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機動捜査班 秘密会員章

シリーズ3作目の作品らしいが、またもやメインの設定が変わっている。

前作まで伊藤刑事部長の相棒の大宮刑事役として主役だったはずの青山恭二さんが、本作では木村刑事と言う別キャラクターになっているだけではなく、大宮刑事役は上野山功一さんが演じており、両者とも冒頭から同僚として登場するので、見ている方は混乱してしまう。

今回は木村刑事が主役のように登場シーンが多いので、今まで主役として活躍して来た青山さんをそのままシフトさせることで、シリーズ作品として見ている観客としては、青山さんが今回は悪側になびくのか?と心理的に迷うことを想定したトリックだったのかも知れない。

さらに、その木村刑事には妹がいると言う設定になっており、その妹を演じているのがキャストロールで(新人)表記がある松原智恵子さんで、悪役側には草薙幸二郎さんと天草四郎さんが新たに加わっている。

その他の悪役にはシリーズの常連さんが起用されている。

伊東部長刑事は相変わらず影が薄い存在で、この段階で既に初期の相棒ものと言う印象は希薄になっている。

シリーズ初期の試行錯誤段階だったと言うことかも知れない。

ストーリー自体は良くある2つの組同士の抗争で、そこにこのシリーズお馴染みの「潜入捜査要素」が今回も絡んでいる。

最後のネタばらしを聞いてしまうと、途中の木村刑事の悩む様子や最後の辞表などは観客を騙すためと言うしかなく、他にも、警察手帳を見せただけで単独行動をしている男の事を、警察の事情に詳しいはずのヤクザが気付かないと言う点なども奇妙で、色々不自然に感じる部分がないではないが、当時の通俗もの、添え物的な映画としては許される範囲の描写だったのかも知れない。

香月美奈子さん演じる悪役の情婦役の心理と行動が、全体を通して見所として描かれている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、日活、長谷川公之+宮田達男脚本、小杉勇監督作品。

クラブ「コンガ」では、踊子4人のショーが行われていた。

そこにやって来たグループの1人が、中央で踊っていた踊子の身体をちょっと触り、店の奥の方へと向かう。

ボーイが近づいて来ると、いきなりその客はボーイを殴り飛ばし、拳銃を取り出すと、ミラーボールを撃って破壊する。

「コンガ」を仕切っている組の者がなだれ込んで来て、フロア内で大喧嘩が始まる。

警視13号!クラブ「コンガ」で乱闘騒ぎとの連絡があったとの無線を聞いた大宮刑事(上野山功一)は、良し行こう!急いで!と覆面パトカーの運転手に声をかける。

タイトル

本庁四課の機動捜査班がクラブ「コンガ」にやって来て、逃げ去った客について怪我をしたボーイから心当たりがないか聞く。

ボーイは、殴られた顎を冷やしながら、あれは青山の暴れん坊ですねと答える。

そんな中、木村刑事(青山恭二)は、「K」のイニシャルの入った襟章が落ちているのを見つけ拾い上げる。

そこに顔を出した支配人の城山 近藤宏)は、酔ったお客さんが暴れただけですよ。

こういう商売では良くある事です。この通り大した事はないですからお引き取りくださいと慇懃無礼に伊藤部長刑事(宮崎準)に頼む。

そんな伊藤に木村が近づいて来て、デカ長、こんなものが…と拾った襟章を見せる。

四課では、戻って来た刑事達からの話を聞いた遠山係長(長尾敏之助)が、暴れたのは青山の岡部組か?と当たりを付ける。

転任して来たばかりの木村に説明するように、岡部組も赤坂に「レッドキャット」と言うクラブを持っているんだと教えると、客の奪い合いですか?と木村も勘を働かす。

そんな木村に遠山係長は、明日は金子先輩と組んで「コンボ」の監視をやってくれと命じる。

その日の仕事が終わり、木村や伊藤と一緒本庁を出て来た大宮は、反対方向へ帰る伊藤に、デカ長!これから一杯やるんですか?と声を掛けるが、バカいえ、明日は忙しいんだ!と言う伊藤の声が返って来る。

