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白馬童子 逆襲嵐ヶ原

他の映画会社に先駆け、テレビの将来性を見抜いた東映が当時NETと呼ばれていた時代のテレビ朝日と組んで作り始めたテレビ用ヒーローものの元祖「風小僧」に次ぐヒーロー時代劇第2弾のシリーズがこの「白馬童子」である。

「風小僧」が、映画で大人気を博した「新諸国物語 紅孔雀」から派生した、今で言うスピンオフ企画だったのに対し、本作は新たに原作をベースにした東映らしい変身ヒーローものとなっている。

「風小僧」で一躍お茶の間の人気者になったイケメン新人山城新伍さんが続いて主役を演じており、アップのシーンになるとその美形が覆面で隠れないよう、口の部分の布はシースルー素材になりほとんど顔が丸見えと言うのがご愛嬌である。

今回のエピソードはヒーローものの定番ネタ「偽者」をベースにした当時の子供マンガのようなコミカルな展開になっており、白馬童子の偽者を演じているのは、ハリセンチョップで有名だった「チャンバラトリオ」の頭(かしら)こと南方英二さんで、東映の斬られ役大部屋役者だったらしく、当時20代後半くらいだったはずだが老けて見える。

そして偽葵太郎を演じているのは東映の名脇役汐路章さんである。

汐路さんは50年代後半頃から映画にもちょくちょく出ておられたが、テレビの方にも出ておられ、脇役とは言えスターがほとんど出ないテレビ映画の方が目立つ役を演じておられたような気がする。

時代劇なのに、汐路さんが200kgの鉄棒などと言っているのが当時の子供マンガのようで面白い。

南方さんはこの当時東映の大部屋におられたらしく、この「白馬童子」の前作「風小僧」時代から何度か出演なさっていた記憶がある。

冒頭の汐路さんとのコントチャンバラではコミカルな言い回しなど、南方さん独特の面白みが出ているのだが、元々こう云う才能があったのか、たまたまそう云う役を振られたので才能が開花したのか興味ある所。

この当時の山城新伍さんは、後年肥満して三枚目キャラになった山城さんとは見た目別人のようではあるが、ちょっと気取ったようなしゃべり口調は変わっておらず、白馬童子がその口調で「ちょめちょめ」などと言ってもおかしくはないように聞こえる。

劇中で偽葵太郎に扮した汐路さんが長崎の事件のことを持ち出しているので、時系列的には長崎が舞台だった「白馬童子 南蛮寺の決斗」の後の話らしい。

当時のテレビ映画を見ていて気付くのが、無音のシーンが意外に多いこと。 今ならセリフがないシーンでも環境音なり音楽なり何かしら音が入っていそうなシーンでも何にも音が入ってなかったりする。

セリフの声とチャンバラなどのアクション部分に申し訳程度に音楽が入っている程度、今のラジオとかだと何秒か以上無音の状態が続くと放送事故と見なされるのではないか?と言う気がする。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1960年、東映テレビ部、巌竜司原作、村松道平+高田宏治脚本、仲本睦監督作品。

白馬に乗って駆けて来る白装束に連獅子の白髪をかぶった謎の剣士。

白馬童子!日本全国隠れなき「太陽の子」!白馬童子!(と子供の声が呼びかける)

タイトル

スタッフ、キャストロール

第一篇

巨岩が並ぶ絶景の場所にやって来た夕香里(春海洋子)はまあきれいと感激し!忠助(山本順大)も良い景色だな~と周囲を見渡し感心すると、兄ちゃん!太郎兄ちゃん、早くお出でよと一緒に旅をしている葵太郎(山城新伍)に呼びかける。

なるほど、これは見事な眺めじゃ…と近づいて来た太郎も感心する。

太郎さん、とうとう九州の真ん真ん中に来てしまいましたねと話しかけて来たのは同行の小助(神木真壽雄) 日向から肥後の国境に当たるこの辺り一帯は今は天領になっている、歴史の上でもなかなか由緒深い土地ではある…と太郎が解説すると、天領って何?と忠助が聞くので、江戸にある幕府の用地なんだと太郎は教える。

するとこの辺りは御代官の土地になるのね?と夕香里が言うと、天領には幕府が任命した者が用地を収めているんだが、大きくは長崎奉行が九州全土の天領を収めているんだと太郎は言う。

