝生内立入禁止」の立て札も無視して芝生の中に入ってしまうので、常駐していた管理人が叱る。

家の中ではジェーンが、もし家をなくしたら…と不案がるマイケルに、とりもどす方法ある?と聴きながら二階へ向かう。

屋根裏に登ったマイケルは父親が遺していたはずの株券を探し始めるが、古いオルゴールを見つけて開けてみると、亡くなった妻の真珠のネックレスが入っていたのでそれを手に握りしめながら、妻を失った嘆きを歌い出す。

しかし屋根裏部屋に株券は見つからなかった。 そこに二階のタンスにもなかったと言いながらジェーンが上がってきて、何故絵の道具があるの?と聞くので、気恥ずかしくなったマイケルはガラクタばかりだと言いながら、破れかけた凧などをゴミ箱に集めると、家の外に捨てに行く。

その時、風が吹いてきたので、ゴミ箱の一番上に乗せていた凧が舞い上がり公園の方へ飛んで行ってしまう。

それを目撃したのがジャックで、歌いながら自分も後を追って公園の中に自転車で入り込む。

飛んできた凧に気づいたジョージーはそれを追いかけ芝生の中に入っていったので、自転車で近づいてきたジャックがアナベルとジョンに教える。

アナベルたちは弟ジョージーを追って芝生の中に入ろうとすると、芝生に入るな!と管理人が怒鳴ってきたので、少し離れた場所から管理人の目を盗んで芝生の中に入り込み弟の後を追う。

ジョージーは落下していた凧を見つけたので、嬉しそうに凧を揚げ始めるが、風の方が強くなり、そのまま凧に体を引っ張られてしまう。

それに気づいて、今行く!と叫びながら駆けつけたのが街灯屋のジャックで、何とか浮き上がったジョージーの足を捕まえ凧の糸を引き寄せる。

その時、凧を見上げていたジャックとジョージーは、凧を掴んでゆっくり舞い降りてきた女性を見上げて、こりゃ驚いた!と呟く。

凧を掴んで地上に降りてきたのはカバンと傘を手にしたメリー・ポピンズ(エミリー・ブラント)だった。

風の強い日には弟に気をつけてとメリーはジョージーの側に駆けつけたジョンとアナベルの名を名指しして言い聞かせたので、どうして私たちの名前を?とアナベルが不思議がると、メリー・ポピンズだからさとジャックが教える。

するとメリー・ポピンズも嬉しそうに振り返り、御機嫌よう、ジャック!とジャックに挨拶する。

この子たちには教育係が必要ですとメリー・ポピンズは言い、バンク助の方へ歩き始めたので、子供達は唖然としながらも、ジャックに促され、自分たちもメリー・ポピンズといっしょに自宅に戻ることにする。

凧を持って自宅に帰ってきたジョージーは、お父さん!ジェーンおばさん!と二階に向かって呼びかけたので、何事かと2人が降りてくると、ジョージーが玄関ドアを開ける。 そこから入ってきた女性の姿を見たマイケルとジェーンは、メリー・ポピンズ!と言って絶句する。

全然歳をとってない!とマイケルが驚くと、失礼ね、女性に歳の話をするなと言ったでしょう?とメリー・ポピンズは言い返す。

そんな父親とメリー・ポピンズの会話をジョージーは不思議そうに聞いていた。

そこにアナベルとジョンも帰ってきて、教育係なんか必要ない、自分たちで何でもできると主張するので、私たちも子供の頃習ったんだけど、今は雇う金がないんだとマイケルはすまなそうにメリー・ポピンズに断る。

しかしメリー・ポピンズはそんな返事など無視して、顔や服が汚れた子供たちに入浴と着替えが必要ねと言うと、昔のように二階への階段の手すりに腰掛け、そのままリフトにでも乗っているように登ってゆく。

そんなペリーポピンズを迎えたマイケルはジェーンに、しばらくいてもらおう、でも子供の頃に起きたことを信じてるかい?と問いかける。

二階から降りてきていたヘレンはペリーポピンズに出会う。 大人は忘れるんだ…とメリー・ポピンズが持っていた傘の握りの部分についていた鳥の彫刻が嘆く。

浴室に入ると下着姿になった子供達が何やら話し合っていたので、何こそこそ話しているの?とペリーポピンズが聞く。

子供達は風呂になんか入りたくないようで、泡なんか嫌いだ!と抵抗するが、そんなことは気にせず、メリー・ポピンズは湯船の中に入浴剤や帆船のおもちゃ、パラソルなどを次々に放り込んでいく。

