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鴨川ホルモー

松竹配給作品には珍しいVFXを使った青春ファンタジーとも言うべき作品。

いわゆる青春映画自体松竹のイメージから遠い印象である上に、この手のナンセンスファンタジーも珍しい試みのような気がする。

公開当時からファンタジーらしいことは知っていたので見たかったのだが、見逃していた作品だった。

改めて見てみると面白い。 ベースはあくまでも良くある青春ものなのだが、そこに奇想天外なファンタジー要素が加わっている。

若者映画らしい軽みを残したまま、勝負ものとしても意外性があり、最後まで嫌みなく楽しめる上質の娯楽映画になっている。

中でも、愉快なキャラを演じている濱田岳さんと栗山千明さん、そして嫌なキャラを演じている芦名星さんが印象に残る。

荒川良々さんや石橋蓮司さんの達者さも、こう言う奇想天外物語を良く支えている。

ゲスト的に登場している笑福亭鶴光さんや甲本雅裕さんのおとぼけ振りも愉快。

オニのCGI表現も、この時代としてはかなり出来が良い方なのではないだろうか。

東映と同様、金をかけないイメージがある松竹にしては、それなりに予算を投じているようにも見える。

ただ、当時としてはキャスティングが弱かったためなのか、宣伝に金をかけなかったためなのか、興行的に伸びず、あまり注目されなかったのが惜しまれる作品である。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2009年、万城目学原作、経塚丸雄脚本、本木克英監督作品。

京都 5月 京都三大祭りの一つ葵祭… 全てはここから始まった。

二浪して京都大学に入った。 腐っても京大である。 天下を取った気分でいた。

でもノリノリだったのは5月の頭まで、今はもう気が抜けて… これは五月病って奴かな? バイトで葵祭の牛車に付いて歩いていた安倍明(山田孝之)の呟きを後ろで聞いていた高村幸一(濱田岳)が、えっ?と聞くと、何故か牛が振り返ってモーと鳴く。

目標を見失った大学生は牛にも励まされた。(ここまでキャストロール)

バイトを終えた帰り道、5500円!こんなにもらって悪いようだねと高村がバイト料をもらって喜ぶと、終日拘束で5500円なら相場だと安倍が冷めたように言う。

この馴れ馴れしい男は高村、帰国子女枠で京大に潜り込んだ。

僕はさ、小さい頃からL.A.に住んでたからみんなが知っていることとか何にも知らないんだ、だからさ、みんなと話題が合わないときとかさ、大きな隔たりを感じるんだ、それが何か切なくて寂しくて…と高村は愚痴を言う。

その時、こんにちは!と高村と安倍の前に立ちはだかった2人の男女が、京都大学の方ですね?と親しげに話しかけて来る。

運命の出会い… 誰?と安倍が聞くと、菅原真(荒川良々)と男の方が名乗り、今度、三条木屋町で新歓コンパがあるんですと女子が良い、これがそのチラシ…と菅原が安倍と高村に勧める。

チラシには「京都青竜会」と書かれていたので、何の集まりですか?と聞くと、普通のサークルです、普通のどこにでもあるありふれたサークルと菅原は言い、女子も普通のサークルですと強調する。

これは罠だった。 タイトル 1週間後 高瀬川 飲み会の席では、暗い表情の女子が茨城県土浦出身の理学部楠木ふみ(栗山千明)ですと挨拶をしていた。

誰もそんな話は聞いておらず、「大和魂」と書かれたTシャツを着ていた高村に、渋井っすね?と同じテーブルで飲んでいた芦屋満(石田卓也)が話しかけて来る。

安倍はふみが自分の方を見ているのに気付くでもなく、部屋の壁に貼られていた「べろべろばあさんへ 大木凡人」の色紙を見つけ喜ぶ。

やがて酔ってろれつが怪しくなっていた菅原が、京大青竜会は大学創設百十四年長〜い歴史に支えられたサークルですと説明をし出す。

普通のサークルですと又強調し、こう言う飲み会もやりますし、こういうキュートな女子もいる、ごく普通の当たり前のサークルですと菅原は酔いつぶれて寝ていた女子を指し言う。

他校と交流したり、ハイキングに行ったり、夏は水泳、秋は焚き火、冬はスノボに温泉と四季折々の行事を親睦を深めるために…と菅原が続けている時、すみませんと言いながら遅れて入って来た早良京子(芦名星)を見た安倍は一目惚れしてしまい、口にしたビールを口から垂れ流してしまうほど動揺する。

京子は横にずれた芦屋から席に招かれその隣に座るが、芦屋に押される形で、反対側に座っていたふみは後ろに転んでしまう。

青竜会って一体何者だ?普通、普通って奴はどう普通なんだ?ま、随分飲んだし、とんずらで…と、帰りがけ高橋に聞くと、とんずらはいかん!と店にいた老いた店主(石橋蓮司)が出て来て、青竜会は良いぞ〜、青竜会に入れ、べろべろばあさん…などと謎の言葉を安倍にかけて二階へ上がって行く。

その時、ふみもそこにやって来て、同じ!と安倍に語りかけ帰って行く。

自転車に乗って帰りかけていたふみに、俺はこっちだから…、楠木さんどうするの?青竜会…、入るの?と安倍が声を掛けると、安倍は?と聞き返して来たので、うるさいよ!入んないよ、怪しいですと安倍は答える。

しかし、ふみはそのまま自転車で帰って行くので、何か言えよ!キノコみたいな頭しやがって!と安倍は不機嫌そうに罵倒する。

その後、1人で帰る途中、石段の所に横たわった安倍は、彼女の鼻は美しかった…、もう青竜会に顔を出すこともないだろうが、いつかどこかでばったり運命の再会をして…と相良京子のことを思い出す。

その時、今晩は、どうしました?大丈夫ですかと言う声が聞こえたのでふと顔を上げた安倍は、自転車で通りかかった警官に声をかけられ振り向いた泣いている女性が京子であることに気付く。

ミラクルだ!と感激した安倍は起き上がり、何か悲しいことでもあったんですか?大丈夫に見えへんな、ちょっとそこの交番で話聞かせてもらおうか?と警官が話しかけていたので、相良さん!と呼びかける。

あ、あなたはさっきの…と京子の方も返事をしたので、何や、君ら知り合いか?と警官が聞くので、いや、知り合いって…と安倍は首をひねるが、京子の方がきっぱりと、友達です!と答えたので、そうか、じゃあ後は頼んだで、もう夜も遅いし、気つけてな…と言い残し、警官は去って行く。

ごめんなさい…、助かった…、おまわりさんも何かと思うよね、こんな時間だし…と京子が詫びるので、改めて腕時計で1時半か…と気付いた安倍は、もう電車終わってるねと呟く。

すると京子は、大丈夫、歩いて帰るからと行って去って行くので、俺の下宿すぐそこなんだけど…、いや、自転車貸すって言う話…と安倍が話しかけると、ありがとう…、でも歩くから…、おやすみなさいと京子は立ち止まって礼を言う。

帰りかけた京子だったが、又立ち止まり、やっぱり貸してもらおうかな?と言い出す。 俺のミラクルはまだ続いていた。

自転車の鍵が中にあるから寄ってく?と安倍が言うと、じゃあちょっとだけ…と京子が乗り気になったので、1分だけ待って!と安倍は慌て、部屋の中を大急ぎで片付けて中に入れる。

色々ありがとう安倍君…、表札?立派な!と京子が褒めたので、あれは親父がね…、息子が始めて独り立ちする記念と言って…、息子が京大受かったもんだから、俺2浪でさ…、まぐれで入ったもんだから家族中舞い上がっちゃって…と、安倍がしどろもどろになり説明すると、私も1浪、1日15時間勉強してやっと受かったってタイプ…と京子は言う。

あれはガリ勉で受かるのが基本で、普通にやっていて受かる奴なんてろくなもんじゃないと安倍が言うと、京子も、そうだ、そうだと笑顔で答える。

あれ?さだまさし?と置いてあったレコードに京子が気付くと、あれ?まさし、好き?俺の浪人中のメンタル面支えてくれてさ…、まさしってさ、結構深いんだよね…と安倍は語り出す。

ふ〜ん…、そう言えばさだまさしはトークが面白いって言ってたと京子が言うので、そうそう、知ってるね!面白いんだよと安倍が喜ぶと、お母さんが好きなの…と京子が答えたので安倍は真顔に戻る。

お母さんって言えば、相良さん、出身どこだっけ?と安倍が気を撮り直して聞くと、倉敷と京子が言うので、良い所だよねと適当にあわせると、言ったことある?と京子は聞いて来る。

