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幻想館

 

起きて転んでまた起きて

「日本一のショック男」の併映で、どちらも渡辺プロ製作作品のようだ。

マチャアキこと堺正章さんとなべおさみさんのダブル主演のかたちになっているが、出演シーンはなべさんの方が多く、どちらかと言うとなべさん主演映画のように見える。

ハナ肇さんの付き人だったなべさん同様、植木等さんの付き人だった小松政夫さんも出ており、スター映画と言うより、ナベプロの新人を売り出す映画と言う印象で、安倍律子さんなどもヒロイン役で出ているし、クレージーの桜井センリさんやドリフの長さんなども出ているのが楽しい。

大原麗子さんが、いかりや長さんとコントみたいな踊りを披露しているのも見物。

基本的に低予算の添え物映画なので、派手な見せ場などなく、笑い所と言うと、せいぜい当時のCMフレーズかマチャアキさんのずっこけポーズや変顔くらいか?

なべさんの「何か変だな?」と言う「キントト映画コント」のフレーズも出て来るのだが、ギャグのように使われてない。

この当時の喜劇は、別に喜劇を作りたいスタッフが作っている訳ではなく、普通の脚本家や監督が仕事の一環として撮っているだけだし、予算もないし、タレントたちのスケジュールも余裕はなかったはずで、これで笑いを期待する方が無理と言うものである。

監督の前田陽一さんは松竹でも何本か「喜劇」と銘打った作品を撮っているが、特に笑えるような作品はなかったと思う。

「私の城下町」ネタが出ていると言うことは、小柳ルミ子さんがデビューした直後と言うことだし、アメリカンクラッカーや女子プロボウラー、ドルショックなどと言う言葉が出ている所から見ても時代を感じさせる。

やや凡庸なプログラムピクチャーと言うか、気軽に時間つぶしできる感じの軽い作品と言った感じだと思う。

余談だが、キネ旬データの当作品のキャスト欄の役名は間違いだらけ。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1971年、東京映画、小松君郎脚本、 前田陽一監督作品。

タイトル

グラウンドではサッカーをやっている大学の構内の一画で、子供用の玩具のボウリングをやっていたのはボウリング部桜井正明(堺正章)だった。

まずは自分が投げた正明は、今度はマリちゃんの晩ですよと幼なじみの川上マリ子(安倍律子)を誘うと、やり方教えてあげると言い、ボウルを投げるが、見事にボウルは横に逸れて行く。

がっくりした正明たちボウリング部の元に車で乗り付け、オスッ!何やってるんだ、こんな所で?と声をかけたのは、辺山修(なべおさみ)だった。

ボウリング部の部費がなくなったんだ…と正明が情けなさそうに言うので、金のことなら相談してくれよ!ボウリングは俺も好きだから入部しようか?と修が言うと、喜んだ正明は、君にはマネージャーをやってもらうと提案し、がっちり2人は握手する。

費用は全部持つからボウリング場へ行こうと!と修が提案し、その後全員でボウリングを楽しむ。

しかし、結果は修の優勝で、修は自分自身に表彰状とトロフィーを授与することになり、トロフィーは欲しくないのでマリ子に上げるよと気前良く譲ると、他の仲間たちにはおまけだと言いながらアメリカンクラッカーを配り出す。

受け取った正明が、随分時代遅れだな…とぼやくと、聞こえるぞ!あいつんとこのおやじ、春頃これ作って大儲けしたんだよと仲間がこっそり耳打ちして来る。

その後、レストランに仲間を連れて来た修は、全員にスペシャルステーキを注文させるが、正明だけは、カレーライスで良いと言うので、もっと旨いもん食えよ!君のは細い!とCMのようなことを修は言ってからかう。

しかし正明は、じゃあ福神漬け付けてと言うだけだったので、ステーキ7つにカレーに福神漬け付けて!と修がまとめて注文する。

店を出た後も、もう少し付き合えよ、芸者遊びに行くから…と修は誘うが、俺、これからバイトに行くから…と正明が別れようとすると、時給いくら?払ってやるからと修はしつこく誘う。

