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腰抜け女兵騒動

添え物風の低予算戦争風刺コメディ

冒頭のタイトルバックは何か別作品の流用なのか、派手な爆発を多用した大作風戦闘シーンなのだが、本編が始まると安っぽいセット中心になり、メインの俳優以外は馴染みのない俳優ばかりで、いかにも低予算である事が分かる。

内容も、コメディというには笑いどころの少ない凡作なのだが、ハナ肇、渥美清、桂小金治のトリオという組み合せは珍しい。

中でも、主人公役のハナさん演じる頓田と言う二等兵が生真面目一本槍と言う固いキャラ設定になっている上に、戦争の空しさを描くありがちなメッセージ性が混入した風刺劇のようになっているため、ナンセンスとして徹底もしておらず、笑いも弾けない。

ハナさんと小金治さんはどちらもギャグや動作で笑わすようなコメディアンタイプではないし、唯一のコメディアン演技が出来る渥美さんが案外目立っていないのが寂しい。

当時の渥美さんのポジションとしてはこれが精一杯の使い方だったのかも知れない。

物語の前半部分で登場した中国人女性は中国語をしゃべっているのに、途中から登場する女兵部隊のシーンになると、前半に登場したキャラだけではなく中国人女性達全員が日本語を普通にしゃべっているのがミソで、これがオチに繋がっている。

女兵部隊のアイデアは女護島伝説など男が一度は憧れそうなファンタジー設定なのだが、当時の映画表現の制限を考えればあまりハチャメチャな事も出来ず、コメディ設定としては限界があったように感じるし、風刺劇としても凡庸な印象だった。

筋立て的にも、途中に登場する頭を丸めた3人の女兵の説明がされないままなのもすっきりしない。

ちなみにキネ旬データのキャスト欄で渥美清さんの役名と桂小金治さんの役名は逆になっていると思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、東京映画、有吉光吉原作、目黒専吉+梶孝三脚色、佐伯幸三監督作品。

南支那での激しい戦闘シーンを背景にタイトル キャスト、スタッフロール

累々と死体が転がった塹壕の中から、死体を押しのけて顔を出したのは、松浦二等兵(渥美清)。

その直後、同じ塹壕の横から顔を出した三木本二等兵(桂小金治)は、生き残っていた松浦と、みんなやられちまった!と嘆きながら抱き合い、その場から逃げ出そうとするが、その時、さらに同じ塹壕から出て来たのは頓田二等兵(ハナ肇)だった。

全滅した木村班で生き残った3人は、一昼夜歩きづめで腹をすかしていたが、1日先輩だと言う頓田が、自分が今から木村班の指揮を執ると言い出す。

その時、松浦が何かを隠すような真似をしたので、お前、内地のゴロの癖で掏りやがったな!と頓田が睨む。

松浦が頓田から掏ったのは、赤ん坊用の粉ミルクの缶詰だったのでがっかりするが、その時、頓田が、あそこに灯りが見えると言い出し、その家から腹をすかせた赤ん坊の泣き声が聞こえて来る。

家の中を覗いてみると赤ん坊を抱いた女、桂花(北あけみ)がおり、3人を見ると出て行ってくださいと中国語で言って来たので、中国語がわかる松浦に意味を聞くと、ようこそいらっしゃいましたと言っていると言う。

さらに、お前達は鬼だ!と桂花が言うのを訳させると、私は日本人が好きだ、勇敢に戦っているからなどと松浦が訳すので、桂花の怯えた表情とのギャップに頓田は松浦の理解力を怪しむ。

とにかく粉ミルクの缶を開け、自分たちで飲もうとした松浦や三本木だったが、一緒に粉ミルクを飯ごうで溶かしていた頓田は、俺は嫌だ、赤ん坊にやると言い出し、赤ん坊を抱いた桂花に近づき渡そうとするが、桂花が、余計な事をしないでと言って睨むので、毒が入っていると思っているんだな?と察した頓田は、スプーンで一口自分で飲んでみせる。

