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DESTINY 鎌倉ものがたり

「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの山崎貴監督による西岸良平先生原作のマンガの実写化。

一応日常が舞台のようだが、実際は架空の鎌倉とも言うべき異世界で、全体的にファンタジー色が強くなっている。

話そのものは永遠の夫婦愛を描いた物で、子供にも親しみやすい展開になっており、典型的なファミリー映画になっている。

相変わらず、これでもかと言う程の「お涙頂戴」演出だが、大人が泣ける程ではなく、多感なティーン層や女性辺りには泣く方もいるだろうと言った程度の他愛無い印象。

個人的には可もなく不可もなくと言った無難なまとめ方の娯楽映画に思える。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2017年、「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会、西岸良平原作、山崎貴脚本+監督作品。

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車の助手席から外の景色を見る亜紀子(高畑充希)に、運転しているミステリ作家一色正和(堺雅人)が、どうした?と聞く。

新婚旅行終わっちゃったんだな~って、信じられない…、私が作家の奥様になるなんて…、それにしても不思議、先生と結婚するなんて…と亜紀子が言うので、僕は信じられるよ、君と一緒にいられるんだなって…と一色が答えると、もう一回言って!と亜紀子は甘えて来る。

鎌倉の名所を通り過ぎ、一色の車は自宅に到着する。

車を降りた後も一色の腕にすがって甘える亜紀子は、これからは先生とこの家で暮らすんですんですね?それにしてもこの町ってゆったりしていると思いません?と言うので、鎌倉は東京と時間の進み方が違うって言うから…、その内慣れるよ…と一色は言い聞かせる。

タイトル

一色は原稿が進まず書斎で頭を抱えていた。

原稿を家に取りに来た編集者の本田(堤真一)がどうですか?と聞くと、見れば分かるでしょう!と一色は言い返す。

〆切前に結婚なんかするからですよ!と本田はからかうが、亜紀子は一色の作家生活を初めて目の当たりにし、全然ゆったりなんかしてないじゃん!と幻滅していた。

酒を御出ししなさいと一色は亜紀子に時間稼ぎさせようとするが、本田は二日酔いで飲めないと言う。

様子を伺おうと一色の部屋に入ると、鉄道模型などで遊んでいたので、亜紀子は呆れるが、付き合いの長い本田は、先生、もうすぐですね?と呼びかけたので、分かってるね~、本田さん…と一色もご機嫌になる。

無事完成した原稿をもらった本田は、大して飲んでません、しかし独身主義者だと思っていた先生があんな年の離れた中村君と一緒になるとは…と亜紀子の旧姓を言い、奥さん、おいとましますねとからかうように帰って行く。

何か連係プレイみたいですねと亜紀子が一連の動きを思い起こすと、本田さんとはね…と一色も苦笑する。

その時、玄関先にいた2人の前を小さな生き物が通り過ぎて行ったので、今の何?と亜紀子が一色にしがみつくと、ただの河童だろう?ここは鎌倉なんだ、あらゆる妖気が溜まっているので…などと一色が言うと、亜紀子が怯えたので、そう云うのだめ?と驚く。

その後、亜紀子がトイレに入ると、1人では怖いからと外で一色が待たされるはめになったので、参った…、やり過ぎた…と一色は反省する。

今日、出かけるのは言ってたよね?と外出する一色は見送る亜紀子に確認し、だってさ、君はこの家の主婦なんだから…と1人になりたがらない亜紀子に言い聞かせ、亜紀子、君はいくつになった?と聞くと、23ですと亜紀子は不承不承答える。

後、何度には絶対入らないように…、北側の物置、絶対だからね!と念を押し、一色は出かけて行く。

しかし、1人になり、部屋の掃除をしていた亜紀子は、どうしてもその何度が気になり、何?と呟きながら戸を明けてみる。

そこは、古文書やら妖怪関連の資料やら、鉄道模型と言った一色の趣味と実益を兼ねたコレクションルームだった。

こりゃ、ちょっと引きますね…と呟きながら勝手に巻物などを広げてみると、そこには妖怪の江が描いてあったりする。

その時、タンスの上から髪類が落ちて来たので、適当なんだから!と亜紀子はぼやく。

さらに、人間の顔を小さくした剥製を気持悪そうに見ていると、部屋の奥に見知らぬ老婆がいたので亜紀子は悲鳴をあげる。

その老婆は、一色家の先々代、正和のおじいさんの第から仕えているお手伝いのキン(中村玉緒)と名乗ると、勝手に入った事を詫びる。

坊っちゃまはああ見えて抜けてる所があるから…とキンは一色のことを言う。

納戸の整理をしていたと言うと、先代は民俗学者してたと教えたキンは、年も離れているのに良く嫁に来てくれたと亜紀子に礼を言うと、坊っちゃまは母様を早く亡くされ、旦那様も後を追ってなくなられたと一色の過去を教える。

女性には言い寄られたのでしょうか?と気になった事を亜紀子が聞くと、そう云う女性もいるにはいたガ、坊っちゃまが気に入らなくて…、それが奥様にあったら、この人だって!とキンは亜紀子だけが一色の心を動かした女性であると教える。

アルバイトで原稿を取りに来た時、私もこの人と結婚するのかなって思いましたと亜紀子も打ち明ける。

そんな所に一色が帰ってきて、きん、来てたのか?君が家事に慣れるまで来てもらうつもりだったんだ…と亜紀子に説明していたが、納戸があいている事に気付き、見たのか!と驚愕する。

その一色が手に持っていた袋の中味も鉄道模型と分かったので亜紀子が呆れると、天賞堂のNゲージでたった9万円だ、ダイキャストだから…などと一色が言い訳するので、どうして家にお金がないのか分かりました!と亜紀子はがっかりする。

今後、趣味は禁止と言われた一色は、プラモデルも?熱帯魚も?作家はこう云うものでイマジネーションをかき立てるんだよなどと抵抗するが空しかった。

これも高かったんでしょう?と牙のようなアクセサリーを亜紀子が取り出すと、それはただ、僕が産まれた時、手に握っていたんだってと一色は言うので、他に何か隠してるんじゃないでしょうね?と亜紀子は疑う。

