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カタクリ家の幸福

韓国映画「クワイエット・ファミリー」(1998)のリメイクらしいが、三池監督お得意の悪趣味と悪ふざけ満載のナンセンスコメディミュージカルのようになっている。

人形アニメなども使い、かなりシュールな表現も含まれている。

彦摩呂のような見た目になったジュリーこと沢田研二や森三中の黒沢みたいになった松坂慶子主演にようにも見えるが、彼らが目立っているのは歌のシーンだけで、中盤を引っ張るのは忌野清志郎演じる「ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐」を模した詐欺師だし、後半になるにつれ目立って来るのは丹波哲郎の怪演である。

途中、全盛期のジュリーや松坂慶子のセルフパロディみたいなカラオケ映像シーンがあるのだが、特に2人に笑える部分はない。

他の役者も本来コメディアンとかではないので、監督の演出のまま真剣に演じている感じが伝わって来る。

その分、三池監督の悪ふざけ趣味が細部にわたって生きており、その辺を楽しめるかどうかがこの作品の評価に繋がって来ると思う。

あくまでもバカバカしさを楽しむ作品だと思う。 
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2002年、「カタクリ家の幸福」製作委員会、映画「クワイエットファミリー」原案、山岸きくみ脚本、三池崇史監督作品。

ドア ノブを開けると、そこはレストランで、4人の怪しげなおばさんたちが入って来る。

一つのテーブルに座っていた女性が、目の前に置かれていたクリームスープを啜ろうとするが、何かに引っかかってスプーンが持ち上がらないので、フォークに持ち替えてスープの底から何かを持ち上げてみると、それは小さなギョロ目の天使のような生き物だった。

驚いて大きく口を広げた女性はいつしか人形に変わっており、その口に飛び込んだ天使は、奥のハート形の喉ちんこを引きちぎる。

ハート形の喉ちんこは窓からトトに飛び去ったので天使もその後を追いかける。

空中で喉ちんこを捕まえた天使は「ポンカレー」の看板にぶつかった地面に落ちるが、それをむしゃむしゃ食べる。

次の瞬間、天使は何者かに頭から食べられてしまう。

口がファスナーになったぬいぐるみ人形がその何者かを踏みつぶす。

木の上の鳥の巣の中には二羽のひな鳥が待っていたが、そこから転がり落ちた卵が地上で割れ、中から先ほどの天使が生まれる。

その天使は又カラスに食べられるが、空を飛び立ったカラスは糞を地上にいた老人の額に落す。 人形だった老人が、片栗仁平(丹波哲郎)に変化し、飛び去ったカラス目がけて木材を投げつけると、見事にカラスに命中したので、やったぞ!ポチ、行け!と仁平は飼い犬のポチに命じる。

ポチが落下したカラスの死骸を取りに走って行く中、仁平のひ孫に当たる百合恵(宮崎瑶希)は、ペンション「恋人たち」の庭先に死んだ金魚の墓を作り、十字架を立てていた。

家族の幸せについて考え始めたのはこの頃だった…と百合恵は考える(心の声-濱田マリ)。

祖父片栗正男(沢田研二)はデパートに勤めて歌が、ある日あっさりリストラされた。

この場所に大きな道路が通ると聞いてここに来てペンションを買った。 祖母の照江(松坂慶子)は、祖父と職場結婚だったそうだ。

母の静江(西田尚美)は百合恵を妊った状態でここに帰って来た出戻りで、熱しやすく冷めやすい性格。

伯父の真之(武田真治)は小さい証券会社に勤めていたが生来切れやすく、今では無職状態。 庭先で姉の静江を出戻りとののしり、口喧嘩をしていた真之は、父親の正男にシーズン中なのに誰も来ないじゃないか!と文句を言う。

空気がきれいだよなどと正男が浮世離れした返事をするので、無理!出て行く!と言い残して去ろうとするが、もう来ちゃったんだから!お客さんが来ると思ってみんな頑張っているんだから…と照江が呼び止めながらも、もうやだ!と癇癪を起こす。

お客さん来るよ、みんなやろう!きっと来るって…と正男が家族に言い聞かせると、いつの間にか修理されていた庭のブランコに乗り、こんな良い気持じゃないか!と明るく笑いながら身体を揺らすが、次の瞬間、綱の留め金が外れ、大きく前方に飛び出した正男は川に落ちて大きなしぶきが巻き起こる。