ふ~ん…と忠助が気のない返事していると、お~い、喧嘩だ、喧嘩だ!果し合いだ!と周囲にいた旅人がある方向へ走って行くのに気付く。

しめた!と小助が喜ぶと、これ!と太郎が諌めるが、行ってみようよと好奇心丸出しで忠助が言い出したにで、喧嘩と聞いたらすぐ飛び出すと太郎は呆れ、人の喧嘩を喜ぶのは一人前の人間のすることではないぞと言い聞かす。

その言葉の尻馬に乗り、忠助君気を付けなさいと小助が偉そうに言うので、あれ?越す今朝んが真っ先に言い出したんじゃないかと忠助は指摘する。

そうね、確かにそうだったわと夕香里も賛同するので、どうもすみませんとさしもの小助も頭を下げる。

ところがその時、白馬童子と葵太郎の果し合いだぞ~!と言う声が聞こえたので、さすがに太郎も驚く。

白馬童子と葵太郎?と小助が呟くと、さすがに気になったのか太郎自ら現場に向かったので、小助は驚き、兄ちゃん、ずるいぞ~と言いながら忠助も後を追うので、結局、夕香里も小助も後を追うしかなかった。

鬼が持つ金棒のような武器を持った偽葵太郎(汐路章)は獣のように吼えて相手を威嚇していた。

一方、奇妙な黒頭巾をかぶり口ひげの偽白馬童子(南方英二)は異様に長い二刀流を突き出す奇妙な剣法で相手をしていた。

それを見ていた野次馬は、あれが有名な白馬童子、あの構えが電光二刀流、あの立ち会いが名高い名刀日輪丸などと知ったかぶりの解説をしていた。

偽葵太郎が偽白馬童子の右手を掴むと、形見の品じゃ、見ておれ!などと偽白馬童子は叫ぶ。

しかし白馬童子は白覆面と違いますか?わしが大阪で聞いたのは白馬は白馬に乗っ取るますばいなどと怪しげな解説者に問いつめると、知ったかぶりの解説者は春も近かとばってん衣装替えしたとでっしょうなどとなだめる。

その内偽者2人は互いの刀を抜いて地面に置くと、せっせっせのような真似からプロレスのような肉弾戦を始める。

それを見ていた忠助があれは偽者だぞと言うと、2人とも真っ赤な偽者だよと小助が文句を言いに行こうとするが、まあ待て!面白いからもう少し見ていようと太郎が制する。 2人の偽者は互いの武器を変えて戦い出す。

聞きしに勝る名勝負、佐々木小次郎、宮本武蔵以来の大勝負ですばいなどと知ったかぶりの解説者は言うが、ばってん2人ともちっとも動きまっせんばいと茶々が入る。

元より!名勝負になると指1つで勝負は決まりますぞと知ったかぶりの旅人は言う。

やがて疲れて来た偽者たちの動きは見るからに緩慢になり、まだ戦いは終わらんぞ!と偽白馬童子が虚勢をはると、侍と言うには全く辛いの~と偽葵太郎が野次馬たちを気にしながら言い返す。

それを見ていた解説者も、これは勝負はどうしたものじゃ?と腕組みし、面物客も、こりゃ一体どうしたことですたい?と困惑する始末。 太郎もばかばかしいと言い捨て、その場を離れることにする。

すっかりへばって地面に寝そべった偽葵太郎が、国はどこじゃ?と相手に聞くと、同じく寝そべっていた偽白馬童子は、越中富山じゃと答えたので、ああ薬屋かと似せ葵太郎が言うと、薬屋ではないわい!八百屋じゃ…と偽白馬童子は訂正する。

その頃、とうげ茶店で休んでいた太郎一行は、茶店から去る男女3人組を追うように立ち上がり、そのまま茶代を払わず店を出て行った侍一行を目撃する。

店主(近藤竜太郎)が慌てて、立派な口ひげの侍を追いかけ茶代を要求すると、武士に対して無礼であろう!などと逆ギレするので、そんなご無体なことをと店主は困惑するが、ヒゲの侍は仲間たちを追って去って行く。