ないけど知ってるよと安倍は調子を合わせ、マスカット!と京子が教えると、知ってるよと安倍は笑ってごまかす。

そこで、あ!ごめん!お茶を出さずに…と立ち上がった安倍が紅茶を入れてやると、私ってね、何の取り柄もない人間だけど、何かに集中すると周りが見えなくなるの…、無分別な行動をとって後で自己嫌悪に陥ることが多いんだ…、何であんなことしちゃったんだろうって…、人間ってつくづく愚かな生き物だって…、そう思う…と京子は言うが、その間、彼女の鼻筋には気品があった…と安倍は京子の鼻を横から見つめて考える。

トイレから帰って来た安倍は、ベッドで既に寝てしまっていた京子を発見、相良さん、そりゃまずい…とぼやく。

彼女に近づき枕元に手を伸ばそうとした安倍だったが、京子が少し動いたので、慌てて離れると何やってんだよ!落ち着け!落ち着け!と安倍は窓を開けて夜の空気を深呼吸して落ち着くと、京子にタオルケットをかけてやり、自分は床に横になる。

翌朝目覚めた安倍は、既に京子がいなくなっており、テーブルに「貴方様の親切と誠実に感謝しております。私、青竜会に参加するつもり。

ご一緒できると素敵ですね!相良京子」と書かれた置き手紙が残っていた。

これは!と感激した安倍は、その置き手紙の匂いを嗅ぎ、京子が寝ていたベッドの匂いも嗅いで、春だ…、春が来た!青春か?これが青春なのか?と呟きつい笑い出してしまう。

その後、チャリで京大のキャンバスに向かい、校庭の芝生の所で寝ころんで本を読んでいた高村の側にチャリをぶつけて止まる。

驚いて跳ね起きた高村に、俺、青竜会に入ることにした。

君もだと安倍が言い出したので、何でだ?と高村が聞くと、僕一人だと物欲しげな印象を先方さんに与えてしまんだなと安倍が言うので、先方さん?と高村は不思議がり、嬉しそうにチェリでその場を回り始めた安倍の名を呼びかける。

お前がどうしても入るって言うんで、僕は嫌々付き合いで入会だ、自然で良い…、その線で行こうと安倍は一人ごとを言うので、いや、入んないと高村は否定する。

しかし、高村は安倍に付き合う形で「青竜会」の部室前にやって来ざるを得なくなる。

そのドアには「ホルモー」ハ知ルモノニアラズ感ズルモノナリと奇妙なことが書かれてあった。

レーズンがたくさんあるよと高村は部室前に積まれていた段ボールの箱に気付くが、どうでも良いよと安倍は高村の身体を押して部室のドアにぶつける。

すると、すぐにドアが開き、顔を覗かせた菅原が、お?来ましたねと言うので、こいつがどうしても入りたいって言うので…と安倍は高村のことを言うが、大歓迎です。君たち2人で満願成就やと笑顔で迎える。

そして2人を部屋の中に招き入れた菅原は、新歓コンパに参加してくれよった1回生全員がこうして入会してくれたんですと、部屋の中に座っていた8人の学生を紹介する。 そこには相良京子や楠木ふみもいた。

その後、食堂で全員と食事をすることになった安倍と高村の横に座った京子は菅原に、すみません、何度もおごってもらっちゃって…と礼を言うが、いやいや、諸君らは大事な後継者…、当然やなどと菅原が言うので、何やる所なんですか?青竜会…と高村が聞くと、僕の経歴に傷がつくようなことはないですよね?ほら僕、財務省志望だし…などと芦屋満(石田卓也)が言い出す。

芦屋君は法学部だったね?と菅原が聞くと、ええ、東大でも良かったんですが、あえて自由な雰囲気の京大に入りましたよ。それに僕現役なんで、まだ挫折と言うものを知らないんですよね…などと芦屋は自慢げに話し出す。

その時、安倍は1浪?などとふみが聞いて来たので、2浪と高村が答えたので、うるさいよと安倍が注意すると、2浪!と三好兄(斉藤祥太)と三好弟(斉藤慶太)が驚く。

まあまあ皆さん、そう御心配にならなくても…、我ら青竜会は明朗健全なサークルですからと菅原が立ち上がって説明する。

新入生はただだと言う保津川下りにも参加した安倍は、隣に座った京子から腕を絡まされる。

新入生たちは、青竜会は普通のサークルだと納得する。

やがて宵山当日7月16日(月)19:15〜烏丸三条「新風館」集合 時間厳守!と部室の黒板に書かれる。

その横には「京ノ都ニ鉾並ブ時、闇ニ紛レテ四神集フ」と書かれた紙が貼られていた。

祇園祭宵山の夜7時25分、待ち合わせ場所に集合していた芦屋は時間が遅れているのに苛立ちバッグを振り回し、それが頭に当たった高村が来た!と背後に気付く。

浴衣姿になった菅原が同じく浴衣姿の上級生たちを引き連れやって来る。

諸君!お待たせです!と言う菅原に、何ですかこれ?と聞くと、ユニフォーム、青竜会の!と菅原は答える。

そして、ハイ注目!と自分で手を叩いた菅原は懐中時計を取り出して、時間も少々押し気味ですので遅れないように付いて来てくださいと言うと自ら先頭に立って歩き始める。

四条烏丸の祭りの人ごみの中を付いて行った安倍たちは、四組それぞれ違った浴衣を着た別のグルームと対峙した菅原が、懐中電灯で8時になっているのを見て、戌の刻確認良し!ただいまより、四条烏丸の会を開催すると言い出したので、何が始まるの?と京子は芦屋に聞くが、芦屋も首を横に振るだけだった。

京都産業大学玄武組これに十人!立命館大学白虎隊これに十人!龍谷大学鳳凰団(フェニックス)これに十人!とそれぞれの代表が叫び、最後に菅原が、京都大学青竜会これに十人!これにて四条烏丸交差点の会撤収!と菅原が宣言すると、その場に集っていた各大学生たちは一本締めをして散って行く。

その後「べろべろばあ」に集合した青竜会、白虎隊、フェニックス、玄武組たちに混じった安倍らに菅原は、別にどこの何神様を信心して言う事ではなくてな、京都に漠然と漂っておられる不特定多数の神様たちを、我々若者の酔狂でお慰めしようとする夏の祭典、それが「ホルモー」やと説明するので、「ホルモン」?と安倍が聞き返すと「ホルモー!」と菅原は苛立たしそうにはっきり言い返す。

でね、京都の東西南北にある四大学、うちは吉田の青竜会、西は鬼怒川の立命館白虎隊、南は龍谷大フェニックス、北には京都産業の玄武組、この四校の学生がある種のゲームをリーグ戦形式で争う…、それが「ホルモー」ですとフェニックスのリーダー立花美伽(佐藤めぐみ)が説明する。

「ホルモー」は千年の伝統を誇る神事です!と美伽が言うと、諸君は神様から選ばれたエリート、そう云う自覚を持って欲しい!と玄武会リーダーが呼びかける。

1人に百匹ずつ1チーム10人、合計千匹の「オニ」を駆使せねばならないと菅原が言うので、安倍たち新入生たちは「オニ」?と戸惑う。

左様…「オニ」である…と白虎隊リーダーが言い、まあ、我々は分かり易いから「オニ」と呼んでいるけど、厳密には「式神」だ、陰陽師の手先のちっこい精霊…と玄武組のリーダーが言う。

陰陽師ってあの陰陽師ですか?と京子が聞く。 そう!と玄武組リーダー清森平(和田正人)が言うので、つまり民俗学の観点から言うと一つの文化だけど、あくまでも想像上の生き物ですよね?と芦屋が指摘すると、あるものはあるのである!と白虎隊リーダー柿本赤人(趙珉和)が断定するように言う。

じゃあ、見せて!そんなにあると言うな、そのオニと式神、ここに連れて来てください!と立ち上がったふみが挑発するように言い出す。

それは…、今は無理なんやよね…と菅原が笑ってごまかそうとするので、見せられないんですね?とふみは言い返す。

私、こんな嘘つきサークル、止めます!とふみは言う。

すると、待って!一回生のみんなにはまだ見えないのよと美伽が声をかけて来るが、ふみは納得できないようだった。

まあまあ、まずは諸君らには奴らの言葉を覚えてもらわんといかん…、つまり「オニ語」をねと菅原が取りなしたので、出た!「オニ語」と芦屋がバカにしたように呟く。

ふみは釈然としないながらもまた座り込み、すみません!その「オニ語」には例えばどんなものがあるんですか?と高村が挙手をして質問する。

すると美伽が軽く首を横に振り、それを見た菅原が、それをこの場で言うのはまずいと答える。

じゃあ実証しようじゃない?3人で一斉に「オニ語」をしゃべってもらおうよ、そうすりゃ証明できるじゃんと芦屋が提案したので、証明してくださいよ、意義なし!などと他の新入生たちも騒ぎ出したので、仕方がない…、それじゃあ清森君!と菅原が呼びかけ、玄武組の清森が、それじゃあ上回生の諸君!起立!と呼びかける。

