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忍びの国

和田竜原作の映画化

これまでも「忍びの者」(1962)や「忍者秘帖 梟の城」(1963)「忍者秘帖 梟の城」(1999)でも描かれた織田信長による伊賀攻めを描いた忍者ものになっている。

伊賀忍者が主人公で里が全滅させられることが分かっている話なだけに、この手の話は暗く重い話になるものだが、この作品は意表を突き、本格的な伊賀攻めの前段階の織田信雄による前哨戦のような戦いを描いている。

このエピソードが史実に基づいたものなのかフィクションなのかは分からないが、従来と違い忍者側の勝ち戦と言う展開になっているため、忍者が縦横無尽に活躍する痛快でマンガのような世界が展開している。

60年代の忍者ブームの頃にも、忍者を荒唐無稽な魔法使いのように描いていた従来の表現からより現実の人間として描く傾向が強まり、スパイ業だけに基本非情な部分もあると突き放したような描き方をしていたものだが、今回も「虎狼の族(ころうのやから)」と言う表現で「人でなし」として描かれているのが興味深い。

後半では、現代人の若者気質とダブらせたような時代批判のような部分も見受けられるが、忍者の生き方と現代の若者の考え方を結びつけるのはさすがに無理があるだろう。

主人公のキャラクターも、何も考えず軽薄な部分もあるが、忍者としての技量は超一流と言うマンガの主人公のような設定になっている。

対するライバル役の大膳やヒロイン役のお国なども、いかにもマンガのキャラクターのような分かりやすい造形になっているのだが、お国の方は、伊賀に攫われて来て以来、女1人でどうやって暮らして来たのか分からなすぎる。

一番気になるのは、忍びのプロたちがいる里の中でどうやって操を守っているのかと言うこと。

映画では、小屋の戸を閉めて無門を中に入れさせないようにしていると言うマンガのような設定でごまかしているが、忍者にかかれば、あんなものどうとでも忍び込めるはず。

アイドル映画だけに生々しい描写は意図的に避けたのだろうが、やや荒唐無稽が過ぎるかな?と言う気もしないでもない。

それでも、でんでんやきたろうと言った個性派の役者を上忍として描くなど、「忍びの者」の伊藤雄之助に通じる味わいもあり、 全体としては楽しい忍者映画になっており、なかなか過去見て来た忍者ものでこれだけ楽しめるものは数少なかったような気がする。

ユーモア時代劇と言うほどではないが、肩の凝らない明朗娯楽時代劇ではあると思う。 
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2017年、映画「忍びの国」製作委員会、和田竜原作+脚本、中村義洋監督作品。

草むらに隠れながらも、とある小道に集結する忍者たち。

伊賀上忍の1人百地三太夫(立川談春)率いる一党が狙っていたのは、同じく上忍下山甲斐(でんでん)の陣地であった。

百地の配下の下忍が綱を砦の塀に張り、それを伝って忍び入ろうとした時、砦の外側の斜面に土遁の術で身を潜めていた下山の下忍が槍で突き殺して行く。

その直後、身を隠していた下山の下忍たちが一斉に矢を放って来る。 陣地内には、下山甲斐の息子、下山平兵衛(鈴木亮平)とその弟下山次郎兵衛(満島真之介)もいたが、何事じゃ?いつもの小競り合いか?と平兵衛が聞いても、分からん、戦じゃと言う琴江が帰って来るだけで、甲斐は下忍たちに銃に弾を込めるよう指示する。

形勢不利かに見えた三太夫だったが、何故か余裕の態度で、もはや門は開くと配下の者達に伝える。 見ると、砦の中に白い霧のようなものが涌き出していた。

その霧の中から出現した無門(大野智)は、視界を失って狼狽している下山の下忍たちを尻目に門に近づくと、内側から破壊する。

それを観た三太夫は、あやつの前に門はなし!無門とは良く言ったものじゃと感心すると、かかれ!と配下に命じる。

門から出て来た無門は、じゃあ、わしはこれで…、斬り合いなどしたら死ぬかも知れんからな…などと三太夫に声をかけ帰ろうとするが、そんな無門に三太夫は、下山次郎兵衛をやらんか?永禄銭30文でどうじゃ?と誘う。

しかし無門が返事をしないので、50?100!と値を吊り上げると、ようやく無門は承知する。

無門は側にあった槍を手に取ると、それを砦に向かって放擲し、地面に刺さった槍目がけてジャンプすると、槍をさらにバネ代わりにして砦の中心部に降り立つ。

砦の中では、形勢が逆転しそうなので、次郎兵衛が平兵衛に、兄者!討って出ようではないか!と進言していたが、敵にも親もいれば兄弟もいる、むやみに殺しても良いと言うことではないと平兵衛は言い聞かせていた。

