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素敵な今晩わ

クレージーキャッツのメンバーで、植木等、ハナ肇、谷啓に次ぐ「第4の男」として注目された犬塚弘さん主演映画で、初の主演映画ではないかと思われる。

色んなタイプの映画を職人風にこなしていたこの当時の野村芳太郎監督作品らしく、低予算の添え物風の軽いタッチの映画で、おしゃれな夢の中の雰囲気と、貧乏臭い下町風景がミックスした独特の世界観になっている。

美しさ絶頂の頃の岩下志麻さんが夢の中で出会える理想の女性として登場し、冴えない男が夢の中でラブラブの関係になるという、何ともうらやましいファンタジーになっている。

岩下志麻さんがミニスカート姿でツイストを踊る姿と言うのも貴重。

ハナ肇、桜井センリ、石橋エータローと言ったクレージー仲間もゲスト的に登場しており、中でも松竹「馬鹿シリーズ」でお馴染みのハナ肇さんは単なるゲスト以上のキャラになっている。

穂積隆信さんが女たらしの二枚目風キャラで登場しているのも珍しいし、悪女風のキャラで登場している楠侑子さんは日活で活躍していた方。

この作品のもう一つの見所は、中村晃子さんがやや三枚目風の眼鏡っ娘キャラとして登場している所だろう。

1967年「虹色の湖」で人気歌手となる2年前の作品である。

当時の貧乏臭くなった松竹では、彼女の魅力を惹き出す企画は望めなかったのではないかと思う。

月給が2万と飛んで007円と言ってみたり、タキシード姿で犬塚さんが登場したり、アクアラングを背負った楠侑子さんが噴水の中から登場し、水中銃を撃ったりと言うのは明らかに「007」の影響だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1965年、松竹、馬場当原作+脚色、野村芳太郎脚色+監督作品。

野良犬が又1人~♩(歌が流れる中)

銀座の街を歩く浜村大介(犬塚弘)は、年齢31才、出身は千葉犬吠埼の先端…

親兄弟はなく、学歴は高卒で落第1回… 職業は自動車教習所の指導員で、月給は2万0007円…

その時、大介に見知らぬ美女、志藤由利子(岩下志麻)がぶつかって来る。

通り過ぎた由利子を振り返り、あんな恋人があったらな…と呟く。

タイトル(アニメ)

城東自動車練習所では、大介が、京極夫人こと利枝(村田知栄子)のあまりの運転センスのなさに手を焼いていた。

しかし京極夫人は腕が上達ないことも気にしてない様子で、嫌ね、車って…、殿方みたいで横道に逸れてばかり…、先生が悪いんじゃないかしら?武田先生なんてハンサムだし…、武田先生に習っている人は40教程で免許取れたんですって…、武などと指導員に原因ありのように言い出す。

頭に来た大介は、確かに武田先生はハンサムですが、例えアラン・ドロンが教えても、奥さんでは100教程やっても免許は取れませんよと嫌みを言う。

事務室に戻って来た大介は、チャコこと立花久子(楠侑子)が武田(穂積隆信)と親しげに雑談しており、アパート寄って良い?などと甘えるように聞いていたが、武田が素っ気なく帰ると、ねえ、武田さんどう思う?最近冷たいのよなどと聞いて来たので、虐めただけだろう?チャコちゃんなら誰だって虐めたくなるさとお世辞を言うと、あの人思いやりがないの、せめて浜村さんくらいの雰囲気で優しくして欲しいななどと大介にも甘えてように言って来る。

その日も、いつものように帰りに屋台で一杯引っ掻け、電車が走りすぎる線路脇の道を通っていた大介は、空き地の土管の中にいた子犬を見つけ、からかっているうちに懐いて付いて来てしまったので、そのまま抱いて、下宿先の美容院の二階に連れて行く。

子犬をスーツに包んで階段を登っていた大介だったが、夫のおじさん(渡辺篤)に灸を据えてやっていた鳴き声に気付いた下宿のおばさん(武智豊子)は、二階へ来ると、困る輪、犬なんか持ち込んじゃ…、良い加減にして下さいよ、せっかくきれいにした所なんだからと苦情を言い、そんなことよりお嫁さんでももらったら?これ来たわよと言いながら封筒を渡すと、犬買うんだったら部屋代上げさせてもらうよと嫌みを言って降りて行く。

