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サバイバルファミリー

「もし電気が突然なくなったら」と言う「IF」の世界を描いたSF的な設定だが、4人家族に話を絞る事で「ファミリーロードムービー」とでも言うような内容になっており、会話もなくぎすぎすしていた家族が苦難の旅を続けるうちに心を通わせ合うようになる分かり易い展開になっている。

VFXなども部分的に使われているようだが、いわゆる「VFX映画」のような派手なスペクタクルシーンはなく、どちらかと言うとテレビのスペシャルドラマのテイストに近いような気もする。

いかにもテレビ局映画の典型のような雰囲気で、映画的なビジュアルやインパクトを期待して見ると若干物足りなさを感じないでもないが、決してつまらないと言う訳ではない。

ただ、ゲスト的に色々な役者さんが登場するもののメインの家族のキャスティングがやや地味な事もあり、興行的には厳しそうな気がする。

着想もアナログからデジタルに移行した時代を経験した世代が思いつきそうなもので、中高年には共感する人はいても、若者が夢中になるかどうかは疑問がある。

非日常的な設定を強調するためか、登場する個々のキャラクターには強烈な個性付けはされておらず、そう云う事もあってか全体的に淡々と物語が進行している印象がある。

テーマ的にも想像の範囲内で、ものすごく意外な物を見たと言うほどではないが、全体的にほのぼのとした雰囲気は楽しめる。

つまらない事だが、小日向文世さんの「ヅラネタ」はご本人とのギャップがあまりなくて効果は薄かったように思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2017年、フジテレビジョン+東宝+電通+アルタミラピクチャーズ、矢口史靖原案+脚本+監督作品。

東京の夜景 新宿大ガード下 鈴木義之(小日向文世)は会社で仕事をしていた。

マンションに暮らす義之の妻光恵(深津絵里)は、鹿児島の父佐々木重臣(柄本明)と電話をしながら、その父が送ってくれたサバをまな板に乗せたまま包丁を入れる事も出来ないでいた。

娘の結衣(葵わかな)は、サバを見るなり、私いらないと拒否し、祖父の電話にも出ようとしなかった。

これやってくれない?と魚の調理にお手上げの光恵が頼むと、帰宅してテレビを見ていた義之は、俺は良いよと断る。

もう送らないように言えば良いのに!と結衣が文句を言うと、釣りや畑くらいしか趣味がないんだからと光恵は諦め口調で答える。

その間、義之は頭のヅラを外す。

光恵がゴキブリをこわごわティッシュで穫っていると、息子の賢司(泉澤祐希)が帰って来たので、何か食わないのか?と義之が声を掛けるが、賢司は無言で買って来たパンを見せる。

自室に戻った賢司は、パソコンで「国際経済学」の授業で使われた写真をまとめファイルを作る。

その時、大学の同級生中村里美から電話が入り、黒板の写真を撮ったか?と聞いて来たので、うんと返事すると、送って、PCにと頼んで来たので、すぐに送信し、彼女の写っている動画をパソコン上で再現しにやつく。

その頃、結衣の方は、自室のベッドで形態でチャットをしていたが、バッテリー残量が少なくなっていますと言うアラートが出たので苛つく。

ダイニングルームでは光恵が、酷いのよ、あの子達のケイタイ代、あんたから言ってやってよ!と文句を言うが、義之は、疲れてるんだ、先に寝るぞと言い残し、屁をこいて寝室へと向かう。

タイトル

1日目

ベッドで目覚めた義之は、いつもと違った違和感を感じ目覚ましを見ると、3時10分で止まっていたので驚いて起き、今何時だ?と光恵に聞くが、先に起きていた光恵は停電とだけ戸惑ったように答える。

そこに起きて来た結衣は、停電と知ると慌てて自室に戻り、充電していたケイタイを調べるが、全く機能していなかった。

ヅラを装着しながら、時報は107だったよな?と結衣に聞くが、結衣は時報の意味が分からないようで、時報を聞こうにも電話も通じなかった。

さらに新聞も届いてないとこが分かる。

昼食の準備ができない事を悟った部屋を出てエレベーターの前に来るが、住民達が集まっているのを見て、エレベーターを止まっている事を知ると、管理はどうなっているんだ!と癇癪を起こす。

