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生まれかわった為五郎

テレビバラエティ「巨泉・前武のゲバゲバ90分」のギャグとして一世を風靡したハナ肇の「あっと驚く為五郎!何?」から生まれたキャラクターを主役にしたシリーズ作品の1本。

ハナ肇主演なので喜劇だと思わせるが、この当時の松竹作品にありがちな社会の貧困層を描いた暗い社会風刺劇とも言うべき話で、ドタバタ要素はあるが笑えるような部分はあまりない。

今村昌平監督で有名な「重喜劇」の系譜ではないかと言う気もするが、当時、松竹の会社側が要求した客が呼べる喜劇路線と、監督の本来描きたいものの乖離から生まれた独特の世界のようにも思える。

日本の急激な変貌振りと時代に取り残されたヤクザと言う、当時流行っていた要素が対比的に描かれている。

当時の松竹はそれまでの社風として、東映のような割り切ったヤクザ路線には踏み切れなかったが、「男はつらいよ」の香具師とか、喜劇や風刺劇風な要素としてヤクザを導入していた。

本作は、ハナ肇さんは狂言回しと言った感じで、財津一郎さんと緑魔子さんが主役とも言うべき立ち位置になっている。

緑魔子さんは、当時ヌードも辞さない女優として活躍していた人で、目元などには疲れの色が出ているし、見ているだけで薄幸なイメージ。 財津一郎さんは、当時まだお若くて身体も動くし、オーバーな仕草と真面目そうな見た目のギャップが面白かった方。

ハナ肇さんは、馬鹿シリーズなど当時の松竹のプログラムピクチャーを担っていた人だが、渥美清さんのような達者なタイプと言うより、不器用ながら見た目のおおらかさで人を食ったようなキャラクターを演じさせられていた人と言うイメージがある。

貧困層のバイタリティみたいなものは感じるが、70年代と言う時代性を考えても、社会全体が総中流意識みたいになっていた当時、この世界観に共感できる人は限られていたのではないかとも思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1972年、松竹、猪又憲吾+熊谷勲脚本、森崎東脚本+監督作品。

満員電車の中で、抱いている子供が、おしっこ出るよ~!と騒ぎ始め、だから寝台車にしようって言ったじゃない!と妻が文句を言う前で、おろおろしていたのは犬丸三平(財津一郎)だった。

これでしなさいと空き瓶を差し出した三平だったが、子供は嫌だ!とだだをこねる。

その時、荷物置き網の上に寝ていた板東為五郎(ハナ肇)が、お姫様、色は白いがケツの穴は黒いってね…と唐突に下品なことを言いながら降りて来ると、子供を抱いて、ここからしなと言いながら窓を開ける。

子供が放尿し始めると、側で心配していた妻の顔に引っかかる。

子供を降ろした為五郎は、俺もやろうかな?と言い出したので、止めて!と妻が叫ぶ。

死に損ないのおやじに会いに行った帰りなんだがよ、40すぎで極道止めろ生まれ変わったつもりでやれって言うんだけど、生まれ変わるには1度死なないとね~…、にっこり笑いながら死ねないもんかね~などと言いながら、又荷物置き網に昇って笑った為五郎だったが、次に瞬間荷物置き棚が崩れ、為五郎は笑った表情のまま床に落ちて気絶する。

タイトル

兄ちゃん、良い仕事あるよ!姉ちゃん、良い仕事あるよ!おじさん、良い仕事あるよ!と会う人ごとに話しかける為五郎。

兄ちゃん!良い仕事あるよ!と話しかけた男は、刑事に手錠をかけられ連行されて行く。

その頃、パラダイスベッドのセールススタッフです!と自宅アパートのドアから入って来て挨拶する三平に、どうして首を曲げちゃうの?と厳しくダメ出しをしているのは、子供と一緒に部屋の中に入る妻。

パパ、そんなことじゃダメだよと子供までダメだししながら学校へ行く。

出社した三平は、同僚たちが次々とその週の販売実績を報告して行く中、今週売上数なし!と報告したので、販売部長(穂積隆信)から、君のような人間は我が販売特攻隊には必要なし!と言い渡されてしまう。

公衆トイレで用をたした為五郎は、小便小僧から出ている水を飲む。

そこにいた三平と再会したため五郎は、蒸発したいんだろう?頑張るんだな…、俺も20人くらい蒸発させたがよ、いなくなりゃ良いんだよ。踏ん切り付かないんだろう?と言うと、近くのホルモン焼き屋に連れて行き、これはコブクロって言って、子豚の子宮よ、食ってみなと勧める。

