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幻想館

 

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男はつらい

1968年、TBS、山田洋次+稲垣俊脚本、飯島敏宏監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雨の国道をひた走る長距離トラックの運転席。

前をノロノロ走る乗用車の内部で男女がいちゃついているようなので、助手席のみのる(前田吟)がいらついているが、運転を勤める先輩の千葉源吉(渥美清)は相手にしない。

しかし、その前の車が、突然停まったかと思うと若い女が飛び出す。
女は襲われていたのであった。

源吉とみのるはトラックを停め、娘を助け出すと、取りあえず、源吉の住まいである「あさひ荘」へ連れていき、一晩自室で泊める事に。

何でも、秋田宏子(川口恵子)というその娘、故郷での気の進まない縁談から逃げるために、独りヒッチハイクをして来たのだという。

翌日、そんな事情は知らないで、娘一人がいる源吉の部屋にふらり遊びに来たのが、源吉馴染みのトンカツの店「ドライブインわらじ」で見習いコックをやっている福岡一郎(小坂一也)。

夜勤明けで帰って来た源吉は、さっそく、「わらじ」のおやじ(花沢徳衛)に電話をして、宏子を雇ってくれないかと頼むのだった。

運送店の同僚寅さん(高品格)ら周囲の仲間たちから冷やかされながらも、世話好きの源吉は、それからも無事「わらじ」で働けるようになった宏子の様子を見るために何度か足を運ぶのだが、段々自分が、本当に宏子の事を好きになっている事に気づき出す。

さんざん考え倦ねた末、勇を奮って告白しようと「わらじ」に出かけた源吉だったが、その日はあいにく、宏子は休み、しかも、一郎も休みを取っているという。

その頃、若い一郎と宏子は海辺でデートをしていたのだが、宏子にそれとなく求愛しようとする一郎に対し、何故か、宏子の態度は煮え切らないものだった。

その後、「わらじ」で対面した源吉と一郎、どちらも、宏子への気持ちを打ち明けようとしていたのだが、先に話をするように勧めた一郎の告白を聞いてしまった源吉には、同じ自分の気持ちをいえなくなってしまう。

かくして、自分の気持ちを押さえ、一郎への応援のつもりで、意図的に宏子に嫌がられるような素振りを見せるようになった源吉だったが、その本心に気づいているみのるは心配顔。

しかし、その後、宏子は「わらじ」を辞め、駅前のキャバレーに職を変えてしまったと聞かされた源吉は、彼女を呼出し、その真意を問いただそうとするのだが、宏子が口にした言葉は意外なものだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

男女の気持ちのすれ違いによる悲喜劇を淡々と描いた一編。

タイトルや、山田洋次監督が脚本を書いている事などからして、本作が後年の「男はつらいよ」の原点の一つである事は明白。

そのものズバリ「寅さん」の名前も登場しているし、ひろしこと前田吟や、ポンシュウこと関敬六もちゃんとゲスト出演している。

ただし、寅さんのキャラクターの原点は、名作「無法松の一生」の松五郎がベースとなり、それがハナ肇の「馬鹿シリーズ」などを経て変化して来たものと見るべきだろう。

この作品はむしろ、「男はつらいよ」の中でも、女性に恋する主人公がつい自分は身を引いて、若いカップルのキューピッド役になる「花も嵐も寅次郎」(1982)とか「幸福の青い鳥」(1986)の原点と見る方が正しいように感じる。

奇しくも、この作品で渥美清にサポートされる若き二枚目役も、バンド出身の元ミュージシャン小坂一也。

小坂は、山田洋次監督の第一回作品「二階の他人」(1961)の主人公を勤めた人物でもある。

この作品での源吉は、難しい諺をいおうとする癖があるがいつもちゃんといえないという、学はないものの憎めない真面目な男で、馴染みの簡易宿舎の女将が自分に気がある事にも気づいていないし、宏子の気持ちを汲んでやる事も出来ない。

彼に理解できるのは、男同士の友情とか、義理人情といった古い概念だけ。

「男が立たない」とか「男がすたる」といった言葉だけがよりどころなのである。

そうした男のやせ我慢というか、寂しい一面を、「男はつらいよ…」と、劇中で二度も、源吉に呟かさて表現している。

特に悪い話という感じでもないが、さりとて、特段感動するといった感じでもなく、シリーズの中では、まずまずの出来といった所ではないだろうか。

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