御三家の1人、舟木一夫さん主演のアイドル映画なのだが、日活映画だからか、舟木さんが持つアンニュイな雰囲気を生かそうとし過ぎたせいか、今ひとつ弾まない青春映画になっている。 一番違和感があるのは、アイドル映画なのに、主役の舟木さんがモテない役を演じていることだろう。 最後の最後に少し救いはあるものの、物語の大半は彼女に思いを伝えられないもどかしい青年の哀しい物語である。 その主人公が一目惚れする彼女というのが、どうもアイドル映画のお相手にしては微妙な感じの女優さんで、主人公を好きになるもう1人の女優さん共々、最後まで何となく馴染めないままなのが残念。 おそらく、舟木さん目当ての女性ファンの心理に配慮した設定なのかも知れないが、どうも終始暗いトーンが続くだけで、見ていて楽しめない部分がある。 和田浩治さん演じる主人公の友人の話が平行して描かれており、こちらもこの当時日活作品に良く出ていたエレキバンド絡みの話で新鮮みに乏しい。 救いとも言うべきなのは、愛らしい時代の山本陽子さんが出ている所だろうか? ある時期のMEGUMIさんを彷彿とさせるような、きりっと凛々しい美貌と可愛らしさを兼ね備えている。 もう1人の救いはひょろひょろ痩せていた時代の堺正章さんなのだが、キネ旬データのキャスト欄では、葉山良二さんの役名と同じ名字になっており、兄弟設定なのか?と想像してしまうが、劇中ではそんな雰囲気には見えない。 途中、はとバスツアーのシーンで、当時の東京名所が色々登場してくるのが楽しい。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
1965年、日活、才賀明脚本、柳瀬観監督作品。 銀座の映画館で1人外国の恋愛映画を見ていた塚口明夫(舟木一夫)は、周囲の観客がカップルばかりだったので寂しげだった。 映画館を出ると雨が降って来たので、近くにあったビルのシャッターが閉まった入り口の隙間で雨宿りを始めた明夫だったが、すぐに別の女性も同じ空間の端に駆け込んで来る。 明夫は、ちらちらとそのこの顔を横目で確認していたが、少し小やみになった時、女性はハンドバックからハンカチを取り出すと、それを頭の上に置き走って出て行く。 明夫はちょっとがっかりするが、気がつくと、地面に、今の女の子が落として行ったらしいアクセサリーが落ちていた。 タイトル 銀座風景を背景にキャスト、スタッフロール 屋外で大きな看板絵を描いていた田所文太(葉山良二)は弟のサブ(堺正章)に看板の絵を見てくれと声をかける。 サブがその場から看板を見上げようとしたので、看板は下に降りて客の目線で見るんだと文太が注意したので、梯子伝いに地上に降りたサブは、何を見るんですか?と屋上にいた文太に聞く。 すると、唇を見てくれ!と女性を描いていた文太が指摘するが、サブはその意味が良く分からず、通りかかりの中年女性を呼び止め、その唇を批評し始めたので、中年女性は怒って立ち去ってしまう。 仕事帰り、文太が運転する軽トラの荷台に明夫と一緒に乗っていたサブは、兄貴、来年美校に通ったら辞めるんだろ?と聞いて来る。 明夫が、僕がいつまでもいたら先生に迷惑そうだから…と答えると、うちの先生には5年越しの彼女がいるからな…、保育園に勤め、まるで蟻の町のマリアっていうか…とサブも言うので、2人は結婚しにくいんじゃ…と明夫は案ずる。 するとサブは、タイミングの問題ですよなどと分かったように言う。 「宣伝看板 日々広告」の店に帰って来たサブは、明日が日曜なので、自分はこれから恋人の良子ちゃんと待ち合わせしてるんですと嬉しそうに明夫に言うと、今、これくらいは出来なくちゃ!と言いながら、モンキーダンスを披露する。 そして、明日は兄貴も恋人を作るんですねと言い、又、月曜日!と言い残し、サブは店を出て行く。 すると、新宿で待ち合わせていたはずの良子が、店のすぐ前で待っていたので、どうしたの?