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天草四郎時貞

追いつめられた農民たちから救世主に持ち上げられた天草四郎が、冷静に状況を見守ろうとするが、結局、周囲の激情に巻き込まれ、自分の意志とは無関係に破滅へとに追い込まれてしまう無常観が表現されている。

大川橋蔵さんが天草四郎を演じているのだが、肝心の四郎に焦点が合っているような作り方に見えない上に、パーマをかけたみたいな奇妙な髪型に、何故か右目だけ一重まぶたの橋蔵さんの風貌は魅力的とは言えず、意図的なのか、冷静に行動しようとするあまり、弱腰で力不足の理論派みたいにしか見えず、民衆を導くリーダーとしての風格がないのがそのまま映画の魅力のなさにつながっているように見える。

かろうじて、三國連太郎さん演じる転びバテレンのような絵師と四郎の弱腰をなじる謎の浪人役戸浦六宏さんがキャラクターとしてちょっと面白いかな?と言う程度で、後は四郎の友人として妻とともに処刑される大友柳太朗さん、悪代官を冷酷に演じている佐藤慶さんや千秋実さん、平幹二朗さん、農民役の花澤徳衛さんや河原崎長一郎さんと云った脇役陣も大体型通りのキャラクターを演じているだけで、個々のキャラクターが特に魅力的と言う程でもない。

千秋実さんの悪役は珍しいような気がするが…

天草四郎を美化しないと言う演出意図なのだろうが、ではそれ以外に別な魅力があるかと言えばそれも見当たらず、一見大作風の展開なのだが、画面的にはかなりの低予算だったようで、寄りの絵が多く、時折挟まれる引きの絵に登場する城や処刑場のセットもベニヤ板で作ったような安っぽさ。

エキストラだけはかなりの人数を投入しており、内田吐夢監督「逆襲獄門砦」(1956)などを連想させるような部分もないではないが、大島渚監督だけに分かりやすい娯楽時代劇と言う感じではなく、討論映画と言うかセリフ中心で動きの要素が少なく盛り上がりに欠ける作品のように感じた。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1962年、東映、石堂淑朗脚本、大島渚脚本+監督作品。 寛永14年(1937年)

禁教令により、島原のキリシタンの農民たちは窮地に追い込まれていた… 近在の農民たちに信望の厚い与三右衛門(花澤徳衛)の家にやってきた代官田中宗甫(千秋実)は、年貢米は30俵であったな?と詰め寄るが、このところの不作で米は1粒たりとも穫れませぬ、我らもこの3月以来、木の実、草の根しか口にしておりませぬと三右衛門が答えると、家にいた三吉(小田部通麿)の嫁(牧淳子)の腹を見て、おぬし妊っているな?と田中は聞く。

木の実、草の根しか口にせぬ者が、良く種を撒いたな?と下品なことを言った田中は、嫁を年貢代わりと称して連れて行ってしまう。

三吉が後を追おうとするので、おめえも捕まるだけだ!と与三右衛門は呼び止めると、お母!おら、嫌だ!と三吉が嘆くので、騎士スト様の教えを忘れたか!力に対し力で対抗してはダメだ!と与三右衛門は言い聞かす。

それでも納得できない三吉は、いつになったら奇跡が起こっておらたちは救われるんだ!と抗議する。

お祈りしよう…、御祈りするのじゃと答えた与三右衛門は、二階に上がると、隠してあったキリストの絵の前にろうそくを点すと、主よ…と祈り始める。 そして与三右衛門は、皆の衆、このままではすまぬ。明日にもみんな捕まるかもしれぬ。

我らは角蔵の所に隠れる事にしますと集まった農民たちに告げる。

その後、天草四郎様に会おうと与三右衛門は言うが、偽物かもしれん、早く角蔵の所へ行って下さいと農民たちは案ずる。

この苦しい世の中、四郎様が噂通り我らを導いてくれる人ならば幸せになれるのだが…と与三右衛門は呟くが、その時、三蔵(和崎隆太郎)が二階へ駆け上り、俺行くから!ダメだったら天国で会おう!と言い出したので、みんな、三蔵を止めてくれ!と与三右衛門は叫ぶ。