封筒の送り先は結婚相談所だった。

入っていた便せんを読むと、あなたのご希望の方、あなたを希望する方、ともにございませんと書いてあった。 子犬を抱いた大介は、広い東京、慌てることはない…と語りかけながら、子犬を棚の上に置いて布団を敷く。

(夢)パジャマ姿の大介は逃げ出した子犬を追って外に飛び出し、土管が置いてある空き地へやって来る。

土管の中を覗き込むと内部は不思議な光で輝いており、その中に入って反対側に出ると、そこは海辺で、近くには家があり、その庭先で昨日銀座でぶつかりかけた由利子が子犬を抱いているではないか。

大介に気付いた由利子が、どなた?と聞くので、あの犬が…と子犬を刺すと、あなたですの、チビを見つけて下さったのはと言うので、あなたの犬だったんですか…と大介も意外そうに答える。

お入りになりませ?と誘われたので家の中に入れてもらうことにする。

チビにも困ったものですと由利子が言うので、僕にとっては福の神です、鼻の回りが黒い犬は幸運をもたらすと言いますし、現にこうしてあなたと又会えたんですからと大介が言うと、由利子は何のことかしら?と不思議そうな顔をする。

数寄屋橋であなたが私にぶつかって…と言うと、覚えてませんわと由利子は言う。

(現実)翌朝、下宿の娘照代(中村晃子)が大介を起こしに来て、何の夢見てたの?と聞き、お母さんが犬買うんだったら1000円払って欲しいってと伝えて、子犬にコロ!と呼びかける。

チビだよ!と訂正した大介は、出かけるから!と立ち上がるが、今日は遅番でしょう?と照代は不思議がり、分かった!結婚相談所でしょう!などとからかって来る。

大介が向かったのは数寄屋橋だったが、由利子に会うことは出来なかった。

その後大介が教習所に行くと、赤木部長(田武謙三)から、これ京極夫人の成績表だよ、仮免出してやんなさい、ここは立ち退き要求が来てるんだ、京極夫人はここの地主だ、何だ君の身だしなみは!もっとお客様本意で教えるんだよ!と文句を言われる。

その日の大介の生徒はヤクザ風の男(桜井センリ)だった。

給料取りはハブれてるななどと言うヤクザは、女世話しましょうか?などと運転席から声をかけ、大介が助手席に乗り込むと、心配しないで、世の中持ちつ持たれつなどと言うが、思わずアクセルを踏み込み、縁石に乗り上げてしまう。

外に出て車のボンネットを開け中のエンジンの様子を覗いた大介は、呆れたように、出て来いよ!車壊したら給料パーじゃないか!と怒るが、黙って聞いてりゃ良い気になりやがって!女と聞いたときはにやにやしやがったくせに!キリストみたいな顔しやがって!と言いながら、大介をボンネットで挟むと、つばを吐きかけて帰ってしまう。

ズボンが避けたので、事務所のロッカールームでパンツ一丁になりズボンを縫っていると、チャコがやって来て、私がやったげるとズボンを取り上げ、さらに内股に怪我をしていることに気付くと、薬を塗ってやるなどと言い出したので、大介は慌て、良いよ、1人でやるから!と遠慮する。

部長には叱られ、客からは殴られ、これで飲まずにいられるか!と、その日も、帰宅時の大介は、飲み屋に立ち寄るが、先客でいたのは武田で、カウンターで隣に座った大介に、チャコに口説かれたんだけど、チャコはあれで出戻りだぜ、俺は飽き飽きしてるんだ。ああいう狸顔は好きじゃないんだなどと散々チャコの悪口を言い、お前がチャコを口説けば良いんだ、あいつもお前のことまんざらでもないようだぜなどとお世辞を言うと、今夜の払いはお前のつけで良いだろうなどと言い残しさっさと帰ってしまう。

武田の奴、俺をからかいやがって…、チャコが俺なんかに…と思いながらも、一抹の希望にすがり、武田のアパートに出向いた大介は、武田を呼び出すが、ちょうど武田はチャコとベッドで寝ている最中だった。

ドアの外に出て来た武田に、あれから考えたんだが、あの話…、チャコちゃんに紹介してくれるのかい? 俺、ああいう狸顔だって魅力的に感じるんだ…などと大介が打ち明けていると、問うのチャコが顔を出し、何話しているのよ、話なら中でしたら?と声をかけたので、大介は事情を察し、慌てて帰ろうとして階段を滑る落ちる。

