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アリバイ('63)

熊井啓脚本で、二谷英明と宮口精二がバディを組む刑事物 東映の刑事物も定評があるが、この当時の日活の刑事物も巧い。

途中、いかにも御涙頂戴な設定が出て来たりして、ちょっと鼻じらむ部分がないではないが、当時の大衆向け要素としては妥当な演出だったのかも知れない。

渡辺美佐子さんが安定した芝居を見せてくれる一方で、容疑者役を演じている小高雄二さんの熱演も注目したい。

主任の芝木を演じているのは、後のテレビドラマ「西部警察」で気が弱そうで口うるさいだけの二宮係長を演じておられた庄司永建さんだと思う。

この作品では髪も黒々としており、二宮係長とは全く違うきりっとした主任を演じている。

高品格さんも刑事役で出ており「西部警察」を連想させる一方、二谷英明さんには「特捜最前線」を思い起こさせたりし、この辺りの作品が後のテレビの人気刑事ドラマの中核になって行くのか…と考えると深いものがある。

ちなみに、劇中で何度も「アスパラ」と言う実在した薬名が登場するが、これはこの当時の日活によく見られたタイアップではないかと思う。

白い上下に身を包んだ怪しげな大滝秀治さんの悪役振りも見物。

その大滝さんの役名はキネ旬データでは「陳」となっているが、どうも「りん」と呼んでいるように聞こえた。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1963年、日活、熊井啓脚本、牛原陽一監督作品。

この映画は警視庁の協力により行われました…と言うようなテロップ

日活会社ロゴ

指紋の写真

指紋は同じ形の人間は絶対にいないし、終生変わらない。

指紋検査機が並ぶ科研室内

だから指紋は犯罪捜査の決め手になるが、この事件ではその指紋によって追いつめられていた(と内藤武敏のナレーション)

事件は11日前の日曜日午後11時頃だった。

タイトル

(サイレンを鳴らし、信号を無視して直進する緊急車両のフトント部分の映像をバックに)キャスト、スタッフロール

上空にヘリが飛ぶ民家の前に警察車両とタクシーが乗り付け、刑事たちがゾロゾロと降り立つ。

野球中継がテレビから流れている室内に入ってみると、腹から血を流した男の死体が転がっていた。

犯行は拳銃二発による射殺 被害者は富士繊維(?)の経理士中島芳夫(緑川宏) 鑑識の結果死後4時間くらいと推定、犯行時刻は午前11時頃と判断された。

近所の住民への聞き込みで、大きな音がしたので驚いたと言う女性の証言。

テレビがついているので、門の外から声をかけたが返事がないので窓から中をのぞいたら死体を発見したと言う目撃者の男の証言。

所轄の刑事たちに捜査主任の芝木が、今3時ですから1時間後の4時に上がってくださいと初動捜査の指示をする。

そこに、所轄の佐川朝吉(宮口精二)が、被害者の奥さんを同行して来る。

ご主人に間違いありませんね?と本庁の畑中英次(二谷英明)が聞くと、奥さんは庭に飛び出し、地面に跪いて泣き出す。

そこにママ、どうしたの?と風船を持った3歳くらいの女の子が声をかけ、母親が答えないので、パパ!と呼びかけながら父親の部屋の方へ行こうとする。

それに気づいた柴木が入れるな!と声をかけたので、慌てて佐川が少女を抱くと、異変に気づいたのか少女が泣き出し、手を離した風船が空に舞い上がって行く。

おい、捜査だ!と刑事たちは声をかける。

警察犬を使った犯人の追跡や付近の聞き込みが開始される。

室内の28カ所から指紋が検出されたが、全て家族のものだった。

3時間20分後、所轄の武蔵署で第一回の捜査会議が始まる。

空中写真を使った現場周辺の説明を終えると、ガイシャの中島はアフファ電機に勤めていたが、2年前に計理士の資格を取って辞め、最近何とか生活が安定して来たくらいだと捜査係長が解説する。

