戦前のフィルムで、20分程度しか残っていない不完全な作品だけに、話もとびとびになっている様子。 権三と助十と言うのは、昔からお馴染みの「バディ(相棒)もの」のお話らしい。 この作品では、その権三と助十が旅の途中で胴巻きを盗まれ、腹を空かせている所から始まる。 その前の話が失われているのか、映画そのものがここから始まっているのかと言う判断もつけ難い。 その胴巻きを返して来た旅芸人一座から誘われ、いきなり役者デビューをすることになった2人だが、実は、その旅芸人一座には裏があり…と言う犯罪コメディのような内容になっている。 金持ちの商人の家に白羽の矢がたち、娘を人身御供に寄越せと言う脅しが同時進行で起きており、この辺の展開は昔から良くあるパターンである。 話によっては、実際に妖怪変化が登場する場合もあるが、今回は人間が仕組んだ罠だったと言う展開なので、あまりファンタジックな話にはならない。 それでも、天狗に化けた長松(助十のことか?)が扇を振ると、盗賊一味が吹き飛ばされたりと言うナンセンス(?)表現はある。 主役の権三が、人身御供の家に紛れ込んで箱に入る辺りから、神社で女盗賊たちに囲まれている辺りまでが唐突で、途中の部分が失われていると思うのだが、大まかな流れは何となく分かる。 全体的にユーモアものだし、展開も良くあるパターンなので、多少話のつじつまが合わなくても、理解出来ないと言うほどではない。 子供から大人まで楽しめるお気楽な明朗時代劇と言った所だろう。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
1938年、極東キネマ、多々羅三平原作+脚本、山口哲平監督作品。 街道脇に駕篭を起き、その横に座って手ぬぐいを団子に見立てて食べる振りをしている駕篭かき権三(綾小路絃三郎)と助十(伊勢原浩太郎) 実は2人は財布の入った胴巻きを盗まれ無一文になった為、ずっとものを喰ってなかったのだ。 やけになった権三は立ち上がり、街道で客引きをするが誰も振り向きもしない。 そんな中、1人の娘が自分の方に向かって手を振って来たように見えたので、権三は嬉しくなって側に寄るが、娘が手を振っていたのは、後ろから近づいて来た別の男だった。 2人は恋仲らしく、男が買って来た餅を、その場で娘に、口をア〜ンさせて食べさせ、女も美味しいわ、とっても…などと甘え、私疲れた…などと言い出したので、男は娘を背負ってその場を立ち去って行く。 すっかり当てられた権三は、去って行く2人を睨みつけるが、ふと足下を見ると、今の男が買って来た餅の包みが置いたままではないか。 急いで拾ってむしゃぶりついた所に、相棒の助十がやって来る。 そんな権三たちに駕篭を頼むと声をかけて来たのは相撲取りだった。 権三は丁重に断ろうとし、助十は、兄貴!何とか言ってくれよと頼って来るだけので、つい、こんなボテを乗せられるか…と本人の前で言ってしまい、何?ボテ!と相撲取りから睨まれる始末。 仕方がないので、相撲取りを駕篭に乗せ、走り出そうとするが、助十と向きが逆なので一向に前に進まない。 相撲取りは諦めて駕篭を降りようとするが、権三が無理矢理駕篭に押し込み、又担ごうとすると、担ぎ棒だけがすっこ抜け、相撲取りが乗っていた駕篭の部分は抜け落ちてしまう。 そこに現れたのは、地元の駕篭かき連中で、縄張り荒らしの文句を言って来たので、権三と助十は売り言葉に買い言葉、道のど真ん中で喧嘩を始める。 そこに集まって来た野次馬の中にいた、1人の旅人が、可哀想だから助けておやりと仲間たちに言い、自分は銭を地元の駕篭かきたちに渡しなだめる。 酒手をもらった駕篭かきたちは恐縮し、権三たちをその場に残して立ち去って行く。 立上がった権三は、礼を言おうと銭を出してくれた相手の顔を見るが、その相手こそ、以前、自分たちの胴巻きを盗んで行った青空一座の座長ではないか。 このやろう!と権三が凄むと、そんな風に思われているだろうと思い、ずっと探していたんだよと座長は言う。 街道のゴマの蠅を捕まえたら胴巻きを持っていたので、締め上げたら盗んだことを白状したんだと言い、盗まれた胴巻きをその場で返してくれたので、権三は感激し、やっぱり大神宮様が守って下さったんだ!とありがたがる。 