すると湯船の中からイルカの頭が出てきたので、好奇心に抗しきれなくなったジョージーが、僕は入りたい!と言い出したので、ポピンズが抱いて湯船の中に落としてやる。

するとジョンも泡だらけの湯船に飛び込み、アナベルは湯船の泡の中を覗き込み弟たちがいないと騒ぎだすが、メリー・ポピンズが知らんふりをそているので自ら中に滑り込む。

それを確認したメリー・ポピンズは湯船の縁に腰を下ろし、そのまま後ろ向きに湯船の中に落ちてゆく。

そこは大きな海の中だったが、いつしか水着姿になっていた3人の子供とメリー・ポピンズは空を飛ぶようにスイスイと泳いでいた。

先ほどメリー・ポピンズが湯船に投げ入れたアヒルのおもちゃや帆船が大きくなって沈没船として横たわっていた。 メリー・ポピンズはその中を歌いながら泳いで行く。

沈没船の上ではヘレンが料理を作っていた。

海の底には「海藻立ち入り禁止」の立て看板が立っていた。

メリー・ポピンズは海底の海綿を拾い上げ、3人の子供たちにそれぞれのスポンジとして放ってくる。

そこに何匹ものイルカが近寄って来て子供たちの周囲を周り、たくさんの泡を作り出す、 子供達は大きな泡の中にそれぞれ入り、そのまま海面から飛び出て空を漂いだが、パラソルを持って湯船に腰掛け海面を漂っていたメリー・ポピンズが、パラソルの先で子供達の泡を壊して、湯船の中に落としてゆく。

メリー・ポピンズが開いたパラソルをジョンが持ち、それが帆の役目をして湯船は海面を進みだすが、反対方向からブーム提督とビナクルが乗った小舟が近づいて来て、2人は敬礼をしてくる。

メリー・ポピンズと子供たちも敬礼を返していると、ジョンが海に落ちてしまう。

すぐに湯船に引き上げられ、イルカが湯船の上を飛び回る。

湯船の栓をメリー・ポピンズが抜くと、湯船は大きな海の大渦巻きの中に引き込まれてゆく。

夢のようなひと時を経て、いつしか綺麗になった子供達が浴室に戻っていた。

その頃、書棚の前でまだ父親の株券を探していたマイケルだったが、床に本や書類が散乱する中、ない!とうなだれていた。

そこに二階から綺麗になった子供達が降りて来て、今の夢のような冒険を話し始めたので、苛立ったマイケルは思わず、うるさい!と怒鳴ってしまう。

しかし、驚いて黙った子供らを謝罪したアナベルが連れて行こうとしたので、すぐに自分の行為を恥じたマイケルは、怒るつもりじゃなかったんだ、大事なものをなくしたんだ、おじいちゃんの証書なんだ…と言い訳をする。

すると一緒に探していたジェーンが、銀行の貸金庫にあるのでは?と言い出し、マイケルと2人で銀行へ向かう。

後に残された子供達とメリー・ポピンズは、床に散らかった書類を前に困った2人…と呆れるが、すぐに書類を空中に巻き上げ屑篭にまとめると、ジョンとアナベルには本を元の書棚の中に戻させ、ジョージーには屑篭の中のゴミを捨ててくるように頼む。

ジョージーはそんなメリー・ポピンズの言うことに素直に従うようになっていた。

台所へ屑箱を運んできたジョージーは、1枚のスケッチを取り出して微笑む。

それは父マイケルが描いた絵で、母親と3人の子供とマイケルが一緒に並んでいる絵だった。

ジョージーはその絵をたたんで自分のズボンのポケットの中にしまい込み、屑篭を外に持ってゆく。

雨が降る中、フィデリティ銀行前では傘をさした人が行き交っていた。

銀行にやって来たジェーンは貸金庫にも株券は入ってなかったので、ドースさんに頼めば?と提案し、今の頭取はウィリアム・ウィルキンズ(コリン・ファース)さんで僕の上司なんだと制止しようとするマイケルを無視して勝手に頭取室へ向かう。

頭取室前の秘書に頭取に会いたいとジェーンは予約もなしに申し込む。

彼らを出迎えた頭取のウィリアムは表面上紳士的な態度だったが、返済期限の延長をマイケルが申し出ると、株の記録を秘書に持って来させページをめくって調べていたが、見当たりませんね、株券を金曜日の真夜中のビッグベンが時刻を打つまで待ちましょうと答える。

がっかりしてマイケルとジェーンが部屋を出た後、ウィリアムは記録のあるページを破り、暖炉の火の中に投げ捨てる。 それはマイケルの父の株の記録が書かれたページだった。

バンクス家の子供部屋では、寝間着に着替えた子どもたちを前にペリーポピンズが色々言いつけていた。

ジョンには下にいってヘレンの手伝いをしなさいと命じ、アナベルには部屋の整理、ジョージーには破れた凧を修理するように言いつける。

食器棚の整理をしていたヘレンを手伝い始めたジョンは、古い食器には値打ちがあるから簡単には捨てられないという話をヘレンから聞き何かを思いついたらしく、また子供部屋に向かう。