奥さんの話では三和銀行と書かれた贈答用の箱がなくなっていたそうだが、奥さんはその中を見なかったらしいと言う。

高橋刑事(高品格)らが、地取り捜査の報告を行う。

周辺で中年男の目撃者などはいたがはっきりはしなかった。

畑中が立ち上がり、東の高台の方は道が狭く、誰にも気づかれず街道に抜けられますと報告し、ホシはあの辺の地形を知ったいたのではないか? 又、ガイシャが奥さんを新宿に買い物へ行かせたのも誰かが来るので2人だけで会おうとしたからではと佐川は推測を述べるが確証はなかった。

物色が素人臭く、金になりやすい貴金属を避け、手が付きやすいカメラや時計、通帳などだけ奪っているのも偽装臭いと畑中が物取りに見せかけるための指摘する。

凶器は米軍の45口径コルト1911-A-1型と判明。 これは先日立川から盗まれた8丁の内、すぐに見つかった1丁以外の7丁の1つに違いないと説明がある。

刑事の組み分けが行われ、本庁の畑中と所轄の佐川が組むことになる。

早速、翌日、7丁の拳銃を在処を探すために畑中と佐川は町に出る。

通訳の矢口というのが拳銃ブローカーの大野に売ったと言うので、佐川はシネマ通りでぽん引きの元締めをやっている梶本(柳瀬志郎)を訪ねることにする。

ハジキのブローカーの岡田はどうした?と佐川が聞くと、一ヶ月前から麻疹で寝ていると梶本は言う。

松田はどうしたと聞くと、轢かれて死んでしまったというので、女房のマリは?と聞くと、知らないなと梶本はとぼける。

じゃあ、大野に聞くか…とこちらもとぼけた佐川は、畑中から本部へ来てもらおうか?と声をかけられると、どこへでも行きましょうなどと言いながら立ち上がるが、いきなり逃げようとしたのであっさり捕まり、俺じゃない!マリだ!亭主に死なれて生活に困っていたので松と組んだんだ!と吐く。

そのマリ(安田千永子)を基地の側に呼び出すと、何だよ、この暑いのに…とマリは迷惑がるが、大野って知らんかね?昨日の事件は奴のハジキだ、殺生な真似しやがって…、女房はお前と同じくらいで3つくらいの娘と泣かれたときはさすがの俺も参ったぜ、何か知ってたら知らせてくれ、仏の供養と思って…と佐川が聞くと、 大野は死んだうちの人の友達で、梶本に相談したら通訳を紹介されたんだと打ち明ける。

拳銃を持ってどこ行った?と畑中が聞くと、渋谷だよ、四日前に…とマリは教える。

すぐさま渋谷のヤクザ事務所のガサ入れをする畑中。 日本刀などが押収される中、冷蔵庫の氷ケースの所に隠してあった拳銃一丁を発見する。

佐久間はどこにいる!と畑中はヤクザたちに聞く。 すぐに寝間着姿の佐久間は路上に飛び出した所で捕まり、大野は新宿の安村の所へ行ったと吐く。 その安村を高橋たちが町中で逮捕する。

盗まれた7丁の拳銃が次々と発見されて行き、残るは1丁だけとなる。

浅草に取引場所があるとの情報を得た畑中は単身、ツイストをする若者で賑わう酒場に行くと、上野の後藤の兄貴から聞いて来たんだが大野さんのハジキだよとカウンターでママに話しかけるが、警戒したママは聞いてないわととぼける。

その時、バーテンがママに電話だと声をかける。

受話器を取ったママは、店内に流れる騒音で聞こえにくそうだったが、外の公衆電話からかけていたのは佐川だった。

後藤さんは今サツに行っている、うちの若いもんをそちらにやったから宜しくと後藤の身内のような芝居をしてママを騙す。

それを真に受けたママは、いくついるの?と畑中に聞いて来たので、あるだけで良いと畑中は答える。 その後も、店の前の路地裏に佐川は身を潜めて様子を見ていた。

深夜0時直前、客がいなくなり、ママと畑中ともう1人のチンピラだけが残った店に眼鏡をかけた大野(小高雄二)がやって来る。

今日はないよ、集金はどうなっている?とチンピラに話しかけた大野が畑中に気づき、この人は?と聞いて来たので、捜査一課のものだ!と警察手帳を畑中が出すと、大野も側にいたママも驚く。