とサブが聞くと、待ちきれなかったの!などと良子が言うので、ご機嫌になったサブは、良子と腕を組みいそいそと出かけて行く。 その後、夕食を一緒に食べていた文太が、広告の図案のアイデアをまとめながら食べているうちに、鉛筆と箸をごっちゃにして食べようとするので、明夫は笑ってしまう。 自らの失敗に気づいた文太は、お互い本格的に食おうと言ってごまかすので、本格的に聞こうと思ってたんですが…と明夫が話そうとすると、圭子のことか?タイミングの問題さと文太は答える。 先生は美校を一番で卒業したそうですが、何故看板など描いているんですか?と明夫が聞くと、一日一日変わって行く町を活かす生きた美術が必要なんだと答え、君がサロン美術をやる上に今の仕事が悪影響があるんじゃないかと心配しているなら、悪影響をぶっ飛ばすんだなと文太は言い聞かせる。 その後、二階の自室で絵を描き始めた明夫は、ハンカチに包んで持っていた例のアクセサリーを取り出しじっと見つめる。 街角で学生服を着て手相見をやっていた三村健次(和田浩治)は、求婚されたら最初はちょっと考えさせてと答え、2回目は恥じらいながらOKと言うようにと適当なアドバイスを与え、女性客から受け取った見料の200円を喜んでいた時、にいきなり手を突き出して来たのが、3ヶ月前まで田舎の高校の同級生だった明夫を気づき、アキやん!久しぶりだな!と奇遇に驚きながらも再会を喜ぶ。 一緒に屋台のおでんを食い始めた健次は、大学を中退したらしかったが、1人前の男がふらふらしてちゃダメだ!歌で独り立ちできるのにと明夫に注意すると、実は今いる所の先生はたまの日曜でもないと恋人に会えないと説明し、自分は2人に気を効かせて外出しているのだと明夫は教える。 それを聞いた健次は、俺の所に引っ越して来いよ、今日は引越に良い日なんだ。実は俺すげえ自分の車を買ったんだなどと一方的に明夫に命じる。 その後、「日々広告社」にやって来た健次は文太に会い、先生の恋人って保育園の先生でしょう?などと愛想を言うと、実はアキちゃん引っ越すことにしたんですと切り出す。 文太は、何だい、急に?と驚くが、健次の背後にいた明夫が頭を下げ、すみません、あいつが勝手に決めたんです。先生も結婚するかと思って…と謝ると、確かに君がいると無駄な時間外の雑用にも使って来た。 引越も君にとっては良いかも知れんな…と文太は許してくれる。 健次の車で引越する途中、健次は車を降り、公衆電話から遠山玲子(山本陽子)に電話をする。 電話を受けた玲子は、ちょっとだけ見に行くわと答える。 アパートではなく車が工場に着いたので不思議がる明夫に、君に会わせたい仲間がいるんだと健次は説明し、倉庫の中に案内する。 そこでは、近所の住民達が素人エレキバンドの演奏を聴いていた。 演奏が一段落ついた時、メンバー達に明夫を紹介した健次は、久(杉山俊夫)、辻田修(木下雅弘)、中川洋介(市村博)、宮沢良郎(市川好朗)らメンバー達一人一人の名前と昼間の職業を明夫に教え、みんな働きながら夜はバンドをやっていると明かす。 メンバー達は、一人一人将来なりたい理想を話す。 そして自身はバンマス兼ドラムだと教えた健次は、アキちゃん、すげえ歌巧いんだとメンバー達に教えると、嫌がる明夫を前に演奏を始め、仕方なしに明夫も「椰子の実」を歌いだす。 そこへ赤いスポーツカーでやって来た遠山玲子も混じり、明夫の歌を聞き始める。 歌い終わった明夫に拍手をしながらバンドに近づいて来た玲子は、いける!ケンちゃん、いけるわ、この方!と健次に伝える。 健次はぽかんとしている明夫を玲子に紹介すると、明夫には玲子を我々のスポンサーだと紹介したので、玲子は慌てて、バンドはまだよと健次を牽制し、あなたならきっと成功するわ、私に任せて!と明夫だけを認める。 それを聞いていた明夫は事情が分からず、任せるって?