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俺にさわると危ないぜ

アメリカかぶれと日本かぶれの2組の夫婦を描いたラブコメ

アメリカかぶれでじゃじゃ馬な妻をもらった養子の哀れさが描かれているが、アメリカかぶれの妻が米を一切食べさせないので夫がノイローゼ状態になるシチュエーションは「へそくり社長」(1956)でも描かれており、この当時にそう云うブームがあったのか、それとも単なるアイデアの頂きかもしれない。

「戦後強くなったものは、女と靴下(ストッキング)である」と言う言葉のように、弱気な男を対照的に登場させ、やや女性をからかうような雰囲気が感じられなくもないが、普通こう云うパターンのラストは、それまで強気だった女性が最後に夫を見直し、反省してしとやかな妻に戻って円満夫婦になるのではないかと思うが、本作では、強気の女性がそのまま最後まで突っ走る展開が意外と言えば意外である。

どう見ても嫌な女なのだが、それを最後まで徹底する事で、逆に個性的と言うか魅力的に見えて来るから不思議。

主役の高島忠夫さんの事を妻役が、可愛い、可愛い、赤ちゃん、ベビーちゃんなどと呼んでいるのも奇妙に感じる。

高島さんはおっとりした坊ちゃん風の風貌ではあるが、今の感覚で言う「可愛いタイプ」とは思えないからだが、当時はそう言う受け止められ方だったのかもしれない。

この当時は白黒作品と言う事もあってか、主役の男優は目張りのようなメイクをしているのも奇妙な感じがする。

外国人役で登場するヘレン・ヒギンスさんとジョージ・キューカーさんは共に日本語が達者なのだが、特にヘレンさんの方は日本人の発音そのままとしか聞こえず、ロイ・ジェームズさんのように日本生まれの方なのかもしれない。

この映画の一番の見所は大宮デン助さんが出ている所で、テレビで「デン助劇場」などと言う冠番組まで持っており、デン助人形等まであった人気者だったが、映画出演はそう多くないような気がする。

新東宝映画に数本出た後、大宮敏充名義で「ダメおやじ」(1973)に出ていたのを見たくらいしか記憶がない。

バタ臭い風貌の江川宇禮雄さんがほとんど日本語をしゃべらないアメリカ人を演じているのも珍しいし、千葉信男さんのデブコントも楽しい。

劇中で、飛行機に乗ると言ったら、泣いて汽車にしてくれと言われたと三四郎役の御木本伸介さんがのろけているのは、1952年に起きた「木星号墜落事故」を念頭に置いたセリフか?

いかにも添え物と言った感じだが、そこそこ楽しいB級映画と言った所だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1957年、新東宝、湯浅金吾原案、岡田豊脚本、曲谷守平監督作品。

高島易断の本をめくる。

昭和32年4月3日大安吉日

「蓬莱園」と言う結婚式場は何十組ものカップルが入り乱れての混雑振りで、花嫁と花嫁がいつの間にか取り違えられたりしていた。

手をつないでいた花嫁が別人だと、本当の花婿から指摘された新婦は、愛ちゃん!と自分の相手を呼びかけ、人ごみの中のとんでもないと奥に、太郎ちゃん!と自分を呼ぶ新婦が離れている事に気付く。

控え室には何人もの神主や牧師が待ち構えており、慌てて食事をしていた神主の隣に座っていた牧師が、時間ですと係員に呼ばれて出て行く。

鶴の間で神主を前に日本式の結婚式をあげていたのは、ジェームス・ホワイト・ベア(ジョージ・ルイカー)、リリー・パッカード(ヘレン・ヒギンス)の外国人カップルだった。

一方、松川大吉(高島忠夫)と沖山真理子(日比野恵子)の結婚式も教会風の部屋で牧師を前に行われていた。

客代表の夫人(宮田文子)が、延々と花嫁の真理子の家柄を誉め称え、続いて立った絲山社長(坊屋三郎)も東西貿易のご息女真理子と結婚できる大吉をうらやましいと連呼するので、隣に座っていた奥方が時々呆れていた。

