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いけちゃんとぼく

西原理恵子さんの絵本の実写化らしいが原作は知らない。

基本、少年と彼にしか見えない謎の生物の交友記で、物悲しいファンタジー性はどことなくこの後に作られた「STAND BY ME ドラえもん」(2014)に近い部分もある。

いけちゃんの造形はオバQなどの藤子不二雄の影響も感じられるし、あずき洗いを始め、妖怪やお化けの類いが登場するのも「妖怪大戦争」(2005)に繋がる角川大映の系譜とも解釈できる。

製作委員会の形を取っているが幹事は角川映画なので、2005年に行われた第1回スーパー・ヒロイン・オーディション ミス・フェニックスのグランプリ出身の蓮佛美沙子さんが出ており、最初は清純イメージの美人女子高生と言う設定なので正直あまり似合ってないのだが、途中から意外な形で登場し意表をついて来る。

デビュー当時は昔の角川3人娘のようにアイドル路線を狙っていたのかもしれないが、アイドルタイプではなく個性派女優として開花しているような気がする。

夏休み、田舎の風景、少年と架空の生き物のふれ合い、いじめ、喧嘩、仲直り…と言う、ジュブナイルにはありがちな要素が多いと言う事もあり、初めて見るのにどこかで見たような印象を受け、ものすごく胸に迫る感動作!と言う程の衝撃はないのだが、それなりにジンと来る良作だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2009年、「いけちゃんとぼく」製作委員会、西原理恵子原作、大岡俊彦脚本、大岡俊彦監督作品。

つないでいた手を放す老いた男女…

知りたいの…、私たち、出会うのが随分遅かったから…

海の見える場所に建つ墓に花を供え手を合わせる老いた池子(吉行和子)

私たちが過ごした時間はとても短かったから…

池子はいとおしむように墓の表面を右手でなでる。

会社クレジット

僕は世界をつかめて自由に出来ると思っていた…、海で溺れるまで…

海面で暴れる少年ヨシオ(深澤嵐)

水をつかんでもつかんでも、僕はウミスズメやコンソメワケベラにすら劣るのだ。

生温い海の底には重りのように灯りが降りて来て…、あの上にはきっと神様がいるのだろうと思う…

海中に沈むヨシオが見上げた海面の太陽の光 けど見えたのは、ワンピース一丁で泳ぎ回るおばちゃんたちのズロースで、太った金魚みたいできれいだった。

その時、緑の触手のような物が少年の身体に触れたので、驚いて起き上がった少年は、膝までくらいしかない水辺におり、大丈夫?ヨシオ…と言う声を聞く。

あれ?いけちゃん…と声の主の緑の海坊主みたいな存在に気付いたヨシオは立ち上がる。

浜辺には母親美津子(ともさかりえ)がおり、あれ?ヨシオはいつの間に、どこに行ったんだと言いながら、くわえ煙草で砂の軍艦を作っている夫の茂幸(萩原聖人)を見ると、戦艦長門!144分の1!これ見たら、あいつ喜ぶぞ~!と茂幸は子供のように自慢する。

すると怒りの形相で近づいた美津子が砂の軍艦を蹴って壊したので、何するんだ!と茂幸は驚いて怒鳴るが、私はいつも男にもてあそばれている…、帰る!と美津子はぼやく。

砂浜に上がって来たヨシオは、何てこった!僕は生死の堺をさまよったと言うのに世界は何一つ変わってない…と呟きながら周囲を見回し、え~っと、神様はどこだ?と言う。

その時、ヨシオ!そこにいたのか!母さんの機嫌取って来るから、お前そこで勝手に1人で遊んでろ!と茂幸が声をかけて美津子の後を追いかけて行く。

ヨシオ、どうしたの?と水辺から聞いて来た緑の丸い生き物が砂浜にジャンプしてヨシオの横に来ると、 いけちゃん、僕は神を見失った…、世界は僕の生き死にと関係ないんだ…、なんてごったなんだとヨシオは言う。

それ、凄い事に気付いたねとよしちゃんは答えると、そうだろ?地球は僕を置いて勝手に回る…とヨシオが深刻そうに言うと、そりゃそうでしょう、君はぶっちゃけ子供だし…といけちゃんが言うので、何だよ!ぶっちゃけんなよ!とヨシオは不機嫌になる。

いけちゃんはずっと前から側にいる。(とヨシオの心の声) いけちゃんは何となく側にいる。

他の人には見えないし、時々謎だ…(ヨシオの後を、カラフルに色が変わりながら、風船のようないけちゃんがジャンプしながら付いて来る)

いけちゃん、僕は世界を変えられる?とヨシオが聞くと、大人になったら分かるよ、君はみんなに愛されて、皆の自慢になる…といけちゃんは答える。

それで、僕といけちゃんは仲良しだ…、ずっと(とヨシオの声)

タイトル(笑顔で走るヨシオの横をいけちゃんが寄り添って付いて来る映像)

港のある小さな地域でいけちゃんと遊ぶヨシオの姿。

家の門の所で、右よし!左よし!と指差し確認するヨシオといけちゃん。

何度も繰り返すので、早く行きなよ!といけちゃんが急かすと、慎重にも慎重を重ねないと…、3日連続であったんだよ、どっちから行くか…ビビるだろう?とヨシオは迷う。

どっちみち学校じゃ会うんでしょう?といけちゃんが言うと、だからぶっちゃけるなよ、朝から合うと1日のテンションが違うんだよ、今日の乙女座、ラッキーデイだっけ?とヨシオは頭を抱える。

そこにヨシオ君お早う!と声をかけて来たのはセーラー服のみさこ(蓮佛美沙子)だった。

みさこさん!とヨシオが緊張して答えると、何してんの?とみさこが不思議そうに聞いて来るので、みさこさん、右と左どっちが好き?とヨシオは唐突に聞く。

しばし考えたみさこが、左?と答えると、分かった!と答えたヨシオが左に向かって走り出そうとすると、みさこが飴ちゃんあげると手を差し出したので、受け取ったヨシオは紅茶飴だ!この黄色が渋い!と喜ぶ。

みさこは、見つからんよう、食べ!と行って去ろうとしたので、ヨシオはみさこの残り香を胸一杯に吸い込み、何で美人は良い匂いがするんだろう?今日は超ラッキーだ!とうれしそうに喜ぶ。

するといけちゃんが、あれは美人の匂いじゃなくではなくシャンプーの…と言いかけるが、そんな事は無視して、走り出したヨシオは、友達のトモ(中村凛太郎)とマツ(白川裕大)に会う。

3人でひまわり牛乳店の横に積んであった空の牛乳瓶を放り投げて割る遊びをしていたが、そこに、こら~!このクソガキ!と怒鳴って自転車でやって来たのは清じい(モト冬樹)で、やべえ!熊五郎に殺される!と3人は一斉に走り出す。

まずい、うどん屋!まずいうどん屋、延びたうどん屋♩と3人揃って歌いながら「京うどん」と言う古いうどん屋の前を通り過ぎると、坊主頭のうどん屋の息子が、お早う!ときょうちゃん(窪田傑之)がのこにこしながら顔を出したので、3人は気まずそうに立ち止まる。

1人先に走り出したヨシオだったが、いきなり頭に石をぶつけられる。

3日振りやったっけ?やっと朝から会えたの…と石を握って聞いて来たのは、ヤス(村中龍人)だった。

今日こそ、ヨシオの涙、見せてもらおうか?と船の櫂を持ったもう一人のたけし(上村響)も脅して来る。

頭を押さえながら、やっぱラッキーは長く続かないか…とヨシオは呟く。

そこに追いついて来たトモとマツは、相手を見て、うわっ!ヤスとたけしなんかに敵うもんか!と怖じ気づきさっさと逃げ出してしまうので、なんでいっつも逃げるんだよ!とヨシオは苛立つ。

もう味方もおらんの?たった1人でどないするねん?とヤスは、右手の石をトスしながら言い、逃げ出そうとしたヨシオに次々と石をぶつけて来る。

四つん這いになってもヨシオが我慢していると、どうしても泣かんつもりか?とヤスが言うので、力で心を変えられると思うな?とヨシオが言い返したので、たけしが櫂でヨシオの顔を思い切りはり倒して来る。

吹っ飛んだヨシオに馬乗りになったたけしは、暮らすの男の子はみんな泣いたのに、何でお前だけ泣かん?そろそろ手加減できんようになるで?と聞いて来る。

そして右で3発、左で3発げんこつで顔を殴って来る。 泣け!超え出して泣けや!とヤスが近づいて来る。

しかし、ヨシオが泣かずに睨んで来るだけなので、おもろないの!とたけしは立ち上がり、ヤスもおもろないの!と嘲る。

帰りかけたヤスが、石を拾い上げ、うどん屋の影から見ていたきょうちゃんの横の壁目がけて石を投げると、気勢を上げてきょうがひっくり返ったので、ヨシオ、お前も、きょうちゃんくらいのリアクションしてみろやと言い残し、ヤスはたけしと一緒に去る。

ヨシオが起き上がると、きょうちゃんがニコニコしながら呼びかけて来るが、ヨシオはそれを無視して立ち去る。

学校の前まで来たヨシオだったが、立ち止まって横を見降ろすと、いけちゃん、今日学校さぼるよとヨシオは言う。

マンホールの穴から色が変化しながらいけちゃんが出現し、何して遊ぶ?と聞いて来る。

きょうは山登りをしよう!とヨシオが提案すると、良し!山登りをしよう!といけちゃんは賛成する。

山登りの歌!ズンドコ、ズンドコ、ドンドコ、ドンドコ♩ドンドンドンドン♩と歌いながら昇っていたヨシオだったが、急に頭を押さえてかがみ込んだので、どうしたの?といけちゃんが聞くと、頭の中の小人が階段を登っている…とヨシオは言う。

