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俺にさわると危ないぜ

渡辺プロ製作で、谷啓と藤田まこと主演のサラリーマン喜劇 東京と大阪の2人のライバルが、互いに女性と仕事にしのぎを削り、そのやる気を社長に認められ、あっという間に出世すると言う無責任シリーズ等に通じる典型的なサラリーマンサクセスストーリーになっている。

浜美枝、新珠三千代、司葉子と言う東宝を代表する女優がそれぞれ、大阪、東京、名古屋でのお相手役を務めている。

谷啓さんと一緒に東京支社で採用された新入社員の中には古谷敏さんがいるし、大阪本社の新入社員には二瓶正也さんがおり、共にセリフのないちょい役だが、何故か二瓶さんは、研修後、藤田まことさんだけが出向させられたはずの東京支社の営業部にもいるのが不思議。

話そのものは、アルサロやクラブでのホステスやママとの恋の駆け引きや、演芸会などサラリーマンもので良くありそうなパターンばかりで、特に目新しさはない。

冒頭のサッカーの試合は若大将シリーズのような雰囲気もあるし、60年代東宝のプログラムピクチャーの特長は味わえる平均的な作品と言った所だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1964年、渡辺プロ+東宝、笠原良三脚本、古沢憲吾監督作品。

列車が走る東海道本線を写した空撮

東京に向かう列車の中で、部員たちに駅弁を配っていたサッカー部の学生が、キャプテンの天満誠(藤田まこと)にも渡そうとすると、それどころやない、明日の作戦考えとるんや!今の所相手の関東大とは五分と五分やから、何が何でも勝たねばならぬ〜♩と「王将」の一節を歌ってみせた天満は、特にキーパーのアンパン、神田はどんな球でも受け取る奴やからなとライバル心を燃やす。

その頃、関東大のサッカー部の部室内でも、大阪学院に勝たないと俺も心置きなく卒業できない! 攻撃の要である天満のキックは凄いからなと認めながらも、あいつは馬に似ている、何だ馬野郎!とキャプテンの神田敬次郎(谷啓)は部員たちを前に気勢を上げる。

いよいよ翌日の「全日本学生選手権大会」で関東大対大阪学院のサッカー試合が開始する。

タイトル

1対1の攻防が続く中、攻め込んだ天満はついキーパーの神田の股間を蹴るが、神田が全く動じず、逆に天満の方が足を痛め痛がると、レフリー(広瀬正一)がやって来て、君は反則3回だから退場させるぞと天満に注意すると、あいつ何かパンツに入れているに違いない、そんな事するのも違反やろ?こっちが痛いなんておかしいやないか!あいつのパンツ脱がして調べてくれ!と天満が抗議したので、レフリー(が神田のパンツを脱ぐように命じると、神田はこんな慣習の前で出来ないと抵抗するが、相手から苦情が出ているんだ!従わないと退場させるぞ!とレフリーが重ねて言うと、渋々パンツを降ろす。

すると神田の股間には、剣山のようにスパイク付きのプロテクターを付けていたので、2人とも反則!とレフリーは判定する。

それを知った天満と神田はもみ合いになり、両軍の選手、果ては観客席からも両軍の応援団が乱入して来て、グラウンド内で大乱闘が始まる。

結局、卒業前の最終戦は引き分けに終わった神田だったが、後輩たちを連れビアホールで乾杯をしていた。

そこにやって来たのが天満で、神田たちがいるのに気付き一瞬帰りかけるがすぐに思い返し、オッス、神田君、握手しようじゃないか!と自ら近づき手を差し出すと、お互いもう卒業や、この際仲直りしようやないかと申し出たので、最初は戸惑っていた神田も、天満の気持を信じ込み、良しこれまでの事は水に流そうと言って握手すると、一緒に飲まないか?東京の事なら任しとけ!と神田は天満を飲み会に参加させる。

来年卒業したらどうするんだい?と神田から聞かれた天満は、実家は先祖代々の昆布屋やけど、継ぐ気はないから、日本銀行へ就職しようと思うとるんやと答え、君の就職は?と神田に聞く。

神田の方は、代々佃煮屋だけど、今、三井、三菱、日立辺りから勧誘が来てるんだと自慢する。

そこに天満と待ち合わせていた大阪学院のサッカー部がやって来たので、今日はアンパンがおごってくれるそうや、お言葉に甘えじゃんじゃんごちそうになろうやないか!と言い出したので、驚いた神田は薄っぺらい財布の中味を心配し出す。