タイトル(キリスト像の絵を背景に)

その後、天草四郎(大川橋蔵)に会った与三右衛門は、連れて行かれた嫁は子供を宿しております、子供まで殺すのが神の御意志でしょうか?と問いかける。

倅は刀を持って、嫁を取り戻しに行こうとしたので私は止めようとしましたと訴える与三右衛門の話を聞いた四郎は、あなたの気持は分かりますが、今行けば縛られるだけ…、1人でやれば敗れる正義も、大勢だと実現できる事もありますと諭す。

そこへ、角蔵さんが捕まりました!と言う知らせが届いたので、それを聞いた四郎は驚き、今度は何故事前に分からなかったのか?といぶかる。

その時、1人の若者が千蔵を助けに行くんです!と出かけようとするので、お前のために又この村では何人か死ぬ。

ここは耐えて、しばらく時を待つんだ!と四郎は言い聞かせる。

そんな中、やはり今年は東と西に赤い光が現れた。20年前にいたバテレン様の話では、その時、人々を救う人が現れると行っておられた。私はあなたこそその人じゃないかと思うと老婆が四郎に言葉をかける。

燃えろ!燃えろ!みんな燃えてしまえ!とやけになった為三(河原崎長一郎)が喚く。

その後、四郎の元へやって来たのは絵師右衛門作の娘で付き合っていたお菊(立川さゆり)だった。

お菊は、父が田中宗甫様のお屋敷に絵を描きに行ったのですが、父は本当にキリスト様を裏切ったのでしょうか?私はキリシタン等なくなった方が良いと思うのです。

貴方様も私の事等ちっとも構ってくれませんし…と四郎に恨み言を並べる。

そこへ、今から帰って、倅夫婦の行く末を見届けようと思いますと与三右衛門が四郎に言いに来たので、与三右衛門殿、我らも間もなく会える事になりますぞと四郎は言葉をかける。

お菊は、もし父が四郎様を裏切るような事になっても、私は良いのですか?と聞いて来たので、菊、父は父、子は子だ。お前のような者はそのまま神の域に入れると四郎は答える。

その頃、お菊の父右衛門作(三國連太郎)は、田中宗甫の肖像画を南蛮の油絵と言う手法で描いていた。

モデルとして座っていた宗甫は、側に侍らせた女を触りながら、お前、本当にキリシタンの魔法から覚めたのか?と確認する。

私のあまりに動じやすい心を縛るだけで…、今は絵を描く事で世の中と通じる事が出来ますと右衛門作が答えるので、お前の家に知ろうが出入りしているそうではないか?と宗甫が聞くと、あれは前に娘と結婚する話があったもので…と与三右衛門は言い訳する。

そこへ多賀主水(佐藤慶)が訪ねて来て、絵を描いていた与三右衛門に気付くと、もう傷は治ったか?と嫌みを言って来る。

そして主水は宗甫に、百姓への攻めが手ぬるいようだが?と責めたので、障子を開けはなってみせた宗甫は、庭の池に裸で漬けられている女を見せる。

それを見た主水は、与三右衛門!お前、あの裸の女の絵を描かぬか?他の百姓への見せしめになると勧めるが、今は田中様の絵に掛かり切りなものでございますから…と与三右衛門が答えると、巧く逃げたな…と主水は苦笑する。

後日、キリシタンたちの処刑が行われ、それを馬上から見物していた松倉勝家(平幹二朗)は、同行した主水に、なぜ天草、島原にキリシタンが多いのだとぼやいていた。 その場には岡新兵衛(大友柳太朗)も馬上で整列していた。

縛られた農民の身体には蓑がかけられ、それに火が放たれる。

その無惨な処刑の様子を、隠れた所から与三右衛門や天草四郎らが凝視していた。 火だるまになった農民たちは熱さに耐えかね暴れ回るので、「蓑踊り」と申しますと発案者の田中宗甫が自慢するので、新兵衛、お前も何か変わった趣向があるのだろうな?四郎が侍だった頃、おぬしと親友だった事は分かっておる…と勝家は嫌みったらしく話しかける。