とぽかんとしているので、実はまだ本格的に口説いていないんです、何しろ引越なんでと健次は玲子に説明して詫びる。 健次のアパート「富士見荘」に到着した後、明夫と日本酒で乾杯した健次は、玲子の父は一流ナイトクラブを3軒も持っているんだ。 彼女君の歌を褒めてたよなと持ちかけるので、僕は歌は趣味だからダメだよと断った明夫は、ケンちゃん、君は最初からそのつもりで僕を引越させたのかい?と問いつめる。 実はバンドがステージに立つには条件が2つあって、1つはバンドが巧くなること、2つ目はムードのある歌手を捜すと言うことで、君が合格したってことだと健次は明かすと、一生一度のお願いだ!みんなを助けると思って頼むよ!と頭を下げる。 それを聞いた明夫は、ステージに立つってことはプロになるってこと?さっき言ってた理想って?と疑問を口にする。 健次は、夢ってことさ…、もう一杯行くか?とごまかす。 翌朝、アパートを出た明夫が最寄りの駅のホームで周辺を見回していると、駅前のブティックの店先を掃き掃除している娘の姿が見える。 その娘こそ、先日の雨宿りの時、アクセサリーを落として行った女性だった。 しかし、電車が到着したのでそれに乗り込んだ明夫だったが、その日、銭湯の背景画を描きながらも、ポケットの中からアクセサリーを取り出し、上の空状態になる。 文太も背景画の問題点を気にしているだけで、何か足りんな?と悩んでいるので、サブが、ここに松を描いたら?などと提案するが、違うな…、サブちゃん、裸になってくれよ。風呂に入って客の気持で見るんだと言い出す。 しかし、まだ銭湯は準備中で湯船に入っているのは水だったのでサブは躊躇するが、パンツも脱ぎ捨て、水風呂に浸かると、われは海の子♩とヤケになって歌い始める。 そんなサブは背景画を湯船から見ているうちにインスピレーションが湧いたのか、真ん中の岩に釣っている人が欲しいです!と提案したので、文太も、それだ!と気に入る。 仕事の帰り、「紳士・婦人用品 小物アクセサリー ルネ」と看板が出ていたブティックに入った明夫だったが、先日はどうもと挨拶しても、応対した緒方ミチコ(伊藤るり子)は明夫を覚えていないようだったので、拾ったアクセサリーを差し出す。 それを見たミチコは喜び、あなた、あの雨の時の!と思い出し、とっても大切なもんです。人にもらったの…と感謝する。 しかし、明夫は近くに引っ越して来たんですなどと言った後もなかなか帰ろうとしないので、ミチコも場が持たなくなり、靴下など勧める。 白が好きです。紺も好きですなどと曖昧に明夫が答えると、白と紺の靴下を二足600円分をミチコはプレゼントしてくれる。 その時、ようやく名乗り合った明夫は、ありがとうと靴下の礼を言い店を出るが「東北沢駅」前でスーツを着た健次に出会う。 仕事に行くんじゃないのか?と明夫が聞くと、これから玲子さんとデートなんだ、一緒に行かないか?などと健次が云うので、遠慮しとくよと明夫は呆れたように答える。 すると健次は、俺たちのたまり場を教えてやるよ、「満腹亭」って店で、親爺は口は悪いけど、ラーメンつけで食わせてくれるんだなどと言いながら、明夫を「満腹亭」に連れて来る。 しかし、健次は店の親爺金造(桂小金治)とアケミ(中野味和子)に明夫を紹介しただけで店を出て行ったので、明夫もまた来ます!と挨拶だけして帰ることにする。 そんな明夫をアケミは一目で気に入ったようだった。 翌日、「日々広告」の店に来た明夫が嬉しそうに歌いながら仕事をしているので、それを文太と一緒に不思議そうに見ていたサブは、何かに気づいたように自分の小指を立てると文太に教える。 文太もその小指のことを理解したのか笑顔になる。 翌日も「ルネ」の店のショーウインドーから店の中を覗き込んだ明夫だったが、ミチコは客の応対で急がしそうだった。 ところが、「富士見荘」で絵を描いていた明夫は、部屋を訪ねて来たのがミチコだと知り驚きながらも、昨日はどうもと挨拶する。 