大吉は養子だったのだ。

最後に立ち上がったひげ面の机三四郎(御木本伸介)は、先ほどから新婦の事ばかり話しているが、わしはこの結婚に反対しちょる!養子と言うて人はばかるものじゃなか!大吉君の後ろには、城南大学柔道部が付いとる!と薩摩弁で新郎の大吉を庇う発言をする。

HAWAII

新婚旅行でやって来たホテルの窓辺で、大吉がロマンチックな歌を歌っていたが、同室の真理子の方は翻訳の仕事でタイプを打っていた。

真理子さん、海がきれいですよと大吉が声をかけても、そう…と真理子は生返事を返すだけ。

新婚初夜くらい楽しく凄そうじゃないですかと大吉は勧めるが、この翻訳は、あなたの給料の20倍稼げるのなどと真理子が言うので、ラビアンローズか…と大吉が嘆くと、ベビーちゃん、可愛い事言うのねと真理子が言うので、その呼び方は止めてくれませんか?と大吉は頼むが、会社でもそのあだ名で通っているんでしょう?と真理子は平然と答える。

その時、チャタレー氏(J・アルテンバイ)が奥さんと一緒に部屋にやって来て、ボーイから真理子さんがここにいる事を聞いて来たと言うので、真理子は歓迎し、ソファに座っていた大吉を退かせ、そこにチャタレー夫妻を座らせる。

チャタレー氏は巧みな日本語で、真理子さん?何故日本人なんかと結婚した?女優の岸田恵子も山地景子もみんな外国人と結婚しています。

今からでも遅くありません、離婚すべきです。

日本人は横暴でけちん坊!などと言いたい放題なので、窓辺に立って聞いていた大吉は苛つく。

その時、ようやく大吉に気付いたチャタレー氏は、あの男誰?真理子さん紹介しないから、ボーイと思ったとバカにし、ビジネスの話しましょうと真理子を誘い、部屋を出て行く。

1人部屋に残された大吉は、早く日本に帰りたいな…とぼやくと、花婿と花嫁衣装の指人形を取り出し、バイヤーとの取引と夫のどっちを取るんです!取引です!何だと!決して養子とバカにしませんなどと自分たち夫婦を模した1人芝居を始め、人形同士をキスさせるが、あほらしゅうなって来たと大吉は正気付く。

日本に帰って来て「沖山大吉」「真理子」の表札がかかった新居で生活するようになった大吉だったが、電気掃除機を恐る恐る使っていた女中お春(田原知佐子)は、急に掃除機を放すと、来たんですよ、びりっと!と漏電している事を明かす。

しかし、大げさね!とバカにして電気掃除機を拾い上げた真理子も感電したので、相当来てるわね、後で電気屋に見てもらいなさいと命じる。

へえ…とお春が返事すると、なんですか、へえなんて!だから田舎者は困るんです!うちは何でもアメリカ式なんだから、言葉遣いも気を付けて!と叱りつける。

朝食を食べていた大吉の所へ来た真理子は、山本屋ってこんな日本製品を持って来たのよ、味が全然違うのよ、私は向こうのものしか食べないの!とミルクやチーズやパンと言った食材のことで文句を言うが、大吉は、洋服のポケットから紙に包んだたくあんをこっそり取り出し、それを食べていたので、それに気付いた真理子はバカにしたように取り上げる。

真理子がラジオのスイッチを入れると、お茶漬けの味!などと声が聞こえ、新東食品の沢庵の宣伝だったので、大吉は恨めしそうに真理子を見る。

東西貿易に出社した大吉は、お昼時、千松、唐様!などと手作り指人形を使い一人芝居をして暇つぶしをしていたが、腹が減っては戦が出来ずと言いながら、家から持たされたバスケットを開けると、中にはパンやチーズしか入ってなかったのでうんざりし、給仕(高島稔)が食べていたメザシと沢庵の弁当と交換してくれと申し出る。