それでも桂花はその飯ごうを振り払おうとしたので、何をするんだ!子供に何か罪があるんだ!と怒った頓田は、強引にミルクを赤ん坊に飲ませる。

夜中、ふと居眠りから冷めた桂花は、赤ん坊がおらず、外から子守唄が聞こえて来たので覗いてみると、頓田が赤ん坊をあやしながら歌っているのが見える。

頓田は歌の途中から同じ子守唄を歌う女の声が聞こえて来たので、驚いて振り返ると、そこに桂花が立って歌っていたので、あんた日本語話せるのか?と聞くと、好きな人が日本人でしたと言う。

でも母と姉が殺されたので、日本人の中にも良い人もいる事は知ってるけど、戦争の時は中国人として戦うと桂花は言う。 頓田も、自分も戦う時は日本のために戦うと答えると、どうして憎しみもないもの同士が戦うのでしょう?と桂花は問いかける。

南支那戦線 枝本分遣隊司令部 3人が翌日たどり着いた舞台では、多くの兵隊達から歓迎されていたが、そこに枝本少尉(安達国晴)がやって来る。

代表して頓田が、自分たちが所属していた木村部隊が全滅して3人だけが生き残ったと申告する。

良く分かった。しばらくこの舞台でぶらぶらしていろとねぎらった枝本隊長は、植村兵曹(植木等)に3人の面倒を見てやるように言いつけ、大田黒師団長が巡察に来るので注意するようにと付け加える。

隊長が去ったので、ここには新兵はいないのか?と三木本が聞くと、ここにいるのは全員新兵さ、7年間誰も来ないんだと犬山兵長(犬塚弘)が答える。

その後、荷車に藁を積み込む仕事をさせられる事になった3人だったが、女の声が聞こえたので、何事かと周囲を見回すと、中国人の娘が何か言いながら近づいて来る。

その娘が指差す納屋の中を見ると、もう1人の中国人娘が日本兵に襲われていたので頓田が助けに入ると、逆に日本兵に殴られてしまう。

頓田は、中で襲われていた娘と外で助けを求めた娘が同じ顔だったので最初は戸惑うが、やがて双子だと気づく、ソーラン(伊藤エミ)とシンシュー(伊藤ユミ)と言う双子に松浦は興味を持ちちょっかいをかけようとするが、真面目な頓田に急かされ仕事に戻る。

夕方、ドラム缶風呂に入った植村兵曹、桜井兵長(桜井センリ)、犬山兵長らの世話をしていた頓田は、自分はもともと三助が仕事で、芸者町で生まれましたなどと思い出を語っていたが、そのとき突然、敵襲!の声がかかる。

ドラム缶に入った3人も慌てて飛び出すが、植村だけドラム缶を倒してしまったため出遅れ、着替えの途中で整列するしかなかった。

それは実は訓練で、整列した部隊員たちの服装チェックなどを終えた大田黒師団長が、全体に士気が弛緩しておる!と叱責すると、木村班の生き残りが3名、当隊に収容しているとの枝本隊長の話を聞き、松浦二等兵に前に来て、軍靴が逆じゃないか!と叱責したり、服装チェックで問題なかったような植村兵曹の前に来て、ベルトに挟んでいただけのズボンをはぎ取ると、その下のステテコ姿が露になる。

その後、大田黒師団長は枝本隊長ら上官達と作戦室で話し合い、全滅したと報告した木村班の生き残りがいては困る。

軍の権威に関わるなどと言い出す。 そして、南幣廟に女兵が出ると聞いた大田黒は、3人を偵察に行かせろ、それで戦死するだろうと命じる。

山田班長はその理不尽な命令に心の中で葛藤しながらも、頓田たち3人に南平廟付近のゲリラを偵察して来い、出発は23時までにと命じる。

大田黒は、これであの3人も名誉の戦死と言う事になる…と作戦室で満足げに言う。

翌日、夜出発した頓田、三木本、松浦の3人が帰って来ないので、戦死したと判断した枝木隊長達は、帝国軍人として哀悼の意を表すると部隊員達と共に黙祷を捧げさせていたが、そんな列に参加した頓田が、誰か亡くなったんですか?と隣の植村に聞くと、頓田たちだよと答えた植村は、本人が横にいるのに気づき気を失いそうになる。