そこに、4人の怪しげなおばさんたちが近づいたので、客だと思った仁平はご苦労様!と明るく声をかける。

次の瞬間、日食が始まり太陽が陰り出したので、急に瘧でも起きたかのように狼狽し出したおばさんたちは、助けてくれ〜!すみません、イタコの研修旅行で来たのですが、怨霊退散!などと言いながら、腰を抜かしたように立ち去って行く。

それを見ていた静江は、イタコにも研修旅行なんてあるの?とあっけにとられる。

ここまで人が来るのね…と驚いたように照江が呟く。

ブリキ板にタイトル その夜の夕食は、冷蔵庫の中の在庫処理に便利な鍋だった。

百合恵が急に、壁にかかっていた鹿の首の剥製を見て、鹿さんの身体は?と聞いて来たので、隣に座っていた仁平が、あの時に鉄砲で撃ったんだ!と昔話を披露するが、その時、口から食べかけていた何かが飛び出したので、それを見た真之は大笑いする。

壁に埋められちゃった!と真之がからかうと、きっと死んでないからと慌てて静江が娘にフォローする。

やがてテレビを点けると、牧場の動物たちにペンションの仕事を手伝わせ、予約でいっぱいになったと言うペンションのオーナー本能浦助吉なる人物の紹介をレポートしていた男(竹中直人)の鼻に虫が入ったのに気付いた照江たちは大喜びするが、照江がチェンネルを変えると、ベテラン女優(竹中直人)が「私のしゃれこうべ〜♩」などと奇妙な歌を歌っていた。

突然TV画面が乱れたと思った次の瞬間、室内が停電する。

雨が降っている夜の庭先では、昼間百合恵が作った金魚の墓の十字架を踏みつぶし誰かが近づいていた。

暗闇の中、懐中電灯で顔の下を照らした正男が食堂にやってきたので、全員怖がるが、その時、電気が回復する。

ポチが鳴き出したので、誰かいる!と照江が緊張する。

入り口に入って来たのは、見知らぬ男だったので、お客様ですね?と声をかけた照江は、何かお飲みになりますか?とバスタオルを腰に巻いた客に聞き、ビールと言われると、明日の朝食は7時から9時まで、チェックアウトは10時ですと説明して二階へ上がらせる。

宿帳には中村一郎(塩田時敏)と書いてあった。

その時、仁平が自分のですがと言いながらパジャマを客に渡す。

二階の部屋に入った中村は、たどり着いたら行き止まり〜♩と1人歌い出す。

バックに土星のイメージが合成される。 その時、真之が、ビールお持ちしましたと声をかけて来たので、ドアを開け、瓶ビールとグラスと肴として添えられた小皿を見て、塩辛?と聞く。

真之が何も答えず帰ろうとすると、ねえ!と呼び止めた中村は、明日人類が滅亡するとしたら?死ぬとしたら今晩何します?と唐突に聞いて来たので、はっ?と真之は戸惑うだけだった。

深夜、静江と一緒にベッドで寝ていた百合恵は、二階から聞こえて来る奇妙な音で目が覚める。

ゴリッ!ゴリッ!と何かを削っているような音だった。

翌朝、正男が客の靴を磨いている中、静江は百合恵を連れて街に出かけて行く。

照江が正男に、お客様、そろそろ起こした方が良いんじゃない?と声をかけて来たので、そうだな…と答えた正男は二階の部屋の前に向かうと、お客様!お食事の用意ができました!と呼びかけるが、中から何の返事もない。

異変に気付いた正男は、照江に鍵を持って来い!と呼びかける。

ドアを開けて中を見た正男と照江、仁平、真之たちは、首を刺して床に倒れていた中村の死体を唖然と見つめる。

お父さん、警察呼ぼう…と照江はおののくが、遺書はないか!と正男が叫ぶ。

よほど無念じゃったんだろうと仁平は気の毒がる。

何で死ぬんだよ…、よりによって俺たちのペンションで!遺書くらい書けよ!何で俺たちのペンションで死ぬんだ!とぼやきながら、室内を物色する。

その時、正男はテーブルの上のメモ帳に何か筆圧が残っているのを発見し、一枚破り取ったメモの上をスタンドの側に持って来ると、急いで鉛筆を走らせ、筆圧の下に何が浮かび上がるのか確認する。