チンピラが銃を取り出すが、そこに拳銃を持った佐川が入って来て動くな!と制する。 銃を構えたヤクザと佐川が徐々に間隔を狭めるが、佐川は自分の銃を先にしまい、まだ銃を構えたチンピラの腕から拳銃を取り上げる。

大野の取り調べが始まるが、拳銃は六本木のチンピラに売ったと言うだけで、名前を聞かれても忘れたと言う。

まさかお前、ホシじゃないだろうな?と佐川が迫ると、俺じゃねえ!俺を犯人にでっち上げようと言うのか!と大野は逆上する。

それから三日目の午後 大野の取り調べはまだ続いていたが、大野が机の上で指を動かしているのに気づいた畑中が、お前、ピアノが弾けるのか?と聞く。

そこに、主任たちがやって来て、大野、現場付近で11時頃、お前を見たと言う人が出て来たぞと教えると、人間の記憶なんか当てになるものか!俺が捕まったときのネクタイを覚えているか?ずっと一緒だったはずだぞ!と大野は逆上し浜中に詰め寄る。

浜中は確かにネクタイのことを覚えておらず黙り込む。 さらに、さっき米軍から連絡があり、現場に残っていた弾はお前が隠している銃のものだと分かったと責めると、俺が売ったとどうして分かるんだ?と大野は反論して来る。

捜査本部では、現場からなくなっていたと言う三和銀行からの贈答品について銀行に行った松田刑事(木浦佑三)からの報告があり、烏山支店から送っていることまでは分かったが、送り主は守秘義務があるので教えられないということだったと言う。

そこへ電話がかかって来て、主任が出ると淀橋署からで、大野の家を割り出した!と刑事たちに伝える。

畑中、佐川らがその安アパートへ行くと、管理人たけ(武智豊子)が、事件の前の番、女と男が2人大野を訪ねて来て、その内女が泣き出したなどと見たように話すので、本当かね?と佐川が確認すると、安普請のアパートなので声は筒抜けなのだと言う。

大野の部屋を調べても何もなく、管理人が言うには、最近全部処分して布団も売っちゃったみたいと言い、帰りかけた畑中たちに、そう言えば、大野には1人妹がいると教える。

一方、三和銀行に再度訪問した刑事たちの執拗な問いかけに、とうとうガイシャの中島に贈った贈答物の送り主が田園調布の秋田千恵と言う人物で、内容は100万のギフトチェックだったと言う。

ギフトチャックが届いたのは事件の前日で、100万と言う多額であることから、大野の目的はこのギフトだったのでは?と畑中は推理する。

千恵の自宅を訪れてみると、表札には呉羽の名が書かれており、ちょうど車で出て行ったのが、家の主人だったらしかった。

千恵に会い、銀行からギフトチェックを贈りましたね?と聞いて所、覚えがないと言う。


今出て行かれたご主人があなたの名前で贈られることは?と聞くと、分からないと言う。

その言葉から、奥さんは関西の方ですか?と聞くと、2年前に上京し、呉羽とは去年結婚したと言う。

大野とガイシャの中島の写真を見せるが知らないと千枝は言い、その時、お手伝いが来て、億様、旦那様のカラー写真のことでお電話ですと千恵に知らせに来る。

千恵が席に立つと、応接間に残った畑中は、線としては弱いですねと佐川が話しかけて来たので、それより旦那の方でしょうねと呉羽の方が怪しいと匂わす。

呉羽(陶隆司)に会いに行くと、アルファ電機に移る前、うちでも経理をやっていたんです…、気の毒でしたと呉羽は悔やむように言う。

ギフトチャックのことを聞くと、家内から聞きました。実際には私です。

うちも手伝ってもらっていたのでそのお礼ですと呉羽はあっさり答える。

殺人事件に呉羽が絡んで来たので、以前から内定を進めていた捜査第二課に協力要請が来て、二課の滝村剛(鈴木瑞穂)が事件に協力することになる。 呉羽は香港出身の華僑で、飲食店に金を貸して相当儲かっているらしい。