その後、権三と助十は、青空一座が泊まっている宿に同宿させてもらい、たらふく飯を御馳走になる。 すっかり満腹になった所にやって来た座長は、時に役者になる決心はついたかと言う。 最初は辞退していた権三だったが、役者は駕篭かきよりずっと楽だよと聞かされると、急に引き受けることにする。 わし等にでも出来る役を…と権三は頼む。 その頃、山城屋と言う店の看板に矢文が刺さっていた。 「子の刻、神社に娘を人身御供として連れて来い。 神龍山天狗」と書かれてあったので、主人は店のものや娘を集め思案しだす。 そう言えば、去年も、伊勢屋のお紺さんに白羽の矢が立ったことを番頭が思い出す。 しかし、娘のお染は、嫌です。人身供養なんて…と嘆く。 その頃、町の芝居小屋では、青空一座の芝居がかかっていた。 素人の権三が演じていたのは、何と、お嬢吉三の主役だった。 セリフもろくに覚えてない権三だったが、お供役の助十に助けられながら何とか主役芝居を続けていたが、男であるのがバレ、簪を投げ捨て、帯を解き、あぐらを組んで見栄を切る場面になった辺りで、その芝居を見守る客席の中に潜んでいた岡っ引きたちが急に立ち上がり、青空一座、御用だ!と言いながら舞台に上って来る。 これには客席も舞台上も大混乱で、権三も訳が分からないまま逃げ回るはめになる。 外に逃げ出し、道ばたのむしろの下に身を隠して、岡っ引きたちをやり過ごした権三は、何とか逃げ延びることに成功する。 その頃、山城屋では、娘のお染が、街全体が助かるなら私行きますと人身御供になる決心を父親に伝えていた。 行ってくれるか!と父親の主人が感激していると、その庭先に、逃げて来た権三が紛れ込み、庭に置いてあった人身御供用の箱の中に入り込んでしまう。 気がついて、箱から出た権三は、いつの間にか神社の境内に運び来られており、女盗賊とその子分たちに囲まれていた。 その時、そこな人間!俺の真似をして悪事を働くとは不埒千万!と声がし、見ると、そこに天狗が立っているではないか。 驚いた権三は、あっしは善人ですよ!と言い訳すると、天狗が持っていた扇子を扇ぐ。 すると、女盗賊たちは一斉にくるくる回って吹き飛ばされ、持っていた武器がその場に残っている。 笑いながら天狗画面を取ってみせると、それは長松だった。 何でも、念仏寺の和尚から教わって先回りしていたのだと言う。 それを聞いた権三は、家が危ない!と言い出し、長松共々山城家に向かって走りだす。 山城屋では、主人屋奉公人たちが全員縛られていた。 裏の蔵の前には盗賊共が集まっており、蔵の中のものを盗み出そうとしていた。 お染も縛られていたが、そこに駈け戻って来た権三は、天狗の身替わりは俺がもらった!と言いながら、先ほどの賊が落として行った銃を向け、青空一座のインチキやろうどもめ!手を挙げろ!と賊を脅かす。 賊たち全員を蔵の中に綴じ込め、助十に扉を締めさせた権三だったが、扉の下に刀が1本引っかかってしまい巧く閉まらない。 その刀を引っ張りだす助十。 その時、銃を持っていた権三が背後から近づいて来た敵に掴まれてしまう。 権三は、それでも、おれの剣術忘れるなよ!と叫ぶと、二刀流の格好で暴れ始める。 そこへ役人や捕手たちが駆けつけて来る。 権三は、ザルと柄杓を両手に持ち。盗賊団相手にまだ暴れまくっていた。 無事、盗賊団は役人たちに捕まり事件は一件落着。 山城屋の主人は、娘を助けてもらった例を言うと、助十と権三に、1人100両ずつの礼金を差し出す。 あっという間に懐が暖かくなった2人は股旅を始めるが、兄貴は金より、あの娘の方が名残惜しいんじゃないかい?などと助十からからかわれた権三は、途中で籠屋たちを見つけたので、次の宿場まで1両でどうだ?声をかける。 これには籠屋たちは驚き、我先にと客の奪い合いを始めるが、助十と権三を乗せた2つの駕篭が走り出す。 権三は、飲み代は思い通りだ!もっと走れ!と駕篭の中から声をかけ、駕篭かきたちは欲にかられて懸命に走るが、やがて、止まれ!と権三は命じる。 そして、後ろから付いて来た助十に、街道の駕篭かきはダメだな。一つ江戸の駕篭かきを見せてやるか!と声をかけ、駕篭かきの1人を駕篭に乗せると、慣れた足さばきで助十と共に走り出す。 おい、助十、良いか!と権三は話しかけるのだった。 |