正明は、俺、不労所得なんて嫌なんだ、お金ってのは額に汗して稼ぐものだよと言い残し去って行くので、すねてんな…と修は呟き、他の仲間たちと馴染みの料亭「はやしや」のお座敷に向かう。

馴染みの芸者〆香(大原麗子)が歌う中、陽気に修が踊ってみせる。

その時、「はやしや」の女将(都家かつ江)が部屋に飛び込んで来て、若様!大変ですよ!お父様が危篤だそうです!と伝える。

驚いた修は車で屋敷に戻ると、土足のままで座敷に上がり込むが、そこには、既に白い布を顔にかけられた父親の遺体の前で泣き崩れている母親のはる(野村昭子)がいた。

このところ、クラッカーの注文が急に来なくなって、最近はご飯も喉を通らなくなっていたのよ…、困ったね…、借金が2000万もあるのよ、川上さんに…、担保の屋敷を取り上げられるのは仕方ないけど、残りの1000万…とはるは嘆く。

川上(若宮大佑)に会いに行ったはると修だったが、おはるさん、どうする?と川上に聞かれたはるは、期日さえあれば何としてでもお返ししますと答えると、今日から毎日取り立てに行きますよ、今日からお宅が稼いだ金はこっちのものだから…と冷たく告げる。

そこにやって来たのが川上の娘のマリ子で、急なことで大変だったわねと修に同情の言葉をかけると、ボウリングに行きたいけどお金が足りないの、100円頂戴!とねだり、修さんも行かない?などとのんきに誘うので、辺山君はそれどころじゃないんだよと川上は叱りつける。

マリ子がつまらなそうに部屋を後にしたので、1000円くらいなら僕出しますと修は立ち上がり金を取り出すと、無駄遣いは止しましょう!これもこちらのものと良いながら、千円札を奪い取ったのは、川上の会社の専務の大松(小松政夫)だった。

帰り道、はるは、働いて母ちゃん何とかやる!昔髪結いやってたから…と言うので、俺も考えないとな…と修も答え、くよくよしないで思い切り笑ってはじめからやり直そうよとはるが提案し、2人は大笑いしようとするが半分は泣き声だった。

はるは「鍋山髪結い所」を開設する中、修はあと1000万か…と呟きながら黒板に返済金1000万と書くと早く0にしないとねとはるに説明する。

俺大学辞めて働くよと修が言い出すと、卒業まで1年じゃないか、借金くらい母ちゃん1人でやって行くよとはるがやせ我慢するので、来るわけないじゃない、今時髪結いなんて…と修がぼやいていると、三浦家二三香(三浦布美子)がぽん太(桑原幸子)、〆香ら7人の芸者を引き連れて来る。

二三香は、このおはるさんは、私のお酌の頃からの筋金入りの付き合いなのと後輩たちの紹介すると、ぽん太さん、あんたからと勧める。

このカツラ10万もするのよ…と言いながら、怖々はるの前に座る。

一方、台所で料理を作っていた修の所にやって来た〆香は、ギッチョンチョン!と歌いながら手伝い始める。

翌日、淡島大明神に参った修は、僕も働く決心をしました、ボウリングも断ちます!お茶や踊り、トルコ風呂も断ちます!ちかいをやぶったら罰を与えて下さいと、ボウリングの球を捧げて祈った後、誓いを破ったら罰を与えて下さいと願をかけるが、お供えとして奉納していたボウリングの球に最後の一回だけと指を突っ込むと、指が取れなくなったので、霊験あらたか!と修は仰天する。

修は大学を辞め、タクシーの運転手で稼ぎ始める。

最初に乗せた客はおばあさん(桜井センリ)で、山王様までと言うので近くの山王神社に連れて行き230円と請求すると、ここではない、TBSの近くの…と言うので、赤坂の!と修も驚き、東京には山王様たくさんあるんだよと注意するが、おら知らねえ、おら知らねえ♩と婆さんはCMのようなことを言う。

