白夜館

 

 

 

幻想館

 

資金源強奪

北大路欣也主演の犯罪映画。

良く練られた脚本でテンポ良く話が展開し、最後まで緊張の糸が切れない見事な流れになっている。

犯罪計画に利用した2人組がポンコツで、あっけなく敵に素性がバレてしまうと言う辺りが面白い。

ポンコツの2人を演じているのが、川谷拓三さんと室田日出男さん。

特に拓ボンのキャラクター作りは面白く、牛乳瓶の蓋のような分厚い丸眼鏡をかけた火薬オタクに扮し、完全にダメ人間なのにも関わらず最後の最後まで事件に絡んで来る。

対して室田さんの方は、所帯持ちで気の弱い中年小悪党を演じており、こちらもちょっと室田さんにしては珍しい役柄ではないかと思う。

今井健二さんが、なかなか不気味なキャラクターを演じており、安部徹さん、名和宏さんとは又違った悪役像を作り出している。

ヤクザの女として愛を貫けない哀れなキャラクターを太地喜和子さんが見事に演じている。

天津敏、山城新伍、松方弘樹と言ったお馴染みの顔がゲスト的に登場しているのも楽しい。

中でも不良刑事役を演じている梅宮辰夫は、娘のような女房に翻弄されながらもしぶとく生きるキャラクターをひょうひょうと演じており、あまり器用そうに見えない梅宮さんにしては、珍しく生き生きとしたはまり役なのではないかと思う。

全体的に低予算のチープさを感じさせない快作になっている。 
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1975年、東映、高田宏治脚本、深作欣二監督作品。

動くな!爆弾やど!2人の目出し帽姿の男が銀行に乱入する。

女子工員たちに、現金を袋に詰めさせている時、近づいて来るパトカーのサイレンにビビった1人が、持っていた爆弾を手から落としてしまい、カウンターを転がって床に落ちた所で爆発する。

刑法236条の条文が出る。 賭場にやって来た国吉稔(名和宏)が、拳銃を台の上に放り、誰ぞわいと一緒に行く奴おらんか?とその場にいた組の若い者達を見回す。

なかなか声を上げるものはいない中、拳銃を掴んだのは清元武司(北大路欣也)に妻の一宮静子(太地喜和子)が、止めて、あんた!とすがりつくが、国吉は、いっぱしの男や、羽田組の男屋やで褒め、一緒に外へ飛び出す。

車に乗り込もうとしていた湘南会の親分を無我夢中で射殺する清元。 刑法199条の条文が出る。

清元はすぐにパトカーがやって来たので、慌てて逃げようとする。

タイトル

熊本刑務所の塀の前

静子、8年振りに会うんやぞ、3日間だけやど、武司は何言っても喜ぶんやと連れて来た静子に言い聞かせていた国吉の側には、同じ組の杉谷勝次(今井健二)も付いて来ていた。

やがて、門から出て来た清元は、一歩前に出た静子に近づいて来るが、彼女には脇目も振らず横を素通りし、国吉の前に来ると、わざわざどうも…と頭を下げる。

大分 杖立温泉 静子と清元を山水館と言う旅館の一室に連れて来た国吉は、親父さんからや…と清元に金を渡すと、湘南会も昔のようやない…、もうじき湘南会の二代目と盃がある…と言うので、大阪に行ったらあかんと言う事ですねと勘の良い清元は答える。

先代の仇やから…と国吉が言うと、わいは堅気で行こう思いますんや、その方が組のためにもなりますやろ?と清元は続ける。

国吉が部屋を出ると、外から窓を開け放ったその部屋の様子を監視していた杉谷もそっと離れて行く。

冷たいもんやな…、8年間も苦労させたのに…と同情めいたことを言う静子に、抱きついた清元は、ちょっと待って…と身体を離そうとする静子に、待ってられへんのや!とむしゃぶりつくようにキスをする。