後から部屋を出て来た結衣はそんな義之の態度を嫌悪して、賢司と共に階段を下りる。 部屋に残っていた光恵は、ボンベ式のガスコンロは着火する事を発見し安堵する。

義之らマンションの住民達も一斉に階段を降り駅に向かうが、駅も前線通行中止だと知る。

ホームは既に人で溢れていたが、電車が来る様子はなく、改札前で通行止めをしていた駅員は振替バスも出ていないと説明する。

自転車で大学に向かっていた賢司は、自分のケイタイも全く機能していない事に気付く。 さらに、路肩に停まっていたタクシーの運転手たちも、プラグが着火しないとかで車が全く動かない事を話し合っていた。

水道水をバッテリーの補充液代わりに入れている運転手もいたが、こういうときは自転車が良いねと運転手達が自分の方を注目したので、停まってその様子をぼーっと眺めていた賢司は我に返って慌てて走りだす。

マンションの下にゴミ出しに降りて来た光恵はそこに集まっていた主婦達と雑談に加わるが、他の主婦達が一斉にマーケットに買い出しに向かったので、自分も一応買っとくか…と呟くが、お財布を部屋に置いて来た事を思い出し、又階段を上らなければいけない事に気付くと、恨めしそうに上の方の自分の部屋を見上げる。

何とか徒歩で会社にたどり着いた義之だったが、会社の玄関口も閉まっており、中に入れない社員達が集まっている事に気付く。

そこにやって来た高橋亮三(宅麻伸)は、近くなのにこんなに遅いとはと嫌みを言って来たので、駅は隣の隣だよと義之は反論する。

若い社員達が警備員に断り、立て看板でガラス戸を割って中に入るが、部屋に入った義之は、照明もなければパソコンも電話も全部機能してない事に気付き、おいこれ仕事になんないぞ!と呻く。

高校の教室にやって来た結衣は、担任の望月先生が来られないので自習だと言いに来た教師の言葉を聞き大喜びする。

隣の安藤先生も来られないようだった。 大学に来ていた賢司は、やって来た女学生達に中村里美の事を聞くが、まだ会ってないと言う事だったので考え込む。

スーパーにやって来た光恵は、パンも弁当もおにぎり類も届いてない事を店員から知らされ、とりあえずペットの水を何本か購入する事にする。 しかし、レジの機会も停まっているので、計算は算盤と言う効率の悪さだった。

さらにカードが使えないと聞いた男が怒って店内のATMに向かうが、それも全く機能していない事に気付く。

会社では、トランジスタラジオや非常時用の懐中電灯なども点かない事に社員達が気付いていた。

義之は、決算報告が間に合わないってことないだろ?と焦るが、女子社員は、おかしくないですか?これってただ事じゃないよねと若い社員同士が話し合いを始める。

そこにやって来た高橋が、今日はもう上がって良い、暗くなるまでに帰ってくれと社員達に指示を出す。

帰宅時、自転車屋に寄った義之は1台だけ残っていた女性用の自転車を買おうかどうかと迷い、店の奥に置いてあった買い物籠付きの三輪車はいくら?と店主に聞くと、これは解体途中のもので売り物ではないと言う。

そこに別のサラリーマンがやって来たので、慌てた義之は赤い女性用の自転車を買う事にする。

マンションにたどり着き、階段を登ろうとした義之は、そこにろうそくをともして座り込んでいる老婆を発見し肝をつぶす。

ろうそくを点しての夕食時でも、会社から持ち帰った決算書を書いている義之に、こんな時に仕事を持って来るなんて!と光恵から言われ、こんな時だからやんなきゃいけないんだろう!と言い返す。

その後、賢司がトイレに入ろうとするので、水が流れないから、風呂の水を使って!と光恵が教える。 明日は元通りになってるわよと言いながらベランダに出た光恵は、空を見上げて、ちょっとあんた!と呼びかける。

仕事に区切りをつけた義之がベランダに出て来ると、満天の星空が見えたので驚き、ちょっとロマンチックな気分になったので光恵の手を握ろうとするが、素早く避けられる。

結衣は、ケイタイが使えないので、部屋で雑誌を見ようとろうそくの明かりに近づいて読み始めるが、ろうそくの火が髪の毛につきそうになったので慌てて部屋を出て、リビングに来る。