しかし、メモに残っていたのは股を開いた女を描いたエロ落書きだった。

お財布あったんじゃない?と照江が指摘するが、どう探しても見つからないので、室内にいた照江、正男、仁平は一斉に真之の顔を見つめる。

昔から財布集めていただろう?と仁平が言うので、俺が取ったって言うのかよ!と真之が切れると、そうは言っとらんと仁平は言うが、言ってるのと同じじゃん!何でみんな俺を見るんだよ!と真之は不機嫌になる。

その時、真之、ビニールシートと紐を持って来い!と正男が呼びかける。

全員、あっけにとられていると、警察が来て初めての客が自殺したと知れたらその後誰も来ないぞ!これを見て普通の自殺に見えるか?これだぞ!と正男は死体の状態を指差す。

真之がビニールシートを持ち、正男と仁平がスコップを持って近くの池の側に死体を埋めに行く。

ペンションに1人残った照江は踊っていた。

穴を掘り終えた正男は、これしかないんだ!みんなの為なんだ!と力説しながら、何故か自分が穴の中に転げ落ちてしまったので、お前が入ってどうする!と仁平が突っ込む。

そんな父と祖父の態度に呆れた真之は先に帰って行く。

桜の花が咲いている情景 1人になると思い出す〜恋をしたあの頃〜♩と街の喫茶店に来た静江は歌っていた。

ストップモーションになっているダンスする人々の間に入り込んだ静江は、恋の魔法をかけて下さい〜♩と歌い続ける。

そこにやって来た白い海軍服を着た男性に気付いた静江は、そっと百合恵がパフェを食べているテーブルで、二階席に座った軍服姿の男に目をやる。

軍服姿の男はちらり、静江の方を振り返ると、持っていたスケッチブックに何かを書く。

静江はボーイが持って来た紙飛行機を受け取ると、そっと広げてみせる。

「l love you 虫」と手塚治虫風のサインがしてあった。

軍服姿のリチャード佐川(忌野清志郎)が歌い出したので、静江も踊り出す。

(イメージ)教会の中で結婚式を挙げていた静江の前に飛び込んで来たリチャードは、「卒業」のラストシーンのようにウェディングドレス姿の静江を外に連れ出して行く。

リチャードはいきなり宙づりになり空中で踊っていたが、急に銃声が響き、撃たれたようにリチャードはがっくりした状態で地上に降りて来る。

そんなリチャードに静江がキスをすると、リチャードは生き返り、2人は鼻のいらすの中に埋もれる。

(現実)パフェを食べ続けている百合恵の前で、静江は床に転がって、まだ夢の中に浸っていた。

ハローとリチャードが声を掛けると正気付いた静江は、軍人さんですか?と聞く。

アメリカの海軍です、正確に言うとイギリスですね、お父さんは日本人でしたとリチャードは自己紹介する。

ちょっと息抜きに来ました、ユア ハズバンドがうらやましいですなどとリチャードがお世辞を言って来たので、独身ですと静江は恥ずかしそうに答えるが、階段に座っていた百合恵は無表情に、女子高生と浮気したんで…と父親がいない事を説明する。

実はイギリスの情報部員と突然言い出したリチャードは、連絡のため携帯を教えて下さい頼むが、携帯が届かない場所なんです、私、片栗静江と言いますと自己紹介すると、リチャードもようやく名乗る。

夜、1人酒を飲んでいた正男は、カーテンの背後のベランダ部分に人影を見つけ、それが死んだ中村と気づくと怯えるが、それは幻覚だった。

冷蔵庫に氷を取りに行った正男は、冷蔵庫の中に目を見開いた中村の死体の幻影を見て仰天する。 目覚めた正男は、隣のベッドで寝穢く寝ている照江の姿を見て興ざめする。

その後、又数日、誰も訪れない日が続いた。

誰もその事に触れなかった(と百合恵の独白) そんなペンションにやって来たのは関取と若い娘のカップルだった。

ある夕食時、仁平は大量の納豆をかき混ぜていた。 そして、ざるそばを食べ始めるが、全く正男が手を付けようとしないので、お父さんも少し食べないと…、食べて元気出さないと幸せになりませんよと照江が言い聞かせる。

仁平は側で納豆を食べていた犬のポチに蕎麦を食べさせようとし、これが分かるか?と家族たちに聞くので、ワンコソバ!と真之は答える。

照江が意味が分からないようなので、仁平は、犬は何と鳴く?とヒントを出し、ワン!あ、そうか!と照江は喜ぶが、そんな明るい家族たちの中、意気消沈していた正男は、ごちそうさま…と言うと1人立ち上がりテーブルを離れる。