そこへ無門がやって来たので下忍たちはざわめき出す。

すると、突然、太鼓を打ち鳴らした甲斐が、川じゃ!次郎兵衛と無門!と宣言したので、それを聞いた下忍たちは、川じゃ!川じゃ!と口々にはやし立てながら、無門と次郎兵衛の周囲に集まって来る。

それを聞いた無門は、面倒くさ!と顔をしかめるが、対峙した無門と次郎兵衛の周囲に土俵のような円を地面に描き、両者の足下に平行した二本線を描くと、下山の下忍たちは見物客のように円の周囲を取り巻く。

それを見た平兵衛は、止めろ!戦ってはならん!おぬしの敵う相手じゃない!と弟に声を掛けるが、次郎兵衛は無視する。

しかし、あっさり無門が次郎兵衛を刺し殺し、次郎兵衛は地面に描かれた二本線の真ん中に縦に倒れ、「川」の字が完成する。

じゃあ、わしはこれでと言い残し、無門が帰ろうとするので、おのれ!無門!と平兵衛が立ち向かおうとするが、お前、早まるな!何、怒ってるんだよ?と甲斐が制する。

その直後、鐘の音が聞こえて来たので、お~い!下山の!と三太夫が砦の外から声をかけて来る。

おお、三太夫!参集の合図じゃ、共に平楽寺まで行こう!と甲斐も答える。

父上、次郎兵衛が殺されたんですぞ!と平兵衛がいきり立つと、それがどうした?次男なんて下忍に過ぎん、下人が死んで何をうろたえる?と甲斐は無関心そうに言い放つ。

それを聞いた平兵衛は愕然とする。

これがわしらが育った「忍びの国」… ここに住むもの達は周囲から「虎狼の族(ころうのやから)」と呼ばれていた。

わしは何と言う愚か者じゃ、今となってようやく気付くとは… この者達は人間ではない!この「忍びの国」が滅ぶのも時間の問題だ…

この時代、尾張の織田信長は、伊賀の隣の伊勢の国の城主北畠具教(國村隼)の娘婿として、自分の次男織田信雄(知念侑李)を無理矢理押し付けていた。

ある日、北畠具教の前に織田信雄が、かつて具教の家臣だった長野左京亮(マキタスポーツ)と日置大膳(伊勢谷友介)を伴ってやって来る。

遅かったの、婿殿店、この日が来るのは承知じゃ。大膳、左京亮、一騎当千の武者がここに現れるとは…と北畠具教は鷹揚に出迎える。

そんな具教に信雄は、「こなす」は何処か?それ一個で城が立つとも言われている値一満貫の茶壺のことだ!と迫る。

すると北畠具教は、これのことか?と小さな壺を取り出し、その場であっさり割ってみせると、あっけにとられた信雄に向い、どうした?早く始めんか?と促す。

しかし、誰も動こうとはしなかったので、信雄は焦れたように、大膳どうした!とけしかける。

それでも大膳は動かないので、左京亮が参る!と言うと立ち上がり、部屋にかけてあった槍を取ると具教に向かう。

しかし具教はあっさり刀でその槍を切り落とし、廊下の方まで斬り結んで来る。

形勢不利を見た信雄が大膳どうした!と再度声を掛けるが、元の主なんか斬れるか!と大膳は吐き捨てる。

それでも左京亮が具教から斬られようとする瞬間、大膳は脇から具教を素早く斬る。

斬られた具教は、大膳!と叫び蹴り庭先に落ちると、良う聞け!お前もいずれは織田家で家臣を持つ身になる。

家臣持つ身になったら、家臣の安全のみを考えよ!今後は織田家と共に生きるのじゃ!と言うので、具教に駆け寄った大膳は、大殿!と呼びかけ涙する。

その時、良うも父上を!と叫び懐剣を握って信雄の元にやって来たのは、妻の北畠凛(平祐奈)だった。

それに気付いた信雄が、おのれが妻に何をするか!と叱咤するが、突進して来た凛の懐剣で右頬を少し斬られてしまう。

しかし、大膳がすぐさま間に入り、返り討ちしようとした信雄の邪魔をしたので、おのれ、大膳!と信雄は睨みつける。

その一部始終を庭の陰から監視していた忍者が戻り、伊賀、上野山の平楽寺に集結していた三太夫ら十二家評定衆に報告する。

十二家評定衆の1人から北畠具教を斬ったのは誰じゃ?と聞かれた忍者は、確か大膳とか…と伊勢から戻った忍者は答える。

それを聞いていた上忍たちは、それよりどうする?まさかいきなり攻めては来るまいと織田家の動きを警戒するが、守ってやると言い、城を築いたりとかな…と甲斐が言い出す。

断じて歯向かう気などないと信雄に伝えねば…と、評定していた上忍たちは相談する。

寺の外に結集していた下忍たちは、織田と戦うと誰が銭を払ってくれるんだ?と噂し合っていた。

そこに衆議は決まった!と三太夫たち十二家評定衆の面々が戸を開けて顔を出す。 織田に逆らうな、国が滅びる。

我ら伊賀は、織田の軍門に下ることにした。 ついては伊勢に使者を放つことにした。使者は下山平兵衛!文蔵を共につけることにする。

織田信雄に伝えろ!と指示する。 寺から帰宅した無門は、戸を開けようとするがびくとも動かない。

横の窓が開いて顔を出したお国(石原さとみ)が、いらっしゃいませなどと他人行儀なことを言うので、無門は三太夫からもらった100文を差し出し、そろそろ家、返してくんないかな?と頼む。