赤坂の日枝神社に到着し1230円!1000円で良いよ!と言った修だったが、婆さんが1000円払って降りると、黒板に書いた返済金のことを思い出し、さっきの230円!と車を降りて呼びかけようとするが、もう足の速い婆さんは神社の中に消えていた。

私ってダメね…と修は反省する。

その後、横浜までと言われると、込んでいるからと断り、品川の中央病院まで、息子が危篤なので!と言われても近いので修は断るようになる。

次に乗せたのは馬券を当てたと言う客(ケーシー高峰)で、今日は600万取ったが、1200万取らないと元が取れないなどとうそぶきながら札束を数えているような男だった。

そんな男は修の顔色が悪いからマムシ飲め!などとお節介を言う。 その後、客を降ろした修は尿意を覚えるが周囲にトイレはなく、やむなく用意していた溲瓶を取り出そうとしていた時、客(柳沢真一)が手を上げ浅草までやってくれと言うので断ると、乗車拒否するのか!と文句を言われる。

客のことより売上優先と言うのがうちの方針なんだ!と修が言うと、降りろ!と相手が言って来たので、小便して来るから待ってろ!と言い、道路脇に走って行って小便を始めた修だったが、エンジン音に気付いて振り向くとタクシーが走って行くではないか! 慌てて別のタクシーを停め追いかけようとするが乗車拒否されてしまう。

走って会社に戻り、車を盗まれた!とその場にいた仲間に伝えた修だったが、車ならそこに戻って来ていると言うので首を傾げる。

さらに社長が呼んでいると言われた修は、本採用?給料が上がる?などとうきうきしながら社長室へ向かうと、そこにいたのは先ほど車を盗んで行った客だった。

自分の会社の社長くらい覚えておけ!と叱られた修は首ですね?と聞くと、社長の目の前で堂々と小便をする度胸を見込んで執行猶予にしてやると言われる。

その後も修の稼ぎもあり、少しずつ返済額は減少して行く。

こんばんわ、来たわよ!と毎日やって来る大松がその日も集金にやって来る。

ちょうど夕食時だったので、テーブルの上にかぶせていた布巾を剥いだ大松の手前、修は、トンカツ、海老フライ!母ちゃん!こう云う贅沢は許されますか!と自ら訴えてみせるが、そう言う芝居してもダメ〜と大松に見透かされ、その日の売上4650円全部持って行こうとするので、全部金持って行かれたらどうやって生きていけば良いんですか!と修はすがりつく。

すると大松は、僕も長く行きて来たけど、コジキからもらってるみたいで嫌だな〜と言いながら小銭を渡して来たので、コジキなんかじゃないよ!とその小銭を床に投げ捨せた修だったが、いりませんよ、又明日取りに来ますからと言い残し大松は帰って行く。

そこにやって来たはるが、ならぬ堪忍するが堪忍と言うんだよと言いながら、床に散らばった小銭を拾い集めたので、ごめんよ母ちゃんと詫びながら修も金を拾い出す。

返すまでの辛抱なんだから…とはるは言い聞かし、修は感極まり、母ちゃん!と絶句するが、まだあるんだから…と言いながら、はるは隠し持っていた千円札を取り出してみせる。

翌日からも大松の取り立ては続くが、修は、今は川上の家になった元屋敷にタクシーを乗り付け、丸子を乗せて大学まで乗せて行く。

すると、新しい客が乗り込んで来て、東宝ボウルまでと言うので顔を見ると正明だった。

正明の方も運転手が修と気づいて驚いたようで、おやじが死んで大変だったなと同情すると、生活変わっただけだと修は答え、良い服着てるねと褒めると、俺センス良いからね!と正明は急に自慢し、アルバイトは?と聞くと、アルバイトはとうに辞めちゃったと言う。

うちのカツラが輸出産業の花形になって儲かり出したんだ、僕は卒業したら専務だし…と説明した正明は修をレストランに誘う。

飯食ったら俺んち来ないか?と誘った正明は、俺スペシャルステーキ!と言うので、修はカレーで福神漬け付けて…と注文する。

修がタクシーで昔の正明の吹けば飛ぶような貧しい家の前に送り届けると、今の家は隣にそびえ立っているビルの方だと言うので修はたまげる。

350円の料金を言うと、正明が1万円札を差し出して来て釣りはいらないなどと言うので、9250円も恵んでもらう気はないよ!と修が憤慨すると、計算違ってないか?と正明は突っ込む。