3Dアニメの小人が階段を登り、ヨシオの頭の外に出て来たので、頭痛だね、休もう…といけちゃんが提案する。

しばし腰掛けて休憩していたヨシオは、山の中で休憩してると怖くなるね…と周囲を見ながら言う。

鯨のお腹にいたピノキオはこんな気持だったろうね?といけちゃんが言う。

崖から見える小学校の校庭と校舎の様子を見ながら、今頃みんな、あそこの椅子に縛られて動けないんだ…とヨシオは愉快そうに言う。

校庭にバットを振り回しながらヤスとたけしが乱入して来たので、校庭で遊んでいた子供たちが逃げ惑うのを見たヨシオは、休みさえ来れば顔を合わせなくてすむ。

夏休みになればずっと会わずにすむんだよ…とヨシオは言う。

その時、背後で何か物音が聞こえたので振り向くと、そこにいたのはあずき洗い(岡村隆史)だった。

妖怪あずき洗いだ!と気付いたヨシオは石を投げつけて追い払うが、罰が当たるから止しなさいと言いながら、いけちゃんがヨシオの頭に食いついたのでヨシオは苦しがる。

何で今まで黙ってたんだ!あ?この傷は何だ?と昼間から日本酒「土佐のかあさん」を飲んでいた茂幸がヨシオの顔をつまんで叱る。

違うよ、これは転んだんなとヨシオは言い訳するが、美津子!美津子!お前はこの事を知ってたのか!と茂幸は台所で洗い物をしていた美津子に聞く。

すると美津子は、時々学校さぼってたのは知ってたけどと手をエプロンで拭きながら答える。

知ってたって…と茂幸が絶句すると、学校くらいさぼったってええやないと美津子はかばう。

私かて毎日行ってた訳やないし、高校のときはずっと1人で保健室でさぼってたわと美津子は打ち明け、学校だけが全てやないでしょう?と言う。

殴られて学校行かないって明らかにダメじゃないか!と茂幸は言い返す。

そして、ヨシオ、男と男の話をしようじゃないかと茂幸はヨシオを睨みながら言う。

傷が前にあるのは勇気の印だ、背中を向けて逃げてないってことだからなと茂幸は褒め、誰にやられた?と聞く。

ヤスとたけし…とヨシオが打ち明けると、あの網元たちのガキャあ!大人だけじゃなく息子まで他所様に迷惑かけるのか!と茂幸は興奮して酒をコップに注ぐ。

その酒を一気飲みをすると、ちゃぶ台を叩き付け立ち上がると、行って来る!と茂幸が言うので、どこへ?と美津子が聞くと、息子の危機を守る!父とした!ううう…と茂幸は答える。

ちょっとお父さん!とエプロンを外した美津子は、大声を上げながら外へ飛び出した茂幸の後を追いかけ、ヨシオもその後を走って追いかける。

しかし、漁船の中で荷下ろしを手伝っていたヤスとたけしだけではなく、大勢の年寄りたちも埠頭で酒盛りしているのを見た茂幸がそのまま振り返って家に向かって逃げ帰ったので、美津子とヨシオは唖然とし、ヤスとたかしはあざけり笑う。

翌日も、ヨシオ、トモ、マツの3人組は、牛乳瓶を空中に放り投げ地面に落ちて割れるのを楽しんでいた。

それを側できょうちゃんもうれしそうに見ていたので、アホ!ちゃんと見はれや、後ろ!とマツが注意し、もっと右右!ぐるっと回って!などと言うと、その通りにきょうちゃんが動くので、きょうちゃんラジコンやと喜ぶ。

ヨシオは1人、蛇口の側にしゃがみ込み、割れた牛乳瓶の底で太陽を透かして見る。

すると、蛇口から透明ないけちゃんが降りて来て、何してるの?と聞くので、こうしてしてるとキラキラして、海の中で見た神様を思い出すんだとヨシオは答える。

それを見ていたマツとトモは、又、きょうちゃんがニコニコ同じように見ていたので、アホ!見張りは?とマツが聞くと、これ、ガキ共!と清じいが自転車から降り迫って来るのが見えた。

清じいが拳法の真似をして来たので、やばい!逃げろ~とマツとトモは又しても逃げてしまう。

きょうちゃんは腰を抜かしており、ヨシオが空の牛乳瓶を投げつけると、清じいはそれを空中でまっ二つに手刀で切断し、さらにヨシオの脳天にも空手チョップを食らわして来たので、ヨシオの頭の中の小人もまっ二つになる程の衝撃を受ける。

清じいの空手伝説って本当だったのかよ…と、頭を押さえてヨシオは呻く。

地球に優しい牛乳瓶…と清じいが言うので、はい…と素直にヨシオが答えると、それを割るとは、貴様…、地球に優しない男やな?と清じいは嫌みを言って来る。

すみません…と小声でヨシオが謝ると、片付けんかい!と清じいは命じる。

清じい…と、片付けに向かいかけたヨシオが振り返って言うと、何じゃい?言い訳かいと清じいが聞くと、首を横に振ったヨシオは、空手、教えて下さいと願い出る。

なんじゃい、薮から棒に…と清じいが戸惑うと、清じいを空手の達人と見込んでお願いします。

僕を殴る奴をギャフンと言わせたいんですとヨシオは近づいて頼む。

すると清じいが、拳を握ってみいと言うので、柔い、自分が先に壊れるぞ、1日千回握れとだけ清じいは言って割れた牛乳瓶を片付けに行こうとするので、さっきの牛乳瓶まっ二つにした必殺技教えてよ!こんな地味なんじゃ一生かかるよとヨシオはねだる。

すぐ結論に行く奴は、途中もへぼい。

片付けてから言え!と清じいは言う。

ヨシオは、右手を握ってみたり空手チョップをしてみる。

その後、ヤスとたけしに会ったヨシオは、親まで出て来たらシャレにならんやろう?俺らはシャレですまそう思うてるのに…と言われ、ぼこぼこに痛めつけられる。

悔しがったヨシオは、蟻の巣の蟻に向かって水筒のお茶を引っ掛け、足で踏みつぶしながら、お前ら何かこうだ!ざま編みやがれ、この悪人どもめと自己満足していた。

それを見ていたいけちゃんは、ヨシオ君怖い…と怯える。

続いて、虫かごに集めたトンボの頭を取って、万華鏡に入れて、超気色悪い映像をいけちゃんに見せたりする。

見せられたいけちゃんは鳥肌を立てて怖がる。

虫を殺すんだ~!次は蝶採ろう!と捕虫網で蝶を捕まえたヨシオは、ノートにノリをつけ、そこに広げた蝶を貼って行く「磔の刑」を始める。

そして、ビリビリの刑!と言うと、貼った蝶をむしり取るが、ノートには、貼付けた蝶の鱗粉がそのまま残っていたので、これを宝物にして押し入れにしまっておこうと提案すると、いけちゃんも、うん、賛成!と言う。

次はハンミョウを捕まえて…と呟きながら草むらを移動していたが、ちっとも捕まらないので、ちくしょう!ハンミョウのバカ!みんなのバカ!と言いながらヨシオはめそめそし出す。

すっごいバカのくせに、口じゃ勝てないから、僕の頭をぼこぼこぼこぼこ!この頭は木魚じゃないんだ!泣かないぞ!泣くもんか!と我慢していたヨシオだったが、とうとう泣き出す。

いけちゃんが近づいて来て、気がすんだ?と聞くが、ううん…とヨシオは首を横に振る。

ヨシオの右手をいけちゃんが優しくくわえ、甘噛みすると、いけちゃん、何とかしてよ…とヨシオは頼む。

するといけちゃんは、知ってるでしょう?いけちゃんは他の人には見えないの…、直接ヨシオの人生に介入できないんだ…と言う。

大人になって好きな人が出来たら、この事を話すと良いよ、好きな人が笑ってくれるよ…といけちゃんは、ヨシオの右手をくわえたまま言う。

その夜、9時過ぎ、美津子と父親の帰りを待っていたヨシオがちゃぶ台に置かれたピザの箱を開けて、もうチーズがゴムみたいになっていると言うと、もうちょっと待てないの?お父さん待ちなさい…と叱った美津子だったが、ピンクの出目金女の所に決まってるわと愚痴るので、ピンクの出目金の女?とヨシオが聞き返すと、子供は知らんで良い事!と美津子は睨んで来る。

そして急に立ち上がった美津子は、ピザの箱をゴミ箱に投げ込み、あの酒飲みが!もう寝る!と言い、自分の部屋にこもってしまう。 ヨシオはゴミ箱に捨てられた冷めたピザを食べながら、いけちゃん、僕が悪いの?と聞くが、さあねと言うので、ヤスとたけしさえいなければ、お父さんとお母さんは喧嘩しないの?と聞くと、それは関係ないかも…といけちゃんは答える。

1人風呂に入ったヤスオが、そもそも俺が一番悪いんだ!と叫ぶと、湯船の中から飛び出して来たいけちゃんが、何で?と聞く。

1人でシャンプーするだろう?痛くないように目を閉じてなければいけないだろう? その瞬間、風呂中が妖怪だらけになるんだ!絶対!(CGのお化けが風呂に集まっている想像)

でも、目を開けてもいないんだ…とヨシオは、シャンプーハットをかぶったいけちゃんに伝えると、じゃあいけちゃんが見張っててあげる、背中にちゅっとして…と言いながら背中に貼り付いたので、ありがとう、いけちゃん!とヨシオは喜ぶ。