一色も、初めて結婚に疑問を感じた…とぼやく。

これ、しまっといて下さいと、亜紀子が納戸で頭に落ちて来た原稿用紙を渡すと、それに目を通した一色は、これは僕のじゃない!と驚く。

「反魂奇譚」甲滝五四朗の未発表原稿だ!絶筆じゃないか?と一色は驚き、これがうちの納戸にあったと言う事は…と何やら考え込み始める。 その後、一色と亜紀子は、江の電で帰るキンを見送りに行く。

自宅に帰る道すがら、キンさんって85歳にしてはしゃんとしてますよねと亜紀子が字感心すると、戦争で夫を亡くしたって言ってるんだけどね、それが日露戦争だって言うんだ、大分サバ呼んでるっぽい、かるく100歳は超えてるだろうと一色は教える。

その時、亜紀子があれ、何だろう?と明るい方向に気付いたので、何でもないよと一色はごまかそうとするが、亜紀子は行灯がたくさんついた祭りの会場のような所が気になるようで近づいて行く。

そこには、人間とは思えないような客が一杯いたが、コスプレしている人いるよ、みんな凝ってるね、本物みたい!と亜紀子は言う。

一色は、ここは魔物たちの市場…、通称夜市と教える。

その時、一色先生!この可愛い方は奥様?と話しかけて来た老婆がいた。

瀬戸優子(吉行和子)だった。

魔物専門の店に気を付けて、それだけ気を付けていれば、ここはお買い得の店が多いのよと優子は亜紀子に教える。

亜紀子は屋台のような店店の展示物を見回り、これ良くない?これも素敵!などと鎌倉彫の盆などを一色に見せる。

そんな中、ある店の主人が、松茸1山300円!と呼び込むので、一駕篭くださいなと亜紀子は購入する。

主人はサービスしとくかなと言いながら1本松茸をおまけしてくれる。 亜紀子と一色が帰ると、角のある店の主人は不気味な笑いを浮かべる。

市場を出て自宅に戻る時、こちらは瀬戸さんちの優子さん、去年亡くなったの…、ここ鎌倉だよ、幽霊も魔物も普通に暮らしているから…と一色が一緒に付いて来た優子を紹介すると、本当に本当?死んじゃってるの?と亜紀子は驚く。

そんな亜紀子のことを、すみませんね、まだ日が浅いもので…と一色は優子に詫びる。

足あるのねと亜紀子が不思議がると、触ってみて!と優子は勧める。

寝たきりの主人がいてね、死に切れなかったの、それで死神に幽霊申請と言うのが出来るって知って、申請が通ると命のエネルギーがもらえるのと優子は説明する。

この町は妖気が充満しているので、実体化して普通の人のように生活できるのよと言う。

優子と別れた亜紀子が、年取ってもああいう奥さんになりたいなと言うので、気の早い話だ…と一色は苦笑する。

もし私が先に死んでも、幽霊申請して世話するからねと亜紀子が言うので、順当に行けば僕の方が先だよと一色は笑う。

生きててよ、先に死んじゃダメだよ!と亜紀子は一色に声をかける。

翌朝、朝食の準備をしていた亜紀子は、昨日買ったばかりの松茸をみそ汁の具として入れてみる。 味見をしてみた亜紀子は、ばっちり!と自画自賛する。

朝食に出されたみそ汁を見た一色は、これって?と言うので、昨日の松茸!と亜紀子が教えると、みそ汁に!と驚くが、繊細な香りがすると言い、一口啜ると、これありだな!と喜ぶ。

喜んでキッチンに戻りかけた亜紀子は、居間で倒れる物音を聞き、慌てて駆けつけると、一色が仰向けに倒れて、口から煙のようなエクトプラズムと一色の霊体が出ていた。

そこにやって来たキンは、こりゃいけませんな、魔物松茸と言い、人間には毒ですと言うキンの協力もあり、煙とともに外に飛び出しかけていた霊体を元に戻し、蘇った一色は、面白かった!この事は甲滝の原稿に書いてあった!と興奮気味に言う。

その時キンが、奥様はお味噌汁を飲んでないでしょうね?と確認する。 亜紀子は、ちょっと味見した…と明かすと、気を付けて!魂が抜けやすくなってますからとキンは忠告する。

それからマスクをして生活する事にした亜紀子だったが、ある日、刑事2人が先生はご在宅で?とやって来たので、先生、何かやらかしたの?と一色に伝えに行くが、一色はいつもの事だよ、地元書には心霊捜査課って言うのがあって、僕はそこの顧問なんだと平然と答え、刑事に付いて行く。

事件現場にやって来た一色は、後頭部を殴られテーブルに突っ伏して死んでいた金光麗子なる被害者の状況を見る。

部屋の中にはカップメンばかりがたくさん置いてあった。

出迎えた大仏署長(國村隼)は、うちのがガイシャの幽霊を呼び出して尋問しているんですが…と煮え切らない事を言うので、一色もその様子を見に行くと、降霊捜査官が麗子の魂を呼び出し、誰に殺されたのですか?と聞くが、分からないと麗子の霊は言う。

どうして分からないのですか?目撃しなかったのですか?と一色が尋ねると、後ろからやられたのと言う。

こうなったら一色先生だけが頼りですと大仏署長は言う。

自宅に戻った一色が机に数枚のメモを並べて呻吟していると、亜紀子が入って来て、それは?と聞いて来たので、言うな!仕事じゃないと教えた一色は、麗子は無茶な投資をして資金が目減りしていたが、彼女にはまだ離婚が成立していない夫がおり、動機的にはこの夫が怪しいと教える。