それまで食べたことがなかった三平は、コブクロを恐る恐る口に入れてみるが、旨いですね、食ってみると!と感激する。

その後、アルサロにやって来た為五郎は、俺はただの口入れ屋じゃないからなと三平に自慢すると、よって来たホステスたちに、この先生は大学の先生なんだと三平のことを紹介する。

三平は驚き訂正しようとするが、私、この先生好き!と真顔で言いよって来たのは大沼シカ子(緑魔子)だった。

ホステスを連れ連れ込み旅館にやって来た為五郎は、2組6000円と女将(武智豊子)から要求されたので、三平の鞄から勝手に金を抜き取り料金を支払ったので、付いて来た三平は、今日の売上全部!と驚くが、有り金全部使った方が踏ん切り付くってもんだと為五郎から言われると反論しようもなく、階段の所でがっくり座り込むが、茶を運んで来た女中から、お客さん、そこ邪魔なんですけどと文句を言われたので、そのままシカ子のアパートへ付いて行く。

シカ子は、私、鳥目なんですと言いながら、部屋の電灯のスイッチを探す。

前、浅草のこんにゃく屋に住んでたんですけど、毎日こんにゃくばかり食ってたんで鳥目になったんですと言いながら、シカ子は布団を敷く。

君、今夜みたいなこといつもやってるの?と三平が聞くと、恋愛は今日が初めてですとシカ子が言うので、そんなにして稼がなくても…と三平が同情すると、お金貯めて女大に行きたいんですとシカ子は言う。

君、お父さんいないの?と三平が聞くと、いますとシカ子が言うので、病気?田舎にいるの?と聞くと、東京です、刑務所ですと言うので、三平はぎょっとする。

シカ子が敷いた布団に入った三平は、逆向きに布団に入ったシカ子の足を見る。

先生、女子大の試験難しいですか?とシカ子が聞いて来たので、女子大と言っても色々あるからね…と当たり障りのない返事をすると、月謝の安い所ならどこでも…と言うシカ子は、私、父ちゃんに嘘付いたんです。

父ちゃん、嘘付くと、酒飲んで暴れる人で、ヤクザ1人殺したんですと告白する。

田んぼを売って金が出来たので、博打をやったらすって、ヤクザに金を借り… 先生は歩道橋を歩いている時、飛び降りたくなることありませんか?私時々あります…、父さんが出て来るんじゃないかって… 明日考えることにします…と言うシカ子に、父さん、いつ出て来るの?と三平が聞くと、明日ですと言うので三平は又固まる。

翌朝、シカ子のアパートで目覚めた三平は、その後、上野駅前の横断歩道の陸橋を歩いていたが、陸橋から身を降りだし、自殺しようとしている風に見えたシカ子を発見、慌てて駆けつけるが、実はシカ子は下の車道に迷い込んだ目の不自由な女性按摩に上から注意を促していただけだった。

しかし、それを知らない三平は、信者ダメだ!と言いながらシカ子に抱きついて橋の上に押し戻すと、ビンタをしたので、驚いたシカ子は、私死にませんけど…と言うので、そうですか…、どうもすいませんでした…、痛かったでしょう?と三平は勘違いに気付いて詫びる。

いいえ痛くありません、本当に痛くありませんから…とシカ子は答える。

三平はシカ子に付き添い、刑務所から出て来たシカ子の父大沼徳一(殿山泰司)を出迎える。 父ちゃん、先生ですとシカ子は三平を紹介する。

喫茶店で落ち着いた三平は、シカ子さんのことなんですが、シカ子さんまだ大学に行ってないんです、これから大学に入学しようと言う準備をするんですと嘘を言うと、それは良かった、校長に挨拶でも…と思ってたんだが…、あっしが3年間、何を考えていたか分かりますか?親分に盃を返し、せめて堅気になろう…、鹿島に来てくれないか、頼む!と徳一は言って来る。

電車とタクシーを乗り継ぎ、海辺の船着き場の辺りにやって来た3人だったが、タクシー代を払ったシカ子が、あの…、お釣りは?と聞いても、タクシーの運転手は無視して走り去ってしまう。

