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ザ・タイガース 華やかなる招待

グループサウンズブームの頂点に立つ超人気グループで、ジュリー(沢田研二)やサリー(岸部一徳)が所属していた、ザ・タイガース主演の音楽映画第二弾。

他愛無いアイドル映画といってしまえばそれまでだが、冒頭の「シーシーシー」などからかっこ良い曲が揃っており、全編、ジュリーを中心としたメンバー5人の歌と踊りが満喫できる楽しい音楽映画になっている。

後半は、彼らが楽器を売って人助けをする感動話のような展開になっているが、良く考えてみると、その楽器は彼らが買ったのではなく婆やのハナが買ったもの。

メンバー5人とも高校のPTAの有力者たちの息子と言う事で、要は金持ちのドラ息子たち。

苦労知らずのはずが演奏だけは巧いと言う辺りがアイドル映画特有の御都合主義なのだが、ナベプロ出資なので所属タレントのPR映画と言う感じだったのだろう。

特に、ジュリーのアップシーンには美人女優のように時として紗がかかっており、まさに「美貌のスーパーアイドル」として、女優並みに丁寧に撮られている事が分かる。

この頃のジュリーは何となく中尾ミエに容貌が似ている事が分かる。

マッシュルームカットの内田裕也や若き小松政夫など、当時のナベプロの若手がさりげなく顔を出している所にも注目したい。

当時「ビートルズ」ではなく、アイドルグループだった「モンキーズ」の写真が登場するのも興味深い。

痛快!とか明治チョコレートのCMソングがギャグ的に使われていたりするのも時代を感じさせる。  
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1968年、東京映画+渡辺プロ、 田波靖男脚本、山本邦彦監督作品。

配給の東宝マークに「青い鳥」のメロディ ガラスの馬車を背景にタイトル 「シーシーシー」の演奏とともに、赤塚修(岸辺おさみ=一徳)、糸川忠夫(加橋かつみ)、宇野健二(沢田研二)、江田浩(瞳みのる)、大坪太郎(森本太郎)の5人が朝起きる様子。

5人は学生服に着替える。

彼らの母校である高校では、担任の薮井(西村晃)が出席を取っていたが、最初の5人が誰も返事しないのでそうしたんだと聞くと、1時間目まではいましたけど?とクラスメイトが教える。

その頃、5人は草むらの上で、ツーカイ!などと言いながら、全員早弁を広げていた。(チョコレートは明治!のCMソング)

次の授業では、女の先生 岡村文子)が出席を取り始めるが、クラスの女子たちが声を低くして代返をするので、すぐに悪事がバレてしまう。

学校に呼び出された5人の親たち、宇野夫人(三宅邦子)、江田社長(潮万太郎)、糸川医師 (上田忠好)、赤塚(立原博)、大坪夫人(塩沢とき)は全員不機嫌で、江田社長などは、わしらの息子はモテるんだなどと言い訳するので、家庭の教育に問題ありです!と薮井は反論する。

宇野夫人は、家庭教師も付けてますと抗議して来たので、とにかくあの長い髪を切ってくれと薮井は頼む。

その時薮井を校長室へ呼んだ江藤校長(藤村有弘)は、相手はPTAの有力メンバーじゃないか!と注意するので、当然の事を言ったまでですと薮井は反論するが、当然の事が困るんです。

うちのような私立学校にとって生徒はお客様、そしてその親はスポンサーです。

君はいつでも首を切れますが、生徒は首を切れませんから…と江藤校長は言い聞かす。

ある日、家庭教師がなかなか放してくれなくて…と言い訳しながら、他の4人が集まっていた公園に糸川がミニバイクでやって来ると、羽織袴を来た薮井が、昼間から酒に酔って近づいて来るのに気付く。