それでも彼ら3人が無事だったと知った部隊員達は喜んでくれる。

枝木隊長は面目を失い、予行演習終わり!と言って立ち去る。

作戦室に戻った枝木、大田黒、木村たちは、敵のゲリラはナイフや火を投げ込んで来るらしいなどと話し合っていたが、その時、突然扉が開き、背中にナイフが刺さった兵士が倒れ込んで来る。

近いうちに攻撃して来る警告と気づいた枝木隊長らは、又あの3人に偵察に向かわせる事にする。

二度も任務を命じられた3人を気の毒に思った部隊員たちは、植村曹長と桜井兵長が頓田のひげ剃りをしてやったり、犬山兵長と安井伍長(安田伸)が松浦の靴を磨いてやったり、谷本伍長(谷啓)が、去年の紀元節から取っていたと言う飲み残しの日本酒を二木本に振る舞うなどサービスをしてやる。

しかし、飲み残しの日本酒を飲んだ二木本は、酢になっていたので飲めなかった。 そこに週番兵がやって来て、3人に明朝2時に出発せよと命じる。

寝床に入った頓田はなかなか寝付けないでいた。 分遣隊を出発した3人は、湖の側で、泳ぐため、軍服を脱いでいた中国の女兵を見かける。

帽子を取った3人の女兵たちは何故か全員坊主頭だったので、何か懲罰でも受けたのだろうか?と不思議がるが、いよいよ敵中突破だ!と言った頓田の言葉をきっかけに、彼女らが全員水に入った隙に草の間から3人の軍服を頂いてしまう。

中国の女兵部隊では、拳法やプロレスのような体技の練習中だった。 女兵副隊長芳蓮(春川ますみ)と共に、訓練の現場にやって来た女兵大隊長春麓(野村昭子)は、女である事を捨ててしっかり練習するように!と檄を飛ばす。

そこに連れて来られたのが女兵用の軍服を着た頓田たち3人で、教育所から来た陳、孟、梁の3人です!と眼鏡の班長が報告する。

陳は誰だ?と春麓から聞かれた3人は慌てて3人とも自分だと答えてしまうが、結局、頓田が陳、三木本が孟、松浦が梁と言う名である事にする。

教習所にはどのくらいいた?と聞かれた頓田が2年でありますと答えると、あそこは3ヶ月じゃないのか?と春麓は不思議がるが、それだけ丁寧に訓練されたのですと頓田はごまかす。

とりあえず腕を見せてみろと言われた松浦は、卿は過激な運動が出来ない日なんですなどと言ってごまかそうとするが、結局、上着を脱がされ、女兵とプロレスをさせられるはめに陥る。 二木本も同じようにプロレスをやらされ、強い女兵に胴締めをされる。

その内、松浦のかぶっていたカツラが前後ろ逆になって、前が見えないなどと松浦が言い出したので、隣にいた二木本が、慌てて鬘を回してやる。

そこに見物にやって来た女兵を見て頓田たちは驚く。 桂花だったからだ。 練習は中断され、陳、孟、梁、前へ!第三部隊集合!と集められると、ただいまより入浴すると命じられる。

逃げるなら今だ!と松浦などが言い出すが、何か見方に役立つ情報を探すんだ!と真面目な頓田が言い出し、別方向へ動き出すが、すぐに眼鏡の班長に見つかり、そのまま浴室の前に連れて行かれる。