子供部屋ではジョージーが父の描いたスケッチをハサミで切り凧の当て紙にしていた。

子供部屋に戻って来たジョンはお金を作る良い方法を見つけたとアナベルに知らせる。

窓を開けたメリー・ポピンズは、家の外壁に梯子をかけ、街灯を灯していたジャックを発見したので、少し話し始める。

ジョンは暖炉の上に置いてあった母の遺品の器を取り上げるが、それに気づいたアナベルが、何をするの!それは大切なものよ!と叱り奪い返そうとする。

しかしジョンはこの陶磁器を売ればお金になり、家を売らずに済むかもしれないといって奪い返す。

ジョージーもその器の奪い合いに加わり、次の瞬間器は床に落ちてしまう。

ベランダに登っていたジャックと会話していたメリー・ポピンズは、何かが壊れる音に気づいたが子供部屋を振り返ると、3人の子供達の足元に馬車の絵付の器が落ちて淵の一部が欠けていた。

誰が割ったの?とメリー・ポピンズが聞くが、子供達は互いに罪をなすりつけ合う。

見ると、陶磁器に描かれていた馬車の後輪が外れている。

子供部屋に入って来たジャックも、これは誰が直すの?と困ったように問いかける。 無理よ、不可能!とメリー・ポピンズは言い、テーブルに陶磁器を乗せると割れた破片を元の位置に合わせ、みんなこっち来てと呼びかける。

ジョージーは母親が作ってくれたキリンのぬいぐるみを持って、他の兄弟と一緒にメリー・ポピンズの側に立つ。

準備いい?とメリー・ポピンズが聞くので、ジャックがうんと返事すると、メリー・ポピンズは陶磁器の器を駒のように勢いよく回し始める。

陶磁器に描かれていた青い花の絵が部屋の中に溢れ出し、気がつくと3人の子供たちとメリー・ポピンズ、ジャックの5人は陶磁器の絵の中の世界に入り込んでいた。

メリー・ポピンズもジャックも3人の子供たちもよそ行きの衣装に代わっており、メリー・ポピンズが丘の上から下の道に滑っていったので、子供たちも坂を滑り降りる。

目の前の馬車は道路の亀裂で車輪が1つ外れてしまったようで立ち往生していた。

御者はプードル犬のサイモンで、馬のグローリーともどもペリーポピンズを知っているように言葉を喋ったので子供達は驚く。

メリー・ポピンズは応急処置として外れた車輪を3人の子供に持ちあげさせると車軸と車輪をスカーフで巻いてやる。

すると子供達が馬車に乗りたいと言い出したので、メリー・ポピンズも、それもそうね…、良いかしら?と聞くと、御者のプードルももちろん!と快諾する。

馬車に乗ったメリー・ポピンズは、ロイヤルドルトン・ミュージックホール!と行き先を告げる。

走り出した馬車の上でメリー・ポピンズが歌い出す。 するとジャックも一緒に歌い出す。

馬車はロイヤルドルトン・ミュージックホールと書かれた門を潜るが、そこには何も無かったので、ミュージックホールは?とアナベルが聞くと、メリー・ポピンズは持っていた傘を広げてクルクル回し始める。

するとその回っていた傘模様が変化し目の前に大きなテントが出現する。

そこには多くの動物の観客が詰めかけており、チケットを回収していた劇場主の狼(声-コリン・ファース)が、馬車から降りて入り口に入るメリー・ポピンズと子供達に挨拶してくる。

自分たちの名前を狼が知っていたのでジョンが訳を聞くと、いつも子供部屋の暖炉の上で聴いていたと狼の子分の穴熊(声-ジェレミー・スウィフト)とイタチ(声-コブナ・ホルドブルック=スミス)が教える。

狼は子供達に、場内にはピーナッツやキャンディーもあるよと言うので、子供達がメリー・ポピンズに入って良いかと聞くと、メリー・ポピンズは仕方なさそうに許可する。

ステージではフラミンゴが踊るショーをやっており、客席にはクジラやセイウチなどの姿も見えた。

最前列の席に座ろうとしたジョンは、危うく小さな動物家族を押しつぶそうとしたことに気づき謝罪して横に座る。

綿菓子を持って子供達が歓声をあげると、ステージにはジャックが上がっており、メリー・ポピンズを紹介する。

メリー・ポピンズは恥じらって断ろうとするが、ジャックの強い誘いに負けステージに上がると歌を歌い始める。

それでもメリー・ポピンズは躊躇していたが、幕の後ろから顔なじみのペンギンたちが声をかけてきたので、楽団のコンダクターにミュージックを始めるように指示する。

演奏が始まると、メリー・ポピンズはペンギンたちと共にステージセットで歌い出す。

帽子と杖を持ったメリー・ポピンズはいつの間にかライザミネリのようなショートカットになっており、ジャックと共にステージ狭しと踊り、歌う。

次いでジャックが1人で歌い出す。 ペンギンたちが投げた本で階段を作る。

それを登って行くジャックとメリー・ポピンズが階段の上で合流して、歌いながらアニメの動物たちと大階段を降りてくる。

それを見た子供達は立ち上がって喜ぶが、ジョージーはメリー・ポピンズが座っていた横の席の上に置いていたキリンのぬいぐるみギリーがなくなっていることに気づき周囲を探し回る。

