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銀座二十四帖

銀座を舞台にした風俗ものだが、人探しや犯罪捜査物の要素も混ざっており、なかなか興味深い展開になっている。

ヒロインを演じているのは「君の名は」などにも登場した月丘夢路さんだが、もう1人主人公とも言える青年役を演じているのは若き三橋達也さんである。

ハンチング帽にノースリーブのシャツを着たモノセックスで粋なスタイルをしており、後のスーツ姿が多くなる三橋さんとはかなりイメージが違っているが、元々美大出身だったようで、こちらのイメージの方が当時の三橋さんには近かったのかもしれない。

他にも大変インパクトがあるキャラクターが登場しており、その1人が安倍徹さんで、後の悪役イメージとは打って変わったオネエっぽい画家役なのが何とも珍妙。

北原三枝さんも抜群のスタイルの良さだけではなく、コメディエンヌっぽい演技を披露しているのも珍しい。

そして、当時まだ15歳くらいで、子役に近いイメージの浅丘ルリ子さんの愛らしさ。

3代目水戸黄門としても知られる佐野浅夫さんも深江章喜さんも、ともにまだチンピラ役である。

ファンファンこと岡田真澄さんが野球選手を演じているのも驚きだが、芦田伸介が冷酷そうな小悪党を演じているのも意外。

日活でプロデューサーとしても活躍なさるターキーさんこと水の江瀧子さんが、NHKテレビバラエティー「ジェスチャー」でもお馴染みだったアロハ姿で登場しているのも嬉しい。

そして、森繁久彌の軽妙なナレーションとともに紹介される当時の銀座の風景が何より貴重。

森永の回る球体広告塔やナショナルの星形広告塔なども懐かしいが、建設中の「そごう」などの様子が珍しい。

ストーリーの背後には、当時の華やかな銀座の裏側にはびこっていたらしき麻薬、それを密売して銀座を裏で牛耳っている悪の組織とそれを追う捜査陣の地道な活動が描かれている。

最後の方では、「原爆持ち込み禁止」署名運動などもさりげなく登場しており、当時の原水爆への不安もさりげなく織り込まれている。

銀座の風景だけではなく、途中には鵠沼海岸や大阪の繁華街の様子も紹介されており、当時の風景をひもとく貴重な映像ではないかと思う。

繁華街銀座の明暗を象徴させるように、過去を引きずった犯罪暗黒物と若者たちの明るい青春をミックスしたちょっと珍しい構成ながら、なかなか面白い作品になっていると感じた。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1955年、日活、井上友一郎原作、柳沢類寿脚色、川島雄三監督作品。

午前0時を知らせる銀座、和光の時計塔(右奥に森永キャラメルの広告塔が回る)

タイトル キャスト、スタッフロール(銀座の夜の空撮と森繁久彌の歌う「銀座の雀」をバックに)

おはようございます。 今素人裸足の歌を披露した森繁久彌です…とナレーションを勤める森繁の声が挨拶する。

朝、カエルが鳴く水田、良い匂いが漂ってきました。 (画面は肥桶を運ぶ農民の姿)

ここが銀座…ではなく、玉川の「新田銀座」

町へ出発するトラックに向かい、「サロン ひとみ」ののり子が、銀座に行くんだったら香水買って来てくれよ!何て言ったっけ?…と香水の名前を考え、トラックが出発した直後、あ、そうだ!当選チャンネルの5番だよ!と叫ぶ。

ここは玉川の温室村 この辺りで摘まれた花が東京へと送られて行く。

その花を積んだトラックに途中から乗り込んだハンチング姿のいきな男は花売りのコニイ(三橋達也)と言う。

こうした地方で積まれた花は東京の市場に集められる。

日本中の人間が日本の植民地と言われる東京に集まるように…

「芝花市場」で花を競り落としたコニイは、相棒のジープの政(佐野浅夫)と一緒に買い落とした花をバイクに運ぼうとするが、ジープは急に力が抜けたようにしゃがみ込むと、兄貴、すまねえが、俺!と言い残し、いきなりどこかへ走り去ってしまう。

上空から見た昼間の銀座の様子 350年前に埋め立てられる前は魚が泳いでいたなどと解説。 早朝の銀座を走る新聞配達少年 銀座の裏通りでは早朝から健全な仕事が始まっています。

豆腐屋、八百屋、魚屋…

バイクに花を積んだリヤカーを引いてやって来たコニイの姿を見つけたルリちゃん(浅丘ルリ子)たち少女は、嬉しそうにリヤカーの上に乗り込み、いっしょに車道を渡る。

一方、散水車が撒く水が撥ねて着物にかかった京極和歌子(月丘夢路)は、ちょうど花屋「FLORIST」の前でリヤカーの花を仕分けしていたルリちゃんを見かけたので、このバラをちょうだいと声をかける。

しかし、ルリちゃんは困惑したように、ダメよ、この花はもうご注文が決まっていますと答え、店内にいたコニイに声をかける。

ルリちゃん、渡して上げなと答えたコニイだったが、ルリちゃんがバラを包みながら、私たち少年ハウスから働きに来てるんです。みんな孤児なんです。コニイのおじさんに学校に行かせてもらっているんですなどとおしゃべりし始めたので注意する。

