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皇太子の花嫁

今の天皇陛下の皇太子時代の花嫁選び騒動が描かれている他愛無いラブコメ

冒頭から皇太子そっくりの青年が登場するので、これは大丈夫なのかな?と心配になるが、皇太子ではない事が劇中で説明されているので、ぎりぎり大丈夫と言う事なのだろう。

ただ当時の皇太子に対する情報がアイドルのようにあからさまになっているのが驚きと言えば驚き。

劇中で言われている事が事実だとすると、当時はその手の情報がマスコミに発表されていたと言う事だろう。

ミッチーブームと言われるくらい当時はお妃選びに熱狂していたらしいが、そう言う雰囲気の一端はこの映画からも窺い知る事が出来る。

主役は高島忠夫さんと島崎雪子さんのコンビだが、この当時の高島忠夫さんは息子の高嶋兄弟のお兄さんの方に雰囲気は近いが、どう見ても表情が硬く、イケメンにも見えないし、魅力的にも見えないように思う。

当時の新東宝の新人俳優は、男優、女優問わず、全体的に容貌は凡庸な感じで、飛び抜けた美男子や美女はいないような気がする。

悪役イメージが強い二本柳寛さんや山形勲さんが、共に人情派の編集長をやっているのも貴重。

池内淳子さんもちらっと出ているが、角度によって目元等で池内さんと気づくが、若過ぎて、ぱっと見、誰だか分からない。

丹波哲郎さんも雑誌記者として出ているらしいが気付かなかった。

女性の社会進出が始まった時代の作品らしく、一見、働く女性を応援しているように見えて、その裏にはまだまだ、結婚して家庭に入る方が幸せみたいな感覚がどこかに透けて見えるような気がする。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1955年、新東宝、金貝省三原作、波根康正製作、小森白監督作品。

タイトル 雲が浮かぶ空から数名の白い衣装の踊り子たちが降りて来る。 そして、地上に降り立った踊り子たちは踊り出す。

その背後に立っていたのは皇太子殿下に似た青年(若宮政彦)? 殿下に似た青年は、踊り子たち1人1人と握手をなさる。

朝食時、夢に見たそんな話をしていた白井幸子(江畑絢子)は、それから?と一緒に朝食を食べていた雑誌記者の白井礼子(島崎雪子)から促されると、お終い!今晩寝たら続きが見れるかな?などと幸子が言うので、話を聞いていた父親の白井博人(清水将夫)は、テレビじゃあるまいしと、隣で聞いていた妻の房江(三宅邦子)と呆れて笑う。

それでも幸子は、交代し様って本当に素敵よ、パパ、サインもらって来て!ごけい(?)顧問でしょう?とねだると、皇太子様は、身長150cm、体重55kg、髪は7、3に分けられ、英語とフランス語がペラペラ、お馬も車もお乗りになられ、食べ物では、とろろ、納豆、お寿司等も大好きなのよなどと皇太子に関する知識を披露する。

その時、柱時計が鳴ったので、レースに遅れちゃう!ごちそうさま!と叫んだ礼子はちゃぶ台から立ち上がる。

「ニュースタイル社」に出社した礼子は編集長の牧野弘造(二本柳寛)に呼ばれ、1億円の賭けの話を知っているか?と聞いて来る。

はい、昨年の昨日、宮内庁高官に記者がインタビューしていましたと答えると、さすが博人の姪御だけの事はあると牧野編集長は感心すると、今回の皇太子の花嫁選びを特集しようと思う。

君にやってもらおうと思うんだが、今日を入れて8日しかないが、成功したら特派記者になると牧野は言う。

その頃、「写真画報」と言う別の雑誌社では、カメラマンの酒巻大作(高島忠夫)が編集長の田代勇(山形勲)に「皇太子の花嫁はどこにいる」と言う見開きグラフの企画を1万で売り込んでいた。

他ならない大作の頼みだ、良いだろうと快諾する。 喜んだ大作が望遠が欲しいんですと本心を打ち明けると、君が姪なら安心して任せられるんですがね?と言うので、何の事かと聞くと、白井礼子の写真を見せ、すこぶるの美人だろう?と田代は目を細める。