さらに大宮は一緒にいた木村に、明日引越だったな?手伝いに行くよと言うと、すまないねえ、先輩と木村は笑いかける。

翌日、社宅に引っ越して来た木村の荷物を下ろす手伝いをしていた大宮は、木村が趣味で作っているアンプの重さに文句を言うが、その方が音が良いんだと木村は音響オタクらしい答えをする。

そこに、お兄さん、大宮さん、お茶にしましょうと声をかけて来たのは木村の妹和子(松原智恵子)だった。

翌日、金子部長刑事(花村典昌)と木村は客を装い、クラブ「コンゴ」のカウンターで店内を監視しながら飲んでいた。

そこへやって来たのはあごひげの夫とその妻らしき外国人夫婦で、夫の方がスーツの襟章をボーイに見せると、奥の部屋の前に案内される。

その時、木村刑事が近くの女客を誘いフロアで踊りながら、外国人夫婦の動きを近くで見る。

奥の部屋から出て来た別の外国人ボーイが、夫の連れを誰?と聞くと、妻だと言うので、2人一緒に扉の中に招き入れられる。

それを確認し滝村は金子に耳打ちし、金子刑事は大宮が拾ったあの襟章を急いでスーツの襟につけ、木村と共に奥の扉の前へ行く。

するとまた外国人のボーイが出て来て、メンバーオンリーと断ろうとしたので、金子が襟章を見せると、あなたはOKだけど、こちらは?と聞いて来たので、ブラザーと金子は嘘を答える。

結局、2人とも中に入れてもらえたが、奥の部屋はルーレット賭博場になっていた。

木村達に気付いた城山が、リエ(香月美奈子)にあの2人と目配せしたので、木村に近づいたリエは、何かお飲物でもお作りしましょうか?と声をかける。

金子は本部の遠山係長に賭博場を見つけた事を外に出て電話で連絡、遠山係長は、保安課と手入れしようと答える。

その頃、まだ賭博場内にいた木村に、悪い事は言わないからお帰りになっててん、あなた刑事さんでしょう?とリエがささやきかけていた。 そこへ近づいて来た城山支配人が、恐れ入りますが、ちょっとあちらへと木村を誘いに来たので、その後をついていくと、老蛾に出た所で待ち伏せていた子分から後頭部を殴られ昏倒する。

外で待っていた金子刑事と共に、駆けつけた機動捜査班と保安課の一行が店の中になだれ込み、奥の賭博場へと押し入るが、そこは既にもぬけの殻で、客もルーレット台もなくなっていた。

金子刑事はしまった!感づかれた!と叫ぶと、そこにいた外国人ボーイにどうした、マイブラザー?と詰め寄るが、そこへふらふらした木村が物陰から倒れ込んで来る。

自宅で氷嚢を頭に乗せ、妹に看病してもらっていた木村に、見舞いに来た大宮刑事は、あそこでルーレットをしていた事は保安課も前から感づいていたが今まで証拠がなかったらしいと教える。

俺…、殴られて気を失った時に…と何事か木村は言い出すが、すぐに、いや、何でもない…、心配させてすまんなと大宮に詫びる。 そんな木村の枕元で頭を冷やす手拭いを絞っていた和子は、お兄さん、元気出してねと励ます。

翌日、木村が出勤して来た四課では、かかって来た電話に出た大宮刑事が、木村、電話だ、お安くないぜなどと軽口を叩きながら受話器を渡す。

それを受け取った木村は、相手の声を聞くと、一体あんたは!と驚き、場所は?六本木?と確認する。

路面電車が走る六本木にやって来た木村は、指定されたレストラン「ブルー」に入ると、受付嬢にリエさんと言う人がいない?と聞くと、受付係はママさんにお客様ですと奥へ声をかける。