内定していたんですが一筋縄では行かない。 追いつめても最後の最後で合法的に逃げられてしまうと一課にやって来た滝村は説明する。

大野は自供しましたか?と滝村が聞くが、畑中は、まだですと答える。

さらに畑中の大野への取り調べは続く。

呉羽を知っているだろう?一昨日の夜、留置場でうなされて目覚めたらしいな?夕べはほとんど寝てないそうじゃないか?と佐川が責めると、うるさい!と大野は憔悴し切った顔で答える。

意地っ張りが元で一生惨めに暮らさなくなるんじゃないか?楽な気持になったらどうだ?と佐川は切々と言い聞かせ、これを見ろ!お前が人間を殺した弾だ!と畑中も銃弾を大野に突きつけ迫る。

捜査員たちは、今日は初七日でしたな…と妻に話しかける。

電報の送り手であるアルファ電機の専務下平(上野山功一)に会った滝村と高橋は、「例の件を頼む」と電報には書かれていますが、奥さんの話では中島さんはじっと考えていたとか…、会社のために何をしろと頼んだんですか?と滝村が聞くが下平は何も答えない。

その時、チンピラ風の男が部屋に入ってきかけ、来客に気づいて慌ててドアを閉める。

一課が動いていると世間に知れると新型テレビの売行きに影響があるんじゃないかと思って我々は今までじっと待っていたのですと滝村は嘘をつく。

本部に戻って来た高橋は、専務たちの尾行を始め、先ひど赤坂で、呉羽を尾行して来た刑事と合流したと報告する。

とある料亭から下平や高木社長(下元勉)らアルファ電機の重役たちが見送っていた車に乗っていたのが呉羽らしかった。 それを聞いた主任は、何!高木社長が?と驚く。 呉羽と大野が繋がりましたね…と滝村が指摘する。

良い所を二課さんに取られそうですなと一課の刑事が冗談を言うと、一課ではこの事件に8日だそうですが、我々は3年ですからな…と滝村は言い返す。

そこへ一枚の写真がもたらされ、それはガイシャの中島と高木社長、そして秋田千恵が一緒にゴルルをしている情景だった。

千恵はひた隠しにしていますが、事件の12日前、中島と一緒にゴルフをしていますと佐川が報告すると、君たちご苦労だが張り込みだ!と主任が頼む。 千恵を尾行し始めた畑中と佐川は駅に来てそれぞれ電話をする。

畑中から電話を受けた主任は、ご苦労だが付けてくれと指示、一方、近くの店のかかって来た呼び出し電話を聞きに来たのは佐川の娘だった。

もしもし、お父さん?お母さんの具合が良くないの…、お父さん、どこか行くの?誰かに代わってもらえないのと?と娘は頼むが、お母さんを頼んだよと伝えた佐川はそのまま千恵が乗り込んだ電車に乗り込むが、その後表情が暗いのに気づいた畑中がどうかしたんですか?と聞く。

しかしそれには答えず、社内の千恵の様子を監視し始めた佐川と畑中は、車掌が千恵に大阪着は1時20分ですと話しかけたのを聞き、千恵の目的地が大阪だと知る。 翌日、千恵は大阪で数名に会うと神戸に向かった。

「芸術ヌード フラワー・スタジオ」と言う場所へやって来た千恵は、大野はあんたに合いにちょくちょく来よったと言う店の主人に金を渡そうとしていたが、もっと他の連中にも見られたかも知れんと言う主人にさらに金を渡そうとしていた時、畑中たちが乗り込んで来て、事件の前に大野のアパートに行きましたね?と千恵に迫る。

大野とは6年前から付き合い始め、彼はその頃作曲をやっていたんです。

その内、あの人、米軍相手のバンドをやっているうちに麻薬を覚えたんですと千恵は自供する。

お金に困っていた私はここでモデルをしてたんですと千恵が昔ヌードモデルをやっていたことを明かすと、あなたはその後東京でファッションモデルになり、呉羽と結婚なさったんですね?と畑中が聞くと、お金が欲しかったんです!と千恵は訴える。