ミチコの方も驚いたようで、あなたはどうしてこの部屋に?三村さんとは…、私の友達なんですというので、ケンちゃんなら僕の友達でもあるんですよ。 昨日近くに引っ越して来たと言ってたのはここのことだったんですと明夫は教える。 ケンちゃんと知り合って4ヶ月くらいと答えたミチコが、ケンちゃん、どこ行ったんでしょう?と聞いて来たので、バンドの練習に言ったんでしょうと教えると、工場へは今行って来ましたとミチコは答える。 明夫が描きかけのキャンバスを見たミチコは、あなた、絵描きさんなのねと云うので、まだ卵ですと照れた明夫は、誰かに似ていると思いませんか?とキャンパスに描かれた女性像の下絵を云うが、ミチコはまさか自分が描かれているとは全く気づかないようだった。 「満腹亭」にミチコを連れて来た明夫が、ケンちゃん来てませんか?と聞くと、来ましたよ、気に入らないね!と何故か金造は怒ったように言う。 その頃、健次は玲子と一緒にボウリングを楽しんでいた。 玲子は健次に、私が好きなんじゃなくて、バンドがステージに出たいだけなんでしょう?と皮肉るので、あなたと会わなくたって良いんですよと健次はわざと機嫌を損ねた芝居をしたので、慌てた玲子はすぐに謝る。 健次がそんな玲子に、実は明夫のことなんですけど、ステージに立つ気ないんです。 でも僕たちのバンドにチャンスを下さい!と頼むと、ケンちゃんもなかなか良い所あるわね、考えてみると玲子は微笑む。 そこにやって来たのが明夫で、健次を呼び寄せると、ケンちゃん!客が来てるんだ、緒方ミチコさん、帰ってくれよと頼むが、今、ちょっとまずいんだと健次が玲子を意識して渋るので、帰ってやれよ、彼女、満腹亭で待っているから…と明夫は頼む。 満腹亭に戻って来た健次がラーメンくれよと頼むと、ナイトクラブなんかに出てる間は出さないことに決めたんだと金造は答える。 仕事の余暇で楽しんでいるから応援してたのに、プロになって金儲けしたいなんて!プロにはプロ独特の根性がいるんだ!うちだって、プロとして客に出すものは研究してるんだ!おめえが連れているスポンサーってのも気に入らない、ミッちゃんが悔しいじゃないか!と金造は説教する。 それを聞いていた健次は、親爺!言い過ぎじゃないか?バンドのためなんだよ。 俺ミッちゃんのこと好きなんだ、俺たち非常時だから…、ミッちゃん、行こう!とカウンター席で待っていたミチコを誘う。 外に出た健次は、あの親爺、気にくわないよと金造の悪口を言うので、あなた達のことを思っているからこそ憎まれ役になってるのよとミチコが諭す。 そしてミチコは、さっき言ったこと本当ね?本当に好きなのは私だけなのね?嬉しかったわ…、例の話、今度こそきっぱり断るわとミチコは嬉しそうに言う。 すると健次は、待ってくれよ!と驚く。 「富士見荘」の部屋で明夫がキャンパスの絵を描いていると、健次が帰って来たので、ケンちゃんにあんな恋人がいるなんて知らなかったよと話しかけると、靴下買いに行って知り合ったんだ。 プレゼントもしたけどさ、財布に付けるマスコット程度なんだよ。 向こうは俺が好きらしいんだけどな…などというので、あの拾ったアクセラリーの贈り主が健次だったことを明夫は知る。 玲子さんのことはどう思っているんだ?と明夫が聞くと、どっちにするか…、俺、ミッちゃんに田舎に帰って方が良いって言ったんだ。 田舎の親爺から見合いを勧められたらしいんだ…、ミッちゃん、東京にいるって行ったけど、俺、責任持てないからな…と言いながら、健次は明夫のスケッチブックに「責任」と鉛筆で書いてみせる。 分かったよ、けどねケンちゃん、彼女、君に帰るなって行って欲しかったんだと思うよと明夫が言うと、彼女のことずいぶんこだわるじゃないか?いつもの正義感か?俺の気持も分かってくれよ、俺、出かけて来るよと言い残し、健次はまた玲子の元へ戻って行く。 