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俺にさわると危ないぜ

都筑道夫原作で小林旭主演のB級アクションミステリで、長谷部安春監督デビュー作らしい。

小林旭さんがちゃんと自分自身でアクションをやっているのを見られる軽快なタッチの通俗アクションだが、沖縄返還前の時代だけに、戦時中の沖縄の秘話が話に絡んでいるのがミソ。

アバンタイトル部分から派手な見せ場が用意されており、本編も都筑さん原作と言う事もありテンポ良く展開するが、黒幕は途中から薄々感づく程度の物。

1965年にはTVドラマ「スパイキャッチャーJ3」と言うスパイ物の原作もある都筑道夫さんの原作だけに、本作でもタキシード姿に決めた主役が黒い革ジャン姿の女性に襲われたり、金粉ショーに感電死等、どう見ても「007」の影響がうかがえるが、主人公のどこかすっとぼけたあっけらかんとしたキャラクター等は、同時期に始まった「ルパン三世」などを連想させる。

さらに当時流行っていた忍術要素も混ざっており、何やら山田風太郎流のお色気くノ一忍法のような物が続々と登場しているのも楽しい。

本家の「007」に忍者が登場するのは翌年の「007は二度死ぬ」(1967)なので、本作はその先駆けとも言える。

革ジャン姿の粋な女が登場するのは「007 サンダーボール作戦」(1965)の影響ではないだろうか。

都筑さんの作品らしく小ネタは色々出て来るが、どれも日本映画の予算に合わせた安っぽいアイデアばかりなのだが、エアガンを火炎放射器代わりにすると言うアイデアは、今でこそ珍しくないが当時としては目新しかったのではないだろうか?

本家「007」シリーズで似たようなアイデアが使われるのは「007 死ぬのは奴らだ」(1973)だったと思う。

ヘリコプターを地上から撃ち落とすのは「007 危機一発(ロシアから愛をこめて)」(1964)のアイデアだろう。

本家も爆発部分は特撮だが、こちらも金田啓治さんの手による特撮表現になっている。

ただ、後半の身代わりトリックはどう考えても不自然だろう。

ラストのアクションはあらかじめ壊れるように作られたセットを使った大乱闘が楽しめる。

長谷部監督は色彩にこだわりがあったようで、車のシーンの背景にリアルな映像ではなく、赤や青と言った原色に近いフィルターをかけたような映像が合成されており、リアルさよりポップな画面を狙った印象。

ゴーゴーガールをガラスの上に立たせ、真下から撮ると言った奇抜なアングルにも挑戦している。

当時の松原智恵子さんは本当にきれいで、清純派イメージだけに下着姿の披露等があるのは珍しいし貴重な作品ではないだろうか?

塗料で全身を塗られると皮膚呼吸できなくなると言うのは「007 ゴールドフィンガー」から生まれた誤った情報が元だと思うが、当時の映画の影響力を知る手がかりともなる。

東宝出身の北あけみさんが出ているが、どうも東宝が製作から手を引き出した60年代後半頃、この作品と東映作品に出たりした後、70年代半ば頃で映画の仕事からは遠ざかったご様子。

警察側を演じている高品格さんも珍しく、テレビの「西部警察」を連想させたりする。

「トルコ風呂」が登場するのも時代を感じさせる。

ちなみに、劇中で主人公がタクシーから降りるシーンがあるが、この当時から既に自動ドアだった事が分かる。

劇中に登場する外国人ビルの声の吹替はまだ若々しいが若山弦蔵さんだと思うし、最後の潮島はロケ地として有名な猿島だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1966年、日活、都筑道夫原作+脚色、中西隆三脚色、長谷部安春監督。

夜、接近する3台の車のライト 次の瞬間、爆発が起こり、炎上したトラックの側にいた米兵が狼狽する。

そのタイヤの近くにヘルメット姿で飛び込んで来たのが本堂大介(小林旭)で、本堂!と米兵が呼びかけると、派手に撃ちやがるとぼやきながら、炎上したトラックにカメラを向ける。

これじゃあ、フラッシュはいらねえ、引っ込め、やられるぞ!と背後から米兵が声を掛けると、弾丸が怖くて従軍カメラマンが勤まるか!と大介は言い返し、トラックに積んであった缶ビールを1本とって口をつけると、背後の米兵にもそれを渡す。

そして立ち上がろうとしたので、大介のベルトを引っ張り倒した米兵は、命知らずめ、死んでも知らんぞ!と呆れたように言う。

ベトコンの攻撃は凄まじかった。

撤退だ!撤退しろ!と米兵たちが呼びかける。 銃弾が雨霰と降り注ぎ、大爆発が連続する修羅場に1人残された大介は、待て!冷たいぞ!と叫ぶと、自分も一目散に逃げ出す。

タイトル マスクをし、色違いの派手なブラに黒タイツの6人の女性たちが踊る中、キャスト、スタッフロール(小林旭の奇妙な歌が重なる) 帽子を目深にかぶり、飛行機の席で眠る大介。

そこに近づいて来たスチュワーデスの沢之内ヨリ子(松原智恵子)が、あの…、あまり上手にできませんでしたけど…と言いながら渡した服を、礼を言って受け取るとさっそく着込む。

その後、ヨリ子がマイクを持ってアナウンスを始めると、その姿をちゃっかり大介はカメラで写す。

羽田に到着した飛行機を双眼鏡で覗きながら、あれに乗っているはずだと呟く外国人。

車の運転席から双眼鏡を覗いていた外国人が、外に立っていた男に、後は任せる、抜かるな!と指示を出す。

立っていた男は、ドント・ウォーリーと答え、別の車に乗り込む。

空港ロビーに出て来たヨリ子は、受付の所で待っていた大介から、君にお礼を言おうと思ってここで待っていたんだ…と声をかけられる。

大介と並んで歩き始めたヨリ子は、お礼はうかがいましたわと答える。

美人に言うお礼は何度でも良い、俺のおふくろはそう言っていたと大介が冗談を言ったのでヨリ子は笑う。

ところで、今夜会ってくれないかな、君に写真渡したいと思うし…と大介が申し込むと、プロのカメラマンでもそう云うために写真をお撮りになるの?とヨリ子がからかうと、目的のためには手段を選ぶな…、こいつは親父の遺言でね…ととぼけた大介は、ところでどこで会ってくれる?と畳み掛ける。

するとヨリ子は、申し込んだのはあなたよと笑顔で応える。

その夜、クラブにやって来たヨリ子は、テーブルの上に置かれた自分の写真を前に、驚きましたわと言うので、何が?と大介が聞くと、最初は野獣のごとく…とより子が答えたので、今は?と聞くと、見事なナイト!と言うので、タキシード姿で決めた大介は、2週間だけだね、すぐに又ベイルート へ飛ばないと行けないのでと照れ笑いする。

ステージに歌手(高見アリサ)が登場し、ダンスタイムになったのでヨリ子と踊り出した大介は、驚いたな…、飲みっぷりも見事だし、ダンスも最高だよとヨリ子を褒める。

笑っていたヨリ子が何かを見て表情を変えたので、どうしたの?と大介が聞くと、何でもないわ、ただ変な男…と言うので、変な男?と大介もその男に目をやる。

誰もいないじゃないかと言うと、いたのよ、空港からずっと付けてた男が…とヨリ子が言うので、君を見れば誰でも後を付けたくなるさと大介は冗談で紛らす。

テーブルに戻ったヨリ子は、楽しかったわ、こんな素晴らしい夜は初めてと言うので、さよならはもう一杯の後で…と言いながらブランデーをヨリ子のグラスに注いでやる大介。

その時、又あの男…とヨリ子が気付いたので、振り返って煙草を吹かしてたっていた男を見た大介は、あの男か…と確認すると、とっちめてやる!と立ち上がったので、でも…とヨリ子が案ずると、君を狙うなんてこの僕が許しちゃおけんと言い残し大介は立ち去る。

大介は店の奥等を見て回るが、目的の男は見つからなかったが、テーブルに残ったヨリ子の方は、別のドアから姿を見せた男に気付く。

大介は、突然背後から肩を叩かれたので振り向くと、知人のビル・ソマーズ(アーツ・ヘージ)だと知り驚く。

いつサイゴンから帰って来たんだとビルが聞くので、今朝だよ、会えてうれしいよと答えた大介はビルト握手を交わす。

とにかく乾杯しようと誘うビルに、今夜はまずいんだ、連れがあるんでと大介は断る。

デートだな?とビルが笑うので、すまん!と大介が詫びると、後でたっぷりおごってもらおうとビルは冗談を言い、その内!と大介は挨拶し、又な!と答えたビルと別れる。

ところが、テーブルに戻って来ると、ヨリ子がいなくなっており、ボーイが片付けていたので、彼女は?と聞くと、お帰りになりましたとボーイは言う。

帰った?と大介が驚くと、何ですか急に…とボーイは答える。

店の外に出た大介は、タクシーに乗り込むヨリ子の姿を見たと思ったので、君!と呼びかけ近寄るが、別人だと知ると、失礼!と詫びる。

周囲を探していた大介は、ヨリ子の悲鳴を聞く。

ヨリ子を外に連れ出していた男は、セブンアップの配送車が止まっている駐車場で革ジャンにブラックタイツ姿の謎の女3人組ハル江 (加茂こずえ)キク江(可能かづ子)ハル江(斎藤和子)に取り囲まれていた。