すると、誰か1人、炊事当番に回してくださいと言われたので、松浦がその任に回される。

上着を脱ぎなさいと命じられた頓田と三木本は、何とか風呂に入らずにすまそうとするが、逃げるに逃げられず、結局ぐずぐずして、最後に2人だけで入浴する事になる。

2人はふんどし姿で湯船に飛び込むが、そこに入って来たのが芳蓮だった。 芳蓮は入浴後、いつまでも湯船を出ない2人を不思議がるが先に出て行く。

湯船から出るに出られず入りっぱなしだった頓田と二木本はすっかりのぼせてしまう。

その夜、3人の分の寝具が届いてないので、3人は誰かと一緒に寝かせてくださいと命じられる。

3人はどぎまぎするが、別々の女兵達と同衾する事になる。

夜、松浦の隣で寝ていた女が、良いもの見せてあげるよと言いながら一枚の写真を渡して来たので期待してみたら、男のパンツ姿だったのでがっかりする。

大した事ないじゃないの…、あたし男の人大嫌い、女の人大好き!などと松浦が答えていると、見張り番の芳蓮が写真に気づき、取り上げると、たるんでる証拠よ!と叱って、隊長室へ持って行く。

春麓大隊長に写真を見せた芳蓮は、隊長からご注意願いますと申告する。

頓田はプロレスが巧い女と一緒に寝ていたので、寝ている女が無意識に頓田の腕をひねったりするので、寝るに寝れなかった。

二木本もベッドから突き落とされていた。 どこかで胡弓を弾く音色が聞こえて来る。 まだ眠れないの?夫の事思い出してさ…と隣に寝ていた女から声をかけられた頓田は、女の夫が戦死したと聞かされる。

勇敢な人だったが、私には優しかった…と夫の事を話す女は、あの人にあったのもこんな夜だった。

あの人も胡弓が巧くてね…、そうだわ、ちょうどあんたを男にしたみたいな人だった… たまんないわ!どうしたのかしら?胸がこんなにドキドキして、まるであの人と新婚旅行した時のよう…と言いながら、隣で寝ていた女が頓田にしがみついて来る。

翌朝、頓田たち3人は、ひげ剃りをこっそりやっていた。

懲罰房の2人、ソーランとシンシューだけどばれないかな?などと三木本が案じていると、眼鏡の班長が、何してるの!あんたたち!とやって来る。

その直後集合がかけられる。 その後、身体検査をすると言うので、軍医殿は女でありますか?と頓田が聞くとそうだと言う。

陳、孟、梁からと言われたので、やむなく検査部屋に入った3人だったが、服を脱いで!ズボンも脱がなきゃダメじゃないの!全部脱ぐんですよ!と言われたので、やむなくズボンも脱ぎかけるが、女医(山本イサ子)が悲鳴を上げたので、これ以上は無理と判断し部屋を逃げ出す。

あの3人は男です!と女医が言いながら気絶したので、女兵達は全員3人を追い始めるが、3人は、ちょうど下着姿で風呂掃除をしていた浴室に紛れ込み、手伝う振りをする。

しかし、すぐに見つかり、スパイだ!男だぞ!と女兵がなだれ込んで来たので、外に飛び出した3人と大乱闘が始まる。

ソーランとシンシューは、見た事あると思ったけど、やっぱりあの人達だったのね!と気づく。 頓田たち3人は洞窟の中に逃げ込み、追っ手が来ないので安心するが、実はそこは営巣で、入り口もすぐに閉じられてしまう。

後で調べるからねと春麓大隊長に言われた二木本たちは、こんな所へ入れやがって!猿じゃないぞ!と檻にしがみついて喚く。

そんな中、芳蓮副隊長だけは、どうしよう…、男とも知らないで風呂には言い足りして…と思い悩んでいた。

春麓大隊長の部屋に連れて来られた松浦は、何の目的でここへ来たと問われ、深い訳があります。国のために働きたいと思っていたんですが、志願で撥ねられてしまうんですと言い訳する。

それを聞いた春麓は、なるほど…、動機は愛国心からだと分かったが、やり方が間違っている。

国へ帰って銃後を守ってくださいと言い聞かせる。 その時、眼鏡の班長が、日本の兵隊に服を取られたと言う女兵を連れてきましたと報告に来る。

それは湖で軍服を盗んだ坊主頭の3人だった。

あの人達が盗ったんです!と頓田たちを指差したので、やはり敵のスパイだったんだな、裁判を行う!と言い出す。 その後、頓田たち3人を裁く軍事裁判が部隊内で始まる。

検察側に座ったのは桂花だったので、頓田たちは驚く。

一方、弁護人の方は頼りなさそうな女医だった。 まず桂花が、頓田たち3人をスパイ容疑で起訴致しますと述べると、三木本が立ち上がり、我々は思いも知らずふらふらっと入って来たのですと発言し、弁護人も、彼らは無邪気な異性への好奇心から入って来たものですと言ってくれたので、調子に乗った三木本は、私は世界中の女を知っていますが、ここにいる女性達ほど美しい女性を見た事がありませんなどとお世辞を言う。