抱き合った後、清元は自分の背中に突いた傷に気づく。 静子が指にはめていた指輪で傷つけたらしかった。

その指輪を見て、もろとくで!と言った清元は、用があるんや、1週間か10日、大阪から何ぞ言うて来たら、適当に言うたれ!などと言いながら服を着始める。

どや?わい、昔と変わらんか?と清元が聞くと、うち、あんたから離れん!と静子はすがって来る。

新幹線 大阪 駅前に停めた車の所で待っていた別所鉄也、通称テツ(川谷拓三)に、用意したもの、用意しといたか?と声をかけながら近づいた清元は、車に乗り込み、人気のないボロ小屋に連れて行かれると、一緒に車に乗っていた小出熊吉(室田日出男)が偉い所に変わったんやなと驚き、武やん、相談て何や?日本銀行でもやる気か?と小屋の中で聞く。

警察に追われる仕事やないと清元が言うと、ヤバい仕事やろな?こっちは所帯持ちや…と熊吉はビビりだす。

やるんかやらんのかどっちや?と迫ると、やらしてもらうかな…と熊吉は仕方なさそうに承知する。

京都に向かい、大津の雄琴温泉のホテル「柳月橋」にやって来た羽田組親分羽田博厚(安部徹)と国吉は、集まって来た他の組の連中を迎える。

その横を通りしな車から観察した清元は、琵琶湖の対岸に来ると、釣り人の格好で岸に降り立ち、アイスボック氏の中に入れて来た双眼鏡を取り出し、ホテルの庭先で談笑する羽田達の様子を観察する。

その時、湖岸にボートが係留されている事も発見する。

その頃、小屋の中では、火薬を調合していたテツの元に、スキューバの用具を持ち込んで来た熊吉が、何してるんやと近づいたので、火薬がこぼれて爆発し、白い煙が充満する。

テツが言うのは、清元からの指示で催涙弾を作っているのだと言う。 その夜、道具を揃え、清元と熊吉と一緒に琵琶湖の湖畔に車でやって来たテツは、湖の中に宝でも沈んでるんやないか?などと言うが、全員スキューバスーツを着込み、用意してあったモーターボートに乗り込むと湖に乗り出す。

羽田と湘南会の手打ちがあった。今頃、花会の最中や、何千万と言う掛け金が動いとるやないけと清元が説明する。

ホテル側の岸に到着した3人は上陸するが、その際、テツが、係留してあったボートに何か細工をする。

草むらの中を進んで行くと、羽田組の見張りらしき男達が近づいて来たので、襲いかかって殴りつけ眠らせる。

花会をやっていた座敷に、突然廊下から催涙弾が投げ込まれ、スキューバスーツの男3人が乱入して来たので、羽田は、おんどりゃ何じゃ!と怒鳴りつけるが、3人はその羽田を捕まえ、1人が、親分、いてまうぞ!と脅すと、残りの2人が部屋に積んであった札束をゴム袋の中に詰め込んで行く。

その後、ボートに逃げ込んだ3人が湖に乗り出すと、追って来た羽田組の連中もモーターボートで後を追おうとするが、その途端、テツが仕掛けていた爆弾が爆発し、組員達は水中に落下する。

残りの羽田組は車で岸沿いにボートを追跡し始める。 そろそろや…と清元が言うと、ボートに乗った3人はボンベを背負い、ロープでハンドルを固定すると、金を詰め込んだゴム袋2つに別のロープを結びつけ、それを持ったまま1人ずつ水中に落ちて行く。