ブラックタイツの3人娘たちは、それぞれナイフやチェーンを取り出すと男に襲いかかって来る。

顔を傷つけられたその男は、ノー!ノー!と拒否するが、金網に逃れようとした所を背後から突き刺され、倒れる。

そこに駆けつけて来たのが大介だったが、振り返った3人娘は、見たわね…と言いながら大介に迫って来る。

ちょっと待ってくれ!君たち…と言いかけた大介だったが、問答無用で3人が襲いかかって来たので、やむなく逃げ回るしかなかった。

地下室に転がり落ちた大介は、執拗に迫って来る3人に対し、畜生!もう容赦しないぞ!と怒ると、反撃を開始する。

すると、女たちは口からガムを飛ばし、大介の目を塞ぐ。 忍法ガムガム弾よと女たちは笑い、その場を逃げ出す。

目に貼り付いたガムを引きはがし、後を追おうとした大介だったが、その時、物陰に隠れていたヨリ子が本堂さん!と抱きついて来たので、君か!どこにいたんだ!と大介は聞き返す。

奥で隠れていたの、怖くて出られなかったのと答えたヨリ子は、金網の所で死んでいた男を見て悲鳴をあげる。

死体を確認した大介が、死んでるよと教えると、その男よ、ホールに入って来て、私夢中で逃げ…と答えかけていたヨリ子は、背中のナイフが刺さった男の死体が倒れたのを見て又悲鳴をあげる。

大介はその男の服の中からパスポートを見つけ、フェルナンド・ロペス(ペドロ・フェルナンデス)と言う名前を知ると、だけどあの女たち、一体何ものなんだい?と言いながらヨリ子の元へ戻って来る。

分からないわ、ここまで逃げて来たら急に飛び出してその男に襲いかかったの…とヨリ子が言うので、とにかく警察へ行こうと大介は言い、ヨリ子を連れその場を立ち去る。

そんな2人を見送るかのように、物陰に隠れていたトレンチコート姿の男が2人、現場に姿を現す。

外の通りの公衆電話から警察に電話した大介は、殺人事件だよ、場所は分かってるね?すぐに来てくれよ!と伝える。

もしもし!聞こえない?と電話していた大介は、外で待っていたヨリ子の悲鳴を聞き、慌てて振り向くと、ヨリ子が自動車に拉致されるのを見て慌ててボックスを飛び出すが、自動車はそのまま走り去って行く。

大介はカーブしている道路に先回りし、向かって来た車の背後に飛び乗るが、相手は後部のボンネットを上げて来たので、大介は振り落とされてしまう。

危うく向かって来た別の車に轢かれかけた大介だったが、車が急ブレークをかけて止まったので難を逃れる。

その頃、殺人現場に駆けつけて来た警官2人の前に出て来たトレンチコートの2人組が、旦那、犯人を見ました。

背の高いシャレた服の男ですと告げたので、どっち行った?と警官は聞き返す。

道路を走っていた大介は、背後から近づいて来たパトカーを停め、ちょうど良いやと言いながら近づき、自分から後部座席に乗り込むと、誘拐だよ。

何ぐずぐずしてるんだよ?と訴えるが、殺人犯と思い込んでいた警官2人はその場で大介を捕まえてしまう。

違うんだよ、俺じゃないんだよ!と抵抗した大介だったが、手錠をかけられ前の席に引きずり込まれる。

取調室に連れて来られた大介は、話せ!何遍言ったら分かるんだ!さっきも言ったろう?俺は犯人じゃないんだ!俺は事件を通報しただけなんだ!と訴えるが、いい加減にしろ!お前の犯行だと言う目撃者が2人もいるんだ!と遠山警部(高品格)は怒鳴りつける。

勘違いだ、殺したのはブラックタイツの女たちなんだ、連れの女性も目撃してるんだ、ところがその女性が俺が電話している時に…と大介が弁解しようとすると、誘拐されたんだろう?都合の良い話だ!と遠山警部は頭から信用しない。

何故信じないのかな?オープンカーを調べたら良いはずなんだよと大介が抗議すると、調べたよ、だが、そのナンバーの車はオープンカーじゃなかったと遠山警部が言うので、何だと?と大介は驚く。

霊柩車だと言うので、さらに驚く大介に、この女と一緒だったと言うのも信用できんな…と、大介が写したヨリ子の写真を見た遠山警部は言う。

その時、取調室に入って来た刑事が遠山警部に、被害者の身元が分かりました。

表向きはバイヤーですが、闇ドルを使った経歴があるそうですと報告する。

闇と東南アジア帰りのカメラマンか?繋がらん事もないな…と遠山警部は答える。

すると、ロペスを殺したのはやっぱり!ともう1人の刑事が言うので、バカ言うな!俺は男とは何にも関係ないぞ!と聞こえた大介が立ち上がって文句を言うと、2人の刑事は椅子に押し付ける。

第一、自分で殺しといて警察に通報したりパトカーに飛び込んだりする奴がいるかい?と大介が聞くと、ある!殺しをごまかすために目撃者の振りをして通報する。

しかも誘拐事件をでっち上げて、事件を複雑に見せかける!と遠山警部は解釈する。

それに対し大介は、刑事さん、あんたテレビの見すぎだよと皮肉る。 その時、暗かった取調室の電気を点け部屋に入って来たのはビルで、本堂!外人が殺されたって言うんで来てみたんだが、容疑者がお前で驚いたよと言う。

待ちたまえ、あんた誰だ!と遠山警部が聞くと、極東通信のビル・ソマーズ、この男の友達だ。事件は聞いた。

この男は殺人なんかしないとビルは答える。

しかし遠山警部は、もっか取調中だ、あんたの口を挟む問題じゃない、帰ってもらおうと言うので、待ってくれ、この男はガールフレンドと一緒だった。

デートの最中に誰が人殺しをする?とビルが指摘すると、遠山警部は部下の刑事と顔を見合わせる。

確かに一緒だったんだね?と遠山警部が問いただすと、証言しよう、そうだ、この女性だと、机の上の写真を指してビルは答える。

さあ、容疑は晴れたはずだぞ?釈放してもらおう、人権問題だぞ!と大介が手錠をかけられた両手を差し出して訴える。

何とか釈放され、ビルの車に乗せてもらい高速を走っていた大介は、畜生!警察なんてくそくらえだ!と悪態をつくと、僕は1人でも彼女を捜し出してみせると言う。

運転していたビルは、止せよ、女なんてすぐ出来るさと慰めるが、バカ言え、俺は真剣なんだぞと答えた大介に、あの女なら惚れる値打ちはあるがね…とビルも言う。

だけど、どうして彼女、知ってたの?と大介が不思議がると、多分そうだろうと思って、はったりの証言をしたのさとビルは笑う。

殺したのはブラックタイツか、ロペスの仲間だ。どんな事をしても探し出してやる!と大介が言うと、それほど惚れてるなら、俺も協力しようとビルも言う。

本当か?と大介が聞くと、俺とお前の仲だ、うちの情報網を使って当たってみよう。

お前はひとまず家に帰って休めとビルは忠告する。

「百地忍法研究所 百地三斉」と書かれた表札と「本堂大介」の表札が一緒に貼られた門をくぐって、大介が屋敷に帰って来ると、本堂君!と百地三斉(左卜全)が厳しい表情で声をかけて来る。

どうも…、ただいまと挨拶した大介に、一体、どうしちょったんじゃ、心配しとったぞと三斉が言うので、すみませんと素直に詫びた大介は、壁に収納されていたソファを引き出し腰掛けると、警察から何か言ってきましたか?と聞く。

真っ暗だった部屋のカーテンを開き、外光を取り込んだ三斉は、それなんだよ、おめえに電話がかかって来て、しきりにこう言う男がいるかと色々聞いて来るんだ。

一晩中君は帰らんし、何が起こったかと思って…と言うので、何が何だか、僕にも良く分からないんですがね…と大介も戸惑ったように答える。

う~ん…、忍法ガムガム弾か…、わしも長年忍法は研究しとるが、そう言う忍術は初めて聞いたな…と三斉は言う。

で、攫われた娘の行方は?と三斉が聞くので、全然手がかりなし…と情けなさそうに大介が答えると、三斉は棚の中から玉手箱のような箱を取り出し、その中から黒い玉を出すと、これはわしが長年研究して完成した百地流の隠れ玉じゃ、まさかのときはこれを使えと言って大介に渡す。