その直後、関取と若い娘のカップルがペンションにやってきたので、真之は有名人さんよと興奮気味に教えると、照江も、この前、スポーツ選手歌合戦に出てたよねと喜ぶ。

その後、沈み込んでいる正男の側に行った照江は、お父さん、疑っているんですか?と声を掛けると、お前こそ…、最後にビールを持って行ったのはあいつだし、あいつ何度裏切って来たと思う?と真之の過去の不始末の事を正男は指摘する。

財布がなかったんだ、今警察が来て、奴の過去が分かったら…と正男が案じると、でもあの子、ねは正直よと照江はフォローする。

その真之は、ペンションの外側に梯子をかけ、二階の窓から、関取が泊まっている部屋の中を覗き込む。

部屋の中ではベッドの上で、関取が娘を下にセックスの最中だった。

二階の振動を聞きながら、照江は勘当だって言ったのに…と言うと、当たり前じゃないか、一人息子が帰って来たら優しく迎えるものだろうと正男は答える。

その時、真之の梯子は外のベランダから離れ、真之は地上に落下する。

ベッドの上の関取はいきなり気を失う。 下では突然電話がかかって来たので、照江が出ると、ハローって?…と戸惑いながら正男を目で呼ぶ。

電話を代わった正男は、聞き取りにくいんですが?と聞き返し、静江ですか?と言うと、蕎麦で様子を伺っていた静江が受話器を受け取り、あっち行って!と両親を追い払う。

リチャード!と静江は喜ぶが、電話の向こうでは飛行機の中のような音が聞こえ、今、イラク上空です、横田吉を経由してかけています。

アイラブユー!などと話しかけていたリチャードは、畳敷きの和室から、飛行機の擬音をテープで流しながらランニングシャツ一枚で電話をしていた。 翌日、1人の駐在が自転車でペンションに近づいていた。

ペンションの二階の客室では、又朝になって発見したベッドの上にうつぶせになっていた関取の全裸遺体を前に、照江が、こうして見ると余計に大きく見えるわね〜と感心していた。

あの女の子は?と聞かれた静江は、いないみたいねと部屋の中を見渡し答え、警察に電話しないと…と狼狽していると、また正男が、ビニールシートと紐持って来いと真之に命じる。

真之は、やっぱ警察呼ぼうよ、もう無理だよと真之は抵抗するが、関取の身体のサイズを測っていた仁平が、廊下から無理だからこっから出すか?とベランダの窓を見、斬る?と照江も平然と答えたので、止めよう!みんな分かっちゃうよと真之はビビる。

しかし正男は、言う通りにしろ!みんなでこのペンションを守らなきゃいかないんだ!こんな事でダメにできる思うか!と厳しい表情で命じる。

こんな所に連れて来て!と照江が文句を言うと、俺、紐付けて連れて来た訳じゃねいだろう!と正男は反論する。

2階の202号室では、仁平が関取の身体の寸法を測っていた。

その時、関取の身体を観察していた仁平が生まれてる!と言い出したので、家族は何事かと近づいて来る。

仁平が関取の身体を仰向けにしようとすると、関取の腹の下に驚いたような表情の女の死体が埋もれていた。

良い加減にしろ!と正男が切れたとき、下の玄関にやって来たのが駐在だった。

駐在の三宅(森下能幸)と申しますと丁寧に挨拶してきたので、照江も、こんな遠い所にようこそと無理矢理笑顔で迎える。

家族構成をこちらに…と言いながら養子を出して来たので、静江が代表して書き込む事にするが、その間、横で見ている三宅に、何度か静江は、あの〜…と打ち明けそうになるので、照江が近づいて来てこの子、難産だったの…と言いながら静江の頭をなでながらその場をごまかす。

その時、二階で物音が聞こえたので、階段部分にいたに兵が、生まれた!と言い、お客さん、何人くらい来ました?と三宅は興味本位で聞き、失礼な事聞いちゃったかな…とフォローするので、ぼちぼちです…と正男も笑顔でごまかす。

三宅は、指名手配のポスターですと言いながら取り出すが、そこには死んだ中村の写真とリチャード佐川の写真が載っていたが、家族構成を書いていた静江は気付かなかった。

駐在が帰って行った後、正男はそれとなく真之の顔を見る。

その後、正男と真之は、二階の窓から下でビニールシートを敷いて待っている仁平の元へ、ロープに縛った関取の身体をゆっくり降ろそうとしていたが、部屋の中で見ていた照江が、壊れ物じゃないんだから…と声をかけると、急に力を緩め、関取の身体をいきなり下に落したので、仁平は可哀想だよと二階の息子たちの方へ呆れたように声をかける。