その日、レコードを買いに銀座楽器に出かけた幸子は、レッスン仲間の大須賀緑(藤木の実)とばったり出会う。

オルゴール買いに来たのと言う緑は、一緒にいた宗方百合子(池内淳子)を幸子に紹介する。

その時、ポスター用の写真を楽器店々員(鈴木信二)に届けに来ていた大作は、ゆり子のバッグから財布をすり取ろうとしていた女に気付き、素早く写真に撮ると、君!今の財布を出したまえ!写真に撮ったよと声をかける。

女は仕方なく財布を取り出すが、その女を店員に任せた大作は、証拠写真は明日届けると約束する。

その日、帰宅した礼子は博人に会うと、おじ様にお願いがあるんですけど…、これをちょっと拝見させてくださいませんと、博人が見ていた花嫁候補リストを指すと、これは困る。発表前に世間に知られる訳にはいかないんだ。

礼子さんを信用しない訳じゃないけど…と博人はきっぱり断る。

そんな白井家にやってきたのが大作で、玄関先に買われていた犬が唸って来たので、持って来たビスケットをあげて黙らせると、玄関に入る。

しかし、応対に出て来た女中(井波静子)が、昨日お断りしたはずですけど?と言うので、日を改めて粘りに来たとおっしゃって下さいと大介は答える。

その時、玄関の外から、ウィーンが変なビスケット食べてる!毒入りじゃないかしら!と言う幸子の声が聞こえて来たので、外に出た大作は、毒ビスケットじゃありません!と言いながら、持参したビスケットを自分で食べてみせる。

幸子は一緒にいた礼子を、従兄弟の礼子お姉さんと大作に紹介すると、今日は吼えられないようにこれを持って来たの、僕は失敗は繰り返さない男ですと大作は昨日も来た事を明かし、やはり会えないそうですと博人の言葉を伝えに来た女中の言葉を聞いても、今日は覚悟の持久戦です!と食料と水筒を持参している事も打ち明け、幸子に昨日のスリの証拠写真を手渡す。

そして礼子には、ニュースタイル社にお勤めだそうですが、今日はサボリですか?と大作が聞くと、家にいるのをサボリと言うかしら?と礼子も言い返す。

すこぶるの美人だと写真画報の編集長が褒めていましたよと大作が言っていると、パパに聞いてみようかしら…、何とかなるかもしれないからと幸子が言い出すが、そんな幸子を礼子が、ちょっとと呼んで部屋に上がる。

そして礼子は、そんなにあの人をおじ様に会わせたい?会えるようにしてあげましょうか?その代わり、おじ様の鞄持って来てくれる?と幸子に耳打ちする。

その後、紅茶を淹れて持って来た礼子を見た博人は、何故出かけなかったのかね?と聞くが、礼子はそれには答えず、お妃様の選考まだまだなんでしょう?と言うので、礼子さんもそろそろ決めないとねと博人がからかうと、私、自分の能力を試してみたいんですと礼子は答える。

それを聞いた博人は、良い事だ、これからの女性は台所ばかりで暮らす訳んにはいかんだろうからねと言うが、そんな博人の方をもみ始めた礼子は、昨日来た記者が弁当持参して来てますよ。

編集長がとっても怖いんですわ、きっと初めての仕事で張り切っているんですわ。

これが成功すれば特派記者になれるんですってと、自分の事を大作の事のように吹聴し、おじ様、一度お会いになるだけでも…と勧めると、一度会おうか?玄関先で騒がれても困るからと博人は言い出す。

玄関先で博人と会えた大作は、せめてお妃候補のお名前だけでもてん、これだけ国民の関心が高いんですから、秘密主義で押し通す事は出来ませんなどと説得しようとする。

その間、礼子は幸子が持ち出して来た博人の鞄を受け取る。

博人は、嫉妬とでも言うのでしょうか、妃候補を発表すると、中傷をする者等もありますし、色々遠方からの申し込みもあり、実際海外から申し込みがあったりして…と説明する。