和歌子は、川の側の「菊川」に届けてと頼み、花の値段を聞くと、コニイが170円ですと答えたので、200円ルリちゃんに渡しながら、おつりはあなたのお勉強代にしてと言い立ち去る。

30円はルリ子の貯金にしようとコニイは言いながら釣り銭入れの中を見ると、そこにアンプルの空き瓶を発見する。

そこにジープの政が戻って来て、仕事を手伝おうとするので、店の隅に連れて行ったコニイは、てめえ、又、こんなもの始めたのか!と叱る。

前のが残ってたんだなどとジープは言い訳するので、これがどんな危ない物か知っているだろう!銀座の町を汚くしているのはこいつなんだ!とコニイが言い聞かせると、チャー公に頼まれて…とジープが言い出したので、聞いてみると言い残し、コニイはアパートに帰る。

アパートの自室に帰って来ると、隣のチャー公ことホステスの久子(関弘子)が朝ご飯まだでしょう?今、作っている所なのなどと気安げに話しかけて来たので、チャーちゃん、ジープに変な物頼まないでくれよ、ポン、ジープに頼んだって言うじゃないかと聞くと、自分はとっくに止めており、全く知らないと言うので、その言葉を信じる事にする。

するとバー「アンコール」のママの双葉(菊野明子)も勝手にコニイの部屋に入って来ると、窓から、お初お出かけ?と犬連れで車に乗り込もうとする店のホステス初枝(渡規子)に声をかける。

桃山先生の所へ!と事を言うので、先生!今晩お土産忘れちゃ承知しないわよ!と、双葉は車の操縦席に乗り込む画家の桃山豪(安部徹)にも声をかける。

あれ、誰なの?とコニイが聞くと、絵描きさんよ、コニイも絵を描くんでしょう?と双葉が聞くので、ちょっとねと答える。

すると、あれ誰が描いたの?と壁にかかった絵を指して双葉が聞くので、あれは兄貴が描いたんだとコニイは答える。

花を届けに来たルリちゃんは、川の側で油絵を描いていた望月三太郎(大坂志郎)に「菊川」って店を知らない?と聞くと、この家だとと絵の真ん中に描きかけていた家を指したので、お料理屋さんねと気づき、ルリちゃんは「菊川」で出迎えた和歌子に持って来たバラを手渡す。

和歌子は女中の君子に花を洗面器に入れるように頼む。

そんな和歌子にお茶を煎れかけていた「菊川」の女将が、どうです、岩井さんは?と聞いて来たので、画廊に並べる絵を選んでいる所ですと和歌子は答える。

離れで絵を選んでいた画商の岩井(織田政雄)の所へ来た女将は、半分くらいが部屋の外に置いたままなので、お嬢…、いや、和歌子さんが新しい仕事を始める資金ですから、たくさん選んでくださいと声を掛けるが、そちらは画廊にかけるには…、5~6千ではね…と岩井が言うので、この絵なんかすばらしいと思うのに…と女将が部屋の外に置いてあった絵を見ながら言うので、岩井が念のためその絵を見直した所、これは見落としていたと言う。

そこへ君子が、女将さん、お電話ですと知らせに来る。

岩井が見直した絵は、和歌子の少女時代をモデルにした絵で、サインの「GM」とは誰ですかと聞かれた和歌子は、父が奉天に在任中、一週間ほど世話をした内地からの学生さんで、覚えているのは、五郎さんって呼ばれていたんですと答える。

その話を聞いた岩井は、陳列してみましょう。これだけの腕だから、今頃はそれなりの立派な絵描きになっているかもしれないし、言い値で買い戻しに来るかもしれない。

面白いじゃないですか、名乗り出て来たらと興味本位で答える。 そこへ君子が、電報ですと和歌子に持って来たので、女将は、ご主人からかもと口を出すが、大阪から中町さんの所の雪乃が来ますのと電報を確かめた和歌子は答える。

今、京極さん、どこにいるんでしょうね?鵠沼のお家にも寄り付かないんでしょう?珠代ちゃんもあんなに可愛がっていたのに…と女将は、家を出たまま行方知れずになている和歌子の夫の事を案じる。

内銀座と呼ばれる新橋駅 有楽町駅の一日の利用者は32万人にも及ぶそうだ…(と森繁のナレーション)

時速90kmの「ツバメ号」が到着する。

迎えに来ていた和歌子は、列車から降りて来た従兄弟の仲町雪乃(北原三枝)に会うと、とうとう出て来ちゃった!と言うので、荷物は?と聞く。

あの人が持って来るわと背後を指すので、その方を見やると、スマートな青年が荷物を運んで来てさようならと言い残し去って行く。

列車内で出会った東京スネークスの赤石峰男(岡田眞澄)と言う野球選手だと雪乃はあっけらかんと言う。

雪乃がコンクールに出るために来たと言うので、コンクールって何の事?と和歌子が聞くと、雑誌平凡主催のミス平凡の大阪大会に当選したけど、両親には東京見物って言って出て来たのなどと雪乃は答える。

駅の外へ出た和歌子に、黒めがねの男が近づいて来て、ご主人から伝言です、ちょっと付いて来てくださいと声をかけて来るが、そこに望月が近づいて来たので、男は慌てて逃げ去る。