すると、上回生たちが一斉に立ち上がったので、武装せよ!突撃!潰せ!負けるな!頑張れ!と清森が声をかけるごとに、「グー!ギュルルー!」「アギュ、ミッペ!」「ゲロン!チョリ!」「ガイマーシュ!ダイホー!テイ!」など「オニ語」を奇妙なポースとともに披露し出したので、安倍たちは面食らう。

高村と帰りがけ、おお、安倍氏!お前だけが頼りだ!べろべろばじゃ!と言いながら、いきなり親父が安倍に抱きついて来る。

さらに、小原が降りて来ると、小原氏、お前さんだけが頼りじゃ!などと親父は同じように抱きついて奥へ連れ込んで行く。

それを側でにこやかに見ていた菅原は、店長や、青竜会のOBで50年も前からここを「べろべろばあ」を経営なさっておられると安倍たちに説明する。

じゃあ、あの人も昔は「ホルモー」?と安倍は聞き返す。

その時、安倍!邪魔!と声をかけて来たのは、チャリを押したふみだった。 翌日から青竜会の部室では、「グェペポー!」などと言った奇妙な「オニ語」の猛特訓が始まる。

「アイギュウ、ピッピキピー」=「我に続け」 「カイダー、ピッピキピー」=「退却せよ」 「ベケ・クォン、クォンクォン」=「前線走れ、走れ 走れ」 「パパラッチ」=「(まとわりつくように)マークせよ」

黒板に貼られた奇妙な「オニ語」とポーズを書いた紙を前に、「ベケ!コンコンコン!」などと新入生への特訓は続いていたが、安倍は一緒に学んでいる京子の存在が嬉しく、そのまま参加していた。

ポーズの練習も外で行われるが、あまりに珍妙な練習だけに、これ、親が見たら泣くぞ…と芦屋はぼやく。

結局「ホルモー」への好奇心に負け、我々は誰一人辞めるものもなく訓練を続けた。(と独白)

これより「ホルモー」の奥義「オニ語」の体現をお見せしよう。

480代目会長鈴鬼(パパイヤ鈴木)の模範演技なる古いフィルムも見せられる。

16日コンパしない?と芦屋は誘うが、安倍はどうする?と芦屋から聞かれた安倍だったが、隣に座っていた京子から一緒やりうよと勧められたので承知すると、安倍君お願い!と幹事を押し付けられてしまう。

その私語に気付いた菅原が、すぐに終わるし、もう少し集中してと注意する。

安倍はアパートで昼寝中、京子と結婚式で鼻にキスをする夢を見る。

その時、ノックの音が聞こえたので慌てて浴衣を身に着け出てみると、そこにいたのはふみで、焼き鳥と缶詰とポテチ!と言いながら、買ってきたつまみを入れたダンボールを押し付けて、後、領収書!と言いながら渡すと、私も幹事、納涼会の…と言うので、安倍はへえ〜…と気乗りしない返事をする。

相良京子とじゃんけんして負けた!とふみが言うので、じゃんけんの結果によっては俺と相良さんが?と安倍はがっくりしたように聞く。 そうか〜…、運命って過酷だよな〜と安倍が露骨に落胆し、ふみは勝手に上がり込んで来る。

ふみが座った前に置いてあった扇風機は首を振らず、壊れてると安倍が教えると、いきなりふみが工具入れを取り出したので、そう云うの、いつも持ち歩いてるの?と安倍は唖然としながら聞く。

さすが理学部…とからかった安倍だったが、別に扇風機の修理が専門じゃないくらい知ってるよ、京大理学部ノーベル賞だろ?と笑ってごまかす。

すると京子は、男のくせにべちゃくちゃ良くしゃべる…と言いながら、扇風機の修理をする。

コンパの日、会長たちが話す「オニ語」には法則性があると思う。

人にしゃべってるとは思えないと高村が言い出したので、冗談にしては念が入り過ぎてるしな…と安倍も同意する。 すると京子が、京大のどっきりだったりして…と会話に加わって来る。

芦屋は、菅原の奴完全に何か隠してるぞ、気が許せないと言うので、高村は菅原は信用できると思うと反論し、ふみも、本当なら見てみたいしと参加して来る。

芦屋って何で青竜に入った訳?と高村が聞くと、何でってと芦屋は真顔に成り、芦屋みたいなタイプって、イベントサークルでパーッとやってるタイプじゃんなどと高村が答えたので、何だとこの野郎と芦屋は顔色を駆けて来る。

入会の理由を切っただけじゃないと京子がなだめると、そうなのか?と落ち着いた芦屋は、色々とミラクルがあったんだよ…、まあ良いじゃない…と言葉を濁し、京子の方をチラ見する。

まずは青竜会のことを探ることだよ、何か情報が入ったら俺に知らせてくれと芦屋は言う。

何でだよ?と安倍が聞くと、リーダーだからだよと芦屋が言い出したので、勘弁してよと安倍が笑うと、何か俺にあるのか?と芦屋が絡んで来る。

ほら、どうだよ?と芦屋が松永秀夫(渡部豪太)に言うと、自分がリーダーになるのは面倒くさい、人がリーダーになるのは気に食わない、発想が幼児的だよと松永から指摘され、ふみまでもが破綻してる!と言い放つ。

大文字焼きを窓から眺めていた京子が、見て見て!、流れ星…、星降る夜の大文字か…素敵…と呟くと、一緒に外を見ていたふみが、星が降ってくるんじゃない、逆に星クズの中に…と反論し始めたので、ロマンでしょう?何でも数式みたいにきっちりしてない方が面白い!と京子は言う。

するとふみは、数式はロマンだけど、ロマンで数式は解けないと言い返す。

光陰矢の如し…とテロップ(四条大橋などを背景に)

部室の黒板に、来たる12月8日午後10時 吉田神社に集合!と書かれていた。

オニ語を習い始めて既に4ヶ月が経った…(と独白) 安倍は自転車で神社に向かっていた。

すると、懐中電灯を持った先輩が安倍だな?と確認し、既に集合していた仲間達に合流させる。

紋付袴を来て待ち構えていた菅原が、おばんですと全員に挨拶し、ではこれより、吉田代替わりの儀を始めます。

早速拝殿に向かいますが、女子の方4名はこの場所に待機しててくださいと言う。

あの…、どう言うことですか?と京子が聞くと、昔からのしきたりで、代替わりの儀の一部は女人禁制ですと菅原が言うので、アナクロ…とふみは小声で抗議するが、千年の伝統ですから…と菅原は言うだけだった。

神殿の前で男子全員が二礼二拝した後、鏡割した樽の酒を地面に振りまいた菅原は、神殿に向かい、私、青竜会499代会長菅原真と申しますと挨拶を始める。

これに純米酒「玉の光」と京大青竜会伝統の舞いを披露つかまつりますと菅原が言う。

その時、芦屋が隣の仲間に話しかけたので、神事である!謹聴!と菅原が大声を出す。 何とぞ、我ら崇敬の念深き者どもの声をお聞き届けくださいと菅原は続ける。

神殿を後に仕掛けた新入生の背後から、諸君!神々は小賢しい世俗に飽き飽きされておる! では、四回生 三回生!と菅原は指名し始める。

すると、上回生たちは手拍子を始め、いきなり全員揃って「レナウン娘」を歌い踊り出す。 その内、羽織羽織を脱ぎ出したので、それを見ていた新入生たちも乗り始め、一緒に踊りの中に加わる。

階段下で、その歌声に気付いた京子たちは興味を惹かれるが、行かない方が良いと先輩の女子に止められる。

それでも、ふみだけは1人で踊り出す。

そんな中、神社の背後が怪しく輝き出す。

そんな中、安倍と芦屋だけは乗らないままだったので、近づいて来た素っ裸の菅原が、それでも君たちは日本男子か?と問いかけて来る。

意を決した安倍と芦屋も上半身裸になる。

良し、やろう!と菅原はまた先頭に立ち、レナウン娘を歌い踊り出す。 結局、安倍と芦屋もズボンを脱ぎ全裸になる。

おお、神々たちが喜んでおられる!我々の酔狂は認められたのだ!と神殿の背後の光を見た菅原が嬉しそうに言う。

階段下で待っていた女子たちは、やがて歌声が終わったので、私たちも行きましょうと階段を登り出す。

諸君、32秒後に女性陣がやって来る。せめて下着だけでも…と懐中時計を持った菅原がへたり込んでいた部員たちに指示する。

しかし、女子たちは既に到着しており、男子たちの全裸姿を見た京子が悲鳴をあげる。

本日この時より鬼使いとして青竜会500代目を継ぐもの共、どうかこれより2年の間、このものどもをお認めいただきますように…と全員和装に着替え終わって整列した中、菅原が神殿に向かって挨拶をする。 諸君、ご苦労やった…、どうやら連中も諸君たちのことを認めてくれたようだ。