修は悔し紛れに、お金は額に汗して働かないとダメなんだぞ!と以前正明が言っていたことと同じ事を言い返す。

セフティと言うその会社に正明と一緒に入ってみた修は、若旦那!と正明を出迎えた洋平(左とん平)と再会し、鍋山の坊ちゃん!などと呼ばれたので、坊ちゃんなんかじゃないよと否定する。

その洋平が、輸出用の見本品としてヒゲのようなものを正明に見せたので、修は口ひげと勘違いするが、それは女性が下の方に使うものだと知り驚く。

この商品のモデルがいないんですよね〜と言いながら、洋平がマネキンのネグリジェをめくったりするので修は慌てる。

正明の部屋に入ってみると、そこは骨董店のような品物で溢れており、太平洋戦争時代のラジオなるもののスイッチを正明が入れると、大本営発表の放送が聞こえて来たので2人とも固まる。

正明が他の骨董の値段を自慢している間、日記のようなものを開いてみた修は、そこに正明とマリ子が並んで写っている写真を発見する。

それに気付いた正明は、それは見ないでくれ!と慌てるが、修は自分もマリ子と並んで写っている写真を持っており、実はその写真は3人並んで一緒に写った写真を切り取ったものだと修は指摘し、正明!いくら親友だってこれだけは譲れない!正々堂々と勝負しよう!と言い出す。

マリちゃんに正々堂々と申し込み、返事をもらった方の勝ちだ!と両者は合意する。

先にマリ子の家を訪れたのは修の方だった。 ここ、修さんのお部屋だったんでしょう?今は私の部屋なんだけど悪いみたいねと言いながらマリ子は自分の部屋に修を招き入れる。

戸を閉めてと言われた修は、男女が一緒にいるときは少し開けているのが礼儀だと言うと、修さんのこと男だって意識したことないわ、私たち幼なじみでしょう?今更男として意識するなんて無理よとマリ子は言う。

修が、正明も幼なじみでしょう?と聞くと、彼はスマートで服装のセンスも良く、歌が巧くてデリカシーだけどおっちょこちょいよねとマリ子は答える。

一足おくれて、マリ子の家に到着した正明は、家からしょんぼりして出て来た修を見て先を越されたと悔しがりながら、肩を叩いて、その顔じゃダメだったんだなと同情する。

修は悔しがり、マリちゃんはお前の悪口ばかり言ってた、お前の歌を聞くと一週間下痢になるなどと嘘をつく。

俺が部屋に入ったと思いなよ、俺が扉を閉めようとするとマリちゃんは開ける!これどう言うことだと思う?と修が真逆なことを言い、でも借金あると申し込みにくいだろう?だからまだ申し込んでいないんだと打ち明ける。

すると不機嫌になりながらも正明は家に入りかけるが、何故かすぐに出て来て、延期したよと言う。

お前が借金払い終えるまで待つよ、その代わり、借金返し終わった時には遠慮しないぞ!と正明が言うので、修は感激し、ありがとう正明!と礼を言う。

後日、茶店で昼食のカレーを注文した修は、店内に来ていた洋平が、ぽん太らと一緒にボウリングに行ったらしく、はしゃいでいる会話を聞くまいと耳を押さえる。

マスター!俺のカレーはまだ?と聞く修の声で気付いたぽん太が、あら、修さんじゃないの!マチャアキったらアベレージ200も出すんだもの!マチャアキ、マリちゃんがボウリング上手な人じゃないきゃ嫌だって言うんで猛練習したのよなどと言う。

