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幻想館

 

顔役と爆弾娘

パンチ(団令子)、センチ(重山規子)、ピンチ(中島そのみ)の「お姐ちゃんシリーズ」で知られる中島そのみさん主演の下町音楽コメディ。

明るく元気一杯で威勢が良いそのみさんの痛快キャラと、パンチのあるアニメ声のような歌が随所で楽しめる。

その中でも注目したいのは「南の島のお話」と言う曲を歌うシーンで、この曲は「キングコング対ゴジラ」(1962)で、ファロ島に上陸した高島忠夫さんが原住民に見せたトランジスタラジオから流れて来た曲である。

パパはルンバで、ママはマンボで、その子がコンガにちびボンゴ♩と言う子供向けのような明るい曲は今聞いても楽しい。

そのみさんのお相手役がダンディな三橋達也さんと云うのも珍しい組み合せのような気がする。

そのみさんの弟役は「ウルトラQ」の一平くん(西条康彦)で、お父さん役は沢村いき雄さん。

中丸忠雄さん、中村伸郎さん、高田稔さんなど、東宝特撮でもお馴染みの面々が登場している。

上野や浅草界隈が舞台になっているように見える下町コメディで、おしゃべりも流暢な都家かつ江さんや一の宮あつ子さん演じる嫌な上流階級の奥さんも見物。

斎藤寅次郎監督、柳家金語楼主演の「爆笑水戸黄門漫遊記」の併映らしい。

いかにも低予算のモノクロ作品ながら、楽しい添え物映画になっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1959年、東宝、若尾徳平脚本、筧正典監督作品。

「日本クラリオンレコード、東宝スタジオ」で待っていた音楽の先生(中村哲)の前に駆け込んで来たチャコこと小島久子(中島そのみ)は、先生、すみません、喫茶店で野球を聞いていたら、9回裏で延長、又延長で…と遅れて来た言い訳を始めるが、良いから早く中へと先生が急かすと、急にしゃっくりを始め、ごめんなさい、私緊張しちゃうとしゃっくりが出るんです、脅かして下さいと言い出す。

何とかスタジオ内で歌のテストを始めたチャコだったが、歌っている途中で又しゃっくりが出始め、歌は台無しになってしまう。

自宅のある商店街に帰って来たチャコに、姉ちゃん、どうだった?テスト!と声をかけて来たのは、弟の信吉(西条康彦)と悪友の近藤(三浦敏男)だった。

ダメだったわとチャコが打ち明けると、小遣いをくれと言い出した信吉は、くれないと、歌を習っている事を親父にバラすからと脅して来たので、やむなく小遣いを渡し、信ちゃん、変な遊びするんじゃないわよ、お酒飲んだらダメだよとチャコは注意する。

下駄屋の小島屋では、客(塩沢とき)が履物屋にサンダルはないの?と聞いて来たので、主人の小島金之助(沢村いき雄)は、サンダルは便所で履くものですよ!うちは下駄屋ですから、そんなものは置いてありませんなどとつっけんどんな返事をする。

ふと金之助が目を開けると、そこにいたのは客ではなく帰ってきたチャコで、サンダル置けば良いじゃない!と呆れたように注意して来る。

どこ行ってたんだと聞かれたチャコは、お花のお稽古よと嘘をつくが、お花の稽古に洋服で行くか?その靴はいつ買ったんだ!などと金之助はめざとくチャコの履いていた真新しい靴に気づき聞いて来る。

又、吉川の店で買ったんだろう、困った奴だ!と金之助が睨むと、おばさんが後払いで良いからって…とチャコは言い訳するが、大体、靴屋が町内会の会長になったのが気に食わない、返して来い!と金之助は無茶を言い出す。

その靴屋の吉川の店では、女将の富子(都家かつ江)が、幸田組の太田健二(三橋達也)から、いくらだい?と商品の靴の値段を聞かれ、5000円で結構なんですけど…ともじもじしながら答えると、健二が金を払ったので包装を始めようとすると、何故か健二は品物も受け取らず店から出て行ってしまい、そこにチャコがやって来たので、今、コンビの靴の人見なかったかい?と聞く。

チャコは急いで店を飛び出すと、角を曲がりかけていた健二に追いつき、その腕を取ると、兄ちゃん!ちょいと待ちな!あんた、今、そこの靴屋にいた奴だろう?と因縁を吹っかけ、やって来た富子に、おばさん、捕まえたよ!と言う。