忍者合戦じゃないんだから…と大介は呆れるが、これはわしの研究を見に来たアメリカ兵が置いていった物だがな、向こうの忍者部隊の武器だと別の物を大介に手渡す。

レインジャー部隊の?と聞くと、そうそう、わしは読めんが、何か役に立つだろうと三斉は言うが、英語を読んだ大介は、笑いガスだ、毒ガスの一種ですよと逆に教えると、それを聞いた三斉は、毒ガス?と驚く。

自分の部屋で布団に横になった大介は、ブラックタイツ…、ポペスの仲間か?…、一体何のために彼女を?…、何が目的なんだ?何が…と呟き考え込んでいた。

やがて、猛烈な眠気に襲われた大介は、持っていた笑いガスの容器をベッドの下に落としたのも気付かず眠り込んでしまう。

夢の中ではヨリ子が微笑んでいたが、急にロペスに追われブラックタイツに迫られる様子が、カラフルな背景の変化ちょともに見える。

そして、彼女の悲鳴とロペスの死体の夢を見ていた時、ドアをノックする音で大介は目覚める。

ドアを開けると、三斉が、電話じゃよと言うので、誰から?と聞くと、例のアメリカのブンヤさんじゃと三斉は言う。 クラブのステージには、全身を金色の染めた男女のダンサー(ゴールデン・スパイダース)が踊っていた。

命がけの仕事…、あの金粉で全身を塗りつぶしていると皮膚呼吸が出来なくなって窒息死するそうだ…と、ビルと一緒にテーブルに座った大介が教える。

それを聞いたビルは、アンコールは出来ない訳だな…と納得する。

その金粉ショーの横を通り、大介らのテーブルに近づいて来た杖をついた男を見たビルは、おお、紹介しよう、ミスター岡田(二本柳寛)、元陸軍少佐だと大介に言う。

席に付いた岡田は、昔の事は言わんで下さい。

今は極東通信に寄稿させてもらってますと言いながら名刺を差し出す。

そこには「アジア軍事研究所 所長 岡田軍司」と書かれてあった。

実はビルさんから話を聞きまして、攫われたと言うのはこの娘じゃないでしょうか?と言いながら、岡田は写真を取り出して大介に見せる。

三つ編みの若い頃の写真だったが、ええ、間違いありませんと大介が答えると、やっぱり…と言うので、と言うと?と聞き返すと、ヨリ子は私の姪なんですと岡田は言う。

あの子の父は陸軍大佐でした。終戦後、両親とも亡くなりましてね、叔父の私が親代わりになったんです。

ところが、私が厳しくしたせいか、ヨリ子は学校を出ると自活をすると言って家を飛び出して行ったんです。

随分探したんですが…と岡田は言う。 じゃあ、彼女がスチュワーデスであると言う事は知らなかったんですか?と大介が聞くと、突然空港で会って驚きましたと岡田は答える。

で、彼女とは?と大介が聞くと、話しました。

厳しくしたの私の親代わりの責任からだと分かってくれたんですよ。

私の家に帰る事も約束してくれました。その矢先なんですよ、こう云う事が起きたのは…と岡田は言う。

なるほどね~…、そうだったんですか…と大介が納得すると、ヨリ子は私の娘も同然です。探し出すためにはどんな犠牲も払います。

力になっていただけませんか?と岡田が頼むので、それは結構ですとも…、しかし手がかりが何もね…と大介が言うと、メモを取り出したビルが、住所は空港会社で調べたが、帰ったはずがないと言う。

そのメモを受け取った大介が、しかし僕が一度行ってみようと言うと、私も一緒に行けば良いのですが、なにぶんこの通り足が悪い物で…と岡田は事情を話す。

外に出てタクシーを停めようと手を挙げた大介だったが、停まったのはオープンカーで、運転していたアキ子(北あけみ)が、お急ぎなら乗らない?と誘って来る。

は?と戸惑った大介だったが、背後から後続車のクラクションが聞こえて来たので、早くとアキ子が急かす事もあり、思い切って助手席に飛び込む。

走り出した車の中で、どちらまで?とアキ子が聞くので、煙草を取り出した大介は、君の都合の良い所までと答え、メモを渡す。

それを見たアキ子は、良いわよ、どうせ暇ですものと愉快そうに答える。

そんなアキ子の車を尾行していた車には、トレンチコートの男が2人乗っていた。

ヨリ子のマンションに到着したので、ありがとうと言いながら車を降りた大介は、君は親切だね?と言葉をかけると、誰にでも親切にするって訳じゃないのよ、ボーイハント。私、アキ子、御用が済むまでどこで待ってたら良い?とアキ子が聞くので、残念ですが、今日は塞がってますと大介は断る。

そう…、じゃあ空くのを待ってるわと言い残し、アキ子は車を出発させる。

マンション内を探し、「沢之内ヨリ子」の名札を付けた204号室を見つけた大介に、留守だよと急に話しかけて来たのは、近くの柱の影に立っていた見知らぬ男サブ(郷えい治)だった。 君はこのアパートの人かい?と大介が聞くと、サブは近づきながら、その女の知り合いかよ?と逆に聞いて来る。

いないとは思ってたがねと大介が言うと、教えてやろうか?とサブが言うので、知ってるのか?と聞くと、来な!と答えたサブが先を歩いて行くので、大介も後に付いて行く事にする。

外に出ると、サブはタバコを吸いながら歩き始めるが、その時、暗闇の中に待っていた自動車が突然ライトを付け大介の横をかすめるように通り過ぎたので、畜生!と文句を言うと、サブはにやりと笑い、この辺は轢き逃げが多いんだ、気を付けなと注意する。 サブが連れ込んだのはヌードスタジオだった。

部屋の中を見ると、裸で縛られた女が床に転がっていたので、猿ぐつわを外し助け起こそうとした大介だったが、その女(若葉めぐみ)が、何するの?撮影中よと文句を言って来たので、ヌード撮影会のモデルだった事に気付く。

お客さん、お時間ですとサブが言うと、カメラを構えていた客たちは一斉に帰って行く。

サブと一緒に何人かの男が部屋に入って来て、女を捜しているそうだが?と左頬に傷のある神崎(森塚敏)が聞いて来たので、どこにいる?と大介が聞くと、いないねと言う。

じゃあ何故俺を呼んだ?と大介が聞くと、おめえはロペスを殺したとサブが言って来たので、違うな、あいつを殺したのはブラックタイツの3人だと大介が教えると、言い逃れは出来ねえ!あの2人が見てる!と神崎が言い、トレンチコートの2人組が入って来る。

畜生!貴様らだな、警察にデタラメな証言をしやがった奴は!と言いながら大介が殴り掛かると、ついでに飛びかかって来た男の子分らも蹴散らして行く。

しかし、サブが立て看板で大介の首を壁に押し付け、言え!あの女を追っているのは何のためだ!野郎!言わねえか!と聞いて来る。

さらに、子分たちに命じ、撮影用のライトを大介の顔に近づけて拷問する。

そろそろ言ったらどうだい?と子分が言うので、惚れた女探して何が悪いんだい?と大介は開き直る。

すると神崎が、それだけじゃないはずだ!と凄んで来る。

すると、大介は側にいた子分を急に殴りつけ、立て看板を割って自由の身になると、側に置いてあった花瓶の水をライトにかけたので、ライトはみんな割れてしまう。

部屋から逃げようとした大介だったが、動くな!32連発だ…、下手に騒ぐとあっという間に蜂の巣だと言い、神崎が銃を突きつけ、すぐに子分たちが大介を確保する。

こんな所でそんなもんぶっ放してみな、東京中の警察が吹っ飛んで来るぜと大介が指摘すると、他にもカタをつける方法はあると神崎は言い、サブがナイフを抜いて大介に迫って来る。

諦めろ!あの女から手を引くんだ!永久にな…と威嚇して来たその時、天窓のガラスが割れ、何かが当たった神崎が驚いて拳銃を放し身を引くと、間髪入れず大介が暴れ出し、サブや子分共を叩きのめす。

その時、部屋に入って来たのはゴルフグラブを持ったアキ子で、大介の加勢をするように神崎や子分たちをクラブで神崎や子分ら叩き出す。

神崎が銃を構えるのを見た大介は、危ない!と叫び、持っていた百地流の隠れ玉を投げつけると、煙幕が発生したので、くしゃみをした大介は、同じくむせ始めたアキ子に、逃げろ!と呼びかける。