その後、自分の部屋の寝床に入ったヨシオが突然、これもダメ!絶対ダメ!と叫び出したので、大体想像付くけど、何で?といけちゃんが掛け布団の下から顔を出す。

(CGのお化けが大勢いる廊下の幻想を前に)天井の上をいつも誰かが歩いているし、襖の隙間から幽霊がこっち見てるし、壁の染みは勝手に動くし!とヨシオが訴えると、分かった、分かった!いけちゃんが眠るまでいっしょにいてあげる!といけちゃんは慰める。

やがて、至急緊急事態!最も嫌なことが起こりました!とヨシオが布団の中で叫び出したので、何何?といけちゃんが慌てて聞くと、夜中おしっこです!このよう回廊かを1人で行くくらいなら、僕は名誉のおねしょを選ぶ!とヨシオが廊下で叫んだので、分かりました!付いて行きます!といけちゃんは応じる。

トイレでおしっこを無事で来たヨシオは、いけちゃん、ありがとうと礼を言い、どう致しましてといけちゃんも返事する。

それから大好き…と布団に戻ったヨシオは言うが、うん?でも…、いつまでもいけちゃんは側にいられないから…といけちゃんは呟く。

早く外に出て友達を見つけて、早くゆっくり大人になってね…と、すぐに寝入ってしまったヨシオにいけちゃんは語りかける。

翌日も、泣けや!声出して泣けや!と囃し立てながら、学校の裏手の壁の前に断たされたヨシオに向かって石を投げつけたり、櫂で腹を突いて来るヤスとたけし。

そこに女性教師(ちすん)ときょうちゃんがやってきたので、ヤスは、やばい!先生を呼んで来た!と呟き、ヨシオは、あれ?助かった?やっぱ今日はラッキー…と喜ぶ。

しかし女性教師が口にしたのは、ヨシオ君すぐに家に帰りなさい、お父さんが事故で…、事故で…、今電話があって…、もうすぐ運ばれて行きはるからと言う意外な言葉だった。

はい?とヨシオは答えるが、事情が良くつかめなかった。 走って家に帰って来たヨシオは、葬式の準備が始まっている玄関先に立っていた美津子が振り返り、お父さん、死んだ…とぽつんと言う。 ヨシオは呆然と立ち尽くす。

雨が降って来た中、葬儀用に正装させられたヨシオは傘もささずに海が見える場所にしゃがみ込み、いけちゃん、僕分からないよ…と呟く。 そうだよね、普通分かんないよね…といけちゃんも同意する。

昨日から起こった事が全部分からない…とヨシオは言うと、分かんないよね…といけちゃんも答える。

その時、ヨシオはとなりにいたいけちゃんが豆粒のように小さくなっている事に気付き、どうしたの、いけちゃん?と驚く。

いけちゃんは困ると小さくなる…と言うので、つまんで左手の上にいけちゃんを乗せてやると、大好きな物は何?と聞いて来たので、マンガの本とヨシオは答える。

大嫌いな物は?と言ういけちゃんの質問には、海で溺れる事…とヨシオが答えたので、じゃあ、今の気持は100回くらい海で溺れた感じ?といけちゃんが聞くと、うん…、百海とヨシオは答える。

あのさ…、世界中で人より早く大人にならないといけない子供っているんだよと、空中に浮かび地球を出現させたいけちゃんは説明し出す。

君もその中の1人なんだよといけちゃんは言う。

世界中にはたくさんの「百海」があるの?とヨシオが聞くと、うんと答えたいけちゃんは、元の小さな姿に戻り地面に降りると、ここで待ってるから、お父さんに最後の別れをしてきなさいといけちゃんは言い聞かす。

家に帰ると、雨の中傘をさして立っている弔問客と、家の中で読経している僧侶、喪服を着てやつれた様子で座っている美津子の姿が見えた。

長門は良いぞ~、戦艦長門が最高!と言う茂幸の声が聞こえて来る。

(回想)僕、大和が良い…とヨシオが答えると、大和?違うな…、そんなこと言ったらアメリカの軍艦の方が強いし、現代兵器や核の方が強い。上には上がいるんだ!とプラモデルを作っていた茂幸は言う。

最強だけなら宇宙人とか恐怖の大王も数に入れないと…と茂幸は言うので、じゃあ何で長門なの?とヨシオが聞くと、大和はな~、当時秘密兵器扱いで誰も名前すら知らなかったんだと言う。

それに比べればこの長門は、超昔から終戦までずっと現役の大スターだったんだぜと茂幸は言う。

男たる者、日の当たる所で認められろ!と言う茂幸に、うんとヨシオが答えると、そいでな、長門の環境は大和よりちょい高かったんだ…、それだけ、丸い地球を遠くまで見えたんだなと茂幸はうれしそうに教える。

(回想明け)棺桶の中の茂幸の顔を触ってみたヨシオは、冷た!と驚き、変な化粧がしてあると気付く。 変な化粧…と呟くと、お父さんに触らないでと喪主の座に座っていた美津子が言って来る。

ドブ板の溝にはまって死ぬなんて…、酔っぱらいの見本みたいなへぼ死にやで…と弔問客のおばさん(山田スミ子)がバカにしたように言うと、そこって愛人宅の前なんやて…ともう1人のおばさん(西原理恵子)が教え、大した稼ぎもないのにええ甲斐性な事…と別なおばさん(たくませいこ)が嘲る。

そんなこそこそ話を背中に聞いていたヨシが立ち上がり、長男のヨシオですと挨拶を始める。

今日は父の葬式のためにお足下の悪い中集まっていただいて…、父も喜ぶと思いますと言って頭を下げたので、おばさん連中は驚いたように会釈する。

雨が止んで外に出て来たヨシオに、また石をぶつけ、お前の父ちゃん浮気者!とヤスが言って来ると、ヘタレの父ちゃん、愛人持ち!とたかしがからかって来る。

又石をぶつけられたので、うぉー!と叫びながら2人に飛びかかって行ったヨシオは、何度も殴られ倒されながらも、最後は2人に組み付き、バカにするな!バカにするな!と言いながら押し倒してしまう。

泥だらけになったヤスは何度も殴ろうとするヨシオを避けると、さらに殴りつけ、ヨシオのくせに生意気や!と言って立ち上がると、たかしも宣戦布告と見なして良いんやな?会うたんびに泣かすぞ!一生泣かすぞ!と睨みつけて、そのまま2人はさって行く。

泥まみれになって倒れていたヨシオに、ヨシオ!と呼びかけ近づいて来た豆粒のようないけちゃんは、ヨシオの指先をくわえようとするが、ヨシオはそれを嫌がって手を退ける。

そして、いけちゃん、早く僕は大人になりたい…、現実を見るんだ…、僕が何とかしなきゃいけないんだよね…、早く大人になって、あいつらをギャフンと言わせてやるんだと、倒れたまま言う。

そんなヨシオを悲しげに見つめ、ヨシオ…といけちゃんは呟くだけだった。

その日からヨシオは、一度に茶碗3倍のご飯を食べるようになる。

美津子は、何もかも興味を失ったような顔であらぬ方を見ていた。

そしてヨシオは、まず僕は心の自立をする必要があると言いながら、海の側の空き地に秘密基地を完成させる。

そして、そうだ!と思いついたヨシオは、父親の遺品である戦艦長門のプラモデルを秘密基地に安置し、マツやトモを招く。

すげえ!と秘密基地に驚いたマツとトモがちゃぶ台の前に座ると、折り入って相談があるとヨシオは言い出す。

何や、改まって…とトモが聞くと、3対2だ、数でなら勝てるんじゃないかな?共同戦線を張ろうとヨシオが言い出したので、誰に?まさか…とマツは、何の話か事情を察する。

ヤスとたけし…とヨシオが明かすと、無理やろう!とトモとマツは即答する。 無理じゃないさ、こっちの方が多いんだ、足りないなら数集めよう、いつまでもあいつらの言う事聞くのか?クーデターを起こすんだとヨシオは言う。

無理やろ、俺は逃げるとトモが言い、俺も逃げるとマツもその場から立ち上がろうとする。

何でだよ!何でお前ら先に先に逃げるんだよ?とヨシオが嘆くと、だって逃げんかったら、あいつらに捕まってまうやろ?とトモが当然と言う風に答える。

ずっと逃げ続けるのかよ?よヨシオが迫ると、俺は逃げる!逃げて逃げて逃げるんや!中学になっても大人になっても一生逃げたったるわ!と悟ったようにトモは言う。

マツの方は、来年になってクラス替えがあったらこの生活も終わりや、覚えてないやろ?去年のクラスで何があったかなんて…、第一捕まる奴が悪いんや!などと、こちらも大人びた事を言う。

何だ、僕が悪いって言うのかよ?とヨシオがむきになると、そうや、そもそも何でヨシオは東京弁やねん?だからあいつらに目付けられるんや、それにがおかしいんや。

何でここの言葉でしゃべらんのや?とマツはいきなり理路整然と反論して来る。

別に…、これは僕の主義だから…とヨシオが口ごもると、やっぱり俺帰るわ、こんな所誰かに見つかったら…と立ち上がって怯えるので、こんな所とは何や!とヨシオが胸を突くと、何するんや!とトモもむきになるつかみ合いになったので、止めろや!とマツが中に入って止める。

そして3人でもみ合っているうちに、勢い余って戦艦長門のプラモデルを踏みつぶしてしまう。

お前や!お前のせいだからな!とトモが責任を押し付けて来たので、酷い!酷い!もうトモもマツも絶交だ!もう二度とお前らを友達だと思うか!とヨシオは叫ぶ。

するとマツが、トモ!逃げるぞ!と呼びかけ2人揃って帰って行ったので、それも逃げてすますのかよ!と秘密基地の入り口に出て来たヨシオは呆れる。

それでも友達かよ?絶交だ!本当に絶交だぞ~と悔し紛れにヨシオは叫ぶ。

見ると、うどん屋のきょうちゃんがこちらを見ており、沈没や、沈没や!と喜びながら秘密基地に入って来て長門を触ろうとするので、触るな!とビンタすると、痛いやん、ヨシオくん、許してよと笑顔で言って来る。