ほら後ろを見てご覧と、振り返った菅原が話しかけたので、安倍たち新入生が背後を見やると、先輩たちが脇に避けた中、大勢の奇妙な生き物が蠢いているのが見えたので、全員腰を抜かす。

神殿側にも大量に これにて、吉田代替わりの儀を終了すると菅原が宣言する。

春 俺たちは二回生に進学した。 河原で安倍と高村は、互いにオニの戦いの練習に励んでいた。

そこにふらりとやって来たスーツ姿の男(甲本雅裕)が、あの2人、何やってるの?と聞いて来たので、着物姿で見ていたふみが「ホルモー」と教えると、ああ「ホルモー」ね…と男は言うので、知ってるんですか?とふみが驚くと、知らんと言いながら、ふみの隣に座り、レジ袋の中からおにぎりを取り出す。

すっかり長髪になっていた高村が自分の技を披露する。 何か見えてます?とふみが聞くと、何が?と握り飯を食っていた男は聞き返す。

私も一緒に戦いたい…、女だから救援専門なんておかしいよとふみがぼやくので、世の中不条理なもんだ…と男は呟く。

「べろべろばあ」の親父の部屋。 場所は立命館さんの方で宜しいですか?と集まった四大学のリーダーたちの中、立花美伽(佐藤めぐみ)が話し合っていた。

仕切りはうちでやらせてもらいますと清森が承知すると、ところで、今シーズンのホルモーの総称なんですがと菅原が切り出すと、第500代目間ホルモー…長いよね…などと迷い、幹事の青竜会さんにお任せして宜しいでしょうか?と清森が言う。

その時、それまで側の座椅子で眠っていた親父が急に目覚めると、鴨が輪になって踊っておったぞと呟き、又寝入る。

鴨が輪になって…、かもがわ?と書くリーダーたちは呟き合い、それを聞いていた菅原が、じゃあ今回は「鴨川ホルモー」と言うことでと提案する。

アパートのドアがノックされたので出てみた安倍は、そこに棒の先に筒を下げたオニがいたので、その筒の中から伝言文を取り出し「鴨川ホルモー 六月三日亥ノ刻 立命館衣笠キャンパスニテ」と書かれた内容を読む。

河原で全員浴衣姿で集まった二回生たちを前にした菅原は、以上、説明したように、今夜の立命館ホルモーは、鶴翼の陣をベースにした青竜の陣で行こうと思っております。

最後に救援の方法やけど…、楠木さん、相良さんと呼びかけ、足下にいたオニを1匹捕まえると、その鼻の部分を指で押す。

すると、そのオニは動かなくなる。 でも、このレーズンを食わせると、オニは急に鼻が元に戻り、オニのダメージは回復しますと菅原は解説する。

僕は応援に行けんけど、今夜の立命館戦は諸君らの初陣、頑張ってくださいと菅原は励ます。

僕の采配ミスでこいつらが酷い目に遭うかもしれない…、責任重大だ…などと高村が長い髪を触りながら案ずるので、安倍が突然リラ!と大声を駆けて励ますと、オニなんて奴隷みたいなもんだ、100や200ぶっ殺したって屁でもねえ!と芦屋は言い切る。

満月の立命館の前には中継車が到着する。

「のんのんばあ」の親父の部屋に来た菅原は、一緒にパソコン中継を見ながら、10連敗中ですからね〜と呟くので、何とか1勝頼むぞ!と親父もモニターを前に言い、菅原と一緒に柏手を打つ。

采配役の立花美伽が勝負ルールの説明を始める。

私が終了宣言するまで互いの身体に接触することは一切禁止します。

ホルモーの終了はオニが全滅する、もしくは代表者が降参を表明したら負けです。

とにかく勝負がつくまでひたすら相手をぶっ叩く!と美伽は言うので、芦屋はぶっ叩く?と驚く。

青龍白虎2000のオニたちですよと中継車の実況アナウンサー(澤武博之)が言うと、京都産業大学中退なのに玄武組の会長と言う解説者(笑福亭鶴光)も、さすがにこれだけ揃うと壮観やな〜と感激したように言う。

では両者、戦闘用意!と美伽が言う。

オニたちが一斉に手を打ち合わせると、地面が光り、一本の金棒がタケノコのように生えて来る。

その金棒を持ったオニが互いに対峙し合う。 三歩下がって!と美伽が言い、はい!と言うのを合図に、両者オニ語で指揮を開始する。

そんな中、芦屋が、俺がやる!と言い出すと前に出て、アギューリッペ!取り囲め!潰せ!と命じ始める。

アガベー(飛びかかれ)!と芦屋が叫ぶ。

芦屋の戦闘力は群を抜いていた。

初陣の勝利は時間の問題かと思われた。 凄いゲロンチョリが!もしかしたら勝つかも知れんぞ!…と「のんのんばあ」の親父も興奮していた。 マンスーラ!と京子が救援に向かい、オニたちにレーズンを食べさせる。

ふみも自分のオニを安倍と松永のオニに分散させ前身始める。

そんな中、残っていた高村がパニクり、ゲロッパ(伏せろ)と命じてしまったので、彼のオニが全員その場に伏せてしまう。

そこに駆け寄る敵軍。 誰か高村を助けろ!と芦屋が命じる。

高村はますますパニクり、止まれ!などと指示を出すだけ。

モニターで観戦していた菅原が、高村君しっかりしてくれよ!と応援する。

高村の周囲にいたオニたちが次々に死んでレイトなって空中に浮かび上がって行く。

見かねた安倍がオニたちに左を向かせる。

しかし、高村の元へ駆けつけようとしたとき、京子も敵に迫られ、安倍君!と救援を求めるので安倍は戸惑う。

すまない!と高村に詫びた安倍はまたオニたちに右を向かせ、京子の応援をする。

それを見て落胆した高村は、次々にオニが死んで行くので、失禁してしまう。

あ、こいつ、小便漏らしよったで!と敵が驚く。

バカ!全滅するぞ!とそれを見た芦屋が慌てる。

高村はさらに履きそうになっていたので、早くレーズンを補給せんととモニターを前に下菅原が慌てるが、親父はもう間に合わんと言い切る。

高村の様子を見ていた美伽たちも異変に気付く。

高村の眼球が狭まり、ホルモーと絶叫する。

付近の消えていた住宅の電灯が一斉に灯る。

ホルモーでました!とアナウンサーが言い、とうとう言うてまいおった…と解説者も呆れる。

モニターを見ていた親父は、やっぱりダメか…と落胆する。

白虎隊の細川珠実(大谷英子)が着物を脱ぎしゃがんでいた高村に毛布をかけ、大丈夫?と声を掛けるが、勝負に勝った立命館の仲間達は全員帰って行く。

珠実も去った後、おいお前いくつだ、人前で小便ちびるか、普通?と芦屋が高村に嫌みを言って来る。

お前の間違った指示で死にかけた立命館が復活した。

全ててめえの責任だよ、何がペロじゃ!と責めるので、止めようと安倍が立ち上がると、お前も同罪じゃ!何であそこで相良を助けに行った?女に良い顔しやがって!あの局面では殲滅戦での小便野郎を助けるのがセオリーだろうが!と激高した芦屋が安倍の胸を押して来たので、手を出した!この野郎!と安倍も向かって行ったので殴り合いの喧嘩になる。

そんな中、高村は黙って立ち上がると、毛布を持って逃げ去って行く。

翌日、安倍のアパートへやって来た菅原は、急にごめんねと詫びると、楠木さん、例のものを…と同行して来たふみに声をかけ、僕のおごりのアイスと言いながら、渡された紙袋の中のアイスを安倍に選ばせる。