静江は、関取の死体を埋めて帰って来た泥だらけの正男、真之、仁平、照江らを出迎える。

その時、すみません、ペンションの方ですか?ケーキか何かありますか?食べ物あります?と数人の客らが声をかけて来たので、普通の人だよ!と指差して正男は喜ぶ。

仁平がチーズケーキを切り分け、静江や照江がそれをテラスに座った客たちに持って行く。

それを庭先から見ていた正男は、このリラの下で笑って眠って、みんなで暮らそうと思ったんだ♩と歌う。

真之はちょっとすねていた。 そんなペンションの背後にそびえる火山の頂上から少し噴煙が立ち上っていた。

ペンションで電話に出ていた正男は、そうですか…、ありがとうございました…、池の近く?待っていただけにとてもうれしいですと返事していた。

その池の側にやって来たのがリチャード佐川だった。 何事かと近づいて来た照江に、道路工事、西の方から池の方に掘り起こして来るって…と正男が電話の内容を教えると、じゃあ、あれ、移さなきゃ…と照江はこともなげに言う。

池の水を飲んで顔を洗うリチャード佐川。

「しゃれこうべ〜♩」と歌うベテラン女優の映像

その後、ペンションにリチャード佐川がやって来たので、家族全員あっけにとられる。

静江!毎日静江の事を考えていたよ!どうしてたのか?とリチャードが言うので、毎日電話してました…と答えた静江は、お帰りなさい、ご無事で何よりでしたとねぎらい招き入れると、何か飲みたいもの、食べたいものがありますか?と聞く。

すると、二階へ上がりかけたリチャードは、片足を手すりの上に乗せたきざなポーズで、静江が食べたいと答えたので、静江はその場に失神する。

腹を壊したのか、ピーピー音をさせながら二階に客室に入ったリチャードは、消毒臭えな…などと不焼きながらも、灰皿をそっと上着のポケットの中にねじ込む。

しかし、腹の調子はさらに悪化し、ベッドに倒れ込んでもがき苦しみながら壁の方へベッドからずり落ちたリチャードだったが、起き上がった時には財布を握っていた。

中村がベッドと壁の隙間に落していた財布だったが、中味を確かめ、2212円は言っている事を知ると、ラッキー!と喜ぶ。 夜のペンションの庭先のブランコに座っていた静江は、星空の中、流れ星を見ていた。

そこにやって来たリチャードは、静江の横に腰掛け、シャンプーの後、髪を斬ってみた…、ちょっと失敗したかもしれませんなどと言い訳するが、そんな2人の様子を物陰から仁平がじっと監視していた。

ペンションの受付近くにあった模型を使った周辺地図に、埋めた所に印付けときゃ良かったんだと言いながら、正男は小さな十字架を付け加えようとしていた。

しかし、それを聞いた照江は、そこに付けると丸見えだから、ここ通る人、みんな見るのよと指摘する。

それでも正男は、地図の池の側にここら辺りだったよね?と言いながら十字架を置くと、この辺じゃない?と照江がダメ出しをする。

道路通っちゃうよ!と正男が焦ると、良かったら皆さんもご一緒にと言いながら、二階への階段の途中に立った照江は赤いスカーフを頭に巻く。

スクリーンの下にカラオケ文字が写り、正男と照江はデュエットを始める。

2人の回想シーンで復員兵姿の正男は「勝手にしやがれ」でお馴染みの壁塗りポーズを取る。

曲の2番になると、靴磨きをしていた正男の姿に惚れた女子社員時代の照代の姿が現れる。 歌い終わった正男は、埋め代えなくちゃな…と呟く。

夜の外を散歩していた静江が、お仕事大変なんですねとねぎらうと、あなたに入ってなかったが、エリザベス女王の一番下の妹が私の母親だったんです、でも異母兄弟だったんで公表されていません、面倒なんです王室は…とリチャードがとんでもないホラを吹くが、静江は、まあ王室!と真に受けてしまう。