神田は卒業後、第一生命ビルの側にある住丸商事東京支社に5人の新入社員1人として入社する。

その後、研修を受けるため住丸商事大阪本社に向かった神田ら支社採用の5人は、富岡総務部長(人見明)から本社採用の新入社員5人を紹介されるが、その時神田は、本社採用の新人の中に天満がいる事に気付き、おい、馬じゃないか!と声を掛けるが、富岡に私語を注意され、まもなく社長の御訓示があると言われる。

それでも神田が、日本銀行はどうなったんだ?と聞くと、君も三井や三菱どうなったんや?と聞いて来たので、こう云う二流会社の方が将来性があると神田は負け惜しみを言う。

そこに社長の住丸利助(曽我廼家明蝶)がやって来て、これから君たちが守るべき心がけを話したいと切り出すと、部屋に貼られていた「住丸精神五ヶ条」と読み出す。

一つ、会社を我家と思い、仕事を天職と思うべし

一つ、浪費を戒め、謹厳実直に励むべし

一つ、礼儀を正し、品位を保つべし

一つ、早寝、早起きを心がけ、健康に留意すべし

一つ、社長は自ら努力する社員を助けると知れ

その後、屋上に上がった神田は、天満が社長の遠縁にあるとコネ入社である事を自慢したのでかちんと来るが、君には前には散財させたから今夜は面白い所に案内したる。

明日から研修が始まるので、ゆっくり出来るのは今日くらいやでと天満から誘われると喜ぶ。

その夜、天満が神田を連れて来たのは「淀君」と言うアルサロで、舞台では軍艦マーチで日本舞踊のようなショーをやっていた。 ボーイからご指名は?と聞かれた天満は、悦子 さん呼んでくれと頼む。

テーブルに着いた神田は、この程度の店なら新宿や池袋にもあるぜと言うと、ここのホステスの7〜8割はアルバイトやと天満は教える。

そこへ指名した悦子 (浜美枝)が来たので、天満は早速踊ろうと誘うが、こちらの方に悪い…と悦子は神田の事を気兼ねする。

そんな悦子をちょっと離れた所へ呼んだ天満は、今のあの2杯と指名料は僕が払うわ、けどそれ以外の支払いはあいつに請求してくれと頼む。

踊り終えてテーブルに戻って来た悦子に、僕のお相手はナンバー1の子が良いなと頼むと、ナンバー1はうちやと言った悦子は、じゃあナンバー2で我慢しようと言う神田に、律子さん呼んでんかとボーイに頼むと天満と踊り出す。

テーブルにやって来た律子の顔を見た神田は、君がナンバー2?随分開きがあるなと驚くが、まさか勘定全て自分持ちになっているとも知らず、ビールをじゃんじゃん持って来させる。

その間も天満は、僕とあいつの勘定別々にしてや!と悦子に念を押しながら、抱きついて来るので、悦子は、イケズ!スケベ!と天満に文句を言う。

今度の休み、付き合うてくれへんか?と悦子を誘っていた天満は、テーブル席の神田が飲みっぷりの良い律子相手に大量のビールを飲んでいたので、こんなアルサロでがばがば飲みやがって…と呆れ、俺帰るわと言い残しさっさと帰ってしまう。

悦子1人でテーブルに戻って来たので、天満君は?と神田が聞くと帰ったわと悦子が言うので、えっちゃんは天満君の彼女?と聞くと、違うと言うので、じゃあ僕も立候補する権利あるんだな!と張り切った神田は飲まない?と誘う。

すると悦子は、うちビール苦手やからウィスキーもらうわと言う。 その後、タクシーで悦子を送る事になった神田だったが、神田さんって、ほんまに良い男やな、好きやな…、大阪の男はケチやから、東京の人はサッパリして良いわなどと神田を喜ばせ、角で停めてんかと運転手に声を掛けると、神田の頬にキスをして降りて行く。 タクシーで1人になった神田は帝塚山の寮へ行ってくれ、もう1000円しか残ってないからと運転手に頼む。

翌日から始まった研修の一環の座禅では、神田は寝不足だったのでつい居眠りをしてしまうが、悦子の事を夢に見ているうちに、僧侶から肩を叩かれてしまい、驚いてのけぞったために、背後にあった柱で後頭部まで打ってしまう。