するとカーテンの向こう側に立っていた狼が懐中時計をぶらぶらヨーヨーのように振り回しているシルエットが見え、その横にキリンのぬいぐるみを持った仲間のシルエットも見えたので、カーテンの奥の部屋に1人で入ってしまう。

そこにいたのは、狼と穴熊とイタチの3人組で、何故かバンクス家の子供部屋の家財道具をスチーム列車型馬車の貨台に乗せているところだった。

穴熊がキリンのぬいぐるみが入った箱も列車に積もうとしているのに気づいたジョージーが、返して、ぎりー!と叫び、箱を奪い取ろうとする。

ジョージーがいなくなったことに気づいたアナベルとジョンもカーテンをめくって覗いてきたので、焦った狼はジョージーも連れて行けと命じ、自分もステーむ馬車に乗り込み出発させる。

それを見たアナベルとジョンは、さらわれたジョージーを助けようと後を追いかける。

スチーム馬車の荷台に乗せられたジョージーは僕を家に帰して!と訴えるが、もう家はない!と馬車を操縦していた狼は答える。

走って追っていたアナベルとジョンはすぐに息切れを起こし立ち止まるが、背後から迫ってきた馬車に引き上げられる。

御者のサイモンと馬のグローリーの馬車が迫って来たことに気づいた狼は、穴熊に石炭を釜にくべてスピードを出すように命じる。

グルーリーの馬車が迫ってきて、スチーム馬車と並んだ時、ジョンとアナベルはジョージーが閉じ込められていたスチーム馬車の荷台に飛び移る。

それに気づいた狼は、手下の穴熊とイタチに背後の荷台に行ってガキどもを捕まえろと命じる。

驚きながらも穴熊とイタチは恋歌付きでつながれている荷車の方へ向かってくる。

アナベらは荷台の中からナタを取り出すと、それで迫って来た穴熊を追う払おうとする。

穴熊はそのナタを避けるが、手を離れたナタは木に突き刺さり、イタチと穴熊は前方から迫って来た木の枝に弾き飛ばされ馬車から落ちて行く。

穴熊にジージーの救出を頼んだジョンは狼が操縦していた機関車部分との連結を外しに行く。

連結器のボルトをジョンに抜かれたことに気づいた狼は積んでいたシャベルを握ると地面に亀裂を入れる。

子供達が乗った荷車部分はその大きな地面の亀裂に車輪を取られ、そのままがけから飛び出し、3人の子供たちは暗闇の中に放り出されてしまう。

うなされていたジョージーは、メリー・ポピンズから起こされる。

そこはいつもの子供部屋のベッドの中だった。

怖い夢を見たのねとメリー・ポピンズが慰めると、ギリーを盗んだんだ!とジョージーは訴え、それぞれのベッドで一緒に起きたアナベルもジョンも自分たちも同じ夢を見たという。

家をなくしたくない、だからお母さんの器が必要なんだとジョンが言うので、亡き母を思いだしてしまったジョージーは思わず、お母さんに会いたいと言いだす。 メリー・ポピンズは歌を歌ってやると、もう寝なさいと言いつけ部屋を後にする。

アナベルはベッドから出て窓から星空を眺める。

そしてベッドに戻る途中、暖炉の上の器を覗き込むと、ジョン、ねえ見て!と叫ぶ。

ジョンも器のところに来て絵を見ると、絵に描かれていた馬車の後輪がスカーフで巻かれていたので、あのスカーフだ!夢じゃなかった!と喜ぶ。

子供部屋の外でその子供達の声を聞いたメリー・ポピンズは微笑む。

翌朝、大砲を撃つ準備をしながらビッグベンの時報を聞いたブーム提督は、早すぎる!と文句を言う。

そして、下の道路を帰って来たジェーンに提督は朝の挨拶をする。

上を見ながら挨拶を返したジェーンは、ガス灯の明かりを消して、梯子を降りて来たジャックとぶつかってしまう。

ジェーンが持っていたチラシをばらまいてしまったのでジャックが拾ってやっていると、二階の窓からメリー・ポピンズが声をかけてくる。

これから子供達と街に出かけるが一緒に来ないかという。

ジャックはジェーンに、ミスバンクス、昔あなたはあの窓から見ていたと教えると、当時は子供だったのとジェーンも苦笑する。

今日の午後よろしければ…とジャックは誘うが、今日は集会があるのとジェーンは集めたチラシを見せて断るので、何か力になれることがあったらいつでも言ってくれとジャックは申し出、ジェーンもありがとうと感謝する。