妹さんですか?と望月は和歌子に声を掛けるが、従兄弟ですのと和歌子は雪乃の事を教える。

泰西画廊の絵を見てきましたよ、ご主人のコレクションですか?と望月が聞くと、亡くなった父親のコレクションなんですと教えると、望月が持っていた描きかけの油絵を勝手に奪って批評しようとしていた雪乃から、それ、反対ですよと言いながら絵を取り戻し去って行く。

誰、今の?おばさまの恋人?と雪乃は聞くが、和歌子は無視して「菊川」に連れて来る。 雪乃は屋敷の前で拾った簪を、ちょうどやって来た2人の芸者の落とした物だと気づき返す。 芸者たちは礼を言い、大阪から来たと言う雪乃が全く大阪弁を話さないので驚く。

雪乃はすぐに銀座に行きたがったので、それに和歌子が付いて行くと知った女将は、泰西画廊に寄って、岩井さんが用があるそうだからと言う。

夜の銀座 雪乃を連れ出かけて来た和歌子は、ルリ子たちと出会う。 ルリちゃんは、夜は学校に行ってるのと教える。 泰西画廊では「GM」のサインがある少女像を熱心に見ていたコニイだったが、和歌子が来たので慌てて会釈して帰って行く。

和歌子が岩井に誘われて奥の事務室へ行くと、画廊内の取り残された雪乃は、ちょうど来合わせていたシューシャインボーイの湯川修(長谷部健)とお尻がぶつかってしまい、それが縁で意気投合した雪乃は、和歌子に断って、湯川に銀座を案内してもらう事にする。

双葉のバー「アンコール」に花を売りに来たコニイは、初枝の相手をしていた桃山に花を買ってもらう。 桃山は愉快そうに初枝にキスをする。

久子はコニイを店の奥に呼ぶと、ジープが回って来たわ、私さんざんとっちめてやったのよ。あの人やっぱり打ってるわと教えるたので、どこでポンを買っているんだ?どうしてもポンを止めさせるつもりなんだとコニイが言うと、全部組織がやっているのよと久子は打ち明ける。

キャバレー「オペラ」 女性歌手がステージで「銀座の雀」を歌っている。

雪乃は、湯川のカメラにポーズをとっていた。

湯川は君ならトップモデルになれるよ、僕は銀座のファッションモデルのスカウトをやっているんだと褒めるが、雪乃から踊りを誘われると、僕はマンボが踊れないんだと言う。

その時、店にやって来たコニイと湯川はぶつかってしまい詫びる。

泰西画廊に立ち寄った桃山は、ちょうど帰る和歌子を見かけ、岩井に、あの美人は何者?と聞く。

彼女をモデルに描かれた少女の肖像画が、14~5年前に1度だけ会った学生が描いたものらしいと知ると、もっと詳しく話して!と興味を見せる。

自分が「GM」と言う人物を知っていると言うのだった。

翌日、花屋「FLORIST」の前を通りかかった和歌子に、奥さんと声をかけたコニイは、泰西画廊の少女の絵は?と聞き、私の子供の頃に描いてもらった絵なんですと聞くと、そうでしたか…、あの絵、誰が描いたんでしょう?と聞く。

奉天にいた頃、内地からいらした学生さんで、五郎さんと言うとても良い方でしたわと和歌子が教えると、奥さん…、実は、あの絵と同じタッチの絵を描いていた人を知っているんですとコニイは言い出す。

もしそうだとすれば、その人はもう生きてないでしょう…、でも違うかもしれません、多分、人違いでしょうとコニイは自分に言い聞かせるように続ける。

余は正にコンクール時代、「脚線美コンクール」や「ビールの王様コンクール」「蕎麦の大食いコンクール」などを森繁が紹介して行く。

そして「ミス平凡コンクール」、商品は全部タイアップ、審査員たちは文化人が集まっていた。

司会は水の江瀧子さん、それでは、ターキーさん、どうぞ…と森繁が紹介すると、アロハ姿のターキーさんが、京都の野村ゆき子さんです、どうぞ!と紹介し、ドレス姿の京都代表が会場中央の第二登場しポーズをとる。

それを審査員たちが見て意見を言い合う。 名古屋代表が呼ばれたとき、清水さん、私、ちょっと用があるので…と他の審査員に断った桃山は退室しようとするが、その時、入り口から入って来ようとした大阪代表の雪乃とぶつかってしまう。 雪乃は失礼ね!と憤慨しながらも部屋の中央に進み出る。

「菊川」では女将が、鵠沼から珠代ちゃんを引き取って暮らせば良いのにね…と提案すると、お義母さんがああいう方だから、許してくださらないでしょうと和歌子は寂しげに答える。

この店をやって行けるのも、亡くなったお父様のおかげですよと女将は和歌子の父小栗良二に感謝する。

和歌子が出かけた直後、泰西画廊の岩井から電話を受けた女将が、和歌子さんはたった今出かけましたと伝えると、晩にもそちらに伺いますと、岩井の持った受話器を通じ桃山が話しかけてくる。