タクシーに戻った修は、マチャアキとの差がついたことを考えるあまり衝突事故を起こしてしまう。

タクシー会社の社長は、さすがに今度は庇いきれんと首を言い渡した上に、修理代50万も請求する。

頭に包帯を巻き家に帰って来た修は、母ちゃん、ごめん…、おればっかりドジやって…と詫び、自動車ばかりが乗り物じゃない!と奮起する。

翌日から修は、二三香を乗せて人力車を引いていた。

二三香は、そんな修の身体を案じ、身体壊しちゃうわよ、こんなことやってたんじゃと言うと、太鼓持ちでもやってみたら?今なりてがなくてねと言うので、ありゃ、三枚目がやることでしょう?と修がバカにするので、どっちも人を乗せるのが商売でしょうと二三香は巧いことを言う。

その後も二三香は、この間の話だけどさ、踊りのお師匠さんに習うのよと修に言うと、ああいうのは厳しいんでしょう?と修が尻込みするので、女みたいな人よと二三香は言う。

修は二三香に付いて、その女みたいな踊りの師匠、花井長之輔(いかりや長介)が〆香に踊りを教えているのを見学する。 長之輔は〆香に、あなたの踊りは全然色気ないのよ!と焦れて来たのか、途中から笛を吹いてリズムを取り、コントのような踊りを教え込む。

修の話を聞いた長之輔は、太鼓持ちは本来7〜8年修業してお披露目するもんなんだけど、あんたは訳ありのようだからインスタントで教えてあげると承知する。

扇子を使って、旦那!一本取られました!と首を叩く動作を教えた長之輔がやったんさいと勧めると、修も真似してみるが、巧く行かないので何度もやり直させるうちに修は長之輔の頭を扇子で叩いていた。

踊りの練習もした後、修は、呉服屋の竹田(藤村有弘)の座敷で太鼓持ちデビューを果たす。

同席した二三香が、珍八って言うんですと修を紹介すると、なかなか巧いな、何か別の芸を見せてくれと竹田が言うので、男の芸が続いても面白くありません、今度は二三香姐さんにやっていただきましょうと持ち上げたので、ますます竹田は気に入る。

二三香が踊りを披露する。

長之輔から教わった「私の城下町」の当てぶりを疲労することになったのは、何と川上や大松の座敷だった。

同席していた〆香が「私の城下町」をリクエストしたので修が習ったばかりの当てぶりを披露し始めると、お止しなさい、みっともない!と制止した大松が立ち上がり、自ら「私の城下町」の歌の当てぶりを始める。

さらに川上が、犬の真似をやれ!などとからかい、大松が、ちんちん!とかおしっこ!などと無茶なポーズを要求するので、見かねた〆香が、ちょっと!良い加減にして頂戴!と抗議し、社長、野球拳しましょう!と勧めたので、何とか難を逃れた修だったが、その後もじっと屈辱感に耐えていた。

その後、修を茶店に呼び出した大松は、良い話があるんだ、むっつりスケベのうちの社長が〆香ちゃんに夢中になったんだ。

口説いてくれたら借金の期限をいつまでも延ばしてやっても良いって言ってるんだと申し出る。

それを聞いた修は、そんなの考えるまでもないよ、金持ちなんだから、札束で顔をこすれば良いだろう?と嫌みを言い、俺に美人局なんか出来るか!すっとこどっこい!色恋とコイコイは自分でやるから面白いんだ!と言って大松を追い返す。

修も帰った後茶店にやって来た洋平はマスター(北浦昭義)から話を聞き、あの人もダメだね〜、無期延期になるってチャンスだったのに…と修の短気を責め、良し!若旦那の友達のことだ、俺が何とかしましょう!と言い出す。

甘味処に、クラッカーを持って、これが売れますようにとお参りして来たのと言う〆香とぽん太を呼んだ洋平は、修くんの為に目をつぶってくれないか?と川上と寝てくれないかとほのめかすが、バカにしないでよ!私たちは不見転芸者じゃないのよ!あんたも何で人のお節介するのよ、修君に頼まれたの?と憤慨する。