外に停めてあったアキ子の車に飛び乗ったアキ子と大介は、すぐさま発進し、敵の手を逃れる。

後を追おうとしたトレンチコートの2人組は、自分たちの車のタイヤが全部パンクしているのに気付き、くぞ〜と悔しがる。

スリルだったわね〜と言うアキ子に、しかしどうして君があそこにいたんだと運転をしていた大介が聞くと、あなたの後を付けたの、感謝して欲しいわと言うので、ありがとうと大介は礼を言う。

お返しいただける?とアキ子が言って来たので、言ってくれと大介が聞くと、ちょっと言いにくいんだけど、今夜あなたの家に泊めてくれる?とアキ子が言い出したので、エエッ!と大介は驚き、急ブレーキをかけて停まる。

ね、お願い!私今日家出しちゃったのとアキ子は言う。

気晴らしにゴルフ行ったんだけど、夜になったらだんだん心細くなっちゃって…、ね、お願い!とアキ子はしつこく迫る。

やむなく、屋敷に戻って来た大介は、三斉に気付かれないように連れて来たアキ子を二階の自室へ連れ込むが、当の三斉はその様子をこっそり目撃し、うれしそうに頷くのだった。

部屋に入り、押し入れから毛布を取り出した大介は、ベッドは君に提供するよと言い、あなたは?と聞かれると、ここで寝るさとソファの上に毛布を置くが、だけど、パジャマな一組しかないんだなと言う。

するとアキ子は、あなたの上だけ借りると言い、パジャマの上着を取るので、着替えるなら出て行くよと大介が気を利かすと、良いわよ、慣れてるもん…と答えたアキ子は、ベッドの布団の中に潜り込むと、その中でさっさと着替えてしまう。

お休みと言って電気を消すと、何だか寒いわ…とアキ子が言い出したので、弱ったな…、毛布これしかないんだけどと大介が言うと、そうだわ!と言い、電気を点けたアキ子が、その毛布を重ねれば良いわと言うので、じゃあ俺はどうなるんだい?と聞くと、毛布に付いて来るとアキ子は提案する。

しかし、大介が動こうとしない事に気付いたアキ子は、ねえ、私を凍えさせる気?と布団をかぶって言うので、いかん!…と自制していた大介だったが、だが、凍えさせてはなおいかん!と言い、アキ子のベッドに毛布をかぶって移動すると、毛布を掛け布団の上からかけてやる。 ねえ、付録の方は?と利かれた大介は、もちろん付いてますよと言うとベッドに潜り込む。

アキ子は、これでパジャマも一組になれたわねと言いながら、大介の顔にキスして来るが、その時、壁の背後に隠れていた革ジャン姿のブラックタイツ3人娘が部屋に出て来る。

大介はアキ子から身体を離そうとするが、アキ子が大介の首を掴んだ力は想像以上で、大介は身動きができない事に気付く。

そこへ茶を持って来た三斉が、中から聞こえる、止せ!止さないか!と言う大介の声に気付き、鍵穴から中の様子をのぞくと、ベッドで大介の下になったアキ子が、忍法オクトパス!と言い、大介が、畜生!仲間だったのか!と悔やむ声が聞こえる。

廊下にいた三斉は、持って来たすり鉢にすり棒がくっついてしまったので取ろうとするが、言ってもらうわ、沢之内ヨリ子を追っているのは何の目的?と中からアキ子の声が聞こえたので、又鍵穴を覗き込む。

放せ!と言いながらアキ子の身体から逃れようとする大介だったが、言うのよ、言わなければ命をもらうわとアキ子は迫る。

その時、大介の手がベッドの下にあった笑いガスのボンベを掴むと床に投げつけ爆発したので、その大音響ですり鉢の中にくっついたすり棒を引き離そうとしていた三斉も腰を抜かすが、その瞬間にすり棒はすり鉢からはなれる。

部屋にはガスが放出され、笑いながらアキ子が外に出て来たので、それに押された三斉は怪談を転がり落ちる。 三斉が持っていたすり鉢の中にはチョコレートが入っていた。

ブラックタイツの3人娘も三斉を踏みつけながら退散して行き、大介は咳き込みながらも窓を開け、部屋の換気をする。

そこに入って来た三斉は、部屋の電気を点けながら、今のは御前か?わしは首尾よく君が彼女を連れ戻したと思っとった…、今度はどんな忍法を使いおった?と三斉は聞いて来る。

オクトパスポット…と大介が教えると、オクトパス?と三斉が聞き返して来たので、蛸だよと教えると、良くもそんな西洋忍法を破れたもんだな〜と三斉は感心する。

すると大介は、床に転がった缶を指し、笑いガスのお陰と言う。

あれがどうして?と三斉が聞くと、分かんないかな?人間は…と大介が言いかけると、笑えば筋肉が緩むと三斉が補足したし…、なるほど、緩んだのか…と納得すると愉快そうに笑い出す。

その後、屋敷にやって来たビルと三斉を前に、これでロペスとブラックタイツの女たちが争って彼女を狙っていた事は確かなんだと話していた。

問題は彼女がどちらに誘拐されたかだとビルは言うので、それと何で狙ったかだ、例の岡田と言う老人に聞いたら何か分かるかもしれんと大介は答える。

岡田は長い間彼女と離れていたんだ、そこまでの事は…とビルは否定的だったが、ともかく会ってみようと大介は言う。

タクシーで岡田の「アジア情報研究所」のあるビルにやって来た大介は、ドアが開きっぱなしの部屋を怪しみながら中に入ってみるが、誰も人がいないようだったが、良く見ると、机の裏側に胸にナイフが刺さった岡田が倒れていたので、駆け寄ってナイフを抜こうと手にした途端、フラッシュが焚かれ、もらったわ、証拠写真!と言い、カメラを提げ部屋から出て行こうとするブラックタイツの女を見つける。

貴様が殺したんだな!と大介が睨みつけると、ブラックタイツのナツ子(浜川智子)は持っていたメジャーを伸ばし、断っておくけどただのメジャーじゃないわよ、カミソリより切れ味は良いわよと言いながら、剣のように大介に突きつけて来る。

ナツ子は大介のネクタイを切断すると、笑って部屋の外に飛び出し、階段の下を覗くと、決断したかのように登って行くので、大介も後を追う。

階段の下から登って来たのはトレンチコートの2人組で、開きっぱなしの「アジア情報研究所」のドアに気付き、そちらへ駆けて行く。

屋上に上がって来たナツ子を待っていたのは、他のブラックタイツの3人娘だった。

又会ったわね?と言うので、やっぱりお前たちの仲間だったのか!もう逃がさんぞ!と大介は気付く。

すると、女たちは、それはこっちの言う事よとあざけり、カメラを提げたナツ子は、ポラロイドの写真を抜き出すと、この写真を使って、あんたを警察に届けてやるわと笑う。

これだけの証拠があれば、今度こそ出て来れないわよとナツ子は言う。

そこには、死んだ岡田の胸にナイを突き刺した直後のように見える大介の姿が写っていた。 大介は、くぞ!その手に乗るもんか!と言いながらナツ子たちに向かって行く。

しかしあっさり投げ飛ばされた大介は、又メジャーソードを取り出した女から、お望みなら今度はひげを剃ってあげようか?それとも一思いに頸動脈に行く?とからかわれる。

4人の黒タイツが全員ソードで向かって来たので、大介はビルの端に追いつめられるが、その時、もう1人の黒タイツアキ子が屋上に上がって来て、警察が来るわ!と警告しながら指笛を吹く。

岡田の部下が呼んだのよ!逃げろ!とアキ子が言うので、4人の黒タイツたちも一斉に立ち去る。

待て!と大介も後を追うが、5人の黒タイツ軍団は、ビルの屋上から側面の崖の部分にロープを垂らしており、それを伝って降りていたので、大介もそのロープの1本に掴まり降りようとするが、足を滑らせ、レンジャー部隊の訓練のように一気に滑り落ちてしまう。

そして下で車に乗り込んでいたブラックタイツ軍団の中に落下した大介は、あっという間に女たちから掴まってしまう。

ナツ子が運転し出発した彼女たちの車に、ビルの入り口にいたトレンチコートの2人組が気付き、後を追う。

目と口と手をテープで塞がれた大介は、車の後部に寝かせられていたが、暴れても無駄よ、ここは誰も来やしないわと運転していたナツ子が言う。

大介の耳には、駐車場のアンプから聞こえて来る音楽に気付く。

ガラスの台の上で踊る3人のブラックタイツの姿を、真下から写したショット。

そこはゴーゴー喫茶で、マスクをし色違いのブラを付けた4人のブラックタイツの面々がステージで踊っていたのだった。

その店に入って来たトレンチコートの2人組は、舞台上でマスクを取ったアキ子らに気付く。

ブラックタイツの面々は、その後、二台の車に分乗し、塒のマンションに帰って来る。

もう良いわと言いながら、ナツ子が連れて来た大介の顔や手のテープを剥がす。

俺をどうする気だ?と大介が聞くと、散々待たせたからサービスしてあげるわとアキ子が言い、他の4人がいきなり大介の服を脱がせ始めたので、何するんだよ!と大介が抵抗すると、おとなしくした方が良いわ、裸になってもらうだけ!とアキ子は笑いながら言う。