それを見ていた忠助は、畜生、酷い奴だな!と憤慨して立ち上がるが、太郎は、忠助、まぁ待てと制する。

その侍の一行を見ていた旅の女お駒(霧島八千代)は、後からやって来たヒゲの侍にぶつかってしまい、すみませんと詫びるが、馬鹿者!と怒鳴られてしまう。

お駒は茶店の前に来ると、これ少ないけど、今のお侍さんたちのお茶代にと言いながら金を主人に渡す。

こんなにたくさん!と主人が驚くと、良いのよ、取っておおきよとお駒は言う。

その頃、懐の財布がないことに気付いたヒゲの侍は、あの女だ!みんな来い!と仲間の侍たちに呼びかけ茶店に戻る。

そこに掏摸女お駒がすまして座っていたので、この女!良くもわしの財布を擦り寄ったな!とヒゲ侍が文句を言いつかみ掛かろうとするが、お駒は素早く身をかわし逃げてしまう。

その後を追おうとしたヒゲ侍を、まだ座っていた太郎が足を出して転ばせる。

愉快そうに太郎が笑うと、立ち上がって痛がったヒゲ侍は十手を取り出し、貴様!と言いながら殴り掛かって来る。

太郎が笑いながらあしらうと、怒ったヒゲ侍は仲間たちに斬れ!と命じる。

立ち上がった太郎は、扇子一本でかかって来る侍たちを軽くあしらう。

その内、茶店に置いてあったタバコ盆を使い、ヒゲ侍に灰を浴びせたりする。

さらに、店の奥に置いてあったうどん玉を投げつけると、顔にかかったうどんを食べたヒゲ侍が、これは旨いなどと言うので、店の主人は大喜び。

他の仲間たちもうどんまみれになり、這々の体で逃げて行く。

忠助は、わあ、うどんのお化け、良い気味だ!と逃げた連中を見送り、小助も夕香里も大喜びだった。

店の主人が出て来て、御武家様どうもありがとうございましたと太郎に礼を言う。

太郎は、何の、ご亭主こそとんだ災難だったのと同情する。

その時忠助は、あれ?さっきのお姉ちゃんどこ行ったんだろう?と掏摸の女お駒を捜す。

一緒に周囲を見ていた夕香里は、あら?さっきの豪傑が来たわと気づき、気まずいので忠助と共に後ろ向きになる。

その偽白馬童子にぶつかって行った掏摸女お駒は、ご免なさいと詫びると、さっき見てましたわ、お二人とも御強いんですね~と世辞を言う。

2人はその女の世辞を真に受け、愉快そうに笑うと、当たり前じゃ、白馬童子は日本一の豪傑じゃなどと自慢する。

すると、何?かく申す葵太郎こそ日本一でごわす!などと偽葵太郎が言い返す。

ちがう!白馬童子じゃ!太陽の子白馬童子こそ日本一でごわすと言いながら、偽葵太郎と一緒に茶店の椅子に座ろうとしてズッコケる。

それがさっきの喧嘩の元なのね?とお駒が聞くと、そうだと2人揃って言う。

では豪傑様、ご免遊ばせと偽太郎の肩を叩いてお駒は去って行く。

さようならと笑顔でお駒を見送っている2人に近づいた太郎は、御両者、先ほどは実に御見事でしたなと話しかける。

すると偽葵太郎が愉快そうに、おお、若僧見ておったか、御主ら修行中のものには良い勉強になったであろう、本当の真剣勝負とは、ちょいとああいうもんじゃ!と自慢してくる。

わしはな、天下の豪傑葵太郎と本物を前にして自己紹介するので、太郎は気まずくなり視線をそらす。

長崎で天下に響かせた葵太郎!葵太郎、良く覚えとけと偽者が言うと、我が輩は白馬童子、葵太郎など問題ではない…と隣に腰掛けていた偽者が自慢するので、何!と又偽葵太郎がいきり立つので、まあまあ互いに争う前に互いの懐中を改めた方が良かろうと太郎は注意する。