礼子は、鞄に入っていた花嫁候補リストを手帳に引き写していた。

そのリストを側で覗き込んでいた幸子は、宗方百合子と書かれた経歴と写真を見て、私、その人知っているわ、今日レコードを買いに行った時、緑さんに紹介されたのと言い出す。

それを聞いた礼子は、手始めにその肩から訪問してみようかしら…と思いつき、さっちゃん、鞄返すの今よ!と玄関お様子を伺いながら礼子は言う。

そして、自分は玄関に降りて行き、お気の毒ですわねなどと大作と博人の会話に加わり時間稼ぎをする。

幸子は、その間に鞄を書斎に戻し、階段の所に来て礼子に親指と人差し指を丸め、OKよと合図する。

礼子が出かけると、帰ると見せかけた大作が尾行して来る。 宗方家に礼子は訪問するが、ピアノの音が聞こえて来るだけで、応対に出て来た執事(杉寛)は、正式に宮内庁から御沙汰いただいてないので…と面会は断る。

私、大須賀緑さんの知り合いですが…と粘るも相手にしてもらえず、出直してきますわと挨拶するが、無駄でしょうよと執事に言われてしまう。

その礼子の様子を屋敷内に進入し監視していた大作は、これからどちらへお出かけですか?と屋敷から帰る礼子の後ろから声をかけたので、礼子は仰天し、渡しを付けるの止めて下さいと怒る。

しかし大作は、僕望遠欲しいんですよと笑う。 その夜、幸子は帰って来た礼子に、お姉様、緑さん、電話したら留守なんですってと言うので、礼子は、頼んだわね!と引き続き緑と連絡を取るよう頼む。

百合子さんのお家って立派よと礼子が教えると、3200円もするオルゴール買ったのよ、幸子うらやましくなったのと話していると、女中が、玄関前にこれが…と水筒を持って来る。

あの人のね!と気付いた礼子は、住所は名刺を置いていったから分かるわ、さっちゃん、あなた返してらっしゃい、ついでに調べて来て欲しいのと礼子は何事かを頼む。

その日、ニュースタイル社に出社した礼子だったが、その入り口に立ったのは大作だった。

牧野編集長は、巧く行ってるかね?と礼子に話しかけ、何だい?そわそわして…、最初の仕事としては荷が重過ぎたかな?と礼子の態度がおかしいので聞き、候補者の写真も欲しいと思ってね…と言うと、カメラマンの池谷三平(和田孝)を呼びつけ、白井君と組むんだよと命じると、後〆切まで後7日だよと礼子に念を押す。

その直後、三平を呼び寄せた礼子は、いやな奴が私を尾行してるのよ、今朝もうちからずっと付けて来るのと打ち明け、窓から下の道路に立っていた大作を教える。

それを見た三平は、あっと驚く。

私、裏から出るから頼むわよ!と三平に言い残し、礼子は会社の裏口から車で出発するが、何故か大作も予想していたかのように車でその後を尾行する。

その日、礼子と三平が訪ねた大隅家では、令嬢(三重明子)が美容体操をしていたが、1日くらいさぼっても大丈夫よなどと令嬢は毎日の苦行を嫌い言っていた。

インタビューになっても、令嬢自身は何もしゃべらず、趣味を聞かれた母親の大隅夫人(千明みゆき)は、皇太子様がおやりになる事は何でも…、最近は、将棋も習わせていますと答え、どんな本を読まれますか?と聞くと、令嬢は本はあんまり…と言うだけで、父親の大隅参三(小川虎之助)が、あんまり文学等は好まないようで、哲学…、哲学が好きなようです。モンテーニュの全集等も買いましたなどと答える始末。