近づいて来たリエは、お待ちしておりましたわと木村に声を掛けると、どうぞと地下への階段を下りる。

そんな木村とリエの様子を、客に混じって見守っていたのは、「コンゴ」の城山支配人と太田(河野弘)だった。

良くも夕べは…と木村が睨むと、だからご注意申し上げたでしょう?と答えたリエは、私の役目はここへ連れて来るまで、後は社長と話してください、クラブ「コンガ」のね…とリエは告げる。

地下室の奥から姿を現したのは、赤坂のクラブ「コンガ」の社長雲井(嵯峨善兵)だった。

木村は良くも大切なものを…、良くもやりやがったな!と雲井に飛びつくと首を絞めようとする。

刑事さん、気を落ち着けて!とリエがなだめると、ようやく木村は手を放す。

そんな木村の狼狽振りを面白がるように、雲井は木村の警察手帳と拳銃を取り出し、これを返すには条件がある。

あのバッジですよと襟章の事を言い、そっと返してもらいたいと言うので、無理を言うな、あれは四課の証拠保管庫の中に厳重にしまってあると木村は断る。

すると雲井は、服務規程とやらで、あんたらはこれをいつも持ってなくてはいかんそうだな?昔知り合いのおまわりさんが手帳をなくしたばかりに、それが原因かは分からないが、生涯平巡査でしたよ。あんたは優秀な刑事だから当てはまらんでしょうがな…、ただ拳銃もとなると…などと嫌がらせを言って来る。

襟章を持ってくれば拳銃と手帳は返すと言うので、一昨日の暴れた客はどこの組だ?岡部組か?と木村が聞くと、やつらもルーレットを持ってるんですよ、青山の「レッドキャット」にと雲井は答える。

警察の目を盗んで集める客など知れており、いつしか互いに客を奪い合いになる。

それで岡部は警察を動かそうと仕組んだんだ。こっちも弱みがあるので警察に訴える訳にも行かず、当分静かにしているつもりだなどと雲井は言うと、リエにお送りしろと命じる。

城山らと合流した雲井は、若いだけ合って、よっぽど首が大事らしいと木村の事をからかう。

入り口まで木村を送って来たリエは、本当にバッジを取って来るつもり?何だかあなたが気の毒で見ていられないのなどと声をかけて来たので、君は?と木村が聞くと、情婦とでも言うのかしら、雲井の女…とリエは答える。

遠山係長は覆面パトカーの警視19号に、クラブ「レッドキャット」の内偵を命じる。

頭の傷を案じた遠山係長は、捜査本部に木村だけ残ってデスク仕事するよう命じる。

捜査四課二係の部屋に1人残った木村は、部屋の中にある証拠品保管函と書かれたダイヤル付きの函を見つめていたが、黒板に書かれた、予定表の中に「拳銃射撃訓練」の文字を見た途端、意を決し、保管函の所に近づきダイヤルを回し始める。

途中で部屋の前の廊下を覗き、人がいないか確認すると、再度ダイヤルを回す。

ナイトクラブ「レッドキャット」では踊子のサリーが踊っていた。 客として潜入していた金子部長刑事と大宮刑事は、踊り終えたサリーがボックス席にいた組幹部の江口(長弘)の隣に座ると、その前に座っていたのが岡部組のボスの岡部(天草四郎)だと気付いていた。

その岡部が席を立ったので、伊藤部長刑事は大宮においと声をかける。

奥のルーレット賭博場に来た岡部は、常連の趙(広瀬優)に声をかける。 その時、店にやって来た肥った客(衣笠力矢)は、俺は北海道から来たんだ!などと、奥へ行こうとするのを止めようとしたボーイに文句を言う。

会員章をお持ちですか?とボーイが聞くと、肥った客はネクタイピンを差し出してみせる。

それに気付いた伊藤部長刑事は、バッジとネクタイピンか…と「コンゴ」と「レッドキャット」それぞれ別の会員章がある事に気付く。

趙は岡部に、ラスベガスから新しいゲームを取り寄せた。今、ヨコハマの倉庫に工作機械と名札を付けて梱包した状態で置いてあるよと誘って来るが、今、先立つものがね…と岡部が渋ると、じゃあ他に売るよと趙はあっさり答える。