洋平はついつい、修君に頼まれたんだと嘘を言い、帰りましょう!と立ち上がったぽん太と一緒に帰りかけた〆香に、外出たら何かサインください!と洋平は頼む。

すると、店の外に出た〆香は立ち止まり、左褄をめくり、赤い襦袢を見せて来る。

その後、憤慨したぽん太が、修の家にやって来るが、銭湯に行っていると聞くと、そのまま銭湯の男湯に乗り込もうとする。

番台の女将に注意されたぽん太は女湯の方に入り込み、修さんいるの!と男湯に向かって呼びかける。

いるよ!と男湯につかっていた修が答えると、大変!大変なの!〆香ちゃんがね!とぽん太が言うので、〆香ちゃんがどうした!と修は驚く。

その頃、「はやしや』で〆香と2人で酒を飲んでいた川上は、良いんだね?お前さんも一つ…などと言いながら、〆香に酒を飲まそうとしていた。 三三九度みたいだね?などと川上が脂下がっている所に乗り込んで来たのは、猿股一丁の修だった。

廊下で踏み台の乗って中の様子を覗いていた大松とぶつかり、座敷に入って来た修は、〆香、目なんかつぶんなくて良いんだよ!と言うと、両手に持っていた下駄を拍子木のように叩きながら、川上に帰れ!と怒鳴りつける。

廊下では、拍子木の音に合わせ、大松が歌舞伎の見栄の真似をしていたが、急に真顔になると、組合に言って辞めさせてやる!と修への復讐を誓う。

座敷の中では〆香を修がビンタし、〆香は泣き出す。

翌日、修の家に来た〆香は、はるに、今日は髪じゃないの、お願いがあって来たの、師匠が清元のおさらいで着た着物、10日ばかり借りられないかしら?と言うので、貸すのは良いけど地味じゃないかい?とはるは答える。

すると〆香は、不景気なときは地味な方が良いのよと言うので、近づいて来た修は、〆香ちゃん、夕べみたいなことしてもらっちゃダメだよと釘を刺す。

はるが着物を渡すと、〆香が金を払おうとするので、良いんだよとはるは断るが、〆香は無理に金を押し付けて帰る。

それを返そうと玄関に来た修だったが、そこにやって来たのが洋平で、アメリカンクラッカーを全部欲しいと言う。

何にするんだ?と修が聞くと、色を塗って店のクリスマスの飾りにするのだと言う。

さらにぽん太までやって来て、磨き粉が欲しいのなどと言い、洋平が多額の札束を修に渡そうとするので、さすがにおかしいと気づいた修がぽん太に問いつめると、正明に借りて来いって言われたと言うので、何か変だな?と修は口走る。

早速正明に電話を入れた修は、助けてもらう程落ちぶれちゃいない!と文句を言うと、お前、俺の謎掛け分からないのか?と正明が言うので、なるほど、人にものを貸してもらうか!リース屋だ!と思いついた修は電話を切る。

正明の方は、人の気も知らないで、慌てもん!と電話口に怒鳴り電話を切る。

すぐさまのぼり旗を背負い、リース屋を始めた修は二三香のいる三浦家にやって来ると、持って来た品を前に、何でも借りて下さいと言う。 すると芸者の1人がお金貸して!男を貸して!などと言い出したので、それだけは…と修は苦笑する。

象牙の簪などを勧められた二三香は、「はやしや」の女将さんの所へ行ってごらんよと教える。

やって来た修から借りたいものを聞かれた「はやしや」の女将は、部屋を増築したので掛け軸が欲しいと言う。

あんたの父さん、骨董趣味があったでしょう?と言うので、骨董屋の友人清水(和田浩治)の所に相談に行くと、川上さんから買った奴があったね、お前の家から出たものだよ、偽物だと思ったから2000円で「はやしや」に売ったと言う。

家に帰って来た修は、母ちゃん、少し宣伝やんなくちゃな…などと話していたが、その時、仏壇の中を整理していたはるが、父ちゃんが集めていたやつ…と言いながら書状を取り出す。

