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KUBO/クボ 二本の弦の秘密

基本はストップモーションの人形アニメだが、他のテクニックも合成しており、人形アニメ特有のぎこちなさがほとんどない比類のないレベルの映像になっている映画。

超絶的なテクニックで全編フルCGI映画と言われても信じてしまうような仕上がり。

話は日本古来の昔話に侍の話、「ゲゲゲの鬼太郎」などがミックスされたような展開で、神社の中に墓があったりと、若干奇妙な部分がないではないが、全体を通して日本人が見てもさほど違和感はない。

シンプルな展開ながら情感に溢れ、大人から子供まで楽しめる内容ではないかと思う。

クボの母親は故岸田今日子さん、敵役の月の帝は、何やら「スター・ウォーズ」にでてくるピーター・カッシングを連想させるのも興味深い。 
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2017年、アメリカ映画、マーク・ハイムズ+クリス・バトラー脚本、トラヴィス・ナイト監督作品。

紙が集まって「RAICA」ロゴに

瞬きすらしてはならぬ! 見るもの、聞くもの全てに気をつけろ

例えどんなに奇妙でも

荒れ狂う海を進む小舟に乗った女が三味線をかき鳴らすと、海は二つに割れる。

用心せよ!その事にきを取られれば我らが英雄は滅びるだろう…

女はいつしか波打ち際に流されていた。

その側には着物の包まれた小さなものが泣き叫んでいた。

女は気がついてその泣き声の方へ手を差し伸べる。

それはあるものを祖父に奪われたものだった。

それはまだ始まってすらいなかった。

タイトル

紙が宙から落ちて来る。

床に散らばった紙を拾い集めた少年クボ(声-矢島晶子)は、壁代わりの壁の割れ目の中にしまい込む。

焚き火には鍋が煮えていた。 海の側の岩の洞窟内がクボの住まいで、側には母親が寝ていた。

母親を起こしたクボだったが、母親は全く生気を失っており、言葉も発しなかった。

洞窟の中には、いくつものクボが作った折り紙の動物や武者人形が置いてあった。

やがて外から聞こえてきた鐘の音に気付いたクボは、母親ゆずりの三味線と木彫りの猿の人形、そして自分で作った紙人形を懐に入れると母親を残し1人出かけて行く。

クボがやって来たのは近くの村の四つ辻で、そこでは大きな龍の人形を使った見世物を披露する大道芸人や見物する子供や大人たちで賑わっていた。

クボの姿に気付いたお顔なじみのおばあさんが自分の横に手招きすると、火を吐くニワトリの話をすると良いよと勧め、今日こそはお話をお終いまでやってくれるんだろうね?と目を輝かせるので、またニワトリの話かい?とクボは苦笑しながらも、四つ辻の真ん中に立って三味線を弾き始める。

瞬きすらしてはならぬ!例えそれがどんなに奇妙なものであっても…とクボは話し始めると、空中に紙人形が出現し、話の展開をビジュアル化して行く。 この言葉を忘れ気を取られていると、我らの英雄は滅びるだろう。

英雄の名は半蔵!紙人形の武者が動き出す。 月の帝に奪われたまじないのかかった武具を探している…とクボが言うと、毎日聞き慣れている見物客が先に答えを言う。

折れずの刀!負けずの鎧!割れずの兜! 3つの武具を手にした半蔵は、空中に出現した巨大鮫を切断し、火を噴く巨大ニワトリと戦う。

破れる半蔵 半蔵をなくした家族は悲しみに打ち拉がれた… 月の帝との決戦はまた明日するから…とクボは又しても話を途中でやめたので、聞いていたおばあさんたちはがっかりする。

岬の洞窟に帰ってきたクボは、クボ!と呼びかけてきた母親に、ここにいるよ、母上、おなかは?と聞くが反応はない。

嵐の中、吹雪は止み、半蔵は戻ってきた、最果ての城に…、半蔵が城に着いた?と母親はいつものようにクボに語り聞かせていたが、途中で、ダメだわ、思い出せない…とうろたえ、他の話なら思い出せるかも…と言い繕うので、父上はどんな人だったの?本当はどうだったの?戦ってない時…、僕らといた時…とクボは尋ねる。

母親は今のあなたと同じ、賢く愉快で、良い男だった…、忘れないで、どんなにあなたを愛していた事かを…と母は答え、月の帝…、あなたの片目を奪ったのはおじいさんなのよと教える。