部屋に1人残った明夫は、健次が書いて行った「責任」の二文字をじっと見つめる。 その後、「不死身荘」にやって来たミチコは、健次がベッドで寝ている姿を見てそのまま帰って行く。 駅にやって来たミチコを、駅から出て来た明夫が見つけ、どうしたんです?と声をかける。 話は全部聞きました、ケンちゃんに会って来たんですか?あいつ、何て言ったんです?と明夫は質問攻めにするが、ミチコが暗い表情のまま何も答えないので、そうですか…と事情を察し、お店、どうするんですか?辞めるんですか?と聞く。 ええ…とミチコが答えると、そんな…、あなたそれで良いんですか?本当に良いんですか?ケンちゃん、本当に好きなら帰らない方が良いと道夫は言い聞かす。 それでもミチコは、見合いして良い人だったら結婚するんですなどというので、それじゃ、相手の人にも失礼でしょうと明夫が言うと、女には大きな愛よりも小さな愛があれば良いの。俺の側にいろって言って欲しいの。健次さんうらやましいわ、あなたみたいな友達がいて…と言いながら握手の手を差し伸べる。 しかし、握手はしないで明夫は、そこまで送りますと言う。 その後、夕陽が沈む川沿いで1人佇む明夫。 「富士見荘」に帰って来た明夫は、畳に寝そべり考え込む。 翌日、文太は明夫の様子がまた変わったことに気づく。 サブも気づいたようで、小指を立ててみせる。 ある夜、いよいよ健次達のバンド「ヤングスター」が玲子の父親のナイトクラブでステージに立つことになる。 客達は、珍しい音楽に戸惑うものもいたが、ホステス達に誘われ一緒にツイストを踊りだす。 そこへ階段を降りて来た玲子の父親でナイトクラブの経営者の圭太郎(菅井一郎)は、この有様に驚いて足を止める。 演奏後、社長室に玲子と「ヤングスター」を呼んだ圭太郎は、一週間だけの約束なの、パパに黙っていたの悪かったけど…と玲子から落ち明けられ、契約したまえ、一週間が過ぎたら…と答えたので、メンバー達はありがとうございます!と礼を言う。 一週間後にプロになれると聞いた「満腹亭」の金造は、とことんやるんだぞ!と励ます。 アパートにいた明夫を呼びに行った健次が、これで俺も玲子さんやメンバー達の願いが叶った!ミッちゃんのためにもな…と喜びを伝えると、ケンちゃん、君1人でバンドをメンバーを引っ張ったようなこと言うけど、実は会ったんだよミチコさんに…、あんまりしょんぼりしていたから…話を聞いたら、俺の側に色って言ってもらえるだけで嬉しいそうだ、どんなに不幸になっても…、君を心の底から愛していたんだ。 行っちまったよ、ミッちゃん…と明夫が教えると、俺が間違っていたかも知れないよ、俺、チャランポランだから…、これからも俺が間違っていたら言ってくれよと健次は頼む。 そして、俺、行くわ、一度ステージ見に来てくれよなと健次が出て行こうとするので、行くよと明夫は答える。 その後、「ヤングスター」が出演するナイトクラブの前に来た明夫は、出演者の写真が貼ってある看板を一心に見つめている娘に気づく。 それは田舎に帰ったはずのミチコだった。 ミチコも明夫に気づくと、一種に喫茶店に入り、どうしても家に帰れなかったのと言うので、これから2人でケンちゃんの所へ行かないか?と明夫が誘うと、戻って来たのはケンちゃんを忘れるためなの、同じ東京にいた方が良いと思ったのとミチコが言うので、さっき写真を見てたじゃないかと指摘すると、おめでとうとさよならと言ってたの…とミチコは答える。 そしてミチコは、お願いがあるの、私が東京にいることをケンちゃんに言わないで欲しいのと言うので、僕はケンちゃんに秘密を持っていることになるな…と明夫は呟く。 今どこにいるのかと聞くと、友達の家にいるとミチコが言うので、君は子供が好きかい?と聞いた明夫は、保育園で働いてみないか、先生に紹介するよと勧める。 ミチコを家まで送り届けた明夫は、1人富士見荘に帰って来る。 