そこいらはすっかりコンビナートが建ち並ぶ工業地帯になっており、その変貌振りを目の当たりにした徳一は、ここが俺が昔、イワシを揚げた浜かよ…と絶句する。

墓の場所を見つけた徳一とシカ子は、実家と思しきあばら屋にたどり着く。

近所の田中大衆食堂と言う所で、祖母の行方を尋ねると、ダンプが撥ねた石が当たって入院したんだと女将が教える。

そこに地回りがやって来て、店の中にいた源太郎(中村是好)に、大将、引っ越す気になったか?と聞いて来たので、お前らなんかに土地を売れるか!と源太郎が邪険に答えると、俺たちは国の政策に協力してるんだよなどと地回りは絡んで来る。

その時、地回りの岩下(草野大悟)が、徳さん!と徳一に気付く。

花田のおやっさんの所に案内してもらおうと徳一は声をかけ、車に乗せてもらうが、周囲の様変わりを目にした徳一は、昔は芋やスイカしか穫れなかったんだ…と驚くと、今に人口30万の港にな所だと地回りは自慢する。

シカ子は、廃墟ビルの物陰で抱き合ってキスをしていた幼なじみのアヤと弟のター坊こと大沼正(高橋長英)に出くわし驚くが、ター坊は、こんな所に若い娘が1人で来るんじゃねえ!と言い残しバイクで去って行く。

徳一と三平は、花田組の専務菊川(草薙幸二郎)とレストランで会い、徳からムショからの手紙をもらった、盃返すつもりらしいが、籍は会社の興行に入っていると言いながら忙しそうにステーキを食べるので、盃を返すつもりはないことを知る。

そこに子分が、専務!社長はキャバレーエンパイアに出席します。そっちの方にも顔を出すようにとの事ですと伝えに来たので、失礼!と言い残しさっさと帰って行く。

その時、そのレストランに品の悪いグループが入って来たので三平が何事かと見ると、その中心にいたのは為五郎だった。

為五郎は連れて来た男たちに、ここで働きゃ、毎日ビフテキ食って、サウナ入ってこれだ!と女を抱く仕草をしてみせるが、注文を取りに来たウエイトレスには、今日は見学だけなので水で良いやと言って追い返してしまう。

その直後、三平に気付いた為五郎は、何だ、蒸発先生じゃないか!とうれしそうに近づいて来て、菊川が座っていた席に勝手に座ると、テーブルに残っていたビフテキを当然のように食い始める。

徳一は、シカ子の事は忘れてくれ、このまんま帰ってくれと三平に言うと帰って行く。

後に残った為五郎は、相談に乗ってやるぜ、何事もアフターサービスだからな…と笑う。 その頃、シカ子は祖母のウマ(北林谷栄)の家を訪ねていた。

母ちゃんは?と聞くと、キャバレーに行っとると言うのでキャバレーエンパイアにいた母親のヒノエ(都家かつ江)に会いに行き、父ちゃん帰って来たよ、堅気になるの…と伝えるが、ヒノエは信じようとせず、酒飲むと何でもする。

花田組が手放すわけない、堅気になったら帰って来る?もう遅いよ!と愛想が尽きたと言わんばかりに吐き捨てる。

やがて、ホールでは菊川が挨拶を始める。 三平から訳を聞き、徳一が堅気になりたがっていると聞いた為五郎は、破門状をもらったって、後で後ろからぶっつりだ!今日みてえに親分衆が集まっている時、喧嘩を売って親分に恥をかかすんだ、やってみるかい?やってみるか!決まった!と為五郎は勝手に決める。

キャバレーエンパイアでは、徳一の出世祝いのような形になり、親分衆が集まった中、花田組の親分花田大五郎(三木のり平)の横に徳一は黙って座っていたが、徳、飲め!と花田は勧める。

そこに乱入して来たのが為五郎で、おひけえなすって!と仁義を切り出したので、用は何だい?と花田が聞くと、そこのお兄さんにちょっと…と徳一を睨むと、俺の顔を忘れちゃいめえな?北海道から出て来たんだ!指しの勝負をするつもりはねえか?俺は板東為五郎!人呼んで人斬りの為五郎だ!と見栄を切る。

それを脇で聞いていたシカ子が、止めて!と止めようとするが、ヒノエはやってくれ!酒でも入らないと喧嘩できない臆病者だだよと亭主をバカにする。

それを見たため五郎は、女房ホステスで娘はパンパン…、泣けてくらあ!こいつにも客取ったんだぜ!とシカ子のことを思い出し告げ口する。 それを聞いた徳は酒を飲み始めると、背後にいた若いのから奪い取ったドスを持ち、為五郎を刺そうと追いかけ始める。