大野はその間に直ったんですね?と聞くと、1年後彼も東京に出て来てましたと千恵が言うので、大野が中島さんを狙った訳は?と聞くと、大野はやってません、アリバイがあります!と千枝は言いだす。

大野がしゃべったら呉羽に私たちのことがばれてしまいます!と千枝は言い、あの日の朝、近くの薬局に寄りましたとアリバイを持ち出す。

早速の粗薬局へ向かった畑中らは、先週の日曜日の11時頃来た女性客を覚えてないか聞くと、男の方とでございましょう?と薬局の主人はすぐに答え、ちょうどその時、テレビで美容体操をやっていたものですからと時間を覚えていた理由を話し、畑中が取り出した5枚の写真の中から大野の写真を取り上げ、この方が似ていますと言う。

その時、男はアスパラを自分で飲んで行ったと言う。

その言葉を実証するため、大野の指紋が採取され、薬局のゴミ箱に残っていた「アスパラ」のアンプルの空き瓶を全部調べることにする。

科研の指紋検出機の部屋にやって来た主任の芝木は、出るもんか…と呟くが、側に立っていた畑中は、しかし、万一…、出たらアリバイが成立します!もし出たら…と案じながらも、出るもんか!と自らに言い聞かせる。


しかし、その直後、ありました!と係員が叫ぶ。 それを聞いた主任や佐川が愕然とする。

その後、畑中を屋上へ誘った佐川は、私の勘では奴がホシに間違いないんですが…と言い出したので、畑中は反証が出てるんですと言い聞かす。

それでも佐川は、私は自分の経験しか信じられません、これからの捜査はそれではいかんのでしょうけど、35年無駄に靴を減らさなかったつもりですと言い切る。

それから2日後… 大野はアリバイが成立しシロになった。 二課では呉羽の背後関係に目が向けられ、捜査員たちが一斉に会社へ乗り込むと、滝村が呉羽に代表して大掃除に来ましたと礼状を示しながら告げる。

令状を読んだ呉羽は、外国為替禁止法ですか、いまどきこんなもの守っている所はありませんよと搦め手から責めて来たことへ苦言を呈すると、1ドルでも違反は違反ですからなと滝村は答える。

呉羽はアルファ電機に、4000万、5000万、9000万と金を貸しており、アルファ電機の新型テレビを作る設備費用の推定値を同じです、この辺が鍵でしょうと滝村は一課の刑事たちに伝える。

夜の街角、売店を開いていた女性に地元の地回りが因縁をつけて来た所へ、1人のヤクザ風の男が来て止めとけと注意する。

地回りはその男に頭を下げ逃げ去り、そのヤクザ風の男も売店の女の礼も気にせず立ち去るが、それを目撃した浜中たちは、アフファ電機で見た男だと気づき尾行して、飲み屋で話を聞くことに成功する。

俺が言ったなんて言わないでくれよと前置きし、そのヤクザ風の男下里(日野道夫)は、アルファ電機は呉羽に手形をパクられたんだと話し始める。

最初は法定利息で貸す。1回~4回目くらいまでは… (回想)ゴルフ場で貸した金を急に返せと呉羽から迫られた高木社長は、なにぶん急ですから、それに額も大きい…と難色を示す。

すると呉羽は、友人を紹介しますから相談なすっては?と高木に勧める。

呉羽の会社で高木が紹介された友人陳(大滝秀治)は、とてもそれだけを3日間では…と渋るが、いつもやってるじゃないかと呉羽が無理を言うと、社長さんとは今後のこともありますからなどと言い、陳は高木から手形を受け取って行く。

しかしその手形は二度と戻って来なかった。

高木社長が呉羽に文句を言うと、自分は友人を紹介しただけだから…ととぼけるだけだった。

(回想明け)あなたにも責任あるよ、高木社長…、あんたはグルだ!呉羽はいつものプランでやったが、あんたは横領の罪で起訴されますよとアルファ機械にやって来た滝村は詰め寄る。

アルファ電機は1000万の小切手12枚、総額1億2000万と帳簿に記載されているはずです…と佐川や畑中もアルファ電機の高木や重役たちに迫るが、高木たちは黙して何も語らなかった。