岸からボートの動きを見ていた国吉は、向こう岸につける気や!バックせい!と命じ、車を向かわせる。

その頃、ゴム袋ごと岸に這い上がって来たテツ、熊吉、清元らは、乗って来た車に乗り込み逃走する。

隠れ小屋に戻り、強奪して来た金を勘定してみた所、3億5170万もあったので、武やん、どないする気や?と熊吉はビビる。

黙々と札束をトランクに詰める清元は、約束の取り分やと言いながら、テツと熊吉に札束を渡すと、俺はただの1円も使う気はない。3億円も辛抱したから捕まらなかったんや。

1年待ったら5000万ずつ渡す。欲得でぱーっと使うつもりはない。わいが人殺し屋と言うのを忘れたらあかんぞと清元は釘を刺す。

しかし、もらった金に不満がある熊吉は、テツに、あいつから目を離すなと囁きかける。

一方、花会をめちゃめちゃにされた羽田は面目を失い、参加していた芥川信義(天津敏)、皆川克巳(北村英三)ら親分衆にきっと弁償させてもらうと詫びていた。

芥川らはそれぞれの被害金額を書いたメモを羽田を渡し帰って行くが、その金額を見た羽田は、芥川8000万、皆川5000万…などと金額を水増ししている事に気付く。

それを聞いた国吉は、うちを加えると5億行きますが…と呆れる。

その時、サツに知らせたらと子分の1人が提案したので周囲からバカにされるが、それを聞いた羽田は、サツを使う方法を使ったらどうだ?鼻薬聞かした奴がいないか?と言い出す。

すると国吉が、四課の文明どうだす?うちの若いの撃ちよりまして、今停職中です。

5人目のかかもろうたんで銭かかりますでと教える。 能代文明(梅宮辰夫)は、娘のような女房洋子(渡辺やよい)とアパート暮らし、ミキサーでジュースを作ってベランダで寝そべっていた洋子に持って行ってやると、自らマッサージをしてやりご機嫌を取る。

働きに出たいと洋子が言うと、お前はまだ未成年や、児童福祉法違反やないかと言って能代は止める。

そこへ電話がかかって来たので出ると、雄琴温泉?遊びちゃうんか?アルバイト?と能代は戸惑う。

雄琴温泉のホテルにやって来た能代は、探してくれたらこっちでカタ付けると言う国吉に、ここでボートやられたんか?と爆破されたボートを調べていたが、仕掛けられていた仕掛けの一升瓶に巻いてあった赤ペンで書き込みがある競艇新聞を見つける。

バイト料は3人組1人100万でどうや?国吉はん…と能代は吹っかける。

賭場、荒らされたんやろ?と能代が言い当てると、100万出したろ、その代わり急ぐで…と国吉は承知するが、3日もあったら何とかなるやろと能代は答える。

競艇場にやって来た能代は、遊び回っているテツを見かけるが、常連が集まってノミ行為をしている所へ行くと、昨日、今日、派手に張っている奴いないか?ちょっと一般の人は出てもらおうか?と警察手帳を見せながら人払いをする。

すると、明らかに遊び人の行夫(山城新伍)が出て行こうとするので、能代が捕まえると、今、一般の人出ていうたやないか、わい一犯の人、前科一犯などと行夫はシャレを言う。

ノミ行為現行犯やと能代が脅すと、心当たりある。フーテンのテツ、300万程使うとると言い出した行夫は、ハンチング坊に丸眼鏡のテツを指差して教える。

テツはその後、ゴーゴー喫茶で踊り始めるが、それを店内で監視していた能代に、8時まで1万でつきおうたるわと言い寄って来た小娘がいたので、ちゃんと学校行かなあかんで、これであんみつでも食いなと小銭を渡す。

その時、能代は、女房の洋子が見知らぬ男と踊っているのを発見、驚いて、洋子やないか!お前は婦女暴行犯やと相手の男前田(松方弘樹)に言いがかりをつけたので、怒った前田と喧嘩になる。

顔に怪我をし、アパートへ戻って来た能代は、飛んだ手違いや、100万逃してしもうた…、洋子悪かった。何でも欲しいもん買うたるとなだめると、3LDKのマンション!と言いながら、3000万のマンションが載ったチラシを洋子は差し出して来る。

1週間振りに大阪の静子のマンションにやって来た清元は、静子、お前の指輪、仕事の元手に使わせてもろうたと詫びる。

仕事、巧くいってるの?と静子が聞くと、順調やと答えた清元は、兄貴に会いたいと言うので、店に来てると思うわ、一緒に行きましょうか?と出かける準備をしながら静子は答える。

静子の店のボックス席で飲んでいた国吉に会いに行った清元は、兄貴、どうも…、骨休めさせてもらいましたと頭を下げると、ちょっと話がおますんやけど…と切り出し、近いうちに大阪を離れて九州の方へ行こう思うてますんや。静子の里が小倉なんやと言う。