それを聞いていた裁判官役の春麓や傍聴人役の女兵もうれしがる。 弁護人は、単なる捕虜として扱うべきと主張し、証人の出廷を求める。

証人として呼ばれたのは、夕べ頓田たちとそれぞれ一緒にベッドで寝た女兵達3人だった。 弁護人が、夕べこの3人は軍事について聞き出そうとしましたか?と聞くと、3人の証人達は全員否定する。

今度は反対尋問として検事役の桂花が証人の前に立ち、何か怪しげな振る舞いに及びませんでしたか?と聞くと、全員、指一本触れませんでしたと否定するが、頓田と同衾した女兵だけが、抱きつきましたと言い出したので、春麓たちの表情は険しくなる。

しかし、女兵が言うには、抱きついたのは自分で、戦死した夫に似ていたので…と言い直し、彼は意志のように固くなって何もしませんでしたと頓田の事をかばう。

それから?と桂花が問いつめても、それだけですわと女兵が言うので、ありがとう…と答え反対尋問を終える。

しかし、検事席に戻った桂花は、女に指一本触れない男がいるでしょうか?男達には何か大きな目的があったとしか考えられません。すなわちスパイです!と桂花は断罪する。

その時、止めてください!と立ち上がった頓田は、いかにも私たちはスパイです。遠慮なく死刑にしてください。大日本帝国軍人として任務遂行できなかった事が無念ですと訴える。

裁判長役の春麓大隊長は、判決!死刑とする!処刑は明朝10時!と頓田たち3人に言い渡す。

営巣に戻された3人は、いよいよ死刑だな…とため息をつくが、頓田は、桂花さん、何故?と呟いていた。

その時、松浦が自分の身体に付いたのみをマッチ箱に入れていたので、それを知った三木本は、そのマッチ箱を、営巣の前で居眠りを始めていた見張り役の足下へ放り投げる。

するとすぐに見張りの女兵は身体をかき出し、その場を立ち去って行ったので、松浦がピンを使って牢の鍵を一瞬に開けてみせる。

しかし、3人が牢から出ようとすると、すぐに駆けつけた女兵たちの銃が突きつけられる。

翌朝、部隊内に首つり処刑台が用意される。 春麓大隊長の部屋にやって来たソーラン、シンシューは、夕べ寝ずに考えたんです、あの3人を助けてください!と訴える。

その頃、処刑場に連れて来られた頓田たち3人は、処刑の手順の稽古を始めていた。

隊長室では、芳蓮副隊長が、そろそろ死刑執行の時間ですと春麓大隊長に伝えていたが、そこにやって来た桂花が、死刑は注視してください、訳があるんですと言い出す。

処刑場で、何か言い残したい事はあるか?と眼鏡の班長から言われた三木本は、冷やで好いから1杯やりてえよ!と叫び、松浦は、母ちゃん!さようなら!と叫び、頓田は、大日本帝国万歳!と叫ぶ。

そこにやって来た春麓大隊長は、死刑は中止する!その代わり、我が軍に付く事、3日後の軍旗祭までに決定する事!と3人に言い渡す。

その後、三木本と松浦の所に来たソーランとシンシューは、どう?決心付きました?私たちの軍に協力してくれますか?と聞き、三木本と松浦は協力するよと答える。

一方、頓田と2人きりになった桂花は、いよいよ明日ね…、言う事聞いてくれませんか?いつかは平和が来ます。

戦争が終わるまで生きましょうと訴えるが、頓田は、私はあなたの事を夢に見るほど好きです。でもこれは別ですと拒否する。 翌日、部隊内では軍旗祭の余興が始まる。

まずは舞台に立ったソーランとシンシューが「夜来香」を歌う。 そんな中、三木本は、戦争がいけないんだよとつぶやき、頓田の奴…と松浦が案じるので、俺も心配してるんだと頑なまままだ営巣に入れられていた頓田の事を言う。