懐中?と言いながら互いに懐を探ってみた2人は、財布がなくなっている事に気付き、さてはさっきの女!と気付く。

端の方の椅子から2人を見ていた小助が、あの女掏摸、早い所やったもんだな~と感心する。

名人芸ねと夕香里も感心するが、あの偽豪傑が間が抜けているんだよと忠助だけは辛辣なことを言う。

そんな噂をされているとも知らず、偽葵太郎は、ここが葵太郎の偉い所だ、わしの財布にはちゃんと紐が付いているとすると懐から紐を引っ張り出して偽白馬童子に自慢する。

強いばかりが脳ではない、常に用心おさおさ怠りなく、これが真の…などと能書きを言いながら紐を引き出してみると、その先端には財布が付いてなかったので泣き出す。

それを見た偽白馬童子は大笑いするし、ここが白馬童子の偉い所じゃ、強いばかりが脳ではない、家のお母さんが言うとった、心には心して旅せよと、我が子の常の心から…などと言いながら紐を懐から引き出すと、やはり先端には財布は付いていなかったので、ありゃあ…と落胆し、偽葵太郎は爆笑する。

ひょんなことからその偽者2人を従え、暗くなって忠助が持つ行灯だけを頼りに旅を続けることになった太郎は、出ないかしら?と怯える夕香里に、出るだろうななどと答えるので、大丈夫ですか?太郎さんと小助が案じて聞く。

大丈夫さ、とにかく葵太郎と白馬童子の両豪傑がいるんだから心配ないと太郎は皮肉る。

その皮肉を気付かない偽葵太郎と偽白馬童子は互いに見つめ合ってにやつく。

だけどあの豪傑ちょっと頼りないよと忠助が言うと、こら小僧!頼りないとは何だ、頼りないとは!山賊の千人や二千人、この200kgの鉄棒で粉々に打ち砕いてみせるわ!と偽葵太郎が豪語すると、さよう…、お前たちが武芸を教えて欲しいと申すから連れて歩いてやっとるのに、頼りないとは何と言う言い草だ!と偽白馬童子も文句を言って来る。

その時小助が、あ!火だ!火が見えると言い出し、人魂かもしれないわと夕香里は言うので、行ってみようと太郎は言うが、2人の豪傑はビビり出す。

火に近づいて見ると、お堂の前で焚き火のようなことをしていた男女がいたので、御主たちは昼間とうげの茶屋で見た旅の者たちではないか?と太郎は語りかける。

すると男たちも、ああそう言えば、御武家一行のことは私どもも覚えております、さあどうぞと招いたので、焚き火に近づく。

ちょっと緊張の一瞬だったねと忠助が笑顔になって言いながら焚き火の前に屈むと、忠助君は小生を見習ってもう少し胆力を養う必要があるなと小助が言うと、忠助君は小スケさんのそそっかしい所ばかり習っているようよと夕香里がからかう。

しかし、偽豪傑2人は及び腰で、大丈夫かな?と偽葵太郎が言えば、偽白馬童子もお前たちは狐狸妖怪の類いではあるまいな?などと男女のことを怖がっている様子。

申し遅れましたが、私はこの先20里ばかり向こうの岡野荘の者で敬三郎と申しますと旅人の1人千早敬三郎(大月正太郎)は名乗る。

これは妹のみち、あれは召使いの松造(山波啓太郎)でございますと紹介する。

おおさようか…と言いながら、ようやく安心したらしき豪傑たちも近づいて来て、わしはな、天下に轟く…と偽白馬童子が自己紹介しようとすると太郎が扇子で留め、我々は気侭に旅を続けているのだが今宵一夜をみんなと一緒に過ごさせてもらいたい…と答える。

すると敬三郎は、私どもにとっても願っても無い幸せでございます、このように草深い山里の暗い夜、御武家樣方がご一緒にいて下されば…と答える。

すると小助が、忠助君じゃないが腹が減って来たぞと言い出す。

それを聞いた忠助は、備えあれば患なし、小助さんと違っておいらは用意周到だからなと言いながら、芋を2本取り出す。

あっ!お芋!と小助が驚くと、夕香里も、まあ呆れた!と言う。

ちぇっ!夕香里姉ちゃんを怒らせないようにしたくせに…と忠助が言うので、夕香里はまあ憎らしいと言って膨れる。

さ、早く火の中に入れなさいよと小助が勧めると、すると、ちょっと待って、おいらに名案があるんだから…と言い出した忠助が居眠りを始めた偽葵太郎の金棒を指差したので、ダメですよ、この鉄棒は200kgもあるそうだからと小助は教える。