会社ではソロバンの猛特訓が行われていたが、神田はいつも手だけ真っ先に上げる癖に正解した事が一度もないと教師(沢村いき雄)に叱られたので、神田は、あ〜あ、驚いた!ととぼける。

その日は、神田や天満ら新入社員には初めての給料日だったので、経理課に行ってそれぞれ給料袋を受け取るが、神田は天満に5000円ばかり貸してくれと頼む。

天満は利子一割天引きやと言うと4500円渡し、借用書くれと要求すると、今夜例のアルサロに行かへんか?と誘う。

しかし神田は今日は予定があるんだと言って断る。 その夜、1人で「淀君」に来た天満は、いつものように悦子を指名するが、今日は休みですとボーイに言われると、ほな又来るわ!と言ってさっさと帰ってしまう。

その頃、悦子は神田と一緒にタクシーで神戸に向かっていた。 ええ気持や、ねえこのハンドバッグ、ほんまにうちに合う?このハンドバッグ、前から欲しい思うてたんよと買ってくれた苅田に礼のつもりか、ほっぺにキスして来る。

しかし神田は、このまま神戸まで行ったら、寮を閉め出されるよと言い出したので、ほなら向こうで泊まったらええやないのと悦子は言う。

それに乗った神田だったが、俺1人で泊まるのもったいないな…、えっちゃんも泊まって行ったら?と誘うとあっさり悦子がOKしたので、今夜は実に清々しい夜だな〜と神田は感激する。

翌朝、神戸のホテルで目覚めた神田は、大変7時だ!と慌て、まだベッドで寝ていた悦子を起こし、会社に遅れちゃうよ!と急かすが、悦子は寝ぼけ眼で、会社?あんた誰?何や、まだいたん?と迷惑そうに言うと、自分だけ先に行ったら?などと冷たい事を言い出す。 帰りの自動車賃がないんだよと神田が打ち明けると、贅沢や!電車で帰りいやなどと悦子は言う。

やむなく三ノ宮駅から大阪に電車で到着した神田は、まだ誰も来ていない人事課の部屋に8時4分に着いてしまう。

ああ腹減った…とぼやいた神田だったが、目の前に貼られていた「住丸精神五ヶ条」を見ると、畜生…、ぴったり来るなと呟き、自然とそれを口に出して読み出す。

そんな人事課の前に富岡総務部長とやって来たのが住丸社長で、部屋の中から聞こえて来た神田の声に気付き、中を覗き込むと、五ヶ条を読んでいたので、名前と年を聞く。

神田は名乗り、23才でありますと答えると。神田君、君は毎朝こんなに早く来ているのかね?と住丸社長が聞く。

返答に困った神田だったが、たまに…時々ですと答える。

やがて、他の社員たちがやって来て、ソファで寝ていた神田に気付くと、昨日料に帰って来なかった所を見ると朝帰りだなと気づき起こすと、アンパン、いやしくも住丸社員の品位を穢したらあかんやないかと天満が注意する。

廊下に出た神田は天満に、例の悦子、夕べ俺が頂いちゃったのと告白すると、そんなアホな、この僕が半年かけても相手してくれなかったんだぜと天満は疑うが、彼女のハンカチ間違えて持って来ちゃったんだと神田が取り出してみせたので天満んは嘘じゃないと気づく。 その時、女性社員が、社長が呼んでますよと教えに来る。

新入社員を社長室に集めた住丸社長は、「住丸精神五ヶ条」を忘れんで欲しいと切り出す。

言いつけを守って優秀な成績を上げた者や励んでいる者を見つけるため、総務部長と月一回社を刺殺する事にしておる。

今日がそうだったのだが、神田君は定時の40分も前に出勤していたばかりではなく、住丸精神五ヶ条を読み上げていた。 修業に励んでおり立派である。

金一封を持ってこれに報いたいと思うと言うと、神田に感想を求める。

すると、神田は、社長は自ら努力する社員を助けると知れと「住丸精神五ヶ条」の一節を披露したので、その通り!と感心する。

そんな神田を見ていた天満は、覚えとけ!と悔しがるのだった。

その後、研修を終え、東京支社に戻って来た神田は、算盤で計算する時、1人だけ声を出す癖があったため、権田第一営業係長(玉川良一)から注意されるが、声を出す練習しかしてないもので…と神田は言い訳しそのまま継続する。