その時、その頓田が入った営巣に入って来たのは酒に酔っているらしい芳蓮副隊長だった。

部隊には、奥地からやって来た楽団狂乱(クレージーキャッツ)の演奏が始まっていた。

一曲終えたドラマー(ハナ肇)は、次は戦意高揚のために音楽を…と言い、日本の軍歌メロディを始めたので、何気なく聞いていた春麓大隊長も、こら!止めんか!と制止し、観客達も騒ぎだす。

するとドラマーは、皆さんお静かに!皆さんの今のような怒りを戦意高揚に繋げてくださいと説明する。

頓田の側に来た芳蓮は、頓田!私軍人よ、でもその前に女よ!頓田、お願い!抱いて!と言いながら抱きついて来る。

頓田はそんな芳蓮をはね飛ばし、鍵が開いていた牢から抜け出す。

芳蓮は、頓田!と呼びかけるがその場に気絶してしまう。 隊長室にやって来た頓田は、引き出しの中を探し、男のパンツ写真を見て呆れるが、重要書類らしきものを見つける。

みんなと一緒にダンスをしていた春麓大隊長の元に駆けつけて来た眼鏡の班長が、頓田が!と言うと、浮かれていた春麓は、頓田が飛んだ!などとだじゃれで返す。 しかし、頓田が逃げました!と聞くと、バカ!と叱りつける。

頓田は、迫って来た桂花から、戦争のない国へ行きましょうと迫られ思わず抱き合う。

しかし、その書類を返してください。さもないと撃ちますと銃口を向けられると、頓田は書類を持ったまま逃げようとする。

桂花はやむなく発砲し、頓田は肩を射抜かれその場に倒れる。

頓田さん! 頓田は悪夢から目覚める。

まだ、偵察へ向かう直前の夜だったのだ。

夢だったのか…、いつかは平和が来ます…と言っていた桂花のことが思い出される。

その直後、3人は起こされ、偵察に出発する。 司令部では、敵軍は転進したそうでありますと通信兵が大田黒に告げる。

それを聞いた枝本隊長らは、あの3人は無駄でしたな…とため息をつき、我々も無駄なのかも…と自嘲気味になるが、その時、突然、敵襲!の声が響き渡る。

偵察に出ていた頓田たちは、爆発音に気づき、あの方向は俺たちの部隊じゃないかと気づく。

引き返そう!と頓田は言うが、俺たちは助かったんだ、運が良いんだよと三木本が諌める。 しかし真面目一徹の頓田が勇猛果敢に!などと言うので、確かにそう教わったけど…、行きゃ好いんだろうとヤケになったように三木本達も頓田に同行して部隊に戻る事にする。

戻ってみると、予想通り部隊は全滅しており、通信機の呼び鈴だけがむなしく鳴り響いていた。

枝本分遣隊32名の墓を作った3人は捧げ筒をする。 そんな3人の側を、中国人の避難民が通り過ぎて行く。

可哀想に…と頓田は同情するが、俺たちと同じだよ、俺たちどうするんだ?と三木本が聞く。

その時、避難民の中に混じって移動する桂花を発見した頓田は、桂花さん、僕です!忘れたんですか?と喜んで側に寄り話しかけるが、桂花は気づかないように振り向いて笑う。

その笑顔の相手が、中国人の若者と気づいた頓田は愕然として立ち尽くす。

恋人らしき青年と一緒に立ち去った桂花を見送った三木本は、お前の夢、行っちゃったじゃないかと頓田に話しかける。

がっくりした頓田に、行こう!お前のために!と松浦が勇気づけるように声をかけたので、木を撮り直した頓田は、前へ進め!と号令をかけ、3人は並んで行進を始める。

避難民の通る道には、「1945年8月15日 日本は降伏しました」と書かれた宣伝ビラが舞っていた。


 


 

 

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