薮井は、お前たちはなっとらん!さぼるならもっと堂々とやれ!女の子に代返をやらすなんてみみっちいと説教を始める。

俺も若い頃は良くさぼったものだが、親や教師の言う事は守ったものだと薮井が言うと、僕たちは先生になりたくないから言う事を聞かないんですなどと憎まれ口を叩く。

髪を切れと言うのも先生が薄いからですか?と赤塚が嫌みを言う。

要は精神の問題だ!昔から髪が長い人間には傑物が多かった。

由井正雪然り、チェ・ゲバラなどと言うのは髪だけではなくヒゲまで長い!などと薮井が言っていたとき、宇野の家の婆やハナ(野村昭子)がやって来る。

若者よ、太陽のように赤々と燃えよ!若き虎のように雄々しく生きよ!と薮井が励ましていると、坊っちゃま、大変です!奥様が大変なお怒りですよ!とハナが知らせる。

その言葉通り、5人の親たちが挟みを持ってやって来たので、慌てて公園を逃げ出した5人は、駅に停車中の貨物車に隠れるのだったが、その貨車はすぐに扉を閉められたので閉じ込められた5人は焦る。

でも宇野だけは、チャンスだよ!ただでどっかに行けるんだ!と言い出すが、嫌だよ、家出だけはしなくなかった…と他の仲間は愚痴る。

みんな金いくら持ってる?と赤塚が聞くと、みんなが出し合った金額はたった25円しかなかった。

すると宇野が、働けば良いじゃないかと提案する、すると大坪が乗った!と言い出し、結局ぐずっていた他の仲間も賛成し、これからも5人で行くぞ!と貨車の中で手を合わせ合う。

東京!

5人はモデルのような女性や「モンキーズ」の看板を背負った人と出会う。

5人の家出を知った親たちは高校で薮井を吊るし上げるが、酒を飲んで説教した事は事実ですが、家出の原因とは思えず、ハプニングです。

行方不明は未知への冒険と言うべきでしょうなどと薮井は反論していたが、江藤校長は今すぐ5人を捜す為に薮井に探索に出発させると詫びる。

新宿西口にいた5人は腹を空かして参っていた。

側にはジュリーの写真集を見る女性の横で、菓子パンを頬張っている女性がいたので、余計に彼らの空腹感は増していた。

その時、宇野が、そうだ!良い考えがある!と言い出す。

彼らは、旅館に到着した女子校の修学旅行の列に紛れ込み、食堂で一緒に飯を食おうとするが、自分たちの席がないと一部の女性とが教師に訴えた事から、その場で点呼が始まり、赤塚ら5人と同姓同名の女子が一緒に返事をした事からあっさりバレてしまい、5人は這々の体で旅館から逃げ出す。

一方、5人を追って上京した薮井は、暗いゴーゴーバーで5人を捜そうとしていたが、暗過ぎます?警察の方ですよね?とママのあい(春川ますみ)が話しかけて来たので、田舎の教師ですと答えると、失礼しました、お詫びに1杯奢りますわとあいは自分の勘違いに気付く。

薮井はそんなあいに、ママさん、家出少年のたまり場を知りませんか?エレキ好きなんですと聞く。

その頃5人は、とある音楽事務所の正宗支配人(大泉滉)にオーディションを受けさせてくれと申し込みに行っていたが、けんもほろろに追い返される。

がっくりして帰りかけた5人だったが、モンキーズの絵が描いてあるスタジオの中に楽器が置いてある事に気付き、追出されても構うものかと覚悟を決め、勝手に「君だけに愛を」を演奏し始める。

その音を支配人室で聞いた正宗支配人は、所属のバンドマンたちが演奏していると勘違いし、今日は珍しくいい音を出してるねと感心する。

そこへやって来たのが薮井で、家出少年いませんか?と聞いて来たので、交番はあっち!誰?と正宗支配人は一旦追い払いかけるが、教師です、少年グループが家出しましてねと言うので、君、あの音聞いて!と隣のスタジオから聞こえて来る演奏を言い、うちは一流じゃないと雇わないのと自慢するが、そこに所属のドラマー(内田裕也)が楽譜とスティックをロッカーに取りに来たので、自分の勘違いに気付く。

隣のスタジオに様子を見に行った正宗支配人はこれはいける!頂きましょう!と一発で5人の演奏を気に入ったので、5人は、雇っていただけるんですか!と喜ぶ。

その時、スタジオを覗き込んだ薮井は、そこにいるのが探していた5人と気づき、おお!やっと見つけたぞ!と喜ぶ。

先生!僕たちは赤々と燃えていますよ!と赤塚も薮井に報告するが、一緒に帰ろう、今電車の時間を調べるからと薮井が時刻表を取り出すと、5人はヤバいと気づき、その場を逃げ出す。