令嬢はずっと猫を抱いていたが、庭先から猫の鳴き声が聞こえて来たので、それに釣られ猫が飛び出して行く。

それは庭の木の陰に隠れて様子を伺っていた大作の泣きまねだったのだが、猫を追って庭に出て来た令嬢の姿を大作はばっちり写真に収める。

それに気付いた礼子が呆れていると、バレたと分かった大作は慌てて塀を越えて逃げ出そうとするが、その際、コンクリートの段差の所で足を踏み外し足をくじいてしまう。

足を引きずりながら自宅アパートに帰って来た大作は、部屋の前で待っていた幸子が、大丈夫?と聞いて来たので、いつか君を転がした罰かもねと照れ笑いする。

幸子は持参した水筒を差し出し、忘れ物!と言ったので、あそこに忘れてたのかと大作も気付き、ちょっと寄って行かない?と部屋に誘う。

コーヒーとジュースどっちが良い?と聞くと、コーヒーと言うので、大作が準備している間、幸子は部屋に貼られていた写真の中から、皇太子様のお写真に気付き、じっと見つめる。

白馬に股がった皇太子様が手招きなさったような気がし、オルゴールの音が聞こえて来る。

そこへ、どうしたの?と大作がコーヒーを運んで来る。

幸子は、皇太子様って素敵だわ!皇太子様の花嫁には誰がなるのかしら?と乙女らしい疑問を口にするが、おじさんが教えてくれなかったからねと大作が愚痴ると、宗方百合子さん、ご存知でしょう?あの方の写真ある?と幸子は聞いて来る。

大作は、君は頼まれて来たんだね?と気付くと、お姉様がそう言ったの?君にスパイは勤まらないよと苦笑すると、スパイだなんていやだわ、今日は会えないで帰った事にしといてね…と幸子は頼んで来る。 その時ノックが聞こえ入って来たのは三平だった。

私、もう帰る!今の事、2人の内緒よと言い残し幸子が帰って行ったので、おだやかではないねと三平がからかうと、今の白井礼子の従兄弟なんだよと大作は苦笑して答える。

その足どうしたんだ?と三平が聞くと、大介は右ひざの怪我をさらして見せたので、大さんの厄日じゃないかと三平は笑い出す。

ウィスキーを出して来た大作は、今日も君が合図してくれなかったら巻かれてたよ、彼女気付いたか?と聞くので、知らぬが仏さと三平はとぼけ、この前の写真でうちも助かったし…と付け加える。

すると大作は、俺、もう尾行止めるよと言い出し、花嫁候補は礼子さんの手帳に書いてあるんで、それを何とか引き写してくれと頼み、三平、君は昔から頼むと嫌とは言えない男だから…とおだてる。

いきなり無茶な注文をされた大作は困惑し、しかし、彼女は後生大事にバッグを持っているからね…と言い訳する。

翌日、写真画報にやって来た大作は、こっちは君の写真を当てにしているんだぜと田代編集長から励まされると、大隅令嬢ですと、庭で隠し撮りをした写真を渡す。

そして、ニュースタイル社の三平に電話を入れ、昨日の件、そこを何とか…、頼むよ、三平!君は昔から頼むと嫌とは言えない男だからと繰り返す。

電話を受けた三平の方は、そう言われるとつらいんだ…、何とかやってみるよと答えながら、ちらちらデスクで仕事中だった礼子の様子を伺う。

電話を切った直後、礼子が机を離れるのを見た三平は、礼子宛の封筒が目の前にあるのに気付き、それを持ってさりげなく礼子の机に近づくと、封筒を机の上に置きながら、置きっぱなしだった手帳を取ると、すぐに暗室へ向かい、手帳の中味を複写し始める。

机に戻って来た礼子は、封筒等が乱雑に置かれていたので、三平ちゃん!ちゃんとしてよと声をかける。

暗室から出て来た三平は、封筒を置き直す振りをして持って来た手帳を床に落とし、これ落ちましたよと言いながら手帳を礼子に渡す。

いつ落ちたんだろう?と礼子は首を傾げるが、今じゃない事は確かですと三平はごまかす。

次の花嫁候補紀之平のり子の座敷に先に到着していた大作の元に、礼子と三平もやって来る。

のり子がやって来たので、大作が、今回のお話、どのようにお考えですか?と聞くと、礼子の方も、音楽とかピンポンのご趣味は?と聞くが、のり子は分かりませんわと言葉を濁すだけだった。