それを見たはるは、田能村竹田の本物の鑑定書だよ!と言うので修はたまげ、しめた!と喜ぶ。

早速「はやしや」へ飛んで行き、竹田の掛け軸のことを聞くと、おかみと一緒にいた〆香が、私、売っちゃったと言うではないか。

馴染み客の竹田さんが竹田と名前が同じなので、うちの先祖かも知れないと言うので2万円って吹っかけてやったのと自慢する。

2万で売れたの?と聞いた修は、ありがとう!と喜ぶ。

しかし、その後、茶店で修から鑑定書を見せられた正明は、2万で売ったと聞くと、バカ!田能村竹田なら、安く踏んでも時価2000万はするんだよと言うので、それを聞いた修はひっくり返る。

修は〆香と一緒に、呉服屋の竹田を訪ね、あれは父の形見なので返してもらえないかと交渉すると、竹田は、欲しくて買った訳じゃないし、2万で買って1日店にかけただけだから、色付けてくれるなら…と言いながら算盤を差し出して来る。

修はそろばんの為を弾き、3万!5万!と吊り上げるがなかなか竹田は首を立てに振らない。

さらに、そこに出て来た竹田夫人(山東昭子)が5満何手おっしゃる所を見ると本物かも…と疑い出し、鑑定家に見てもらってからお返ししますと言い出す。

困った修だったが一計を案ずる。

その後、竹田の呉服店にやって来たのは、鑑定士に化けた正明だった。

書画骨董の鑑定をやっているものですが…と竹田に挨拶すると、鑑定料はいかほど…と金の心配をする竹田に、光学の為見せていただくだけですと正明は答えるので、竹田は大喜びする。

大きな天眼鏡を取り出した正明は、店に飾ってあった掛け軸の絵を見ると、本物と言えば本物ですが、一つ欠点があります、不吉な影があり、これを持っていると奥さんが早死にするのです、歴史が証明しています。

死ぬのです!早く手放された方が…と正明は勧めるが、それを聞いた竹田は、万歳!あの女房が死んでくれるのなら手放しませんぞと喜ぶ。

そこに竹田夫人が出て来て、事情も知らず、あなた、その絵を死ぬまで大事にしましょうなどと一緒に喜び出したので、目論見が外れた正明は泣き出す。

女房と何とかは新しい方が良いと言うでしょうと夫人がいなくなると竹田は言う。

その後、念のため、清水の所に掛け軸を持って来た竹田に、いくらでお買いになったんですか?と聞いた清水は、これはうちが2000円で売ったもので、このくらいの竹田はいくらでもありますと言い聞かす。

しかし竹田が、投げ山が取り戻しに来たのです、何故でしょうと聞くので、親父の形見だからでしょう。

今、辺山は金に困っていますから、2万で返してやったらどうでしょう?と清水は勧める。 残念ですな…と竹田が惜しむので、これを持ったいると男が死ぬのです。

その辺山のお父さんも、これを持っていたから死んだのですと清水が言うと、縁起でもない!と言い、竹田は掛け軸を持って帰る。

その後、清水は、本物だ!と1人興奮していた。

修の家に清水から電話が入り、今、竹田さんが例の竹田を持ってそっちに行く。そいつを持っていると男が死ぬと言ったら、慌ててそっちに売りに行ったんだと知らせて来る。

それを知った修は、余裕出て来たよ、あの竹田本物だったんだよ、鑑定書出て来たんだよ!二代目!などと修は清水をバカにして電話を切る。 そして、母ちゃん、竹田さんが竹田を持って来るから値切るんだよと言い聞かせる。

そこへ竹田が掛け軸を持ってやって来る。

竹田は、かないと相談したんですが、こちらは親孝行だそうだから6万でどうかと…と切り出して来たので、いらないのと修は冷たく答える。

3万で良いよと竹田は折れるが、いらないものはいらないのと修は拒否する。

2万だったら?と竹田は泣き顔になるが、そんな金ある訳ないじゃないですか!と修は答え、さらに値下げして行った竹田が1000円と言った時点で決まった!と修は承知する。