小さい頃、エリザベスおばさんに抱いてもらった事があります。

ダイアナは可哀想な事をしました。 よく電話で相談を受けていました。

チャールズにも良く言っていました、かみさん大事にしなくちゃダメだって! パパラッチ許せない! 母は留学で日本に来たとき、パパと会い恋に落ちました…とわざとらしい片言日本語で説明するリチャードは、側にあったコカコーラの宣伝が描かれたベンチに静江を座らせる。

パパは帝国大の学生でした。

絵描きになりたかったんですが、医者の息子だから当大に入れられました。

僕も絵描きになりたかったので、静江、今度静江を描きたい!と言いながらベンチから立ち上がったリチャードは歌い出す。

静江と一緒にパリに言って絵描きになりたい。

エリザベスおばさんにも紹介したい。

でも任務以外に使えるお金がないです。 お金を取りに戻りますから、飛行機代貸してくれますか?などと突然金を無心し始めたリチャードの様子を隠れて監視していた仁平は、いよいよ本性を出しやがったな!と睨みつける。

リチャードは又突然宙づりになる。

きれいな星ですねと静江はロマンチックな気分になるが、気付くとリチャードが鼻血を出している。

リチャードは鼻の穴にティッシュを詰めて、興奮してるんじゃなくて、外国人は血の気が多いから〜などと意味不明の好い訳を歌う。

そんなリチャードの背後に近づいた仁平は薪でリチャードの後頭部を殴りつけるが、倒れるとき、リチャードの軍服のポケットからペンションの灰皿が転がり落ちる。

しかし、気絶したと思ったリチャードがあっさり起き上がったので、驚いた仁平は、これ上げるって…と言いながら灰皿を差し出しながら後ずさる。

祖父のピンチを察知した静江は回し蹴りでリチャードの足を蹴飛ばすと、リチャードと仁平は組み合ったまま崖から落下する。

(人形になった仁平とリチャードが、模型の崖にぶら下がった綱にしがみついているのを崖の上から人形になった静江が見下ろす)

上にいたリチャードが仁平を蹴落とそうとしていたが、その時、静江の足下にあった大きめの石が転がり落ち、リチャードの頭部に激突、リチャード人形はそのまま谷底に落下して行く。

静江、2人きりの秘密!と仁平が呟き、翌日、仁平、正男、真之の3人は、又池の側に穴を掘りに向かう。

ペンションに残っていた静江は照江に、男ってバカばかり…と嘲る。

お母さん、何でお父さんと結婚したの?と菊地尾、初めてうちに泊まったとき、あの人、靴磨いてたのよ、ランニング一枚で、それ見たら、この人の為に美味しいものたくさん食べさせようって思ったのね…と照江は答える。

男って作った物何でも食べそうですものね…と静江は同意する。

その時、突然、入り口から入って来たのは、顔は大きく崩れていたが、死んだと思っていたリチャードだった。

受付の受話器を奪い取って倒れたリチャードは、ボタンを押すと、かおる!ゆうこ!みゆき…などとそれまで騙して来た女の名を呼び詫び始める。

そんなリチャードに近づいた静江が、私の事覚えてる?と聞くと、し…、し…と指差し、名前を思い出そうとしたリチャードは、清水よう子!と答え息絶える。

死んだ?今度はどうしたの?役者さん?と照江が唖然とする中、奥から出て来た仁平は、リチャードが右手に握りしめていたティッシュを確認すると、駅前で配っている風俗のティッシュじゃないか!皇室の人間がこんなものを持ってるはずがない!と指摘し、軍服の裏には「松竹衣装」の文字が入っている事を証明する。

それを目の当たりにした静江は、外人じゃないの?…と呆然とする。

その時、照江が、リチャードが隠し持っていた財布に気づき、お父さん!と正男を呼ぶ。

それに気付いた真之は、ほら、俺じゃなかっただろう?と親たちを責める。

この野郎、うちの灰皿を盗みやがった!せっかく谷間に落したのに!と仁平は悔しがる。

雷雨の中、又、仁平、正男、真之の3人は死体を埋めに行く。

その頃、駐在の三宅は、幼い我が子をだっこしながら電話を受け、死体!と驚いていた。

雷雨の夜、テレビもアンテナの調子が悪いのか映りが悪かった。 そんな中、縦笛の音が聞こえて来たので、一家は緊張する。

お客様?と照江が耳を澄ますと、正男は、今度は何だよ〜と怯える。

入り口に入って来たのは、貧しそうな両親に、縦笛を吹く長女と咳き込んでいる男の子の4人家族で、お部屋ありますか?と言うので、2部屋お使いになりますか?と正男が聞くと、1番安いの1つ…と貧しそうな旦那(有薗芳記)が頼む。