そして、右衛門作、その方、あの「蓑踊り」を描いてみぬか?と勧めた主水は、まだ考えを改めておらぬな?と睨みつける。

それを聞いていた勝家も、絵描きなのか?面白い、描かせい!と命じたので、処刑場の真ん中に行かせられた右衛門作だったが、さすがに倒れて燃えていた農民を描く事等できず、その場に紙を放り投げて一目散に崖の方へ逃げ出したので、鉄砲隊が発砲する。

家に逃げて来た右衛門作は、お父さん、どうしたんですか?と驚くお菊に、逃げるんだ!と伝え、身の回りのものをかき集めようとするが、すぐに役人たちが踏み込んで来て右衛門作は捕まってしまう。

四郎はその後、新兵衛に会うと、何故今度は知らせてくれなかった?と責める。

すまん!今度江戸から来たのは直接下役に命じてどんどんやってしまうので、俺は今まで捕えられたキリシタンの事を教えて来たが、もう出来なくなってしまったんだと新兵衛は詫びる。

しかし新兵衛は、俺はもう侍は嫌になった…、百姓を助けたいんだと言い出したので、四郎は喜ぶどころか、中途半端な決心で言われては迷惑だと冷静に答える。

それでも新兵衛は、おぬしが何を企んでいるか知らんと思うのか?俺に早く侍を辞めろと目で言っていたではないか。俺は決心した!何でもやるぞ!と重ねて言ったので、うれしいぞ、新兵衛!と四郎は感謝する。

城内にも100人くらいキリシタンがいるんだが軸になる男がいなかった、牢番の常吉もそうだと四郎は明かす。

それを聞いた新兵衛は、お前は怖い男だな〜と感心し、また来ると言い残し四郎は帰って行く。

その後、四郎はお菊の自宅にやって来るが、お菊の様子がおかしいので、どうしたんだ?何を悲しんでいるんだ?言ってごらん、苦しい事は身体の中から出す事だ…と話しかける。

するとお菊は、父が捕えられ…と、自分も陵辱を受けた事を打ち明けたので、お前の身体を!と驚愕した四郎はお菊を抱きしめる。

お菊!身体はきれいでも心が汚れている人もいる、身体が穢されても心はきれいな人もいる!汚れているのは身体だ!決してお前ではないぞ!と慰めながらも、どうしても拒めなかったのか?と哀しげに聞くので、お菊は泣き出してしまう。

その頃、城内の牢に入れられていた右衛門作は、田中宗甫らが見守る中、三角石材の上に正座させられた上でむち打ちの刑を受けていた。 田中宗甫の背中には十字架の印も押されていた。

貴様、まだキリシタンを棄ててないのか!貴様、良くも殿の面前でこの宗甫に恥をかかせてくれたな!助かりたくば、せめて四郎の在所を吐く事だ!と宗甫は責める。

その場にいた新兵衛に、新兵衛殿、あなたの奥方から貴殿を案じて申し出を受けた、早く知ろうを捕えてくれと多賀主水が話しかけて来たので、桜がそんな事を申したのか?とた新兵衛は驚く。

あなたは自分で四郎を捕えるしか、自分を救う事は出来ぬ…、私が先に捕まえるかも…と主水は嫌みを言う。

そこへ、右衛門作が四郎の在所を吐きました!三吉の所です!との知らせが来る。 拷問から解放された右衛門作の側に近づいた新兵衛が、俺が分かるか?と話しかけると、岡新兵衛様…と右衛門作は答え、私はキリシタンを棄てました…、あの「蓑踊り」が描けなかっただけですと言い訳するので、今度は描けるのか?本当に描くんだな?と新兵衛が念を押すと、描けません!と右衛門作は絶叫する。

右衛門作!聞け!三吉の処刑を描け!良いか!と迫ると、ご容赦を!と右衛門作が泣きながら拒否するので、芸が身を助けるのは平時の話だ、この島原では芸は身を滅ぼすのじゃ!と言い聞かし、右衛門作は再び牢へ連れて行かれるが、その時、新兵衛は助けようとしかけた牢番(阿波地大輔)の常吉に、今は慎め!と小声で制する。