給仕は課長さんの方が損をしますよと言い、バスケットの中味を見て大喜びして交換してくれたので、メザシを食べていると、女性社員が社長のお呼びですと大吉に知らせに来る。

真理子の父親で社長の沖山雄造(大宮デン助)に会いに行くと、かけたまえと椅子を勧められたので腰掛けようとすると、秋山がロープを引っ張って椅子が倒れたので、大吉も床に尻餅をついてしまう。 沖山のいたずらだった。

大人げない行為に呆れる大吉だったが、当の沖山は愉快!と喜び、君は相変わらず人が良いね〜などとからかい、新婚家庭の方はどうかね?真理子はじゃじゃ馬だけど血統は良い。君のぼーっとした所を見込んで真理子の相手に見初めたんだ。

仕事に疲れた時、君の顔を見るだけで心が休まるよなどとバカにする。

そこに小使(築地博)が自分の弁当を持ってやって来ると、中のメザシを食べ、実はわしは洋食が嫌いなので、毎日、小使と弁当を交換しとるんだ。

君はどうかね?その内分かるさなどと言うので、大吉は、私もメザシが大好きなんですと持っていたメザシを出して打ち明ける。 するとそこに、いきなり真理子がやって来たので、沖山と大吉は慌ててメザシを隠す。

今、お前の事を褒めとったんだなどと沖山が言うと、嘘おっしゃい!たまに芸者でも呼んで息抜きしようと思ってたんでしょうなどと真理子はからかうと、出かけましょうと大吉を誘い、仕事中だよ沖山が言うと、どうせこの人、昼行灯みたいな物だから良いでしょうと真理子は甘え、そのままショッピングに向かう。

洋品店に連れて行かれた大吉は、店員が、アメリカではジェームズ・ディーン好みで人気がありますと言う服を着せられるが、真理子が払った値段は68000円もするのに、どうみてもカウボーイの格好のチンドン屋にしか見えず、外を通りかかった同じような格好のチンドン屋が、仲間と思ったのか投げキッスをして来たので唖然とする。

家では、大吉は趣味の人形作りをしていたが、そこにお春が、自分で作った蒸しパンとたくあんを差し入れに来る。

こんな人形を作っているんですね?とお春が聞くと、子供たちに頼まれて、魔法使いとお姫様と言う劇のための人形を作ってるんだと大吉は教える。

そこに真理子がやって来て、又変な物作ってる!と睨むと、お隣にアメリカ人が引っ越して来るらしいわ。

ジェームスさんと言うらしいんだけど、ジェームス・ディーンに似ているかも!これからはアメリカの事何でも分かるわとうれしそうに報告する。

しかし、引っ越して来たジェームスの妻リリーは徹底した日本趣味で、夫のジェームスに引っ越し蕎麦を用意させる。

キッチンでサンドイッチを作っていた真理子に、あれがジェームス・ディーンかい?ゆでだこみたいな顔してるじゃないかと大吉は悪口を言う。

そこにお春が、ゆでだこが来ましたと言うので玄関に出て見ると、そこには「白熊」と書かれた半纏を来たジェームスと着物姿のリリーがおり、仁義切りに来ましたとリリーが言うと、夫は「ホワイトベア」と言う雑誌の記者だと紹介し、表に待たしていた蕎麦屋に引っ越し蕎麦を渡させると、わさびついてないわよ、サービスしなさい!と蕎麦屋を叱りつける。