社に戻った礼子は、手帳に書き停めていた花嫁候補の面会済みの名前を一つずつ消していた。 そして、三平ちゃん、今日の写真出来た?と部屋の中を見回すが、三平の姿が見えないので、暗室の中をのぞくが誰もいない。

部屋の中にかけてあったネガをチェックしていた礼子は、自分の手帳の複写を発見し驚いた所に、当の三平も入って来て、悪事がバレた事に気付く。

何て事するのよ!変だ、変だと思っていたら!と怒った礼子は、断然編集長に言うから!と抗議し、勘弁して下さい!と詫びる三平を後に暗室を飛び出るが、目の前にいる牧野編集長と、暗室から拝んでいる三平の姿を見比べるうちにそのまま黙っておく事にする。

結局言わなかった…、あんまり可哀想だったから…と幸子にその事を打ち明けていた礼子は、宗方さんの写真さえあれば…と悔しがるので、幸子が、今日やっと翠さんに会ったのよ、百合子さんは今旅行中で、行き先は分からないんだって…と教えると、どうしてこう巧く行かないのかしら、後4日なのに…と礼子は悔しがる。

緑さんに何とか頼めないかしら?オルゴールでも何でも買ってあげるからと礼子は幸子に頼む。

花嫁候補の写真を見ていた幸子は、又夢を見て、ウェディングドレスを来た女性たちが何にもいる中から、皇太子殿下は宗方百合子に花束を手渡す。

百合子さんいたわ!と叫んだ幸子だったが、夢よ…と付け加えたので、何言ってるの、速く本物の百合子さん探して!と指示する。

翌日、ニュースタイル社の編集部では、なかなか「ローマの休日」とはいきませんね、昨日は御学友と銀座を自由行動なさったそうだ、我らの皇太子をもっと自由にしてあげたいななどと牧野編集長が編集者たちと雑談していた。

そんな中、白井さん電話ですと三平が呼びかける。

電話は幸子からで、百合子の旅行先が分かったと言うので、よく調べてくれたわね、オルゴール?分かってると言うと、電話を切り、牧野編集長に百合子は京都へ行っている事を伝える。

それを聞いた牧野は、じゃあすぐ行くか?と礼子に出張を認める。

ところが、京都へ向かう列車の食堂車で、礼子はまたもや大介と一緒になったので、1人でビールを飲んでいた中年男(若月輝夫)のテーブルに座ると、その中年男があれこれ色目を使って来たので冷たくあしらっていると、冷たい人こそ色恋に夢中になるそうですからななどと中年男はしつこく迫って来る。

それを見ていた大作は席を立って近づいて来ると、もういい加減にしたまえ!と中年男を叱ると、このかたとはどう言うご関係かね?と聞いて来たので、僕の妻なんだと嘘を言う。

すると中年男は狼狽し、これは偉い失礼をしました!と詫びながら席を立ち、私は東京の宗方と言うものですと言うので、今度は大作の方が驚き、お座りくださいと勧めるが、男が差し出した名刺には「宗方パチンコ店」と書かれてあったので、全くの人違いだと気付く。

宗方が去ると、悔しいけどお礼を言うわと百合子が大作に言うので、今日はどこに泊まるの?都ホテル?などと大作は探りを入れるがさすがに礼子は相手にしなかった。

やがて、列車が停まらないはずの駅に停まったので大作が不思議がっていると、豊橋と二川の間で貨物列車の事故が起こったので、復旧まで後2時間ほどかかりますとのアナウンスがある。

窓から外を見た大作は、きれいな海だな、一緒に行きませんか?と誘うが、私、団体行動は好きじゃないんですと礼子は断る。

大作は、御随にと言い残し、1人で海辺の方まで歩いて行くと、背後から音楽が聞こえて来たので振り向くと、トランジスタラジオを下げた礼子が付いて来ていた。

今度は君が尾行?と皮肉ると、あなたに興味がある訳じゃないのよと礼子が言い返して来たので、分かってますよと答えた大介は、砂浜に座り、良い気持だ…、都会にいるとこう云う景色を忘れがちになる。