するとベランダから光恵が、星がきれいよと声をかけたので賢司とともに側に行き、満点の星を目の当たりにして、何で!と驚く。

町の灯りがないからだよと義之が答え、天の河よと光恵が夜空に横たわる光の帯を教えると、天の河って実在したんだ!と結衣は驚いたように言う。

光恵は、こういうのもたまには良いわね…とまんざらでもなさそうに呟く。

翌日も登校した結衣は、教室内の様子を覗いて変化がなさそうだったのでそのまま帰ることにする。

義之も会社で、高橋から、自宅待機になりました。入り口が壊れちゃっているから、各自、大事なものは持って帰るようにと言われる。

仕方なく帰り支度を始めた義之に、お前も家族が大事だろう?このまま東京にいたら危ないぞと高橋は忠告して来る。

会社を出ると、高橋の家族が既に旅行の準備をして待ち構えており、合流した高橋は、水を確保できる山を目指してみる。

知っているキャンプ場目指すつもりだと義之に言い残し、家族とともに去って行く。

自転車に乗ろうと会社の横に来た義之は、自転車を盗もうとしていた男と遭遇し追い払う。

その頃、賢司は自転車で埼玉方面に向かっていた。

里美からもらったハガキの住所を確認し、川口市本町の住宅地にやって来た賢司だったが、自宅前に近づくと、家の中から家族と恋人らしき男と一緒に出て来た里美に気付き、慌てて車の背後に隠れようとして転倒する。

里美の家族もどこかへ旅行に出かけるようだった。 水道局で水を求めて並んでいた光恵は、水を汲むポンプが停まっている。

飲み水でなくても良いなら、向こうに手漕ぎの井戸があると教えられ、飲み水が欲しいんだ!と騒ぎだした住民達の声を聞く。

一方、銀行で金を下ろそうと列に並んだ義之は、1人10万までと聞き、並んでいた列の連中が殺気立った中、持っていた書類袋を落としてしまい、それを拾おうとかがんだ所で押し寄せた群衆に踏まれ、鼻血を出してしまう。

7日目

都心部は無人となり、ゴミが散乱し始めていた。

スーパーの食料も底をついていた。

マンションでは住民達の集会が表で行われていたが、それに出席していた光恵は、暖房用の灯油もなくなり火が消えかけているのに気付く。

早く他へ移動する方が良いと言う意見に対しては、帰る田舎がない者はどうすれば良いんだ!との反論が出て、マンションから人がいなくなったら、付近の連中から荒らされてしまうぞ!と言った懸念の声も出る。

しかし、そうした中、マンションから出て行く家族もいた。

部屋に残っていた賢司と結衣は、隣の住民達が吠える犬を部屋に残し、鍵をかけて逃げて行く様子をドア越しに目撃する。

集会後、階段を登りながら、加藤さんと言う方知ってる?と光恵が聞くと、一人暮らしの婆さんか?いつか会ったぞと義之は答えると、ここ数日見かけないのと光恵は言い、その加藤家の部屋の前に来ると、ドアの外にまで黒い靴がたくさん並んでおり、何事かと中を覗き込んだ2人は、棺に入れられる老婆の遺骸を目撃する。

部屋に戻って来た両親から、鹿児島行きを告げられた結衣は驚き、俺の田舎なんて墓しかないと義之が言うと、私、行かないよ、あんなど田舎!と文句を言い始める。

子供の頃、みんなで海水浴行ったじゃないと光恵が言っても、結衣は覚えてないようだった。

義之は、羽田まで自転車で行く。俺に付いてくれば何とかなる!と胸を張る。

その頃、自室にこもっていた賢司は、中村里美と一緒に写った写真を破り捨てていた。

家族全員で金を出し合い、これで飛行機代が足りるか?と義之は心配するが、何かの時のために取っておいたと言いながら、光恵がへそくりを取り出して来たので唖然となる。

全員でマンションの住民達に気付かれないように外に出た光恵達の元に、買い物籠付き三輪車を手に入れた義之が自慢げに合流する。

光恵を買い物籠に乗せ、三台の自転車で出発した義之は、まだ結衣がつけまつげなどしているので、今さらまつげなんていらないだろう!と叱るが、結衣は黙って義之の頭部を指差して来る。

サイクリングなんて久しぶり、子供会以来よね!と買い物駕篭に乗った光恵が言うので、三輪車を漕いでいた義之が知らんぞと答えると、あんたはいつも参加しなかったからと光恵は文句を言う。