二階へ上がる途中、何か嫌な予感しない?と静江が呟くと、二階で振り返った妻が、あの〜、丈夫な紐があったら頂戴したいんですが?必要なんです、あったら是非…と暗い表情で言い、長女が又縦笛を吹き始めたので、案内役の照江が、ちょっと探してお持ちしますと答える。

家族の姿が見えなくなると、下から見ていた仁平が、覚悟していた方が良いかもなと言う。

翌朝、真之と2人で大きな穴を掘っていた仁平は、腰を痛めて倒れ込んでいた。

その時、どこからともなく縦笛の音が聞こえて来たので、おい、何か聞こえるぞと仁平が真之に言う。

そこにいたのは昨夜泊まった4人家族で、仁平たちに頭を下げてくる。

見ると、下の男の子のズボンのベルト代わりに紐を使っている。

あの〜、何の穴ですか?と旦那の方が聞いて来たので、生ゴミを捨てるために…と仁平はごまかす。

ご苦労様ですと妻が頭を下げ、旦那の方がお世話になりましたと礼を言って立ち去って行く。

呆然として見送る仁平たちだったが、その時、何だ!と叫び声がして、誰かが今掘った穴に落ちた気配に気付く。

見下ろすと、貧しい四人家族を埋めるつもりで入れておいた花束の下で見知らぬ男が穴の底で気を失っていたので、仁平はいきなりスコップで土を掛け出す。

それを見た真之が、埋める方向かよ!と突っ込む。

穴の底でかすかに動いた男は身体の上にあった花束を掴む。

その後、池の側にポチと遊びに来ていた百合恵は、木の枝で地面をつんつん突く遊びをしていたが、その時、ポチが急に埋まり出し、ある場所に走り寄る。

そこには人間の手が突き出していた。 パトカーが二台接近して来る。 池の側では埋めておいた死体が雨で土が流れ出し露出していた。

ペンションの外では、怖じけずに行こう!と家族全員で歌い踊っていた。 蘇った死体たちも一緒に踊り出す。

百合恵も一緒に歌う。

人間なんてちっぽけな寂しがり屋だ!♩ その時、又地響きが起こり、山の方から大量のカラスの群れが飛び立つ。

ペンションのベッドで目覚めた男、工藤(遠藤憲一)は、自分が花束を握りしめている事に気付き、何だこ?と放り投げると、パトカーのサイレンが近づいて来たことに気付き、窓から逃げ出そうとする。

そこへスコップを持った家族全員が戻って来て、工藤に気付いた照江は明るくお早うございます!と挨拶する。

工藤はお早うございます!と返事をしながら、又窓から部屋の中に戻ったので、何?と正男はいぶかしがる。

そこへパトカーが2台到着して、刑事らしき男と駐在の三宅が降り立ったので、正男は、バレた?と立ち尽くす。

ペンションのキッチンに入り込んだ工藤は包丁を掴んでいた。

その時、又地響きが起きたので、照江、見て来てくれと正男はペンションの中の事を頼む。

事件が発覚したと悟った仁平は、正男…と呼びかけると、持っていたスコップを捨て、わしが行こう…と申し出る。

何言ってるんだよ!と正男が答えると、わしが全部やったんじゃ!と仁平が言い張るので、お父さん!と正男は止めるが、お前がいれば何とかなる。

一度戦争で捨てた命じゃなどと仁平は言う。

真之が僕が行くよと申し出ると、真之、良く言った!それでこそ日本男児じゃ!運を使い果たした俺が行くんじゃと仁平は言い聞かせる。

正男は、そんな仁平に、間違っていたのは俺なんだ〜!と呼びかけるが、そんな事はないよと仁平は否定する。

何が幸せか、この年になるまで1つだけ分かった。

回りのものを悲しませるような死に方はいかん!良く生きていたと言われるような死に方をするんだ。

いかに死ぬと言う事はいかに生きるかと言う事なんだ… 心配するな、髪は愚か者の味方だ…と言い聞かし、近づいて来た刑事たちの前に進み出た仁平は両手を前に差し出し、手錠を受ける覚悟で頭を垂れる。

こちら県警の刑事さんと連れて来た2人を紹介した三宅は、片栗さん、殺人事件なんですと語りかけ、手を前に差し出した仁平を無視して、ペンション「お花畑」で女が殺されたんです。