すると富子は慌て、お客さんに何言ってるのよ!とチャコを叱り、靴を渡そうとするが、もうそんな古い靴は履く気がしねえから処分してくれと言い、その場を立ち去って行く。

あっけにとられてその後ろ姿を見送っていたチャコに、あれはミサイルのケンって言うヤクザなんだよと富子は教える。

店に戻って来た富子は、チャコが持って来た靴を見てサイズ合わなかったのかい?と聞くので、親父が返して来いって…、私が洋服を着るの嫌いなのよ…とチャコが言い訳すると、返してもらうのは良いけど、一度履いた物は売り物にならないよと富子が困った風に言うので、おばさんの所に置いといて、時々借りに来るわなどとチャコは言う。

そこに、富子の息子の光雄(瀬木俊一)が着流し姿で出て来て、僕も出かけるから一緒に行こうとチャコに声をかけて来る。

そんな息子の様子を見た富子は、良い息子が、そんなぞろっとした格好しているなんて…、洋服着ていきな!と文句を言い出したので、うちの親父と同じ事言ってる!とチャコがからかうと、私は近代感覚があるんだよ、現代的センスの事よ!などと富子は言い返して来る。

又来ます!と言い残しチャコが出て行くと、入れ違うように帰ってきたのが、富子の亭主の卓造(藤原釜足)で、警察に行ったら出来るだけはやるって…などと煮え切らないことを言うので、私たち真面目な商売人を誰がも守ってくれるのよ!それじゃ今までと同じじゃない!と富子は呆れる。

近くの広場に来た光雄は何の用?と聞くチャコに、分かってるくせに…、前から君が…と告りかけていたが、その時チャコは、目の前で愚連隊から囲まれていたカップルを見つけ、ちょっとあんたたち!何やってるのよ!と愚連隊に声をかける。

お前の出る幕じゃねえ!と愚連隊は反抗して来るが、あんたたち、弱い物虐めしてるじゃない!とチャコが叱ると、車に撥ねられたんだよ!と言うのので、因縁をつけられていたカップルの女性、佐山玲子(柳川慶子)が、自分たちの方から飛び込んで来たくせに、それにすぐに車を停めたから怪我なんかしてないはずよ!と文句を言って来る。

撥ねられたのは誰よ?とチャコが聞き、名乗り出た愚連隊の若者の足を触りながら、どこも怪我してないじゃない!と指摘する。

すると愚連隊連中は、神経をやられたらしいんだなどと屁理屈を言って来たので、あんた小さい頃、飴買ってやったじゃない!などとチャコが昔話をすると、今日は付いてねえよとぼやきながら愚連隊連中は帰って行く。

玲子は、酷いあんな連中、警察に突き出せば良いのに!などと不満顔だったが、一緒に脅されていた花岡康彦(籏持貴佐夫)の方は、素直にチャコに助けてもらった礼を言う。

チャコは光雄を探すが、気がつくと、近くの気によじ上って降りられないと言う。

見ると、木の根元に光雄が苦手が猫がいる事が分かったのでチャコは呆れる。

キャバレー「ロカンボ(Rockambo)」では「サリー月村」の看板が表に出ており、ステージでは正にサリー月村(上条美佐保)が歌っていた。

そんな店内でビールを飲んでいたのが、近藤に誘われた信吉で、あんたたち高校生じゃないの?とホステスから年を聞かれると、近藤は23、信吉は22だとごまかすが、ホステスたちは、どう見ても17〜8よねと話し合う。 ステージを終え、支配人室にいた健二の元にやって来たサリーは、ケンちゃん、どうして夕べ来なかったの?と甘えかかるので、俺は行くとは言わなかったぜと健二は冷たく言い返す。

サリーさん、俺は浮気の相手はご免です、刑務所にいる社長の事を思ったら、そんなさかりのついた猫みたいなことは出来ないはずだと言い聞かせるが、今夜来て!とサリーがしつこいので、俺には惚れて惚れ抜いた女がいるんだ。あんたの知らない堅気の娘だよ、とにかく、部屋に帰って次のステージの支度でもするんですねと言って健二はサリーを追い返す。

町内会のおでん屋「蛸忠」に幸田組のチンピラ2人が入って来てすぐに帰って行ったので、女将おふく(中野トシ子)と主人(宮田羊容)は、バレたのかと思った…と互いに顔を見合わせる。