路上には、ミネラルウォーターを1本1000円で売っている露天商が見えたが、ボリ過ぎ!とバカにしながらコンビニ前までやって来ると、1本2500円と書いてあった。

さっき、500円って書いてあったわよ、こんな値段じゃ売れないわよと降りた光恵が店主に交渉し、ここにあるの全部買うから、1本600円にしなさいと強引な値切りに成功する。

その後、公園のテーブルで買ってきた握り飯の昼食を取る事にするが、何で赤飯なんだよと義之が文句を言い、結衣が小豆をつまんでは捨てているので、豆を捨てるな!もったいない!と叱る。

その時、賢司の姿が見えない事に気付くが、側の池に1人来ていた賢司は、対岸にいる男が、大網で池から錦鯉を捕ると、棍棒で頭を叩いて殺し干物にしている様子を目撃し衝撃を受ける。

一方、食後、トイレに行きたくなり、公園内のトイレに入った賢司と結衣は、あまりのトイレの汚さに嘔吐き、結局、外の草むらで用を足す事にする。

その後、羽田に到着した4人だったが、飛行機は飛んでおらず、集まった群衆を前に、警官が飛行機は飛びません!東京近郊全面停電しています!と言いながら群衆を阻止しようとしていた。

それでも警官に物を投げ、金網をよじ上って空港内の入り込もうとする者もいて現場は混乱するが、義之家族はその場を離れ、自由の女神像が目印の「ロイヤルホテル」と言うラブホテルに泊まる事にする。

先払いで1人3万円と受付の老婆は言うので、義之は言いなりに払う。

部屋に入った結衣は、明日、家に帰るんでしょう?と聞くが、水と食料がない町にいるのは危ない、行けるだろう、弥次さん喜多さんだって大阪まで歩いたんだからと義之が答えたので、弥次さん喜多さんって何?と結衣は聞く。

さらに、何かこうなるような気がしたんだなどと光恵がぼやいたので、何で言わないんだ!遠回りしちゃっただろう!と義之は癇癪を起こす。

そうこうしているうちに、照明用のろうそくが燃え尽きてしまう。

その時、結衣が、分かった!弥次さん喜多さんって水戸黄門と一緒にいる人でしょう!と思い出したように言う。

翌朝、無人になった「ブックオフ」結衣と一緒に入り込んだ賢司は、地図コーナーを探すが、ほとんどの地図は売り切れていたので、だろうな…と呟いて諦めかけるが、何とか「社会科地図帳」と言う小学生向けの古い地図を見つける。

一方、結衣の方は、鹿児島のグルメ本を見つけたらしく、やっぱありかも!などとラーメンの写真を見て嬉しそうだった。

その地図帳で大まかな鹿児島までの距離を測った賢司は、1ヶ月かかるっぽいぞと両親に教える。

すると光恵が、大阪より向こうは電気が通じていると噂があるらしいの、さっき歩いている人が言ってたなどと言いだす。

義之はもう一台自転車がいるなと言い出し、近くを物色し始めるが、なかなか乗れる自転車は見つからなかった。

その後、家族は「烏山米穀店」と言う店の横に放置してあった自転車に目を留める。

店先には行列ができていたので中を覗いてみると、店の女将古田富子(渡辺えり)が、米と客が釣って来た鯛を交換している所だった。

次の客は、高価そうなロレックスやマセラティを差し出すが、そんなもの何の役に立つの?帰りなさい!腹の足しにならないでしょう!と富子が叱りつけたので、後ろに並んでいた客達も諦めて退散する。

そこで店の中に入った義之が、横にある自転車を売ってもらえないだろうか?と言いながらペットボトルの水を差し出すと、あれ、もう使ってないからね…と言いながら富子はちょっと考えるようだったので、光恵が義之用の洋酒瓶を2本追加し、後、その米も…と要求する。

自転車が4台になり、各人が一台ずつ漕いで出発するが、途中で道に迷ってしまったので、何だよ、この地図!と癇癪を起こした義之が地図帳を投げ捨てる。

すると光恵が上を見上げ、あれで行ったらどう?と言い出す。

それは高速道路だった。 とりあえず無人の料金所から入り込み、名古屋方面目指して走る事にする。

やがて、大量の徒歩異動者の集団と遭遇する。

リヤカーに家財道具を積んで引く人もいた。 そんな中、自転車を飛ばしながら、結衣はヤッホー!と上機嫌で歓声を上げる。

そんな積極的になり始めた子供達の姿を見た光恵は微笑む。

やがてドライブイン前で始めて野宿をする事にするが、賢司は神奈川までやって来た事を地図帳に赤ペンで印を引く。

義之達が座り込んだ場所の横にいた夫婦者に話を聞くと、大阪より向こうは電気が通じているらしいと言うので、やっぱり!と家族は安心する。

すると、その夫婦者が水をくれませんか?と頼んで来たので、これしかないもので…と義之は断り、光恵は持っていた携帯コンロを隠す。

夜中、並んで寝ていた義之が寒さを覚え布団代わりのビニールを引っ張ったので、掛け布団がなくなった賢司が目覚めて周囲を見回すと、自分らの荷物の中からペットボトルの水を盗み出している男を見つける。