「菊川」の前までタクシーで帰って来た雪乃は、車を降りると、そこでいつものように絵を描いていた望月から20円借り、それで運転手に料金を支払う。

コンクールどうでした?と望月から聞かれた雪乃は、3位だって…、バカにしてるわ!と憤慨する。 大阪にはいつ帰るんです?お父さん、怒ってるんでしょう?おばさんに聞きましたよと望月が言うと、ファッションモデルにならないかって誘われているのと雪乃は自慢する。

でも、一度帰る方が良いだろうねと望月が言い聞かせると、あんた、おばさんの事、張ってるんじゃない?あなた一体何者?と雪乃は怪しむので、望月三太郎と名乗った望月は、あなたは中町雪乃さん、20歳、身長162cm、体重13貫などと答えたので、何でも知っているのね!と雪乃は驚く。

桃山は、呼び寄せた新聞各社のカメラマンから、泰西画廊の少女を描いた絵と一緒に写真に撮られていた。

今の先生のタッチと違いますが?と質問を受けた桃山は、若い頃の試行錯誤していた時期ですからとごまかし、モデルの娘さんとは何か思い出でも?と聞かれると、皆さんのご想像にお任ししましょうなどと言い逃れる。

その頃、和歌子は、鵠沼海岸で泳いでいた娘の珠代 江川美栄子)に会いに来ていた。

水着を着替えさせた和歌子は、お父様、帰って来る?と聞くが、帰って来ないと言う。

おばあちゃまが珠代の面倒を見てくださるの。どうしてママが見てくれないの?などと聞かれた和歌子は、珠代ちゃんが大きくなったら分かってくれると思うと答えるしかできなかった。

おばあちゃまはママに優しくないんですもの…と珠代はいじらしいことを言う。

そんな珠代に和歌子は、ママ、東京で仕事を始めるつもりなのと教える。

その夜、桃山は、予告通り「菊川」に記者連中と一緒にやって来て飲んでいたが、一向に和歌子は帰って来なかった。

一緒に来ていた岩井も女将に、まだ帰らないの?と聞いていたが、そこに岩井君、まだかね?と立ち上がって来た桃山は、酒を運んで来た雪乃から、先ほどはどうも!ミス平凡のコンクールでぶつかったでしょう?京極和歌子の従兄弟ですと言われ、急に興味を持つと、にやけた顔で、こっちへいらっしゃいと座敷に引っ張り込む。

東京に戻って来た和歌子は、花屋「FLORIST」の中にいたルリちゃんに声をかけると、今、英語の勉強をしている所だと言い、店に貼ってあった「Sey with Flower」の意味を聞かれたので、「花とともに語れ」かしらと教える。

するとルリちゃんは、おばさんの絵の事夕刊に出ていたわと言い、夕刊に載っていた桃山の写真を見せる。

そこに戻って来たコニイは和歌子に、良かったですね、絵の作者が見つかってと言いながらも、しかしあの男が「GM」とは…、あの桃山って男には気をつけてください。今のあいつはあなたが付き合うような男じゃないと忠告する。

そして、何故あの絵を画廊に預けたのですと聞くと、和歌子は作者が名乗り出るかもしれませんし、又お会いできるかもと思ったものですからと言うので、会ってどうするつもりだったのです?いや、待ってください、私も確かめてみたいんです…、「GM」って人がどこにいるのか、私も探さそうと思ってますとコニイは打ち明ける。

生きていらっしゃらないかもしれないのに…と和歌子が言うと、だからそれを確かめてみたいんですとコニイは言う。

バー「アンコール」では、男女コンビの流しが「銀座の雀」を歌っていた。

カウンターで初枝がママに、ちょっと相談に乗ってと話しかけたので、お初、名にして短大、忙しいのに…と双葉が叱り、初枝の悩みが桃山の事だと知ると、桃山さんへの気持は営業用じゃなかったの?と困惑する。

初恋の相手との再会だなんて!と初枝が悔しがっている所へ当の桃山がやって来る。

スカッシュソーダ!と注文した桃山に、お初、怒ってるわよ!と夕刊に載った記事の事を双葉が伝えると、それ宣伝!と桃山があっさり受け流すので、先生は猛者なんだから…と双葉は呆れる。

初枝ちゃんも何か飲まない?と進めた桃山だったが、初枝は機嫌が悪いまま、ウォッカのダブル!と注文する。

そこにジープがやって来て、桃山先生ですね、ちょっとお耳に入れておきたい事がありまして…、「GM」のサインの事なんですが…、良かったら表へと桃山に声をかける。

コニイは、その後、店の前に出て話し始めた桃山とジープの姿を路地から見つけ、ジープが金をもらっているのに気づくと慌てて近づき、ジープ!たかりなんかするんじゃない!と叱りつける。

銀座に遊びに来るお客さんに安心して遊んでもらいたいんだとコニイは言い聞かすが、桃山はたかられたんじゃない、自分で出した金なんだと言い、店に戻って行く。

ジープに詰め寄ると、「GM」が銀座にいるって話したんだ。兄貴、俺は花屋「FLORIST」なんて辞めさせてもらうよ!と言うので、誰なんだ、その銀座の「GM」ってのは?と追求すると、三ツ星五郎!「オペラ」に行ったら話してたんだ。

スカウトをしているんだとジープは言い逃げ去る。

キャバレー「オペラ」の二階席では、スネークスの赤石が、今日のピッチングが悪かったと指摘するスカウトマンの三ツ星五郎(芦田伸介)に、ウエーブの植村を押さえましたよと反論していた。