さらに、暗くなって外に出ないで!元気出してクボ…と母親が念を押すので、母上の言いつけを守って、猿のおじさんの人形を持ってるのよとクボは答える。

父の家紋が入った着物を来ている事、暗くなったら外へ出ない事、分かった?と母親はさらに念を押す。

はい、猿おじさん!とクボが答えると、寝ないと…と言い母親を寝かしつけ、灯火を消す。

夜中、岩の割れ目に入れておいた紙が空中に飛び出す。 寝床の母親が苦しみ出したので、それは夢だよとクボは教える。

目覚めた母親は、クボ、あなたなの?と聞くので、ここにいるよと答えると、その目はどうしたの!と母親は驚く。

クボの左目は赤ん坊の時からなかった事を忘れているようだった。 ある日、いつものように村へ出向いたクボは、にぎやかなお祭りが行われている事に気付く。

おばあさんは、今日はたっぷり聞かせておくれ、祭りは良いね~…、夜は舞いやごちそうが出るよと話しかけて来ると、あそこに灯籠があるだろう?あれを使って死んだ人と話が出来るし、話すと死んだ人は極楽浄土へ行けるんだと教える。

話す相手はいるかい?と言うおばあさんに、灯籠ないよ…とクボが言うと、折り紙の力で作れば良い、日が暮れるまでまだある…、行くと良い…とおばあさんは教える。

村人たちは森の奥の神社の中の墓の所に来ると、いつもクボの話を聞いている父と娘がおり、墓に行灯を備え、父が娘に灯籠を拝んでごらんと教えている。

幼い娘は灯籠に、婆様、こっちに来て下さいと大声で叫んだので、静かにな…と父親が言い聞かせる。

クボは岩の上に紙で作った灯籠を置き、お元気ですか父上…、安らかなら良いなって…、これ父上の着物…、父上は偉大で誇りを守って死んだのでしょう?母は日に日に心が弱っていくんだ…、父上の事話してくれるけど、本当の事は忘れているみたい…、教えて、本当の事…と自己流で話しかけていた。

近くの墓の前では、婆様来たよ!と幼女が言っていたが、父親が、戻る手伝いをしようと言い聞かす。

クボも、父上いる?待ってるからと灯籠に話しかけるが、何の答えもない。

幼女と父親は、灯籠を側の川に流しに行く。

夕暮れになった事に気付いたクボは父親が来ない事に腹を立て、もう良い!父上なんか知らない!と言いながら、折り紙で作った灯籠を握りつぶしその場に捨てる。

クボ!と呼びかける母親の姿を思い浮かべたクボは、思わずごめんなさい!と詫びるが、その時風が吹いてきて、川に浮かんでいた村人たちが浮かべた灯籠の明かりが一斉に消える。

ねえ坊や…、その目はどうしたの?あなたの親戚なの、あなたの叔母よ…と声をかけてきたのは、空中に浮かんだ笠をかぶった2人の女だった。

長い事探していたの…、こうやってうれしいわ…、あなたの目を奪うの、あなたのおじいさんの為に…と言いながら、町の方へ逃げるクボを追って来る。

町外れまで来たクボに、あなたを迎えにきたのよ…と2人の叔母が煙となって接近して来るが、そこに待っていたのは三味線を持った母親だった。

母親が右手を上げると掌が光り、その手で三味線を弾くと、強烈な光が発生しクボを追って来た黒い煙が消え失せる。

クボ!母上!と2人は抱き合うが、母親は微笑み、3つの武具を見つけに行きなさい、他に生きる道はないわと言うと、クボの背中に光の翼のようなものが出現し空中に浮かび上がって行く。

次の瞬間、地上の母親に2人の妹たちがぶつかって来る。

私の声が聞こえるか?と呼びかけで気がついたクボが見たのは見知らぬ白い猿だった。

母親は死んだよ…、村も崩れ果てた…とその白猿が言う。 ここは最果ての地だよ、隠れる場所を見つけないと…、グズグスしていられない、ホラ、立ちなさい!と白猿は倒れていたクボを急かす。

クボは白猿の背中に乗って吹雪のの中をひた走る。

やがて、鯨の屍骸が見つかったので、あの中に入るが臭いと言わないだろうね?私の鼻はあんたの10倍利くんだよと言い聞かす。

鯨の屍骸の体内に入った白猿は、その中に火をおこし、鍋で鯨の臓物のスープを作る。

質問なら答えるよ、ただし3つだけ…と白猿が言うので、戸惑いながら、何が起きたの?君は誰?とクボが聞くと、見覚えない?と白猿は言う。

いつも持ち歩いていたでしょう?あんたの母は最後の力で私に命を吹き込んだのよ…、ほらお飲み!臭い?と言いながら白猿は鯨の臓物スーツを差し出す。

白猿はいつも持っていた木彫りの猿の人形の化身らしいと気付いたクボだったが、猿おじさんといつも呼んでいたので、まさかメスだったとは思わなかった。

無理矢理臭いスープを押し付けられたクボは、君って意地悪な猿なんだねと嫌みを言うと、私はあなたを守る!食べないと動けなくなる!と白猿は言うので、仕方なく匂いを我慢してスープを飲もうとしたクボだったが熱くて飲めない。