安倍はみかんを選び、ふみにあずき、自分はミルクを選んで残りの袋をふみに渡し冷蔵庫に保存させた菅原に、何で楠を連れて来たんですか?と安倍はこっそり尋ねる。

ここ知ってる言うてたからと菅原は答えるが、冷蔵庫を開けたふみは、中にぎっしり詰め込まれたアンパンと牛乳パックに驚いていた。

高村への連絡、今でもつかんの?と菅原が心配げに聞くと、殴られて傷だらけの安倍ははいと答える。

すると携帯を取り出した菅原は、僕のもダメだ、メールも返って来んし電話にも出らんと言う。

そりゃ、喧嘩をした相手と顔合わせるのは嫌だろうけどさ、その辺はお互い様でしょう?芦屋はちゃんと例会に出てると菅原が言うので、芦屋にはデリカシーがないと安倍は呟く。

なるほど…、でも安倍、まさか青竜会脱退なんて考えてないよね…と菅原が聞くので、そこまでは…と答えると、彼はどうだろう?と高村のことも聞くので、辞めはしないでしょうけど…と安倍が答えると、それ聞いてほっとしたと菅原は安堵する。

どうして奴は最後にホルモーって叫んだんですか?と安倍が聞くと、あ、あれは隊を全滅させよった指揮官へのペナルティーや、僕んところ全滅しちゃいました、ごめんなさいと若者らしく堂々と自分の非を認める。

その潔さに神々がしびれて、わずかな懲罰で許してもらえると菅原が説明すると、さらに懲罰があるんですか?と安倍が聞くと、そりゃあ全滅させた責任は重いからと菅原は言う。

高村にはどんな懲罰があるんです?と鈴木が気になって聞くと、さあ、そんな大したことはないだろうと菅原が言うので適当だな…と安倍は落胆するが、その時、勝手にふみが自分のノートパソコンを修理しようとしていたのに気付き取り上げる。

じゃあ、懲罰があること高村に言っときますと安倍が携帯を取り出すと、どうせ出ない。

安倍さ、明日にでも彼の様子を見て来てくらないか、百万遍寮へ行って…と菅原は言い出す。

百万遍寮にチャリでやって来た安倍は、7号室はどこにありますか?と廊下に座っていた学生に聞く。

7号室に入って見ると、2人の学生がいたので、総合人間学部の高村君の部屋は?と聞くと、ここです、今風呂、左行った所…と机に座っていた学生が言う。

礼を言って部屋を出ようとした安倍に、高村は今…と、もう1人の学生が言いかけると、止めとけ!と机の前の学生が制止する。

廊下を進んで行くと、廊下の一画で盥に入り身体をこすっている高村の背中が見えたが、頭が落ち武者のようにはげ上がっていたので、どうした?と安倍は聞く。

すると高村は笑顔で、お!来たな!裏切り者!などと言いながら立ち上がる。

中庭のテーブルに座り、改めて高村の顔を見た安倍が、何でちょんまげなんだ?と聞くと、それがね、ある日突然この両手が自然に動き始めてこれを結い始めた訳だねと殿様髷を触りながら高村は説明する。

(回想)ある雷が鳴り響く7号室内で、シャンプーハットを首に巻き、月代を自分でそり、頭を殿様髷に結った高村が振り返り、泣かぬなら、殺してしまえホトトギス!と凄んだので、それを見た同室の2人は怯える。

(回想明け)誰かの強い意志を感じた。抵抗すると殺されてしまう〜!みたいな恐怖感を…と高村が言うので、神様かな?ペナルティって感じ?と安倍は呟く。 ただまあ、嫌いじゃない…と高村はさばさばしたような表情で言う。

だって、織田信長とお揃いだし…と髷を触りながら、高村はまんざらでもなさそうだった。

彼は残虐な独裁者だけど、人としての強さに惹かれる!僕に一番欠けている資質だよ、時々、自分の弱さに辟易すると言いながら椅子を立って歩き始めた高村だったが、ゴミ捨て用に掘ってあった穴に落ちてしまう。

来週には産業大との試合もあるけど、どう?出て来れない?と校門の所に来た安倍が聞くと、あい分かったと高村が答えたので、そう来なくちゃ!と安倍は喜ぶ。 相良さんからも激励メールが来たと高村が言うので、相良さんから?何でお前に?と安倍が不思議がると、あいつはめちゃくちゃな所もあるが、根に持つようなタイプではないと…と高村は答える。

それはどうかな〜?大体相良さんにどうしてそんなことが分かるんだと安倍は嘲笑するが、付き合ってるからだ、芦屋と…と高村ははっきり言う。

ああそうか…何!と安倍は驚いて高村に迫ると、あの2人どうにかなってるのか?と安倍は聞く。

知らなかったのか?随分前からだぞ、多分…みんな知っている…と高村は答える。

数日来、俺はショックで引きこもり状態になった…(と独白) 下宿のドアには「物忌中」の貼り紙が貼り出されていた。

ベッドの布団の中に潜り込んでいた安倍は、アイギュー!ピッピキピー!と結婚式場の安倍の目の前でウェディングドレス姿の京子にプロポーズした芦屋が一緒に去って行くイメージを思い浮かべ、悔しがる。

その時ノックの音が聞こえたので、高村…、あのお節介やろう!と怒りながらドアノ前に来た安倍は、帰れ、もう1人にしてくれよと弱々しく声をかける。 ドアの外に来ていたのはふみだった。

ふみは買ってきたレジ袋をドアに掛け、足で思い切りドアを蹴飛ばして帰って行く。

その後、そのレジ袋を下げ階段を降りて来た安倍は、高村がやって来たので、2時頃来て扉蹴ったろう?と聞くと、ちょっと考え、2時は講義出てたと高村は否定する。

じゃあこれは?と言いながら持っていたレジ袋を見せると、中のアンパンを取り出し知らないと言う。

相良さんが心配して持って来てくれたのか?と安倍は呟く。

ああ、そうそう話がある、来て!と高村が安倍を下宿の外に連れ出すと、今日、俺のTシャツなんて書いてある?見て!と言いながら自分の胸を指差す。 そこには「友情」と書いてあった。

近くの公園のベンチに腰掛け、レジ袋に入っていたアンパンを食い始めた高村は、昨日、京産とやったのと言うので、9人でやったのか…と安倍が気のなさそうな声で聞くと、そりゃ酷いもんだったよと高村は言う。

すまん…、俺のせいだと安倍が力なく謝ると、違うの、うちが勝ったのと高村が言うので、えっ?と安倍は驚く。

芦屋が大活躍…、彼は一躍ヒーローだ…と高村は言う。

(回想)アガベー!と攻撃を続ける芦屋の前に、京都産業大の玄武組の1人がホルモー!を叫んで倒れる。

次は同津田!と芦屋が腕を組んで仁王立ちになる。

(回想明け)な?悪い先生だろ?と高村が言うので、うるさいな…と安倍は睨みつける。

何で相良さんことと言ってくれなかったんだ、水臭いぞ、俺ら親友だろう?と線路際を歩きながら高村が言うので、ただのクラスメイトだ、大体こう言う感覚が暑苦しいんだ!と言いながら高村のTシャツを安倍が引っ張ると、暑苦しい?と高村は反論して来る。

おい、暑苦しいって何だよ、おい安倍!暑苦しいって何だよ!と高村は安倍にすがりついてきながら泣き出す。

そんな2人の様子を通りかかった子供連れの主婦が見るなと制しながら行くので、ホモの痴話げんかだと思われるよ!と安倍は文句を言うが、高村は感極まって抱きついて来るので、止めろと言って安倍は突き飛ばす。

立命館で僕を見捨て、相良さんを助けに行ったじゃない!と線路脇の金網にぶつかった高村が恨みがましく言うので、当然だ!男ならてめえで何とかしろ!と安倍は切れる。

すると高村は、相良京子への屈折した想いか…と苦笑したので、普通に好きなだけだ!と安倍が先に歩き出すと、惨めだな!大嫌いな芦屋に相良さんを寝取られて…、あ〜あ、今頃何やってんだか、まあ言えないっすけど…などと高村がからかって来たので、切れた安倍は高村につかみ掛かって行く。

首を絞めに来た阿部の目を見た高村は、おお、安倍!その目に活力が溢れている!と喜ぶ。

黙れ禿!と安倍が怒鳴ると、それだ!と高村は感激する。 翌日、部室の菅原に会いに行った安倍は青竜会をどうしても辞めたいと申し出る。

理由は?と菅原から聞かれると、芦屋と同じ空気を吸いたくない…と安倍は無気力そうに答える。

菅原は、脱退は簡単じゃなか…、仮に辞めても復帰するまでオニは君につきまとうだろう…と言うので、つきまとう?と安倍は困惑する。

彼らにしてみれば約束が違うってことになる。 あの代替わりの日の「レナウン娘」は何だったんや!みたいな…と高村は言いながら席を立つ。

それからの安倍は、授業中でも周囲に見えるオニに悩まされ始める。

寝てもオニ…、覚めてもオニ…と部室にいた菅原に事情を説明に行った安倍だったが、オニのストーカーや…、とても神経が分からん…菅原は言う。

今まで青竜会を辞めようと思った奴はおる、でも実際に辞めた奴はおらんと菅原は言う。

要は芦屋と一緒のチームでホルモーするのが嫌なんやろ?芦屋と別のチームやったら脱退なんて言わんな?と菅原が金庫から分厚い本を取り出しながら聞くので安倍は頷く。

これはホルモーのレギュレーションを集めた古い本や、このしょうそく部分17条に面白い記述があると言いながら、菅原は安倍に「鬼道之書 其の一」と書かれた一部分を開いて見せ、ただし…と言い添える。