チャコの野郎、ふざけやがって!と憤った大介は、酔いも手伝って、崖にぶら下がっていたロープをよじ上り始め、下から警備員に注意され、我に返って、助けてくれ〜!と喚く醜態を演じる。

下宿先に帰って来た大介は、武田の野郎…と愚痴りながらも、チビを抱くと、チビよ、夢を見よう、由利子さんのいる…と話しかけ眠りに入る。

(夢)また空き地の土管の中に入った大介は、いつの間にかジェームズ・ボンドのようにタキシード姿で、着飾った由利子とクラブで飲んでいた。

この間と雰囲気が違いますねと大介が褒めると、この間とどっちがお好き?と由利子が聞いて来たので、どっとも好きですと大介は答える。

この店は同じのようですけど、じゃあ、好きなホステスとかもいらっしゃるんでしょう?と由利子が言うので、そんな所に誘う程悪趣味じゃありませんと大介は否定するが、そこにやって来たのがチャコだった。

驚いた大介はチャコに近づくと、程々にしてくれよ、こんな所に現れて…と苦情を良い、君を傷つけたくはないし、君の気持はありがたいと思うけど、こっちにその気持を受け入れるものはないんだ。 君のことをあの人に誤解されたくないんだ…と言いながら、大介が由利子の方を見ると、由利子は哀しげな表情で店を後にする所だった。

慌てて由利子の後を追った大介は照明でピンク色に輝く噴水の前で追いつく。 あなたってドンファンなのねと由利子が言うので、とんでもない!と大介は否定するが、あの人は死ぬ程愛しているわと由利子は表情を曇らせる。

大介は思い切って、あなたが好きです!由利子さん!これから毎晩合って下さい。僕がどんな人間か知ってもらう為に…と申し込むと、良いわ、あなたが呼んで下さるなら…と由利子も答え、2人は寄り添ってキスをする。

その時、噴水の水の中からアクアラングを背負ったチャコが出現し、大介に向かって水中銃を撃つのだった。

(現実)翌日、自動車教習所に出社した大介は、チャコが睨んで来て外に誘い出したので面食らうが、誤解を招いたらしいから言っとくわ、武田さんが何と言ったかしらないけど、私、浜村さんを気にしたことなんてないのよ、愛する気なんてないのと言い残し去って行く。

その日、大介が京極夫人を連れて来たのは、教習所ではなくスクラップ工場の跡地のような場所で、「デスサーキット」と書かれたポンコツ車が置いてあり、修理代は自分で払って下さいと念を押して大介は助手席に同乗する。

すると京極夫人は水を得た魚のように元気になり、勝って気ままに車をぶつけ、車はバラバラになって行くが、ストレス解消になったようで、素敵!と大喜びする。

修理部の森口(江幡高志)が、バラバラになった車を見て、もうスクラップにするしかないので3000円頂きますと要求しても、婦人は平気なようだった。

その後大介は、すっかり機嫌を良くした京極夫人に食事をごちそうになる。 運転は冷静でなきゃいけませんと大介が教官らしいことを言うと、ストレス解消には持って来いね、伸びそうよ、あの事業…と、今日の「デスサーキット」に興味を持ったような京極夫人だったが、ダメでしょうね、客の前にあなた自身がスクラップにするでしょうからと大介が皮肉を言うと、あなたって良く見ると可愛いわねと京極夫人は言い出す。

その夜、寝床でチビを抱いた大介は、クソ婆の色キ○ガイめ!と京極夫人の悪口を言いながらキスをし、しょっぱいな…、今日の晩ご飯はみそ汁だったのか?と聞き、眠りに入る。

(夢)ユリの家に入り込んだ大介は、ベッドで寝ているネグリジェ姿の由利子を発見、起こそうとすると、相手は由利子ではなく京極夫人で、逃げようとする大介に無理矢理抱きついて来る。

ベッドに押し付けられた大介は、京極夫人から頬を嘗められたりする。

何とか振り切ってベッドから逃れると、京極夫人は大きなナイフとフォークを掲げて迫って来る。 部屋から逃げ出した大介は、家の中庭のプールに落ちてしまう。

(現実)悪い夢見たな…と翌朝目覚めた大介だったが、気がつくとチビの姿が見えない。

下に降りて朝食をとっていたおばさんに、チビ知りませんか?と聞くが、これ見て!とおばさんが差し出したのはチビにかじられたらしいスリッパで、私は犬の万人じゃありませんからね!と嫌みを言う。