すると白猿はスープを吹いて冷ましてくれたので、何とか啜る事が出来る。

そんなクボに、真剣に考えな、あんたの叔母たちは腹がすかない。あんたは奪われた武具を見つけるんだ、他に生きる道はないと白猿が言い聞かすので、じゃあこれ、本当に本当なんだ…と、ようやく今の状況を信じるようになったクボは、僕、母上の髪を抜いてしまった…とその遺髪を見せる。

急にまじないを吹き込み私を蘇らせたので…と言いながら、その遺髪を編んでミサンガを作った白猿はそれをクボの左手に付けてやり、お守りにしなと言う。 武具の在処知ってる?とクボが聞くと、白猿は、いいや知らないと答え、もう寝なと命じる。

お休み、猿…と言って横になったクボだったが、翌朝目覚めると、クボ、あんた寝言を言ってたよ、そしたら紙が飛んで折り紙細工になって仁王立ちしてるんだと教える。

ハサミを使ったんじゃないのかい?と白猿は武者人形を見て驚くが、母もやっていた…、朝になると元の紙に戻っていたけど…とクボは言い外に出てみると、半蔵の鎧人形が雪の中の一方向を刀で指していた。

人形に近づいたクボが、その人形の位置を直そうとしても羅針盤の針のように同じ方向を指すので、父上が教えてくれているとクボは言うので、こんな紙人形に委ねるのかい?と一瞬躊躇した白猿だったが、他に手だてはなさそうだ…と気づき、半蔵人形の指す方向へ進む事にする。

巨大な仏像の頭が雪の中に埋もれている所を通りかかったクボは目についた鳥をヒントに、三味線を弾いて折り紙の鳥を何羽も作り、鳥たちが集まって巨大な翼のようになるとクボの身体を浮かしたりする。

そんなクボを見ていた白猿は、あんたは強くなっているけど満足しちゃいけないと言うので、猿、どうして厳しい事しか言わないの?とクボが尋ねると、あんたが生き抜くためさと答えた白猿は、手につばをつけて、クボの髪を撫で付けてやる。

うれしくなったクボは、前を進み出した白猿の尻を紙の鳥で突っつくいたずらを仕掛け、蚊がいるよととぼける。

そして、鳥の紙人形を蚊に変身させると、僕じゃないと嘘を言う。

白猿はそんなクボを睨むと、制御する事を覚えな、後、私にちょっかいすんな!と厳しく叱る。

しかしクボは、子供っぽいいたずら心で、巨大な仏像の目の縁を歩いたりするが、白猿が振り向いた時には姿が消えていた。

仏像の内の空洞に落ちたと知った白猿は慌てて後を追うが、クボが怪しいクワガタの怪物のようなものから襲われているような影が見えたので飛びかかろうとすると、彼は悪くないよ、欲しかったのは半蔵さと教える。

それでも白猿は、やっぱりぐさっと行っとこうか?などと物騒な事を言うので、何で悪いことしか言わないの?とクボも呆れる。

鎧を着たクワガタ(声-ピエール瀧)はこれは主人の家紋だ、拙者たちは家紋に集うのだと言い、クワガタの紋が入った旗を見せてきたので、クボも自分の着物の背中の部分に染め抜かれたクワガタの家紋を見せると驚く。

大体あんたは何者だい?と利かれたクワガタは、呪いをかけられさまよっている。

己の名前も覚えておらぬ、前は人間で侍だったはずだ、しかしさまよっているうちに見つけるものも忘れた…と言う。

かつて大義に仕えていた…とクワガタが言うので、白猿は止めようとするが、クボは、僕は半蔵の息子だと名乗る。

それを聞いたクワガタは、主君の子と出会えるとは!と感激し、拙者もお供します!命を捧げますと誓う。

クボは白猿に、ねえこの度は厳しいって行ってたよね、役に立つかも…と相談すると、どうやって?と白猿はクワガタを疑っていたが、クワガタはその場で矢を放ってみせ、その刺さった矢を次の矢で正確に砕いてみせる。