「第十七条 定められたる期限までに発議ある場合、青竜、朱雀、白虎、玄武のそれぞれを分ちて、新たにホルモーを競うことを得」と書かれてあった。

その後、寮の高村に会いに行った安倍が、現在10名の青竜会を5名ずつの2チームに分割できることが規定の17条で認められているんだよ。

そうすれば俺は芦屋と同じのチームでホルモーをせずにすむと教えると、そいつは何よりだと、洗濯物を干していた高村は無関心そうに答える。

ただそのためには5人の賛同者を集めなきゃいかんのだ。10人いるうちの5人がそう云う石を持って始めて分割が認められるんだと安倍は説明する。

そこで高村…、お前を男と見込んでたのみがある。

俺は短気で人望がない、その点お前は人格高潔な帰国子女だ信用が違う。

頼む!俺の変わりに後3人、俺の賛同者を集めてくれと安倍は言い出す。 それを黙って聞いていた高村は、でも、僕らはせいぜいクラスメイトと言う間柄なんだろう?ああ…、これは安倍君が言ったセリフだよね?立命館では見殺しにされ、首までしめられた…、あげくにホモ呼ばわりだ…、結構つらいものがあった…と高村はすねたように言う。

じゃあ言わしてもらうが、最終的に小便小僧をかばってやったのはどなた様だ?と安倍が言うと、一度は見捨てたじゃないか!と高村が怒って座っていた椅子から去ろうとしたので、その後だよ!と安倍は追いすがる。

あの陰険な芦屋から誰がお前をかばってやった?うっすら恥ずかしい小便小僧を誰がフォローした? 良いか?みんな口にしないだけで忘れている訳じゃないんだぞ。

20歳過ぎて人前で…と安倍が嘲笑すると、分かった!親友のために一肌脱ごう!と高村は仁王立ちになったまま答える。

そうか!恩に着るぞ!と安倍が和解の握手を求めると、その手を握ろうと近づいて来た高村はまた穴に落ちてしまう。

「○オレ ○高村 △三好(兄) △三好(兄) ×坂上 ×紀野 ×松永 ×相良 楠木」と下宿で参加メンバーの検討をしていた安倍は5人は無理か…とペンを投げ捨て、やっぱダメだとベッドに身を横たえて諦める。

その後、茶店で高村と会った安倍は、一応みんなの所へ行って来たよ、芦屋とか行ってないけど行った方が良かった?と高村が言うので、あほと答えると、でもさ、向こうだって大嫌いな安倍と分かれられるんだよ、それじゃ賛成するかもしれないじゃん、いや、正論だろうと高村は言う。

相良さんの反応は?と安倍が聞くと、思わず苦笑した高村は、聞きたいのか?と言うので、いや、良い…と安倍は狼狽する。

ま、状況は非常に厳しい…、誰一人ここへは来ないかもしれないと高村が言うので、そんな…と安倍は気落ちする。

他人のもめ事からは距離を置きたいと言うのが人情ってものだ…と高村は言う。

女性に振られ、分裂を主張し、あげくに総すかんを食う…、安倍!恥の上塗りだな!と高村は高飛車に言う。

その時店に入って来たのは三好兄弟だった。 安倍と高村は思わず立ち上がって歓迎する。

三好兄弟はカツカレーダブル!と店に注文し、安倍たちのテーブルに合流する。

この頃の芦屋調子に乗り過ぎ、たちかに強いけど、俺ら完璧に小者扱いだものと兄弟は嘆く。

それに熱心に説得されたしね…と三好弟が言うので、それ僕?と高村が喜び、安倍も高村に感謝の意味で握手を求める。

高村が帰った後急に電話もらってさ…、あれ?まだ来てない?と三好兄が店内を見渡し、窓の外を見て、あ、来た来た!と指差す。 自転車に乗ってやって来たのは楠木ふみだったので、楠木君?と安倍は驚く。

店内に入って来たふみは、よっ!と手を挙げて来る。

ところが、その後、菅原に呼び出されたメンバーたちが、ヤバいってどう言うことですか?と聞くと、クレームが出た。地獄の栓が抜けても知らんぞみたいなことをねちねち言われた…と菅原が言うので、全員ふみの方を見る。

地獄の栓?と三好兄が聞くと、制服なの!バイト先のイタめし屋で…とふみが立ち上がったので、いや…、似合ってると思ってさ…と菅原がフォローする。

だよね、結構いけてるよと他のメンバー達も褒めているなか、三好兄が、何?あれ…と中空を指差す。

全員立ち上がってその方を見上げると、校舎の背後の空に黒い雲のようなものが出現していた。

その時、菅原が近づいて来た吉田に声をかける。

あれ見えてるか?空に浮かんでいる黒い奴が…と菅原が聞いてみるが、吉田は、いや…、何も見えんと答える。 メンバーたちは、「のんのんばあ」で酸素吸入器をしてベッドに横たわっていた親父に事情を聞きに行く。

その黒い奴はかつて幾度も京都上空に出現した。京の街が血なまぐさい殺戮の巷と化す…、奴は必ず現れる…と親父が掠れ声で言うので、デカいだけの気がしたけど、見た目平和な顔してたし…と三好兄弟が疑うと、ホルモーの神々は信賞必罰、因果応報の機運が強いと言いながら親父は高村のちょんまげを指差すので、ああ!そうなんですか、これ?と高村は戸惑う。

17条は内輪もめを勧める…言わばホルモー精神からもっとも外れた規定…、それを発議してただですむ訳がなかろう…と親父は言うので、じゃあ、取り消しますと安倍は言うが、もう遅いわ!と親父は怒鳴りつける。

発議の時点で既に神々はがっかりしておられる…と親父が言うので、でも17条は現存する規定だしと安倍が反論すると、ああ、あの50年前の悪夢が蘇る!と親父は何故か頭を抱えて怯え出す。

それはどんな災いをもたらすんですか?高村らが聞くと、地獄の栓が抜けた状態であいつのケツの穴に排気口が直結され、今もどんどん邪悪な地獄のエナジーが供給されている。

風船に空気入れた感じ?と三好兄が聞くと、そうだ、風船が膨れに膨れ…いずれは…と親父が言うので、バーン!と高村が発する。

あの…オレはどうしたら良いんでしょうか?と安倍が聞くと、17条ホルモーに勝つしかないと親父が言うので、勝てなかったら?と聞くと、それは…分からんと親父はつぶやき目つぶる。

その夜、下宿でパソコンを前にしていた安倍は、玄関先に不気味なオニがいることに気付き怯えるが、そこへ電話がかかって来る。

電話の相手は高村で、ねえ、何か変なことになってない?と聞いて来たので、お前ん所も…?と安倍が答えると、楠木さんや三好兄弟の所にも来たらしい…、でもね、相良さんとか芦屋の所は異常がないらしいんだと言うので、俺らのチームだけか…と安倍は気付く。

問題は開いてしまった地獄の尻の穴を一刻も早く閉めんといかんと言うことやと事情を聞いた菅原は四大学のリーダーを招き、善後策を相談する。

部室の前に来ていた安倍たち5人は部室のなかから聞こえて来る会話に耳をそばだてていた。

尻の穴じゃなくて、尻の栓でしょう?と聞かれた菅原は、巨大黒オニだけじゃなか、安倍以下17条仲間は色々不気味な声に悩まされちょると言うので、どんな?と立花美伽が聞くと、怪しい影な影が差し、絞め殺されとるような断末魔の声…、骨を噛み砕くような音がガリガリガリ…と近藤が言うので、聞いていた清森は、ああ嫌だ!と顔をしかめる。

大きな秩序が微妙に狂い始めちょる…と菅原は言う。

三好兄弟が遅れてやって来たので、5人は部室に入ることにする。

壁に貼られていた「べろべろばあ」の親父の現役時代の写真を指した菅原が、店長とも話し合ったんやけど、結局神々が喜び納得するような極上のホルモーを披露できれば、怒りも鎮まり、地獄の栓も閉じよるのではないかと…と提案する。