しかし亜紀子は、旦那さんだよと懐疑的なので、愛なんてとっくに冷めていた…、良くある話さ…、しかし事件のあった日曜日に奴には強力なアリバイがあるんだと一色は悩む。

河童頭の恐山刑事(神戸浩)と川原刑事(大倉孝二)と共に麗子の夫一夫を尋ねると、今付き合っている母子が、事件当日7時から11時くらいまでの間、ずっと一夫は二階にいたと言う。

それを聞いた刑事たちが、これではこっそり出る訳にもいきませんねと悩んでいると、当の一夫が二階から下りて来て、ちょっとパチンコに言って来るわ、あんたらみたいなぼんくらには分かるまいね…、もうすぐこのボロ屋ともお別れか…などと刑事たちを挑発して出かけて行く。

その様子を見ていた一色は、よっぽどアリバイに自身があるんだな…と察する。

二階の部屋に行き、ここからロープで下りたとしても下の居間で分かるな…、例え抜け出したとしても、居間の湘南通りは観光客で一杯なので被害者宅まで1時間半はかかる…と刑事たちは悩むが、その時、部屋のすぐ横を江の電が通過して行くのに気付く。

和田塚駅から一夫の家の近くにある腰越駅に電車を利用したとしても問題があり、一夫の目撃者が皆無だと言う事だと川原刑事は言う。

その時、民家の間をすれすれに通過する江の電を見送っていた恐山刑事が、いつ見ても危ないな~…と呟くのを聞いた一色は、一夫はここから乗ったんじゃないんだ!実験してみましょうと言い、一夫の自宅の二階へ戻ると、こうやったんですよ!と言うなり、窓から通過する江の電の屋根の上に飛び移ってみせる。

翌朝、一色は新聞に自分の協力のもと事件解決の記事が載ったので、それを亜紀子に自慢げに見せながら、夫婦だって愛し合っているとは限らないって事だな…と呟く。

それを聞きとがめた亜紀子は、何か結婚の事になると引っかかる事を言いますよね?と指摘する。

うちの両親が…と言いかけた一色だったが、しつこいな!僕だって言いたくない事あるんだ!と急に不機嫌になり話すのを止めてしまう。

亜紀子は驚き、涙を浮かべながら台所にいってので、さすがに言い過ぎたと気づいた一色は、悪かったなと詫びるが、亜紀子は泣いてません!と背中越しにすねるので、話すよと一色は言うが、もう良いですと亜紀子は止める。 気分が塞いだ一色は小料理屋「静」に向かう。

女将(薬師丸ひろ子)は久々に来た一色に驚き、先生、お久しぶり!と言うので、喧嘩した事を明かすと、喧嘩でもしないと来てくれないんですねと女将はからかう。

客を見回した一色は異様な連中の姿に驚くが、最近は魔物の人達にも来ていただいてるんですよ、企業努力して行かないと…などと女将は笑う。

帰り道、一色は、忌中の札が出た瀬戸家の家から優子と一緒に出て来る旦那(橋爪功)と金髪の奇妙な若者に出会う。

一色に気付いた優子は、今日から晴れて向こうに行くんですと言うので、と言う事はあなたは…と金髪の若者(安藤サクラ)に話しかけると、相手は、死神です!と明るく一色に挨拶し、顔を外してみせる。

家内にはずいぶん待ってもらいましたが、これで2人そろってあちらに行けます…と旦那はうれしそうに一色に言う。

歩いて行くんですか?と一色が聞くと、江の電で、丑の刻になるとこの先の駅に電車が停まるんですと言うので、これも甲滝の小説に書いてある!と一色は驚きながらも、どうしても見たいんですが…と死神に頼むと、他の死者の人が…と死神は迷うが、そこを何とか!と一色は頼み込む。

遠く離れた所でなら…と死神は不承不承に承知し、優子も、丑の刻ですよ!と念を押す。

その時刻、自宅から、まだ不機嫌な亜紀子を連れて駅の見える場所に来た一色は、駅に到着した車体を見て、単コロだよ!昭和55年に廃車になった電車だ!廃車されてもまだ働いてるんだな…、あの単コロ…と子供のように喜ぶ。

私は鉄道マニアじゃありません!とまだ怒っていた亜紀子だったが、電車に乗り込手を振って来た優子と旦那の姿を見ると、仲良いのねと亜紀子は言う。

亜紀子にあの2人見せたかったんだ…と打ち明けた一色は、さっきの話だけどさ…、家の恥なんだけどね、聞いといてもらった方が良いかも…と語りかける。

親父は大学教授だったんだ、調査旅行のため時々家を明ける事があったんだ…と一色は話し始める。

すると母さん、毎日どこかへ出かけるんだよ、不思議に思って僕は後を付けたんだよ。

(回想)小学生の一色が母親の後を付けると、弁当を土産にした母親は見知らぬ口ひげの男の家を訪れる。

(回想明け)大人になってから調べてみたら、その家には甲滝五四朗(三浦友和)が住んでいたんだ。

自宅の納戸にその甲滝の原稿があった…。 知る人ぞ知るマイナー作家。 彼の事を天才と呼ぶ人もいる。

その絶筆が家から出て来たんだ、これは間違いないんじゃないかな? その人が本当の父なのかなってと…と、あの2人みたいなような人もいれば、うちみたいな…と一色が辛そうに語り終えると、その話は忘れましょう、渡しよい奥さんになるから…と亜紀子は言いながら一色に身を寄せて来る。

その時、駅を見守っていた一色が出るみたいだ…お幸せに…と電車に向かって言うと、いつまでも仲良くね!と亜紀子も呼びかける。

駅を出発した江の電は、霧のような中に消えて行く。

鎌倉中央病院 本田が入院したと言うので一色は見舞いに行き、本当に病気だったんですか?と本田に聞くと、医者の話じゃ、もって後一ヶ月だって…とベッドの中の本田は自分でも信じられないように言う。