するとお国は、無門殿、それは受け取れませぬ。

私を安岐の国より攫って来たとき、何とおっしゃいましたか?と問いかける。

(回想)お国が寝ていた寝所に忍び入った無門は、おのれは既に我が術中にある。

声も出ん!と布団に寝ていたお国の枕元で暗示をかけるが、忍びですか?とあっさり目を開いたお国が聞いて来たので拍子抜けする。

(回想明け)わしは伊賀一の忍びじゃ!銭の心配させねえから…と申しませんでしたか? 言いましたな…と、無門は罰が悪そうに答える。

この1年でいかほど持って来られましたか?とお国から聞かれた無門が1貫286文ですと答えると、約束は?とお国が重ねて聞いて来たので、年に40貫文でしたと正直に答える。

そのような金で夫婦になるおつもりだったのですか? 忍びと言っても伊賀では百姓ではないですか!とお国から厳しく責められていたとき、先ほど使者の共として出かけて行ったはずの文蔵が屋根の上に飛んで来たので、あれ?早かったな?と無文が驚くと、顔中血だらけの文蔵が落ちて来て、平兵衛に斬られたと教える。

既に口が聞けない瀕死の状態の文蔵は平楽寺へ運び込まれ、文蔵の口の中に手を差し込んだ忍者が舌の動きで言いたいことを読み取り、下山平兵衛の裏切りでござると十二家評定衆に伝える。

それを聞いた下山甲斐は、あやつ、それほどまでに伊賀を嫌うておったか…と嘆息する。

裏切った平兵衛を前にした織田信雄は、伊賀を攻めよとな?とその申し出に驚いていた。

しかし、同席していた長野左京亮は、十二家評定衆の命を受けた者かもしれませぬと警戒を促すが、伊賀の兵と言えば3千~5千、我が方の半分!と信雄は乗り気になるが、信長様のお言葉によると、伊賀には「虎狼の族」がいるので容易に攻めるべからず!と諌める家臣もいた。

それを聞いていた平兵衛は、私には信長様のお言葉の真意は、1人で討ち取ってみせろと聞こえますとそそのかす。

それを聞いた家臣も、確かにお父上も、若い頃は無茶をしておられましたなと同調する。

他の家臣たちも、今こそ、武功を立てましょうぞ!と信雄を煽り始める中、ただ1人、大膳だけは、弱き者を討つなどごめん被ると興味を示そうとはしなかった。

しかし、信雄は、家臣たちの大勢に押される形で、わしは伊賀を攻めるぞ!と決意する。 それを聞いた平兵衛 は、さすれば、伊賀を守ると言い、城を築きなさい。

わしに考えがありますと言い出す。 その話を持ち込まれた十二家評定衆は、伊賀のど真ん中に城を造るなど伊賀者が許すはずがあるまいと呆れるが、織田の使者がどう言う城にするか皆様の望み通りにするが良いと好条件を提案し、百両箱を大量に運び込むのを見ると、我らが織田様に歯向かうなどもってのほかじゃ…などと態度を豹変させる。

平楽寺に参集していた伊賀者の前に出てきた三太夫は、丸山に城を造る。築城に参加するものには織田家より銭が出る。

1日辺り150文じゃ!と教えると、無文を含め、全員があっさり、やります!と即答したので、みんな励め!と激励する。

すぐさま城作りが始まり、その様子を見に来た左京亮が、バカか、こいつら?銭さえもらえば主は誰でも良いのじゃ…と呆れると、一緒に馬で未に来ていた大膳が、それは貴様も同じじゃ…と言い捨て、1人帰って行く。

銭儲けだけで築城に参加している忍者たちの中には、まともに働こうともせず、監視役の織田家の家臣が注意すると、吹き矢で眠らせたりする始末。

それでも、その日の夕方、手当をもらう時には、全員しっかり並んで金を受け取る伊賀者たちだった。

ある日、定収入が得られるようになった無文とお国が森の中を散策しながら、織田家は羽振りが良いですね、この分では城作りもあっという間に終わっちゃうんじゃないですかね?と話していたが、その時、草むらから突然手裏剣が飛んで来る。