白猿は感心しながらも、とにかく紙人形の半蔵に付いて行こうと言う。

そなた猿の玩具だったのか?と付いて来ながらクワガタが白猿に聞くので、僕猿おじさんって呼んでたとクボは教える。

その後、クボの肩の上に乗っていた半蔵の紙人形が岩の狭い隙間の中に入り込んだんで、クワガタが岩を崩し中に入る。

そこにはしゃれこうべの形をした岩があったので、白猿は何を触れるな!と忠告するが、クワガタが前歯の一本を触っていると撮れてしまう。

カブトムシはクボがやったなどとごまかそうとするが、突如、振動が始まり、3人が立っていた地面が陥没し、全員穴の中に転がり落ちる。 気付くと、クワガタは仰向けに倒れており、亀のように自力では起き上がれない事に気付く。

クボが手助けして起こすと、クボ、ごらん!と白猿が奥を見る。 そこには巨大な手の骨があり、その掌の部分に折れずの刀が刺さっているのが見えた。 白猿は罠かも…と案ずるが、クワガタは拙者の又の名は忍び!などと言い、掌に近づくと、上に乗り刀を抜く。

あまりにあっさり抜けたので、クワガタは刀を差し上げ威張るが、そその時巨大な手の骨全体が浮き上がって行き、上部の暗い空間に消えて行く。

床に散らばっていた骨も浮き上がり、やがて目が光る巨大ながしゃどくろが姿を現す。

白猿は、クワガタが抜いた刀を取り上げがしゃどくろの足に斬り掛かるがあっさり折れてしまったので、これは偽物だ!とがっかりする。

白猿が逃げて来るのを捕まえようとどくろが屈んだ時、クボの肩に乗っていた半蔵ががしゃどくろの頭を指すので見上げると、どくろの頭頂部に何本も刀が刺さっている事気付く。

クワガタが矢を射かけるがどくろの顔に当たるだけで効果はなく、次の瞬間、白猿がどくろに捕まってしまう。

クワガタは矢を何本をいるが、白猿はもっと上!と指示する。

その時、どくろが白猿を掴んだ右手を頭に近づけたので、頭頂部に刺さっていた刀を何本か引き抜いて、斬りつけてみた白猿だったが、どれも簡単に折れる偽物だった。

どころは、クボとクワガタを踏みつぶそうとしたので、転んだクボの着物から紙がこぼれ出る。

起き上がったクボは三味線で紙の鳥をたくさん出しどくろの頭に纏い付かさせる。

どくろは怒ってクボを踏みつけようとするので、逃げようとしたクボは転んでしまう。

そこに駆けつけたクワガタがクボを庇おうとした所を踏みつぶされそうになる。

次の瞬間、クボは、背中の羽で空中に浮かんだクワガタに抱かれている事に気付く。

飛べるの!とクボは驚く。

しかしクワガタは飛ぶのに慣れていないらしく、ふらつきながらどくろの頭の上にたどり着くと頭に刺さった剣にしがみつく。

頭頂部に降りたクボもクワガタと一緒に本物の折れずの剣を探すがなかなか見当たらない。

その内クワガタもどくろの左手に捕まってしまう。

そしてクボも頭から振り飛ばされたので、クワガタが矢でクボの着物を岩に釘付けにする。

しかし着物は裂け始め、クボが落下しかけたので、満身の力で右手を押し広げ脱出した白猿がクボに飛びつこうとするが、又すぐにどくろに捕まってしまう。

クボはどくろの頭の上に落下、白猿とクワガタがどくろの口に食われそうになったそのとき、やっと折れずの剣を見つけ出す。

クボがその剣を抜いた瞬間、がしゃどくろは崩壊してしまう。

落下する白猿とクボを両脇に抱え、クワガタはどくろ型の岩から湖の湖畔に着地する。

やったね、クワガタ!と喜び、折れずの刀を振り回しているので、クボ、危ないから止めな!と白猿は、クワガタの羽の内側に薬を塗ってやりながら注意する。

そして、クボに当たらないでくれと言うクワガタに、何があの子のためになるか分かる…と答える。

クワガタが湖を泳いで渡ろうと提案すると、本当にあんたは馬鹿だよ、泳いで渡るなんて…と呆れる。

2人が口喧嘩をしている中、湖畔で三味線を弾き始めたクボの方へ森から枯れ葉が飛んで行く。

白猿とクワガタが気付くと、いつの間にか湖には巨大な枯れ葉で出来た船が浮かんでいたので、まだ学ぶ事があったねと白猿は呟くが、やるではないか、大したもんだとクワガタは感心する。