あの程度ではハワイから呼ぶほどでもないよと三ツ星は冷徹に言い放つ。

フロアでは、湯川相手に踊っていた雪乃が、パパの了承をもらって来なくちゃ…と、モデルになる件を話していた。 その時、さりげなく雪乃の相手になって踊りだしたのが赤石で、僕明日から大阪だよと雪乃に伝える。

いつの間にかパートナーを失った湯川は、カウンター席にいた望月にぶつかってしまう。

そんな「オペラ」にやって来たコニイは、三ツ星さんですね?泰西画廊の少女像の事でと話しかける。

すると三ツ星は、あれを描いたのは桃山豪じゃないんだ。あの絵を描いたののは別にいる。

俺は15~6年前奉天にいた。小栗良二も知っていた。余計な事に首を突っ込まない事だな…、注意しただけだと三ツ星はコニイに忠告し帰って行く。

残ったコニイはバーテンに、銀座のGMって誰だい?と聞くと、コニイさんが知らないなんて…とあしらわれただけだった。

その時、カウンターに座っていた望月がオレンジジュースをバーテンに注文する。

森繁が「鹿児島銀座」や「蝦夷銀座」などを例に、「銀座」の名をつけた場所が日本中に全部で247カ所もあると解説する。

そして画面は大阪の盛り場に変わる。

宗右衛門町を歩く和歌子は、雪乃のファッションモデルになる夢を両親に承知させるために大阪に来ていた。

灘波球場ではスネークス戦が行われており、赤石がピッチャーを勤めていた。

客席には雪乃も来ており、その声援のおかげか、今日の赤石のピッチングは冴えていた。

その時、場内アナウンスで、お連れ様がお待ちでございますとのアナウンスを聞いた雪乃は、通路の階段の所に来た和歌子と出会う。

和歌子は、私の監視付きと言う条件付きで、モデルの件は両親から許可をもらって来たと話し、自分は野球なんか見ている時間がなく、買い物などしなくてはならないと言って帰りかける。

そんな和歌子に声をかけて来たのは三ツ星だった。 三ツ星は、桃山豪は偽者です。私は三ツ星五郎、頭文字は「GM」です、怪しいもんじゃないと自己紹介すると、奥さん、何故あの絵を画廊にお出しになったのです?と聞き、本物の「GM」の事でお話があったのですと話す。

その頃、客席に戻りかけていた雪乃は望月とばったり会ったので、どなたか探しているんですか?と皮肉っぽく聞くと、奥さんが来ているでしょう?と望月が言うので、ご熱心な事…、おばさまは魅力ある人ですものねと雪乃は嫌みを言う。

思い出しになりませんか?奉天の家にお世話になったのは2人でした…と三ツ星は和歌子に話し続けていた。 私は野球の新人探しです。戦前は大陸でゴロゴロしていました…。

「GM」らしい男が銀座にいるらしいじゃないですか?「GM」のことは、ご主人にお会いになれば分かりますよ。何なら、私が連絡しても…と三ツ星は和歌子を先導してどこかへ連れて行こうとするが、和歌子は私はここで失礼しますと言い、同行を断る。

その頃、望月と一緒に客席に戻った雪乃は、以前、東京で望月から借りたタクシー代の20円を返すが、アイスクリンをおごってもらい、さらにごちそうしてくれとねだるので、もう君にお金を貸すのは止めたと望月は呆れる。

そして、あなたは赤石のプレーを見に来たんでしょう?三ツ星って言うスカウトを知ってますか?少女像を描いたのは自分だって言ってるそうですよと望月が聞くと、あなた、何だか探偵さんみたいねと雪乃は言い出す。

僕も望月だから頭文字はM!和歌子さんはW30、M70くらいで男性的要素があるが、あなたはW100+X…、あなたは追いかけるにはまぶしすぎますかなとはぐらかす。

その後、デパートで買い物を済ませた和歌子は、品物の送り先を店員に伝えると、それを書き留めていた店員が、今お見えになった方も同じ住所でした、宛先は珠代様では?そのお客様はちょっと前に屋上の方へ向かわれました。白い上着にパナマ帽姿でしたと言うので、驚いた和歌子は急いで屋上へ向かう。

屋上にそれらしき男の後ろ姿を見つけたので、あなた!と声をかけながら近寄った和歌子だったが、振り向いた相手は全く知らない相手だったので、失礼しました!と謝罪して逃げ去る。

御堂筋や大阪のデパートを紹介した森繁は、次に東京へ進出して来た大丸などのデパートを紹介して行く。

建設中の有楽町そごう 松屋、三越、松坂屋… 松屋ではおりしも秋の新型パジャマショーが行われていた。 オルテガスタイルのガウンを脱ぐと、その下は気ものスタイル 子供モデルが登場し、子供用のパジャマの披露をし終えると、仲町雪乃が登場しポーズを取りながらターンするが、めまいを起こして背後のベッドに腰を落としてしまう。

そのパジャマショーを見ていたルリちゃんたちは、私もあんな寝間着が欲しいな…などとうらやましがっていたが、その会場にジープが来た事を発見すると、一緒にお仕事するように頼んでみると言って、同行して来て背後で休んでいたコニイに知らせる。 コニイはデパート内を探し始めるが、やはりその場にいた望月とぶつかる。