昔よく考えたものだが、どっか無人島で素っ裸で暮らす事…、夜は月と星がきらめいて、側には好きな人がいてくれる…と大作が言うと、あなたにそんな夢があるなんて思ってもみなかったと礼子が興味なさそうに答えたので、君は恋した事ないだろうと大作は意地悪を言う。

すると礼子はむきになったのか、ま!濃いしない女なんているのかしら?年頃になれば誰でも考えるわ。

やりがいのある仕事をやっている人と奈良、共稼ぎで何とかなるわと言い返したので、速く理想の男性を見つけて仕事は辞めるんですなと大作がからかうので、私、やり遂げますわ!と礼子は意地を張る。

大作は、お嬢さんにはご無理でしょうねと言い返すが、その時、汽笛が聞こえて来たので、驚いて腕時計を見ると止まっている事に気付く。

慌てて駅へ引き返そうとした2人だったが、遠ざかって行く列車を見て、乗り遅れちゃったんですわ!どうするつもり!と怒った礼子のハイヒールは水で濡れていた。

それに気付いた大作は、脱げば良いじゃないですかとからかうと、こんな所に誘ったくせに!と礼子が膨れたので、あなたは団体行動は好かないって言ったでしょう!と大作も言い返し、怒った礼子は、もうあなたのお世話にはならないから!と言い残し、ハイヒールを脱いで歩き始める。

すると大作が、君君!京都はこっちだよと道路の反対方向を指差す。

その後2人は、京都へ向かう貨物トラックの荷台に仲良く並んで腰掛けていた。

何とか、京都駅東口にたどり着いた2人だったが、お互いベストを尽くそうと誓い合った大作に、親しい地元の新聞記者山形健(鮎川浩)が近づいて来る。

ブンヤのメンツで探したんだけど分からない、都ホテルで待ってろよ、明日の2時までには何とかすると山形が言うので、ホテルに向かった大作はボーイに奥様がお待ちですと言われたので、ご冗談を!もらいたいくらいだよと答え、予約した520号室に入る。

するとそこには女性がいたので、失礼!と詫びて廊下に飛び出た大作だったが、部屋番号を確認するが合っているので、首を傾げてもう一度中をのぞくと、そこにいたのは礼子だった。

何だ、君は?まさかここが君が予約したホテルと言う訳ではないだろう?一体どうしようと言うんです?と大介が文句を言うと、宗方百合子さんを見つけるまで粘っているだけよと礼子が悪びれず言うので、虫が良すぎる、帰りたまえ!男と女が2人で苦労するなんて安手の芝居はごめんですねと大作は抗議する。

すると礼子は、あなたはそんな安手の男とは思わないわ。

お仕事を立派にやり遂げたいだけよと言うので、僕は記事に対しては完全主義なんです!と大作が言い返すと、私は誰かさんみたいに悪事はしませんわと礼子は手帳の件をほのめかしてくる。

私はここで置きていますと礼子が言うので、大作はふてくされながら福を脱いでベッドに入る。

夜中、目覚めた大作は、礼子がソファで寝ているのに気付くと、自分の布団を持ってかけてやる。

翌朝、目覚めた礼子は布団がかけてある事に気付き、毛布だけでベッドで寝ていた大介の上に戻してやると、窓のカーテンを開ける。

その時、大介がベッドから落ちたので礼子は思わず笑ってしまう。

起きた大作は、何を笑ってるんだ!と憤慨する。

その時、記者の山形から電話が入り、分かった?場所は?午後2時に会える?迎えに?来なくても大丈夫!じゃあ後で!と大作は受け答えしていたが、カーテンの下から礼子のハイヒールが覗いていたので、内容がバレないようにする。

その後、ホテルを出た大作を礼子が待ち構えていたハイヤーの中に誘うので、乗る振りをして、礼子が一緒に乗り込んで来ると、自分だけ反対側から降りてドアを閉めてしまったので、礼子だけを乗せたハイヤーは出発する。