それは、無文たちに投げられたものではなく、伊賀の子供たちの訓練をやっている所だと気づく。

観れば、1人の子供の足に手裏剣が刺さっていたので、それを見た億には、思わず、お止めなさい!と声をかける。

すると草むらの中から、おお、無門か、見えなかった!と詫びる声が聞こえ、ネズミ、退いてろ!と叱りつける。

手裏剣が刺さった子供のことだと気付いたお国が、本当の名は?と聞くが、子供は答えなかった。

見ると、近くに死んだ子供の身体が横たえられていたので、毒だろう、血を吐き出さなければ死にます。

毒に慣れるためにやっているのですと無文はお国に教える。

ネズミと呼ばれた子供は、自分で自分の足の傷から血を吸っていた。 弱いものは死ぬ…、それは仕方がない…と無文は淡々と言う。

それを聞いたお国はショックを受けたようで、無文殿もあのようなことを?と聞くと、ガキの頃から伊賀一での、あんな修業なんか屁でもない!と無文がとぼけると、侍になりなさい!織田家には羽柴某とか言う者もいるそうではないですかとお国は言い出す。

しかし、無文は、わしは、お国殿とこうして毎日幸せがあれば…などと言いかけるが、お国の強い眼差しを見ると、なります、侍に!と言い直すしかなかった。

それでも家に帰り着くと、又先に入ったお国に閉め出されてしまう。 伊賀者の人並みはずれた技量もあり、あっさり城は完成してしまう。

百地三太夫はその功によりしっかり織田家から褒美をもらい、織田家の家臣たちは城の守りは我らがやりますと申し出たので、三太夫たちは承知し、城を明け渡して帰って行く。

残った織田家の家臣たちは、城門を固く閉ざし、伊賀の領内に織田家の城を造ると言う策略がまんまと成功したので笑みを浮かべていた。 ところが、帰りかけていた三太夫は、さて、やるか…、完成したし、もはや城に用はない…と呟く。

次の瞬間、完成した城が大爆発を起こし、炎上始めると、領内に残っていた織田家の侍には矢が放たれ、皆殺しにされる。

それを目の当たりにした長野左京亮は伊勢に戻り、事の次第を報告。

おのれ!よもや罠を仕掛けたのではあるまいな!と責められた下山平兵衛は、そのようなことは!と真顔で驚いたように否定する。

一方、平楽寺では十二家評定衆が、三太夫、どう言うつもりだ!と百地三太夫を詰問していた。

今回の件を理由に織田家が攻め込んで来る恐れがあったからだ。 しかし三太夫は、戦が始まるとどう言う者が来る?と悠然としてほくそ笑んでいるので、それを見た十二家評定衆は、三太夫、おぬし、もしや術をかけたか?と聞く。

その頃、伊勢では、日置大膳だけが伊賀攻めに自分は参加しない!城作りで銭儲けして、儲けたから焼いた…、そのような阿呆を攻めて何になる?とと発言していた。

そんな大膳に左京亮は、松山城に参った我らの面目がなくなると反論するが、弱き者をなぶるようなことは二度とせぬ!元の主を殺して俺が平気だと思うか?と大膳の意志は硬かった。

それでも左京亮は、滅ぶか従うか、2つに1つしか道はない!と迫ると、だがわしは、滅びもしなければ従うこともしない!と大膳は言い放つ。

平楽寺では、百地三太夫が伊勢よりの道を迎え撃つと計画を話していたが、戦となれば誰が銭を払うことになるのかな?と聞いていた無門が質問する。 それを聞いた他の伊賀者たちも、誰が銭を払うのか?と一斉に騒ぎ出す。

それを見た十二家評定衆は、この期に及んでまだ銭と言うか!この掟背く者あらば、一家皆殺しにする!と呆れながら叱責する。

家に帰ってそのことを聞いたお国が、戦に出ても何の足しにもならぬと言うのですか!と驚くので、ここは一つ逃げ出しませんか、京とか…と無門は提案する。

どうやって食べていくんです?とお国が聞くと、軽業とか見せれば…と無門が言うので、物乞いですか!私は物乞いと暮らしている覚えはありません!とお国は怒り出す。

他国に逃げるなど嫌でございます!とお国が言い張るので、織田の奴ら、戦を止めねえかな?と無門は愚痴る。

その夜、無門は無謀にも伊勢の織田信雄の寝所に1人忍び入り、枕元に近づく。 織田の小倅か?いくつになる?と無門が信雄に術をかけ問いかけると、目覚めた信雄が21と答える。

21?その割には長泣き面だな?苦労が足りぬようだ…と驚いた無門だったが、今宵限り伊賀攻めを忘れよ。その内、又寝物語をしにきてやる、良いな?織田の小倅よと暗示をかける。

すると、信雄だ!とあっさり信雄が大声を出したので、嘘!と無門は驚く。

この信雄、伊賀を根絶やしにしてやるわ!女子供の首もさらし者にしてやるから、そう思え!と言うので、お国の首も斬り取るのか?と無門が聞くので、誰じゃ?それはと信雄は聞き返して来る。