するとこっそり金棒を持ち上げてみた忠助は、何だ、3kgくらいだよと言う。

忠助が鉄棒を取り上げようと偽青井太郎の手を退かそうとするが、何故か反対側の手が金棒を掴んでしまうので、小助も手伝って両手を外させ、金棒を奪い取ると、何だ金棒も偽物か…と小助はがっかりする。

その時、太郎は何かの気配を感じたのかその場を離れる。 夜の森の中に踏み入って様子を見ていた太郎は、昼間とうげ茶屋で会ったあの口ひげ侍とその一行が近づいて来たのに気付く。

待て!と手下たちを制した口ひげ侍は、狙うのは敬三郎兄弟だけじゃ、後は斬り捨てても良いぞと命じる。

すると手下は、邪魔者はこれで…と持参した弓を刺して答える。

良し、行け!と口ひげ侍が命じると弓を持った手下たちは前進する。

その頃、小助と忠助は金棒の刺に芋を突き刺して焚き火の上を揺り動かしながら焼いていた。

ああ良い匂いだ、巧そうだね~と小助が声を出し、小助も早く焼けないかな~と答える。

その時、夕香里が、あら?この鉄燃え出したわ!と気付く。

偉いこっちゃ、水かけなくちゃ!と3人が燃え出した金棒を持って騒ぎ出したのを、口ひげ侍が森の中から見つける。

その時金棒から手が離れ、あっ!と声を出した中、転がって、偽葵太郎の足下に転がってしまったので、騒ぎで目覚めた偽葵太郎は、足下で燃えていた金棒に気付き、金棒が…、わしに大事な金棒が…、もう知らないから…と泣き出す。

一緒に目覚めた偽白馬童子もそれに気付き、燃えとるがな…、鉄棒が燃えると言う話はわしは聞いたことがないぞとあざ笑う。

呆然とする偽葵太郎に、すみません…と夕香里が代表して謝る。

その後、焼芋を全員に配って食べ始めた一行だったが、それを先刻の侍の弓が狙う。

それに気付いた太郎が、危ない!伏せろ!と声をかけたので、一行は驚いて身を伏せる。

矢が次々にお堂に突き刺さり、持っていた焼芋に突き刺さった偽白馬童子は恐怖で気絶してしまう。

弓を放っていた連中の前にやって来た太郎は邪魔をし戦い始める。

ヒゲ侍は刀を抜くが、何故か刀身の短いおかしな刀だったので、太郎が余裕で迫るとたじろぎ、引け!と言いながら仲間たちとともに立ち去ってしまう。

それを見た偽白馬童子は、持っていた長い刀を偽葵太郎に手伝ってもらって抜くと、天下の豪傑白馬どうにの電光二刀流が怖いのか!ならばさらば見せよう、剣の舞を!と一人芝居を始める。

くるっと回るは宇宙の月ロケットの構え、右に八相、ドロップアウトの君の名は…、行くぞ〜!来ないのか?行くぞ〜!などと訳が分からない動きで1人騒ぎ出す。

豪傑、もう分かった、分かったと、戻って来た太郎が苦笑しながら偽白馬童子の肩を叩いていなす。

やはり白馬童子は日本一じゃ、悪人どもは我が輩の威光に押されてあたふたと逃げてしまいよったわいと偽白馬童子は自慢し豪傑笑いをする。

敬三郎と申したな?と旅人に確認した太郎は、急ぎ帰京するには何か仔細がありそうだな、差し障りなくば話してくれぬかと聞く。

はい…、実は私たち兄弟は長崎に留学していたのでございます…と敬三郎は話し出す。

数日前、父が非業の最期を遂げたと言う知らせをこの松造から聞き、取る物も取り敢えずこうして…と敬三郎は言う。

非業の最期…と申すと?と太郎が聞くと、それが…、半年ばかり前でございました…と松造が変わって答える。

岡野荘の長、千早四郎兵衛様、すなわちご兄弟にとってはお父上、私にとっては主人でございますが、その屋敷に突然怪しい賊の一団が押し寄せ、屋敷には火を放ち、ご主人を始め召使いたちの大半は嬲り殺ししたのでございますと松造は言う。