それを聞いていた静子も、この人に任せてますよって…、店は誰かにやってもらおうと思うのと国吉に言う。

黙って聞いていた国吉は、河岸を変えようか?と清元に言う。

その後、マンションに帰って来た静子は、ベッドに国吉が寝て待っている事に気付く。 あの人は?と聞くと、若いもんと一緒や、神戸の外人トルコへでも行ってるんだろう。

先だってまで毎晩こうやってたやないかと言いながら国吉が抱きついて来たので、お願い、今夜は帰ってと静子は頼む。

それを聞いた国吉は、やっぱり…、あんなチンピラとより戻さんと…と国吉は迫るが、もういっぺんあの人とやり直したいんや、堪忍して!と静子は嘆願する。 すると突然清元が帰って来て、兄貴、こら何の真似ですねん?と静かに聞く。

すると国吉は、われに話がある。

あれはわいの女や、あの店もこの部屋もわいが銭出したんや。知らなかったとでも言うのか?九州へは1人で行くんやなと言うので、8年間も勤めさせた上に女房も取るんだっか?帰っておくんなはれと清元は毅然と答える。

すると国吉は、わいもいい加減大人にならんと行きて行かれへんど…と言い残し帰って行く。 静子があんた、聞いて!と迫ると、もうええ…。女が8年も1人でやって来たんや…と清元は言う。 うちが一番愛してるのはあんた1人や!と言いながら、静子は清元に抱きつき泣き始める。

競艇場で、女を拾ったテツは、アパートで抱き始めるが、その途中、女が入り口の所に立って自分たちを見ている能代に気付き、あんた、痴漢や!と叫ぶ。 何やお前!と驚いたテツに、能代は、お前ら、犬ころやあるまいし、鍵くらいかけとかんか!とドアに鍵がかかっていなかった事を叱る。

金どこや?と能代が聞くと、出て行かんかい!とテツが飛びかかって来るが、あっさり殴りつけ、女と一緒に重ねて股がった能代は、ボートの爆破現場で見つけた赤ペンの書き込み入り競艇新聞を突きつけ、これはお前の字やろ!とテツに迫る。

清元は羽田の所に別れの挨拶に行く。

羽田は、この稼業も昔のような旨味はなくなった。何ぞ商売でも始める気か?しっかりやるんやなと言葉をかけ、清元が部屋から退出しようとしたとき、3人組の片割連れて来たんだと言いながら、能代がテツを連れてやって来たので、清元は唖然とする。

さすがプロやと羽田は感心すると、約束の金払うたれと子分に命じる。

テツも、部屋の中にいた清元に気付き、武司!と呼びかけて来たので、お前、何やったんや?とテツに詰め寄った清元は、こいつ、熊本で一緒の房に追ったんやと羽田に説明するが、武司、お前に関係ないこっちゃと言われる。

その会話を聞いていた能代は、お前が清元か?四課の能代や、あのころは阿倍野の巡査をやっとった。

人間分からんもんやな…とまじまじと清元の顔を見て話しかける。 その後、車で事務所を去った清元だったが、その後を杉谷が車で尾行する。

夜、とある事務所で手を縛られ、拷問されていたテツを、目出し帽をかぶった清元が事務所の外から狙撃しようと狙っていたが、そこに同じように目出し帽をかぶった男が乱入して来たので止める。

羽田組の子分達を殴りつけ、手を縛られていたテツを解放してやったその男は、武司助かったぜと感謝する満身創痍の鉄の身体を抱えて外の車に乗せるとどこへともなく走り去る。

その後を追おうとした清元だったが、物陰から銃を突きつけて、待て!こっちへ来いと捕まえた杉谷は、あの小僧を消そうとしていたんだな?親分や国吉の顔が見てえやと苦笑する。

金をパクったのはわいや、ぎょうさんボーナス出るで…と清元はあっさり自供する。

一方、助手席に乗せられ人気のない場所に連れて来られたテツは、覆面を脱いだ男から度の強い眼鏡をかけてもらい、ようやく助けてくれたのが清元ではない事に気付く。 億の金やったら、黙ってる手はないからな…わいと組まへんか?と話しかけて来たのは能代だった。