山善右衛門(芦田鉄雄)の家では、息子の角蔵(吉沢京夫)が種の入った瓶を持ち、俺は百姓が嫌になった!俺は弟を殺された!お父っつあんやおっ母も!もう百姓なんか辞めて人殺しになる!俺は鬼になったんだ!キリストの教えには反するかもしれねえが、田中宗甫を殺しておらも死ぬ!と喚いて、壺を床に打ち付け壊してしまう。

皆さん、そこまで来ましたか…、キリシタン同士飢え死にする他はねえ!と農民同士嘆き合っている中、このわしたちも仲間に入れてくれるか!と言いながら、善右衛門の祖父(加藤嘉)が刀を取り出して振ってみせる。

皆の衆!わしは戦い方を知っている。お前さんたち百姓は刀の使い方を知らない。私はもう年でみんなと共に戦えそうにもない。しかし刀の使い方は教えられる。親の仇、この仇をしかと取れ!と善右衛門の祖父は激励する。

その言葉に勇気を得たのか、農民たちは木の棒等を握って、にわかに剣の練習等を始めるが、そこにやって来た四郎は、何のための剣の修練か?怒りを爆発させたいのか?死にたいのか?と疑問を口にする。

四郎さん、やりましょう!と農民たちは決起を叫ぶので、早まってはならん!まだまだ立つのは早い!立つときは島原だけではなく、長崎や九州全部の仲間たちが立つのを待つしかない!と諭すが、四郎殿に身内を殺されたものの気持は分からない!と農民たちは反論する。

その後、新兵衛の屋敷の馬小屋の中で密かに新兵衛と落ち合った四郎は、思わぬ所で準備が整っているんだ、城内の様子はどうだ?と聞く。

常吉を除いて1人1人に会っている…、もう4〜50人いれば…と新兵衛が教えると、そこに新兵衛の妻の桜(丘さとみ)が食事を手に持って来て、ついこの間気がつきましたわ、うかつな女房ですわ…と自嘲する。

新兵衛は、桜、おぬし、俺と四郎の間を案じてあれこれやっているようだな?俺は覚悟を決めている。

四郎、こいつも昔の友達だ、色々話し合ってくれと言い残し、桜をその場に残して自分は屋敷へと戻って行く。

苦しいお仕事をなさっているとか?と桜が聞くと、それでもしなくてはならない事もあるのですと答えた四郎は、これをもって行かせて下さい、母たちに食べさせてやりたいのですと出された食事の事を言うので、桜はその場で笹に包んでやる。

2人はじっと見つめ合うが、その間、側では馬が飼い葉を食んでいた。

自宅に帰り桜からの食事を受け取った母親は、どこからこのようなものを!と驚きながらも、右衛門作が裏切ったそうです、そのようなものの娘を嫁にする事は出来ませんと言う。

みんなは三吉のうちに行っとると言っとると父が教えると、何!そうでしたか…と驚いた四郎は、家の中に飾ってあったキリスト像に向かって手を合わせる。

父上、私たちも行きましょうと四郎が声を掛けると、何故そのように流血を望むのか?為三と同じで良いのか?と母親が言い出す。

今、東山野の為三の家に集まったものたちを死なせる訳にはいきません。

私はあの人たちと運命を共にしたいのですと四郎が訴えると、御上に逆らう事はザビエル様に背く事ですと母が言うので、母上の言う事が正しいなら、この島原の百姓みんなキリストを棄てたと言う事になるのではないですか?私はこの身を棄てました。

島原の百姓ととともに戦って死にますと四郎は答える。

四郎!私を遺して行くのですか!と言うので、許して下さいと四郎は詫び、菊!一緒に行くか?と聞くと、はい!とお菊も答える。 処刑場では、女が馬に引きずられていた。 それを与三右衛門たちが闇の中から凝視していた。

次ぎの瞬間、隠れていた農民たちが立ち上がり、役人に襲いかかる。 足軽の中には、俺も百姓だ!助けてくれ!と命乞いをするものもいたが、ためらう事なくその場で殺して行く。