大介が外に探しに出ると、本当に浜村さんと来たら癖が悪いんだから…とおばさんはおじさんに悪口を言う。

空き地の土管の中をのぞいてもチビは見つからなかった。

大事件だ!チビがいなければ彼女に会えない!帰って来てくれ!と心の中で叫びながら、大介は道であった警官に聞いたり、太井橋で会った他人が連れていた子犬を確認したりする。

美容院で働き始めたおばさんは、教習所から電話を受け、明日は必ず会社に行くよう伝えるんですね?と応対する。

困った人だね、会社を休むなんて…とぼやくおばさんに、娘の照代が、私、知ってるわよ、あの犬といないと見られない夢があるのよ…、案外私の夢かもね…と自惚れていたが、当の大介は、由利子の姿を求め、数寄屋橋布巾のベンチに座り込んでいた。

教習所に出社した大介は、武田と碁を打っていた赤木部長から、彼女に会いたかった?困るね…、作業スケジュールに穴が空くんだよと説教させる。 実は失踪したんです…と大介が言うと、女がか?と赤木が聞くので、チビ…、可愛がっている犬なんですと打ち明ける。

それを聞いた赤木は呆れたように、仕事を辞めるんだな…、急に仕事をなくしちゃ困るだろうから配置転換する、修理部だ!と言い渡す。

森口と共に車の修理を始めた大介だったが、お世辞を交え優しく指導していた武田に、ね、もっとスパルタ式で厳しく教えて下さいません?と不平を言っていた京極夫人は、修理部にいる大介に気付き、浜村さん!とうれしそうに呼びかけるが、大介が車の陰に隠れたので、ツ○ボ!と言い放つ。

あの婆さんお前のこと好きなんだな?とからかって来た森口に、望み通りの夢見る方法ないか?と大介が聞くと、婆さんから聞いたんだけど、左足にサポーターをはめ、後ろ手に白紐で縛ると見れるらしいぞと森口は教える。

下宿に帰って来た大介から頼まれたおばさんは、いくら良い夢見ても私ゃごめんですね?と呆れる中、サポーターを左足に付けた大介を後ろ手にして、照代がロープでぐるぐる巻きにしながら、まるで捕虜ねと呆れる。

(夢)南ベトナムで、現地人浜村大介がベトコンに捕まったと言うUPPニュースが流れる中、探検服を着た大介が武田そっくりだったり、照代そっくりのベトコンに銃を突きつけられ、ジャングルを歩いていた。

連れて来られた先には、森口そっくりのリーダーがおり殺されそうだったので、俺は日本人だ!と叫び、逃げ出そうとした大介だったが、ベトコンが発砲して来たので、助けてくれ〜!と絶叫する。

(現実)翌朝、照代から起こされた大介は、照代の顔を見て怯えたので、何怖がってるのよ?と照代は不思議がり、チビが見つかったのよ、野犬収容所にいるって警察から連絡が来たのよと伝える。

収容所でチビを発見し喜んだ大介だったが、係員(ハナ肇)から、保健所に言って予防注射や登録をする為に1200円払って来ること、観察を首に付けて飼うこと、散歩するときは紙袋を割り箸を持って糞の始末をすること、あんたみたいのがいるから、東京は文化都市にならないんだよとうるさく指導を受ける。

とりあえずチビを抱いて帰る大介だった。

(夢)久しぶりに土管を潜り海辺に出た大介は、そこで待っていた由利子と再会し、抱き合ってキスをする。

こんなに長い間、あなたに会えないなんて…、寂しくて嫌!私待ったわ、1日中…と由利子は言い、屋敷に戻ってからも、あなたと会えないときは私の瞳は涙で一杯だった…、会ったら会ったでどうしてこんなに涙が出るのかしら…などと由利子は潤んだ眼差しで言って来る。

由利子さんは僕のことをそんなに!と大介が感激すると、私たち愛し合ってるのね、幸せよと由利子が言うので、僕は不安なんだ…、この幸せがいつまでも続くとは信じられないんだ…、きっと今に嫌なことが…と大介は弱音を吐く。

その時、奇妙な格好をした男が入って来て、それは野犬収容所の係員そっくりだったので、君はどうしてこんな所に!チビには用ないんだがね!と大介が迷惑がると、おじ様!と近寄った由利子が、いつも外国旅行に行ってるのと紹介する。