極上のホルモー…と美伽が繰り返し、極上のホルモーか…、まあ一つの方法やなと清森が納得しかけた時、5人が失礼します!と入って来て、青竜会内部で5対5の紅白戦ホルモーを開催しようと思いますと安倍が代表して伝える。

5対5の紅白戦?と柿本が聞くと、真剣に戦います、本気でやります!神々が納得し、怒りを鎮める程の最高で極上のホルモーをご披露しますと安倍は答える。

それから三好兄弟は特訓を開始する。

下宿にいた安倍は、窓から上空に見える黒雲を見上げていたが、その時、不気味な影が入り口から入って来たので怯え、ごめんなさい!と詫びる。

それは京子で、安倍君…と話しかけて来る。

相良さん?と驚いてヘッドホンを外した安倍は、一緒の下宿を出てブリックパックのジュースを京子に渡す。

私、安倍君に謝らなくちゃ…、去年の新歓コンパの後、止めてもらったあの夜、安倍君と始めて会った時、私、泣いてたでしょう?あれね、芦屋君に告って振られた後だったんだ…と京子は打ち明ける。

彼ね、もう付き合ってる子がいてね…、今は同志社の1年だけど、当時は浪人中、凄くかわいい子でさ…、それで一旦は諦めたんだけど…、続けざまに不思議なくらい彼と行き会わせるの、バス停、本屋、デパート…と京子が言うので、芦屋が言ってたミラクルって…と安倍が聞くと、ベンチに座っていた京子は頷く。

それでこれは運命かなって思って…、私彼を青竜会に誘った…、当然、彼女は黙ってないよね…。

で、1人で京都来ちゃってさ、彼に会いに、何か私もむきになっちゃって…、それで芦屋君と三角関係に…、きわどい駆け引きもやったんだ…と京子は言う。

(回想)駅の改札口を出た京子は追って来た芦屋に、あなたと違って、安倍君は優しい!彼みたいな人と付き合う女の子ってきっと幸せになると思うなどと言い捨てて去る。 それを唖然として聞いた芦屋は、安倍って何だよ?と後を追って行く。

(回想明け)そのきわどい駆け引きの中には安倍君のことも含まれているんだ…、私、安倍君の気持を利用したかも…などと京子が言うので、俺の気持、知ってたんだ…と安倍が聞くと、京子は頷く。

その頃、買い物帰りのふみは、不気味なオニと遭遇し、必死にチャリで逃げていた。

彼は今でもその元カレの未練たらたらで、まったく男なんて、安倍君には興味ない話だったよね、ごめんね…、今日は話せて良かったと言いながら下宿前に戻って来たので、話ってそれだけ?それだけ言うために来たの?と安倍が聞くと、どうしても一言謝りたかったし…と言う。

安倍は気を取り直し京子と握手しかけるが、そこに駆けつけて来て京子を連れ帰ろうとしたのが芦屋だった。

芦屋!誤解だよ!と安倍は説明しようとするが、いきなり殴り掛かって来た芦屋は、てめえは完璧に振られたんだ!京子につきまとうのは止めろ、このストーカー野郎が!と一方的に良い、京子を車に乗せて去って行く。

窓から顔を出した京子は、安倍君、ごめんね!と謝って来る。

倒れたままそれを見送っていた安倍に、安倍!と声をかけて来たのはふみだった。

何でここにいるんだよ?芦屋に連絡したな?とぼやきながら安倍が下宿に帰ろうとすると、違う!とふみは否定する。

偶然だって言うのか?と安倍が言うと、 私は芦屋を呼ぼうとはした…、でもできなかった…とふみが言うので、じゃあ誰が?と安倍は呟く。 多分相良京子が自分で…とふみが言うと、言うな!と安倍は大声を出す。

相良京子はたちが悪い。諦めろ!別の相手を探した方が良いとふみが説得して来るので、同情か?何様のつもりだ!知ってるんだぞ、お前も同類だ。

お前も芦屋のことが好きなんだろ?だからいつも相良京子と…と嘲ろうとすると、いきなり京子がビンタして来る。

安倍はバカだ!何も分かってない!私が芦屋を?冗談じゃない!私が好きなのは最初から安倍一人だ!とふみが怒鳴って来たので安倍は愕然とする。

明日は負けない、安倍を芦屋に勝たせる!私が絶対に安倍に勝たせるから!と言いながら、チャリの側に後ずさると、チャリに股がり、馬鹿野郎!ケーキ買ったんだぞ!と怒鳴りながら帰って行く。

その頃、高村は、織田信長風に扮装し、2人の同居人を家来に見立て、一度終えて〜滅せぬもののあるべきか〜♩と舞いを舞っていた。

芦屋!僕は自分を超えてみせる!自分の弱さに打ち勝ってみせる!と高村が言うと、頑張れ!と同居人たちが応援する。

翌日、高村は、みんな!僕にフォワードをやらせてくれ、芦屋と戦いたい…、今日こそ僕は生まれ変わる!と河原に集まった仲間に頼む。

一方芦屋は、まずは俺が先陣を切る、安倍はともかく、あのちょんまげをぶっつぶす、良いな?と仲間達に説明していた。

ともかく良いゲームをしよう。神々を感動させて怒りを解いてもらうんだ。

あとヤバくなったら降参、オニが全滅したら躊躇なくホルモーと叫ぶこと、安全第一!意地を張っていると何をされるか分からん…と安倍は仲間達に言い聞かす。

それではただいまより、17条発議により臨時ホルモーを開催しますと行事の扮装をした審判役の清森が宣言し、整列!と叫ぶ。 5人対5人が互いに向き合う。

双方、三丈離れて!と清森が指示する。 そこへ遅れて実況中継車が到着する。

その実況をパソコンのモニターで、ベッドに横たわった「のんのんばあ」の親父も観戦していた。 ファイト!と叫んだ清森の声を合図に戦いが始まる。

アイギュー!ピッピキピー!と互いに司令を出しオニを前進させる。

行くぞ!ちょんまげ!と芦屋が煽ると、ゲロンチョリ!と高村が叫び、アガペー!と芦屋が応じる。

高村の覇気に芦屋が驚く。

勝負は五分のように見えた。 アギュウリッピ(突撃せよ!)と高村が叫ぶ。

しかし、互いにカウンターを交わして芦屋の攻撃が決まった!と実況アナが叫ぶ。

又固まりよったがな〜と高村の動きが止まったことを見ていた解説者が呆れる。

それを横で見た安倍は、高村、逃げずに戦え!と声をかけるが、高村の表情はまたもやうつろになっていた。

三好兄弟も高村を応援するが、次々に高村のオニは死んで行っていた。

このちょんまげをぶっつぶせ!と芦屋が仲間達に命じる。

アガペー!と敵軍が連呼するなか、ふみがオニにレーズンを食べさせて救援していた。

カイマ シュル!と安倍は必死に戦っていた。 高村!と呼びかけた時、安倍!次はお前だ!数々の遺恨を思い知れ!と芦屋が挑んで来る。

それはこっちのセリフだ!と安倍は叫ぶ。

たちまち安倍は相手チームに囲まれ劣勢になる。 その様子を見ていたふみがゆっくり立ち上がって睨みつけたので、何よ?と睨まれた京子が問いかける。 早くレーズンを!と三好兄弟が救援を頼むがふみは動かない。

おい楠木!と安倍も焦るなか、看護婦帽を脱ぎ捨てたふみは、突然ドゥギュ!(武装せよ!)と攻撃の指示を出し始める。

彼女のオニたちが一斉に金棒を手にする。 勝機は今!我が楠木隊は通常任務を放棄!とふみが言いだしたので、安倍はえっ?と驚く。

自己中女をフルボッコにする!とふみは京子を指差す。

京子ははあ?ととぼけるが、ふみはハイギュウイッピキピ!(我に続け!)と指示する。

ふみが間近にやって来た京子は、自分も看護婦帽を取り、やってやろうじゃないと睨みつける。 ド ゲロンチョリ!とふみが指示する。

ブリッド ゲロンチョリ!ふみは次々に指示を出し、京子のオニを追いつめて行く。

すると京子は、タイダ!ピッピキピ!と言いながらその場から逃げ出して行く。

それを見た芦屋は唖然とする。

解説者は立ち上がり、逃げた…、あらら…そう来たか?とアナウンサーも呆れ、あかんな〜と解説者はぼやく。

逃がすか!自己中女!とふみが後を追うと、男性陣も後を追うしかなくなり、予想外の展開に実況車は実況を中止してしまう。

それを見ていた親父は、場外乱闘か…、プロレスじゃあるまいし…と嘆く。

中継車にいた解説者は上空を見上げ、何やこれ!と仰天する。

大黒オニですねとアナウンサーが説明すると、大怖!と解説者は怯える。

街中で松永、紀野、坂上ら敵の3人に囲まれた安倍は、お前一人くらいな俺らで十分やと松永から嘲られたので、芦屋の腰巾着めらが!と安倍がバカにすると、敵はすぐに攻撃して来る。