駐車場から代々木公園の方へ逃げて来た5人は、とあるビルのエレベーターに乗り込む。

エレベーターが到着したのはレストランのある階で、5人はボーイに案内されるまま中に入り込んでしまう。

5人が座ったテーブルには、何となく成り行きで注文した料理が運ばれて来るが、それを食べようとした時、薮井がやって来たので又逃げ出す事にする。

会計係の瀬戸口久美(久美かおり)は、次々と出て来る5人に支払いを要求するが、4人はみんな後ろを指差すので、最後に出て来た宇野が7000円を請求されピンチになる。

その時、外国人客が先に伝票にサインをし、あなたもサインですか?と久美から聞かれた宇野が頷いて伝票に何か書いて渡す。

受け取った久美は、そこに「ごめんなさい」と書かれてあるだったので唖然とするが、もう5人の姿はなかった。

公園の噴水の所で休む事にするが、その時、宇野の顔のスケッチを描いた画学生マリ(小山ルミ)が、そのスケッチを上げると差し出して来たので、ありがとう、でも僕、ご飯の方が良いんだよと言うので、同情したルミがごちそうすると誘うと、他の4人もうれしそうに近寄って来たので、君たちも!と驚く。

ルミは5人を自分のアトリエ権自宅に連れて来ると、兄貴のアトリエなの、今、アメリカに行ってるの、ルームメイトと一緒に暮らしているのだと教える。

そこに帰って来たのがそのルームメイトの久美で、靴を見ると、どうしたの?お客さん?と聞いて来る。

拾ったの、5人…とマリが教えると。またマリの悪い癖が出たのねと久美は呆れる。

今日は給料日でしょう?とマリが聞くと。それがサラリーしょっぴかれちゃったのよ、無銭飲食なの、5人組なの…とぼやきながら部屋に上がって来るが、そこにいた5人を見ると、食い逃げの犯人よ!ねえ、7000円払って!私、サラリーから引かれたのよ!と宇野に詰め寄る。

宇野は驚き、すみません、必ず働いて返しますと詫びるしかなかった。

その頃、一旦高校に帰っていた薮井は、江藤校長の金魚に新宿で餌を買って来たと言いながら与えていた。

報告かたがら帰って来たと言う薮井に、本当に息子たちを連れ戻す自信がありますの?と宇野夫人が文句を言う。

糸川医師が、皆さん、警察に頼んだ方が…と提案するが、そこにハナがやって来て、私を東京へやって下さいと宇野夫人に直訴するので、東京は広いのよと宇野夫人が言い聞かせようとする。

しかし、ハナは、坊ちゃんはハナじゃないとダメなんです!私、行きます!と決意の固さを見せるだけだった。

宇野たち5人は、マリのアトリエ兼住居で、掃除、洗濯、皿洗いなどの家事手伝いをやらされていた。

しかし、みんな要領が悪く、洗ったばかりの皿を全部落して割ってしまったり、洗濯物をぼろぼろにしてしまう有様なので、マリも久美も呆れてしまう。

疲れ果てた5人が全員眠っていたある日、帰宅して来た久美は、ジュリー!起きてよ!音楽事務所で働けるのよ、ステージに出られるのよ!と報告する。

5人がやる仕事とは、シューティング・スターズと言うバンドのバンドボーイだった。 畜生!こんなの叩いてみたいな!と江田は、ドラムを目の前にスティックを振る真似をするが、10年早いよ!とメンバーから睨まれる。

帰宅するなり眠ってしまう5人を見たマリと久美は、あらあら、バンドボーイも楽じゃないのね…と同情する。

いつしか、5人の中の宇野に恋するようになていた久美は、寝ている宇野の頬に、口紅で「Jully」と書きかけた所で、寝ぼけた宇野に口紅を奪われてしまう。

それでも久美は、宇野の寝顔を見て微笑むのだった。

久美は「光ある世界」の曲が流れる中、宇野とすすき野で鬼ごっこをする夢を見る。

その頃、薮井はハナと一緒に又新宿に到着していた。

ハナは一緒に付いて来ようとする薮井に、私にはちゃんと考えがありますからね、先生が一緒だと逃げ出されます。

それに先生だって男ですから、妙な気持になられたら困りますからなどと言い、勝手に行ってしまう。

誰があんな婆なんか!と薮井は切れるが、その後、あいのゴーゴークラブに来ると、持ってきたい中の土産を渡す。

すると、これ、私の田舎の名産よ!とあいが言うので、同県人!と薮井も奇遇に驚きながらも喜ぶ。

その時、おじさん、描かしてくれる?とスケッチブック片手に声をかけて来たのがマリで、君、画学生?と気付いた薮井が快くポーズを取ると、止めた!だって、おじさんの顔、全然芸術的ないんですもの…などとマリは言う。