その後、徒歩で京都の町中を歩いていた大介だったが、ずっと礼子が乗ったハイヤーが付いて来る。

川縁の石に腰掛けてとぼけていた大作だったが、そこに取りかかった車を停め、それに飛び込むと急発進する。

映画館の前にやって来た礼子の乗ったハイヤーだったが、映画館から出て来た母子を危うく轢きそうになりストップしてしまう。

大介の尾行に失敗したかと思った礼子だったが、映画館の方に目をやると皇太子様そっくりの青年が出て来たので、走り出そうとした運転手にちょっと待って!と声をかける。

その青年の乗った車を尾行した礼子は、平安神宮に来た青年に近づき、思い切って、雑誌社の者なんですが、お一人でいらっしゃいますか?と声をかける。

映画がお好きなようですが、「ローマの休日」はご覧になられましたか?と聞くと、ええ、前に…と青年は答える。

将棋の方はお強くなられましたか?と聞くと、一向に…と言うので、ショパンはお好きですか?などと礼子は次々に質問する。

その頃、大作の方は、無事、宗方百合子に友人宅の庭先で面会していた。 連れて来た山形は大作におめでとう!と祝福する。

その頃礼子は、東京の牧野編集長に電話を入れ、百合子さんには会えなかったんですけど、実はお忍びの皇太子様にお会いしたんです。

平安神宮です。花嫁候補の記事を皇太子様との30分と言う記事に組み替えていただけませんかと申し込んでいた。

ホテルに戻って来た大作は、百合子姫にはお会いできましたか?とからかうと、礼子はさばさばとした顔で、会う必要なくなったのと答え、ポッポッポ鳩ぽっぽ♩などと口ずさみ始めたので、今日はバカにご機嫌ですね、今日から晴が始まったのかな?とからかいながらも、大介は礼子の上機嫌の理由が分からず首を傾げる。

東京の「ニュースタイル社」に戻って来た礼子を呼んだ牧野編集長は、君はまだ今朝の新聞を読んでないのかね?と聞くので、駅から直接会社に来たので…と礼子が答えると、人違いだよ、昨日、皇太子は京都におられなかった、工場見学に言っておられたんだと言いながら、その記事が載った朝刊を見せる。

それを見た礼子は、まあ!と驚くが、百合子にも会わずに来たんだから、花嫁候補は5人分で間に合わそう…と指示した牧野は、いかん、泣いたりしちゃあと注意する。 失敗は成功のもと、とにかく5人分は取れたんだ。

君は確かにしくじった…、でも全くしくじった訳じゃないじゃないか!1人前の特派記者になるのはこれからさ、元気出せよと牧野編集長は慰めるが、自分のミスが許せなかった礼子はそのまま屋上へ上がって行く。

それに気付いた三平が後を追って来て声を掛けるが、私、1人になりたいの…、良いのよ、心配しなくても…と礼子は三平に言う。

終業後の無人の編集室に戻った礼子は、君は確かにしくじった…、でも全くしくじった訳じゃないじゃないか…と言う編集長の言葉を思い返していた。

夜、大介のアパートにやって来た三平はその事を教え、本人にしてみれば張り切っていただけにショックも大きかったんだろうと礼子に同情し、身から出た錆と言ってしまえばそうなんだけど、気の毒な話だ。 大さん、黙って、百合子姫の写真を譲ってくれないかと三平に頼まれた大作は、それは出来ない、ネガの独占を条件に10万の契約をしたんだから…、特ダネが俺たちの命だって事は知ってるはずじゃないか、諦めるんだな…と答える。

すると三平は、大さん、君は白井礼子を可哀想だとは思わないのか?と迫る。

その頃、白井邸では、博人が礼子から話を聞き、すると私の名簿で訪問して回ってたって事だね…と事情を知る。

すみませんでしたと礼子が詫びると、今更とやかく言わんつもりだ…と博人は許してくれる。

一緒に話を聞いていた妻の房江も、仕事熱心の上での事だもの、運が悪かったのよと礼子を慰め、あなた、百合子さんって方に会わせられないかしら?と相談する。 しかし博人は、私にそれが出来るはずないだろうと言う。