そこにチャコがやって来て信吉来ていない?と聞くので、来てないけど、友達が悪いよ、近藤とか言う…とおふくが言うと、信吉来てもお酒飲ませないでねとチャコは頼む。

うちじゃ未成年に酒は飲ませないよと忠助は言い、おふくはチャコに頼まれ、娘の君子を呼ぶ。

待っている間、何か食べるかい?と忠助に聞かれたチャコは、こぶにこんにゃくにダイコンにスジにバクダン…などと大量に注文したので忠助は呆れる。

奥から出て来た君子に、最近、信吉、毎日学校に来てる?と聞いたチャコは、うんと答えた君子に、かばっているんじゃない?時々さぼってるのね?帰ってきたらとっちめてやらなくちゃ!などと1人で興奮し出したので、私が言ったなんて言わないでねと君子は懇願する。

さらに山盛りのおでんを渡そうとした忠助に、持って帰るから包んでとチャコが言い出したので驚く。

キャバレー「ロカンボ」では、近藤たちが金を持ってない事が分かり、幸田組の五十嵐(中丸忠雄)が店に出て来て、ちょっと来てくれと近藤と信吉を外へ誘う。

ドラム缶が置いてある空き地に連れて来られた信吉と近藤は、幸田組の子分たちから殴られる。

小島屋に帰宅したチャコは、晩酌を始めていた金之助に、お酒の肴にならないかしら?私が作ったのと嘘を言って、もらって来た「蛸忠」のおでんを出す。

すると金之助は、久子は料理ダメだと思ってたなどと喜び、おでんを口にすると旨いと褒める。

「蛸忠」とどっちが美味しい?とチャコが聞くと、あんな店の者、口に合わないでしょう!などと言いながら、金之助はおでんをぱくつく。

そこに信吉がそっと帰ってきたので、今自分までどこほっつき歩いていたんだ!と金之助は説教しようとするが、私が言い聞かせるからとなだめたチャコが、二階へ上がって行った信吉の部屋に言って電気を点ける。

すると、顔に痣の後も生々しい信吉がいたので、どうしたのよ!とチャコが驚くと、信吉はチャコにすがりついてさめざめと泣き出す。

すぐに、幸田組事務所へ向かったチャコは、マネージャーいる?とそこにいたチンピラたちに聞くと、女給の志願に来たんじゃねえのか?そんなおかめがくしゃみしたみたいな顔じゃあな…などとからかわれるが、自分で探す!と言いながら、勝手に支配人室へ入る。

そこにいたのは健二だったので、あんたここの?とチャコは驚くが、良いから入んなと健二が招き入れると、突然、おひけえなすって!とチャコは仁義を切り出す。

一方、サリーの部屋に、次のステージがそろそろだとボーイが呼びに来るがいない事に気付く。

チャコは健二に、弟を殴る事ないじゃない、止めて!あんたたちなんて、世の中の役に立つ事何一つ出来ないくせに!と訴えると、その勢いに驚いた健二は、弟さんの事は誰がやったが知らないが勘弁してくれと詫びる。

それを聞いたチャコは、あんた、ヤクザにしては立派ねと感心する。

そこに五十嵐がやって来て、兄貴!サリーさんがいねえんです、荷物もない所を見ると帰ったらしいと報告する。

それを聞いた健二は、お客さんに断って、次のステージは中止にしようと答えるが、それを聞いていたチャコは、私が歌うわと言い出す。

うちは素人歌合戦じゃないんだと健二は言い聞かせようとするが、良いわよ、勝手に歌うからなどと言い出し、ステージに出て行ったチャコは、楽団の演奏を前に「南の島のお話」を歌い出す。

舞台袖で見ていた健二は、最初は呆れていたが、以外とチャコの歌の評判が良いのでそのまま歌わせる事にする。

2曲目の「パイナップル♩」と歌い出したチャコは、又緊張のせいでしゃっくりを始める。

その頃、小島屋に手みやげ持参でやって来た富子は、話があると切り出すが、金之助がつんけんした態度なので、チャコちゃんの事なんだけど、光雄の所に来て欲しいって、うちとお宅とでは釣り合いが取れない事は分かってるんですけど、光雄がどうして持って言うので…、私もチャコちゃんなら悪くないと思うし、トンビが鷹を生んだっていうか、こんな親からあんな気だての良い子が生まれるなんて珍しいよ。式の日取りについてなんだけど…と一方的に話を進めようとするので、ちょっと待ってくれ、この小島屋は江戸時代から続いているんだ、その娘を靴屋の嫁なんかに行かせられるか!と金之助は言い出す。