武道館前の階段でへたり込んでいた5人の元にやって来たマリと久美は、差し入れのトウモロコシを投げて渡す。

あんたたち、もうこの仕事に飽きてるんじゃない?とマリが聞くと、演奏聞かせてと久美も声をかける。

でも楽器が…と5人が戸惑うと、そこにあるじゃないとマリが言う。

運んでいる途中の楽器の事だった。 やっちゃおう!と糸川が言うと、でもここじゃあ…と宇野が言うので、車も借りて…と言う事になる。

彼らはロケバスを使い、人気のない廃工場のような場所にやって来る。

しかし、電源の事を失念していたので、近くの電柱の電線から直にコードを引いて電気を盗む事にする。

電柱に昇っていた赤塚はは、2本の線が付かないようにしろよ!ショートするからと下のメンバー達に注意する。

久美は用意していたオープンリールのテープレコーダーのスイッチを押す。 5人は「リラの祭り」を演奏し始める。

しかし演奏の後半、電柱から引っ張っていた電線が接触、ショートし、彼らはマリと久美と別れ別れになったまま逃げ出す。

外は既に暗くなっていたが、5人は囚人服姿の5人とすれ違う。

その直後、城東警察です。鑑別所から脱走した少年がいますとアナウンスしながら走り去るパトカーを見かけたので、さっきのがそうでは?と噂し合っていた5人だったが、いきなり警官が飛びかかって来る。

牢に入れられた5人は、鉄格子の所で違うんです!と騒いでいたが、その時、先に入っていた少年から、おい、いつまでも騒いでないで、こっち来て、番長に挨拶しろ!と言われたので、その少年の前に恐る恐る跪こうとするが、何勘違いしてるんだよ、俺が番長じゃねえよ、こっちの兄貴だよ、虫も殺さねえ、好い兄貴だと言われる。

寝そべっていた番長(ケン・サンダース)から、叩きでもやったのかい?と聞かれた宇野は、どもりながらこれまでのいきさつを説明する。

相棒の少年から、4号房の奴らと間違って捕まったらしいんですよと聞かされた番長は、屋根付き飯付き、最高なんだよ、ここは…、シャバは窮屈で退屈な所なんで、みんなイライラしてるじゃねえかよと言い聞かせる。

それを聞いた糸川は、飯付き?これは良いよ…などと言い出したので、でもここだと音楽も出来やしないよと宇野は言い、阮元を電柱から盗んだらショートしたいきさつを番長に聞かせる。

すると番長は、馬鹿野郎!楽器がねえと練習できないだと?甘ったれるな!と叱ると、その気になりゃ、ここだって音楽出来るんだと言う。

そして、壁にクレヨンでトランペットの絵を描き吹いてみせると、本当にトランペットの音が聞こえる。

お前たちもやってみるか?と言い、番長がクレヨンを投げ渡すと、5人は早速自分たちの楽器を床や壁に描き出す。

宇野は壁にマイクの絵を描く。 早速演奏を始め、全員囚人服姿に変わった5人と番長たちは、一緒に「ジンジンバンバン」を歌い踊り始める。

その頃、アトリエで絵を描いていたマリは、帰宅した久美に遅かったじゃない!と声をかけと、ジュリーのテープ、聞いてもらおうと思ってと久美が言うので、いつまでそんな事やってるの?どさくさ紛れに逃げ出してそれっきり!借金も返さなくちゃいけないし…、見てよこれ!切れた電線なんかの修理代!と請求書を見せる。

すると久美は、悪いから、私払うわ…などと言う。

宇野たち5人は、何の詫びもなく解放され、見つかった本当の脱走犯に牢屋を明け渡すことになったので、大人って勝手だな…とぼやく。 警察署の前には、ハナが用意したタクシーが待っていたので、やっぱり家に帰るのかい?と宇野は乗り込みながら聞いていた。