テツは車を飛び降り逃げ出す。 その頃、清元は、後部座席に乗った杉谷から銃を突きつけられた状態で車を運転し、盗んだ金の在処に案内させられていた。

わしをやる気で付けて来たんやろ?と清元が聞くと。兄貴の命令や、黙って運転しろ!と杉谷は言い、どこまで行くんだ?と聞く。

勘が鈍いで、札束の匂いしてきたやろ?と言って、人影のない場所で停まった清元は、車を降り、後部トランクを開けてみせる。

その中に大きなトランクが入っていたので、杉谷が近づいた時、突然殴りつけた清元は、発砲して来た杉谷から脱兎のごとく逃げ、近くの波止場に係留してあった小舟の中に紛れ込む。

杉谷も追って来るが、船室の影にから飛び出して来た清元は、杉谷を海へ投げ込んだ所を発砲する。

銃声を聞きつけた近くの漁民達が集まって来たので、清元はその場を逃げ出す。

その頃、熊吉の飲食店にたどり着いたテツは、閉まっていた戸を叩いて熊吉を呼び出すと、おっさん、バレてもうたんや、羽田組にバレたんやと告げる。

熊吉は、怪我をしている鉄の姿に驚きながらも、こっちも借金返してもう全部パーや!と金がない事を明かす。

するとテツは、武司のガキから奪うんや!と言い出し、熊吉の方も、このまま行くと一家心中せなあかん…と窮状を語る。

わいかて人くらい殺せるわい!と虚勢を張るが、そんなテツは能代に尾行され、近くから監視されていた事を知らなかった。

水中で撃たれた杉谷は、駆けつけた警察に救助され、担架で運ばれていた。

野次馬にまぎれその様子を見ていた清元は、杉谷がまだ生きており、かっと見開いた目で自分を確認して来た事を知る。

清元は静子のマンションに来ると、すぐに九州に発つぜ、支度せいやと声を掛けるが、その時電話が鳴り始め、怯えたように静子が、夕べからなりっぱなしなんですと言う。

清元が受話器を取ってみると、電話して来ていたのはテツで、明日12時、尼崎駅前の「モンパルナス」へ金を持って来い。5000万ずつで1億や、わいとおっさんの分と言うので、そんな事したらバレてしまうやないかと清元は言い聞かせようとするが、わいは12時きっかりに羽田組に電話するとテツが言うので、何もかもぶち壊しにする気か?と清元は呆れながら電話を切る。

あんた、まさか…、店で噂していたわてん、賭場荒らしとか…と静子が案ずるので、考え過ぎやと清元は否定する。

約束して!うちを1人きりにせんと!と静子が言うので、約束するがなと清元は答える。

翌日の12時、喫茶店「モンパルナス」の店内の窓際の席にテツと熊吉は座って、なかなか姿を見せない清元を待ちわびていた。

近くの公衆電話ボックスの中で、そんな2人の様子を能代が監視していた。

羽田に電話を入れた能代は、ガキを逃がしたそうですな?とテツの事を皮肉る。 あんたに任せる。被害額は全部で50億やと羽田が答えると、報酬は被害金額の20%1億でっせ、間違えんといてやと能代は要求する。

電話ボックスを出た能代は、近くの靴磨きに靴を磨かせ始める。

そこに車で乗り付けたのが清元で、それに気付いたテツが席を立とうとすると、テツ、弱み見せたらあかんで!と押さえる。

清元は声をかけて来た能代に気付くと、何してますのや?内緒に頼みますよなどととぼけ、能代の方もお互い様やと笑顔で答える。

能代と別れた清元は「モンパルナス」の店の前を素通りし、道ばたに立っていた見知らぬ女園田冴子(小泉洋子)に、待たしたな!と声をかけ、さも恋人のように近づくと、腹に拳銃を押し当て、ちょっとの間辛抱してやとささやき、一緒に乗って来た車に乗り込む。