そんな中、農民たちを助けて刀を振るう浪人(戸浦六宏)がおり、人を殺すたびにそんな顔になっては松倉は斬れんぞ!と興奮して顔が歪んでいた与三右衛門をからかって来る。 真に助かりました、何故に私たちを助けてくれた?と菊と、拙者はただの世捨て人、気になさるでないと浪人は答える。

田中宗甫の屋敷を襲い、食料弾薬を我らのものにするのだ!と浪人が指示を出すと、この侍が総大将だ!と為三は他の農民たちに告げる。

その後、田中宗甫の代官屋敷を襲撃した一行だが、田中宗甫に対面した浪人は、宗甫!俺の顔に覚えはないか?と聞く。

浪人の顔を見た宗甫は、士官を求めた男ではないか!と思い出す。 代官屋敷を占拠した浪人は、島原城へ繰り出すぞ!と声をあげ、農民たちも、やるぞ!と一斉に時の声を上げるが、翌朝、代官屋敷に駆けつけて来たのが四郎だった。

四郎は、蔵から持ち出した米を炊き出し、女房たちが子供たちに握り飯を食べさせている様子を見る。

出迎えた与三右衛門は、四郎殿、事ここに至れりで…と言い訳する。

しかし為三は、俺たちは四郎なくして立ち上がったではないか!我らに必要だったのはこの人だ!と、座敷で酒を飲んでいた浪人を指す。

四郎に近づいて来た浪人は、お前、そんなに御上が怖いのか?怖がったのは誰だ?わしは時と場合によっては力を使う事を知ってるわと嘲って来たので、おのれ、無法な…、百姓たちにつけ込んで…と四郎が睨むと、わしは挑発等しておらぬぞと浪人が言うので、名乗れ!と四郎は迫るが、逆に浪人は刀を抜け!さすれば名乗ろうなどと言い出す。

四郎が応じないのを見た浪人は、島原城は固めに行ったに違いない、先手先手で行くんだ!皆の衆!口先だけのもの等必要ないのだ!と四郎を無視した事を言い出す。

四郎は、私はこの戦いが重要な事を願っている。最後は神のみぞ知っている。

私はおぬしの下で戦っても良い。しかし、城中の同士を立たせる事が絶対に必要だ。私は行く!待っててくれ!と農民たちに話しかけ、代官屋敷を後にする。

ところがその直後、代官屋敷に噂を聞きつけた浪人たちが大勢集結して来たので、それを見た件の浪人は、ありがたい、百万の力を得た気持じゃ、直ちに行こう!と農民たちをけしかけたので、城中との連絡がつかない、四郎様を待つ約束だ!城兵の鉄砲の餌食になるだけだ!と一部から反論があるが、城に火を点けよう!先手先手が有利だ!などと盛り上がり、全員浮き足立つ。

そんな中、1人の女房が無益な血を流すものではないぞと忠告するが、女子供に何が分かると一笑に付される。

全員代官屋敷を出かけようとしたとき戻って来たのが四郎で、何事だ!城の仲間たちは押さえ込まれ、蟻の入る隙間もなかったと手に入れた情報を教える。

そこに突然桜がやって来たので、桜、何しに来た?と聞くと、新兵衛も危機に陥れられることがないかと城中に行ったと言う。

四郎は改めて農民たちに、皆の衆!城では我らの動きを手ぐすね引いて待っている!と警告する。

しかし、前に進み出た農民が、四郎!これを見てくれ!女房と娘の遺髪だ!私は2人を殺して来た!今さら一瞬たりとも待つ事は出来ない!と訴えて来たので、これ以上止めても無駄だと察した四郎は、お菊に、私の親友の桜だ、頼むぞと託してみんなと行動を共にする事にする。

新兵衛は死ぬのですか?と桜が聞いて来たので、許してくれ、始まったんだ!このままではすぐ負ける戦いが始まったんだ。どうせ負ける戦いですと四郎が言うと、ここから逃げましょうと桜は勧める。

しかし、四郎は農民や浪人とともに代官屋敷を後にする。

その後、火がついて燃え出した代官屋敷の前にふらふらとやって来たのは右衛門作だったので、どうして島原から?とお菊が見つけて菊と、わしが城から出てはいかんのか?と右衛門作は言う。