一方、5人の演奏の録音テープを久美から聞かされた山本プロの山本社長(牟田梯三)は、売れる要素を持っている!すぐに連中を呼んでくれたまえと気に入るが、久美は当のメンバーたちの行方が分からないので曖昧な態度を取ッたので、何かまずい事でも?と山本社長は怪訝そうに聞いて来る。

ハナは、宇野たちを自分が用意していたマンションに連れて来ると、ここが坊っちゃま達の家ですよ、婆やが借りたんです。婆やの貯金全部使ってしまいましたよ。

最後までやり遂げて下さいねと言いながら、用意しておいた楽器類まで披露すると、ぼんやりしてないで、練習!練習!と発破をかける。

その頃、薮井はまだゴーゴーバーで飲んだくれていたので、いくら私が奢るからっていい加減にして下さいよ!とあいは文句を言っていた。

しかし薮井は、側にいた若い客の腕を取ろうとするが相手にされなかったので、みんな逃げちまうんだよ!と嘆くので、嫌がるものを返そうとしていてもしょうがないでしょうとあいが言い聞かせると、俺、どこへ行きゃ良いんだよ!と薮井はすねる。

先生?と見つめるあいの眼差しは意味有りげだった。

レストランに久美を訪ねて来た宇野だったが、代わりのレジの子が、久美さん?とっくに早退したわよ。

最近恋人でも出来たんじゃない?などと言われてしまう。 マンションに帰る途中、宇野は久美の口紅を持って悲しむ。

その頃、他のメンバー達は、マンションの大鏡の前で、1人1人ステージ衣装に変身していた。

最後に赤塚が同じようにジャンプして変身しようとするが巧く行かない。

鏡を拭き直して、もう一度ジャンプするとステージ衣装になる。

糸川が「廃墟の鳩」を歌い始めると、宇野は静かに部屋を出て行く。

陸橋を渡り、マリのアトリエのブザーを押すが誰も出ない。

久美は山本社長にもう少し待って下さいと頼んでいたが、あんまり当てにしないで待ってるよと山本社長はやや冷めた表情で答える。

陸橋の上にいた宇野は、脇を通り過ぎる列車の上に向かって口紅を投げ捨て、ゲームセット…と呟く。 山本プロからの帰り道、久美は歩道の反対側を歩いていた5人に気付き、赤信号の交差点を強引に横切ろうとする。

その直後、急ブレーキの音、驚いて交差点を見る通行人たち。

宇野たちは山本プロに来て社長さんに会わせてくれと頼みに来るが、社員の田村(小松政夫)に追い返されかけていた。

赤塚を見た田村は、うすらデカくて気持悪いんだからと悪態をつき、僕たちバンドボーイの経験もあるんですと江田が売り込むと、そんな手あかがついたのはもっとダメ〜などと言う。

そこに、バンドボーイを捜しているとやって来たのがハナで、応対した田村が、こんな連中で良かったら拾って行ったら?と5人に会わせると、坊っちゃま!と驚いたハナは、この方達のバンドボーイを捜しているんですよ!とハナは田村に文句を言う。

田村は、誰かこのキ○ガイ婆さんを連れて行って!知らない、知らない!とすねる。

そこに、何騒いでるの?と出て来たのが山本社長で、5人を見ると、君たち、これを聞いてみたまえと言いながら社長室に招き入れると、そこに置いてあったテープの演奏を聴かせる。

ある人が売り込みに来たんだが素晴らしいだろう?素人の人達にもこれだけ出来る人もいるんだ…などと山本社長が聞かせて音楽は、途中で爆発音が入ったもので、あれ、あの時の!と気付いた宇野は、これ、僕たちの演奏なんですと訴える。

そうか、君が瀬戸口久美が言っていたバンド!探していたんだよ!早速うちでやってもらおう。

「ヤングポップス」の前座をやってもらおうと山本社長は喜ぶ。

ハナもそれを利いて喜び、早速あなた方のお父様やお母様たちに知らせなきゃ!と張り切る。

宇野は再びマリのアトリエを訪ねブザーを押すがやはり返事はなく、隣の主婦が窓から顔を出し、お気の毒でしたね、轢き逃げですって…と言うので、宇野は愕然とする。

病室では、入院した久美が、ジュリーを探して!チャンスなのよと、見舞に来ていたマリに頼むが、もっと自分の事を考えたら?どうしてお金を作ったら良いのかしら…とマリは絶望していた。