そして、アメリカ文明は人間を不幸にします。 機械の方が人間より偉くなってます。

その点、日本の心は大変良いですと褒めるリリーは、日本に来て1年になると言う。

ある日、大吉は、机三四郎を訪ね悩みを打ち明ける。

細君とは性が合わんけん?夫婦関係も柔道も攻撃あるのみ!一発ボカンとやれ!と弱気な大吉に活を入れる。

ある日、真理子は自宅で、お春を相手にロックンロールに合わせ美容体操をしていた。

お春はへとへとになっていたが、真理子は、ロックンロールはもっと野性的じゃないと!と容赦なくだめ押しをしてしごく。

お春は勘弁して下さいと頼むが、真理子はお春と組んで踊り出す。 お春は、もう助けて下さい!と悲鳴をあげる。

一方、隣のジェームス家では、リリーが生け花の先生を呼んで修行中だったが、それに付き合っていたジェームスは、真理子の家から聞こえて来るロックンロールに身体が反応していた。 それに気付いたお花の師匠(石川冷)は、心を統一するんです。

ここにあるのは花と自分です。

うるさい西洋音楽など少しも鳴ってません!と注意すると、次は、ご主人どうぞ!と勧めるので、正座していたジェームスは立ち上がろうとするが、足がしびれて、アイヤヤッ!とうめき声を上げる。

帰宅した大吉がただいま!おい、誰かいないのか!と呼びかけても誰も返事もない。 お春が、旦那様のお帰りですよと教えても、ロックンロールに夢中の真理子は、そう…と言うだけ。

仕方ないので、お春が1人で玄関に迎えに出てお帰りなさいませと言うと、真理子はどうした?いるのならすぐお出迎えするように言いなさいと大吉が言うので、お春がそれを真理子に伝えると、その内絶対上がって来るわよと答え、又、玄関から大吉の呼び声が聞こえても、うるさいわね、放っときなさい!と真理子は良い、動こうとしない。

戻って来たお春からそのことを聞いた大吉も腹を立て、何!良し!俺は絶対上がらんぞ!もう一回言って来い!とお春に命じるので、間に挟まれたお春は泣き出してしまう。

大吉は決意すると、おい!と上がり込んで真理子に怒鳴りつけるが、あら!と真理子はうれしそうに拍手する。 ご主人が帰って来たんだ!挨拶もせんとはどう言う事だ!と叱ると、ベビーちゃん、今日は男らしいわね真理子はバカにする。

頭に来た大吉が真理子を柔道の技で投げ飛ばすと、あなた踊り巧いわね!と喜ぶので、泣いて詫びるまで徹底的に投げてやるぞ!と大吉は柔道の技をかけまくるが、真理子にはそれがダンスの組わざとしか感じられないようで、ブラボー!と喜ぶだけだった。

女中のお春は隣の女中の純子(扇恵子)に今の生活の愚痴を言うと、純子の方も洋風の暮らしに憧れている事が分かったので、女中を交換する事になる。

ある日、沖山社長に呼ばれた大吉は、アメリカの貿易商マッキンレー氏が来日するので、取引できれば儲かる、面会小野話は付けといた、明日の10時、会いに行ってくれと指示する。

その日帰宅した大吉は、女友達を呼んで麻雀をしていた真理子は無視し、ただいまと呼びかけると、コーヒー淹れて来て、ついでにトーストも作って頂戴、チーズは箱のを開けてねと真理子は大吉に命じる。

隣のジェームスは、剣の先生九味甲介(菊地双三郎)相手に庭先で剣道の恵子をさせられていた。

そんなへっぴり腰じゃ斬れやせんと叱った九味は、思い切ってかかってきなさいと言い、危ないですと怖がるジェームスに、滅多な事では斬れやせんと豪快に笑う。

ジェームスは斬り掛かると見せて、自動車危ないよと九味の背後を指差すと、九味がつい振り返ったので、その隙を狙って竹刀で九味の頭を叩く。

沖山家では、デブのマッサージ牧 千葉信男)がお世辞を言いながら真理子の身体を揉んでいた。

そんな牧の顔を、側で人形を作っていた大吉は模していた。

そんな大吉に、ドクトルはアメリカで最高のマッサージを学んだ方なんですってねと聞いた真理子が、うちのも頼むわねと言い出したので、無理矢理大吉もマッサージを受けるはめになる。