すると健次が帰っており、「満腹亭」のアケミも何故か来ていたので驚くが、君って餃子を持って来てくれたのだと健次が言う。 しかし、アケミは恥ずかしいのか、また今度、さよならと言い残しさっさと帰ってしまったので、彼女、大分君に熱があるよと健次がからかう。 明夫はキャンパスにかかっていた布を外すと、そこにはミチコをイメージした絵が完成に近づいていたが、健次もそれには気づかないようだった。 その後、文太の恋人の圭子(堀恭子)がオルガンを引き、その横でミチコも子供達と一緒に歌っていた保育園にやって来た明夫は、自分も「七つの子」を歌いながら圭子に近づくと、うちの先生からと預かって来たプレゼントを渡すと、うちの緒方君共々助かってますと礼を言う。 その頃、健次は玲子と、遊園地や海で遊んでいた。 やっちゃ場で働いていた久の元に集まったメンバー達は、ステージを辞めると久が言い出したので驚く。 もう1度、自分たちの生きる道を考えなきゃ行けないと思うんだ…と久はつくづく言う。 ある日、外で看板絵を描いていた明夫に会いにミチコが訪ねて来たので、文太が代わってやると明夫を呼び寄せる。 日比谷公園に明夫を連れて来たミチコは、お願いがあるのと言いながら一通の手紙を渡すと、おじいちゃんとおばあちゃんが熱海で団体旅行に来るとき東京に1日立ち寄るのよ。 私、田舎のお見合いを断るとき、三村健次という恋人がいると言ってしまったので、明夫さん、その日だけ恋人になってとミチコは頼む。 いよいよ当日、東京駅前のはとバスの出発場所へやって来た明夫は、待っていたミチコから祖父の弥市(中村是好)、しげ(早川由紀)を紹介される。 その後、はとバス観光で、皇居の二重橋から東京タワーに向かい、展望台に登る。 弥市としげは、あそこがオリンピックが会った所だなどと景色を眺め、ミチコが住んでいるという荒川の場所も聞く。 荒川の方向を教えたミチコは、保育園を紹介してくれたのも健次さんなのと2人に教える。 羽田東京国際空港、モノレール、銀座四丁目、浅草、上野、靖国神社と巡って行く。 バスを降りたしげと弥市は、健次のことを良い青年だと褒め合う。 その後、高速道路4号線、国立競技場、駒沢オリンピック公園… 弥市は健次こと明夫に、ミチコのこと宜しくお願いしますと頭を下げる。 ミチコの気の進まない見合いをさせましたが、国の親爺は私たちが説き伏せますから…、これで安心しましたと弥市は安堵したようだった。 その夜、明夫と港を歩くミチコは、おじいちゃん騙したりして、私って悪い子ね…と呟くと、明夫さん、高校時代どんなだった?と聞くので、普通の高校生だったよ、高校2年の時、会津塗の親爺が死んじゃってね…と打ち明け、健次の方はカンニングの名人だったなどと教える。 ケンちゃん、夢が多すぎてどれが理想か分からないのよ…とミチコが言うので、ミチコさん、君はケンちゃんこと好きかい?と明夫が聞くと、ミチコは首を横に振り、本当よと答える。 その後、2人でレストレンで食事をした後、金魚すくいなどで遊んでみるが、何故かミチコの表情は暗かった。 全員黒めがねがセールスポイントの「ヤングスター」が、1週間のナイトクラブでの最終演奏後、楽屋で突然辞めると言い出したことを知った健次は、みんな、本気なのかよ!俺たち何やってたんだよ!とショックを受けていた。 そこに何も知らない玲子がやって来て、皆さん、本当にご苦労様とメンバー達にねぎらうと、パパ時間にうるさいの…と契約を急かそうとするが、様子がおかしいことに気づき、あら?どうしたの?と聞く。 みんなプロになる自信がないって言い出したの?それじゃあ、私の立場がないじゃないの!と玲子が驚くと、僕たちにとって一生の問題なんですと久が答える。 メンバーの1人だけが、ケンちゃん、俺やっても良いよと言うが、2人で何が出来るんだよ!と健次は呆れ、楽屋から出て行った玲子の後を追った健次は、玲子さん、必ずみんなを説得させますから、お父さんにもう1日だけ待ってもらえませんか?