そこに宇野がやって来たので、探していたのよ!と久美は喜ぶ。

宇野も、聞いたよ、山本社長に聞いて来たんだと答えるが、手術、今日しないといけないのとマリが説明する。

でも別に命には別状ないって…と久美は無理に笑おうとするが、でも一生足が…とマリは案じ、お金ないから手術できないなんて!と悔しがる。

宇野たちは山本社長に前借りを頼みに行くが、前借りなんてとんでもない!失敗したら二度とチャンスはないからね!と叱られてしまう。 マンションに戻って来たメンバーたちは、緊急募金をしに行った江田も成果なく戻って来たのでがっくりする。

電報打とう、田舎に!と江田が提案するが、間に合わないよと宇田が言う。

糸川が1人ギターを弾いて歌い出す中、売ろう、楽器を!と宇野が言い出す。

売ったら、明日のステージどうなるんだよ?と江田が反対するが、捨てるか、チャンスを…と赤塚も言い出す。

しかし江田は、楽器は命だぜ、売れやしないよと反対するので、分かったよ…と宇田も諦めかけるが、待てよ、鑑別所の番長が言っていたな、楽器がなくても音楽は出来るって…と言う。

それまで玉って聞いていた糸川が、良し、売っちゃえ!と言うと、糸川も賛成!と言い出す。

翌日、手術室の前でマリと一緒に待ち受けていた宇野たちは、術後の部屋から出て来た看護婦から、無事終わりましたよと教えられ、安堵する。

一方、「ヤングポップス」会場にはハナが呼んだ親たちが客席に付くが、そこに薮井も来て、首に縄をつけても連れて帰りますと話しかけると、何を言うんだ!息子たちはスターなんだよと江田社長が文句を言う。

しかし、舞台裏では楽器がなく演奏できない事を知った山本社長が5人を叱りつけていた。

僕たち、借り物でも巧く出来ますと江田がそこに置いてあった人の楽器を見て売り込もうとするが、わしがイランと言ったら二度とデビューは出来んのだ!と山本社長の逆鱗に触れただけだった。

一方、2時間も待たされた大坪夫人も激怒しており、糸川医師も、今日限り東京から帰るんだ!と叱咤する。

宇野はハナに、良いんだよ、ハナ…、僕たち帰るよ…となだめる。

その頃、薮井はあいのゴーゴークラブでマリから事の次第を聞き、どうして奴ら、それを言わんかったのかな?うん!奴ら、本物になりおったな!と感心する。

だったら先生、他にやる事あるんじゃないの?と一緒に話を聞いていたあいも薮井に話しかける。

分かった、皆まで言うな!仮にも俺は奴らの先生だ!と言うと店を出て行く。

それを見送ったあいは、あの先生頼りないから、私も一肌脱ぐかな?私は5人のためにやるんじゃないのよ…とマリに言い、子供は分からなくて良いの…と謎めかす。

病院で久美を見舞った赤塚は、みんな君のお陰だと礼を言っていた。

宇野は、久美ちゃん、僕たち…、東京を…と言いかけたが、私にも聞かせて、今日のステージでやったのと同じ曲を…、お願い!とベッドの久美は頼むので、それ以上は何も言えなかった。

宇野は車いすに乗せた久美を病院の庭先へ連れて来る。

そして、ガラクタを組み合わせた楽器のようなものを持ち「青い鳥」を歌い始める。

そこに薮井が山本社長連れてやって来る。

どうやら薮井から事情を聞いた山本社長は、宇野たちの行動に感心したようだった。

そこに、ハナとあいが軽トラで楽器を運んで来る。

親たちも駆けつけて来る。

いつしか5人は本物の楽器とステージ衣装に着替え、大勢の観衆を前に歌っていた。

やがて、彼らはステージデビューし、「真っ赤なジャケット」などお馴染みのメロディで一躍スターダムを駆け上がって行く。

歌い終わった5人が、ステージの置くに飛び込むと同時に、手前の方からジャンプしてストップモーション。
 


 

 

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