由利子の叔父は、あの骨と皮みたいな男はボーイフレンドか?と由利子に聞き、食べるものを作ってくれ!と頼む。

キッチンへ向かう由利子は大介に近づき、おじ様は口が悪いだけなの、気にしないでねと囁きかけて来る。

こんなことだと思った…、2人だけになれると思ってなかったが、しかしこんな犬殺しのような男とは…と、勝手にバナナを食い始めた叔父を見ながら大介は嘆く。

(現実)翌日、修理部に北大介に森口は、夢を見る方法を聞いたぞ、鼻つまんで、水を三杯飲むんだ…と教えるが、そこにやって来た赤木部長は、大介が修理していた車を見て、こんな車で客が呼べると思うか?新車に買い替えるんだ!と命じる。

そこにチャコがやって来て部長に電話だと伝えたので、赤木は去って行くが、それを見送った森口は、あの部長、車屋からコミッション取ってるんだ、良い加減にやっておけよと大介にアドバイスする。

大介の下宿先では、照代、そろそろ時間じゃないかい?と照代を二階にいかせたおばさんが、お前さん、早く縛っておくれよとロープをおじさんに渡して頼む。

バカバカしくて出来るか!とおじさんは断るが、あんたの為にこれまで苦労して来たんだから、せめて夢の中くらい良い思いさせてくれ!と言うので、仕方ない婆だな…と良いながらおじさんはおばさんを後ろ手に縛り始める。

二階にロープを持って来た照代が、どうしたの、縛らないの?と聞くと、大介は、そのまじない、もう止めたんだ、今度は別の方法にしたんだ、夢の中の家はバラの花が一杯なんだと説明し、枕元に置いた花瓶のバラを見せる。

ムードで行くのね!と納得した照代は、良いものを持って来るわと言うと、自分が写っている写真立てを持って来ると、明日どんな夢を見たか教えて!と言い下に降りて行く。

大介は照代の写真立てを裏返しにする。

(夢)プールサイドで、腰蓑を付けた由利子の叔父が若い女性たちと一緒にフラダンスを踊っていた。

大介とプールサイドのテーブルに座っていた由利子は、叔父から、カモーン!と誘われ、一緒に踊りません?と誘うが、大介は、おじさん、いつまでいるんです?と不機嫌そうに聞く。

由利子は、気が向けばいつまででも…と言うので、僕は苦手なんですよ、あのおじさんが…と歌える。

そこに叔父がやって来て、由利子踊って来たら?と言うので、由利子は他の娘たちの方へ行き、一緒にツイストを踊り始める。

あんたはわしが海外へ旅立った方が良いと思ってるようだが、あの子は一時的にのぼせる所があって、今にあんたは捨てられると叔父は大介に話しかけて来る。

由利子は実にきれいな娘だ。

君は自分の顔を水で映してみろと迫った叔父は、月給はいくらだ?と聞いて来たので、2万と007円ですと答えると、学歴もないんだろう?君のライバルは大学出のわしの孫だ。

あの子はフィアンセなんだ。分かったら由利子のことを諦めるんだなと言うと去って行く。

戻って来た由利子に、何故隠していたんですか?叔父さんの孫のこと…、あなたがその人のフィアンセと言うことを…と大介が恨めしそうに聞くと、亡くなりました、10年も前の私が少女の頃に、海で…と由利子は答える。

おじさんはまだその孫が生きていると錯覚してるんです…、お可哀想な叔父様…と言う。

(現実)翌朝、ロープで縛られ寝たおばさんは、おじさんからロープを解かれ、浜村さんはよっぽど器用な人なんだよ、私ゃ寝違えちまって…、あれじゃ夢なんて見られないわ!とぼやいていた。

教習所に行った大介は、まだ早いが、君を元の職場に戻そうと赤木部長から言われる。

さらに、立花くんのことなんだが、君に宜しく頼みたい事があるそうだ。機会があったら話を聞いてやってくれ、君の人気がうらやましいよなどと言う。

その日も、飲んで帰って来た大介だったが、出迎えた照代が、お客さんが来てるわよ、女の人!と不機嫌そうに言うので、誰かと思い二階へ上がると、部屋の中にいたのは下着姿になったチャコだった。