その頃、下里をシミーズ姿の女がいる屋敷に連れ込んだ陳は、子分たちに下里を痛めつけさせていた。


;良くも俺たちを売ったな!仲間から外されたことを根に持ちやがって!お前がしゃべらなかったらどうしてばれたんだ!と、トランジスタラジオの音楽を鳴らし、暴行の音をごまかしながら袋叩きにする。

その部屋にいた林(郷英治)は下里に、お前はいつも俺たちのガンだった。だから仲間から外したんだと告げ、バラすのか?と陳と相談する。

すると陳は、条件がある。これにサインしたら俺たちが段取りしてやると言いながら、一枚の領収書を下里に差し出す。

下里は無言で下里道夫とそこに署名する。 その下里のサインが入った受け取りを畑中たちに見せた呉羽は、手形はこの人が下里に渡したそうですと言うので、この受取人の下里は?と聞くと、夕べ大阪に行きましたと陳は人ごとのように答える。

それから1週間後の朝 重りを付けて沈められていた遺体を浚渫船が泥と一緒に引き上げたと言う7号埋立地の事件現場に呼び出された畑中は、ガイシャが君の名刺を持っていたと現場の刑事から聞き、遺体を見て下里!と驚く。

この7号埋立地殺人事件は中島殺人事件との合同捜査本部が設置され、再度大野が参考人として連れて来られる。

大野の取り調べには芝木主任が当たることになる。 それから数日後のある雨の日 アルファ電機の社長室に集まった重役たちは、自分たちには刑事が尾行しており、万一に供え、首脳部の動静を警察が見守っていますと警戒する。

呉羽に小切手を渡したことがばれれば会社の自滅を意味している。

高木社長は押し黙るだけだったが、窓の外を見て、本降りになって来たな…と下平に語りかける。

窓から外を見た下平は、傘もささずビルの前で監視を続けている佐川に気づき、傘を持って近づくが、その佐川にやはり傘もささずに駆け寄って来た畑中が、捜査本部にお嬢さんから電話が入り、奥さんが先ほどなくなられましたと告げたのを聞き、思わず立ち尽くしてしまう。

何とか早く事件を解決して側にいてやりたかったんですが…と佐川は雨に打たれながら呟くので、何故隠していたんです?と畑中が聞くと、言っても直るもんじゃないですから…と佐川は答える。

せめて今日くらい家に残っていたかったのですが…、このどの事件が最後ですから…と佐川が言うので、佐川さん、辞めるんですか!と畑中が驚くと、来月…と佐川は答える。 そこに別の刑事が傘を持って来るが、佐川はその傘を受け取らず、現場から去って行く。

その様子を窓から見守っていた重役たちは、花輪の1つも出すか?この災、関わり合わん方が良いんだなどと話し合っていた。

しかし、佐川家の葬式にやって来た下平は、そこにいた畑中から花輪は社長からですか?と聞かれ、寺の中に「高木家」の名が書かれた花輪が飾られていたことに気づき驚く。

畑中の姿を見た喪主の佐川が、学生服を着た長男と娘をその場に残し、何かありましたか?と寺の中から抜け出して聞いて来たので、今日は仕事できたんじゃありませんと畑中は呆れる。

行き詰まりですか…、どうです、大野と秋田千恵をもう一度洗い直しませんか?大野がシロとは思えんのですと伝える。

双子としか考えられんですが、指紋は違うし…と考え込んだ畑中だったが、あの人をご覧なさい、2人ともモーニングを着て眼鏡をかけている、ぱっと見、区別できますか?と近くで挨拶をしていた弔問客の男2人を指差す。

確かに似てますな…と佐川も納得すると、薬屋に来たと癒え荒れる男が似ている奴なら…、人間の記憶なんて当てにならないと大野が言ってたじゃないですか。ネクタイがどうとか言って…、手口をほのめかしていたようなものですよと畑中は指摘する。