妻と娘を残して行く事になった…、里子は以外に心配性なんだ…、ひろ子だってまだ小さいし…と遺して行く家族の事が諦めきらないようで、僕は歯がゆい!どうしてやる事も出来ない!と悔やみ、先生、僕が亡くなった後、僕の家族の力になって下さいと本田が言うので、よんどころない事情で死んだ場合、死神が来るんですよ、そこで交渉ですかね…と話しかけた一色だったが、相手の顔を見て、信じてないでしょう?とそれ以上説明するのを諦める。

自宅の台所では、亜紀子がきんから、エボダイを焼く時には一旦冷蔵庫で冷やすのがコツだと一色家直伝の料理法を教わっていたが、白身魚なら何でも…などとキンから伝授されよそ見をしている間に、網に乗せたエボダイは丸焼けになってしまう。

書斎では、一色が原稿に湯のみを倒し、水浸しにしてしまったので慌てて台拭き!と呼び、亜紀子が持って来る。

その時、亜紀子が妙にもじもじしているので、何か聞いて欲しい感じか?と一色が聞くと、冷やしておいたエボダイを焦がしてしまった事を聞き驚く。

その時、電話がかかって来たので一色が出ると、そんな!謝られても…と困惑しながら斬った一色だったが、これなくなった!大里先生とダブって依頼していたんだそうだ!と亜紀子に、仕事がキャンセルになった事を教え、悔し紛れに台拭きをテーブルの上に叩き付けると、ピタゴラ装置の要領で次々に机の周囲の物が倒れて行く。

廊下に出ると、キンが竹刀を片手に険しい顔をしてたっていたので、キン、どうした?と一色が聞くと、坊ちゃん、何か良からぬ物を連れてきましたな?と言いながら竹刀を渡すので、それを受け取った一色は廊下の天井の一画を竹刀で突く。

すると、天井を突き破り廊下に落ちて来た老人がいた。 何者かと聞くと、貧乏神だと言う。

あんた、先生、先生、言われとるから付いて来たんだよ!と貧乏神が開き直ったので、どこで聞いた?と一色は問いつめるが、守秘義務だと貧乏神は偉そうに拒否するだけではなく、来てみたら拍子抜けだ!この前まで取り憑いていた家に比べたら…などと悪態をつく。 取り憑いていた?とその言葉を聞いた一色は、あんた、金光夫人見たでしょう!あの事件を未然に防げたでしょう!と追求すると、また、守秘義務じゃ…、ちょっと目を離した隙に…などと貧乏神は言い訳をする。

さらに、わし程になると大分セーブしといたから、お供え物するんだななどと貧乏神が威張るので、こう云うのをマッチポンプと言うんだ…と一色は亜紀子に言い聞かせる。 一色が貧乏神を追出そうとすると、外は寒いよ…などと亜紀子が貧乏神に同情するように言うので、一色は、亜紀子、正気か!と驚く。

翌朝、朝食を準備した亜紀子は、貧乏神も食卓に招き、一応お客さん、面白い、お客さんは神様です!と1人喜ぶので、一色は呆れる。

貧乏神自身も、良いのかね?などと恐る恐る食卓に座ると、きれいな茶碗だの…と自分用の茶碗を見て驚く。

亜紀子は、100円ショップで買ったものなのとけろっと言う。 貧乏神が白米を少し口にして箸を止めたので、パンの方が良かった?と亜紀子は気遣うが、貧乏神になって8百余年…、こんなに優しくしてもらった事は初めてじゃ…と貧乏神は感激し涙する。

それを見た亜紀子も、大げさなんだから〜…などと照れながらももらい泣きする。

そんな亜紀子を部屋の外に呼び出した一色は、亜紀子!中村君!分かってるのか?あいつは正真正銘の貧乏神なんだぞ!お人好しと言うか何と言うか…と呆れながら注意すると、私、先生と一緒なら貧乏でも平気なんですと亜紀子は答える。

一色は、鎌倉中央病院に又見舞いに来るが、本田が顔なじみの死神と一緒に病室から出て来たので、まさか?と驚くと、先生、僕が見えるんですか!と本田の方も驚く。

そこに、本田の妻里子(市川実日子)と娘のひろ子が病室にやって来て泣き崩れる声が聞こえて来たので、ああ、やっぱりそう云う事ですか…と一色は本田が亡くなった事を知る。

死神は、どうしますか?皆さん、自分のお葬式まで見て行かれるパターンなんっすけどと本田に聞くので、本田は前に一色が話していた幽霊申請の事を思い出し、それを死神に聞くと、死神は言いにくそうに、死神局から生命エネルギーをもらっていたんですが、最近、財務的に破綻しまして…、身近な方から自前でなれ…、お子さんと奥さんの寿命が短くなるんっすけど…と言うので、それじゃ、意味ないじゃないか!と本田は怒り、家族でなくても良いんですよね?などと言いながら一色に近づこうとするので一色は慌てる。

すると死神は、もう1つ方法がない訳でもないっすけどね…と言いにくそうに言い、どうしてもって言うなら、今の記憶を持ったまま魔物になるっている魔界転生コースなんっすけど、あんまりお勧めは…と言う。

数日後、書斎で仕事をしていた一色は、窓を叩かれ外を見ると、そこには蛙の顔をしたスーツ姿の人物がおり、こんなになりましたと挨拶するので、魔物になった本田だと知る。

部屋の中に入って来た蛙人間になった本田は、これでは家族にも会えないし…、魔界転生コースが人気ない訳です…と、がっかりしたように言うと、里子たちがどうなっているか一緒に見に行ってくれませんか?日中からこれでは…と自分の姿の事を言う。

お願いしますよ!と哀願された一色は、〆切近いんだけどな…とぼやく。

それでも、本田を助手席に乗せ、本田の自宅側まで車で送ってやった一色だったが、見ると、里子は大家(稲川実代子)から家賃の催促をされている所だった。

その大家を見た助手席の本田が、食い殺してやるか!と睨みつけたので、魔物っぽいですね…と一色は妙な褒め方をする。

自宅に入った里子は、こたつで寝ていたひろ子を起こすと、郵便受けに入っていた封筒を何気なく開けて見ると、中に現金が入っていたので驚く。

同封の手紙には、生前、本田さんにお世話になった者です。お役に立ててもらえればうれしいですと書かれてあった。

ひろ子は、おなか空いた…、お金出来た?と聞いて来たので、心配させちゃったねと言いながら抱きしめると、お金送って来たんだよ、でもこの字、お父さんそっくりだね…と封筒を見せて不思議がる。 その頃亜紀子は、貧乏神と縁側でお茶していた。