そんな金之助に、こう云うのを玉の輿って言うんだよと富子が言うと、今に立派な玉の輿に乗せてやるから驚くな!と金之助は見栄を張る。

そこへ高級車が店の前に横付けし、執事風の男(森川信)が金之助に名前を確認して近づくと、花岡産業の社長晴久の使いの者と自己紹介すると、実は先日令息の康彦様が愚連隊に尾剃られていた所をこちらのお嬢様に助けていただきましてと言い出す。

その康彦様がこちらのお嬢様に一目惚れなさいましてな、結婚なさりたいとご両親に相談、ところがこちらのお嬢様の住所が分かりません、色々探した結果分かりまして、今日うかがいました訳で…、行儀見習いと言う事でお嬢様をお預け願え舞えんでしょうか?と執事は願いで、運転手が持っていた寸志を手渡すと帰って行く。 金之助は店に残って話を聞いていた富子に、見たか?これが玉の輿って言うんだと自慢すると、乗り手が悪いと落ちる事もあるさと富子が嫌みを言って来る。

この日の為に、日頃から久子にはお茶やお花を習わせていたんだと金之助が言うと、お茶やお花を習いに行くと言って歌の練習をしていた事、知らないらしいね?今じゃ、「ロカンボ」と言うキャバレーで歌っているらしいよと富子は告げ口をすると、これ持って帰るよと言い、自分の土産を取り返して帰って行く。

富子の言葉に驚いた金之助は、まさかうちの子に限って…、そう言えば、このところ毎晩出かけて行くが…と考え込む。

その夜、金之助は「ロカンボ」に出かけて見るが、その様子を町で気付いた信吉が慌てて「ロカンボ」の楽屋へ急ぐ。

メイク室でチャコが出番を待っていると、サリーがやって来て、あんた誰よ、人の部屋に入って来て?と言って来たので、あんたこそ誰よ?と言い返すと、あんた私を知らないの?サリー月村よと答えると、あんたが首になったんでここで歌う事になった小島久子よとチャコは自己紹介する。

サリーが信じられないと言う風に部屋を出て行くと、信吉が飛び込んで来て、姉ちゃん、大変だよ!とチャコに金之助が来た事を知らせる。

支配人室に着たサリーは、そこにいた健二に、あんた本気なの?と首の事を確認し、あんたが好きな素人の女ってあの人の事だったのね?と勝手に言い出したので、そうだよ、手で食う虫も好き好きって言うからなと健二は適当に答える。

信吉と一緒に舞台袖から客席を覗き込んだチャコは、確かにステージの真ん前のテーブルにいる金之助を発見、健二の所に来ると、今夜出られないわ、親父が来てるのよと言い出す。

一方、客席でステージが始まるのを待ち構えていた金之助は、歌はまだか!と聞くので、ホステスが、歌が好きなのね?と応じると、大嫌いだ!胸がムカムカする!などと金之助は顔をしかめる。

そんな様子をスタージ脇で見ていた健二は困惑するが、何だったら私が出ても…とサリーが声を掛けると、信吉がマスクをチャコに渡したので、チャコはそれを付けてステージに出る。

そんなチャコの様子を金之助は怪しんで凝視していたが、チャコが途中でしゃっくりを始めたので、やっぱり久子!と気付いてステージ上に上がって行く。

久子は逃げ出そうとして転び、マスクが取れてしまう。

そんなステージ上の金之助をなだめて降ろそうとする健二。

帰宅した金之助はチャコを前にして、お前みたいな奴は親でもなければ子でもない、出てけ!と昔は言ったものだが、今日の所は許すから、花岡さんの家に行くんだ、向こう様の気に入られるようにするんだぞと言い聞かすので、さすがのチャコも承知するしかなかった。

一方、信吉から、マネージャーに謝っといてくれと言われたとチャコからの伝言を聞いた健二は、もう来ないのか…とチャコの事を残念がるが、それでチャコちゃんが幸せになるなら良いよと言う。