その頃、木村は、町の中の徽章屋に来ていた。

その夜、ナイトクラブ「レッドキャット」に保安課の者だと警察手帳を示した平沢(草薙幸二郎)が1人で車で乗り付けて来る。

それに気付いたボーイは素早く奥の部屋のブザーを押すと、ルーレット台が壁の中に引き込まれ、代わってジュークボックスが壁の中から出て来る。

平沢が奥の部屋に乗り込んだ時には、それまでギャンブルをやっていた外国人客達は音楽に合わせダンスを踊っているだけだった。

岡部が平沢に、踊っていらっしゃいませんか?とからかうと、店を後にした平沢は、店の前に停めていた車に乗り込み、店の監視を続ける。

張り込みされていると気づいた岡部は江口に、当分ルーレットは出来ねえぜと悔しそうに伝える。

マンションの寝室のベッドに横たわり、長いパイプでタバコをくゆらせていたリエは、公衆電話からかけて来た木村の電話を取ると、すぐに雲井に会いたいと言うので、いるわよ、ここに…と答える。

その後、四課の部屋に戻って来た木村は、証拠品保管函を開け、持って来たバッジを紙に包んでまた入れて置く。

そこに大宮がやって来るが、廊下で別のかの仲間に呼び止められる。

四課の部屋に入って来た大宮は、木村が1人でいたのを知ると、今日は射撃の訓練があるんだぜと教えるが、木村はそのまま出かけて行く。

レストラン「ブルー」に木村が来ると、待っていたリエが雲井は地下の部屋よと教える。

地下に降りてみると、そこにルーレット台が置いてあり、夕べ、赤坂の「コンゴ」からここに移したんだと雲井が説明する。

木村はバッジを取り出し、約束のものだと雲井に渡すと、手帳と拳銃を返してくれと頼む。

しかし雲井は、岡部のルーレット状を潰すまで預かっておく。お前は、岡部を徹底的に潰すまで役に立つんだ。 あんたはサツを裏切ったんだ。これを持ち出した事が分かればいっぺんに首だぜと木村が持って来たバッジを見せながら雲井は苦笑する。

この際、俺たちを手伝ってくれないか?これから鉄立てくれたら礼はすると言い出した雲井は、受け取ってくれますね?10枚あると言いながら、財布から取り出した1万円札を木村に握らせる。

木村が黙ってそれを受け取ると、思った通り、あんたは利口だと雲井は苦笑する。 その頃、大宮刑事は伊藤部長刑事に、木村は変な誘惑に引っかかったんじゃ?と話していた。

リエはお堀端まで車で木村を送って来ると、本当は警視庁の前まで奥って差し上げないと行けないんですけど…と言いながら木村を降ろすと、自分も運転席から降りて来て、木村さんちょっとお話が…と語りかけて来る。

私、拳銃や手帳は諦めた方が良いと思うんです。雲井がどんな人だかご存じないんです。

利用するだけ利用して、ポンと捨てられるわ。

そうなってからでは遅い… 取られたものは取られたと、上の人に報告した方が良いと思うんです。

もう雲井に近づかない方が良いと言うので、リエさん!と木村が不思議がると、私のような日陰で暮らしているものには、日向にいる人が落ちて来るのが怖いの、ただそれだけ…とリエは打ち明ける。

その夜の「レッドキャット」 その店先には、平沢の乗った車がまた停まっていた。

それに気付いた江口が、今日も張り込み来ていますねと言うと、仕方ねえなあ〜、趙さん来てるか?と岡部は聞く。

趙に会った岡部は、礼の新しいゲームマシンの事なんだが…と相談するが、もう別の場所に売ったよ、遅いよと趙が言うので、誰が買ったんだ?と聞くと、赤坂の「コンガ」よと言う。

どうして雲井なんかに?と岡部は不機嫌になるが、こっちは商売だもの…と趙は言い、もう一台取り寄せてくれと岡部が頼むと、それは無理、あれは密輸したものだから当分無理ねなどと趙は答える。