畜生め!と悔しがる大介に、ストップ!そこまでで勘弁してあげるわ!とズボンを受け取ったアキ子が愉快そうに制止する。

そして大介は、人魚像が付いた金色の奇妙なスチームバスの中に閉じ込められてしまう。

俺をなぶりものにする気か?と、ボックスから首だけ出た大介が聞くと、言ったでしょう、サービスするって…と、大介の衣装を飾り屏風にかけたアキ子が笑顔で応える。

スチーブバスのバルブを開けたブラックタイツ軍団は、さ、昨日聞き残した事を言ってもらうわと言いながら、自分たちは革ジャンとウィッグを脱ぎ、ブラックタイツにブラだけの姿になる。

あんた、沢之内ヨリ子の何なの? 貴様こそ何者だ?なぜロペスと岡田を殺すんだ?と大介が聞くと、敵だから!と言いながら、アキ子もウィッグを脱ぐ。

「ボァ・シャポー」と書かれたウィッグケースにめいめい自分にウィッグをおさめながら、あの男たちは死ぬのが当然の奴だから…とアキ子は言う。

彼女を誘拐したのも貴様らか?と大介が聞くと、そうよと言うので、どこにいる?と聞くと、ここの別の部屋よ、あなたが何故彼女を追い回しているか、白状したら教えてあげるわとアキ子は答える。

決まっているじゃないか、彼女は俺の…と大介が言いかけると、ガールフレンドだから?それだけないはずよ、言うのよ!あなたは誰の手先?とアキ子が詰め寄るので、ちょっと待ってくれ!そりゃどう言う意味だ?と大介は聞く。

隠してもダメよ、言わないとこのままじゃすまないわよと言いながら、アキ子はナイフを大介の頬に突きつけて来る。

そこに、大変!あの女が逃げたわ!とブラックタイツのメンバーが飛び込んで来たので、他のメンバーは部屋を飛び出してくが、残っていたナツ子が、どうせすぐ捕まるわ。

あんた、おとなしくしてるのよ!とスチームバスを壊そうとしていた大介に言うが、次の瞬間、大介は内側からスチームバスを破壊してしまう。 そして倒れていたナツ子を捕まえ、すまんが、人質になってもらうぜと大介は告げる。

ドアの隙間からそっと廊下を見た大介が、車はどこだ?と聞くと、ナツ子が顔で向こうと知らせたので、スーツに着替えた大介はナツ子の後に付いて、非常階段を下りる。

ナツ子が先に車に乗り込み昇降式の非常階段を上げてしまったので、大介は中2階部分からオープンカーに飛び降りる。

そして助手席に座った大介は、さあ送ってもらおうか…とナツ子に命じる。

どこまで送れば良いの?と夏子が聞いて来たので、なかなか素直で良いと大介が感心すると、今更じたばたしないわよ、なるほど…、ひめゆりか…、沖縄の花だな…と大介はナツ子の胸に尾飾られていた花に気付く。

君たちは一体何者なんだ?と大介が聞くと、バックミラーが背後から撃たれ、奴らだわ、付けて来たのよ!とナツ子が言う。

後続車の助手席から大介らの車を撃ったのは、無線機を持ったサブを乗せたトレンチコートの2人組の片方だった。

さらに撃って来たので、良し、俺は飛び降りる、君はそのまま逃げるんだ、君は良い子だ、巻き添えにしたくないとナツ子に言い、大介はカーブの所で車を飛び降りると、そのまま夜のガードレールの向こうに隠れたので、サブたちの車が通り過ぎ様、大介のガードレールに銃弾を撃ち込むと、ナツ子の車は爆破して去って行く。

焼けこげた車の残骸から何かを拾い上げた大介は、良い子だった…と呟く。

歩き始めた大介に本堂さん!と柱の影から声をかけたのはヨリ子だった。 抱きついて来たヨリ子を見た大介は、君…と絶句する。

屋敷に連れて来たヨリ子は、違うわ!と言い出す。

何だって?と驚く大介に、岡田が言ったのはみんな嘘よ、あの男は叔父じゃないわ、父の部下だった男よ、父を殺したかもしれない奴よ…とヨリ子は言う。

話してくれ、何故君のお父さんを?と大介が食事の準備をしながら聞くと、父は沖縄の陸軍参謀だった…、戦争が終わって、突然元部下だった岡田が占領軍の将校を連れて乗り込んで来たの…とヨリ子も手伝いをしながら言う。

沖縄から持ち出した秘密の軍用金をどこに隠したかって…、父は何も言わなかったらしいわ。

でも又ある晩呼び出されたと思ったら、翌日、芝浦の岸壁で死体になって発見されたのよ…とヨリ子は言う。

殺されちまったのか?と大介が聞くと、警察の調べによると事故だろうって…、でも父は戦争が終わってからきっぱりと酒を断ってたわ。

まして外国製のウィスキーをポケットに入れているはずがないわとヨリ子が言うので、なるほど…、じゃあ岡田は?と大介は聞く。

父が死ぬと将校たちと現れて、父の遺品を洗いざらい持って行った。

それから何度も来て軍用資金の事を聞きだそうと脅迫したけど、母も小さかった私も知っている訳はない。

とうとう母は私を連れてアパートへ引っ越したの、でも、岡田はすぐ嗅ぎ付けて来て…、その度にアパートを転々としたわ…と、2人で食事をしながらヨリ子は打ち明ける。

君のお母さん、いつ亡くなったんだい?と聞くと、私が学校を卒業してスチュワーデスになった年よ、安心したのか突然病気になって…とヨリ子が言うので、その頃岡田は姿を現さなかったのか?と大介はブランデーを飲みながら聞く。

あの男の子とはすっかり忘れていたわ…、それが最近空港でばったり会って、それからずっと岡田の仲間が付けてたんだわとヨリ子が打ち明けたので、だけど何故岡田はわざわざ俺に君のアパートを訪ねさせたんだ?と大介が疑問を口にすると、あなたが私を探しているのが邪魔だったらしいのよ…とヨリ子は言う。

それで仲間を張り込ませてあなたに手を引かせようとしたんだわ…、岡田にやりそうな事だわ…とヨリ子は暗室の中で続ける。

話を聞いた大介は、大体掴めて来たがね…、だがあのブラックタイツの女たちだけど、君を誘拐したのは何のためだ?と聞くと、あの人たちもその金塊とかを探している一派らしいわ、監禁されている間、隠し場所はどこだって随分責められたわとヨリ子は言う。

君の父さん、本当に金塊って言うのを持ち帰ったのか?とコーヒーを飲みながら大介が聞くと、さあ、父は私にも母にも一度もそんな話をした事はなかったし…、最も私その頃5つだったから話すはずもないけど…とヨリ子は言う。

その事について書き残した物はないかい?と聞くと、ないわ…、父の物は岡田が全部取り上げて行ったし…、父の物で残っているのはその頃の日記だけとヨリ子が言うので、日記?手がかりになるような事書いてない?と大介は聞く。

何も…、自分の反省とか、私の将来の心配とか、そんな事だけ…とヨリ子は言う。

翌日、ビルは車に乗せた大介から話を聞くと、岡田はそう云う男だったのか…と言うので、あの男とはいつ頃から知り合いなんだ?と大介が聞くと、1年程前だ、時々アジア情勢の軍事情報とか持ち込んで来たんでねとビルが言うので、何も気付いた事はなかったのかね?と聞くと、そう言えばあの時岡田は姪を捜してくれと言って来た、今考えるとタイミングが良すぎる…とビルは言う。

それを聞いた大介は、そうか…、我々が彼女を捜しているのを知って、奴さん、先手を打って来たのかもしれんねと察する。

しかし、ブラックタイツは一体何者なんだ?とビルは不思議がる。

地面に描かれた子供の落書きの上を歩く2人の足下。 「事情により当分休業致します」と札がかかった「トルコ マーメイド」の店の前に来たビルは、確かにここなのか?と聞くので間違いないと大介は答える。

入り口付近で子供たちの相手をしていた主婦に、君、ちょっと聞きたいんだけど、ここいつから休んでいるの?と大介が聞くと、1月になるよ、警察から営業停止を食らったのさ…、何か特別な事やったんだろう?と主婦が言うので、特別?と聞くと、ほら英語で言うじゃないか!と主婦がその言葉を言いそうになったので、分かった、分かった!と大介はそれ以上は聞かないでも察せられた。