花岡家にやって来たチャコは、康彦の母親悦子(一の宮あつ子)を前に、生け花の腕を見せようとしていたが、やった事がなかったので、これ、どうしたら良いんでしょう?などと聞いて見るが、猫を抱えた悦子は、お好きなように…、今日はお手並みを見るだけですからと冷たく言い返す。 そこに女中が、億様、佐山様のお嬢様がお見えになりましたと告げに来る。

玲子と会った悦子は奥へいらっしゃいなと誘うが、あの人いるんでしょう?と玲子はチャコの事を皮肉る。 私は不賛成なのよ、あなたがいるのに、誰があんな下駄屋の娘と!と悦子は不快感を示す。

それでも玲子と一緒に、チャコの生け花を見に戻って来た悦子は、あまりにも珍妙なできばえに、何です?これは!と唖然とする。

続いて台所に来て料理を披露する事になったチャコだったが、小麦粉と片栗粉、うどん粉の区別も出来ず、側で見ていた女中2人に手伝ってよと頼むが、奥様から今日は一切手出しするなって…と言うので、そんな訳なら良いや開き直ったチャコは、ボウルにめちゃめちゃに粉を投入し出す。

それを見た女中が、そんなに入れては!とつい言ってしまうと、口出しするなって言われたんでしょう?とチャコは言い返す。

そこに様子を見に来た悦子だったが、チャコが混ぜていたダンコの球が左メガネに命中してしまったので、あんたって人は、何をやらせても役に立たない人ね!とさすがに悦子は切れる。

そこに、父花岡晴久(高田稔)と一緒に康彦も帰宅して来て、どうです?久子さんは…と悦子に聞く。

悦子は厳しい表情で、お茶の作法も知らない、あれじゃあとても康彦の嫁には慣れませんと答えるが、康彦は晴久に、お父さん、僕の選んだ人を見て下さいとチャコを紹介する。

これじゃ末が知れませんわと悦子は忠告するが、晴久はチャコに、わしもそろそろ引退して康彦に社長を譲ろうと思う、あなたもそのつもりで…と優しく言い聞かせようとするが、チャコは緊張して又しゃっくりが出てしまい、水じゃダメなんです、脅かして下さいと言うので、父子は戸惑いながら脅かそうとする。

その頃、「蛸忠」に幸田組の連中が暴れ込み店をめちゃめちゃにしていた。

幸田組に楯突く奴はこの通りだ!覚えとけ!と捨て台詞を履いて帰った直後、町内会長の卓造が来て、どうした?と驚く。

社長の保釈金を出せって言うのを断ったらこれだ…と忠助は嘆く。

「ロカンボ」の支配人室で戻って来た子分たちから話を聞いた健二は、お前ら、何でそんな馬鹿な真似をするんだ?取った金をみんな返して来いと叱りつけるが、誰も動こうとしないので、俺の言う事が聞けねえのか?と凄むが、五十嵐がにやつきながら、ミサイルのケンとかなんとか言われた男が情けねえ、こう云う事しねえと俺らどうやって食って行くんです?と反抗して来る。

そこに、ケンちゃん、あんた旗色悪いじゃない?強い所見せたら?とからかうように、サリーがやって来たので、健二は悔しがるが、何もせずに部屋を後にする。

それを見た五十嵐は、尻尾を巻いて逃げやがったと嘲る。 卓造、忠助、金之助ら商店街の面々は、幸田組対策について話し合いをしていた。

幸田がムショから出て来たら、警察に行くと忠助は言い、向こうが暴力で来るならこっちも暴力で行くしかない!自警団を作ろう!と金之助が提案する。

しかし、他の旦那衆は全員黙り込み意見を言わないので、どうした?何で黙ってるんだ?幸田組が何だ!ヤクザが何だ!と金之助は檄を飛ばすが、突然その場にやって来たのが健二だったので、全員ビビる。

緊張する旦那衆を見た健二は、皆さん、どうぞ御心配なく、お詫びに来たんです!社長が留守にしているんで、目が届かないので、お金お返ししますと頭を下げたので、全員ほっとするが、そこにやって来た富子が、幸田組の社長が出て来るそうだよと言いに来て、そこに健二がいたので驚く。