バー「アンコール」にやって来た桃山は、お目当ての初枝が、知らない中年男の膝の上に座っていたのを見て、チャーちゃん、私と旅行しない?と久子に声をかけて来る。

久子が、初恋の人は?とからかうと、ダメなのよと答えた桃山は、誰あの男?と聞く。

その時、コニイややって来たので、店の奥に呼んだ久子は、ジープの奴、ポン売りの手伝いしているらしいのよ。

「キャロル」って店に行って、銀座のGMから聞いて来たって言えば入れてくれるってと教えながらも、ジープにポンを止めさせれば良いんでしょう?深入りしないでねとコニイの身を案じる。

コニイは大丈夫だよと答え、店を出てゆく。

バー「キャロル」にやって来たコニイは、店の女に、GMに聞いて来たと小声で話すと奥へと通してもらえる。

カウンター席には、又しても望月が座っていた。 マー展を開けて中に入ると、そこにはポンらしき物を打っている女がいた。

階段を降りて地下室の一室に来ると、そこには麻薬中毒者らしき男たちがたむろしており、ベッドの一つにジープが寝ていたので、探したぞ、一緒に来てくれ、俺の話を聞け!とコニイは声をかける。

しかしジープは、大の男が花なんか売ってられるか!と抵抗し、周囲の男たちも集まって来て、ジープは花なんか売りたかねえってよと嘲って来る。

「キャロル」のマスターがコニイの胸ポケットに金を押し込みながら、頭でも冷やしなと言って来たので、お騒がせしましたと下手に出たコニイだったが、ここはただの酒場だぜ、他で妙な事はいんじゃねえと念を押して来たマスターに、GMって誰の事だ!会いたいんだ!と詰め寄ると、他の客から無言で頭から水をかけられてしまう。

1階のカウンター席にいた望月は120円の料金を払っていた。

約束した以上、何も言わねえとコニイは答え、一階へ戻ろうとするが、利いた風な事言いやがると男たちがコニイを取り巻き始め、階段を上りかけると上に男が立ちふさがり、背後に迫って来た男(深江章喜)がぶるってるじゃねえかよと挑発して来る。

コニイは背後の男に殴り掛かると、階段を上り、見張りを倒して店を出ようとするが、カウンターの所で数人の男から押し倒され袋だたきに遭う。

その時、警官隊が乗り込んで来る。 東京での犯罪は年間4000件にも及ぶと言うと森繁の解説。

築地警察署の留置場 ちょうど臭い飯が下げられている。

「キャロル」のマスターと一緒の牢に入れられたコニイは、GMに会ったことないのか?GMってどこにいる?と聞く。

三室戸五郎って言うらしい。元大陸にいたんだとか…、お前知っているのか?GMを?とマスターは、名前を聞いて顔色が変わったコニイに逆に聞いて来る。 しかしその直後、コニイはあっさり釈放される。

署長は引受人が外で待っていると教え、一緒に入り口まで送ってやると、あんな可愛い引受人なら出さん訳に行かんだろうと言う。

そこでコニイを待ち受けていたのは、ルリ子とその友達の少女たちだった。

築地署から出て来たコニイの回りに集まったルリちゃんたちは、一斉に、タバコ、ガム、ビールに栓抜きまで用意していたのでコニイは呆れる。

あのお姉ちゃんもとルリちゃんが指差す先にいたのは雪乃だった。

雪乃は、コニイさん、おばさまは珠代ちゃんの病気を見舞いに鵠沼に帰ったのよ。 おばさまは銀座で働きたいって、それでえ相談に乗ってもらいたいんだって。

あなた銀座の顔役でしょう?鵠沼に行ってよ、ご主人と離婚なさるの、おばさまと巧くいかないで…、おじさまの仕事、法律に触れるらしいのと頼む。

さらに雪乃は、泰西画廊のあの絵を描いたの、コニーさんじゃないの?そんな気がしたの。おばさま、コニイさんのこと好きらしいわよなどと言うので、そんなバカな!とコニイは否定するが、後ろにいたルリちゃんたちが全員恨めしそうに睨んでいることに気づく。

雪乃はその日も「菊川」に戻って来ると、店の前で絵を描いている望月に出会う。

和歌子さん、鵠沼行ったでしょう?あの人諦めました。競争者が多すぎる。もうすぐ展覧会があるんです。絵を完成させなければ…と望月が言うので、ついでに私も描いて!と雪乃は望月の前に立ってポーズを取って邪魔をする。 今日は休日!映画見に行こうか?ボート乗らない?などと雪乃は望月を誘うので、不安だな…と望月は苦笑する。

ドロップ食べない?と雪乃が差し出していると、警官が2人前を通り過ぎて行く。

コニイは鵠沼の海岸で和歌子と会っていた。

近くの波打ち際では珠代が砂のお城を造って遊んでいた。 珠代ちゃんの病気、大したことなくて良かったですねとコニイが話しかけると、西銀座に手頃なお店があるんです。いつまでも遊んでいる訳にも行かないので…と和歌子は言う。