ヨシオはそんなきょうちゃんに、お前んちのちくわ天、盗んで来いよ、売る程あるんだろう?どうせ余ってるんだろう?食わせろよと迫ると、そしたら遊んでくれる?と笑顔できょうちゃんが聞いて来る。

きょうちゃんが持って来たちくわ天を食い始めたヨシオに、隣に座って一緒に家から持って来たつくわ天を食べていたきょうちゃんが、ヨシオくん、怪獣カード余ってる言うてたな?ダブってるんで良いんで1枚頂戴と頼んで来る。

何でも良いのかよ?と聞くと、何でも良い、怪獣カードやったら何でも良いから、1枚持って仲間に入りたいときょうちゃんはにこにこしながら言う。

するとヨシオは、何でも良いゲームじゃないんだと厳しい表情で答え、この飴玉、食べたらやるよと良い、ナフタリンを差し出す。

それ、ナフタリン?ときょうちゃんも気付くが、このあめ玉食べたらやるよとヨシオがもう一度言うと、それを口の中にいれ笑うので、何で笑うんだよ!とヨシオが言うと、ヨシオくんが遊んでくれたら…と言うので、何で何でも言う事聞くんだよ!とヨシオは怒ったように聞く。

それでも笑っているので、何で笑っているんだよ!と怒ったヨシオは何発もグーで顔をなぐるが、泣きもせず、きょうちゃんは、怪獣カード!とせがんで来たので、やるよ!とカードを手渡す。

するときょうちゃんはうれしそうに家に帰って行くので、げんこを握ったヨシオは、何なんだよ?何なんだよ!と不機嫌そうに自問する。

すると、背後の隠れ家の隅からいけちゃんが顔を出し、やり過ぎたねと声をかけて来る。

あいつらがやっている事をやってるだけじゃないか…と、自分の右手の拳を見ながらヨシオは呟く。

しょうちゃんを泣かせるつもりだったんだよ、僕…、何だよ!と良いながら、ヨシオは胸の不快感を取り除こうとするように、秘密基地の壁用にトタン板を殴りつける。

そして、夕方になるまでに、ヨシオは作ったばかりの秘密基地を全部自分でぶっ壊してしまう。

最後はいけちゃんも、積んであったタイヤにぶつかって倒し、大きくなって残骸全部を飲み込むと、お尻から又全部吹き出してみたりして喜ぶ。

それを見たヨシオは、いけちゃん、バカじゃないの?と愉快がり、いけちゃんは、走ろうよ、楽しくなるよ!と勧めるので、ヨシオは一緒に周囲を走り始める。

自動車工場で働き始めた美津子が弁当を1人で食べていると、美津子、夜も入れてるの?と同僚の女性(江口のりこ)が聞いて来る。

働かな…、誰かにお金貸してとか言いたくないねんと美津子は言う。 ヨシオくん、家で1人ちゃうのん?と同僚が気遣うと、そうよ…、別々に食べる事にした…と美津子は答える。

自宅のちゃぶ台には、「きょうはパートの日」と書かれた置き手紙が、伏せた茶碗やお椀や箸と一緒においてあった。

1人で頑張りすぎやで…、朝のシフトにしてもろうた方がええんとちゃうかな?きょうはあたしがやっとくさかい、早めに上がり!と同僚が言うと、そな、悪いわ…と美津子は言う。

しかし、美津子は同僚の行為に甘え、自宅に戻ると、夕食を食べるヨシオと一緒に自分は持ち帰って来た弁当を食べる事にする。

美津子は、お箸をちゃんと持ちなさい、良く噛んで食べなさい、早く食べなさい!などとヨシオの食べ方に注意する。

ちゃんと学校に行ってるの?と美津子が聞くと、ちゃんと座って!字はきれいに書きなさいよ!歯磨きもちゃんとやるのよ、あんたのため思うて言うてるんやからね…と美津子は説教ばかり言う。

あまりのうるささに食欲をなくしたのか、ごちそうさま…とヨシオが箸を置くと、早くお風呂入って!毎日、お風呂には入るのよ!と又美津子がうるさく言うので、ヨシオが部屋を出て行くと、美津子は1人考え込む。

翌日、小学校では、マツとトモに近づいて来たきょうちゃんが、見て!怪獣カード持ってるねんとうれしそうに自慢したので、しょぼい奴やねん、そんなんいらんわとトモが答えると、そこにヤスとたけしが通りかかったので、3人はビビるが、そのヤスの後ろから子分のように付いて来たのはヨシオだったのでマツとトモたちは、その後を付け様子を見る。

クーデターで俺らをどうしようって?とヤスは聞くと、たけしも、数集めりゃ良いって、何人集めるつもりや?意外に策士やな…と問いかけ、ヨシオに近づいていつものように暴行する。

それに気付いたみき(宮本愛子)が助けに行こうとするが、必死にマツとトモがそれを止め。

芝生に大の字に倒れていたヨシオは、トモとマツ、裏切ったのかな?殴られて吐いたのかな?と呟く。

すると、側の鉢植えのヒマワリの花から出現したいけちゃんが、さあね?どうする?と聞いて来る。

どうするほんまに…、これは僕が始めた事なんだ、動き出したんだとヨシオは寝そべったまま言う。

どうやってあいつらをぎゃふんと言わせるか考えなきゃ…、考えるんだ!と、起き上がったヨシオは呟く。

トモとマツにいいっ!をしたみきはその場を立ち去るが、雨が降り出した中、廃工場の中にいたヨシオに近づき、ほら!そこに咲いてた花、きれいやろ?と花を差し出して来る。

きれいだね…とヨシオがお愛想を言うと、犬、可愛いやろ?ほら犬!と言いながら、みきは側にいた犬をなで始めたので、可愛いね…と又ヨシオがお愛想を言うと、面白くない?とみきはヨシオの態度に気付き聞いて来る。

面白いよ店、犬可愛いし…とヨシオが仕方なさそうに答えると、私と遊ぶの嫌?とみきは聞くので、嫌じゃない…と言いながらもヨシオは悲しげにうつむき、突然、目をつぶってキスをするようにみきに近づいたので、腰を抜かしたみきは、ちょう!何するの!と抗議する。

男と女のキスをするんだ、僕は大人になるために女の子とチューをしてみたいとヨシオが言うと、一旦目をつぶって応じかけたみきだったが、目を開けると、蛸のように口を突き出した顔で近づいて来るヨシオに気付き、きもい!と言うと頬をはり倒す。

そこに通りかかったみさこが工場内の人の気配に気付き、みき?ヨシオくん?と声を掛けると、ヨシオは急に正座をし、みさこさん!とうれしそうに答え、みきも、お姉ちゃん、私も帰ると犬を連れてみさこに近づく。

よしお君、ばいばい!とみさこが手を振ると、ヨシオは、はい!と満面の笑顔で答えるが、みさこと一緒に帰るみきが、あっかんべえをして来たのでむっとする。

へ~…、男の事じゃなく、女の子と遊ぶんだ?と良いながら、真っ赤になったいけちゃんがからかって来たので、何だ?とヨシオが振り向くと、モテるじゃん!大人じゃん!と言いながら、いけちゃんは赤く丸くごつごつの岩のように変化する。

いけっちゃんって怒ると丸くなるんだ…とヨシオが気付くと、別に!といけちゃんはふてくされたように答える。

いけちゃんって女?とヨシオが聞くと、知らないと言いながら、いけちゃんは後ろに転がる。

それを見たヨシオは、初めて気付いた…、いけちゃんって女なんだと呟く。

その後、ひまわり牛乳店の店先でみきから話を聞いた清じいは、そんな男同士の問題に女が乗り込んで来たらあかんわ、ヨシオくんの立場がないわと答える。

立場の場合違うやん…とみきが反論すると、お前のおらんところでもっとやられるようになるでと清じいは忠告する。

まあ、えげつない犯罪する頭はあのコンビニはないやろ、子猿が御山のボス決めてるレベルや…、ヨシオとやらは、空手を教えろとわしに言い寄った。

逃げてるだけのアホより見所あるやないか…と清じいは言う。 大きい器にはな、水をためるのに時間がかかるんや…と清じいが言うと、見所あるんか?とみきは聞く。

ずばり惚れとるな?と清じいがからかうと、違うわ!ヨシオはみさこが好きなんや!うちのお姉ちゃんの方が好きなんや!とみきがむきになって答えたので、まあ、飲め!カルシウムたっぷりやどと清じいが牛乳を取り出して差し出すと、みきは、フルーツ牛乳の方が良いなどと言うので、女の子やのう…、安心せい、これもカルシウムたっぷりやと笑って清じいはフルーツ牛乳をサービスしてやる。

2人で一緒に牛乳とフルーツ牛乳を飲んだ後、清じいはゲップをする。

ある朝、柱時計の中から現れたいけちゃんが、ぽっぽ~!ぽっぽ~!2時をお知らせてしています、朝だよ~!と呼びかけるが、寝床の中のヨシオはぶつぶつ言っていたので、きょうはラッキーな事があるよといけちゃんが言う。

ラッキーとか関係ない時間になってるじゃんとヨシオが言うと、光る物を拾って誰かを助けるといけちゃんは予言めいたことを言うので、何故そんなことを言っているの?と聞くと、未来のヨシオに会ったことがあるからといけちゃんは言い出す。