するとヒノエがビール瓶で亭主の頭を殴りつける。

倒れた徳一が落したドスを同行していた三平が拾った所に警官が乱入して来たので、三平はそのまま逮捕連行されて行く。 焦った為五郎は、八百長なんです!と花田に詫びるが、おい待て!解くの破門状欲しさに八百長喧嘩して、行きて帰れるつもりか!と花田は睨んで来る。

見せしめに腕の1本も取るつもりだったが、てめえの腹斬ってみせるか?と迫られた為五郎は、頼まれただけなんだ!盃の1つももらえるんじゃねえかと思って…と苦し紛れに為五郎が弁解すると、俺の盃が欲しいのか?と花田は聞く。

何なら裸踊りでもお見せしましょうと言った為五郎は、上着を脱いで、草津良いとこ~♩などと勝手に踊り出す。

そんな中、空のジョッキをテーブルの下に降ろした花田は、自分の小便でジョッキを満たし、土方相手に盃をやろう、ちょいとおかんが付いてるが、俺の身体を素通りしただけだ、遠慮いらないからたんと行け!と言いながらテーブルに湯気の立った満杯のジョッキを置く。

それを目にした為五郎、覚悟を決め、男でござんす、契りの盃喜んでいただきます!と言うなり、ジョッキを飲み干すと、それじゃあご返杯!お受けになっておくんなさい!と言いながら自分のズボンのチャックを開けて迫って来たので、さすがに腰が引けた花田は、改めて盃をやろうと言いながら、本物の盃を差し出す。

為五郎は、無理した小便が利いて来たのか、吐きそうになるのを堪える。

翌日から為五郎は着流し姿で街を闊歩するようになる。

ホステスの寄宿舎の前に来た為五郎は、ヒノエに会いに来たシカ子が、他のホステスから、おめえの母ちゃん起きねえよと言われて入り口の前で立ち尽くしているのを見つける。

そんなシカ子の前に来たため五郎は、興行を任された坂東為五郎って言うんだ、ちょっくら引き取りに行くかと言うと、警察署に向い、事情を聞かれていた徳一と三平を見つけると、いきなり三平をはり倒し、ここは一つあっしの顔を立ててやっておくんなせえ!花田の名代で来ましたと警官に頭を下げると、電話でも花田社長から八百長だって聞いたと警官も納得したので、どうもお騒がせしました!と頭を下げたため五郎は、旦那方に礼を言え!と又三平の頭を張る。

その後、三平は為五郎に連れられウマの家に来ると、庭先にあるドラム缶風呂に入れてもらう。

為五郎はウマに、花婿置いていくからな!と笑顔で言うので、すっかりシカ子の亭主だと思い込んだウマは、ありがとうございますと礼を言う。

シカ子、良かったな、これで可愛がってもらえるんだ!恋愛は頭でするもんじゃない、臍から下でするんだ!と為五郎がからかったので、三平はドラム缶の中の踏み板を踏み外し、アチッ!と騒ぐ。

徳は堅気になる、シカ子は大学の先生の婿が来る。これでター坊が帰って来たらいつお迎えが来ても良いや…とウマは言う。

その後、飯場の出稼ぎ労務者の宿舎にやって来た為五郎は、労務者(井上博一、佐々倉英雄、佐山俊二)たちをねぎらいに来るが、花田に博打で全部取られ、かかに送る金も残りゃしねえ!などと不満が出たので、相手がヤクザじゃ何にもしゃべれねえのか?と為五郎がからかうと、何言いやがる、てめえは小便飲まされたくせに!みんな言ってるぞ、小便ヤクザって!と逆にからかわれる。

花田にジョッキ一杯も小便が出る訳がねえ!と言い返した為五郎は、人生40年、花田が役人と組んでどんな悪事を働いたかこちとらちゃんとお見通しよ!などと威張るので、何でヤクザになってるんだ!メダカのおっさんに付いて回ってる金魚の糞じゃねえか!などと手ひどく若い労務者たちからバカにされる。

その時、勘弁してやれ!と中年労務者が中に入る。

粋がってねえで、一杯飲め!と為五郎は、労務者の中にいた正しらに酒を勧めようとするが、誰も相手にしないので、小便ヤクザの酒は飲めねえって言うのか!と怒鳴ると、若い労務者が酒を受けたので、気に入ったぜ、若えの!と為五郎は喜ぶ。

その頃、布団に入ったウマが横で寝ていたシカ子に、おらが死んだら、新墓はなく、じっちゃんを埋めた所に埋めてくれと頼んで来たので、じっちゃんは鹿島の人か?とシカ子が聞くと、岩手の人が、この沖で時化にあって浜に打ち上げられた…とウマは言う。