そんな中、家から出て来たマイケルが19番地の家を訪ねて来た婦人にぶつかりそうになぎながら出かけて行く。

その直後、エレンが旦那様!鞄忘れています!と叫びながら出てくる。

そこへ街に出かけるメリー・ポピンズと3人の子供たちが出て来てエレンからカバンを受け取ったので、自転車に乗って行こうとジャックが勧めると、自転車には5人も乗れないとアナベルやジョンは戸惑う。

しかしジャックは自転車の荷台に梯子を横に寝かせて置くと、そこにジョンとアナベル、反対側にメリー・ポピンズを腰掛けさせ、ジョージーは前の買い物かごに座らせる。

そしてブーム提督が発射させた時報の大砲と共にジャックの自転車も出発する。

メリー・ポピンズのその日の目的地は、従兄弟のトプシー(メリル・ストリープ)の修理店だった。

路地の奥のあった小さな扉をメリー・ポピンズは傘の握り手でノックするが返事がない。

不思議に思ってドアを開け、新聞入れの隙間から呼びかけると、メリー・ポピンズ?という声が聞こえたので扉を勝手に開け奥に進むと、部屋の奥に従兄弟のトプシーはいたが、突然遊園地のビックリハウスのように部屋全体がひっくり返る。

メリー・ポピンズが持参した器を修理してほしいのだと用件を言うと、トプシーは今日は第二水曜日なので店は休みなのだとすごい訛りで言う。

第二水曜日は世界がひっくり返り、修理しても支離滅裂などとトプシーは憂鬱そうに打ち明け、歌い出す。

その歌にジャックと子供たちも参加して、全員で踊り出す。

メリー・ポピンズも歌に参加し、全員が逆立ち状態になる。

立ち位置を変えると世の中も味方も変わるとメリー・ポピンズが歌で言い聞かせると、それもそうねと納得したトプシーは、水曜日も素敵!自分って最高!と認識を変え、器を置いて行きなさい、修理しとくわと嬉しそうに答える。

トプシーの店を出て帰りかけたメリー・ポピンズたちは、立て看板の束を持ったジェーンと再会したので、気を利かせ、銀行はすぐ近くなので自分たちは歩いて行くからと自転車を降りる。

ジャックはジェーンに自転車に乗るように勧め、自分の前に座らせ走り出す。

それを見送ったメリー・ポピンズは子供達と父がいるフィデリティ銀行へやってくる。

メリー・ポピンズは銀行の受付でマイケルを呼び出してもらおうとするが、そこに宅配係がサインを求めてきたので、受付は宅配係を先に優先する。

メリー・ポピンズが受付の前で待っている間に、3人の子供たちは、グッディングとともに階段を昇りかけたフライがこちらに気づき手を振ってきたので、あの人は優しいわと言い、自分たちも勝手にその後を追って頭取の部屋へ向かう。

頭取室の前に座っていた女性秘書が子供達に気づき、何の用?と聞くと、ジョージーがキャンディーもらって良い?と聞く。

秘書は机の上に置いてあったキャンデーの瓶からキャンディーを取っても良いと許可する。

その間、頭取室の中では、やって来たグッディングとフライに、不景気がこんなに儲かるものとは思わなかった!と愉快そうに語るウィリアム・ウィルキンズの声が聞こえてくる。

家を奪うチャンスだ!返済の猶予は1秒も与えるな!家は銀行のものだ!とウィリアムはグッディングたちに命じる。

部屋の前に立っていた子供達にその会話が聞こえてくる。

ウィリアムが秘書にお茶を持ってくるよう内線をかけてきたので、その隙に頭取室の扉を開け中を覗き込んだ子供たちは、暖炉の前で懐中時計を振り子のように揺らしているそのウィリアムの姿が、夢で見た狼の姿とそっくりのシルエットだったので、ジョージーは狼だ!家を取るなと叫ぶ。