お帰りなさいと言うので、何してるんです?チャコちゃん…と大介が戸惑うと、出来ちゃったの、私…、そしたら、私のことぶったの、武田さん…などと言いながら、身体の出来たぶたれた後を見せつけるので、ブラウス着てくれ!と大介は頼む。

武田さん、部長の子だと言うのよ、自分の子と知っているのに…とチャコが言うので、じゃあ君は部長とも!と大介は驚くが、こうなったら揺するだけ揺すってやるわ、部長さん、祝いくれるって言ってたの、あなたの子だと言ったら、すんなり金出すと言ったわ!これが最後の賭けよ!などとチャコが言うので、大介は唖然とする。

抱いても良いわよ、当然の報酬よなどと言いながら抱きついて来ようとするチャコに、大介は帰ってくれ!と言う。

廊下からこっそり中の様子を見ていた照代は、帰って行くチャコを見送ると、何よ、あの人!不潔だわ!浜村さんがよ、あんな人を好きなんて!時々あの人を見てるんじゃないの?じゃなかったら夢の中でうんと虐めてやろうとおもたのに…と大介を睨みつける。

(夢)由利子が泣いているので近づいた大介が訳を聞くと、叔父様と喧嘩したの…、仕方なかったの、叔父様が私を外国へ連れて行くって言うので、あなたの側を離れたくないって言ったら、とうとう喧嘩になって…、叔父様1人で旅に出たのと言うので、大介は、僕たちやっと2人きりになれたね、何だか夢のようだな…と喜ぶ。

抱いて私を…、踊りましょう、2人だけで…と由利子が誘うので、由利子さん、僕はちっともハンサムじゃない…と大介が尻込みすると、どうして?私、あなたを愛してるわ!と由利子は迫る。

学歴もない、出世の見込みもない…、そんな僕が結婚を申し込んだら?と大介が自信なげに聞くと、私、結婚して下さいて申し込むつもりだったの…、結婚して下さい!私と…と由利子の方からプロポーズして来たので、由利子さん、ありがとう!僕は生まれ変わる!結婚すれば頑張って働いてあなたを不幸にしない!と大介は誓う。

すると由利子は、私、あなたの為に生まれて来た女なのと言うので、そうか!そうに違いない!と感激した大介は、由利子と一緒に屋敷の庭先に出る。 気がつくと、由利子が運転する赤いスポーツカーの助手席に大介は乗って高速道路を走っていた。 口笛を吹き、由利子の肩に手を回してご機嫌の大介だったが、気がつくと車が蛇行し始めたので、運転手を良く見ると、いつの間にか由利子は京極夫人に変わっていた。

蛇行したら危ない!と叱る大介だったが、いつの間にか京極夫人お運転する車は工事中の高速道路に迷い込み、危うく撮ったんで停車する。

僕を殺す気か!と大介は癇癪を起こすが、あなたがガヤガヤ言うからよ!と京極夫人も言い返して来たので、僕に結婚する相手が出来たんです!落第です!殺人運転するような人に免許は出せません!諦めたまえ!と言い放つ。

(現実)次の日の夜、下宿に帰って来た大介は、ウエディングマーチの曲を口笛で吹きながらご機嫌だったので、いやに楽しそうね?と出迎えた照代が聞くと、いよいよ結婚式だ!僕にはもう夢じゃないんだ!と大介がうれしそうに言うと、嫌だ…、結婚なんて…、だって毎晩私の夢を見れるんでしょう?などと照代は恥ずかしがり、何よにやにやして!嫌いだわ!浜村さんなんて嫌いだわ!と膨れると、自分の写真立てを持って出て行く。

(夢)京極夫人など見たことのある人物たちが列席した教会での結婚式、大介はウェディングドレスを着た由利子と、神父(石橋エータロー)の前での漆器を終えると、由利子をお姫様だっこし寝室のベッドに連れて行く。

(現実)教習所の赤木部長の部屋に呼ばれた大介は、京極夫人の仮免許取り消しを取り消したまえ!私に個人的な恨みでもあるのか?仮免を取り消すなら首だ!もう1度考え直すんだねと脅されるが、夢と現実が混乱して来たぞ…と大介がぼやくと、また夢を見てたのか?と赤木は呆れる。

側にいた武田は、長い物には巻かれろだなどと言い、大丈夫!首にはならないわよ、部長、ご機嫌が直ったの、例の件OKですって!結婚よ、浜村さんとの…、30万出してくれるって!とチャコが大介に言い寄って来る。