医者はいねえしよ、俺はおめえのひいばあちゃんから話を聞いていた。

死人を蘇らせるには女の肌しかねえって。 血のぬくもりが戻って来るまで、浜の女が焼酎飲んで、火照った肌で抱いてやっただ。

1人の女のはだが冷たくなったら次の女が…、身も知らねえ他国の男を抱いて行っただ。

一度死んだ男の魂は女の肌のぬくもりでねえと戻らねえと言うことさ…とウマは寝物語のように伝える。

翌日、柏木(田武謙三)ら中央から視察団が鹿島を訪れ、駅前では菊川が拍手して出迎える。

工事現場では、なかなか神主がやって来ないのでやきもきしていたが、何とかバイクの後ろに神主(桜井センリ)
を乗せて、途中で転んだりしながらも何とか到着する。

キャバレーエンパイアで視察団の到着を今や遅しと待ち受けていた花田は、為五郎の暗躍で視察団が来ないと知ると、起工式を止めて祝賀会にするんだ!と命じる。

しかし、女たちを乗せたバスが行方不明だと菊川に報告が入る。

その頃、起工式の現場にホステスたちを乗せたバスが到着し、ヒノエらホステスたちと柏木が降りて来る。

駆けつけた警官たちには為五郎が、女子寮に見学に行っていただけだと説明し帰らせると、団長さん、挨拶!等と勝手に進行役を買って出る。

現場では、徳一とヒノエら3組の結婚式が同時に行われる中、バスから車に酔ったウマを連れてシカ子も降りて来る。

起工式の現場では、ヒノエが三味線を弾き、民謡を女性が歌い出し、にぎやかなパーティが始まる。

たらふく飲んで、たらふく食え!今夜は俺のおごりだ!と為五郎が大きなことを言う。

団長も歌ってくれ!ばあちゃんも何の楽しみもないけど、せいぜい長生きしてくれ!などと為五郎は柏木やウマにも世辞を言う。

三平も踊りだす中、キャバレーエンパイアでは「臨海工業地帯中央視察団御一行様」と書かれた看板の下、待ちくたびれた花田が、もう5時間も待っとるぞ!と愚痴を言っていた。

リウム車諸君を犠牲にして、この整備値施設を作ったのが良く分かったと言う柏木の挨拶の後、シカ子も物悲しい浜歌のようなものを歌い出す。

さあ、三三九度のやり直しだ!と為五郎が、徳一とヒノエの仲を取り持つ。

すっかり酩酊した三平は、恋愛は頭でするんじゃなく、臍から下でするんだと言う意味が分かったよ!と為五郎に言うと、最後まで営業中と言って立退料を上げるんだなとアドバイスし、俺はずらかるからな、花田が黙っているのは、視察団がいる今夜だけだからなと答える。

俺はどうしたら?と三平が聞くと、乗っかっちゃえよと進める2で、為さん、あんたひょっとしたらシカ子に…と三平は気付くが、あんたが乗っかりゃあんたの愛の証しだと為五郎は言い残しその場を去って行く。

翌朝、吹かし芋を食いながら浜辺を歩いていた為五郎は、物悲しい浜歌を聞いたのではっと振り返ると、そこにはウェディングドレスを来たシカ子をお姫様だっこした三平が付いて来ていた。

三平はシカ子を砂浜に降ろすと抱く。

気付くと三平たちの姿は消えていた。

次ぎの瞬間、また裸の三平とシカ子が海の中で抱き合っている幻想を為五郎は見る。

列車の中で目覚めた為五郎は、シカ子!と呟く。

目の前に、三平とシカ子の姿を見たと思った為五郎だったが、それは全く見知らぬ夫婦だった。

あんちくしょう!と為五郎は呟く。 その夜、又、浜辺に戻って来た為五郎は、1人黙々穴を掘っている三平の姿を発見する。

そこに棺桶を担いだ一行が近づいて来たので、シカ子、殺されたのか!と為五郎が驚くと、違う、死んだのはばあちゃん、シカ子は連れて行かれた!と三平は怒りが収まらないと言う風に言い、近づいて来た徳一も、手前がいるとろくなことはない!と為五郎をバカにする。