フライからバンクス家の子供たちだと聴いたウィリアムは、聞かれてはまずい会話を聞かれたと悟り、捕まえろ!とグッディングたちに命じる。

階段を降りて逃げた子供たちは、受付にやってきたマイケルに忘れ物のカバンをメリー・ポピンズが渡している所に駆けつけて、助けて!狼が追ってくる!と訴える。

しかしマイケルは子供達の言うことを全く理解せず、階段を降りてきたウィリアムの言葉を鵜呑みにし、子供達が無作法をしたと思い込んで一方的に叱りつける。

ウィリアムはジョージーにキャンディーを握らせ、子供達を懐柔しようとする。

マイケルはそんなウィリアムの欺瞞を見抜けず、期限日の真夜中まで待つと言うウィリアムに逆に感謝する。

ウィリアムたちが部屋に戻っていくと、まだアナベルが訴えようとしたので、強くそれをしかったマイケルは、メリー・ポピンズに子供達を連れて帰るように命じる。

すっかりしょげた子供達は銀行を出ると、どうしよう…、父さん、怒ってた…と悩む。

ペリー・ポピンズはそんな子供達の背後から黙ってついてきていたが、霧の深い路地を歩いて行くうちに、子供らは帰り道が分からなくなったと言い出す。

その時、君達どうした?と声をかけてきたのは、夕方の街灯を点灯し始めていたジャックだった。

帰る道がわからないと子供達が訴えると、小さな明かりを見つけるんだ!とジャックは教え歌いながら子供達の先頭を歩き出す。

子供達がジャックの後をついて行くと、街灯がある行き止まりの場所にやってきたので、子供達が戸惑っていると、メリー・ポピンズがその街灯に捕まり、傘の握り手で街灯をコンコンと叩く。

するとその街灯がマンホールのような穴に沈み出したので、子供達も地下に沈んだ街灯を掴んで下に滑り降りる。

そこは下水溝だった。

小さな火を灯そう!この僕と♪と最後に降りてきたジャックは歌いながら子供達を誘導してゆく。

排水溝の先にはたくさん街灯が並んでおり、その街灯には1人ずつ街灯係が掴まっていた。

その街灯係たちが街灯の灯りを1つずつ灯しながら一斉に踊り出す。

ジャックのその街灯係に混じって一緒に踊り出す。

やがてメリー・ポピンズと子供達も踊りに加わる。

そこにライトを灯した自転車に乗った一団が加わる。

全員が松明を持って歌いながら道を進んでゆく。

いつしかメリー・ポピンズと子供達は自宅前に来ていたが、エレンが玄関ドアを開けると、先に帰っていたマイケルが出てきて、今まで何してたんだ!死ぬほど心配したぞ!とまだ浮かれて歌い続けていた子供達を叱ってくる。

道案内ですとメリー・ポピンズが返答すると、くだらん!入れ!とマイケルは言いつける。

そんなマイケルの言動を見かねたヘレンがあまり叱らないでと頼むが、下がるようにいいつけたマイケルは二階へ向かおうとしたメリー・ポピンズを応接間に呼ぶ。

そこには3人の子供たちが立たされており、今日のことで首にはされなかったけど、今時あんな良い仕事は見つからない、悪いのは僕なんだろう、この1年間、必死で君達を守ってきたつもりだけど1人じゃもう無理だ、どうすれば良いのか方法がわからないと打ち明けたマイケルは椅子に腰を落とし堪らなくなったのか泣き出す。

多くを失いすぎた…とマイケルは悔やむ。

そんなマイケルにジョージーは、お母さんはいるんだよ、今いないだけ…と慰めるように歌い出す。

ジョンとアナベルもいつも見守っています♪と一緒に歌いだす。

そんな子供達を見たマイケルは3人の子供たちに賢くなったなと褒め抱きしめる。

子供達を解放したマイケルがまだその場に残っていたメリー・ポピンズに、家を守るように教えたのか?と聞くと、子供達が自分で…とメリー・ポピンズは答え、二階へ向かうが、階段を昇りかけたところで、バンクス家らしい…、考えすぎるんですと立ち止まってマイケルに教える。