最近おかしな客はありませんでしたか?宿帳見せていただけませんか?と聞きながら、正男たちの方へ近づいて来る。

無視されたままの仁平は、道の横の斜面に倒れ込むが、アホ〜となきながら飛んで行くカラスに気付くと、薪を投げつけ命中させる。

その時、ペンションの入り口から、照江を羽交い締めにし包丁を突きつけた工藤が出て来る。

刑事たちは緊張し、「お花畑」の女をやったのはお前だな?と呼びかけるが、信子!と工藤が世間だので、何でそんな事をしたんです?許せない事したんでしょうけど、助かる人だったんでしょう?と正男が呼びかける。

俺と信子が…、信子〜!ごめんね〜!と工藤は殺した女をお思い出したのか絶叫する。

あんたさ、信子さんの事愛してたんだろう?俺もね、照江の事を愛しているんだよ!あんたの気持も分かるけど、俺の気持も分かるだろう?だから帰してくれ!と正男は及び腰で呼びかける。

今あんたがこうしている相手はあんたのじゃない、私の大事な家族なんだ!とp正男は訴えるが、うるせえ!と工藤が怒鳴り帰して来たので、代わりに私を連れて行ってくれ、頼む!お願いでしゅ…と正男はしどろもどろになりながらも訴え泣き出す。

手前は!と叫びながら照江を放した工藤が包丁を持って突きかかって来る。 硬直した正男は、横で倒れた真之の姿に愕然とする。

かけがえのない私たちの息子!と呼びかけながら照江と正男が倒れた真之の側に駆け寄る。

父さん、ごめんな…、良い息子じゃなくて…、でも俺、父さんの息子で良かった… 痛いよ…、姉ちゃんも、結構良い女なんだから…と同じく駆け寄って来た静江に告げた真之は力なく首を地面に落とす。

死ぬなよ!と身体を抱いた正男は、真之のセーターをめくり腹の傷口を見ると、これだけか?とその傷の小ささに驚く。

家族全員、その正男がこれだけと指で示した感覚を真似する中、気まずくなった正男は黙って起き上がる。

同じように傷口の長さを指で示していた仁平は苦笑する。

その時、ペンションの背後野山が大噴火を起こし、溶岩が流れて来る。

一旦は刑事たちに捕まっていた工藤も、その混乱に乗じて逃げ出す。

(家族全員人形アニメに変化する中、仁平だけ実写のままでと惑う)ポチを探せ!と命じた正男は、ポチが丸太に乗って溶岩と共に流されているのに気付くと、鉄棒に足を引っかけ、逆さまの状態で近づいて来るポチをキャッチする。

みんな!離れるんじゃないぞ!と声をかけた正男に応じるように、家族全員手を繋ぎ輪になる。

何これ?と驚く静江。 外向きに輪になった片栗一家は、その状態でペンションを持ち上げ溶岩の波に乗る。

その間、仁平の魂が口から飛び出しかかる。

人生なんてこんなものさ…と嘆いちゃいけない。

人生何が起きても不思議じゃない…とおじいちゃんが言ってた。(と百合恵の独白)

人間は何千年もたくましく生きて来たんだろう。

お父さん!と呼びかける照江、静江、真之の目の前で、倒れていた正男は目を開ける。

助かった?良かった…と安堵しながら立ち上がった正男は、あ、ポチ!と犬を発見した百合恵の声を聞きながら、目の前にあったペンションを発見する。

地面ごと溶岩に流され、今や草原の真ん中に立っていた。

ちょっとこっちも見ろ!と仁平が言うので、背後を見渡すと、そこは「サウンド・オブ・ミュージック」に出て来るアルプスのような美しい景色の場所だった。

正男は、さあ行こう!♩と家族みんなと歌い出す。

手錠をかけられた工藤や刑事たちも溶岩の下に埋まった状態でリズムを取る。

片栗家が歌い踊る空には虹が出ていた。

明くる年、仁平爺ちゃんはぽっくり死んだ。

人間なんて、自然の中のたった1つの生物かも知れないが、やがて自然に淘汰される運命かも知れないが、人間はたくましくいつまでも生きて行く。

それが人生だ。

仁平は、笑った百合恵の顔を見てにっこり微笑むと、光になって空に飛び立って行く。

それを見上げた正男たち家族は、みんな一斉に笑顔でイエ〜イ!とサムズアップする。
 


 

 

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