バーなんて奥さんには合わない。私はバーとかキャバレーは嫌いなんです。奥さんのような方が飛び込んで行くような所ではありませんとコニイは言う。

私は与太者です。今の銀座は汚くなり過ぎたとコニイがこんこんと言い聞かせるのに対し、和歌子は、私は生きるために身体を張るつもりですと答える。

奥様がなさるには明るく健康な店ではなりませんとまでコニイが言うので、でもコニイさん、どうして私のような女に…と和歌子は聞き返す。

その時、珠代がおじちゃん!と呼んだので、その側に向かったコニイは、砂に穴を作り、海の水を小さなバケツでくんでその穴に入れ、湖を作ってやる。

そんなコニイに和歌子は、「GM」さんの描いたあの絵、コニイさんにもらっていただきたいの、「GM」さんにお会いしてみたいって気持、ただの気まぐれでしたわ。

一番あの絵に関心を持っているコニイさんに持っていただくのが一番良いと思うんですと言うので、生きているかも…、私に絵を下さるのも気まぐれでは?とコニイは答える。

すると和歌子は、あなたのお店、手伝わせていただけません?そしてもっとお店を大きくするの。手伝わせていただけますね?コニイさん…と言い出す。

銀座教会の1階は「平和相互銀行」に貸してある…と森繁が紹介すると、そこから翌日出て来たのはコニイだった。 コニイが数寄屋橋の方へ向かうと、その近くから姿を現した男が2人いた。

1人は望月で、もう1人の男にコニイの後を付けるように命じる。 みゆき通りに並ぶフランス名の店舗を紹介する森繁

その店の一軒からで手来たのは仲町雪乃 その雪乃に、どこ行くの?と声をかけて来たのが桃山で、去ってゆく雪乃に手を振りながらよそ見をしていたのでゴミ箱にぶつかり、癇癪を起こして、コンクリ性のゴミ箱に蹴りを入れたので、足を痛めて痛がる。

路地を通り抜けようとしていた久子はジープに出会ったので、コニイさんが心配してたわよと声を掛けるが、俺、花屋「FLORIST」なんて辞めたんだと捨て台詞を残し、ジープは逃げ去る。

花屋「FLORIST」で働くようになっていた和歌子に、やって来たルリちゃんが、今、よそのおじさんが話しかけて来て、これを渡してくれってと言いながら手紙を渡す。

それを読む和歌子の様子が変だったのでコニイが何事かと見ると、夫からですの、会って話し合いたい。

警察がうるさいからこっそりと言っているのと和歌子は教える。

警察の目をごまかすくらいで来ますよとコニイは言うが、でも会う必要はありませんのと和歌子が言うので、一緒に店の外に出る。 コニイさん、あなた、あの少女像を描いた五郎さんを知っているんですね?と和歌子が問いつめると、私の兄なんですとコニイが打ち明けたので、やっぱり…と和歌子は得心する。

名前は三室戸五郎、兄は私よりも学校の成績は良く、社会運動に入ったので日本にいられなくなったんです。あの絵には兄の精一杯の郷愁を感じるんですとコニイは言うが、私はこんな話をするつもりはなかったと後悔する。

ご主人はあなたを必要としているのかもしれませんとコニイは言うが、私にはできないのと和歌子が会うことを固辞するので、ご覧なさい、銀座の川もだんだん埋められて行きます。

この下は30軒堀が流れていたのに…、銀座も変わります、人間も変わらないと元に戻ることはできません…コニイは言い聞かす。

和歌子は、このお店で働くようになり、この年になって初めて生きているような気がしますというので、私がご主人に会いましょうとコニイは申し出る。

和歌子は「オペラ」と言うキャバレーに行けば分かると…と言うので、早速コニイは「オペラ」に向かう。

フロアで踊る客の間を抜け、京極さんに会いに来たんだ、奥さんの代理で来たんだと店の者に話すと奥へと押される。 店内には、又、望月が来ていた。

奥さんの代理で来たと、とある部屋の前に立っていた見張りに伝えると中に入れてもらえるが、中ではブルーフィルムの映写中だった。

その部屋にいた三ツ星は、今度は天然色で作ったらどうだろう?などと提案した後、花屋は花屋らしくしてろと言ったはずだぜ。和歌子をたぶらかすのは止めろ!とコニイを脅す。

コニイが、奥さんの絵を描いた「GM」の本名は三室戸五郎!15年前に別れた俺の兄だ!と言うと、銀座のGMに会ってみろ、屋上にいると三ツ星は教える。

屋上に上ってみると、和光の時計塔が間近に見える暗闇の中に人影があり、誰だ?コニイだな?1人で何しに来たと声をかけて来る。

銀座のGMは俺だ、三室戸五郎だと名乗ったので、思わず、兄さん!僕だよ、三室戸完だよ!と呼びかけながら近づいたコニイだったが、その顔を見た途端、違う!あんたは僕の兄さんじゃない!銀座のGMは兄さんじゃなかったのか…と愕然として立ちすくむ。