ピンチに陥った安倍の手を引いて路地に引き入れたのは高村だった。

すぐに3人が追って来るが、高村だと知った坂上が、退け!小便小僧!と嘲りながら迫って来る。

逃げようと誘った安倍だったが、僕は逃げない!ここで共倒れになったら極上ホルモーにはならんだろう?行ってくれ!京の街を救ってくれ!と高村は安倍に託す。

それを聞いた安倍は、高村!お前の死を無駄にはしない!と言い残しその場から去って行く。

それを見送った高村は振り返り、さあどっかでもかかって来い!と三人組に挑む。

その頃、ふみは京子を追いつめ、ゲロンチョリ!を連発していた。 京子は自己中女の何が悪いの?と言って来たので、開き直るのか?とふみは迫る。

誰だって自分が一番大事でしょう?と京子が言うので、お前に安倍は向かない!とふみは言い聞かす。 安倍君?どうでも良いけど、あ〜…、好きなんだっけ?と京子がバカにしたように言うので、何!と怒ったふみは、ブリド!と攻撃をかける。

ごめん!と後ろを向いた京子は、ごめんなさい…と再度謝る。

それを聞いたふみは、許してやるよと答えると、タイダ イッピキピ!(退却せよ)と言い残しその場から立ち去って行く。

神社前で芸者さんと出会った安倍は、どうぞ!と道をあけてやり、おおきに…、おきばりやす…と礼を言われるが、芸者2人が立ち去った後に前に立ちはだかったのが芦屋だった。 決着付けてやる!と芦屋が言うので、安倍はその場を逃げ出す。

安倍を追いつめた芦屋は、おい、逃げるな負け犬!京子がお前のことをなんて言ってたか教えてやろうか?安倍君は良い人だけど、退屈なんだって!退屈!と言うので、くそ〜!と激高した安倍は戦いの指示を出す。

一方、松永ら3人に追いつめられていた高村は、またもやホルモー!と叫び失神する。

俺たち行くけどさ、お前頑張って、マジで!と3人は倒れた高村に心配そうに声をかける。

安倍も芦屋に追いつめられていた。

安倍の残り少ないオニたちの様子を見た芦屋は、お前、もう終わりだよと嘲り、とどめを刺そうとするが、その時、上空から突然何かが降って来て、芦屋のオニたちを潰して行く。

大丈夫か?と駆けつけて来たのはふみだった。 楠木隊、見参!これより芦屋に助太刀!と言うので、安倍はえっ?と目が点になる。

ふみは芦屋のオニにレーズンを補給するため自分のオニを一列に並ばせたので、芦屋のオニたちはその前に並んで来る。

貴様!裏切ったな!と叫んだ安倍に、突如、安倍!避けろ!と叫びながらふみが迫って来る。

すると、門の奥から重石付きの綱のような状態になったオニが振り子状態で芦屋の顔にぶつかって行く。

その直後、ふみは自分のオニを集合させ、安倍!と声をかける。

芦屋のオニたちは何故か次々に死んで行っている中、ゲロンチョリ!とふみと安倍が揃って指示を出す。

そこに審判役の清森が駆けつけて来る。

ゲロンチョリ! ステ クライ(防御せよ)カイマ シュ!などと、血まみれの口になった芦屋も必死に防御しようとするが、形勢は明らかに逆転していた。 そこに菅原も様子を見に来る。

さらに攻撃しようとする安倍を手で製したふみは、勝負はついたと言うので、芦屋は、まだ戦えるわい!と意地を張るので、芦屋、負けを認めろ!神々は潔さを求められておられるのだ!と清森も声をかける。

それでも芦屋は、うるせえ!と拒む。

その時、「のんのんばあ」の親父は、急に暗くなったので、神々がお怒りになった!と怯える。

そんな芦屋の所に京子が駆けつけて来て、あんた!と叫ぶ。

芦屋の容貌がオニに変化していた。

京子来るな!畜生!安倍の糞にだけは…と芦屋が苦しそうに言うので、もう良い芦屋!俺は糞だ!お前はクズだ!お互い勇敢に戦っただろう!と安倍は呼びかける。

清森も、全滅したらホルモーと叫べ!と言い、ふみも危険だ!何が起こるか分からない!と忠告する。

「のんのんばあ」の親父は自らの首を掴んで昏倒する。 空の大黒オニは広がっていた。

ホルモーだ、芦屋!ホルモー!と呼びかける安倍。 神々は本物のペナルティを与え始めた。(と独白)

揺れ動く京都の街。 芦屋の身体に黒い雲のようなものが巻き付いて行く。 巨大な大黒オニの顔が門を飲み込もうと迫る。

芦屋!と叫ぶ安倍。 親父ももがき苦しむ。 もう我慢しないで!と呼びかける京子。

何でも良い、芦屋!ホルモーと叫べ!と安倍は迫り、堪り兼ねて芦屋の身体にタックルして行く。

その時、芦屋がホルモーと絶叫する。

すると、黒い雲のようなものは上空に吸い上がって行くが、巨大な大黒オニの顔はそのままだった。

神々はまだご不満なのですか?と上空を見上げた菅原が問いかける。 爆発するぞ!と清森が上空を見上げて叫ぶ。

雷光を放ちながら、黒い雲のようなものがふくれあがって行く。

危ない!と菅原も叫ぶ。 次の瞬間、黒い雲の塊は大爆発を起こす。

ふみは、上空をたくさんの小さな白い雲がたくさん飛んで行くのを見る。

周囲が明るくなった時、清森は、倒れていた安倍と芦屋の元に駆け寄り、安倍チーム、試合中に敵方の身体に接触したので反則負け!芦屋チームの勝利!と判定する。

芦屋はため息をつき、「のんのんばあ」の親父も、助かった…と正気を取り戻していた。

オニたちを神社内に返した芦屋は、安倍!と呼びかけ、手を差し出す。 安倍はその手をがっしり握り返す。

我々は負けはしたが精一杯戦った、悔いはない。17条発議を取り下げようと思う。(と独白)

ホルモーが再開されれば芦屋とも折り合い、共に戦って行くつもりだ。 いや〜…、終わったね…と話しかけた高村に、ふみも明るく、うん!と答える。

三好兄弟も、おつかれさま!先に行ってるねとふみに声をかけて行く。

そんな中、安倍は立ち止まり、目元のメガネを気にしているふみに、どうした?と聞く。

メガネ直さなきゃ…とふみが言うので、壊れたふみのメガネを顔から取り上げ、コンタクトにしろよと安倍は言う。

そっちの方がずっと良い…、ずっと可愛い…と安倍が言うので、ありがとう…とふみはぎこちなく答える。

そして年は改まり、再び葵祭の季節がやって来た。

俺たちは三回生になった。

スーツ姿で髪を伸ばした菅原が京大の校庭にやって来て、よ!久しぶり!と声を掛けて来たので、安倍たちは驚く。

新人の勧誘か?もう5月やよ…、もう2年経つんやな…と菅原が夏が志賀っていると、一回生を見つけたふみが安倍を誘い、駆け寄って勧誘を始める。

芦屋君は?と菅原が残っていた高村に聞くと、取り込み中ですと高村は答える。

駅前で、何?と聞いた芦屋に、京子は思い切り股間を蹴り上げ、バッグで顔を殴りつけて来る。

離れちゃ、くっつき、これで4回目です…と高村が説明すると、まあ、腐れ縁と言うことでしょうと菅原は答える。

どこにでもあるありふれた普通のサークル!と安倍とコンタクトにして髪型も変えたふみは、2年前の菅原と同じように勧誘を続けていた。

葵祭のバイトの帰り道、安倍と高村の前に立ちふさがった菅原と女は、どこにでもあるありふれた普通のサークルですと説明していたが、その肩にはオニが乗っていた。

チラシに目を通す安倍と高村の背後にもオニがジャンプしていた。

全てはここから始まった…(と独白)

菜の花が咲く道をチャリで走っていたふみは、安倍!アイギュ ピッピキピー(我に続け!)と命じ、安倍は、はいと素直に答えてチャリで追って行く。

エンドロール(劇中フォトが時間軸通りに繰り返されて行く)

ビートルズの「アビーロード」のように、浴衣姿で神社前の交差点を揃って渡る5人の姿。
 


 

 

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