自分の能力を試したいなんて言ったけど、ジャーナリストの厳しさが分かったように思います…と礼子が殊勝に言うので、頑張ってやんなさいと博人は慰める。 大介のアパートでは、三平が、君も強情だな…と呆れていた。

白井家を訪れ、大介から譲り受けた百合子の写真を渡そうとする三平に、それを拒絶した礼子はでしゃばりねと言う。

それでも三平は、むしろ気を利かせたつもりなんだよ。

漏らした事もお詫びしようと思ってたし…と言うが、人の手柄で記事を書いてうれしいと思う?と礼子は聞く。

すると三平は、大介さんの行為はみんなあなたへの愛情なんだと教える。

そこに女中が、お電話ですと知らせに来る。 三平は、じゃあ帰ります、これは置いていきますから、後は礼子さんのご自由にと言い残し辞去する。

電話は幸子からで、さっちゃん、本当!時間に絶対行くわ!と喜んだ礼子は、玄関で靴を履きかけていた三平に、行くのよ、仕事に!会えるのよ、百合子さんに!と告げたので、三平も、そいつは良かったですねと喜ぶ。

その頃、大介から契約を破った事を知らされた写真画報の田代編集長は、酒巻大作が10万のプランを色恋沙汰でご破算にするとは…と呆れながらも、良し分かった!望遠レンズはうちで立て替えとくぜ!と気前の良いことを言う。

白井礼子も立て替えとこうか?と田代がからかうと、片思いらしいんですけどねと大作は力なく答えるので、こいつ、仕事以外になるとバカに弱気になるな!と田代は呆れる。

その後、大作はアパートの暗室で礼子の写真を現像していた。

その時、ドアをノックする音が聞こえたので、どうぞ!と返事をすると、ドアを開けたのは三平だったので、三平か、入れよ!と背中を向けながら答えた大作が振り返ってみると、そこには一緒に礼子もいたのでどぎまぎとなる。

いらっしゃい…と寺ながら言う大作に、色々ありがとうございましたと礼子も礼を言い、宗方百合子さんにお会いした者ですから、これをお返ししますと写真を返そうとする。

その時、暗室を覗いた三平は、礼子の写真を見つけ、これは文字通り水もしたたる美人じゃないかと言いながら持って来たので大作は焦る。

すると三平は気を利かせたのか、社に戻って百合子姫の写真でも伸ばすかな?と言って先に帰ってしまう。

2人きりになった大作は、僕たちの特ダネ競争もこれでけりがついたようだね、短い付き合いだったけど、明日から仕事で勝負しましょうと言うと、お仕事じゃなくてもお会いする事は出来ますわよね?と礼子は聞いてくる。

それが、僕は昔から女友達が出来ないたちでして、会いに行こうとすると仕事が入るんですよ、因果な仕事ですと大作は打ち明ける。

その域外を私に譲って下さった訳ね?と礼子が言うと、もうその事は良いんです。今度の仕事は一番楽しかったから…、一生忘れる事はないだろうと大介は思い返すように答える。

皇太子様のお妃、どなたがなるのかしら?良い方が早くお決まりになると良いわね…と言う礼子に、礼子さん!と思い切って呼びかけた大作は、君はいつか、毎日を小さな幸福で埋められたらって言ってたね?僕はこんな小さな部屋でカメラしか持ってないけど、僕は誰にも負けないくらい君が好きなんだ!良かったら僕と結婚してくれないか?とプロポーズする。

ええ…と礼子も答え、大作は彼女を抱いてキスしようとするが、だめ!と拒否した礼子は突然部屋を飛び出して行く。

驚いて後を追った大作は、礼子が階段を登って屋上へ向かったので、自分もうれしそうにその後を昇って行く。

礼子はアパートの屋上の端にいたので、その横に立った大作は、一緒に町を眺めるのだった。
 


 

 

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