義之もそれに気付いて追うんだ!と声をかけたので、賢司は水を持って逃げ出した男を追跡するが、やがて近くの高架の下で赤ん坊にミルクを与えている若夫婦の夫の姿を見つけ、それが水を盗んだ男だと気付いたので、賢司は黙って元の場所へ戻る。

翌日、出発した家族は、トンネルの入り口付近で待機している4人の老婆の姿を見つける。

「水1本でトンネルを先導」と貼り紙が掲げてあったが、1本道じゃんと結衣はバカにし、そのままトンネルの中に入り込むと、2kmあるぞと老婆が声をかけて来る。

トンネルの中は真っ暗で、自転車の灯りも付かないため、そろそろ進んで行くうちに、車が停まっているのに気付いたり、何かを踏んづけて結衣が悲鳴をあげる。

その辺に狸が死んどるぞなどと老婆が脅して来るので、やむなく4人家族が1本の紐で連なり老婆の1人に先導してもらうはめになる。

その後、川縁で食事休憩していた時、マッチがもう4本しか残ってない事に賢司は気付くが、マッチなんてなくても日くらい起こせる!と義之が言い出したので、どうやって?と聞くと、その時になったら教えてやるよとだけ義之は答える。

ペットボトルの水がなくなった事に気付いた義之は、光恵が洗い物をしていた川の中に入ると、その水を手のひらで掬い上げ、こんなにきれいじゃないかと言うなり飲んでしまう。

それを驚いて見つめる家族に、お前らやわだな〜とバカにする義之だったが、やがて彼らは時ならぬ大雨に襲撃される。

高架橋の下に避難をしようとするが、停めていた自転車が風に吹き飛ばされる始末。

そんな中、もうダメだ!と豪雨の中、草むらに走り込んだ義之はズボンを降ろしてしゃがみ込む。

その様子を見ていた賢司は、下痢か?と気づき、あんな水飲むから…と光恵も呆れる。

雨が上がった後、吹き飛ばされた自転車を回収に出かけた賢司は、携帯とパンクした自転車を発見する。

光恵は割れてしまった眼鏡を見つけ、義之は地面に散乱した米を必死に掬い上げようとしている最中、突然その場で失神してしまう。

結衣と賢司は、近くにあったホームセンターを見つけ中に入ってみるが、米やマッチ、ライター類はなかった。

そんな中から、結衣は食料に出来るんじゃない?とネコ缶を見つけて来る。

賢司の方はバッテリー補充液を見つけその場で飲んでみる。

それを見た結衣が驚いて大丈夫?と聞いて来るが、平気だろ、精製水だからと賢司は言う。

ネコ缶と補充液を持って両親の元へ戻ってみると、義之がいたにマルタをこすりつけて火を起こそうとしている所だったが、全く火がつく様子はなかった。

そんな義之に賢司は、発煙筒が1本だけあったと言って渡す。

結衣の方は、光恵から生の餅を渡されたので、生で?と驚くが、光恵は目で夫の方を見て嫌そうに餅にかじりつく。

結衣は持って来たネコ缶を開けて食べかけるが、まずくて吐き出してしまう。

賢司は持っていた携帯をあっさり捨てると、携帯カバーをホームセンターから持って来たはさみで丸く切り取り、同じく持って来た接着剤で自転車のタイヤの穴を塞いで修理する。

何とかパンクも直り、又4人は自転車で出発するが、又雨に降られてしまう。

22日目

高速上で仲良くトランプなどに興じて明るく笑っている家族に出会った義之達は、その反対側の路肩で休憩する事にする。

義之は、優雅そうな家族に買い物籠に詰めていたネコ缶に気付かれないようにレッテルを剥がし始める。

賢司が補充液を飲みだすと、その家族の父親らしきおとこ斎藤敏夫(時任三郎)が、ああ、その手があったか!と感心したように声をかけて来たので、そちらはどうやって水を確保されたんですか?と聞いてみると、山奥を通ったとき、苔が生えている所などから湧き出ている水を汲むんですと言う。