それでも白猿は、目立ちたがりめ…とクボを睨みつける。

船が出発し、甲板上ではクワガタがクボに弓の使い方を教えていた。 船の上から弓で魚に当てる事に成功したクボだったが、そのままでは引き上げる事が出来ない事に気付く。

すると白猿が屋に綱を付けてやり、何とか魚を釣る事に成功すると、白猿は折れずの剣で魚を切って刺身状にすると、クボとカブトムシに食べさせる。

どうした?初めて猿とクワガタに挟まれて食べたようだが?とクワガタがクボをからかうと、度を始める前は何してたと聞く。

母の面倒を見たり、町で話していたよとクボは教える。

そのときは母上もちゃんとしてた。 心が生きようとしていた…、凄くきれいだったとクボは昔を思い出す。

良いか?クボ、そなたの父は英雄だったのだとクワガタは教える。

その時、白猿は、前方の空に大きな黒雲を発見、そろそろ嵐が来る、隠れる場所を見つけてとクワガタに命じる。

その時、舳先に捕まっていた紙人形の半蔵が水面を指しているので、鎧はこの下に!とクボは気付く、するとクワガタが飛び込むと言い出したので、ダメだよ、この湖には何かがいるんだ、目玉に覗き込まれたら放さない、永遠に…とクボは母親から聞いていた伝説を教える。

クワガタが海に飛び込むと、気を付けて!と白猿が心配し負うに声をかける。

その時、雨が降って来る。 保藩には、砂浜に落ちていたクボの着物の切れ端に鎖鎌の先端を突き刺し、叔母2人が降りて来る。 その鎖鎌の先を引き寄せ、布を確認した彼女らは、武具を探している様子は父と同じね…と呟く。

2人は満月に向かって飛び上がると二手に別れる。

嵐が強まる中、クワガタはなかなか戻って来なかったので、クボはクワガタに何かあったに違いないと案じ躊躇なく海に飛び込んだので、白猿は、クボ!と驚き、自分も飛び込みかけるが、その足に鎖鎌が絡み付き甲板に引き寄せられる。

そこには叔母の1人がおり、獣臭い…エテ公…、姉の仲間が汚い獣とは…と嘲って来る。

水中で黄金の鎧を見つけたクボは早速それを身につけるが、そのクボの背後に突然光る巨大な目の化け物が出現する。

背後の灯りに気付いたクボは振り返ってその目を見てしまい、目を放せなくなってしまう。

さらに数個の目の化け物が周囲に浮上して来る。

船の上では白猿と叔母の戦いが始まっていた。

クボ!と避けぬ白猿を鎖側でぐるぐる巻きにし食うチュに持ち上げた叔母は、こんな獣を倒しても何の自慢にもならない。 11年前に姉を失った…、姉は男を選んで父を裏切った!と言う。

白猿は単身、折れずの剣で対抗する。

叔母は畳まれていた帆船の帆を卸その陰に隠れたので、一瞬相手を見失った白猿だが、甲板にいた紙人形の半蔵が背後を刀で指し示す。

そんな時、魚を捕ったクワガタがひょっこり船上に戻って来たので、それに気付いた白猿は、あんた!どこ行ってたの?何でクボを連れてきてないの!と驚く。

叔母は白猿の折れずの剣を蹴り飛ばし、その刀はクワガタの前に突き刺さる。

叔母はそれを奪いに来るが、一瞬早くクワガタが剣を抜き対抗する。

白猿は鎖鎌の鎖を引っぱり、叔母を帆柱にぶつけきを失わせてから、鎖で縛り上げ、クワガタにクボを救出しに行くように命じる。

クワガタはすぐに湖に飛び込むが、その時、帆柱の一部が叔母と白猿の上に落下して来る。 クボは水中で目の虜になっていた。

クボは、木彫りの猿の人形が白猿に変化し、それが母親に変化するのを目玉の化け物の奥に見る。

その目に矢を射掛けたのがクワガタで、クワガタは迫り来る他の目玉の化け物にもやを射掛けながら、沈んで行くクボに近づいて行く。

湖上の船は崩壊しつつあったが、叔母と白猿の戦いはまだ続いていた。

白猿は執拗な叔母の鎖鎌攻撃をかわし、湖上に浮遊していた船の残骸の上を八双飛びのように飛び移っていたが、折れずの剣が刺さっているのを発見、それを取りに向かう。

叔母の鎖鎌が白猿の身体を縛り、剣に今一歩届かない。

姉は哀れで哀しい…、人を愛して弱くなったと叔母が言うと、違う!私は強くなった!と言った白猿は折れずの剣に手を伸ばし、その剣を構え叔母に飛びついて行く。

水中に叔母の傘がまっ二つになって沈んで行くのを横目に、クボを抱いたクワガタが浮上して来る。

沈みかけた船の先端にしがみついていた白猿は左脇腹を負傷していた。

そこにクボを抱えたクワガタが戻って来る。 クワガタから気を失っているクボを渡された白猿は、クボ!目を開けて!お願いだから…、もう大丈夫よ、私はここにいるから…と言いながら泣き出す。