昼間の「コンゴ」

雲井社長や岡部と一緒に相談していた城山支配人は、外に水を撒いていたボーイから、岡部が来たと聞くといきり立つ。

しかし、それをなだめた雲井は、江口と一緒にやって来た岡部を笑顔で迎え、お互い商売になりませんななどと冗談を言いながら握手をする。

岡部は単刀直入に趙から買った機械を私の方へ譲ってくださいと申し出るが、雲井が何の事か分からないととぼけると、向こうの奥の部屋に備えているんだろうと岡部は言うので、雲井は奥の部屋に案内する。

そこには何もなく、どこかのチンピラが殴り込んで来て以来廃業したんですと太田が岡部を皮肉るように言う。

雲井は、いかにも買いましたよ、だが買ったまま倉庫に置いてあると答えると、売って欲しいと岡部が申し出たので、2000万と雲井が吹っかけると、言い値で買おうと岡部は即答し、今夜8時、横浜の16号倉庫でと取引の場所も承知して帰って行く。

それを聞いていた城山は、驚きましたよ、2000万も出すとは…と呆れたように言うが、雲井は、取引にはお前と太田で行ってくれと頼む。

その夜、16号倉庫の前で落ち合った岡部と江口に城山は、梱包してある品を見せ、太田が江口から金を自分のバッグに移し替える。

運ぶ方はお前の方でと城山が言うと、トラックを用意してあると岡部は答える。 取引が終わり、車で帰りかけた城山と太田の前に停まっていたトラックの荷台から、いきなりドラム缶が大量に転がり落ち道路を塞いでしまう。

車を降り、ドラム缶を撤去しようとしていた城山と太田は、物陰に潜んでいた岡部組のチンピラ達から襲われ袋叩きに遭う。

そこに車でやって来た江口は、城山達の車に置いてあった金の入ったバッグを取り出すと、2人をそこに並べろ!ボスの命令だ!とチンピラ達に命じる。

チンピラ達が驚きながらも、ぐったりした城山と太田の身体を二の字型に並べると、江口は車を発車させ、2人を轢くと、おい、引き上げろ!とチンピラ達に声をかける。

即死と思われた2人だったが、太田の方は息があり、かろうじて雲井の元に戻って来た所で息絶える。

雲井は、みんな拝んでやれと、その場にいた子分達に命じると、どうせこっちも偽の梱包を渡したんだ。

このまま奴らをのさばらせちゃおかんぞ!と表情を引き締める。 その後、リエに呼んで来させた木村と会った雲井は、手伝ってもらいてえ仕事がある。手を出さないで岡部を踏みつぶすんだ。それにはサツを使うしかない。「レッドキャット」にサツをどかどかっと乗り込ませて欲しいと頼む。

それを聞いた木村は、できねえ相談じゃないさ、どうせ金で転んだ俺から話を聞きだそうって言うんだろう?と木村が自虐的に答えると、片手出そうと雲井が言うと、「レッドキャット」の会員章であるネクタイピンを手に入れて密告するんだ。この俺さえ金で買ったあんたじゃないかと木村は提案し、5万をその場で受け取る。

その後、リエと2人になった木村は、警察官にあるまじき行為だと妹なら言うだろう。君なら何と言うんだ?とからかうと、私怖いわ、あなたがこのまま雲井の仲間に入るのが…、でも反対にとても嬉しいと思う事もあるのよ、日陰で生きる女にとっては、遠い別の世界からだんだん近づいて来る人がいるんですもの…と言いながら、リエは顔を近づけて来てキスをねだるが、木村はそれには応じなかった。

木村の家に来た大宮刑事から、兄が拳銃の訓練にも出て来ないと聞いた和子は、何だかこの2〜3日、とても兄の様子がおかしく、急に無口になって別人になったみたいなんですと言い出す。

作りかけのステレオも手をつけない。夕べも女の人に送ってもらったりして、どう言う商売の人なのかしら?と和子は悩みを打ち明ける。

その夜「レッドキャット」 店の前の駐車場に平沢の姿がなかったので、江口は今夜は現れませんねと岡部に笑いかける。

その後、ルーレットで負けてヤケになった太った客が、ぷんぷんしながら表に出て来ると、車の影から出て来た平沢が警察手帳を出してみせ、今、ルーレットやってたんでしょう?このネクタイピンが会員章になっているんでしょう?頂きますと言って奪おうとする。