店の中に入って荒れ果てた室内の様子を見た大介は、畜生、奴ら勝手に入り込んでやがったんだなとぼやくが、だが、もう一ヶ所手がかりがあると言い出す。

どこだ?とビルが聞くので、大体の見当はついているんだと大介は答える。 6人の娘がゴーゴークラブのステージで踊っていた。

大介の応対をしたゴーゴー喫茶の支配人(野村隆)は、ああ…あのチームは昨夜で契約が終わりましてね…と言うので、どこ行ったか分かりませんか?と聞くと、さあ?売り込みに来たんです。

何でも、沖縄の米軍キャンプに出ていたとか…と支配人は言う。

沖縄?と大介が聞き返すと、ええ、とぼけたチーム名でしてね、「ザ・忍者」って言ってましたよと支配人は言う。

ゴーゴーチームはそう多くないはずだ、俺が当たってみようとビルが言うので、俺は彼女のうちに言って持って来る物があるんだなと大介は言うと、大丈夫かな?又岡田の仲間に…とビルが案じるので、心配いらない、今度は武器を持っていると良い、大介は仕込み棒を取り出すと、分かった、何かあったら連絡してくれ、いざとなったら俺も行くからとビルは告げて、駐車場で2人は別れる。

ヨリ子から預かったマンションの鍵を使い、彼女の部屋に入ってみた大介は、窓が開きっぱなしだったので締めると、彼女の父の日記と言うのを読んでみる。

「シーザーのものはシーザーに返せ」と書いてあるページを読んでいると、もう一つの窓から入り込んで来たブラックタイツの女キク江が、そう、その日記だったのね?とうれしそうに聞いて来る。

知らないで探していたのか?と大介が皮肉ると、先客は私よ、こっちへもらうわと言い、キク江はメジャーソードを伸ばして来る。

それを避けた大介が何かを投げつけると、キク江はナイフを投げて来て、次にEPレコードを手裏剣のように投げて来て、それが次々に壁に突き刺さる。

キク江は「忍法 空飛ぶ円盤」などと得意そうに言う。

大介は、仕込み棒を伸ばし、それを防ぐと、棒そのものを投げつけ飛びかかるが、キク江も予想以上に強く、大介をベッドに投げ飛ばす。

キク江を捕まえて立ち上がりかけた大介だったが、突然、首筋を背後から誰かの銃で殴られる。

気絶した大介に、2人組の男の足下が近寄る。 日記を見た外国人は、これがあの男の探していた物か?と聞くと、それを手に入れたのは俺たちである事を忘れるな…とトレンチコートの男が言うと、大きな面するな!今まで一番苦労して来たのは俺たちだ!と神崎が怒鳴りつけるが、別の外国人が、バカ!我々のグループはロペスを失っていると言う。

すると、トレンチコートの男は、待て!それなら我々にも言い分がある!我々は所長が犠牲になっている。

利益の分配には当然…と言い出すが、その時外国人が、シャラップ!その話はまだ早いと言う。

この日記と金塊とどう繋がるかが問題だと別の外国人が言う。 奴に吐かせるんだと神崎が言うが、奴は吐かん!散々痛めつけてやったんだが、どうしても知らねえって言い張るんだ…とトレンチコートの男が言う。

するとサブが、吐かせるなら手はある。今度は俺たちに任せてもらおうかと言い出す。 大介はブラックタイツのキク江と一緒に縛られてロッカールームに監禁されていた。

どうする気だ?と大介が聞くと、逃げる気があれば協力しても良いわとキク江は言い出す。

方法はあるのか?と聞くと、あんたとならねとキク江は答える。

良し!手を組もう!と大介が言うと、文字通り結ばれてるわよとキク江が笑うと、側にいたトレンチコートの男が、しゃべるな!と睨みつけて来る。

その見張りに、ねえ、私にも煙草くらい吸わせてよ…とキク江が甘えたように話しかけると、男は黙れ!と言うが、吸わせてくれたら教えてあげるわ、あんたたちが知りたい事は何でも…とキク江が言うと、見張りの男は近づいて来てキク江にタバコを吸わせてやる。

すると、キク江はその煙草を相手の目に吹き付け、相手がひるんだ隙に、大介の身体に支えられながら相手の首に両足を絡ませる。

その物音で隣の部屋にいたトレンチコートの男が何をしている?とドアに近づいて聞くが、それに気付いたキク江が、見張りの首を締め付けながら、キャー!止めて!などと自分がやられているような悲鳴をわざと上げ出す。

さらにキク江は、何、この女をちょいと可愛がっているだけさと見張りの声色までしてみせたので、おい!貴様!そんな悪どい真似をするな!と大介が声をかけ、キク江の芝居を加勢する。

嫌だ〜!止めて!放してってば!とキク江の1人芝居は続く中、隣の部屋のトレンチコートの男は、おい!いい加減にしないかい!と注意するだけで部屋の中を確認する事はなかった。

神崎や外国人グループは部屋を出て行く。

見張りを気絶させたキク江はロープを解いたので、驚いたね、声帯模写も出来るのかい?と大介は感心する。

さて、これから先はどうするか?隣には大勢いるぜと大介が案ずると、大丈夫、助けが来てるのよと言いながら立ち上がったキク江が窓の所に行くと、ブラインドを上げ、ブラの中からコンパクトをと選り出すと、近くのビルの屋上にいた仲間に、鏡の反射光で合図を送る。

ビルの屋上でゴルフの練習をしていたのはアキ子だった。

しかし、あそこからどうして?と大介が聞くと、今に面白いものが飛んで来る。

危ないから壁に貼り付いていた方が良いわよとキク江は注意する。

アキ子が撃ち込んで来たゴルフ玉は爆弾で、隣の部屋に残っていたトレンチコートの2人も爆発の威力で倒れ込む。

そこに隣の部屋から飛び出して来た大介が仕込み棒で攻撃したので2人組はひるむが、一緒に逃げようとしたキク江のブラを引きちぎる。

大介は、そんなキク江に革ジャンを着せて一緒に廊下に逃げ出すが、這いずって廊下に出て来た男の1人が銃を撃ったので、キク江は階段の吹き抜け部分に落下して死んでしまう。

大介が階段を駆け下りると、アキ子も駆けつけ、キク江!と叫んで助け起こすと、こっちよ!と大介に声をかけ、一緒にキク江を運んで行く。

オープンカーの助手席に抱いて乗せた大介が、大丈夫か?しっかりしろ!と声を掛けると、キク江は微笑み、あんたと仲直りして良かったわ…と良い、息絶える。

良い子だったよ…と大介が声を掛けると、運転席に乗ったアキ子は、ありがとう…、いつかお返しはするわと言い残し、車で去って行く。

その後、屋敷に戻った大介は、玄関先には土足の後が多数残り、室内が荒らされている事に気付く。

畜生…と呟いていた大介は、うめき声に気付き、葛篭の中に口を塞がれて足を縛られた忍び装束姿の三斉が閉じ込められている事に気付き救出する。

彼女は?と聞くと、さらわれた!5〜6人男が来て、このわしをな…、不覚だった…と三斉はヨリ子を守れなかった事を悔やむ。

外に出て探しまわっていた大介に、銃を突きつけて来たのはトレンチコートの男たちで、声を出すな!と言うので、てめえらか…、手回しの良い事だ…と大介は皮肉る。

さ、おとなしく来るんだと言われ車に押し込まれた大介は、左目に絆創膏を貼った男から銃を突きつけられ、さっきは良くも酷い目に遭わせてくれたな、たっぷり返してやるぜと脅される。

どこへ連れて行く気だい?と聞くと、ドンパチやっても聞こえない所さと言う。

エレベーターに乗せられ降りて来た地下室はガレージのようだったが、下着姿にされ鎖で縛られたヨリ子がいて本堂さん!と呼びかけて来たので、ヨリ子さん!と近づこうとした大介だったが、いきなり殴りつけられる。

おめえも金塊の隠し場所を知らないそうだな?黙って見てろ!とサブは言うと、トレンチコートの連中に腕を押さえ込まれた大介は、畜生!と吐き捨てる。

さ、言え!親父の隠した場所はどこだ!とサブから聞かれたヨリ子は、知らないわよ、何度聞いても同じよと答える。

すると日記を手にした神崎が、嘘付け!十年前の金で300万円の金だぞ、今の金にするとざっと10億は下らん!それを娘に教えてねえ訳がねえと凄む。

本当よ、父は何も言わなかったわとヨリ子が答えると、子分がヨリ子のシミーズの肩紐を切り、ヨリ子はブラとパンティだけの露な姿になる。 じゃあ、この日記を大事に持っていたのはどう言う訳だ?