食料は天日干しにしといた方が持つんですよなどとも教えてくれて、妻らしき女性静子(藤原紀香)は、雑草は大抵食べられるんですよ、オオバコ、タンポポとか…と言う。

すると、俺のお勧めは蝉かな?と夫の方が言い出し、虫って栄養価が高いんですなどと知識を披露する。

2人の息子らしき涼介(大野拓朗)と翔平(志尊淳)達が写真を撮り合っていたので、写真撮れるんですか?と結衣が驚いて聞くと、これデジタルじゃないからと息子は言う。

そんな会話を、不機嫌そうに聞きながら、義之はまだネコ缶のレッテル剥がしを続けていた。

結衣は自分たち家族も写してもらったので、後で送ってくださいねと頼み、住所を教える。

その後、斎藤家の家族と一緒に出発するが、陸橋の所に差し掛かった所で後方から自衛隊の一団が近づいて来たので、敏夫が声をかけ、何事かを聞く。

大井の発電所がフリーズしたので静岡に移動してるってと敏夫は義之達に教える。

大阪が停電しているかと聞くと自衛隊員は知らないと言って立ち去って行く。

すると敏夫は、大阪がもし停電していないとして、そこへ向かうと言う選択肢はないな〜…、せっかくこうなったんだから楽しまなくちゃと言い、義之達家族とは別の方向へ向かうのでそこで別れる事にする。

敏夫の行動や考え方に差を感じたのか、義之は何故か不機嫌なままだった。

大阪の通天閣の周辺もゴミが散乱していた。

43日目

エレベーターも動かないらしく、入り口が閉鎖された通天閣の前にやってきた結衣は、もう嫌だ!と自転車を投げ出す。

自転車は大阪までって言ってたよね!と結衣が言うので、そんなこと言ってないぞと義之が反論すると、お風呂にも入れないし、頭かゆくて死んじゃうよ!と結衣は癇癪を起こす。

親に向かって何と言う言い方をするんだ!と義之が叱ると、じゃあ、もっと親らしい事やってみろ!と賢司も叫びだしたので、もう止しなさい!そんな事とっくに分かっているでしょう!お父さんはそう云う人なんだから!と光恵まで諦めたように吐き捨てる。

その後、須和海浜水族館と言う所へやって来た家族は、そこにたくさんお人が並び、焼き魚や魚の汁を配られている様を見つける。

どうやら維持できなくなった水族館の魚を処理している所だった。 慌てて列の後部に並んだ4人だったが、ちょうど彼らの直前で汁はなくなってしまう。

義之は料理をしていた男の足にすがりつき、この子たちの分だけでも!と土下座をし、ないものはないよと断られると泣き出してしまう。

67日目

田舎の田んぼ道を自転車を押しながら、疲れ切って歩いていた結衣は、飛んで来たスーパーの特売食料のチラシを拾って見てしまい、空腹のため腹が鳴る。

義之は草に付いていた芋虫をつまんで口に入れようとすらしていたが、その時、田んぼの中にいた1匹の豚を見つける。

それに気付いた光恵はロープを取り出し、真っ先に走り出した義之の後を追うように豚に近づいて行く。

何とか豚を捕まえようとする義之だったが、格闘の末、土手から落ちた川縁で何とか仕留める。

義之は光恵から受け取った包丁を使い、豚をその場で解体しようとして迷っているとき、何をしとるんがや!と怒鳴る声がして、豚の飼い主らしき田中善一(大地康雄)が近づいて来る。

田中は自分のナイフを取り出すと、その場で豚にとどめを刺すと、リヤカーに乗せ自分の家まで豚を運ばせる。

そこに井戸があったので、あの水飲めますか?と恐る恐る義之が聞くと、当たり前じゃろが!と田中は答えたので、4人はむさぼるように水を飲む。

養豚場の鍵がワヤになって…と田中が豚が逃げ出した経緯を打ち明けたので、すみませんでしたと義之が詫びると、逃げた豚捕まえるの手伝うてくれるなら許してやるが…、腹、空きよらんか?と田中は言って来る。