本当に?そんな事ある訳ないじゃんとヨシオが言い返すと、試してみない?外に出て…といけちゃんは誘う。

ラッキーの女神様は…といつものように門の所で左側を見ていたヨシオは、背後にみきが仁王立ちに断っているのに気付き、何だい!と驚く。

私が一緒に行ったげるとみきが言うので、みさこさんは?と聞くと、お姉ちゃんは今日は来うへんと言い、みきは1人で学校へ向かおうとするので、勝手にしろ、僕と一緒にいると喧嘩に巻き込まれるぞとヨシオが警告すると、優しいやん、私の心配するなんてとみきは微笑む。

ヨシオは駆け出し、話がドンドンややこしくなるよ…と呟く。

ひまわり牛乳店の前では、清じいが上半身裸で乾布摩擦をしていた。

そこにヨシオがみきとやって来ると、清じいはヨシオの顔を見て頷き、拳を握ってみせる。

それを真似るようにヨシオも手を握り、空手チョップの真似をしようとした時、地面に落ちていた王冠を発見する。

ああ、これ超レアものの王冠じゃん!何でこんな所に落ちてるの?今日は超ラッキーデイかも…とヨシオは喜ぶ。

やがて、逃げるマツとトモに石をぶつけて来た安とたけしに出会ったヨシオだったが、ひるまず石を避ける。

迫って来るヤスとたかしに立ち向かおうとするみきを止めると、嫌や、何でヨシオを見捨てるの!とみきは抵抗しようとするので、そう云う問題じゃない!とヨシオは言うが、みきは退いて!と言い逃げようとしない。

その時、みきの手提げ袋が落ちる。

そんなヨシオに近づいて来たヤスは、この間から生意気やのう?と拳を握って来る。

みきを突き放し、1人立ち向かって行くヨシオはいつものようにヤスに殴られるが、隠れていたマツとトモの所に来たきみは、何もせんのか?とやられているヨシオを指差し聞くと、無理やろ、どう見ても…とマツは言うので、行くで、助けに!とみきがトモの手を引っ張るが、止めろとトモは抵抗するだけ。

ヨシオは、右手を空手チョップ、左手を握りしめ、櫂を振りかぶって来たたけしに立ち向かおうとするが、その時、先ほどみきが落した手提げ袋に躓き、よろけた所で、胸ポケットに仕舞っていた王冠が飛び出す。

その王冠を目にしたたけしは、めっちゃレアやん!と気を取られたので、たまたまヤスオの左手のグーがたけしの顔面に命中する。

ヨシオ!とヤスは叫び、鼻血を出したたけしは、こんなんラッキーパンチやないか、ラッキーで物事が覆るか?とバカにし、ヤスとともにヨシオを痛めつける。

ヤスとたけしが去り、倒れたヨシオは、みきたちが駆け寄って来ても振り向きもせず、黙って落ちていた自分の鞄を拾い歩き始める。

とぼとぼと夕暮れ時の道を歩いていたヨシオは、影と競争すると早く家に着く…と考える。

すると、ヨシオの影が勝手に駆け出す。

自宅に帰ったヨシオは、いけちゃんがいなくなっている事に気付き探しまわり、いけちゃ~ん!いけちゃん、どこ?出て来て僕を慰めろ~!と呼びかけるが、いけちゃんは現れなかった。

海辺にやって来たヨシオは、海を見つめていたいけちゃんを発見し、いけちゃん、何でいないの?と聞きながら近づく。

今日は遂に一発殴り返せたね…と、海を見たままいけちゃんが言う。

記念すべき日だよ、帰り道だって泣いてなくて、ずっと怒ってた…と言ういけちゃんの隣にヨシオは座り込む。

ラッキーに頼ったって何の意味もない…、それじゃあぎゃふんにならないよ…とヨシオがふてくされたように答えると、あのね、君は弱虫で強虫で、意地悪で優しいの。それで恰好付け虫!といけちゃんは指摘する。

いけちゃん、僕の事知ってるの?とヨシオが聞くと、少しね…と言う。 いけちゃんね、ここで会う約束をした人がいるの…、私が先に来たから、まだずっと先になるけど待ってるの…と海を見ながらいけちゃんは言う。

誰を待ってるの?とヨシオが聞くと、それはまだ言えない…といけちゃんは言う。

いけちゃんは女で、いけちゃんは誰かを待っていて…、何で今日の事を知ってたの?とヨシオが不思議がるが、いけちゃんが何も答えないので、いけちゃんって本当は誰なの?と聞く。

するといけちゃんは、分かる日がもうすぐ来るよ…と言う。

日が暮れかけ、お腹の虫が泣いたのに気付いたヨシオは立ち上がり、じゃあ僕帰るね?といけちゃんに挨拶し帰えりかけるが、途中で振り返ると、いけちゃんがかくれんぼうのように屈むので、うれしくなったヨシオは、いけちゃん、僕明日冒険しようと思う、付き合って!と呼びかけると、良いよといけちゃんは言ってくれる。

翌朝、台所でフライパンを前にしたヨシオに、卵を溶いて、ちりめんじゃことおネギを入れる!後お醤油を少し…といけちゃんが料理の手ほどきをする。

スクランブルエッグのように混ぜた卵を菜箸で口にしてみたヨシオはうめえ!と言うと、そうでしょう?これはいけちゃんが大丈夫な味なの!といけちゃんはうれしそうに言う。

これがあるとね、おかずが何もないときも独ぼっちのときも大丈夫なの、覚えててね!といけちゃんはうれしそうに教える。

その卵料理を皿に写したヨシオが黙り込んだので、何?といけちゃんが聞くと、いけちゃん、1人で行って良いかな?とヨシオは言い出す。

冒険は1人で行くべきだと思うんだ、隣の隣の隣町で確かめたい事があるんだとヨシオは言う。

危険が迫ってもいけちゃんはいないんだよといけちゃんが忠告すると、分かってる…、でも僕1人で行かなきゃリアルにならない…とヨシオは答える。

自分で詰めた弁当と、牛乳入れに入っていた牛乳瓶を1本駕篭に入れると、ヨシオは自転車で出発する。

二丁目トンネルを抜け、港沿いの道をひた走るヨシオ。

電柱の天辺に乗ったいけちゃんがそれを見送る。

金髪女が運転する赤いスポーツカーに追い抜かれたヨシオは、突堤で弁当を食べる。

朝起きて来た美津子は、ちゃぶ台の上に置いてあった卵料理と、「日曜日くらいごはんつくらないでたっぷり寝てください」と書かれたヨシオの置き手紙を見つける。

道路脇で集まっていた少年たちの姿にヨシオは気づき、海の側にヤスとたけしがいる…と考えるが、自分んお法を振り返った少年の中に2人はいなかった。

自転車のスピードを上げその場所を通り過ぎたヨシオは、やがて小さな集合住宅のある場所へ到着する。

あった!と呟いたヨシオの前には、父親がはまって死んだドブ板のある溝と、ピンクの出目金が飾ってあるアパートの部屋があった。

ピンクの出目金女…と呟きながら近づくヨシオ。

隣の隣の隣町…、ドブ板の溝…、ピンクの出目金人形の下には近所が泳いでいる水槽があり、ベランダにはプラモデルの戦艦が置いてあった。

ヨシオは父親がはまったと言う溝に入ると、中で横たわってみて青空を見上げる。

お父さんはこうやって空を見ながら死んだんだ…そう考えていたヨシオは、ピンクの出目金のベランダに干してあった赤い洗濯物を取り込む女の気配が聞こえたので、そっと立ち上がって覗いた後、又溝にかがみ込む。

その時、下水が流れ込んで来るが、ヨシオは臭いのを我慢して横たわったままだった。

そして、急いで女の部屋のベランダに近づいたヨシオは、そこに合った戦艦のプラモデルを手に取り部屋を覗き込むと、女の他に、ビールを飲んでいた中年男と目が合う。

急いでプラモデルを持って自転車に戻ったヨシオはそれを駕篭に入れると急いで逃げ出す。

そして、人気のない小さなトンネルの中に来たヨシオはプラモデルの戦艦を足で踏みつぶす。

そこに、われ、何もんじゃ?この辺のもんやないな?と言いながら近づいて来たのは、さっき道路の側にたむろしていた地元の悪童グループだった。

どっから来た?とリーダー格に青年が聞くので、愛と正義の国から…とヨシオが答えると、自転車に書いた住所を読んだ少年が西の原、ヤスとたけしのおる所…と教える。

ヤスとたけしか…、われ、知っとるか?とリーダーが聞いて来たので、知ってたらどうする?とヨシオが聞き返すと、いきなり少年の1人がヨシオの自転車を蹴り飛ばす。 何するんだよ!と抗議すると、あいつらには昔ぼこぼこにされた借りがあるんだよとリーダーが言い、あいつらに嘗められたままじゃすまんからなと別の少年が言うなり、リーダーが殴り掛かって来て、その後他の少年たちも加わって袋だたきに遭う。

そこに近づいて来た赤いスポーツカーの男がクラクションを鳴らし、こら!ガキ共、何をやっとるんじゃ!と声をかけて来る。

悪童共は逃げて行き、赤いスポーツカーから降りて近づいて来たのは、来る時に追い越された金髪のケバい女だった。

大丈夫?ヨシオくんと声をかけて来たその女はみさこだった。 あれ?みさこさん?みさこさんじゃない…、偽みさこさんだとヤスオは断定する。

するとみさこは、いややわ~、私おしゃれになったもんやから分からんのかな~とみさこは言い、それよりずぶ濡れやんと言いながら、ハンカチでヤスオの頭を拭こうとしたので、いらない!と言ってヤスオはその手を払いのける。