そこに、中村営業第一課長(潮万太郎)に連れられてやって来たのが天満で、東京は生き馬の目を抜くような所だからなと言い聞かし、権田係長を紹介すると、一つ今晩辺り新人歓迎会でもやるか?と中村課長は権田係長と相談する。

歓迎会では、タキシード姿の神田が、ソーラン節のメロディでタップを披露すると、天満の方は、侍日本の歌と立ち回りを披露すると、長い人参を剣に見立て、俺には生涯てめえと言う強い味方があったのだ!と国定忠次かあんかけの時次郎の真似をする。

そして神田と天満は、課長と係長にも隠し芸をねだり、上司と部下と言えばと言えば親兄弟も同様じゃないですかと天満が口説くと、中村課長も恥をかくかと上着を取り舞台に出る。

権田係長の方は得意の浪曲を唸ろうとするので、浪曲と違う奴をと天満は要求する。

結果、天満は、着物を着て女装すると、針が飛んだりスピードが変わるレコードの音楽に合わせて踊ると言うおとぼけ芸を披露する。

神田は東京にやって来た天満を「志津子」と言うクラブに連れて行く。 ママの志津子(新珠三千代)は、神田の顔を見ると、いつもの水割り?あなたもこちらの坊やと同じ?と天満に聞く。

天満は名刺を差し出し、天満橋の天満ですと自己紹介すると、ママさん程の美人は大阪中探してもいませんわなどとお世辞を並べてみせ、大阪の仇は東京でだ!などと一人張り切り出したので、面白そうな話ねと志津子が乗って来ると、神田のラブストーリーですわと答えた天満は、いや〜、見れば見るほど良い女ですなとほれぼれしたように志津子の顔に見とれる。

そんな調子良い天満の態度を見ていた神田は不機嫌になり、ここは俺のおごりなんだから、エチケットとして少しは遠慮して欲しいなと天満に注意し、彼女は亭主持ちだよ、やれるものならやったんさい!と、志津子が席を離れた隙に教える。

すると天満は、大阪では色々点数稼いだようやけど、自分だけが男やと思うなよ!と天満はライバル心をむき出しにする。

面白くなくなった神田は、山ちゃん、お代わり!とバーテンに注文する。

翌日、天満は中村課長から、大丸酸素から集金してくれないかと命じるが、天満が元気に出て行くのを見て、あの馬は張り切っとるが穴馬かな?と期待する。

ところが大丸酸素では、散々待たされたあげく、経理部長が外出してまして…、日に10回くらいトイレに行く人なので探しても分からないなどとのらりくらり弁解されたので、憤慨して出直してきますわ!と天満は一旦会社を出る。

外に出た天満は、待てよ…、トイレか…、俺にも運回って来たぞ!と何かを思いつくと「志津子」に入りトイレを借りる。

トイレから出て来ると応対に出て来た志津子が、随分久しぶりね、あれ以来もう半月になるわよとすねて来たので、仕事にも慣れてきたし、これからは来ますよと答えた天満は、今、大丸酸素に集金に来ている途中なのだと明かす。

それを聞いた志津子は、あそこは儲けている割に払いは悪いと言われているわ、集金は無理じゃない?と言うので、じゃあ、無事集金できるかどうか1万賭けましょうか?と天満は笑う。

その後、再び大丸酸素を訪れると、又待たされたあげく、ようやくやって来た岡田経理部長(丘寵児)は、9日の手形を切らせるからと言って来る。

それを聞いた天満は現金にしていただきたいと申し出るが、うちとオタクとはこう云う形にしていると岡田は言うので、そんなやり方されたら、その利子だけでうちのマージンパーやないですか!部長はん、僕は社長の代理で来ているんです、つまり僕の言う事は社長の言う事なんです!と強気に出る。

こうして現金で集金に成功した天満だったが、中村課長は天満を呼びつけ、あの会社はうちの社長が出資していてね、特別な会社だと言っただろう!と叱って来る。

しかし、その理不尽さに堪え兼ねた天満は、お怒りになるなら社長に筋を通します!と反論する。

神田の方は、廊下で女子社員をからかっていた権田係長をからかっていた。

その日も志津子に会いに行った天満から亭主の事を聞かれた志津子は笑いながら、誰に聞いたか知らないけど、亭主なら1年前までいたけど今は1人身よと答えたので、いっぺんすす払いせなおかんな、ママ、僕やったらどうでしょう?と誘うが、後を引きそうだわと志津子が受け流すので、僕の経験なら後を引くのは女の方やろう。