して盗賊の正体は分からんのか?と聞くと、はい、皆目見当がつきませんと松造は言う。

他に家族は?と聞くと、はい、私たちは母には幼くして死に別れましたが、国の家には姉が一人おります、その姉の安否も気づかわれまして…と敬三郎は答える。

盗賊団は何の目的を持ってそのような乱暴を働くのか分からんのか?と聞くと、はい、分かりませんと敬三郎はうなだれる。

実は先ほど我々を襲ったくせ者は、昼間茶店で御主らの後を追うように追っていたのと同じ奴らなのだと太郎は教える。

わしはその首領の顔を見たとたんに怪しい奴と気づいたのだが、御主たちの命は間違いなく何者かに狙われておるぞと指摘すると、松造は、えっ!それではご主人様だけではなくご兄弟までも?と驚く。

兄上!とみちが呼びかけると、私はどんな苦難に遭おうとも父の覚悟を討つ覚悟ですと敬三郎は言う。

それにはまず敵の正体を知り、敵が岡野荘の千早家を襲った訳を知ることが寛容だな〜と太郎は考え込む。

翌朝、千早兄弟と松造らは太郎一行と分かれ出発する。

あの人達大丈夫かしら?と夕香里が案ずると、拙者が護衛して行けば千人の護衛が付いたも同然なのに…と偽白馬童子は、のう夕香里殿とやら、御主の親玉はどうかし取るぞと言い出す。

それを聞いていた小助は、太郎さんには何か考えがあるんですよと言いながら一行は反対方向へ向けて出発する。

忠助も、でないと敬三郎さんを1人で行かせたりしないよと指摘する。

それを聞いていた偽葵太郎は、これ小助、今太郎と申したな?わしと同じ名ではないかと聞いて来たので、小助は焦り、忠助も、だってお兄ちゃんの方が本…と言いかけるが、夕香里が慌てて同姓同名は良くある話よとごまかす。

そらそうじゃ、しかしあの太郎の方が御主より、武芸、知恵、共に見込みがありそうじゃよと偽白馬童子が茶茶を煎れて来る。

そうかしら?ととぼけながら偽葵太郎も歩き出す。 お兄さん、昨夜の人達とっても良い方達ねと旅を続けていたみちが敬三郎に言う。

あの若い御武家様は本当に立派な方だと敬三郎も同意する。

本当に男らしいお方…とみちは太郎のことを忘れられないように言う。

そんな兄弟と松造が近づいて来るのを崖の上で待ち伏せしていたヒゲ侍は、とうとう兄弟だけになったぞとほくそ笑む。

3人なら容易いことだ、今度こそ逃がす出ないぞとヒゲ侍は配下の者達に命じる。

側に着くまでに宝物を奪い取るのだ!とヒゲ侍が命じると、この身はご機嫌斜めにあらせられる、抜かるな!と配下の侍が仲間たちに伝える。

その話を草影から聞いていた太郎は、何、宝物を奪う?と呟くと兄弟たちに向かって行った家来たちの後を追う。

一方、小助の方も私たちも急ぎましょう、何が起こるか分かりませんよと言っていたが、任しておけ、日本国中隠れなき太陽の子白馬童子様の御通りじゃ!と偽物がまた豪傑笑いをする。

その直後、兄弟の一歩後ろを歩いていた松造が鉄砲で撃たれたのでみちは松造!と驚く。

近くの草むらから追っ手の侍たちが飛び出して来て、銃を突き出したヒゲ侍が、これ、小僧!宝を出せ、千早家に平家の昔から伝わる紅玉の数珠を出すのだと迫る。

貴様たちは誰だ!父を殺したのも貴様たちだな!と敬三郎は傷ついた松造を抱きかかえながら聞く。

うるさい!黙って出すのだ!と配下の男も怒鳴りつけて来る。 早く出せ!とヒゲ侍が一歩前に進み出た時、彼の足下から白煙が舞い上がる。

驚いた敬三郎は道の少し先に白馬に乗って現れた白馬童子を見つけ喜ぶ。

お!白馬童子!とヒゲ侍たちも驚き、天保を一斉に撃って来るが、愛馬「流れ星」に身体を伏せながら白馬童子は突っ切って来る。

馬を下りた白馬童子は家来たちを斬り始める。

敬三郎も刀を抜いて応戦する。

ヒゲ侍は、刀身の短い二刀流で構えて来る。

第二篇

第三篇

完結篇
 


 

 

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