しかし、健二も、社長の突然の釈放を聞かされていなかったようで、驚いて「ロカンボ」の組事務所へ帰る。

その事務所では、出所した幸田(中村伸郎)が五十嵐やサリーから色々ある事ない事吹き込まれ、何?ケンが?あの野郎…と怒っていた。

そこに戻って来た健二が、社長、おめでとうございますと丁寧に頭を下げるが、ちょいとケンと話があるから、お前たち遠慮してくれと人払いする。

幸田と2人きりになった健二は、約束通り、盃を返したい、こうしてご無事で帰って来られたようですし…と申し出るが、だがな、ケン、その前にやってもらいたい事があるんだ、俺の事密告した奴を見つけて来て、ここに連れて来い、この町の奴が指したに違いねえ!そうじゃねえと腹の虫が収まらねえ!と幸田が答える。

それを聞いた健二は、社長、今頃そんな…と躊躇すると、できねえってのか?じゃあ、頼まねえ!代わりはいくらでもいるんだ、その代わり、盃も返さねえぞ!俺に楯突くってのかい?と幸田は脅す。

その頃、帰宅していたチャコに会った信吉は、最近は真面目に学校に行っている、健二さんに言われたんだ、自分は行けなかったけど君は行けるんだからってと話していた。

そこに来た金之助が、もう帰されて来たのか?と驚くので、明日康彦さんの誕生日だから、信ちゃんを呼びに来たのよ、光雄さんや君子さんも誘うわと伝える。

それを聞いて安堵した金之助は、久子、辛い事もあるだろうけど辛抱しろよ…と言うと泣き出したので、何よ父さん、行け行けって言ったくせに…とチャコが呆れると、やっぱりお前がいないと寂しくてな…と金之助は答え、どうだったの?今日の集まりとチャコが聞くと、幸田組の社長が出て来たんだ、でもミサイルのケンが心配いらないって…、あんな男と思っていたが見直したよと金之助は言う。

不忍池にいた健二の所にやって来たチャコは、健二さん!私、お礼言わなくちゃ…、お陰で弟が学校へ行くようになったの。

お父さんも、あんな男、ヤクザにしておくの惜しいって…、どうして足洗わないの?と聞く。

すると健二は、俺もそのつもりだったんだけど、どうやらダメらしい…とうなだれたので、あんた男でしょう!しっかりしなさい!とチャコは励ます。

それを聞いた健二は、チャコちゃん、本当にやれば出来ると思うかい?やってみるか!と明るい表情になる。

靴屋では、珍しくスーツ姿になった光雄が出かけるので、富子が何事かと驚くと、チャコちゃんが洋服来て欲しいって、誕生日に呼ばれたんだと言うので、そんな所へ行くんじゃありません!私の気が住まない!絶対行っちゃいけません!と文句を言う。

しかし、気にしないで光雄が出て行った後、幸田組の五十嵐たちが店に来て、これもらっとくぜ!みんなも一足ずつもらっとけと子分たちに指示するので、富子は何も言えなくなる。

花岡家では、玲子が花岡一家と招待客を前に得意のピアノ演奏を披露していた。

その最中、信吉がテーブルに出されていたサンドイッチを取ろうとするので、チャコが目で注意するが、信吉は構わずサンドイッチをつまみ急いで口の中に詰め込んだので窒息しそうになる。

それに気付いたチャコはジュースのコップを渡すが、それを飲んだ信吉がさらにサンドイッチへ手を伸ばそうとしたので、その手を叩こうとして、ジュースのコップを床に落とし、割れた大きな音を立ててしまう。

玲子の演奏が終わったので、久子さんにも何かやってもらいましょう、下駄屋さんにちなんだ事でもと悦子が意地悪で言い出したので、それじゃあ、ゲタゲタソングを歌いますと立ち上がったチャコは、エレキ演奏をバックに歌い出す。

その歌の途中、悦子の手を逃れた猫が光雄の膝に載って来たので、猫嫌いな光雄はそれを床に放り投げる。

歌い終わったチャコは、足下にいた猫を同じように放り投げたので、それを見た悦子は近づいて来ていこいなりチャコの頬をビンタする。

私の猫を粗末にするような人にはいてもらえません!と言い出したので、悦子、こんな所でそんなこと言わなくてもと晴久がなだめ調とするが、いいえ、この人が嫁に来るなら、私離婚します!とまで悦子は言い出す。