何で?とみさこが聞くと、香水の匂いが変だ…、髪の色もパチンコ屋みたいだし…とヤスオは指摘する。

何で~?金色趣味て言うてたやん、ほんまの私はこんな感じよとみさこは髪を触りながら微笑む。

その時、どうする?帰るんかい?とスポーツカーに残っていた男哲(柄本時生)が聞いて来たので、うん、この子送ったって!ありがとう!とみさこは答える。

自転車と一緒にスポーツカーに乗せてもらって帰ったヨシオだったが、前の席でいちゃつくみさえの様子を気にしながらもくしゃみをする。 帰宅したヨシオはその夜、熱を出して寝込んでいた。

夢で見たのは海の中の光景だった。

(夢)おかえり…大冒険だったね?といけちゃんの声が聞こえたので、いけちゃんは夢にも出て来るの?と聞くと、私はどこにでもいるんだよ…といけちゃんは答える。 布団に横たわった老人(峯のぼる)が見えた。

枕元には回り灯籠が置いてあった。 僕のお葬式が始まるんだね?とそれを側で見ているヨシオがいけちゃんに聞く。

何で分かるの?といけちゃんが聞くと、何でかな?とヨシオ自身も不思議がりながらも、これは僕だ、死んだんだね?僕は…と呟く。

参列者等葬儀の様子を見たヨシオは、意外と普通だな、がっかりだよ…、良くもなく悪くもなく…と感想を言う。

リアルってこの辺りかな?でも僕結構人気者だったみたい…と喜ぶヨシオ。

さみしい?でもみんな寂しいよ…といけちゃんは聞いて来る。

こんなもんだよ、正直に生きてれば良い事あるなんて嘘だしね…などと冷めたことをいけちゃんが言うので、僕が死んでる時に人生の心理をぼやくな!とヨシオは注意する。

そして、ヨシオといけちゃんの身体は宙に浮き上がり、港町が眼下に見える。

働いているヤスとたけし、マツやトモ、きょうちゃん、ピンクの出目金の女、悪童共、ケバい化粧してスポーツカーで哲といちゃついているみさこなどが見えた。

空中に浮かんだヨシオは、ああ思い出した、この風景は見た事がある!と言い出す。

多分前世に…、いや、前世の前世かも…、僕は何回も何回も生まれ変わってて、そのたんびにこの風景を見るんだ…、僕はちゃんと自分で決めて生まれて、自分で決めてちゃんと死んでるんだとヤスオは言う。

それを聞いていたいけちゃんは、良く気付いたねと褒めてくれる。

でもこれは熱にうなされている夢で、目が覚めたら忘れちゃうんだとヨシオがぼやくと、分かんないよ、君は本当は死んでて、次に目が覚める時には又生まれるときかもしれない…といけちゃんが言う。

(現実)夜中目覚めたヨシオは、額の上にいけちゃんが氷嚢代わりに乗っている事に気付く。

熱が下がりトイレでおしっこをしていると、外で車の音が聞こえたのでパジャマ姿のまま外に出て見ると、おお、今日の坊主!とみさことスポーツカー方荷物を下ろしていた哲が声をかけて来る。

何やってるの?と聞くと、これからこの町を出るんや、哲とどっかで暮らすわとみさこが言う。

言うたら駆け落ちやな…と哲が解説すると、いや〜ん、駆け落ちって…とみさこが哲に甘えたように腕を叩くので、みさこさん、変だよ…、一体どうしたの?とヨシオは聞く。

するとみさこは、私はな、ずっと良い子の振りして来たんもよ、本当の自分はもっと暴れたいのにおとなしい振りしてただけ。

家にいるときは監獄にいるみたいやったわ、私はやっと翼を手に入れたんや…と言うと、見つからんように食べと言い、又飴ちゃんを差し出す。 ヨシオはその手を振り払い、こんなのいらないと拒否する。

みさこは苦笑し、ヨシオの頭をなでると、スポーツカーに乗って去って行く。

翌朝、今日未明に起きた事故の現場です!とテレビで女性レポーターが伝えていた背後には、突堤に衝突したいはした赤いスポーツカーと、運転手池之端哲(18)(無免許運転の疑い)と書かれた写真付きのテロップが映し出される。

現場は見通しの良いカーブで、警察によりますとスピードの出しすぎが原因ではないかと見て捜査しています…、なお、運転していた池之端哲さんは無免許で…と言うTV画面を、起きて来たヨシオは呆然と見つめる。

その後会ったみきは、めっちゃかっこ悪いわ…、あんなぐちゃぐちゃな事故で2人とも無傷って… 無傷なのに出戻りのみさこ姉は傷物扱い…、いっその事死んでたら伝説になって、毎年あのカーブでヤンキーが煙草で焼香してくれるのに…やとぼやく。

そんなみきの隣に座り、彼女の犬をさすりながら、僕はみさこさんの何を知ってたんだろう…とヨシオは呟く。

みきは空を見上げ、ああ、私もどっか飛んで行きたいわ…、この町に残っている女はダメな側の女や、私は出て行く側になる!と大人びたことを言う。 それを聞いたヨシオは、どこへ行っても同じだよと言うので、え?とみきは驚く。 どこの町にも、その町のヤスやたけしがいる。

無人島に行かない限り同じ壁に突き当たる…とヨシオは答える。 空にいけちゃんが飛んでいる。

雨の日、いつものようにヤスとたけしと対峙するヨシオ。 近くでは傘をさしたマツとトモ、きょうちゃん、みきが見ている。

ヨシオは、殴って来る相手と相打ちのような形になるが力負けする。

いつものようにヨシオを倒したヤスは、見物していたマツたちの方に石を投げて来るので、慌てて4人は傘でガードをする。

ヨシオは、ひまわり牛乳店の手伝いをするようになっていた。

重い瓶のケースを運ぶの難渋していると、清じいさんが拳を握りしめてみせる。

最近さ、コツが分かって来たんだ、殴られそうになった瞬間前に出て相打ちにすると、こっちのパンチも入るんだ…、それが怖いけど、実は一番痛くない…、滅多に成功しないんだけどねと、家で額に絆創膏を貼りながらヨシオはいけちゃんに話す。

その時、ヨシオ早く寝なさい、私明日から朝早いシフトにさせてもらったから…と美津子が言いに来たので、母さん、この間さ、ピンクの出目金の女の人の所行って来たよとヨシオは打ち明ける。

え?と驚く美津子に、お父さんの死んだ場所、見て来た…とヨシオが言うと、何て事すんの、そ、その女の人には会ったの?と美津子は興味があるように聞いて来る。

ヨシオは首を横に振ると、覗いただけで話しはしてないよと答えると、何かがっかりしちゃってさ、この家とは違うキラキラした暮らしがあるのかと思ったら、案外汚くて、案外普通で、案外何でもなかったと教える。

そんな所に…行ったらあかんやないの!と美津子は叱るが、ねえ、どうしてお父さんは標準語で話してたの?どうしてここの言葉でしゃべらなかったの?とヨシオが聞くと、何でって…、お父さんは学生時代、東京に行った時にここの言葉で話さんようになったって…、東京に通用するため無理したって…、その無理が直らんようになったって…と美津子は教える。

父の遺影のある部屋を立ち上がって廊下にいた美津子の横に立ったヨシオは、僕のこの言葉はお父さんからもらったんだよ。ごめんなさい、もうあそこへは行かない、お休みと頭を下げ自分の部屋に戻ろうとする。

しかし振り返ったヨシオは、ねえ、お父さんはへたれだったのかもしれないねと言うと、そんなことないわよ、お父さんは芯の通った大人物よと自信ありげに答える。 お母さんがそう言うなら、本当はそうだよ!とヨシオも笑顔になる。

そんなヨシオの様子を廊下で見守っていたいけちゃんの隣に出現したあずき洗いは、人は大人になると、我々の事を忘れてしまうんだよ…、押し入れに入れて二度と出さない宝箱みたいに…、そろそろお別れの頃合いやで…と言うあずき洗いの周囲には、かつてヨシオが怖がっていた家の中の化け物たちが集まっていた。