金曜日の深夜、いよいよ家を明け渡す期限がやってきて、株券が見つからなかったマイケルは引越しをするしかなかった。

ジャックも引越しの手伝いに来て、荷物の中に株券が入ってないか確認しながらトラックの引越し屋に渡していた。

ジェーンが重そうな荷物を持って家から出てくると率先して手を貸すジャックは、ジェーンが家に戻ると、隣の屋上で待機していたビナクルに合図を送る。

マイケルは、家財道具がなくなった応接間で1人しんみりしていた。

そこにジェーンが近づいて来て一緒に玄関に向かうと、二階からメリー・ポピンズが降りてきて、先に荷物を持って下で待っていた子供達と合流する。

トランクを持ったヘレンも台所から出てくる。

さようなら友達!とマイケルが家に向かって声をかけ、子供達も同じように繰り返す。

表には近所の人々が見送りに集まっていた。

ブーン提督もビナクルの押す車椅子で見送りに来てくれる。

マイケルは感謝し、自分たちは姉のアパートに行くと教える。

その時ジョージョーが凧を忘れたことに気付き家に戻る。

ブーン提督はボトルシップをプレゼントとしてマイケルに手渡す。

感謝してマイケルが受け取った時、ジョージーが修理した凧を持って戻ってくる。

それを受け取ったマイケルは、自分が描いたスケッチを切り貼りしてあることに気付き感激する。

そしてそのスケッチを透かして見たマイケルは、待て?と浮かび上がった文字に気づいて呟く。

裏を見ると、スケッチの裏側は今まで探していた株券の一部だった。

今すぐ銀行へ!何時だ?と聞くと、12時7分前だとジョンが腕時計を見て教える。

間に合わないな?とマイケルは悔やむが、時間を戻せるわ!不可能などないわとアナベルがメリー・ポピンズを見ながらいう。

メリー・ポピンズは微笑んだだけで何も答えなかった。 そんなメリー・ポピンズのそばに駆け寄る子供達。

しかし次の瞬間、メリー・ポピンズは、今すぐ銀行へ!とジェーンとマイケルを急かす。

メリー・ポピンズはジャックの自転車に子供達とジャック荷台のはしごに乗せると自分が漕いで走り出す。

マイケルとジェーンは引越しトラックに乗り込んで銀行へ向かう。

ジャックの仲間の街灯屋たちは一斉に自転車にまたがって目的地へ走り出す。

メリー・ポピンズと町中の街灯屋達の自転車が終結したのはビッグベンの下だった。

銀行の頭取室では、グッディングとフライを従えたウィリアムが懐中時計で期限の真夜中の時報を待ち受けていた。 フライは、まだ数分ありますと教える。

ビッグベンの下に降り立ったジャックは、仲間達から梯子を受け取るとそれを壁面に組み立てながら、ビッグベンの壁面を時計台目指してよじ登って行く。

途中、止まっていた鳩が飛び立ったので驚いたジャックは落ち掛けるが、それでも文字盤に近づこうと登りつずける。

しかし、文字盤の下には出っ張りがあり、それ以上登れそうにもなかった。

しかしジャックは、仲間が壁面から水平に差し出した梯子を渡って壁面から少し離れると、仲間が梯子の端を押さえた勢いを借り、シーソーのようにジャンプして出っ張りを乗り越える。

仲間達が文字盤の明かりを内側から消して暗くするが、文字盤の下に立ったジャックは0時を指しかけていた時計の針に自分の手が届かないことに気づく。

もはや絶望かと思われたとき、メリー・ポピンズが傘を広げて文字盤の針のそばに降りてきて、0時を指そうとしていた長針を引っ張って時間を遅らせる。

頭取室にいたウィリアムは懐中時計が0時を指してもビッグベンの時報が聞こえてこないので不思議がる。

窓を開けてビッグベンの方を見ると、暗くて文字盤が見えない。

ウィリアムは怪訝そうに窓から離れるが、そのとき、グッディングが明かりがつきましたと教える。

見ると、ビッグベンの文字盤は0時数分前だった。

その時、マイケルとジェーンが乗った引越しトラックが銀行の下に到着したのに気づいたので、阻止しろ!とウィリアムは命じる。

グッディングとフライは階段を降り、入り口のドアを内側から開かないように抑える。

凧を持って銀行の扉を開けようとしたマイケルとジェーンだったが、内側からフライ達が抑えているので開かない。

マイケルは凧を揚げ頭取室の窓の所へ導くが、ウィリアムは椅子に腰を下ろしていたので窓の方を見ていなかった。

その時、メリー・ポピンズが風を吹かせ、頭取室の窓を押し開けたので、凧も風に押され頭取室の中に入る。

頭取室の中にタコが入ったのを確認したマイケルとジェーンはもう一度銀行の扉をノックする。

すると、内側から抑えていたフライが意を決したように取っ手を開いて2人を中に導く。

マイケルとジェーンは階段を登って、今まさに凧に貼られていた株券を見ていたウィリアムの部屋に入ってくる。

これは何だ?と凧を持ったウィリアムが聞くと、株券ですとマイケルが答える。

その時、0時を知らせるビッグベンの時報が鳴り渡り、同時にブーン提督の大砲も発射する。 ブーン提督は、ビナクル!ビッグベンがついに正しい時を打ったぞ…と感激する。

頭取室にいたマイケルは、駆けつけた子供達と一緒に凧に貼られていた株券の断片を組み合わせながらサインの部分を探すが、そこだけどうしても見つからなかった。

どうやらジョージーが捨ててしまっていたようだった。

それを知ったウィリアムは、サインがなければ株券として通用しないと言い渡す。

マイケルはそんなウィリアムに、最初からそのつもりだったんだな?子供達が言ったことが正しかったんだ!家はやる!行こう!と子供達に言い、頭取部屋を出ていこうとする。

ジェーンとジャックも残念そうにその後について部屋を出ようとした時、別のドアが開き、そこから入ってきたのは全頭取のドース(ディック・ヴァン・ダイク)だった。 それを見たウィリアムは、ドースおじさん!どうしてここに?と驚きの声を上げる。