浮気は一回こっきり、大人の浮気ちゅうのが僕の主義やななどと天満は自慢する。

すると志津子も、私もそう!と意気投合するが、そこにやって来たのが神田だった。

志津子は、ちょうど良いわ、良い人が来てるのよ!と神田を出迎えテーブルに案内するが、神田はそこにいたのが天満と知ると、お前か!と不機嫌になる。

天満の横に座った志津子は酔いに任せて頬にキスをし、気持良いわ!そんなに怒ったらみっともないわよ!と言いながら神田の頬を叩く。

挙げ句の果てに、これからアパートに来ない?と2人を誘い酒を取りに席を外すが、その間、天満は神田に、止めようやないか、会社に怒鳴り込まれたら品位を穢す。

今夜はこのまま帰った方が無難や、早行こ!と誘い、無理矢理神田を連れ出し表でタクシーを止める。

神田は、俺は近いから歩いて帰るよと言うが、どうせ俺の方が遠いんだから、途中まで乗せて行ってやるよと親切ごかしに天満は無理矢理神田と一緒にタクシーに乗ると走り出す。

酒瓶を持ってテーブルに戻って来た志津子は、神田と天満がいなくなった事に気付き驚く。

その後、神田を送り届けた天満はちゃっかりそのタクシーで「志津子」に戻って来ると、畜生!人の恋路を邪魔しやがって!とぼやく。 翌朝、自宅アパートで、ダーリン、ご機嫌いかが?と志津子が呼びかけたのはペットの犬だった。

その犬を抱え、まだベッドに寝ていた天満を起こしからかうと、もう8時半よと教える。

朝食のミルクをコップに注いでテーブルを離れた志津子は、それを犬が飲み始めた事に気付き、ペット用の皿に入れてオタミルクをコップに注ぎ足す。

朝食の席に付いた天満は何も知れず、その犬が飲みかけたミルクを飲みながら、ママ、今度いつ?と聞くが、約束よ!と答えた志津子は、夕べの事、誰にも話しちゃダメよと釘を刺す。

一回こっきりか…、東京の女は情が薄いわ…と嘆いた天満だったが、キッチンにいた志津子が、何か言った?と聞いて来たので、何でもない!ミミズの戯言!と天満はぼける。

その日、総務課で働いていた神田の元に「志津子」のホステスがやって来たので、君!こんな所来ちゃダメだよ!と廊下に押し返すが、ホステスはママから頼まれちゃったのと言って封筒を渡す。

その後、ホステスは天満にも同じような封筒をラブレターと言って渡すと、ママ、天満ちゃんの顔見ないと寂しいって…と伝言して帰る。

天満が鼻の下を延ばしているので、男って脳細胞が足りないのねと帰り際ホステスは呟く。

トイレで神田と会った天満は、ママが君に請求書届けてきよった、5千円ちょっとやと言いながら自分がホステスから受け取った請求を渡すと、僕とママはただの仲やないんや…、否、ただの仲なんや。

彼女のアパートへ引っ張って行かれて、朝食代もタクシー大もただ!などとペラペラと自慢し始めたので、神田は何かに気付き、自分がホステスから受け取った請求書を天満に突きつけ、ママ、請求書入れ間違えたんだな、ここに君の名前書いてあるだろう?と指摘する。

天満が受け取った請求書には確かに天満の名前が書かれており、明細には朝食代やタクシー代もちゃんと書いてあって、しめて2万5000円になっていた。

天満が愕然としていると、中村課長がトイレに入って来て、社長が呼んでるぞと2人に伝える。

社長室には権藤係長がおり、得意の浪花節を歌って社長から拍手をもらっていた。

住丸社長はやって来た神田の天満に、大丸酸素の事は聞いたよ、君はなかなかど根性があるなと天満を褒め、今度、名古屋コンビナートの発展から、中京に住丸の営業第三課を作る事にした。