結婚ダメなんです!と大介が拒否すると、この前、私の狸顔好きだって言ってたじゃない!部屋の中で聞いてたのよ!もう首にでもなりなさい!と怒ったチャコは吐き捨てて行く。

(夢)会社ってそんなに面白くありませんか?と大介に悩みを聞いた由利子が言う。

つまらない…、部長に脅されたり…と大介が愚痴ると、人のことを気にしないで自分の思い通りにやれば?ごめんなさい、私、会社のこと良く分からなくて…、私側にいてよ、こうやって…と由利子が慰めてくれるので、由利子!側にいてくれ!昼も夜も… 君がいてくれれば…、いないとダメになっちまう!と大介は弱音を吐く。

すると由利子は、ダメよ、私は夢の女…、あなた、私が夢の女ってこと忘れていらっしゃるわと言うので、夜しか会えないんだな…、うんと睡眠薬を飲むしかないのか!俺はダメな人間なんだ…と酒をついで大介は自嘲する。

死ねばあんな会社に行くこともなくなるし、あの部長に会うこともない…、疲れたよ…と大介はソファに座った由利子にすがりついて嘆く。 休みましょう、今晩は…と言い、由利子は酔いつぶれた大介に肩を貸し、隣のベッドに連れて行く。

ベッドに倒れ込んだ大介は、由利子!好きだ!と言いながら由利子を抱きしめる。

大介がベッドで寝入ると、そっと又ソファのある居間に戻った由利子は、あの方とうとうお別れになったわ…、昼も夜も一緒にいたいなんて…、いよいよ清算しなきゃ…、辛くて哀しいことだけど…と呟く。

よる、ベッドで寝覚めた大介は由利子がいないことに気付く。

由利子はチビを抱いて、屋敷内のボート乗り場でボートに乗り込んでいた。

居間に出て来た大介は、テーブルに置かれた置き手紙を発見する。

その時、エンジン音が聞こえたので驚いてベランダに出て見ると、ボートに乗った由利子が海に乗り出す所が見えたので、由利子!と呼びかけると、お元気でね、あなた!と言い残し、由利子のボートは遠ざかって行く。

待ってくれ〜!どこに行くんだ!と呼びかける大介の声を聞いていた由利子は泣きながら、さようなら…と呟く。

待ってくれ〜!由利子〜! 置き手紙には、由利子は、あなたのために生まれ、あなたの為に生きた夢の女です。

いつかお別れしなければいけない運命だったのです。 私はその運命を受け入れることにしました。

大介さん、あなたも勇気を出して生きて下さい。 由利子はそう云う大介さんが好きです…由利子…と書いてあった。

由利子〜!チビ〜!もう1度帰ってくれ〜!海岸で海を見ながら大介はそう呼びかけかがみ込むのだった。

(現実)日疎んで目覚める大介。 口笛を吹いてチビを呼ぶが反応がない。 気がつくと、枕元の障子の一部が破れている。

教習所の部長室に出社した大介が、お早うございますと挨拶すると、久子から聞いたよ、好きな女が30万の持参金付きだと赤木が言って来たので、部長のお古なんて嫌ですよと大介が言うと、それ以上の要求があるとでも言うのか!嫌なら首だよ!と赤木が高飛車に言って来たので、こっちから願い下げです!と言いながら辞表を取り出した大介は、チャコのお腹の中の子はあなたの子じゃありませんよ!他人の子を30万で押し付けることなかったんですよ!さよならです!と言うと、大介は赤木部長に詰め寄るとビンタして部屋を後にする。

野良犬が又1人〜♩(歌が流れる中)

数寄屋橋のベンチで腰掛けタバコを吸っていた大介は、水面に映った由利子を発見する。

由利子は誰かと待ち合わせしている様子でその場を立ち去る。

一旦立ち上がって喜んだ大介だったが、又ベンチに腰を落とす。

大介さん、あなたも勇気を出して生きて下さい。ドンドン思い通りに生きて下さい。

由利子はそう言う大介さんが好きです…と書かれていた由利子の置き手紙が思い出される。

大介は立ち上がり、由利子を追いかけて行くと、路上で追いつき声をかける。

由利子は突然の申し出に困惑したようで最初は拒否していたが、難度も頭を下げる大介の熱意に負けたのか、やがて承知し、一緒に歩き出す。
 


 

 

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