小鳥に聞いたんだと答えながらドースがウィンクすると、メリー・ポピンズの傘の握り手の鳥がウィンクし返してくる。

お前はバンクスの株を横領しようとしたな?お前にバンクを任せるのは間違いだった。良いかウィリー、わしは復帰する、お前はクビだ!追い出せ!とドースはグッディングとフライに言う。

捨て台詞を残してウィリアムが出て行くと、老いぼれてはいるが体は軽いと言い出したドースはその場で軽快に踊り出す。

机の上に乗って踊るドースに合わせ子供達も踊り出す。

ドースが椅子に腰を下ろすと、ジャックもマイケルもジェーンもマイケルも歌に加わる。

おかえりなさい、ミスター・ドースと呼びかけたマイケルに、ドースは君のお父さんは2ペンスをこの銀行に預け、君たちを守ってくれと言ったと語りだす。

2ペンスはその後投資運用され、今ではなんと家のローンを全額払える額になっている。

家は戻るんだとドースは子供達に教える。

マイケルとジェーン、3人の子供たちは泣きながら抱き合って喜ぶ。

それを見たドースはメリー・ポピンズを見て微笑みかける。 やがてチェリー通りの桜の木が満開になる。

家族たちと通りを歩きそれを見たマイケルは絵に描こうと笑顔になる。

エレンはジェーンに公園に行けと急かされる。

公園は「チェリー祭り」の最中だった。 家族は嬉しそうに公園の中に入って行く。

公園の中にはテントや観覧車などの遊具があったりで、人で溢れていた。

流石にその日は芝生の中にも人が入り込んでおり、みんなが楽しく笑顔でいたので、ベンチに腰掛けた管理人はあきらめ顔だった。

公園の中にやってきたジョージーは、歌を歌っている風船売りのおばあさん(アンジェラ・ランズベリー)を見かける。

マイケルは、懐かしいな、子供の頃以来だと喜んで風船売りの前に子供達を連れてくる。

すると風船売りのおばあさんは、忘れたの?子供の心…と聞いてくる。

マイケル派自分でピンクの風船を取ると、そのまま空中に浮かび始めたので、嬉しそうに歌い出す。

ジェーン!思い出した!全部本当だ!…と。 それを見た子供達もそれぞれ風船を掴み空中に浮かんで歌い出す。

それを見上げていたジェーンのそばにやって来たジャックは、ピンクの風船を選んでジェーンに手渡すと、ジェーンの体も空中に浮かび上がる。

その後を追ってジャックも風船を持って空中に浮かぶ。

それを見た提督が嬉しそうに叫ぶ。

そこへやって来たのがウィリアムで、自分もピンクの風船を買うが、なぜか風船は空中には浮かばず地面に落ちてしまう。

ヘレンも両手で風船を掴み空中で歌っていた。

グッディングも風船を持って浮かぶフライの体にしがみ付いて空中を飛んでいた。

車椅子に乗っていたブーン提督も風船を掴むと体が浮かび上がったので、出航するぞ!とビナクルに言いながら飛び立って行く。

風船を持っていたビナクルもアイアイサー!と答えながら空中に飛び上がる。

それを公園に集まっていた町の人たちが嬉しそうに見上げる。

近所の犬も飛んでいた。

もう町中の人々が風船と一緒に空中を飛んでいた。

それを地上から見上げていたメリー・ポピンズに、1つだけ残っているからあなたにあげると言いながら風船売りのおばあさんが赤い風船を手渡す。

何やっても完璧…と赤い風船に映った自分の姿にむけてメリー・ポピンズは呟く。

赤い風船には、自宅の前に降り立つマイケル達の姿が浮かび上がる。

マイケルが家の門を開けて中に入ろうとした時、突然強い風が吹いて桜の花びらが飛び散り、家のドアが開く。

公園にいたメリー・ポピンズの手から赤い風船も離れてゆく。 空中を舞う桜の花びらを喜びながら、子供達とエレンが家の中に入って行く。

門の所でそれを見るマイケルとジェーン。

公園では飛び去った赤い風船を見上げていたメリー・ポピンズが、時間ね…とつぶやくと、傘を開く。

するとメリー・ポピンズの体は空中に浮かび上がって行く。

あの人はもういないのね…とジェーンが気づくと、ありがとう、メリー・ポピンズ、さようなら!とマイケルは呟く。

青い風船をはしごに結びながら、ジャックも忘れないよ、メリー・ポピンズ…と空に向かってささやきかける。

そしてそのはしごを乗せた自転車に乗って歌いながら走り出す。

ロンドン上空を飛び去ってゆくメリー・ポピンズがそっと振り返る。

ロンドンの夜景を背景にエンドロール
 


 

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