牧の巨体が大吉を襲い、首や足をねじ曲げられるたびに大吉は顔を歪めるが、最後は伏せた大吉の背中に、牧が全体重を乗せて乗っかる。

そこにお春が、旦那様、お客様ですと告げに来て、やって来たのは日本酒を下げた机三四郎だった。

床に突っ伏していた大吉を見た三四郎は、何してるんだ?マッサージなんてインチキだ!といきなり言い出したので、牧は驚き、そんなこと言われたら私の立つ瀬がないじゃありませんか!と反論するが、本当の揉み方はこうするんじゃ!と言うと、三四郎は牧の両腕の方の関節を外してしまう。

両手が伸び切り動かなくなったので、これじゃあ商売できないじゃないですか!と牧が困惑すると、ただちに三四郎は両肩の関節を元に戻す。

今度は足をやってみるかね?と三四郎が脅すと、ごめん下さいと言い残し、牧は這々の体で帰ってしまう。

ある日、ジェームスが真理子がいた沖山家に遊びに来る。

真理子がコーヒーを出すと、うちじゃ日本茶ばかりなんですとジェームスが言うので、お気の毒と真理子は同情する。

洋風の真理子の部屋を見たジェームスは、まるで故郷のシカゴみたいと喜ぶので、アメリカに行ってみたいわ!と真理子も言うので、写真見せますと良い、ジェームスがアメリカの実家を見せると、素敵な家ね!と真理子は憧れる。

僕は早くアメリカに帰りたい!とジェームスは良い、日本だって進歩的な所は好きなんですけど、僕はリリーの考えが変わるのを待ってます、私たちは正確が合わないんですと言う。

その頃、大吉は、神社に集まった子供相手に、魔法使いとお姫様の人形劇を披露していた。

最後は素敵なお姫様になりました…と大吉が話を終えると、聞いていた子供たちは面白がり、お姫様ってとってもバカだねと正直な感想を言う。

その時、背後の神社で祈っている和服姿の女性がいたので近寄ってみると、隣のリリーだった。

何を祈っていたのですか?と聞くと、ジミーが日本趣味になりますように祈っていますと言うので、じゃあ僕も、真理子のわがままが治るように…と祈ろうとするが、その時、マッキンレーとの約束が合ったのを思い出す。

慌てて、「ホテル富士」にやって来るが、既にマッキンレーはいなかった。

それを知った沖山社長は、時間だけはくれぐれも守るように言ったじゃないか!と戻って来た大吉を叱りつける。

我が社にとっては興亡の一大事だ!取り返しがつかんじゃないか!と言うので、大吉はすみませんと頭を下げるしかなかった。

その夜、意気消沈した大吉を慰めるために、キャバレーに繰り出した同僚が、叱られたって娘婿に違いないんですからと慰めていた。

その時、ステージでは司会者が、飛び入り参加を募り出したので、たまたま同じ店に来ていたジェームスが手を挙げ、大吉さん!と近づいて来ると、シング・ア・ソング!歌い歌います!と自らに呼びかける。

最初は断っていた大吉だったが、やがてギターを抱え、監獄ロック風の歌を披露し始める。

ジェームスもノリノリになり、ビール瓶をギターに見立て踊り出す。

すっかり泥酔した大吉とジェームスは互いに肩を組んで帰宅するが、それぞれの家を間違え、リリーと真理子が互いの亭主を交換する。

翌日、大吉は、電気洗濯機が壊れたので庭先の盥で洗濯をさせられていた。

真理子はそのまま出かけてしまうが、そんな大吉を哀れに思い、一緒に洗濯してやると申し入れたのは隣で洗濯していたリリーだった。

旦那さんにこんな事をさせるなんて、奥さんはいけませんねとリリーは言うが、その時大吉が、何か良い匂いが…と言ったので、慌てて台所に入ったリリーは、鍋を沸騰させ過ぎていたのに気付きがっかりする。

みそ汁ですか?と大吉が聞くと、中味はソーセージで良いですか?とリリーが聞くので、ダイコン、豆腐…と中に入れる具材を教えていた大吉は、旦那さんは?と聞くと、映画に行きましたのとリリーは答える。