すると、湖面にバラバラになって浮遊していた船の破片が集まってきて船が修復したと思った瞬間、クボも咳き込んで目を開ける。

僕…、見たんだ…、母上!とクボが目を開けて言うと、私の息子!と白猿は言いクボをしっかり抱きしめる。

岸に到着し、洞窟の中で夜を明かす事になったクワガタは、質問に答えるわと言い出した白猿に、俺はクワガタ、お前は猿、何故クボだけ名前があるんだ?などと聞く。

白猿が呆れて焚き火の前に近づくと、クボが、話を聞かせて、そしたら寝るから…とねだる。

白猿は承知しクボに三味線を弾くように促すと、クボの父上と出会ったのは妹たちと骨の寺に来た夜だった…、半蔵を殺す為に…と話し始める。

その内容に驚きながらもクボが三味線を弾き始めると、地面に落ちていた枯れ葉などが空中に浮遊し始める。

月の帝の命令で夜の空から降りて来たの…、まじないの武具を来た者は恐るべき力を持ち天下を取るかも知れなかったから… 空中の落ち葉が空中で母親と半蔵の姿の人形になったので、クワガタの肩に乗っていた半蔵人形が、あれは自分だと言う風に教える。

私が先に着いたわ。 良くも父を怒らせたな!妹は怒るだろう!と私は言い、半蔵と戦った。

空中の折り紙人形が戦いの様子を復元する。

半蔵は強かったわ…、そして私の目を見てある事を言った…と白猿が言うと、アイラブユー、猿?とクワガタが茶化したのでクボが睨みつける。

そなたを探していたと… あのぬくもりを初めて知った… あの人の優しさは私の心を溶かした… 私たちは互いを捧げた… そしてあなたが産まれた… 父の怒りは凄かった、半蔵は私とあなたを逃がした…と白猿が放すと、おじいさんは僕を嫌いなの?とクボが聞く。

違う!違う人間じゃ嫌なの、自分と同じにしたいのよ。 冷たく頑な心を持っているの…と白猿は哀しげに教える。

横になったクボを寝かしつけた後、白猿は脇腹の怪我の痛みに呻く。

クワガタが大丈夫か?と聞くと、かすり傷よ、私にかかったまじないは永遠じゃない…、クボは又1人になる。

私が消えた後も誰かが守ってやらなければ…と白猿は将来を悲観するかのように言うと、クワガタが、クボが人々に話を広めている。

そなたの物語は生き続ける…と白猿を慰める。 夜中、ふとクボは目覚める。

洞窟内には蛍が舞っていた。

見知らぬ老人が三味線を弾いており、若いの、一曲合わせてみんか?良い夢かな、悪夢かな?確かめて見るが良い…と話しかけて来る。

目が見えないらしいその老人が三味線を弾くと、床が蠢き出し、その中から白が出現する。

クボはそれは父の砦がである事に気付く。

その砦の奥には、探していた最後の武具兜が浮かんでいる。 夢に従えば兜に出会える。

さあ行くんだ、この話に結末を付ける為に…と老人は言う。

その直後、クボは本当に目覚め、まだ寝ていた白猿とクワガタを起こし、ねえ、分かったよ、鎧がどこにあるか!夢で見たんだ!と明かすと、行こう!と紙人形の半蔵を肩から下げていた風呂敷に入れるとクワガタたちの声をかける。

またクボたちは旅を始め、竹林の中ではクワガタがクボをおんぶしてくれる。

それをうれしそうに見上げる白猿。

やがて、白猿の背中に乗って森にやってきたクボは、きれいなもの見つけたよ、空から来るものだよ、当てて!とクワガタになぞなぞを仕掛ける。

クワガタは雪!と何度も答えるだけだった。

クボは空を渡って行く鳥の群れの声だと言う。

クワガタは、声?と不満そうに言うが、サギの群れだね…、死者の魂を望む場所へ運ぶって言われている…、死んでもただ消えるんじゃない…、生まれ変わって別の場所で紡がれて行く…、新しい物語になって…と白猿が言い聞かせる。

夜中、クボたち一行は、クワガタの家紋が入った旗が翻る半蔵の砦に到着する。 中に入ってみると、両親が赤ん坊を抱いている壁画やがしゃどくろや黄金の鎧が描かれている壁や、書物が残されているのを発見する。