そんな中、もう少し彼の側にいたい…といけちゃんは寂しげに呟く。

ある日、いつもヨシオたちが遊んでいた広場に、自転車でやって来た隣の隣の隣町の悪童共が、広いな〜、ちょうどええ広さや、ここにしようや!とリーダーが言う。

何して遊ぶ?と別の少年が危機、とりあえず立ちションするわと立ち小便をしようとした少年の所に石が飛んで来て、誰に断ってここで遊んでる!とヤスとたけしが現れる。

すると悪童グループのリーダーは、関係ないわ、俺らはここで遊ぶ…と不敵に答え、グループの少年たちはにらみながらヤスとたけしの側に集まって来る。

バットを持ったみきとヤスオが駆けつけると、きょうちゃんが美智に腰を抜かしていて、マツとトモが、お前も逃げろ!と言いながら広場から逃げ出していた。

何だ?こりゃ…と呟いたヨシオが見たのは、悪童グループからぼこぼこにやられているヤスとたけしの姿だった。

いけちゃん、何てこった!、これは夢?と話しかけると、夢なんかじゃないよ、痛くて怖い現実…といけちゃんは言う。

お前らは存在の価値がない…、生きててごめんなさいと言え!と悪童のリーダーが迫り、ヤスは顔を踏まれていた。

もうあかん!もう許して…とヤスは痛がり、倒れていたたけしも、ヨシオ…助けて!と助けを求めて来る。

その時、ヨシオに気付いた悪童共は、お?ニューチャレンジャーか?と嘲り、一斉に近寄って来る。

上には上いて、上の上には上の上の上がいるんだ…とヨシオは呟く。

無限に続くんだ、宇宙人や恐怖の大王に続く…、これは連鎖なんだ…と行っていると、何ぶつぶつ言うとるんじゃ?と悪童共が声をかけて来る。

お前、この間のガキやな?と悪童の中の別の1人が気付くと、ほんまや、ヤンキーに邪魔されたプラモのガキや…とバットを持っていた少年が言う。

リーダーも思い出したようで、ああ、続きしようけ?と誘って来る。

数で勝ったら…、ヤスとたけしがこんなに簡単にやられるはずがない…、卑怯だ

!数で勝ったら…とヨシオは指摘する。

じゃあそっちも数揃えろや!それかタイマンはるか…と悪童は言い返して来る。

え?と驚くヨシオに、宅地開発で俺らの遊び場がなくなったんじゃ、今日からここで俺らが遊ぶわ、出て行け!とバットの少年が言う。

ヨシオはしばし考え、いや、野球で決めようと提案する。

はあ?と悪童は驚くが、そっちは9人だろう?勝負は野球で決めようとヨシオは答える。

何で野球じゃ?とリーダーが聞いて来たので、下手なのかよ?とヨシオが聞き返すと、バカにしとるのか?野球でも何でもやったるわい!と悪童共はむきになる。

それを聞いたヨシオは、良し!野球で勝った方の勝ちだ、良いな?とルールを説明する。

悪童のリーダーは、ヘタレばっかりで集まるのか?と指を鳴らしながらバカにして来る。

ヤスの石投げをしらないな?超豪速球でほとんど見えないんだぞ!頭をもぎ取られるくらいのたけしのフルスイングだって、どんな球だって海まで飛ばすぞとヨシオが言っていると、それを聞いたヤスとたけしが起き上がる。

きょうちゃんラジコンだって、外野フライ完璧に取れるし、トモとマツの超速い足なら盗塁王だ、後みきちゃんもいるし…、みさこさんだって出戻って暇だし…とヨシオが説明すると、後ろで聞いていたみきが、何でみさこまで?と聞いて来るので、変わりたいって言ってたし…とヨシオは答える。

それを聞いていたリーダーは、8人やないかい、後1人は?と聞いて来る。

あ、後…、いけちゃんがいるじゃないか…と思わずヨシオは答え、横を見るが、いけちゃんは見えなかった。

いけちゃん!と呼びかけると、ヨシオ、自転車に乗る時には最初後ろを持たれて走るじゃない?でもその内、その手を追い越して勢いがついて行く…、おめでとう…、今日君は本当に1人で漕ぎ出したんだ…と語りかけるが、その言葉はヨシオにはもう届かなかった。

いけちゃんが見えないので狼狽するヨシオに、まあ良いわ、やろう!と悪童共が賛同する。

メンバーを揃えるから明日来い!とヨシオが言うと、は?逃げるのか?と悪童共はバカにして来るが、ええやろ、明日の終業式終わったら来るぞとリーダーが言う。

どっちがここをシマにするか決闘や!とヨシオの前で言うと、おい、行くぞと仲間たちに呼びかけ帰って行く。

ヨシオの回りに集まって来たヤスが、どうすんねん?野球って?と不安げに聞いて来るが、いや、ヤスオの言葉で助かったんや、野球やったらみんな出来るし、あの采配、結構いけるかもと思ったとたけしは庇って来る。

逃げようよとトモは提案するが、みきが、あいつらに顔覚えられたで、あの人数逃げ切れへんと釘を刺すと、僕何したらええ?ときょうちゃんはうれしそうに聞いて来る。

この野原を守る事は僕たちを守る事だと思う…とヨシオはみんなに言うと、持っていた櫂を地面に突き刺したたけしが、ヨシオが指揮官や、みんな従えと言い出す。

腕力だけやと負けるけど、ヨシオの言ったやり方なら勝てるかもしれん。

ぎゃふんと言わせるぞ!とたけしが言うが、それを聞いたヨシオはプレッシャーに怯え、負けたら終わりだ…、僕はこの連鎖を終わらせたい…と言う。

その夜、ヨシオは自転車に乗って町内を走りながら、いけちゃん!どこに行ったんだよ?絶対勝たなきゃいけなくなったんだ!と探しまわっていた。

そんなヨシオを自転車で追って来た美津子は、ヨシオ!今何時やと思ってるの!棍棒ぶん殴りの刑にするよ!と叱る。 ごめんなさい、パンクしたんだ、先に帰って!とヨシオは背後の美津子に声をかける。

しかし美津子は自転車を降り、自転車を押していた良しと並んで歩き出すと額の絆創膏を触ろうとしたので、止めてよ!とヨシオは拒否する。

こんな時間まで何してたの?どこへ行ってたの?と美津子が聞くと、いちいち干渉しないでよ!母さんの出る幕じゃないんだ!子供には子供の事があるんだ!とヨシオは言い返し、自転車を来いで先に行こうとする。

漁師の子供の事?お父さんの事?あんたは何でも1人で見抜いて、1人で勝手に考えて!私はあんたの母親よ!あんたは1人やないのよ!と美津子が呼びかけると、お母さんだって1人なんかじゃないのに!と言い返したヨシオは自転車を漕いで行ってしまうので、ヨシオ!と呼びかけた美津子は立ちすくむ。

あの子…、いつの間にあんな事言うようになりよったんやろう?と美津子は驚いたようだった。 どうなん?子供に励まされるって…、ねえ、どう思う?と美津子はいけちゃんに問いかける。

え?私?と語りかけられたいけちゃんが驚くと、やっと会えた気がすると美津子は言う。

今までヨシオと一緒にいてくれてたんでしょう?と美津子が聞くと、私が見えるんですか?といけちゃんは戸惑いながら聞き返す。

見えてる訳やないんやけど、気配を感じるんです。ま、私の独り言かもしれんよ…、あなたがヨシオを1人にさせなかったのかも…、ありがとう…、あんたは神様かもしれんと思うて…と美津子が言うので、神様だなんて…、私はただヨシオくんの側にいたいと思って…といけちゃんが答えると、ヨシオを神隠しにするのだけはご勘弁を…と言い、深々とお辞儀をした美津子は自転車に乗って帰って行く。 その後ろ姿に、いけちゃんもお辞儀をする。

翌日、いよいよ、隣の隣の隣町の悪童グループが自転車でやって来て、ヨシオたちのグループも広場に揃ってやって来る。

みさこも金髪にくわえ煙草で参加していた。

ヨシオは持参したミットを叩いて、広場に両軍整列する。

逃げずに来たかと敵のリーダーが言うと、お前らの好きにさせるか!とたけしも言い返す。 力で心が変えられるもんか…とヨシオは呟き、戦いを始めるぞと宣言する。

「わしら」と「オレら」チームの試合が始まる。 ヨシオたちがまず守備となり、ヨシオがキャッチャーミットを構える。

ヤスが全速力で球を放ると、打者はぴくりとも動けないまま三振となる。

球を受けたヨシオは受けるたびに痛みに耐える程だった。

それを見た敵の悪童チームはあっけにとられる。

2番バッターが打ち上げると、ヨシオが走って受け取り、良し次!と叫ぶ。

次の打者に投げた球がヨシオの顔面を直撃したので、みきがヨシオ!と声をかける。

顔の痛みを絶えながら、ヨシオは、ヤス、手加減するな!今の球、遅いからタイミング合わされてるじゃないか!ヤスの石はもっと早かった!と指示する。

ヤスオ…とヤスが驚くと、勝ちに行くんだろう?勝ちに行こう!とヤスオが呼びかけ、ミットを叩いて、もっと濃い!と発破をかける。

1球ストライクの後、敵が撃ったので、又ヨシオが走り出すと、マツとトモが一緒に走り出し、途中、障害物につまづいて転びかけたヨシオをマツが支え、先に進んだトモが楽々フライを受け取る。

トモ…、マツ…とヨシオが驚くと、1人で頑張りすぎや、俺たちかておるわとマツが励ます。

戻って来たトモも、昨日言えんかった、オレお前が友達やと言う事、自慢に思うよと言いながら球を返して来る。

回が変わり、ヤスオチームの一番みさこがバッターボックスに立つ。 ヒットを打ったみさこは、1塁に出た所でタバコを吸い始める。

2番のトモもヒットを打ち、1塁2塁になる。 3番マツもヒットを打つ。

回が変わり、敵のリーダーが打った球がきょうちゃんの方へ飛んで来る。

右右!後ろ!後ろ!ばんざ〜い!とヨシオが指示すると、その通りに動いたきょうちゃんのグラブに球がちゃんと入ったので、良し!ナイス!きょうちゃん!とヨシオは喜ぶ。

左バッターボックスにみきが立つが、バントをした後3塁の方へ駆け出したので、全員で違う!と叫ぶ。

4番オレ!と言ってバッターボックスに断ったたけしはいつもの櫂を持っていたので、バットちゃうやんけ!ピッチャーになっていた敵のリーダーが抗議すると、オレの魂で打つんじゃい!と言いながらたけしは櫂をバットのように構える。

リーダーが投げると、たけしはホームラン級のヒットを放ったので、ヨシオチームは大喜びし、それを見ていたみさこは、良う飛ぶな〜、海の向こうまで行くかな〜?と煙草片手に感心する。

さすがに、あいつら意外とやりおるな…と気付いた敵のリーダーは、もうええわ、やってまえと仲間に言われると頷く。

きょうちゃんがバッターボックスに立つと、リーダーはわざときょうちゃんの頭にデッドボールを投げて来る。

ヨシオたちは、きょうちゃん!と驚き、わざとや!とヤスが指摘すると、気色ばんだたけしが立ち上がろうとしたので、たけしが殴って1人倒しても、後みんながやられる、忘れたのか、喧嘩じゃ僕らは負けるんだと言ってヨシオが止める。