じゃあ僕が作ってあげましょうと言い出した大吉がみそ汁を作り、リリーと一緒にちゃぶ台を挟んで食事をすることになる。

リリーは、あなたのみそ汁の方が美味しいですと褒めるが、大吉の方も、お陰でやっと日本に帰って来た気分ですよ、生き返ったようですと日さびたに食べる事が出来た和食に感激する。

そこへお春が、旦那様、奥様がお帰りですと知らせに来たので、もう帰った!と驚き自宅へ戻ると、何です!お隣一人の所に上がり込んで!と睨んで来た真理子は、マッキンレーさんを今夜招待したのよ、今夜被いにサービスしなきゃ…、私これからごちそう作らなきゃ行けないからと張り切り、大吉に部屋の飾りを頼む。

世界各国の国旗を受け取った大吉が、真っ白な旗を見て、これはどこの国?と聞くと、バカね、ハンカチじゃないの!と真理子はバカにする。

その夜、真理子の両親の沖山社長とその妻貞子(羽恵美子)、マッキンレー氏(江川宇禮雄)、お隣のジェームス夫妻も招いてパーティが行われるが、沖山社長は真理子に、マッキンレー山はお前のホステスぶりを褒めておられると伝える。

調子に乗った真理子は、何度も乾杯とカクテルを飲むので、身体を案じた大吉が、真理子、これ飲んどいた方が…と胃薬を出すが、カクテルくらいじゃ酔わないわよ、うるさいわね!と真理子は邪険にする。

大丈夫かい?と大吉は心配するし、沖山社長は、あいつが笑い出したら危ないんだけどな…と娘の変化に怯える。

真理子は笑いながらその後も何度も乾杯を繰り返し、ベビーは黙ってらっしゃい!あんたは仕事壊さないようにおとなしくしてれば良いの!と命じるだけではなく、図々しくもマッキンレーの事も邪険に扱い出したので、マッケンレー氏は次第に怒り出す。

ジミーさんに乾杯!などとまだ真理子はカクテルを飲み続けるので、真理子は酒癖が悪いねとぼやくと、貞子はあなたに似たのよと睨みつける。

ジェームスがチャップリンの物まねを始め、真理子は大爆笑するが、ジェームスの足から靴が脱げ落ち、マッキンレー氏の頭に当たっても知らんぷり。

真理子はステレオで音楽をかけ、マンボ踊ろうよ!と浮かれ出したので、見かねたマッキンレー氏は、あなたはうちの女房と同じヒステリーです!と叫ぶと怒って帰ってしまう。

しかし真理子は気にせず、ジミー、カモン!と叫ぶとジェームスと踊り出したので、堪り兼ねた大吉はリリーを連れて部屋を出る。

リリーは、どうもああいう騒ぎは苦手です。

ミスター・マッキンレーとの契約お気の毒ですと同情する。 そして、ジミーはなかなか日本趣味に慣れません。

兄は牧師で日本に来たので私も付いて来ました。 その後、兄はインドに行ったのですが、私は残りました…と打ち明ける。

一方、女中のお春はジェームス家の女中純子(扇恵子)と一緒にキッチンでローストチキンを食べながら、うちの夫婦とあんたん所の夫婦は交換した方が良いのよ、昔から似た者夫婦って言うでしょう?と話していた。

結局、リリーが酔ったジェームスを連れて帰りパーティは終了する。 真理子は大吉の態度が気に入らなかったようで、嫌いなら出て行って頂戴!ここは私の家よ!私はあなたを夫として認めていた訳ではないの、ただ可愛いから決めただけなのよ等と言うので、愛玩用か…と大吉は傷つく。