お前は和歌子の使いでここに来たんじゃないのか?俺は三室戸五郎の昔の友達で京極克巳(河津清三郎)と銀座のGMは正体を明かす。

和歌子は五郎に夢のような憧れを抱いているらしいと言う京極に対し、同士だったのなら、何故、麻薬を売るための変名に使ったんだ!とコニイは怒りをにじませる。

変名を使う必要はなかったんだ、今じゃ逃げ回って、女房子供に会うこともできない…。 彼女はヒロポン密売者と暮らしたくないんだそうだ…

1杯やらんか?と京極は、その場に持って来たらしい洋酒をグラスに注ぎながら誘う。

学生運動に身を投じた仲の良い同士だった。 五郎は大陸の奥地で殺された。

俺は生き延びた。 お前には悪いが、世の中弱肉強食だよ。

俺は人に負けるのは嫌いだ。和歌子は俺の妻だ! 俺は子供の頃から可愛がられたことがない。

友人と思ったのは五郎だけだったが死んでしまった… 何故だ? 奴には力の裏付けがなかったからだ。

奴は何も残せなかった…と京極が言うので、生き残ったあなたは何を残した!とコニイは詰問する。

俺が銀座のポンやペイを仕切らなかったらどうなってた?三国人を追い出したのも俺だ!と京極が言い返したので、そんな理屈で悪行を重ねなくても、この銀座をもっときれいで平和なものに出切るんじゃないですか?とコニイは問いかける。

今は原子力の時代だ、自分の力以外誰が信じられる? 三室戸五郎、彼が残したのは絵一枚じゃないか。だが和歌子は結婚して以来、一遍も俺に見せなかった… 和歌子はどうしても別れると言っているのか?と京極が聞いて来たので、そう言ってますとコニイは答える。

この銀座とは今夜でお別れなんだ…、俺は京極和歌子の夫だ! 俺は俺のやり方であいつのことを考える。

帰れ!と京極は怒鳴る。

京極さん、これ以上、あの人を離さないなら、あの人は不幸になります。 あの人が不幸せになるようなら、コニイは身体を張っても守ってみせますとコニイは言い残し、屋上から立ち去ろうとするが、そこに望月が姿を現し、その背後には警官隊が付いて来ていた。

既に下の階では、三ツ星らも捕まっていた。

フロアを連行されて行く三ツ星に気づいた赤石が、三ツ星さん、どうしたんですか?と聞くと、野球は俺の内職なんだよと三ツ星は答える。

次々に「オペラ」から連行されて行く一味の姿を、客としてその場にいた桃山も雪乃も湯川もあっけにとられて見守っていた。

屋上では、京極が拳銃を撃って、接近する警官隊に抵抗していた。

それに対し、京極!無駄なことは止めろ!と望月が叫ぶ。 その場に残っていたコニイも、京極さん、止めなさい!と声をかける。

京極は一通の封筒を投げると、コニイ、和歌子に渡してくれ、離婚手続きの書類だと言うと、コニイ、どうやら俺の負けのようだと言い、銃を自らのこめかみに当て発砲する

銀座の柳が何種類あるかご存知ですか?と森繁が柳の種類を解説する。 水上バスの出発口で待っていたのは雪乃だった。

そこに、雪乃ちゃん、誰待ってるの?と近づいて来たのは湯川修だった。

何だ、シューシャインボーイかと雪乃が無関心そうに答えると、この頃冷たくない?と湯川がひがむので、松屋の仕事、明日の10時からでしょう?行くわよと雪乃は答える。

そこに、ずいぶん待った?と言いながらやって来たのは、警官の格好をした望月だった。

こちら望月警部と雪乃が紹介すると、湯川は慌てたように去って行く。

和歌子さん、鵠沼の家に帰るそうですねと望月が聞くと、今日に限って、何でこんな格好しているの?と雪乃が聞く。

然う感傷をもらう式があったんでねと望月が答えると、ああ、この間の事件…と雪乃が合点したようなので、あんなのは手柄にはならない、麻薬密売者の摘発なんかで総監賞なんかもらえません。絵が展覧会で1位になったんですよと望月は答える。

それを聞いた雪乃はあまりの意外さに笑い出し、GMが描いたおばさまの絵の方がましだと思うわなどと憎まれ口を叩く。

花屋「FLORIST」では、店を辞めるお別れに来ていた和歌子が、そのGMの描いた和歌子の少女像の絵をコニイに手渡していた。

この絵、おばさまの代わりにいるのね…と、それを見ながらルリちゃんが言い、ねえ、おばちゃん帰って来る?涼しくなったら…と聞くと、分かんない、みんな元気で働いてねと和歌子は答え去って行く。

お元気でとコニイも挨拶して見送っていると、おじちゃん、これ持ってって!とルリちゃんが花束を和歌子に手渡し、店の前に掲げてあった看板に書かれた「Sey with Flower」の文字を笑顔で指差してみせる。

颱風21号が接近中、今夜当たり、日本上陸の恐れがありますとニュースが流れる中、和歌子を追って東京駅へ向かうコニイは、「原爆持ち込み反対」の署名運動にサインする。

ホームで和歌子に追いついたコニイが持って来た花束を手渡すと、コニイさん、私…と和歌子は何かを言いかけるが、側にいた学生たちの送別グループが大声で万歳!と叫び始めたのでその後は黙り込んでしまう。

コニイは、森繁の歌う「銀座の雀」の歌の中、銀座の町を帰ってゆく。

和光の時計塔が写る。

 


 

 

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