ならばその首、預けておくぜ!戦場で会ったら、俺が直々に斬り落とし、地獄に落す!と無門が言い放ったとき、殿!と見張りの家臣たちが駆けつけたので無門は逃げ出す。

その後、地下牢に迷い込んだ無門は、牢の中から、無門!と呼びかけられたので、良く見ると、それは下山平兵衛だった。

裏切り者、何で捕まってるの?と聞くと、おのれ…、わしを殺しにきたのか?と平兵衛が睨みつけてきたので、何で?と無門は不思議がる。

その時、さらに奥の牢の中から祈るような声が聞こえてきたので無門が覗いてみると、それは下女と共に幽閉されていた北畠凛が牢内の神棚を一心に拝んでいる姿だった。

信雄様の刺客として来たのでしょう?と凛が聞いて来たので、信雄を?と無門は戸惑うが、伊賀者は銭をもろうて術を売るとか?父の仇、織田信雄めを討ち滅ぼしていただきたいと凛が依頼して来たので、いくら出す?と無門は聞く。

大膳は地下牢に閉じ込められたに1人会いに来ると、あれを出しなさいと凛が命じたので、言われた下女は姫様!と青くなる。

それでも、出すのです!と強く言われた下女が出して来たのは、小さな箱で、茶入れの「こなす」です。

信雄は、二束三文の壺と見分けがつかなかったようですが、一万貫の値がつくと言うものですと凛が言うので、じゃ、遠慮なく!と牢の外から無門は受け取る。

下女は壺を渡したことを非難するような顔だったが、良いのです、願いが届いたのです。神仏に願いが通じたのです。

もはや思い残すことはありませんと凛は言い聞かす。 壺の墓を懐に入れて帰りかけた無門に、無門よ、守期などないのだろう?と平兵衛が声をかけて来たので、しーっ!と黙らせる。

この人でなし!と平兵衛は罵倒するが、その時、凛と下女が一緒に自害して牢の中で倒れた音に気付いた無門は、何で?と驚く。

それを見た平兵衛は、貴様に分かってたまるものか、命を賭けた願いがあることを!銭より大事なものがこの世にはあるのだと平兵衛は嘲るよう無門に言い聞かすが、無門は分かってたまるか!と言い返す。

信雄は、皆に出兵を命じよ!と指示を出す。 そこに大膳が来たので、おのれ大膳!わしを笑いに来たか?と信雄が睨みつけると、大膳は、この伊賀攻め、成功させてみせましょうと言い出したので、今、何と言った?もう一度言ってくれと信雄は信じられぬように聞き返す。

大膳は、その後、地下牢に閉じ込められていた下山平兵衛に会いに行くと、おのれ、伊勢に来た訳を教えろと迫る。

平兵衛は、弟を殺され申した…、互いが家同士で小競り合いに明け暮れ、もてあそぶように弟を殺し…、誰1人悼む者さえいませんでした…と打ち明ける。

伊賀者なんて言う人でなしどもを根絶やしにしてもらいたかったのですと言う平兵衛の言葉を聞いた大膳は、おのれは十二家評定衆の術にはまっておる!と指摘する。

平兵衛は、あれが術だと申すのか!と驚くと、おぬし、何を根拠に築城を申し出た?と大膳が聞くので、十二家評定衆がそう話すのを聞いて…と答えると、聞かされておったのじゃ、はじめから焼くつもりで誘っておるんじゃよと大膳は教える。

平楽寺では下山甲斐が、音羽の…、下忍どもの雇い、少なくなったと思わんか?このまま戦が始まれば勝てる訳があるまい…と、十二家評定衆の1人音羽の半六(きたろう)に話しかけていた。

しかし三太夫は、勝てる!大膳は来ないからな…、あやつが来なければ兵は半分も残らんぞ…、我らが勝てば伊賀の武名は上がり、下忍どもの注文も増える。我らは儲かる…と指摘したので、聞いていた十二家評定衆は愉快そうに笑い出す。

大膳は信雄の前にまかり出ると、この日置大膳、伊賀攻めの命、お受け致す。

これこそが術でござると進言するが、おのれ、ぬけぬけと好き放題言いおって…、わしに心底従わないなら攻めて見せるか?信雄は罵倒する。

すると大膳は、勘違いするな、小僧!と主である信雄を叱りつけ、みんなお前の親父のために従っているのだ!俺は自分のために行くんだ!と言い切る。

それを聞いた信雄は、おのれ!申したな!おのれらにわしの気持ちが分かるか!生まれてより人にすぐれ、人のうらやむような武者のおのれらに分かるものか!おのれが苦労の足らぬことくらい承知しておるわ! おぬしらは天下一の父を持った事があるのか! 何をやっても敵わぬ父を持った事があるのか!と喚きながら、信雄は泣き出す。