ここに父上が住んでいたんだ…とクボは呟く。 白猿は、残されていた書状などを確認し出す。

クボは割れずの兜が描かれた壁画も発見するが、肝心の兜は見つからなかった。

クボが中庭に出た直後、書状を調べていた白猿は、そこに描かれていた兜の絵を見て、クボ!と呼びかける。

しかし、外に出ていたクボの背後には怪しげな黒煙が接近していた。

それに気付いた白猿が折れずの剣を抜いて飛びかかろうとするが、クボとクワガタが煙に捕まり、白猿も剣を弾き飛ばされる。

満月を背景に、もう1人の叔母が笑いながら降りて来る。 さあ我が姉よ、尊敬してたのよ…、それが人の家族と暮らそうと思うなんて…とキセルを持った叔母は白猿に言う。

叔母はキセルの煙でクボが持っていた紙人形の半蔵を取り出すと、姉を奪った礼に貴様の夫としての思い出を奪ったのだ、半蔵!と言い、空中で半蔵の紙人形を折り直しクワガタにしてみせる。

一緒に旅してきたクワガタが夫の半蔵だと知った白猿は驚愕する。

白猿から、半蔵!と呼びかけられたクワガタも知らなかったと戸惑う。

笑い出した叔母は、煙で縛り付け身動きできなくなっていた半蔵を壁に投げ飛ばすと、クボの首を締めようと近づく。

クボは満身の力を込め、煙の中から片手を抜くと、思い切り叔母の顔を殴る。

白猿も煙から逃れると、折れずの刀を持って叔母に向かって来る。 マスクにひびが入った叔母はクボを殴り飛ばすが、そこに姉の化身である白猿がかかってきたので、2本の刀で立ち向かう。

やがて、白猿は腹の傷の為に体力が奪われ、刀を弾き飛ばされてしまう。

倒れた白猿は腰を抜かしていたクボの方に這って来るが、それを見た叔母が空中に浮かび上がり飛びかかろうとしたその瞬間、1本の剣が飛んで来て叔母の身体に突き刺さる。 刀を投げたのはクワガタだった。

傷ついた白猿を抱きかかえたクボの元に駆けつけたクワガタは、息子よと呼びかける。

虫が夫だったとは…と白猿が皮肉を言うと、そうだ、侍の虫だ…、そなたを探していた…、これまでずっと…と半蔵は白猿の手を握り答える。

半蔵、クボを守って!何があっても…と白猿が言うと、何があっても…と半蔵は約束する。 その直後、その半蔵の背中を突いたのは叔母の刀だった。

死んだ半蔵を見て驚いた白猿はクボに、村へお戻りと呼びかける。

クボは側に落ちていた三味線に近づき、白猿に刃を振り下ろそうとしていた叔母と同時にバチを振り下ろす。

叔母が消え失せた城の中庭で、クボは落ち込んでいた。

側には、父親半蔵の割れた鎧や、崩れた半蔵の紙人形、そして割れた木彫りの猿人形が落ちているだけ。

クボの右の目から流れ出た涙が頬を伝い、1本だけ残った三味線の弦に落ちる。

すると、側で潰れていた半蔵の紙人形が動きだし復活する。 そして、半蔵人形が刀で指し示したのは側に落ちていた一枚の書状だった。

そこには、かつて住んでいた村にあった半鐘こそが、兜の正体である絵が書いてあった。

クボは折れずの剣を拾い上げ、落ちていた白猿の毛をミサンガにして左手に結びつけると、三味線の最後の一本の弦をかき鳴らす。

弦は切れ、突風がクボを中心に巻き起こり、家紋を描いた旗がたなびく。

そしてその赤い旗がクボの身体に巻き付き、大きな羽に変化する。

クボの身体は浮き上がって行く。

満月の中、クボは荒れ果てた自分の村にやって来ると、そこに残っていた半鐘の柱にぶつかり、地面に落ちて来た兜を頭にかぶろうとする。

その時、クボ、あんたなのかい?と声をかけてきたのは、あのおばあさんだった。

他の村人たちも集まっていた。 急いでここから逃げて、月の帝が来るんだ!と村人たちに警告したクボは、その場で兜をかぶる。

すると、兜、鎧、抜いた剣の3つの武具が黄金色に光り輝く。 おじいさま、僕はここだ!と呼びかけると、前方に夢の中であった老人、月の帝(声-羽佐間道夫)が出現する。

おお、孫よ、遂に合う事が敵ってうれしいぞ、そなたの母がここへ戻れと言った訳が分かった…とクボの兜を見て帝は言う。

クボは石を拾い上げ、近づいて来た月の帝の投げつけるが、帝は難なくその石を掴むと、分かった…と言いながら握りつぶして粉にする。

そうだ、僕が悪かったんだ、言いつけをちゃんと守らなかったから…、あなたが欲しがっているのは僕の目でしょう? 年寄りで意地悪だからな!とクボが言うと、目にこだわっていると一緒にいれるんだ。