貧乏神は鳩サブレーを食べ、これは旨いな、800年前はなかった。

舶来かな?などとご満悦だった。 亜紀子は、そんな貧乏神が背中に背負っている風呂敷包みが気になるらしく、これ、何入っているの?と聞く。

大したもんは入っとらんよ、見たいのか?と言いながら、貧乏神は風呂敷包みを降ろして中味を見せてくれる。

綱とか小さな象牙の人形とか、本当につまらないものばかりだったが、亜紀子は薄汚い茶碗を見ると、これなんか渋くてなかなか良いんじゃないと言うので、もしそれを上げると言ったらもらってくれるかい?もらってもらいたいんだ…と貧乏神は言い出す。

本当に迷惑じゃないかな?と貧乏神が恐縮するので、台所から100円ショップの茶碗を持って来た亜紀子は、これで良ければ、貧乏神さんもらってくれる?と言い、茶碗を交換する事にする。

貧乏神は喜び、巻物を取り出すと、取引先の仕組みとやらを書き込むと、こいつを蔵詰めして、短かったが楽しい時を過ごさせてもらったと死神が風呂敷包みを背負ったので、もう行っちゃうの?と亜紀子は驚く。

貧乏神はそんな亜紀子に、あんたもつくづく変わり者じゃな?ここは居心地が良過ぎてわしのような者には毒じゃ、あんた幸多からんことを祈っとるよ…と言いながら、庭先に降り、回転するとそのまま消えてしまう。

そこに帰ってきた一色が、あれ?貧乏神さんは?と聞くと、行っちゃった…と亜紀子は答える。

何だ、この汚い物!と茶碗を見た一色が聞くと、貧乏神さんと交換したのと亜紀子が言うので、これで食うのか?と一色は驚くが、相手は神様ですよと亜紀子は言う。 貧乏神だぞ、祟られるぞ!と一色は警告する。

又、一色の車で本田が里子の様子を見に行くが、一色が金を出そうとすると、僕、先生の原稿料知ってますからと本田は断り、良いバイト見つけたんですと言う。

その時、あれってどう思いますか?と本田が言うと、里子が知らない男ヒロシ(ムロツヨシ)と、アパートの前で親しげに話している所だった。

その後、「静」で一色との見始めた本田は、里子とあの男…、あれってやっぱり…と目が座り出したので、そう決めつけるのは早いのでは?と一色はなだめるが、蛙の顔はいつの間にか怒りで竜のように変身していた。

それでも、ああいう人がいてくれたら安心じゃないですかなどと口では言う本田を見て、大分無理してますねと一色は呆れ、女将も、あらあらこんなに溜め込んで…と驚く。

その頃、自宅で電話を受けていた亜紀子は、すぐ伝えます!と言って電話を切ると、コートを着て出かける。

広場の端にある3段くらいの階段を降りかけた亜紀子は、突如、赤い手が向こうずねの前の空中に浮かび上がり足を引っ掛けたので、転んでしまう。

起き上がった亜紀子は周囲を見渡すが何もないので、魔物かな?と戸惑いながらも小料理屋「志津家」に向かう。

ちょうど、店をデカかっていた一色がやって来た亜紀子に気付いたので、先生、大変!今、編集部から電話があって、やっぱり買い手くれって!大里先生落しちゃっいそうなんですと亜紀子が言うので、いつまで!と驚く。

亜紀子は言いにくそうに、明後日一杯で…と言うので、やってみるよ!俺はそう言う暗いの作家だよ!と焼けになりながら慌てて家路を急ぐ。

1人、「静」の店の前に残った亜紀子は、あれ?まさか…と自分の身体に違和感を感じ、急いでさっき転んだ広場の所へ戻ってみる周辺を探しまわるが、目的の物が見つからないので、どうしよう?どうしよう?と慌て出す。

そんな暗闇で焦っている亜紀子の姿を近くの電柱の影で見ていた魔物は、夜市で亜紀子に魔物松茸を売りつけた奴だったが、してやったりと言う風に笑うとその場から走りながら姿を消す。

自宅に戻った亜紀子は、書斎で原稿に向かっていた一色に、先生!と話かけるが、後のしてくれ!分かるだろう!と苛立って答える。

ある日曜のゼズニーランド

ヒロシと里子とひろ子は本当の親子のように園内で楽しんでいたが、その様子を風船売りの着ぐるみに化けて蛙の顔のままの本田が見守っていた。

そんな本田は、見知らぬ親子が目の前を通り過ぎた時、その母親の顔を見て、あの子は?と驚く。

亜紀子そっくりだったからだ。

しかし、その時、ひろ子が風船調代!と近づいて来たので、驚いた本田は持っていた風船を全部娘に渡すと、こんなにたくさん!と感激したひろ子は、ありがとう!と言いながら、本田にしがみついて来る。

本田は、久々に自分の娘に抱きつかれた感激に浸る。

その後「静」で一色に会った本田が、亜紀子さんは?と聞くと、ちょくちょく出かけていますと一色が言うので、日曜、ゼズニーランド行きませんでした?と聞くが、一色が否定するので、見間違えかな?と本田は戸惑う。

そして、先生、疲れてます?目の下に熊が出来てますよと心配する。

しかし一色は気にしてない様子で、相手と話す覚悟できてます?と逆に本田にヒロシと対面する事を聞く。

ありがたいと思ってるんです…と口では言いながらも、また本田の顔が竜のように変身しかけるが、すぐ又蛙の顔に戻り、怒りを抑える術を学んだんですと言うが、里子さんの所に一緒に行くんじゃないんですか?と一色が聞くと、今日は止めときますと気の弱さを露呈する。