そこでこの権藤君を課長とし、君たちを出向させる事にしたと告げる。

権藤新課長は、あっちに行ったらがっちり面倒見てやるから!と神田と天満を睨みつける。

こだま号の食堂車 同じテーブルに向かい合った天満と神田は、俺たちはよくよく因縁があるんだな…と話していた。 サッカーの頃も君子の戦いだったしな、これからは友情と愛情で行こうと天満が言い、神田も頷く。

そこへ、空いてます?と聞いて来たには及川ゆり子(司葉子)だった。

神田の隣に座ると、ミックスサンドとウエイトレスに注文するので、どちらまで?と天満が話しかけると、名古屋ですのよと言うので、僕たちもそうなんですよと天満は喜ぶと、住丸の営業部に勤めていますと自己紹介し名刺を渡すと、神田も負けじと名刺を出す。

するとゆり子も名乗り、父が名古屋で会社をやってますので…と天満が名古屋には何しに?などと聞いて来るのに答えていると、刑事みたいにあれこれ聞くなよ!失礼だろう!と神田は天満に注意し、何が友情と愛情だよ…と小声でぼやく。

名古屋支局で働き始めた天満と神田が、今日は三住化成に行ってきます、僕は全善石油へと営業先を伝えると、長い顔は記憶力が悪い!君はいつも一言多いんだよ!扶養家族扱いは出来んよなどと権藤新課長が2人に嫌みを言って来る。

権藤から離れた2人は、そんな権藤の横柄な態度にファイトを燃やす。

全善石油の仕事を終えた神田が、近く伸ばす停留所に並ぼうとしていると、神田さんじゃない!とやって来た車から声をかけて来たのはゆり子だった。

車に乗せてもらった神田は、覚えてて下さったんですか?と感激すると、神田さんにお琴とても印象に残ってるんですものなどとゆり子はお世辞を言い、名古屋観光はした?と聞くので、三課は新設なので休みないんですと神田が答えると、残念ですわ、この次の日曜、来るまでご案内しようと思ってたのに…とゆり子が悲しんだので都合付けますと神田はちゃっかり答える。

その後、天満も町を歩いていた時ゆり子と再会し、町には慣れましたか?と聞かれた天満は、名古屋は大学時代からちょいちょい来てるんでと答え、今度、どこぞでお食事でも?と誘うと、この次の日曜日の晩はどう?広小路に日曜6時にとゆり子はうれしそうに提案する。

寮に帰り風呂につかっていた神田は上機嫌だった。

そこに入って来た天満の方も浮き浮き状態だったが、何やうれしそうやな?と聞くと、我が生涯最良の日なんだよと言うので、俺もだよ、彼女やったら結婚に踏み切っても良いな…などと天満うっとりしながら答える。

俺もだよ、子供も当分作らない、人生意気に感ず…かと神田が言うと、日曜の夜か…と天満は呟き、幸せやな〜と湯船で2人共放心状態になる。

日曜日、神田はゆり子とドライブし、遊園地の回転遊具になると、神田さん、お嫁さん候補山のようにいるんでしょう?などとからかって来て、遊覧船乗ってみません?などと誘う。

その後、川下りを楽しむ2人だったが、住丸商事くらいになると色々扱っているんでしょうね?神田さん、今何をやってらっしゃるの?とゆり子が聞いて来たので、ドラム缶ですよと神田が教えると、父も商事会社やっていて塗料を扱っているんですとゆり子は言い出す。

父の知り合いで第三塗料って言う会社があるの。父はコンビナートの中の大会社に売り込もうと思っているらしいんですけど…と言うので、そんな話なら僕に任せて下さい、天下の住丸俺で持つなどとあっさり請け負う。

その日の夕方、今度は料亭で天満に会ったゆり子は、今日は色々質問させてもらいまっせ、年はいくつですか?と天満から聞かれたので、三人姉妹の長女ですとだけ答えはぐらかす。

父がやっているのは及川産業と言って、ペイント関係の主に平和ペイントと言う会社と取引があるんですけど、そこは品質の割に品質が良いの。

天満さん、ペイントルート作ってくれないかしら?とゆり子が頼むので、僕はコンビナートの中の会社なら全部に顔ですから!と自慢し、今日は良い子と聞かせてもらいましたと礼を言う。

翌日、全善石油に出向いた神田は、相手先の大原課長(由利徹)から、モンテカルロのルリちゃん、良かったね!と言いながら迎えられたので、ペイント関係お使いになりますか?第三塗料と言うメーカーがあるんですが…、今晩当たりじっくり…、この際、みんなまとめて面倒見させてもらいますんでと申し入れると、じゃあモンテカルロで8時!と大原は了解する。