それに気付いた江口が駆けつけると、平沢は銃で江口を撃ち殺し、その場から逃走する。

戻って来た平沢から、客から奪い取ったネクタイピンを受け取った雲井は、1人や2人構う事ねえ、もう手に入ったぜと自慢げにそのネクタイピンを木村に見せる。 木村は平沢に詰め寄ると、君は何者だ!これは俺の手帳だ!と平沢が持っていた手帳の事を聞く。

すると平沢は、この拳銃もあんたのもんだぜと言いながら拳銃を出してみせる。

雲井は、そいつは平沢と言って俺の子分なんだと明かし、お前さんの拳銃が殺しに使われたって事を忘れるんじゃねえ!最後まで手を貸してくんねえと木村に告げる。

捜査四課では、「レッドキャット」前で見つかった死体から取り出された銃弾が木村の拳銃のものと判明、それを知った伊藤部長刑事は、まさかとは思うが、不利な状況だな…と顔を曇らせる。

そこに、ネクタイピンが入った密告状が遠山係長の所に持ち込まれ、それを見た伊藤は、係長、これに間違いありませんとネクタイピンが本物だと教える。

遠山係長は、今夜各賞を掴んで踏み込もうと決断する。

その夜「レッドキャット」 踊り終えたダンサーのサリーにご苦労とねぎらって迎えた岡部は、お前の面倒は俺が見てやると気安く顔を触って来たので、江口の葬儀もすまないうちに…とサリーは苦笑する。

その時、サツだ!とボーイが叫び、手入れと気づいた岡部はすぐに部屋を変化させるスイッチを押す。

しかし、乱入して来た保安課と機動捜査班の動きが早く、ルーレット台が壁に収納仕切れないうちに踏み込まれ、あえなく岡部組と客達は一斉検挙されてしまう。

その頃、レストラン「ブルー」で雲井は、城山と太田は気の毒だったが…と言っていたが、一緒にいた平沢は、今じゃ新型の台も手に入れ、これでしょう?と左団扇を扇いでいる真似をして笑ってみせる。

そして平沢は、木村はここのからくりを知ってますぜ、もしもの事がありますから、バッジを私にお貸し願えませんか?と木村が雲井に渡した襟章の事を言う。

一方、木村と2人でいたリエは、あなたは警察に戻る人です。今のままだと取り返しのつかない事になるわ。雲井はあなたが考えるよりもっともっと悪い男なの、手帳も拳銃も元々返すつもりないのよ、こんなアリ地獄から抜け出さないと…と説得していた。

しかし木村は、僕はもう二度と警察に戻らないつもりなんだ。嫌になったんだ、もうごめんだよと言うので、それじゃ木村さん、私と同じ日陰の世界にこれからもずっと住むつもりなの?とリエは驚く。