「シーザーの物はシーザーに」これはどう言う暗号になっているんだ!と神崎が迫っても、ヨリ子は知らない!知らないわよと抵抗する。

すると神崎は、良し、言うようにしてやると言うと、塗料のスプレーガンでヨリ子を白く塗り始める。

止せ!止めないか!と大介は抗議するが腕を押さえ込まれているので動けない。 全身塗りつぶされん内に白状しないと皮膚呼吸が出来なくなって死ぬって寸法だと愉快そうに神崎が説明する。

今度は顔のお化粧と行くかと神崎が言い、サブがヨリ子の頭を掴んだ時、俺が知ってる!と大介が叫ぶ。

部屋の隅にたむろしていた3人組の外国人が大介に近づいて来て、カモン!スピークアウト!と迫る。

大介が、その日記の表紙の中だ、一ヶ所だけ分厚い所がある、そこに何か隠してあると指摘すると、神崎は持っていた日誌を調べ、ページの間に挟まれていた紙片を取り出す。

これだ!間違いねえ!と喜んだ時、煙幕を出しながら、ブラックタイツの女性たちが乗り込んで来る。

混乱から銃撃戦が始まるが、手を振り放した大介は、落ちていたスプレーガンを拾い上げると、塗料を噴射させる噴射口にライターで火を点火し、インスタント火炎放射器にして敵を蹴散らして行く。

その間に、外国人グループが鎖にしばられていたヨリ子を連れ出す。

ブラックタイツの面々も戦っており、積んであった塗料の缶に穴が開き塗料がこぼれ出す。

左目に絆創膏を貼った男が、塗料スプレーのチューブを撃ったので火炎放射器が止まってしまう。

そんな中、ブラックタイツハル江がピンチになっているのに気付いた大介が駆けつけ加勢していると、サブがナイフを投げつけて来たので、ブラックタイツのハル江が、危ないと前に出て、自らの背中に刺さる。

しっかりしろと抱き起こした大介に、あんたを助けたかった…、もっともっと早く味方になりたかった…とハル江は囁きかけ息絶える。

ハル江の革ジャンの胸にもひめゆりの花が飾ってあったので、それを取って感慨にふけっていた大介だったが、見渡すと室内には誰もいなくなっている事にも気付き、エレベーターの中のロープを昇って脱出する。

すると、下着姿のヨリ子らしき女が1人顔を隠して立っていたので、君大丈夫か!と言いながら駆け寄るが、女は、あなたにこんな顔を見られたくないわと言い、顔を布で隠したままだった。

さ、行こう…と大介は女に上着をかけてやり、車に乗せると出発する。

それに気付いたトレンチコート3人衆も車で追って来る。

我慢してくれ、スタンドまで行けばシンナーがある、すぐに落せるよ。泣くな、もう助かったんだ…と、運転していた大介は助手席で泣いている女を慰める。

すると、泣いていたと思っていた女が急に笑い出し、顔を隠していた布を外すとブラックタイツのフユ子だったので、急ブレーキをかけ、君は!と大介が驚くと、身代わりよ、あんたをまくためよ、これ以上私たちの仕事に手を出して欲しくないからと言うので、彼女はどうした?と聞くと、男たちがさらって行ったわ、私の仲間が追っているはずよとフユ子は言う。

大介が憮然としてく車を発進させると、大丈夫よ、あの人は私たちの仲間が助け出すわとフユ子は言うが、そんなの待ってられるか!と大介が答えると、背後の尾行に気付いたフユ子が、奴らだわと伝える。

背後の車からトレンチコートトリオが撃って来て、フユ子も倒れる。

しっかしろと!倒れ込んで来たフユ子に声をかけた大介だったが、お願い、ブラジャーを外して、速く!とフユ子が言い出したので、ホックを外してやると、左胸のパッドを外したフユ子は、そのパッドのスイッチを入れ、窓から背後の車に投げつける。

パッドはフロントガラスを突き破り、運転手の左目に突き刺さったので、車は草むらに突っ込み大爆発を起こす。

車を停止させ、一旦降りて、尾行車の爆発に驚いた大介だったが、運転席に戻り、大丈夫か?とフユ子に声を掛けると、左手にひめゆりの造化をつまんだフユ子は、私、やったわね?プラスチック爆弾よと笑顔で呟き、あの男がしゃべっているのを聞いたわ、行き先は潮島…と言い残し、大介の胸の中で息絶える。

大介はフユ子が持っていたひめゆりの花に目を落し、夜が明けて来た中、車を出発させる。

屋敷に戻って来た大介は、極東通信のビル・ソマーズに電話をかけるが、いないと言うので、どこに行ったか分かりませんか?と聞くと、分からないし、いつ帰るかも分からないと言う。

側で聞いていた三斉が、本堂君、どうするつもりじゃい?と聞いて来たので、彼女の居場所が分かったんですよ、僕行ってきますと大介が言うと、待て、奴らを追うならこれをと怪しげな筒を渡して来る。

何ですか?と聞くと、百地流火炎放射器じゃ、使ってくれと三斉は言う。

車とモーターボートを乗り継ぎ、潮島にやって来た大介は、受精に気付き、廃墟に身を隠しながら前進して行くと、柱の影にナイフが見えたので取り押さえて見るとアキ子だった事に気付き、あ?何だ、君か…と驚く。

本堂さん!とアキ子の方もほっとするが、他の2人は殺されたよと教えると驚く。

今の銃声は?と聞くと、奴らよ、島に着いたら奴らに見つかったの、仲間の1人は捕まったわ…、私を探しているのとアキ子は無念そうに教える。

その時、ヘリの音が近づいたので、危ない!と大介がアキ子を柱の影に引き込む。

見ると、銃を持った男たちが接近して来る。

廃墟に近づいて来た男を、上に隠れていた大介が掴み、飛び出して来たアキ子が殴って気絶させる。

その後も、大介とアキ子が協力し敵の子分たちを少しずつ始末して行く。

崖を転げながら敵を倒した大介に、上から、本堂さハル江 ん!大丈夫?とアキ子が声をかけて来ると、よじ上って来た大介は、大丈夫だ、行こう!と答える。

廃墟の中に忍び込んだ2人は、奴ら、遅えな?な〜に、すぐ捕まえてきますよなどと敵の子分たちがしゃべっている声に気付く。 大介がアキ子に目で合図すると、アキ子は梟の鳴き声をしてみせる。

その声を聞いた捕まっていたヨシ江が、ねえお願い、もう少し緩めてと言い出したので、うるせえ!とサブが叱ると、もうすぐ楽になるよと子分(野呂圭介)がヨシ江に笑いながら近づいて来る。

迎えが来たら、もう一人の仲間と一緒に遠い海に叩き込んでやるよと言う子分に、苦しいの…、お願いと人質のヨシ江は哀願する。

するとサブが、緩めてやれよと言い出し、子分が従おうとしたそのとき、暗闇に大介とアキ子が飛び込んで来て暴れ出す。

アキ子が奪い取ったライフルで子分の鼻を潰すと、大介もサブを叩きのめす。

助け出したハル江に、奴らは?とアキ子が聞くと、引き上げたわ、彼女を連れてとヨシ江は答える。



いつだ?と大介が聞くと、少し前、ヘリコプターでとヨシ江は言う。 じゃあ金塊は?とアキ子が聞くと、部屋の一部に掘り起こされた場所を見つけたので、ここね、ここに埋めてあったのね!とアキ子は悔しがる。

どこへ持って行ったんだ?と大介が不思議がると、岬の側に別荘があるらしいわ、そこにボスが待っているの、男たちが話していたわとヨシ江が言うと、昔の沢之内大佐の別荘よ、岡田が取り上げて自分の物にしていたはずだわと言うアキ子からライフルを奪い取ったヨシ江は、その場でサブや子分たちを全員射殺する。

ナイフを投げつけようとしたサブも力尽きて死ぬ。 唖然とする大介とアキ子を前に、ヨシ江は私を玩具にした奴らよと言う。

外に出ようとしていた大介は、ヘリコプターから撃って来たので、ヨシ江からライフルを受取り応戦すると、ヘリコプターは遠ざかって行く。

あのヘリコプターで私たちを連れて行く気だったのねとアキ子が言うと、そうよとヨシ江が教える。

急ごうと大介は言い、その場から逃げ出した大介だったが、ヘリコプターに乗った神崎が執拗に撃って来る。

神崎はもっと低く降りろ!と操縦士に命じ、ヘリコプターは大介らに接近して来る。

ライフルをアキ子に渡した大介は、何それ?と聞くアキ子に、大砲だ、あんまり信用できんがねと、持って来たバッグを開けると、三斉から渡された忍者の大筒を取り出す。

アキ子が援護射撃をしていると、ヨシ江が駆け寄り、アキ子、大丈夫?と聞くので、へっちゃらよとアキ子が笑うが、ヨシ江がライフルを受け取って代わりに掩護射撃し始める。

その間、大介は大筒の導火線に着火したので、抱え上げてヘリコプターを狙って発砲する。

反動で転んだ大介は、一瞬外れたか?と思うが、次ぎの瞬間ヘリコプターが爆発したので、ざまあみろい!と大喜びする。

しかし、本堂さ〜ん!とのアキ子の声で駆けつけると、撃たれたヨシ江にアキ子がしっかりして!と呼びかけていた。

大介の顔を見たヨシ江は、ヘリを撃ち落としたのね?と聞くので、ああ、君のライフルが命中したんだと大介が答えると、首を横に振ったヨシ江は、あんた良い人だった…と言うと、アキ子の胸の中で息絶える。