そして、すまなかった、大膳、左京亮、北畠具教をおのれらに討たせたのはわしの間違いであった…、すまなかったと信雄は詫びる。

すると、いきなり大膳は信雄を殴りつけ、殿!と言ったかと思うと、その場に平伏し、父の仰せにある伊賀を攻めるなと言うのは、おのれ1人で討てとの思し召し!重臣一同、参上致しましょう!と言うと、その場に来た家臣たちも呼応するかのように雄叫びをあげ出す。

その声を、地下牢で聞いていた下山平兵衛は、泣きながら笑っていた。

その夜、家に帰って来た無門は、お国、逃げよう!と声を掛けるが、お国は窓越しに、卑怯者!無門とのには誇りと言うものがないのですか!と無門を罵る。

生まれた国を守る、これも立派な誇りですとお国が言うので、銭、出ないんですよ?さっき織田の小倅にあって来たんですけど、やっぱ、女子供も容赦しないって…、首斬り取って、首、さらすんだって…、女子供も…と無門は教え、お国殿に約束致す!北畠秘蔵の「こなす」、一万貫の値が付くそうです。

これで今日で夫婦になろうと言いながら、凛からもらって来た小箱を出してみせる。

伊勢に集結した兵たちは3隊に分けられ、その1隊は信雄自身が攻め入ることが発表される。

天正7年9月 織田信雄は父に無断で伊賀に攻め入る。 兵の数1万 伊賀では、阿波口に待機していた百地三太夫が、まこと日置大膳はおらんのだな?と確認していた。

行軍は必ずこの道を通る。この崖より矢弾の雨を降らす!皆のもの!土となれ!崖となれ!と下忍たちに命じる。

又、伊勢地口に待機していた音羽半六は、長野左京亮が陣頭指揮で近づいて来るのを確認し、恐れることなど何もない!と既に森の中に隠れていた配下に声を掛けるが、返事に覇気がないんで、面を見せろ!と声を掛けると、わずかばかりの下忍たちしか顔を出さなかったので、少な!何故これしかおらん?と驚き狼狽する。

その頃、大半の伊賀者はおとぎ峠を越えて逃げている最中だったのだ。

無門とともに、その列に混じっていたお国は、こんなに逃げているのですか!と呆れたようにに呟く。

伊賀の半分は逃げていたのだった。

やがて、阿波口に織田信雄の軍が近づいて来るが、その鉄砲の数を見た三太夫は愕然とする。

発砲が始まると、退け!と三太夫命じる。 一方甲斐は、逃げたものを呼び戻せ!今なら間に合う!と命じていたが、その時、左京亮の軍と思っていた旗印が代わり、近づいていたのは日置大膳の軍だと気づく。

馬上の大膳は、左京亮じゃなくて悪かった!伊賀者の首、覚悟せい!と言いながら矢を放つと、矢が当たった大木が倒れる。

馬野口に待機していた下山甲斐は、接近して来た長野左京亮の軍の先頭に息子の平兵衛がいることに気付く。

平兵衛は、土遁の術で地面に隠れていた下忍たちを素早く見つけ次々に刺し殺して行く。

その頃、おとぎ峠を逃げていたお国が歩みを止めたので、どうしました?無門が聞くと、あれはネズミ殿では?と先方にいた子供を指してお国が言う。 親はおらんでしょう。赤子の頃に他国から攫われて来たのです。

ガキ1人で逃げる他ないでしょうと無門が教えると、あのような子供でも戦おうと言うのに、あなたと言う人は!と無門を叱ったお国は、私は逃げるのを止めます!私も戦います!と言い出したので無門は慌て、伊賀に戻る事を決意する。

お国はそんな無門に「こなす」の小箱を渡し頷くので、無門はその小箱を高くさし出すと、ここに一万貫ある!北畠家の「こなす」だ!戦に参加すればこのわしが褒美を取らす!小兵首十文、兜首十貫!信雄の首5千貫じゃ!と逃げていた伊賀者たちに呼びかけると、足を止めた伊賀者たちは、一斉に、銭じゃ!銭が出るぞ!と騒ぎ出す。

全ての下忍に伝える!幼き頃より鍛えた技を万金に変えるのは今だ!平楽寺で待っててくれ!と叫んだ無門に、無門殿!ご無事で!決して死んではなりませぬぞ!とお国が励ます。

それを聞いた無門は、これだよ、これ!わしは伊賀一の忍びだ!死ぬ訳がなかろうが!と言い残し伊賀に戻って行く。

遅れまじと、他の下忍たちも一斉に伊賀に舞い戻って行く。

馬野口にの山甲斐が、形勢不利だと悟ると自分だけ逃げ出そうとしていると、やはり我先に逃げ出すか!人を人とも思わぬな!これしきの兵で勝てると思うていたのか?と罵倒して来たのは、敵軍に混じっていた平兵衛だった。

すると甲斐は立ち止まり、伊勢の水は耳を悪くすると見える…、あの音が聞こえぬとは…、おぬしはもはや忍びではない!これしきの兵とはこれのことか?と逆に平兵衛に聞き返す。