そこに工場のガードマンが、そこに埋めちゃいかん!と怒鳴りながらやって来る。

シカ子もやって来て、私も一緒に埋めて!婆ちゃんと一緒に死ぬ!と錯乱状態になるが、さらに花田組の一行もやって来る。

ター坊たちは抵抗する中、為五郎は逃げ出そうとするが、頭を殴られ気絶する。

三平は掘った穴の中でシカ子の上に覆い被さり押さえつけていた。

地上では花田組の連中が、埋めちまったら見せしめにならねえ、簀巻きにして海に放り込め!と話あっていた。

花田組の連中が去った後、ここにピストルが埋めてありますとシカ子が三平に言う。

戦争中、ここは特攻隊の基地だったんです。

若い将校さんが芸者だった母さんが形見に拳銃をもらったんです。

母さんはその銃で死ぬって言い出して…、父さんが取り上げて壺の中に入れて埋めたんです。

私、そのときの将校さんの子なんです…とシカ子は打ち明ける。

その時、暗がりの中で海を見たシカ子は、浜辺に打ち上げられた簀巻きの為五郎を発見し、三平とともに駆けつけると、ウマの家まで運んで来る。

死んでいる!と為五郎の身体を触って悲鳴を上げた三平に、先生!火を燃やして!と声をかけたシカ子は焼酎を瓶から時価飲みし始める。

そして、来ていたドレスを脱ぐと死んだ為五郎の身体に覆い被さる。

その様を、囲炉裏の火を燃やしながら見た三平はいたたまれなくなり外へ逃げ出す。

その後もシカ子は焼酎を継続的に飲みながら身体をほてらせ為五郎に抱きつく。

三平は頭を抱え悩むと、先ほどの場所に行って穴を掘り始める。

やがて瓶が出て来て、その中にはシカ子が言っていた通り拳銃が入っていた。

拳銃を握りしめた三平は空に向けて一発発射する。

その頃、ウマの家では為五郎が生き返っていた。

シカ子が抱きついていたことに気付くと、シカ子、それほどまでに俺に惚れていたのかい?と呟く。

拳銃を手に戻って来た三平は、焼酎を一気飲みすると、シカ子を頼むよ!敵に突っ込んで死んだシカ子さんのお父さんのように!と言うと外へ出るかと思い気や、酔いつぶれてその場に寝込んでしまう。

それを聞いた為五郎は、そうか…、シカ子のおやじは殺されたのか…と勘違いし、三平が床に落としていた拳銃を拾い上げると、2人とも達者で暮らせよな!と言い残すと、丹前姿で暗い外に飛び出して行く。

キャバレーエンパイヤに乗り込んだため五郎は、動くな!ぶっ放すぞ!花田がどこだ!と子分たちに聞く。

あいつら皆殺しにしてやるからな!と怒りに燃えた為五郎は、サウナ室に入っていた花田を発見、拳銃を向けて引き金を引くが不発、慌てて何度もうとうとするが弾は出ない。

誰かいないか!と花田が子分たちを呼び込むと、子分たちがサウナ室に乱入し為五郎を押さえつけようとする。

為五郎が床に落とした拳銃がいきなり暴発を始め、サウナ室の壁に何個も穴が空き、スチーム管を破損したのか、穴から熱いスチームが噴出し始める。

これには花田もアチッ!と叫んで気絶、部屋に充満した熱気で子分たちも混乱するj中、為五郎は股間を押さえていた。

翌日、警察署に出向いた三平は、警官が前任で払っているのを見て、花田がバラされたのか?と驚く。

ひと月後ー 公衆トイレで、会う人ごとに、兄ちゃん、良い仕事あるよ!建設の方だけど…と呼びかけていた三平は、マスク姿の中年男に、おっちゃん!と話しかけるが、マスクを取ったその相手は為五郎で、何だ、蒸発じゃねえか!と笑うので、為さん!と三平も仰天する。

どさくさに紛れて大事な所をやけどしちまってよと股間を押さえたため五郎は、シカ子の所でほとぼりを冷ましていたと打ち明けると、三平の方は、身代わりになって警察へ行ったんだが証拠不十分で釈放になった。

自宅に帰ったら女房には既に男が出来ていたと明かす。

シカ子は、今じゃ、その辺でチンドン屋やって、女子大に行くんだってと教えた為五郎は、今度こそ踏ん切りを付けるんだなと教え諭す。

喜んだ三平は外へ飛び出すと、チンドン屋に混じって練り歩いていたシカ子を発見! シカ子さん!と呼びかけ近づくと、シカ子の方も先生!と喜んだので、三平はシカ子が奪っていたビラを受け取り、自分もビラ配りを手伝いながら笑顔でチンドン屋の後を付いて行く。

為五郎は人ごみの中に消えて行く。
 


 

 

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