それでも一色に勧められ、本田の自宅前に車で出向くと、ちょうどヒロシが里子が家の前で別れる所だった。

里子が家の中に入り、ヒロシが暗闇の中を帰りかけると、そこに立っていたのは竜の顔の本田だった。

どう言うつもりなんだ!と本田が問いただすと、ただの関係ですよとヒロシは戸惑いながらも答え、いつかは結婚しようと思ってます。

いつかきっと振り向かせようと思ってます、何か問題がありますか?と言う。

竜の顔になった本田は、二度と里子に近づくな!ここで食い殺されたいのか!と脅すが、ヒロシは、嫌です!絶対に嫌です!僕は里子さんを本当に愛しています。食い殺された方がマシです!と抵抗するので、じゃあ、食い殺してやろうか!と本田は迫る。

しかし、仰向けに倒れたヒロシは、ここで逃げる訳に行かないんです!と言うので、良い覚悟じゃねえか、畜生…、里子とひろ子は俺の…と言いながら、起こっていた竜の顔は元の蛙の顔に戻る。

愛する俺の…と言う本田は元の人間の姿に戻り、やがてヒロシの前から消えて行く。

あいつを試したんですか?本田さんは本当に良い人だな〜…と「静」に戻って来た本田に一色が聞くと、今夜は徹底的に飲みましょうと本田は答えるが、一色が妙な咳をするので、あら?先生、何かに取り憑かれてるんじゃ?障りが出ていますわ…、私そう云うの分かるんです…と女将が一色の顔色を見て言い出し、お祓いを下方が良いわよ、これ退魔のお札です、貸して上げる。

これを玄関に張っておけば安心ですと一色にお札を渡す。 帰宅した一色は、早速そのお札を玄関に貼っておく。

すると、外出していたが戻って来るが、何故か玄関に入れない事に気付く。

何度も入ろうとするが、玄関に結界のような物が出来ているのだ。

それに気付いた一色がお札を剥がし亜紀子に向けると、何それ?と言いながらはね飛ばされるので、亜紀子…、お前もしかして霊体なのか?と一色は唖然とする。

亜紀子は、やっぱりそうだったんだ…と納得するので、いつどこでそんな事に?と一色は聞く。

前、「静」に先生を呼びに行く時、赤い手が出て来たの…、転んだ時に霊体が出てしまったらしく、慌てて戻ったけど身体なかったの…と亜紀子は説明する。

そこに顔なじみの死神が、寿命と食い違いがあって…ちょっと不安があった物で遅れてしまいました…、亜紀子さんは亡くなっておられます、身体が見つからなければ普通幽霊なんですよと申し訳なさそうに一色に伝える。

言い返そうとする一色だったが、咳き込んで苦しがる。

幽霊申請どうします?と死神が聞くと、亜紀子は出します!先生と一緒にいます!と即答するが、先生に法に影響出てますね。

色々食い違いが会って、生命エネルギーはご主人の方から徴収させてもらっているんですよと死神は説明する。

夜中、寝込んでいた一色が目を覚ますと、横に添い寝していた亜紀子どう?と聞くので、いくらか良くなった…と一色は答え、どうした?と逆に聞く。

私の好きな人の顔眺めてたの…と亜紀子は答えるが、翌朝、一色が目覚めると、もう亜紀子の姿がなかった。 名を呼んでも答えはなく、今のテーブルの上に置き手紙が置いてあった。

亜紀子!と呼びかけながら、パジャマ姿のまま外へ飛び出した一色だったが、又咳き込んでしまう。

「私は、私のせいで先生の寿命を短くするなんて耐えられません。

黄泉の国へ行きます。 本当は先生とずっといたかったです。 もし生まれ変われるなら、先生の奥さんになります。

私の分まで元気でいて下さい」手紙にはそう書かれてあった。

亜紀子は死神と駅に向かっていたが、その2人に追いついた一色は亜紀子を背後から抱きしめ、亜紀子なしに長生きしても何の意味もない!例え俺が生きられなくても亜紀子と一緒にいたい! 幽霊でも亜紀子は亜紀子だ!僕の妻だ!と一色は叫ぶ。

しかし亜紀子は一色の腕をほどき、私、すっごくうれしい…、でもね、やっぱり黄泉の国へ行く…、頑張って決めた事なの…、だから黙って見送って…、もう時間ないの…と決意を語る。

先生と一緒にいたの、短かったけどうれしかった。

追いかけてくれてうれしかった…と言いかけた亜紀子だったが、ダメだ!こう云う事になったら…、笑顔でいようと思ったのに…と感極まった亜紀子は一色に抱きつき、先生、ありがとうね…と最後の言葉を告げ死神と駅に向かうので、その場に残った一色は、自分の足を右手で叩いて悔しがる。

その後、自宅で着替えた一色は、亜紀子の身体を探そうと広場布巾をどこ、行っちまったんだよ!とぼやきながらうろうろしていたが、そこに死神が戻って来て、ここでしたかと言葉をかける。

身体だけでも見つけてやりたくてね…と答えた一色が、亜紀子は?と聞くと、ちゃんと詠みの国へ送りましたよと死神が言うので、あいつに全然構ってやれなかった…と一色が悔やむと、亜紀子さん、ずっと先生の思い出を話してましたよと死神は教える。

早すぎるよ!と一色が嘆くと、あんなに寿命残っているのにね…、それで色々手違いがあったんですよ…と死神も不思議がるので、いい加減な仕事してるんじゃねえぞ!と一色が怒ると、遺体が見つからないんだからどうしようもないじゃないですか…と死神は言い訳する。

絶望した一色が橋の真ん中で立ち止まり川の方を向くと、そんな事したら未来永劫会えなくなるんですよ!自分で死ぬと、ここに縛り付けられてしまう、黄泉の国へ行けないんですよ!と一緒に付いて来た死神が説得する。