家族は田中が座敷で出してくれた卵焼きや漬け物、豚の薫製と言った食い物にむしゃぶりつく。

冷蔵庫が使えんとき、こうすりゃええんじゃと田中は薫製処理の事を教えるが、食べていた結衣は何故か泣き出したので、隣で食べていた賢司が何で泣いてるの?と聞くと、分かんないと結衣は答える。

その時、縁側にやって来た近所の老婆が、お客さんか?よっちゃんが帰って来たのかと思った。豚、まだ帰って来んの?と言いながら野菜を持って来たので、田中は卵と豚の薫製を分けても足せてやる。

まずは花子ちゃん捌くの手伝ってもらおうか?と食事を終えた家族に田中が言うので、花子ちゃんって言うんですか?と結衣が聞き返すと、冗談じゃ、名前なんか付けとる訳ないじゃろ!と田中は答える。

義之と賢司が豚を押さえ、玄関先で田中が解体して行くが、初体験の義之はビビりながら、大仕事ですね!と感心すると、これだけおりゃわけないわと田中は言う。

解体した豚に塩をもみ込み、すぐには食べられん、寝かせないとと田中が言うので、寝かせるってどのくらい?と聞くと1週間くらいじゃと言う。

作業の後、井戸水を汲んで風呂に入れる仕事が待っていた。

一番風呂はわしだぞと田中が言う。 竹筒でマキの火をおこす義之。

その後、浮いていた底板を踏んで入る五右衛門風呂に義之は入る。 賢司は地図帳に、岡山まで赤ペンで線を引く。

その夜、光恵達は、田中が息子一家がまた来た時のために買っていたと言うパジャマを着て、久々に布団で眠る事が出来る。

お孫さん達の事心配だろうに…と、部屋に飾ってあった息子一家の写真を見た結衣が布団の中で呟く。

隣り合って寝ていた光恵が布団から左手を出して義之の手を触ると、義之もぐっと握りしめて来る。

翌日から、近所に散らばった豚達をかき集め、養豚場の作の中に集めると言う仕事を一家総動員でやる。

仕事をなし終えた4人は満足そうに笑い合う。

その後、賢司は自転車のパンク修理をし、結衣は光恵から裁縫を教わっていた。 いよいよ出発の日が来る。

見送りに出て来た田中は、あんたたちが良けりゃずっとここにおっても良いんよ。

こんなになっちまって1人暮らしは答えるけ…、考えてくれんかの〜…と田中は懇願するように言って来る。

義之は光恵に、田中さん、ああいってくれてるけど、心配だろ?お父さん…、鹿児島に行こう!と言うと、お前達もそれで良いよな?と子供たちにも確認する。 そんな家族に田中は、色々助かったけえ…と言いながら薫製を大量にわけてくれる。

田中家を後にして再出発した家族だったが、やがて橋のない川に行き当たる。

光恵は、地図が古いから…とがっかりするが、義之は河原に落ちていた古いオールを見つけると、近くにある木材を集め始める。

それを見た家族達もその意図する所に気付き、木材や空のペットボトルを集め始め、筏作りをし始める。

賢司は包丁で木切れの枝を切り落とそうとして刃が折れてしまう。 出来上がった筏に荷物と光恵を乗せ、残りの三人が川の中に入って向こう岸を目指す事にするが、途中で突然雨に襲われる。