会社も首よ!と真理子が高飛車に出るので、離縁状ならこっちからのし付けて出してやるよ!と大吉も興奮して怒鳴りつける。

一方、お隣のジェームスもリリーの日本趣味の押し付けに我慢ならなくなり、部屋に飾ってあった日本人形や掛け軸、生け花等を全部ひっくり返してしまう。

それを見たリリーは、私、あなたの顔を見るのも嫌です!家出ます!と言うと、唐草模様の風呂敷に自分の着物を詰め出す。

自宅にやって来た大吉から話を聞いた机三四郎は、お前とあの女は別れるようになっていたんだ、なあよし子!(藤川洋子)と、側で赤ん坊をあやしていた妻に同意を求める。

俺も子供が3人も出来たから仕方なく一緒になったんだが、この前も飛行機に乗ると言ったら、泣いて汽車にしてくれって言われたよなどと三四郎はのろけてみせるので、ごちそうさま!と大吉は苦笑する。

暁天の〜♩と三四郎が大声で歌い出すと、あなた、子供たちが起きるわ!とよし子が注意するが、父さん!僕たち起きてるから歌って良いよと、隣から2人の子供が顔を出したので、三四郎は上機嫌で歌い始める。

翌日、沖山社長に会いに来た真理子に、大吉君にも温泉を紹介して落ち着くように言っといたと言いながら、沖山が、大吉から預かった離縁状と退職届を出してみせると、負けん気の強い真理子は、私、あの人の所に行って私の離縁状を叩き付けてやるわ!あの人の方が先に離縁状出した事が悔しいのよ!と言う。

温泉ホテルの庭を散策していた大吉は、リリーがいるので、リリーさんじゃありませんか!と声をかける。

リリーも驚き、あなたこそどうして?と聞くと、気を鎮めろって社長から言われて…と大吉が言うので、ここは私の新婚旅行で来たホテルですとリリーも打ち明ける。

困った事になりましたね、あそこの見晴し台に行って腰掛けましょうと誘った大吉は、田舎って良い物ですね、山を見ていると故郷を思い出しますと感傷的になる。

真理子さん、どうしていますか?寂しがっているでしょう?それはいけない、仲直りしなさいとリリーは忠告する。

そんな2人の場所に近づいて来たのはジェームスで、私もこの人と日本趣味とアメリカ趣味が合いません!3年前にこの人と新婚旅行に来たんですが、離婚すべきだと思いましたと言い離縁状をリリーに差し出したので、薮から棒にそんな事!離婚なんて簡単にするもんじゃありませんと大吉は説得する。

しかしジェームスは、リリーと大吉が2人でいたのを勘ぐっているようだったので、変な誤解は止めて下さい!と大吉は弁解するが、この人は、大吉さんが決闘しないのはおかしいと言ってますとリリーが興奮したジェームスの英語を通訳すると、そんな腐った根性は叩き直してやる!と大吉も受けて立つ事にする。

見晴し台の上で大吉とジェームスの果し合いが始まるが、その頃、麓のホテルに車でやって来たのが沖山社長と真理子だった。

見晴し台で3人を発見した真理子は、ジェームスと大吉が喧嘩をしているのを見て、ジェームスさん、しっかり!と応援する。

一方、リリーは、大吉さん、しっかり!と応援しているのを見た沖山社長は、ははあ…と何かに気付いた様子。

その時、喧嘩を聞きつけホテルの番頭(信夫英一)が仲裁に昇って来るが、あえなく投げ飛ばされ、沖山社長の横に吹っ飛んで来る。

その後も、リリーと真理子の応援合戦は続き、喧嘩していた大吉とジェームスはふらふらになり共に倒れ込んでしまう。

そんな2人の前に出た沖山社長は、諸君は夫婦別れするとか何とか騒いどるが、相性の夫婦と言うのがある、依存なかったら、結婚式のやり直しだ!と言い渡す。

かくして、和装の大吉とリリー、洋装の真理子とジェームスの合同結婚式が行われ、両組揃っての記念撮影になる。

写真屋(小倉繁)は、両家の端に立っていた女中を入れ替えたりした後、ワン、ツー、スリーの合図とともにシャッターを押し、照明の煙が立ち上る。


 


 

 

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