目がある限り憎しみや悲しみを見る事になり、そして死ぬ。

わしと一緒に来れば死とは無縁の存在になる。わしと一緒に来れば不死になるのだ…と月も帝は言って来るが、ムダな存在などない!永遠などないよ!全ての物語を終わらせるんだ、あなたを殺す!とクボは答える。

父親のように自分に歯向かうのか?許しては置けぬ!と怒った月の帝は、その場で木のような姿になり、それが弾けると、中から巨大な怪魚が出現し、クボに襲いかかって来る。

クボは懸命に折れずの剣で立ち向かう。 やがて、その剣を弾き飛ばされたクボは、迫り来る怪魚から逃れながら地面に突き立った剣を抜こうとするが怪魚の手に似た尻尾に捕まってしまう。

そなたは人間でいたいのか?では人のように弱くなれ!と怪魚になった帝が嘲ると、兜を脱がし、クボの身体を握りしめ、木を失った所で地面に落とす。 そして尻尾で、クボと刀を森の中の墓の所へ弾き飛ばす。

クボは側に突き刺さっていた刀を抜こうとして左手にはめていた2本のミサンガに気付く。

母親と白猿の遺髪で作った物だった。 クボは鎧を脱ぎ捨てると、2本の遺髪を伸ばし、三味線の弦にする。

その間にも巨大怪魚は笑いながら、森の中に泳いできていた。

クボの姿を発見した怪魚は、死ね!そしてお前の物語を終わらせろ! 残された目で見るが良い!このみすぼらしい場所と汚いものたちを…と囁きかける怪魚に、怯えながらも森に逃げ込んでいた村人たちが木々の後ろから顔を見せ始める。

クボは、それ以上にきれいなものがあると言い返しながら、最後に自分の髪の毛を抜いて3本目の弦にする。

記憶を全て奪ってやる!と怪魚がクボの前に迫った時、クボは三味線を奏でると、彼の周囲に光が広がり川に浮かんでいた灯籠全てに灯りが灯る。

違う!全て思い出になって何より強い力になるんだ!とクボが言いながら三味線をかき鳴らすと、行灯の灯りが生前の人間の姿に化身して行く。

僕たちはあなたたちよりずっと強くなれる!とクボが言い、光の故人たちがクボの側に近づいて来ると、それを見ていたおばあさんら隠れていた村人たちもクボの回りに集まってきて、そして強い力となる!と言いながらクボが三味線を鳴らすと、強力なバリアを発生させる。

怪魚はクボに襲いかかろうとぶつかって来るが、バリアに阻まれ中に入り込めない。

もう一度クボが三味線をかき鳴らすと、人間たちの光のエネルギーが洪水のように怪魚に襲いかかる。

気がついた月の帝は、片目の人間の老人になっていた。 しかも自分の全ての記憶を失っているようだった。

それを知ったおばあさんが帝に近づき、あんたは優しく親切な方で…と教える。

幼女も、いつもニコニコしてお小遣いをくれたのと嘘を教える。 あなたはみんなの人気者だったの…、あなたと私とで孫を育ててたんだよ、この子の名はクボ…とおばあさんは言い聞かす。

それを聞いた帝は、クボ…?わしは何も覚えてない…と困惑すると、クボがあなたの物語を全部教えてくれるよとおばあさんはクボの前に帝を押し出し言う。

本当に?と帝が不安げに聞くと、もちろんさ!とクボは帝の方に手を置き応える。

その後、村人たちは、又川に自分たちの灯籠を浮かべる。

クボも折り紙で作った灯籠を岩の上に置き、合掌して跪くと、父上、母上、僕の物語はまだ続いて行くみたい…、2人に出会えて感謝していると祈る。 3人で旅が出来てとっても幸せだった。

だけどもっと幸せになれるかも知れない… この世の断りは分からないけど、父と母に会いたい… そしたらこの物語を締めくくる事が出来るとクボは願う。

三日月が写った川にたくさんの光る灯籠が流れ光るサギの群れがその側を飛んでいる。

そして川辺の墓の前には、蘇った半蔵と母親に挟まれたクボが、二つの光る灯籠を手にしていた。

灯籠を川に浮かべたクボに両親が一緒にかがみ込み、優しい笑顔で手を添える。

吉田兄弟演奏の「While My Guitar Gently Weeps」の曲と2DCGアニメ風のエンドロール
 


 

 

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