そのヨシ江の革ジャンの胸に付いていたひめゆりの造化を取って立ち上がったアキ子は、とうとう私1人になった…と呟く。

その後、大介のボートの所に駆けつけた2人だったが、墜落したヘリの残骸とともに炎上していたので、私のボートがあるわとアキ子が言う。

アキ子が隠していた救命ボートを膨らませ、それに乗り込んで漕ぎ出したアキ子が、可哀想な妹たち…と呟いたので、同じくオールを漕いでいた大介が君たち姉妹だったのか?と聞くと、姉妹と従兄弟たちと言うので、そんな犠牲まで払って何故金塊を追うんだい?と聞くと、あの金塊は私たち沖縄人の血の財産なの、戦争中、軍部は住民の金を強制的に差し押さえ、それを終戦後こっそり内地に運び出したのは彼女の父親よ…と、海岸にたどり着いた後も、アキ子の説明は続く。

戦争が終わって、その金塊がそのまま残されている事が分かった。

戦争のために使ったのなら諦めようもあるけど、隠されているなら私たち持ち主に返すのが当然よ。

ところが岡田や不良外人や暴力団が手を組んで、その金塊を探そうとしている事が分かったの。

みすみすあんな奴らに横領されるなんて黙っていられない! 岡田は戦争中、金の徴収に反対した私たち一族を皆殺しにしたの!と、来るまで夜の道をひた走る車の中でアキ子は打ち明ける。

別荘に到着するが暗いので、やけに静かだな…と大介が不審がると、アキ子もいないのかしらと案ずる。

君はここにいてくれ、僕は様子を見て来ると言い残し、大介は別荘に近づく。

ライフルを手に無人のような別荘内に侵入した大介は、暗い部屋の中央の台の上で、首には鎖が巻かれ下着姿のまま縛られていたヨリ子を発見する。

大介が近づこうとした途端、部屋の灯りが付き、ウエルカム本堂!と言う英語が聞こえて来る。

コート姿の男が出て来たので銃を向けようとすると、止せ!動くとこの娘に5000ボルトの電流が通じるぞ!と不良外国人は電線コードと繋がったスイッチを出して脅して来る。

くそ!と悔しがる大介に、お前が来るだろうとこの娘は人質にしておいたんだ、ライフルを棄てろ!と相手は言うので、やむなく大介は持っていたライフルを放り投げる。

すると、扉から出て来たのは、銃を持ち能面をかぶった男で、あの女を探すのにお前を利用したが、どうやら深入りさせ過ぎたと言うので、お前は誰だ?と大介が聞くと、能面を外して笑ったのはビルだった。

ビル!そうか…、貴様がボスだったのか…と大介は気付く。 ハハハ…、今頃気がついても遅い…、お陰で金塊は手に入ったよとビルは言うので、分かったよ、岡田を操っていたのも貴様だなと大介は指摘する。

あの男は、俺が米軍の隠匿物資の摘発係だった頃からの腹心だと、煙草に火を点けながらビルが教えると、貴様が岡田に沢之内大佐を殺させたって言う訳だろう?と大介は言い当てる。

沢之内大佐は口が堅くてな、俺もつい焦ったのさ…、あの時はとうとう発見できなかった。で、除隊になってから特派員になって出直して来たって訳だとビルは打ち明けるので、畜生!友達面をしやがって!良くも今まで俺を踊らせやがったな!と大介は悔しがる。

ハハハ…、踊らせついでにもう一踊りだ!やれ!とビルが命じると、大介の背後に立っていた不良外人たちが襲いかかって来る。

殴り合う大介の様子を、タバコを吸いながら愉快そうに眺めていたビルは、踊れ、踊れ!これがラストダンスと言えるか!とけしかける。

しかし、大介が意外に強いので、苛立ったビルは、デイブ!やっちまえ!と呼びかけるが、そのデイブが叩きのめされたので、動くな!女を殺したいのか!とビルは銃を向けて来る。

ベイブたちが大介に銃を向けた時、手裏剣を食べて飛び込んで来たのがアキ子で、ビルと格闘を始める。

その間、縛られていたヨリ子を救出する大介。

本堂さん!とヨリ子は気がつくが、次の瞬間、電流コードを本堂が強く引っ張ったので、スイッチを持っていた男は、台の周囲の池に落ち感電死する。

ヨリ子を抱いて台から助け出した大介が、自分の上着をかけてやっている時、銃声が聞こえて来たので振り向くと、発砲していたビルとアキ子が転がりながら戦っている最中だった。

大介が駆け寄ると、アキ子もビルの腹にナイフを突き立てており、相打ちだった事が分かる。

撃たれたアキ子を抱き起こすと、本堂さん…、金塊の事お願い…、苦しい…と言うのでベルトを外してやると、ありがとう…、金塊、お願い…と言い息絶える。

その手にひめゆりの造化を握らせてやる大介。

その後、連絡を受け駆けつけて来た三斉や警官隊の前で、大介が金庫をバーナーで焼き切っていると、遠山警部は、なるほど、これじゃあ奴らにも開けられなかった訳だと納得する。

扉が開くようになったので、どうぞと大介が勧めると、10億円の金塊か…と緊張しながら、白手袋をした遠山警部が扉を開ける。

しかし、中に入っていたのは大量の紙幣だったので、こりゃ何だい?終戦直後の紙幣だ!当に通用しなくなっている奴ばかりだ…と遠山警部は指摘する。

コートを着せられていたヨリ子は、帰りのパトカーの中で、でもどうして金塊が百円札に変わっていたのかしら?と呟くと、多分あの300万は金塊の代金だったんだろうと大介は言う。

じゃああの金塊は軍隊が使ってしまったのか?と三斉は驚く。

「シーザーのものはシーザーに返す」君のお父さんは、せめて代金だけでも沖縄の人に払おうとしたんだろうと大介はヨリ子に告げる。

するとヨリ子は、あの女の人達も可愛そうね…、使えないお金とも知らず、命までかけて…と言うので、そう…、空しい…、あまりにも大きな犠牲だった。

後日、羽田東京国際空港へスチュワーデスとして復帰したヨリ子は、花束を持って近づいて来た大介と再会する。

君に頼みがあるんだが、沖縄の上空でこいつを落してもらえないかと言いながら花束を渡されたヨリ子は、急に笑い出し、私もそのつもりで牌路との人に頼んであるわと言いながら、自分の持っていた花束と一緒に受け取る。

彼女たちにしてあげられるせめてもの餞だからね大介が言うと、私ね、1つだけ聞いときたい事があるのとヨリ子が言うので、何だい?と大介が聞くと、その…、つまり…、なんて言えば良いのかな…とヨリ子は言いよどむので、ズバリ言っちゃえよと大介が励ますと、アキ子さんとあなたの関係を…、愛し合った事があるの?とヨリ子が問いかけたので、君には嘘は言えないと答えた大介は、1度だけだと言うと、やっぱり…、想像してたけどショックねと言いながら、ヨリ子は背中を向ける。

許してくれる?と大介が語りかけると、良いわ…、本当は許せないけど、許してやるわと振り返ったヨリ子が言うので、すまん!と大介は詫びる。

その代わり条件があるの…と言うので、それで君が許してくれるんなら…と大介も答えるが、じゃあ、目をつぶって!とヨリ子は要求して来る。

大介がそれに従うと、花束を下に置いたヨリ子は、白手袋をはめた右手を握りしめ、いきなり大介の顔を殴って来る。

転がって痛がる大介をその場に残し、花束を持ったヨリ子は遠ざかって行く。

振り返ったより子は、何してるのよ?早く来ないと遅れるわよと笑いかけて来る。

ふん!女…、複雑ですね…と大介はぼやき、カメラとバッグを持ってヨリ子の後を追って行く。

風にまかれて〜♩(小林旭の歌う歌が重なる) 飛び立つ旅客機 席に座った大介。

雲海

円形に並んだ6つのひめゆりの造化がゆっくり回転する。


 


 

 

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