城内のキリシタンは捕まったのに父さんは出て来た…とお菊が怪しむと、家から絵の具を持って来てくれ、速く!炎が消えてしまうから!などと返事をはぐらかせ、わし程正気の男はおらん…、菊、お前はわしが捕まって時どうなった?それでも神を信じるのか?などと右衛門作は言い出したので、お菊は側に落ちていた刀を拾うと、右衛門作に向かって刀を突きつける。

それを見た右衛門作は怯えながらも、菊!あの空っぽの空に神がいると言うのか!神がいねえと自由に生きれるはずだ。

もっともっと生き抜いて絵を描くんだ!などと叫ぶが、お菊が刀を降ろそうとせずますます近づいて来たので、菊〜!と叫びながらその場に跪いてしまう。

その頃、城内の牢では、うぬが四郎と企てていた内通の企てを知らぬと思うのか?と多賀主水から追求された岡新兵衛が、そうか、この期に及んで嘘はつかん、その通りだ…、だが断っておくが、俺の口から仲間のなを気候とは思うなよと新兵衛は答えていた。

見ろ、城の中のキリシタンはことごとく捕えたと主水が言うので、正に水攻めをされていた常吉に、お前が指したのか!お前、どうしたのだ!と新兵衛は聞くと、主水が代わって、毎日毎日拷問を見て来て、常吉はいかに恐ろしいか知っていたんだ…、右衛門作と言い、人間は弱いものだな…、おぬしを拷問せぬのは武士の情けと思えと言うので、女房はどうした!と新兵衛は聞く。

見張らせといたが、影も形も見えぬ…、四郎の元へおぬしがやったのか自分で勝手に行ったのか?新兵衛、お前、四郎に騙されているぞ、この前女房が来たときも、可愛さ余ってにくさ百倍と言う風情だったぞと主水は嘲る。

そこへ、主水!百姓が城の正面にやって来たぞ!と松倉勝家が慌てて告げに来る。 しかし主水は慌てず、新兵衛、酒の女にうつつを抜かしている殿の事だ…と勝家をバカにしたように伝える。

それを聞いた勝家は、いくら幕府直参と云えど言葉が過ぎようぞ!と背後から不快感を示す。

百姓に打って出ても百に一つの勝ち目もござらん。幕府が来るまで死守するのです。

不名誉は既に決まった事ではござらぬかと主水が冷酷なことを言うので、わしが幕府から咎められるのがうれしいのか?と勝家が聞くと、別に…と受け流した主水は、殿の失策は誰の目にも明らかですと言い返す。

そんな主水に、ここから出してくれ!四郎と対決したいんだ!裏切っていた四郎を殺す!と新兵衛が申し出たので、嘘ではあるまいな?と疑いながらも主水は新兵衛を解き放ってやる。

城の前の農民たちの中に槍を振りかざして馬に乗った新兵衛が乱入し、四郎!四郎はどこだ!と探し回る。

ようやく四郎を見つけた新兵衛は、早く引き上げろ!いたずらに打たれるだけだ、四郎、さらばだ!と伝えたので、桜は預かっている、安心せい!と四郎は答え、それを聞いた新兵衛は満足げに頷いて戻って行く。