デッドボールのきょうちゃんはそれでも笑顔で塁に出る。

次は?とたけしが聞くと、僕…とヨシオが答える。

しかし、ヨシオも又、頭にデッドボールを食らったので、あからさまや!とヤスは抗議する。

しかしヨシオは、当たってないよ、気のせいだよと言うとバターを構え直す。

めっちゃ喚いたやんけ!とヤスが言うと、ヤスの投げる石より全然弱い、こんなの当たったうちに入んないとヨシオは答える。

2球目も顔に向かって球が来たので、ヨシオ、又顔!とヤスが叫ぶ。

その時ヨシオはバットを話した右手で手刀を作り、殴られて痛くないコツは相打ちを狙う事かな?と言いながら、ボールを叩き付けると、跳ね返ったボールはピッチャーの顔面に当たる。

鼻血を出したリーダーも驚くが、当たった!必殺技だ!と自分の右手の手刀を見ながらヨシオも驚く。

敵のリーダーはグラブを投げ捨て、お前〜!と言いながらヨシオに近づいて来る。

たけしもリーダーに近づき、ヤスが石をリーダーに当てる。

敵チームとたけしが乱闘になる。 きょうちゃんも乱闘に参加し、みさこも、スカートをまくり上げて、ベンチを放り投げ乱闘に参戦する。

そこに自転車で通りかかった清じいが、こら〜!お前ら、何やっとるんじゃ〜!と喚きながら、鬼のような形相で駆けつけて来る。

敵味方関係なく清じいが戦いを挑み出した後、近くの漁民たちや警官がやって来る。

やがて、パトカーや主婦たちも集まった中、こら!喧嘩したらいかんだろうが!喧嘩しても何の解決にもならんと警官たちや清じいから説教される子供たち。

そこに、近所の主婦に連れられ美津子も駆けつけて来る。

悪童グループが全員自転車に乗って帰りかけたので、ねえ!と呼びかけたヨシオは、遊ぶ所がないんだったら、又明日、ここに来てよ!と呼びかける。

なんて?とリーダーが驚いたように聞き返すと、野球の続きやろうよ!とヤスオが笑顔で呼びかけたので、悪童たちは互いの顔を見合わす。

たけしが、感心したようにヨシオの肩に手を置く。

ヤスもうれしそうにヤスオを小突いて来たので、ヤスオも笑って小突き返す。

そんな息子の様子を見ていた美津子は泣きそうになり、ヨシオ…、何か大丈夫みたいよ…、お父さん…と言いながら空を見上げる。

互いに笑い合うヨシオと仲間たち。

いけちゃんは空の上から見下ろしていた。 翌日、野球に行ってきます!と言って家を飛び出したヨシオは、門の外で待っていたいけちゃんに気付かなかった。

走って行くヨシオの後ろ姿を見ていたいけちゃんは、君はいつの間にか走るの早くなっているね、一緒に走っていると思ったら、君はドンドン先へ行く…、あなたの後ろ姿が好きなの…と呟く。

広場で悪童グループとの再戦に挑むヨシオ。 教えてあげなきゃって思ってね…、ねえ、夏が終わるよ… 赤とんぼが飛ぶ秋になる。

浜辺で海を見つめていたいけちゃんの元に、いけちゃん、久しぶり!どこ行ってたんだよ?もういなくなったのかと思ったよ…と呼びかけながらヨシオが駆けて来る。

て言うか、みんなと野球してて忘れてたよとヨシオは言う。

やっと又会えたね?良かった…、次いつ会えるか分からないからさ…、でも忘れてたって事はね…といけちゃんが話しかけると、ちょっと待って!とそれを遮ったヨシオは、野糞するからと言う。

その後すぐ、終了!と言いながら戻って来たヨシオに、野糞も早くなったね!と喜ぶいけちゃん。

今日は一緒に寝ようよ!話したい事一杯あるよ!と笑顔でヨシオが言うと、うんといけちゃんは喜ぶ。

そいでね、今日のマツとトモの活躍はね…と家に帰ってヨシオが語りかけたのは美津子だった。

すごくない?たけしの打率も6割だしな…と話しながらご飯を御代わりするヤスオに、食べすぎだよと注意する美津子。

ほんま良う食べるわ…、又働かな…と美津子はうれしそうに言う。

風呂に入ったヨシオは、それでね、ヤスとたけしと来たら超びびってやんのと言いながら1人で頭を洗いながら、シャンプーハットをかぶったいけちゃんにも話す。

でも僕だって、足ががくがく震えてさ〜 布団に入ったヨシオは、いけちゃんが内輪で扇いでいる中、話疲れて寝入ってしまう。

夏を過ぎた男の子は日向の匂いがする…といけちゃんは語りかける。

君の顔、額が広くなったね…、色んな事を考えるから… 唇はへの字になったよね…、たくさん黙ったから… もう、男の子の時間が終わっちゃったんだよ… ここからは1人で行ってね…と言いながら、いけちゃんは寝入ったヨシオにそっと寄り添う。

気がついたヨシオは、夢の中でいけちゃんに乗って空を飛んでいた。

凄いね、いけちゃん!何だよこれ! もうこんな形で会えないかもしれないから…と言いながら、いけちゃんはヨシオを乗せ朝日に向かって飛んで行く。

まぶしそうに光を手で遮るヨシオは光の中に入って行く。

砂浜を歩く老夫婦。

地上に降りたいけちゃんの背中から降りたヨシオは、手をつないで海を見る老夫婦の背中を見守る。

あれ?あれは僕だ!夢で見た、未来の僕だ!とヨシオは気付く。

隣にいるのは…?とヨシオが不思議がると、私…といけちゃんが答えたので、え?いけちゃん?いけちゃんは人間だったの!とヨシオは驚く。

繋いでいた老夫婦の手が離れ、置いたヨシオの姿はお墓に変化していた。

その墓に花を手向け手を合わせる老婆を前に、私は人生の最後のほんの何年かを過ごしたあなたの最後の恋人…といけちゃんは打ち明ける。

いよいよ私にお迎えが来る時、神様に祈ったの…、1つだけお願いがあります。

あなたと過ごした時間はほんの少しだったから、あまりにも短い恋だったから…といけちゃんは言う。

あなたの子供の頃に会いに行きたい…と老いた池子が墓をさすりながら呟く。

でね…といけちゃんが言うと、墓の前にいた池子は赤い光となって天に昇って行く。

(過去)赤ん坊を抱いて笑顔で自宅から出て来る美津子と茂幸。

空から舞い降りて来た赤い光はいけちゃんになって、その側に立って幼いヨシオを見上げ笑顔になる。

(現在)ありがとう…、私、あなたの子供の頃を見られて幸せだった…といけちゃんが言うので、 池ちゃんはいつも側にいて、池ちゃんの何となく側にいて、いけちゃんは誰?なんて考えた事もなかったのに…とヨシオが悲しむと、それで良いんだよ、妖怪やお化けは子供にしか見えない。

だから私は君から見えなくなって行く…と言いながら、池ちゃんの姿は薄くなって行く。

いけちゃん!ちょっと待ってよ、いけちゃん!と去って行く池ちゃんに呼びかけるヨシオ。

君が寂しくなって、誰かに甘える子供に戻りたくなったら、又いけちゃんに会えるかもね…と半透明になったいけちゃんは言う。

でも、私も君もそれをもう望まない…と言いながら、泣き出したいけちゃんは浮き上がって行くので、いけちゃん!待ってよ!勝手に行かないでよ!とパジャマ姿のヨシオが追って来る。

僕まだ、さよならもありがとうも言ってないよ!と呼びかけるが、いけちゃんは青空に消えながら、ヨシオ!と呼びかけて来る。

ヨシオは、しらを見上げ、ありがとう!と言葉をかけると、空のいけちゃんは涙を流し、愛してると答える。

いけちゃん!いけちゃん!と呼びかけるヨシオ。

遠い遠い未来、いつか私を探してね?待ってるから…と言いながら、いけちゃんは空の彼方に消えて行く。

いけちゃんがずっと待ってた人って…、僕…、大人の僕…と空を見上げながら気付くヨシオ。

私、あなたを待っているのなら得意なの…といけちゃんは言い残す。

いけちゃん… パジャマ姿で自宅に帰って来たヨシオは、門の所で待っていた美津子の姿を見る。

美津子は先にヨシオを中に入れると、一緒に玄関を開けて中に入る。

ネギとしらすを入れた卵焼きを作る大学生のヨシオ(池松壮亮)が、テーブルの所に皿を持って来ると、そこには「いけちゃんとぼくより 大人のぼくへ」と書かれた蝶の鱗粉が付いたスケッチブックと、子供時代の記念写真が置いてあったので見入る。

それから、いけちゃんがこっちを見てるな…とか、通り過ぎたかな?と思った時があったけど、18才の時に東京の大学に入って… 教室の机に座ったヨシオは、隣に座っていた女性ミサエ(蓮佛美沙子-二役)を見て驚くと、相手も気配に気付いたのか振り向いて怪訝そうにしたので、すみません、初恋の人に似てたもんでと謝る。

でもその人は今でも行方不明で…とヨシオが説明すると、いつまでナンパマニアよそれ?と言われたので、本当なんです、俺、ヨシオ、名前教えて下さいと頼む。

最初の授業で隣に座った女の子に初めての恋をして…、遂にいけちゃんが見えなくなった… 窓の外から、談笑するヨシオとミサエの様子を見ていたいけちゃんは、さようなら、私たち、とっても短い恋をしたの…と言うと消えてしまう。

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