その後、今度は天満が大原を訪ね、冷奴が課長のためならどんな苦労も厭やせぬと言ってましたよとおだて、例のボルトとナットはちょっと待って下さいと頼んだ後、ペイント関係は使いませんか?平和ペインとと言う会社があるんですが…と切り出す。

すると大原課長は、今しがた神田君から別のペイント会社を勧められたんだが、君たちは同じ会社だったら話を調整して持って来てもらわないと…と文句を言う。

あいつ…と悔しがりながら会社を出て、通りの向い側にある停留所で待っていた神田に追いついた天満は、お前にちょっと聞きたい事があると呼び寄せ、第三ペイントの話、どこから聞いた?と聞くと、及川章二からの紹介だ、ゆり子さんからデートした時に頼まれたんだと神田が言うので、彼女を呼び出して話聞く必要があるな…と天満は考え込み、どちらを愛しているかだ…と神田も賛成する。

料亭にゆり子を呼び出した神田と天満は、ゆり子さんの気持を聞かせて欲しいちゅう事や、2人別々にルート頼んだと言う事はどう言う事なのか…と迫ると、2社合併してコンビナートに会社を作りたいの。

住丸商事とコネ作りたかったの…とゆり子が言うので、私はあなたと結婚しても良い気持があったんですと神田は告白する。

天満も、僕も同じくらい好感持ってますと打ち明けるが、ゆり子は結婚なんて考えてもいなかったと言うので、ガチョ〜ンと神田はずっこけながらも、江戸っ子はあきらめが早いと気持を切り替えるが、大阪は粘ると天満は言う。

後日、神田と天満がそれぞれ権藤課長に提出したプランは、第三ペイントと平和ペイントを合併させると言う同じ内容だったので、この用紙だって50円もするんだよ、無駄な事するなよ!と権藤が怒るので、これでも会社のために一生懸命知恵を出してるんですと2人は粘るが、権藤は2人の企画案をゴミ箱に捨ててしまう。

がっかりして2人が立ち去った後、権藤は捨てた企画案を拾い上げ、それをもう一度熟読し始める。

その後、バスに乗っていた神田と天満は、他の客(堤康久)が読んでいた新聞の一面に、「合併本決まり!コンビナートに参加」と言う見出しが大きく出ているのに気付き、仰天する。

課長が臭いぞ…と2人とも気付き、会社に行くと、権藤課長に、あの建設案が実現したと言う事は俺たちの案を横取りしたな!と詰め寄る。

課長は狼狽し知らんと突っぱねるが、証拠はその慌てた顔だ!と神田は指摘し、あれがお前のどんけつにボイ〜ンしたるわ!と言うと、権藤の尻を蹴飛ばす。

神田も権藤の顔を殴りつけ、やると思えば、どこまでやるさ〜♩と天満と肩を組んで歌いながら営業部の部屋を出て行く。

その後、特急「富士」に乗り込み東京へ向かった2人は、もし社長が東京におったら辞表を出すぞ!と意気投合する。

東京支社の社長室に入ると、秘書の宮内桃子(園まり)が靴下を直していた所だったので、慌てて一旦廊下に出た2人は、改めて部屋に入ると、重役秘書の宮内桃子ですと自己紹介して来る。

そして、神田さん、天満さんお見えになりましたと桃子は住丸社長に伝える。

入って来た2人に会った住丸社長は、課長に暴力を振るったそうじゃないか!と睨みつけて来たので、責任取るつもりですと2人が辞表を取り出すと、こんな紙切れ一枚で名誉が挽回できるか!と叱った住丸社長は、一生働いて返すんだ!と言い出す。

新工場が参加するに事に関し、及川社長から君らの尽力があったことを聞いた。

神田敬次郎!営業部第三課係長心得に抜擢!

天満誠!営業第二課係長心得に抜擢!

社長は自ら努力する社員を助けると知れ!と五ヶ条の一節を言って住丸社長は愉快そうに笑い出す。

晴れ晴れとした顔で会社の外に出て来た2人は、先を歩いていた宮内桃子に互いに自己紹介し、どっかでお茶でも?と誘うのだった。

タイトル


 


 

 

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