それを城から見ていた主水は新兵衛に騙された事に気付き顔を歪める。

大雨が降る中、処刑場の小屋に避難していた四郎の元へ、鍋島が来るぞ!12万の軍勢が島原に向かっているとの知らせが届く。

その後も戦の中で斬りまくっていた四郎だったが、突如、オランダ人たちが大砲で攻撃して来た事に気付く。

何故我らを撃つ!と呼びかけると、お前たちは謀反人だ、御上への反逆となるのだ!とオランダ人たちは返事して来る。

島原城前の農民たちから見えるように、高く立てられた3本の十字架には岡新兵衛と四郎の母と姉が磔にされる。

主水は、バテレンの神の世界より広いぞ!と呼びかけ、ほどなく大群がやって来るぞ!キリシタンを棄てればこの3人は返して一緒に死なせてやる。

断れば火あぶりの刑に処するぞ!と城から四郎へ呼びかける。

それに対し四郎は、主水!良く聞け、肉親を失わぬものは1人としておらんぞ!神の栄光のため全員死を覚悟している。

神の御名の元、我らは死を恐れはせぬ!と叫び返すと、桜殿、こうするしか手はないのだ…と新兵衛を救えぬ事を詫びる。

分かってますと答えた桜は、城壁に近づくと、岡新兵衛の妻桜です!夫と一緒に処刑して下さい!と主水に呼びかける。

その願いは聞き届けられ、桜は新兵衛と同じ十字架の裏側に貼付けられたので、新兵衛は微笑む。

やがて、3本の十字架の根元に火が投じられ、火あぶりの処刑が実行される。 城の前に集結していた農民たちは、額に十字架を巻いているものも多かったが、全員黙してその処刑を見守る。

その中には与三右衛門も混じっていた。 私は勝つ!日本中のキリシタンが立たねばならんとは言え、そのような事にはならないだろう…、さらに言えば、我々を待っているのは死である。座して死を待つより、この島原で幕府の大群に1日でやられるでしょう。

南有馬に原城がある。食料ある限りそこを塒とし、そこに神の世界を作ったらどうか?と角蔵が提案すると、わしは反対だ!それでは松倉を倒せない。

我々は人を殺して来たのに、松倉が悔い改めたら許すと言うのか!愚劣だ!角蔵は人を斬るのが嫌で反対している!一体何の為に立ち上がったのだ!外国人からも嫌われ大砲で撃たれたではないか!与太の反論が出る。

ここはバラバラになった方が…などと与三右衛門が言うと、前は待てと言ったが、今は言わん…などと四郎が答えたので、四郎殿、我々を犬死にさせるのか?と問いつめる。

その頃、悪い夢を見ていたんだ…、もう戦争なんて来やしない…、長い太平の世の中がやって来るんだ…、私にはそれが見えるんだ…と右衛門作はお菊に言い聞かせていたが、突然炎に包まれた十字架が見える。

お前は疑ってるな?と右衛門作が問いかけると、まさか、売っただか?嘘付け!とお菊は睨んで来て、父を斬ろうとする。

やがて菊は泣き出し、マリア像を見る。

行こう、皆の衆!わしは妻や子供を殺して戦いに来た!父も殺された!わしは間違えてるのか?答えてくれ〜!と為三は、処刑場に一旦集結した農民たちに呼びかけるが、誰も答えず、その姿は闇に消えて行く。

皆の衆!誰も百姓について来なかった!今こそ、力に対して力で答えてはいかんのだ!と与三右衛門も呼びかけるが、与三右衛門の意見は、キリストの言葉に隠れて真の神の言葉から逃げようとしている。

キリストはおっしゃった。私は戦をなくす為にやって来たのだとと四郎が指摘する。

すると、皆の衆!この男こそ人を殺したがっているんだ!実の母と姉が殺された時、この男の取った態度を見たか!この上、キ○ガイと戦う事等できん!煽動しているのではない!男は殺され、女共は見るも無惨に足軽たちに穢されるのだ!神の栄光を知らしめるなどと言っても、我らは水呑百姓ではないか!と浪人が呼びかけるので、四郎は我慢が出来なくなり抜刀する。

それを見た浪人は、抜いたな?四郎!と自らも刀を抜いて立ち向かうが、四郎がそれ以上行動しないのを見ると、斬る事も出来ぬウジ虫だ!と罵る。

その時、1人の女房が、そなたは大切な男だ<行きて島原に帰ろうとは思わんか?と問いかけると、腹立ちまぎれに戦って、百姓に何が出来る!わしは斬る!皆なすべき仕事の事だけ心配しろ!と答えた四郎は、面白い!と笑いながら斬り掛かって来た浪人をその場で斬り捨てる。

翌朝、四郎を先頭に農民たちが一斉に出発して行く。

それを後に残る決心をした与三右衛門が合掌して見送る。 処刑場からの下り坂の途中には何本もの棒で作られた粗末な十字架の墓が建っていた。

寛永15年(1937年) 犠牲者の数3万7千余名…


 


 

 

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