その直後、森の中から大勢の伊賀者たちが飛び出して来て、よ、待たせたな!と無門も戻って来る。

そして、伊賀者、良く聞け!小兵首十文、兜首十貫!信雄の首5千貫じゃ!と又、その場に隠れていた伊賀者に無門が発表し、まずは兜首この無門様!と言いながら、武者を倒し、十貫文じゃ!と自ら実践してみせる。

これを聞いた伊賀者たちは一斉に奮起し、馬野口は伊賀者が大暴れし始める。

敵を討つことばかりで夢中で、自分の警護がいなくなったことに気付いた甲斐はわしを守れ!と命じるが、誰一人耳を貸すものはいなかった。

やがて甲斐は、平兵衛!わしを助けろ!全てはお前のためにやったことじゃ!一反でも畠を残さんとやったことじゃ!と息子に呼びかけるが、もはや父ではない!と平兵衛 は吐き捨て、その直後、長野左京亮が名乗りを上げながら刀でなで斬る。

甲斐は背後の木と共に切断される。

その頃、無門は、どこだ、5千貫!無門じゃ!と叫びながら信雄を探していたが、やがて見つけ出し、信雄じゃ!と声を上げると、下忍たちが一斉に信雄の方角へ集結して来る。

その気配を察した配下が、お逃げなされ!と信雄の馬の尻を叩いてその場から逃がそうとするが、途中で馬を止めた信雄は、逃げてたまるか…と呟き、又伊賀へ戻ろうとする。

その時、死人の乗った馬が近づいて来て、その死体に隠れていた無門が、5千貫!と叫びながら信雄に襲いかかろうとする。

その時、どこからともなく矢が飛んで来て無門は草むらの中に弾き飛ばされてしまう。 矢を放ったのは大膳だった。

草むらから出て来た無門は、あんた、何とか大膳だろう?何て矢だ!とぼやくと、貴様無門だな?来い!と大膳は、信雄を守るように立ちはだかる。

すると、無門は、今の矢をまともに受け壊れてしまった鎧を外したので、それを見た大膳は、貴様、それであの動きを!と驚愕する。

無門は、戦場で外したことがないので、そう動くかわしにも分からんととぼけると、目にも留まらぬ身体を動きをし、織田の家臣たちが差し出す槍の間を巧みにすり抜け愚弄し始める。

大膳は、無門が投げた手裏剣を両手で受け止めた後、無門とがっぷり両手で握り合う。

すると無門は肩の関節を外し、大膳の身体を蹴って来る。 大膳は両掌を怪我しているため、小刀も握れない状態だった。

そんな大膳から身体を離した無門が関節を元に戻しているとき、無防備状態になった大膳の背後から、伏せよ、大膳!と呼びかけた信雄が馬上から矢を放つ。

大膳が身を屈めた上を飛んで来た矢が無門を草むらに弾き飛ばす。

大膳は信雄に、殿!もはやこれまででござる!退かれよ!他の軍勢はことごとく退いておりますると声をかける。

織田勢が敗退したので、平楽寺に集まっていた伊賀者たちは勝利の歓声を挙げていた。

そこにやって来たお国が、無門殿は?と訪ねると、無門なら死んだわと吹き矢の下忍が答える。

一方、何とか伊勢の城に信雄とたどり着いた大膳は、殿が阿呆ならわしも阿呆だなどと自嘲していた。

そこに長野左京亮も戻って来たので、無事だったか!と大膳は安堵する。

しかし、その直後、その場にいた平兵衛が、かしずいていた足軽が無門の変装であることに気付く。

おのれ!生きておったか!と驚愕する大膳。

信雄の矢を受け、草むらに弾き飛ばされたかに見えた無門だったが、矢と共に後ろに飛び下がった瞬間、地面に落ちていた変わり身用に木の人形を掴み、矢はその人形に刺さっていたのであった。

気付くと、周囲にいた足軽たち全員が伊賀者の変装だったことに気付く。

無門よ、この戦は全て十二家評定衆が仕組んだことなのだ。おのれが我の弟を殺した時から、十二家評定衆を叩き潰すつもりだったが、実は奴らの手の内で踊らされていただけだったのさと平兵衛は明かすが、それを木悼むもんは、それがどうした?と言うだけなので、何も思わぬのか!と苛立った平兵衛は、着ていた鎧を脱ぎ捨てると、その場に二の字を描く。

川じゃ!わしが死んでも他の者に手を出すな!と平兵衛が挑むと、無門は面倒くさそうに、分かった、分かったと繰り返す。 その周囲を伊賀者が丸く取り囲んだ中、無門、頼んだぞと念を押した平兵衛は、地面の二本線で無門と対峙し、小刀で戦い始める。