何とか、荷物と女性達を向こう岸まで運んだ義之と賢司はまた川を戻り、自転車を全部運ばないと、川の嵩が増え渡れなくなると判断する。

しかし、4台の自転車の重量が重すぎた事と雨の勢いが増した事で、筏は途中で沈み始める。

賢司は何とか川を泳いで渡り切るが、自転車を最後まで守ろうとしていた義之は自転車の車輪に顔を押されそのまま川底に沈んでしまう。

お父さん!と向こう岸から叫ぶ光恵たちだったが、義之の姿は筏とともに見えなくなる。

雨が上がった後、賢司は河原を必死に探すが、見つけたのは、筏の破片と義之のヅラだけだった。

それを見た光恵と結衣は泣き出し、賢司も泣いてしまう。 94日目 鉄道を歩く光代、結衣、賢司の3人。

賢司は遅れがちの母親の側に近づくと、光代は泣いており、結衣も泣いていた。

そんな光代の肩を抱き、先を急がせる賢司だったが、リュックから出した薫製の豚肉を食べて歩いていた時、結衣は後ろから付いて来た犬にその肉を食べさせようとする。

するとその犬は薫製の肉を奪い取り去って行く。

やがて、大量の野犬化した犬が獲物を求めて結衣たち3人に迫って来る。

肉の入ったリュックを背負っていた光恵が襲われ、光恵は土手から転げ落ちてしまう。

慌てて母親に駆け寄った賢司だったが、光恵の左足は明らかに骨折していた。

何とか線路上まで光恵を引き上げるが、リュックの肉に犬達がたかっていた。

なおも近づいて来る犬達を前に、賢司は折れた包丁を取り出して母親と妹を守ろうとするが、光恵は無理だ!と絶望的に呟く。

その時、犬達の背後から姿を現したのは蒸気機関車だった。

犬達は四散し、機関車は線路上でしゃがみ込んでいた光代達3人の前で停止する。

機関車には乗客が多数乗っており、救助されて足の手当をしてもらった光代らの話から、自転車で東京から来たと知った男は、そら大変だったねと同情し、お父さんは?と聞く。

すると、客席で義之の事を思い出した結衣 と賢司が泣き出し、光恵も泣き出す。

その頃、義之は河原に打ち上げられていた。 目を覚ました義之は、カラスが周囲にいる事に気付く。

何とか立ち上がり、田んぼにトラクターが停まっている所でしゃがみ込んだ義之は、遠くの線路を走っている機関車が見えたので手を振って呼びかけようとするが声が出ない。

その時、義之はズボンのポケットに入れていた発煙筒を思い出し、取り出して点火する。

列車の車窓から外を眺めていた光恵は、トラクターの下から発煙筒の煙が上がっているのに気付き、思わず停めて!と叫ぶ。

停車した機関車から飛び降りた結衣 と賢司が義之の元へ走って迎えに行く。

無事、義之も機関車に乗る事が出来るが、そろそろ関門トンネルよ…と光恵が言い出し、昔は良く「はやぶさ」に乗って行ったのよと言うので、結衣が新幹線の「はやぶさ」?と聞くと、座席でぐったりしていた義之が目覚め、バカ、特急はやぶさ」って言う寝台車だ、飛行機代が高かったから、結婚を許してもらうために2人で鹿児島まで通ったんだと義之が言うと、何かそう云う話聞くの始めて…と結衣は感慨深そうに言う。

そんな義之は、光恵からヅラを受け取ると窓から捨ててしまう。 やがて、機関車はトンネルの中に入り、窓を閉め忘れていた乗客達は、客席に充満して来た煙で咳き込む。

そして、トンネルを通過した後、煤で真っ黒になった互いの顔を見合って笑い合う義之たち4人。

108日目

リヤカーに荷物を乗せ、鹿児島の清佐町の海岸にやって来た義之達は、浜辺で1人釣りをしていた光恵の父佐々木重臣を見つけて近寄る。

2年と126日後 義之と賢司は、地元の漁の手伝いをするようになっていた。

結衣は機織りを教わっていた。 畑には、父親と2人でもいだトマトをかじる光恵がいた。

その日の早朝、ふと布団で目覚めた義之は、何かに憑かれたように家の外に出ると、小屋の中に置いてあった荷物の中の目覚まし時計が鳴っているのを止める。 自国は6時5分前だった。

やがて、近くの教会の鐘の音が聞こえて来る。

やがて、近所中の電柱の電灯も点灯し、異変に気付いた住民達が起きて来る。 電気が復旧したのだった。 東京の道路を清掃車が掃除して行く。

2年前の世界的停電は、太陽フレアの異常ではないかと言う説が出ており、テロ説は否定されていますと言うテレビニュースが流れている。

マンションの台所で光恵がサバをさばいていると、それを見た結衣が、晩はサバの味噌煮か…と嬉しそうに呟き、手製のバッグを提げて賢司と一緒に出かけて行く。

その時、電話が鳴ったので受話器を取った光恵は、慌てて閉まりかけていたエレベーターの所に来ると、賢司と結衣と一緒に乗り込み、お父さん、これ忘れたのと言いながら弁当を差し出す。

マンションの外に出た光恵たちは、自転車で戻って来た義之に弁当を渡すが、その時、郵便配達人が封筒を差し出す。

その場で開けてみると、中に入っていたのは斎藤家の息子達に撮ってもらった写真が入っていたので、4人はそれを覗き込む。

そこには疲れきり、汚れた姿で呆然とした表情の4人が写っていた。
 


 

 

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