あっけにとられたテツと熊吉は「モンパルナス」を飛び出すと、タクシーを停めてその後を追う。

ラブホテルの前に来た清元は冴子を連れホテルの一室に籠ると、窓から下の様子を監視し始める。

タクシーでその場所にやって来た熊吉とテツは、停まっていた清元の車のトランクを何とかこじ開けようとするが、同じく尾行して来た能代が、面白そうにその様子を観察していた。

ドライバーで鍵をこじ開け、トランクを開くのに成功したテツと熊吉は中に入っていたバッグを持って逃げ出す。

能代の姿に気付き慌てて逃げる途中、鞄を持った熊吉は細い路地から道路に飛び出し、やって来たトラックに轢かれてしまう。

バッグの蓋が開き、中から路上に散乱したのは、札束に似せた大きさに切った紙切れだったので、それを知ったテツは、やりやがったな!と逆上する。

その後、ホテルから出た清元は、近くの「秀鳳堂」と言う宝石店で、そんなものはもらえないと拒否する冴子に、無理矢理真珠のブローチを買って与える。

女と別れた清元は能代が近づいて来たので、わいもろくな事せんな、羽田から南畝で請け負うたんやと聞くと、20%や能代が言うので、わいがそれ以上出す言うたらどうするん?臭い飯でも年取りますのやと言い返すと、そのまま車に乗り込み清元は去って行く。

杉谷が死ぬ前に、お前が取ったと言うたんや。銭はどこや!お前ら腹合わせて組裏切ったな?静子来い!と、清元が戻っていたマンションに来た国吉が威嚇する。

そして、捕まえた静子をベランダに連れて行くと、飛び降りるんや!と言い出したので、恐怖に駆られた静子も、お金、どこやの?うちがバカやった、何でも言う事聞きますさかいお願い!と国吉に命乞いするが、清元は全く動こうともしなかった。

部屋の中に静子を戻した国吉は、見たか、このガキはわれの事虫けらとも思ってない。立てや!わいがいてもうたる!と清元を締め上げる。

すると清元は黙ってロッカーの鍵を差し出し、新大阪の地下やと言う。

その時、突然部屋に入って来たテツは、ナイフで国吉の腹を突いて来る。

何度も刺されて血まみれになった国吉を子分が外へ連れ出す。 驚いた清元はテツも部屋の外へ追出すと、静子、これでお別れや、気にせんで良い。裏切ったのはお前だけやない。

これは、他人名義の偽造パスポートやと取り出してみせる。 静子、夫婦も親子も信用できん。

信用できるのは自分だけやど。これがわいが8年間ムショで考えた土産や。達者でな…と言い残し、清元は部屋を後にする。

その後、テツが清元に近づき、あの小屋や!礼の金や!もういっぺんだけ面倒見たる。

おっさん、鞄持って死んだ。おっさんとわいの分や!1億や!このままやったら骨舎利になっても殺すど!と脅して来る。

新大阪の地下ロッカールームに来た清元は、トランクケースを取り出す。 すると、こんな所に隠しとったんか、チンピラに5億は重すぎる言うんやと言いながら近づいて来た能代が、清元をなぐってケースを奪い去って行く。 能代からトランクを受け取った羽田は、金を勘定し、3億3120万だった事を知ると、武司どないしたんや?けじめつけなあかん…と能代に聞く。

約束の20%もらいましょうか?と能代が要求すると、金額が足りんやないか?ぽっぽしてるやろ?と国吉が睨んで来て、羽田も芥川らから受け取った目を燃さしだしてみせ、4億8000万あったはずや、残りの1億5000万持って来るんや!と言うので、能代が拳銃を取り出すと、おのれ嘗めとんのか?今度撃ったら免職やろ?われ、今日首になったそうやど。サツの鎧脱いだら、町ん中、まともに歩けんぞと羽田は脅して来る。

そう云う事やったんか…と事情を察した能代は、いずれ女房とスナックでも開いたら宜しゅう頼みますと挨拶し、帰って行く。

マンションに戻って来ると、下着姿の洋子が、お客さんやし…、あんたかっこ良い友達持ってるやないのなどと言い、待っていたのは清元だった。

金を取り戻しに来たなら返せん、3億皆行かれてもうたと能代が言うと、そら良かった、わいにとったらおあつらえや、あんた、泣き寝入りする気ないやろ?あんたと一緒やったら自信あるんやと清元は言い出す。 文明はん、あんた、果報者やな、罪は全部俺がかぶったるとまで清元は言う。