平兵衛は二刀で戦っていたが、やがて1本を弾かれ、無門の刀を掌で受ける。

無門は倒れると見せて相手を蹴り、剣を相手の腹に突き刺す。 わしは人として死ねる…と平兵衛が言うので、分かったよ、もう…、怒るな…と無門が声をかけると平兵衛は川の字の真ん中に倒れ「川」の字が完成する。

無門は、大膳よ!と呼びかけ、大膳が、おお!と応じると、こいつを伊勢の地に埋めてやってくんねえか?と頼む。

引き受けた!と大膳が答えると、可哀想な奴だ…と呟いた無門は、信雄!その首、預けとく!大事にしとけ!と声をかけその場を立ち去るので、他の伊賀者たちは、無門、どう言う事だよ?5千貫が…と戸惑うが、文句あんのか!と無門から言われると、いや…と口を濁し、一緒に伊勢の地を後にする。

伊賀の平楽寺では、十二家評定衆と伊賀者たちは勝利の美酒に酔いしれていた。 そこに、ネズミと一緒にお国もいたが、その時、みんなが帰って来たぞ!無門じゃ!と声が聞こえ、無門たちが帰って来る。

それを百地三太夫が、ご苦労じゃった!とねぎらうと、おぬしが持っているのだろう?下忍の分際で…、しらばっくれてと「こなす」のことを聞いて来る。

三太夫の前に来た無門はいきなり三太夫を刺すと、何をするか!と驚く三太夫に、おのれらの良くのために、良うもわしらを踊らせてくれたな!と無門が言うので、何を世迷いごとを!おのれも尋常の世の中では生きられぬ「虎狼の族」だ!と三太夫は罵倒する。

わしはむちゃくちゃ腹が立ってるんだ!と無門が迫ると、無門、生涯、年貢なしにしてやる、これは十二家評定衆の総意である!などと言って三太夫は懐柔しようとする。

「虎狼の族」か…と無門が自嘲すると、お国がまかり出て、お下がりなさいまし!と伊賀者を遠ざけながら小箱を差し出す。

あれはもしや「こなす」か?と三太夫が聞くと、無門殿に指一本でも触れたら即座に粉々にしますから覚悟しなさい!とお国は牽制する。

しかし、そんなお国の忠告など無視して、その場にいた伊賀者は、一斉にお国目がけて手裏剣や吹き矢を投ずる。

無門はお国を守ろうと、その前に飛びついて立ちはだかり、大半の手裏剣や吹き矢を自らの背中で受け止めるが、何本かの剣や吹き矢はお国の首に刺さっていた。

倒れるお国を支えながら、無門は泣きながら毒をし出そうとする。

必ず助けてやるからな!と呼びかけていた無門は、虫の息のお国が何かを言おうとするので、しゃべるな!と叱るが、本当の名前、聞かせて…と言うので、幼き頃に伊賀に攫われて来たので、名前なんか知らん…、名前なんてないんだ…と無門は毒を吸いながら答える。

それを聞いたお国は、可哀想に…、可哀想に…と涙を流しながら息を引き取り、持っていた「こなす」が地面に転がる。

そんなお国を見ていた吹き矢の下忍が、そりゃ死ぬわい…、おぬしに良うに毒を飲む訓練をしておらぬからな…と言いながら近づこうとすると、その場で無門はこなすをげんこつで叩き毀してしまう。

わしは何と言う馬鹿者じゃ!と叫んだ無門は、死んだお国の身体を抱き上げ、平楽寺を去ろうとするが、その時、振り返ると、おのれらは人間ではない!と伊賀者たちに言い捨てて行く。

やがて雪が舞い降りて来る。 2年後 伊賀の武名は天下に轟きました。

下忍の注文は引く手数多になる。 伊賀の栄華はこれからよ…と満足そうに言いながら、平楽寺から顔を出した百地三太夫の胸に矢が刺さる。

織田信長は、前回の5倍に当たる4万4千の軍勢で伊賀に攻め込んできて、伊賀はその大群に焼き滅ぼされてしまいました。

だが、かようなことでこの者達の息の根を止められると思うか…? 「虎狼の族」は天下に散ったのだ。

いずれ我らの孫、又その孫に血は受け継がれる。

おのれの欲望に生き、他人のことなど考えぬものどもが隅々まで行き届く…(原題の若者の姿に「虎狼の族」の姿がオーバーラップする)

無門はおらんか?と日置大膳が配下の兵に聞くと、捕えたものの中に無門を見たものがいたそうです。

何でも子供を捜しに来たそうですと兵士たちの報告を聞き、人でなしが人にでもなったつもりか?と帰路につく織田軍の列を見ながら馬上の大膳が呟くと、本当ならいくらくれる?と聞いて来た無門の声を聞いたような気がして、慌てて小兵たちの列を振り返る。

後日、ネズミを連れ、草原を旅する無門の姿があった。

その後、私は父に育てられました。

母の顔は覚えておりませんが、父が言うには、たいそう美しく、怖い人だったそうです…(と山崎努のナレーション)
 


 

 

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