と頼み込む。 しかし、階段を上りかけていた玲子は、自分の財布から札束を取り出すと、これ、少ないけど、私から一週間のギャラよと言いながら渡すと、ケンちゃんの悪い所は自分の実力以上に背伸びすることね…、じゃあ、さようならと言い残し、そのまま階段を上って行ってしまう。 照明が落ちた閉店後の店内に残った健次は、階段の下にうずくまる。 保育園に送り届けた明夫に、園内に入るミチコは、明夫さん、気をつけて帰ってねと声をかけるが、そんな仲睦まじい2人の様子を、保育園の窓から圭子が優しく見守っていた。 明夫は一人帰りながら「成人のブルース」を歌う。 「富士見荘」に帰って来た明夫は、二階の廊下で酔いつぶれていた健次を発見、ケンちゃん、どうしたんだよ?と助け起こすと、解散させられたんだ、バンド、きっぱり辞めたんだ…と泥酔状態の健次は言う。 とにかく部屋へ行こうやと声をかけ肩を貸して部屋に連れて行った明夫だったが、畳に突っ伏した健次が、馬鹿な男だな…、ケンちゃんは馬鹿な男だ…、俺、ミッちゃんみたいな子を追っ払って…、ミッちゃん!と寝言を言い出したので、複雑な顔になる。 俺、今になって分かったんだ、本当は君を愛していたんだよ…、ケンちゃんはもう、終わっちまったんだよ…、ミッちゃん… それを聞いていた明夫は思い悩む。 その頃、「ヤングスター」のメンバー達は「満腹亭」に集まっており、ケンちゃんには悪いけど、仕方ないよな…、こんな形でケンちゃんと別れるのはつらいけど…、それも良いんじゃないか?責任感じるな…などと話し合っていた。 それを聞いていた金造は、エネルギッシュがケンちゃんの取り柄なんだ。君たちはこれから彼の医者や看護婦になるんだ。 でもいきなり近づくんじゃなくて、遠くから優しく見守り、ケンちゃんがふと気がついたらお前らが立っている。 それが本当の友情じゃないかなと言い聞かせる。 翌日、保育園でオルガンを引いていたミチコに会いに行った明夫は、外に呼び出し、ミッちゃん、ケンちゃんの所へ行ってくれないか?今、あいつを支えられるのは君だけなんだ!と訴える。 それを黙って聞いていたミチコは、ごめんなさい、行きます!ありがとうと明夫に言い残し、立ち去って行く。 その後、文太の店にやって来た明夫は、先生、仕事の時間を使用に使わせてもらってすみません。 でももう1つお願いがあるんです。今晩ここに泊めてくださいと頼む。 それを聞いた文太は、良いだろう、久々に芸術論でも戦わすかと歓迎する。 その頃、アパートの部屋でそれまで書き溜めていた楽譜を破っていた健次だったが、気がつくと入り口に立っていたのはミチコだった。 ミッちゃん!と健次は驚く。 翌朝、「日々広告」の店の硝子戸を開けた明夫は、そこに来ていた健次に気づく。 おはよう!すまなかったな…、俺…と健次が口ごもったので、ケンちゃん、俺たちどんなことがあっても…と明夫が言うと、親友かい?と健次は確認し、握手を交わす。 そんな2人の様子を店の中から見ていた文太は微笑む。 健次が帰った後、店には行って来た明夫に、塚口、お前バカだな…、好きな相手に何も言えないなんて…と文太がからかうと、ここにまた引越して来て良いですか?と明夫が頼む。 美校に来年落ちたら再来年…、一生落ちたって、まだ若いからと明夫は笑う。 その日、ビルの屋上の大看板を描いていると、文太がサブに絵を見てくれと頼んだので、また下に降りるんでしょう?とその場を立ち去りかけたサブだったが、そこへやって来た娘に気づき、お客さんですよ、満腹亭のお嬢さん…と明夫に声をかける。 お父さんが、明日映画にでも連れて行ってもらえって…と恥じらいながら、アケミはコーラの半カートンをサブに渡し、逃げ帰るように帰って行く。 たまの日曜だ、ゆっくり遊んで来いよと文太が明夫に勧めると、コーラを飲みながら笑い出す明夫だった。 (銀座の風景に主題歌が重なり…) 終 |