その頃、羽田は、草の根分けて探し出した8000万や!と芥川らに金を返し、帰ってもらっていた。

そこへ、清元が来ましたでと子分が知らせに来たので、どんな詫び入れるか見てみようやないかと羽田は言い、部屋に通す。

清元が入って来ると、何しに来よったんや?生きて帰れるとでも思ったら大間違いやど!と羽田は怒鳴りつけるが、清元はどこ吹く風と言った態で、ガラス戸のカーテンを引き開ける。

ビルの向こうには通天閣が間近に見えていた。

すると清元は机の上に置いてあった札束をビニール袋に詰め始めたので、われ、何しとるんや?ええかげんにせんか!と羽田達は唖然としながら怒鳴りつけるが、これはわいの金やと清元は言うだけで、金を積める作業はやめなかった。

その時、窓ガラスに穴が空き、側に立っていた子分が倒れてる。

今度は親分はんの番やと清元が言うので、向かいの通天閣の上から誰かが狙撃している事に気付く。

猟銃を構えて部屋を狙っていたのは能代だった。

親分はんたちみんな、ベランダに出てくれなはれと銃を取り出して清元が命じる。

やむなく、羽田達がベランダに出ると、ちょっとの間、眠ててもらいまひょかと言い、銃尻で羽田らの後頭部を殴りつける清元。

全員気ぜつすると、青いビニール袋数個に金を詰め終えた清元は非常階段の所から下にビニール袋を落とす。

そのビニール袋は、下に停めていたジープの後部座席に落下する。

清元は通天閣で銃を構えていた能代に手を振って合図をすると、自分はビルを降り、能代も乗り込んで来たジープに乗って逃走する。

ジープがやって来たのは隠れ家として確保していたあの小屋だった。

小屋の前にジープを停めた清元は、3億の半分で1億5000万、ここまで来たら、買った方が1人占めと言うのはどや?今日の殺し知っとるのはわいだけやと言いながら拳銃を能代に向ける。

わいはやっぱり負けや…と言いながらジープから降りる振りをした能代も撃って来て、2人は撃ち合いを始める。

その時、小屋の中から飛び出して来たテツが火炎瓶を投げてきながら、金を積んだままのジープに乗り込み逃走しようとする。

能代が運転しているテツを背中から撃ち殺し、ジープは小屋にぶつかって行く。

停まったジープに近づいた能代は、運転席で死んだテツがしがみついていたビニール袋を引きはがしながら、可哀想な奴や、あんなえげつない奴とつきおうたばかりに…とテツに同情する。

そこに、車に乗った清元が突っ込んで来たので、慌てて能代は発砲するが、あえなく車にはねられてしまう。

車を降りて来た清元に、倒れていた能代は、おい清元!さすがに俺もお前には負けたわい…、女房に伝えてくれ、わしは遠いたびに出たとな…と言い終わると、能代は静かに目をつぶる。

ジープからビニール袋に入った金を車に移し逃走する清元。

すると、死んだと思っていた能代が、ほんまに腹立つ男や…、しかしこれでマンション買う金もでけたし…と言いながら起き上げると、腹の下に隠していた青いビニール袋が一つ見える。

空港に着いた清元は、スーツに着替え、金の入ったバッグを無事通過させ、出発便に乗り込もうとパスポートを取り出していた。

その時、応対した空港職員がいつか利用した園田冴子だと気付いた清元は、冴子が警備員に駆け寄り、清元の正体を明かす幻影を見て思わず胸元から拳銃を取り出そうとする。

しかし、冴子は胸元の真珠のブローチを見せて嬉しそうにしただけだったので、そのまま銃は空港のゴミ箱の中に投げ捨て、清元は無事ゲートを潜って行く。

刑法250条事項の条文が出る。


 


 

 

inserted by FC2 system