それを聞いたチャコは、たかが猫一匹の事でそんな事言われるんじゃ、私の方から出て行きますと良い、信吉たちと一緒に家を出て行く。

慌てた康彦が、久子さん、待って下さい!と後を追おうとするが、康彦さん、あなたの気持は分かりますけど…とチャコは言い残し出て行く。

そこに出て来た晴久が、康彦、止めるんじゃない、久子さんに気の毒だ、彼女はあのままのびのび自由に生きて行くのが幸せなんだと言い聞かせる。

チャコちゃんご免ね…と光雄は詫びるが、さばさばしたの!気分直しに君ちゃんの所で一杯行こうか?と声をかけ、喜ぶ信吉にはあんたはジュースよ!と釘を刺す。

「蛸忠」に来ると、町内会の面々が集まっており、偉いことになったの、家の人が幸田組に連れて行かれて帰って来ないのと富子が事情を説明する。

「ロカンボ」の支配人室に連れて来られていた卓造の所にやって来た健二が、社長、どうしたんです?と幸田に聞くが、おめえには関係ない事だと言うので、まだ盃を返してない以上、私も幸田組ですと健二は迫る。

指した奴を差し出すように言ってるんだと幸田が言うので、社長はまだ保釈中じゃないですかと健二は諌めるが、幸田は無視し、おい、五十嵐!早くけりをつけろ、こうなったら構わねえからやっつけろ!と命じる。

それを聞いた五十嵐が、この町を片っ端から壊すぞ!と子分たちに伝達したので、密告した奴知ってるよ…と健二は言い出す。

どいつが俺を指しやがったんだ?と幸田が聞くと、私がやりました…、申し訳ありませんでした、どうかご存分い屋って下さい…と健二が答えたので、五十嵐が、来るんだと健二を外に連れ出して行く。

その様子を見ていた卓造が「蛸忠」に戻って来て、ご心配かけましたと旦那衆に頭を下げたので、おじさん、どうしたの?とチャコが聞くと、俺もまさかあの人が密告したとは思わなかったよ、でもこの町の人じゃなくて良かった…と健二が告白した事を明かすので、健二さん、そんな事する人じゃないわ、他に密告した人がこの中に入るのよ!誰か言いなよ!と町内会の旦那衆を見渡す。

すると君子が、密告したのお父さんよ!と忠助の事を教える。 それを知った旦那衆は、そんな事したら後どうするんだよ!と一斉に忠助を責め出す。 ドラム缶が積んである空き地で殴られた健二に、どうだい?ちったあ答えたか?馬鹿な奴だ、誰もお前がやったとは思ってねえと幸田が話しかけていた。

みんな、町へ言って暴れて来るんだ!と幸田がけしかけたので、倒れていた健二は懸命に立ち上がり、待て!と制止しようとする。 その頃「蛸忠」では、あんたたち、健二さんを見捨てるの!とチャコが旦那衆に文句を言っていた。

誰も返事をしないので、私1人で行く!とチャコが店を出ようとすると、俺も行く!と光雄が呼びかけ、信吉も僕も行くと声を掛ける。

それを聞いた金之助は、おいみんな!こんな子供が行くって言ってるんだ!勇気を出して行こうじゃないか!と提案すると、見直した!と富子も金庫助を褒める。

みんな!繰り出すぞ!と金之助が声をかけ、全員手に手に武器を持ち「ロカンボ」裏の空き地へと向かう。

不忍会館の裏の空き地では、健二が五十嵐から痛めつけられていた。

そこに、松葉杖を持ったチャコを戦闘に、商店街の親父たちもやって来て乱闘が始まる。

チャコは、そこにいたサリーに襲いかかる。 やがてパトカーがやって来て、幸田組の連中を片っ端から逮捕し始める。

チャコは倒れていた健二に駆け寄り、健二さん!しっかりして!と抱き起こす。

幸田も逮捕されていた。

翌朝の朝刊に「幸田組社長以下捕まる」との記事が大きく載っていた。

ビルとビルとの間に暮らす娘は幸せだ〜♩と歌いながら小島屋に帰って来たチャコは、すっかり金之助の弟子として下駄職人になっていた健二を呼び出す。

健二は戸惑う中、信吉が金之助を奥へと引っ張って行く。 不忍池にやって来たチャコはベンチに腰掛けると、隣でもじもじしている健二に何事かを促すので、仕方なくキスしようとすると、又急にチャコはしゃっくりを始める。

慌てた健二は、自分が履いていた下駄を脱いでつばを吐き、チャコの頭に乗せたりするがしゃっくりは止まらなかった。
 


 

 

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