母ちゃん払って!と修に言われたはるは、豚の貯金箱を叩いて壊し、竹田に1000円渡して帰す。 沮洳後、仏壇の父に向いはると修はありがとうございましたと頭を下げる。

川上に1000万耳を揃えて返しに行くと、お前、悪いことで模したんじゃないか?と川上は修を疑う。

借金のカタを買い戻したんです。あんたが清水にたった1000円で売った掛け軸が2万倍になったんですよと修は説明する。

借金が返せたことを知った正明は、良かったな!これでフィフティ・フィフティになったんだと茶店で落ち合った修に言う。

そこにマリ子が待たせてごめんなさいと言いながらやって来る。

さらに清水もやって来て、ちょうど良かった、2人に話があるんだと話しかけて来るが、こっちが先約だと言い、清水を側のテーブルに座らせた修と正明は、どっちが先にマリ子に申し込むかじゃんけんで決めようとする。

しかし何度もあいこを繰り返すので、あの…、私の方からもお話があるの…、言っちゃおうかな…と切り出したマリ子が、私、結婚するんですと言うので、驚いた2人が期待を込めて誰と?と聞くと、清水さんと!と言うではないか。

それを聞いたマスターは、おめでとうございますと言葉をかける。

と言う訳なんだ、今日は忙しいんだ、ホテルへ結婚式の申し込みをしに行かないといけないんで…、じゃ〜ね〜と正明と修に告げると、マリ子と一緒に店を後にする。

その後、荒れた修と正明は、料亭で角瓶を空けて酔っぱらい、マリ子の悪口を言った後、マリちゃん!と叫び泣き出す。

そこにやって来た洋平は、こうなったら料亭どころじゃないですよ、ドルショックで貿易がダメになったんです。うちの会社も倒産間違いなしですよと知らせる。

それを聞いた正明は、倒産!と驚く。

トンビに油揚さらわれた上に今度はお前が倒産するとは…と呆れた修は、あの絵売った残りの1000万あるよと言いながら小切手を差し出す。

これをくれるのか?と戸惑った正明は、辺山、俺が前に手を差し伸べたらお前どうした?やせ我慢の一点張りだったじゃないか、俺にもやせ我慢させろと答える。

骨董屋でもやろうかな…と言い出した正明は、お前見てたらつくづく思ったよ、一所懸命やっていたら何とかなると…、人生七転び八起きだよな…と良いながら、正明は修と乗った遊園地の開店遊具の中から街を見渡す。

その後、2人はマリ子からの手紙を受け取る。 そこには、長い間あなた方からの申し込みを待っていたけど、お2人にはご縁がありませんでした。清水さんは良い人です。お2人のご親切は忘れませんと書かれていたので、2人はむせび泣く。

茶店でのささやかなパーティで、正明は「幸福への招待」を歌っていた。

歌い終わると、会に出席していたマスターの妹京子(吉沢京子)が立ち上がり、町内一のハンサム清水さんと町内一の美女マリ子さんの婚約発表会を行います。おめでとうございます。

誓いのベーゼをどうぞ!と声をかけ、恥ずかしがる2人に無理矢理キスをさせる。

それでは皆さん全員で!と京子が声を掛けると、出席者全員で、おめでとう!と声を掛けるが、正明と修はやけくそになっていた。

そんな2人にマスターが、プレゼントしなきゃいけないんじゃない?と声を掛けると、これは僕と鍋山君で考えたささやかなプレゼントですと言い正明がマリ子の小さな箱を手渡す。

それを空けてみた清水は、修くん、これはマリ子には必要ないんだ、間に合ってますと答えたので、と言うことは既に…と修は愕然とし、正明と共に泣き出す。

その後、全員でボウリング場で遊ぶことになる。

修は、女子プロボウラーの須田開代子さんから手ほどきを受け、須田さんの投げる姿を見ると、君、プロになれるよと褒める。

これでしばらくボウリングともお別れだ…と寂しがる正明に、最後の一投を投げろと修は声をかける。

正明が投げると見事ストライクだったので、やったーと全員喜ぶが、もう一回だけ投げさせて!と正明は頼み、もう一度球を投げると、並んでいたピンが急に動いてボウルを避けたので、見ていた2人はずっこけ顏になる。
 


 

 

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