多分ね…、辞表願いを妹に持って行かせるつもりだとまで木村は言い、辞表の封筒を取り出してみせる。

翌日、自宅で辞表を書きかけていた木村は、近所の主婦が、旦那さんですか?和子さんから頼まれましたと荷物を届けられる。

レストラン「ブルー」に戻って来た平沢は、鑑定させた所偽造と分かりましたと襟章の事を雲井に報告する。

それを聞いた雲井は、くそ!あの若僧め!と木村に裏切られた事を怒りだす。

その後、平沢は呼びつけた木村に銃を突きつけ、社長がお待ちかねだと「ブルー」の地下室に連れて来る。

木村を、バカ!と殴りつけた雲井は、こりゃ何の真似だ!と襟章を出してみせる。

木村は、悪かった…、ただの偽者だ。察してくれ、あの時は俺は真面目な刑事だった。

本物はここにあると答え、どうやら岡部はここの事を知っていたらしく、全部しゃべったらしいと教える。

そう聞いた雲井は平沢に、あれを始末してくれ、今夜、山で集合しようと命じると、木村には裏に回れと指示する。

その頃、自宅に帰って来た和子は、飯台の上に残されていた遠山係長宛の手紙と辞表を大至急警視庁へ持参せよと書かれたメモを発見する。

「ブルー」の裏に停めてあった雲井の車のバンパー部分に何かを取り付けていた木村は、そこにリエと雲井がやって来たので、運転席に乗り込み車を発進させる。

雲井から受け取った金と木村が書いた辞表と一緒に和子が捜査四課に持ち込んだ手紙を読んだ遠山係長は、「ブルー」の地下賭博場の事などの詳細を知る。

持ち込んだ和子は泣いていたので、心配ないと大宮刑事が優しく慰める。

その直後、レストラン「ブルー」に手入れが入り、発砲して抵抗して来た平沢ら全員が逮捕される。

四課で電話報告を受けた遠山係長は、雲井の姿が見えないと聞くと、車で逃げているなら電波の発信があるはずだ、すぐ手配してくれと命じる。

その頃、雲井の車を運転していた木村は、さりげなくラジオを点ける。

車の前には木村が注文していた電波発信機が付いていたのだった。

警視13号に乗っていた大宮達に、電波を傍受した本部から、車は真鶴有料道路だと無線が入る。

大宮は、神奈川県警に応援願いますと応答する。

リエと後部座席に乗っていた雲井は、音楽放送が終わり、臨時ニュースに変わったラジオが、先ほど逃亡した雲井五郎は箱根方面に逃走中ですと伝えるのを聞き、木村、ラジオを止めろ!と良いながら銃を突きつけて来る。

しかし木村は、嫌だ、この車には発信機が付いているんだ、撃つなら撃て!と抵抗したので、この野郎!と怒った雲井は、拳銃で木村の後頭部を殴りつけて来る。

車は林の中に突っ込むように停まり、運転席から木村が転がり落ちる。

一緒に降りて来た雲井は、これはお前の銃だ、これで死ねば本望だろうなどと言い、拳銃を突きつけて来る。

同じく車を降りて来たリエが、それを見て、止めて!と叫ぶが、木村は林の中に逃げ込む。

その直後、停まった雲井の車の所に大宮達の覆面パトカー到着する。

降り立った大宮刑事らは、林の中から聞こえて来る銃声を頼りに雲井らの方へ向かう。

雲井は発砲しながら川の方へ逃げ込んでいた。 それを追って来た木村が雲井に川の中で飛びかかる。

しばらくもみ合っていたが、身体を離した雲井が木村を撃とうとすると、駆けつけて来た大宮が発砲し、その拳銃を撃ち落とす。

すると、近くにいたリエがその拳銃を拾い上げ、雲井に向かって引き金を引く。

弾は全部外れるが、呆然とした雲井に近づいた刑事達が逮捕する。

リエに近寄った大宮が、拳銃をもらいましょうと手を差し出すと、私が自分で木村さんにお返ししますわと答えたリエは、日向で妹さんといつまでもお幸せにねと言いながら木村に渡す。

そして、社長!と呼びかけながら、連れて行かれる雲井の後を追うリエ。

大宮は、傷ついた木村に肩を貸し、パトカーの所へ戻る。

これも無事に戻った、これからは気をつけてくれよと、パトカーに乗り込んだ木村に嬉しそうに拳銃の事を伝えた伊藤部長刑事は、今度は本当にご苦労だったとねぎらう。

一緒に乗り込んだ大宮が、一言言ってくれたら良かったんだと木村を責めるが、木村君は拳銃と手帳が盗まれたことを最初から係長に報告していたんだが、それを内緒にしていたのは私の命令だったんだと伊藤が明かすと、何だ、そうだったんですかと大宮は納得する。

任務を終え旨そうにタバコを吸い始めた木村は、前のパトカーの乗せられたリエが、ずっと自分の方を振り返って見つめているのに気付く。

海岸沿いの道路を東京へ帰る覆面パトカー。


 


 

 

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