そんな一色の横を親子連れの3人組がにこやかに通り過ぎて行く。

一色は、「静」で本田から聞かれた、この前の日曜、亜紀子さん、ゼズニーランドに行きませんでした?と聞かれたときの事を思い出し、まさか…、いいや、そうだ!そうに違いない!と確信する。

一色は稲荷刑事(要潤)を呼び出すと、亜紀子の匂いの付いたセーターを貸し、その嗅覚で亜紀子の居所を探すのを協力してもらう。

稲荷刑事は、狐の血を少々引いておりまして嗅覚には少々自信があります。

こっちの方角からですね、奥様は…と一軒の家の前に一色を連れて来る。

門から中を覗き込んだ一色は、窓ガラスから見える亜紀子の姿を確認すると、稲荷刑事!あんた、本物だ!と感激する。

家族に話を聞くと、事故で死んだ妻の葬式の後、この姿でひょっこり現れたのだと主人が説明する。

始めた誰だか分からなかったんですが、妻以外は知らないはずの事まで知っているので…と主人が恐縮して説明すると、この子の事が気になってさまよっていたら、死体があって…、少しの間だけこの子とゼズニーランドに行く約束を果たそうとしたんです。

お返しする方法を探していたんですが…と亜紀子の身体を借りたその家の妻が言うので、少しの間じゃないじゃないか!妻の魂は黄泉の国へ連れて行かれたんだぞ!と一色は興奮するので、刑事たちがなだめる中、親子3人は平謝りする。

一色は、初めて自宅に原稿を取りに来たときの亜紀子の事など思い出していた。

その後、自宅に戻った一色はキンに、魔物松茸を食べて霊体になった一色が、僕は決めた、亜紀子を連れ戻しに黄泉の国へ行く!キン、僕は昔の僕とは違う!亜紀子との暮らしを知ってしまったんだ。

あの暮らしを取り戻すために命賭けても良いんだ!と言うので、そもそもどうやって?とキンが聞くと、「反魂奇譚」に黄泉への行き方が書いてあったんだ。だが未完で終わっているので、帰り方は本人に聞くしかない!と一色は答える。

するとキンは、棚の横に貼ってあったメモを、これを!と言って一色に手渡し、甲滝先生の向こうの住所ですと言うので、何でこれを?と一色は不思議がると、坊ちゃんが御自身で調べて下さいとキンは言い、抜け殻はキンがお守りしましょうと約束する。

その夜、こっそり黄泉行きの江の電に乗り込んだ一色だったが、他の死者に連れ添っていたあの死神がめざとく見つけ、戦士!何やってるんっすか?乗ってちゃダメですよ!と注意するが、一色が亜紀子の身体が見つかったんだと教えると、まじっすか!と驚く。

やがて黄泉行きの江の電が出発し、空中に浮かんだ線路沿いに黄泉へと向い、やがて、終点「黄泉」に到着する。

駅には大勢の出迎えがいたので一色が驚くと、先にこっちに来ていた家族が出迎えてくれるんっすと死神が教える。

黄泉の国ってこう云う所だったんだ…と一色が感激すると、ここは先生の想いが作った黄泉の国なんっす。

黄泉って色々言われてますけど、次の人生に生まれ変わる間のちょっとした時間なんですと死神は言い、空のかなたに浮かぶ黒い雲の塊を指し、あれだって罪の意識が作り上げた世界なんですと地獄の事を説明する。

今回の亜紀子さんの件、死神局の方でも調べたんですけど、裏で糸を引いていた奴が分かりました。

天頭鬼と言う奴で、人は欲や自己満足をを脱ぎ捨てて来るんですが、そう言うものが固まった物なんです。

いたく亜紀子さんにご執心だとかてんと言う死神に、キンがくれたメモを渡した一色は、この住所に案内してくれと頼む。

そのメモを頼りに甲滝先生と言う方はここにお暮らしのようですねと死神が案内して来た家の玄関を開けると、出て来たのは一色の母絵美子(鶴田真由)だった。

母さん!と一色が驚くと、正和なの!と絵美子も驚き、その背後から正和なのか?と良いながら、口ひげの甲滝五四朗も出て来たので、一色は愕然とし、やっぱり甲滝五四朗が僕の父親だったんだ!と絶望する。

すると甲滝は、正和、お前、何言ってるんだ!俺だよ俺!と言いながら自分で口ひげを隠し、絵美子が持って来たメガネをかけ、帽子をかぶると、父さんだよ…、変装を見られていたとは…と言う。

爺さんの学者になれと言う想いに逆らえず、作家になっていた事をずっと隠してたんだ…と甲滝は打ち明ける。

「反魂奇譚」に帰り道が書いてなく、何故途中で終わっていると思う?と甲滝が聞くので、まさか、父さんも母さんを!と一色は驚く。

やっぱり親子だな…、まあわしは母さんを連れ戻せなかったが、身体が見つかったなら亜紀子さんにはチャンスがあると思うと甲滝は言う。

見初めているのはと甲滝が聞くので、天頭鬼って奴だそうですと一色が教えると、よりによってあいつかてんと甲滝は知っているようで、手がない訳じゃない…と言い出した公滝は、窓の外から見える景色を指し、ここから見える物は人の記憶によって作られている。

正和、お前も作家なら、想像力で戦うのだ!と言いながら、目の前の木組みのパズルをより複雑で大きな物に成長させてみせる。

お前の想いが確かなら必ず切り抜けられる!と甲滝が言うと、られる!と絵美子も言う。

その頃、亜紀子は唐衣のような古風な衣装を着て天頭鬼の屋敷の中に捕われていた。

その部屋に、亜紀子!と呼びかけながら一色が入って来たので、先生!本当に先生なの?と亜紀子は驚くが、迎えに来たんだと一色が言うと、身体がないのよと亜紀子は悲しむ。

見つかったんだよと一色が教えると、又先生と暮らせるの?と亜紀子は喜び、鎌倉に帰ろうと一色が呼びかけた時、天頭鬼(声-古田新太)と手下たちが部屋に入って来たので、一色は慌てて物陰に隠れる。

今日こそこれに書いてもらおう!と誓約書を差し出した天頭鬼は、正和が来るのは何十年も先だぞ!前に転生した時もずっと探してたんだ。

お前とわしはいつか一緒になる仲なのだ!これでは前回と同じではないか!と言うので、どう言う事?と亜紀子は聞く。

今度こそと思い、10数年も産まれるのをずらしたのに!平安の昔からお前たちは夫婦だった。

今度邪魔しに来たら一息に飲み込んでやる!永遠にお別れだ!と天頭鬼は言い、部屋を出て行く。

前世から何度も何度も!この気持はずっと前からの物だったんだ!と知った亜紀子は出て来た一色に抱きつく。

しかし、天頭鬼たちがすぐに戻って来たので、気付かれた!と一色は焦るが、これだけ人間の匂いをまき散らせば分かるわ!人の恋路を邪魔する奴は俺に食われて消えるんだ!と言いながら天頭鬼は大きな口を開けて迫る。

するといつの間にか一色の腕に竹刀が出現していた。

天頭鬼の左の牙が欠けているのに気付いた一色は、それってこれの事か?と赤ん坊の時握っていたと言う牙のアクセサリーを取り出す。

窓から絶壁を見下ろした一色は、さあどうする?亜紀子! 僕を信じられるか?じゃあ、行くよと言うと、亜紀子の手を握り窓をぶち破り外へ飛び出す。

一色は想像力で板の通路を空中に出現させ、そこに降り立つと、亜紀子と共に逃げ出すが、天頭鬼も窓から飛び降りて来て2人の後を追跡して来る。

一色は又想像力で自分たちの背後に門を出現させるが、天頭鬼は、こしゃくな真似をしやがって!と言いながら、あっさり破壊して接近して来る。

黄泉駅に到着した一色が駅員に、帰りはいつですか?と聞くと、ここは黄泉の国ですよ、三途の川を渡った人は帰れません。

覆水盆に返らず…、お盆には帰るか?などと駅員は言うだけ。

そこに天頭鬼とその配下たちが駆けつけて来る。 一色はやむなく竹刀で戦い始めるが、どうしよう!と亜紀子が焦っていると、一色は想像力で帰りの江の電を出現させ、亜紀子と一緒に乗り込む。

出発した電車を、待て!逃がすか!と追って来る天頭鬼が口から突風を吹き出したので、空想の電車はドンドン壊れ出し、一色と亜紀子は途中の岩場の上に落下する。

天頭鬼もそこに降り立ったので、一色は又想像力で大きな門を作るが、お前の思念などももう見切ったわ!とあっさり破壊してしまう。

もはや逃れないと悟った亜紀子は、分かりました、行きますからと答え、一色には、どんな事があっても次の人生で必ず先生を見つけ出しますと言い、天頭鬼に近づことするので、僕はもう二度と亜紀子を話さないと決めたんだ!と制する。

しかし天頭鬼は、その一色を左手で掴むと口を大きく開け食べようとするので、止めて!と亜紀子は懇願する。

では心から誓え!俺と夫婦になれ!そうしないとお前の大事な人が消え去ってしまうぞと脅した天頭鬼は、右手で誓文書を差し出しながら復誦しろ!と亜紀子に迫る。

私、一色亜紀子は天頭鬼様と永遠に夫婦になる事を誓います!と天頭鬼が言う事を亜紀子が復誦すると、その言葉が誓文書にそのまま浮かび上がる。

しかし、最後の所の「誓い…」と言う所で口ごもってしまう亜紀子。

それを見ていた一色は耐えられなくなり、亜紀子!頼むから止めてくれ!と必死に呼びかける。 それでも亜紀子は、誓い…と言いかけるが、その時どこからともなく何かが飛んで来て天頭鬼にぶつかる。

それは、貧乏神からもらった汚い茶碗だった。

お前たち人間ごときにやられるはずが…と吹っ飛ばされた天頭鬼は困惑するが、それ神様にもらったのよと亜紀子は教える。

すると、手から逃れた一色と亜紀子の周囲に茶碗が変形して回転する透かし彫りの壺のような物になる。

その透かし彫りの壺が飛び立って行ったので、又言ってしまう!と天頭鬼は嘆く。

眼下に見える岩場の一つに乗っていた死神が、巧く行ったようですね!と一色たちに手を振って呼びかけて来る。

大きな滝を登り、人間界の海岸に到着すると、透かし彫りの壺は元の茶碗に戻るが割れていた。

そこに本田とともに駆けつけて来たキンが、坊ちゃん、奥様!とうれしそうに呼びかける。

亜紀子は蛙人間になった本田を始めて見て、えっと、誰?と聞く。

また鎌倉の一色家に平凡な日常が戻って来る。

割れた茶碗は金継ぎの技法で前より格好良くなる。

一色は亜紀子に、甲滝五四朗と言う名前は父親の実名の簡単なアナグラムだった事を説明する。

こっそり小説家になる夢を抱えていた秘密の家を持っていたんだ、その父さんの血は僕にも脈々と流れている。

黄泉の国へ行って良かった!と一色が感慨深げに言うと、いつか私も、お母さんみたいに先生を支えるようになりたいですと亜紀子が言うので、もう十分支えてくれているよと一色は感謝する。

そして、亜紀子が焼いて冷やしたエボダイを食べた一色は、身がしまっている、実に旨い!と喜ぶ。

一色家の玄関先には小さな河童や魔物の子供たちが遊んでいる。

どこかに行っていた風見鶏が飛んで来て元に戻る。

エンドロール

鎌倉彫のお盆には、古代の勇者の絵が彫られていた。

一つ目の小鬼がちょこまか動き回る。

天頭鬼を踏みつける平安時代の衣装を来た陰陽師のような男の木彫り人形。

くるくる回る茶碗に乗って飛び回る貧乏神
 


 

 

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