件の薬局で実地検証が行われた。

千恵と大野が問題の薬局に連れて来られ、その日の再現をやることにしたのだ。

薬局の主人が見ている前で「アスパラ」が良いかしら?と千恵がコート姿の大野に聞く。

店を出た大野に、車はどこにあった?と畑中が聞くと、大野は押し黙り、しばし考えた後、ここにあったと場所を指す。

どっちを向いてた?と聞くと、あっちだと言うので、間違いないな?と畑中が念を押すと、忘れたと大野はとぼけるが、側にいた千恵が泣き出す。

車はここにあったんだ!秋田さん、あんたさっきはっきり言った!と畑中は告げ、大野は来なかったんですね?と佐川が千恵に聞く。

そんな現場検証を見ていた野次馬の中にいた1人の男がその場を去る。

その男に大野は気づいたようだった。

その男から電話を受けた呉羽は、今日中にはここに来るなと指示を出す。 呉羽の部屋には陳も来ていた。

捜査一課4号室 大部に行かせたのも呉羽です…と千恵が自供していた。 最初から私が尾行されるのも計算していたんです。

私が大野をかばおうと必死になればなるほど、私は信用されアリバイが本物に見えるからです。

(回想)事件前夜 大野のアパートに来た千恵と、子分を連れて来た林とは、お前から買ったこの拳銃でやるんだと、拳銃を飯台の上に置いて命じる。

呉羽さんはあんたたちの関係を見抜いていたんだよ。借りを返して欲しいそうだ。 やり方は明日の朝教えると林が言う。

翌日、11時に着くよう電報を打って中島さんを足止めして、薬局には大野に似た男と一緒に行き、大野さん、「アスパラ」で良いかしら?と千恵が似た別人に話しかけると、別の女客が主人を呼び、テレビで美容体操をやっているのね?と話しかける。

その間、大野に似た男は飲み終えた「アスパラ」のアンプルを千恵に渡し、千恵はあらかじめ用意していた大野の指紋がついた「アスパラ」のアンプルを薬局の空き瓶入れに投げ入れて店を去る。

その頃、中島の家に行き、犯行を終えた大野は、東の高台の方へ逃げ、林の中で待っていた林に呼び止められると、犯行に使った拳銃と中島の家から盗んで来たギフトチェックを受け取る。 呉羽を本部に呼んだ芝木主任は、中島さんはあなたの指示を断った。

困ったのはあなただ。ギフトチャックが残っていると殺害の首謀者であることを指摘するが、私が命令したという証拠がどこにある?と呉羽はしらを切る。 その頃、大野は、俺には妹がいるんだ!あいつが殺される!と取調室で興奮状態になる。

畑中は、妹は保護してやる!もし無事だったら、行きていると分かったら、みんな言う…と大野は言うので、妹はどこにいるんだ?と畑中は聞く。

しかしその頃、とあるプールで働いていた妹大野とし子(進千賀子)は、チンピラ風の男から、雑誌で隠した拳銃を突きつけられ密かに連れ去られていた。

直ちに警視庁司令室から2号配備が発令される。

パトカーが町に繰り出し車の検問が始まるが、とし子の姿は見つからなかった。

会社に戻って来た呉羽は、窓の外から聞こえるパトカーのサイレン音が気になり、そっと窓から下を覗くと、刑事が2人張り込んでいた。

そこに陳がやって来ると、畜生め!片付けろ!あの女を殺して引き上げると呉羽が言い出したので、陳は驚くがその場からすぐ電話をかけ始める。

取調室では、妹が殺される!と大野が泣いていた。

とし子が殺される!あいつらきっとやりやがる!と喚いた大野は、食事としておかれていた丼物を弾き飛ばす。

アルファ電機の高木社長に会いに来た畑中と佐川は、大野の妹が誘拐されたんです。共犯者を教えてください!と頼むが、鷲は何も知らん…、お引き取りくださいと高木は言うだけだった。

やむなく帰りかけた2人だったが、1人入り口の所で立ち止まった佐川は、申し遅れましたが、先日は花輪をありがとうございましたと葬儀の礼を言う。

大野は、とし子!とし子!と喚いていた。

そこへ連れて来られた千恵が、林です!本名は陳!と告白したので、それを聞いた大野は、千恵!と驚く。

住所は四谷のマンションだったんですが、事件の前に用心のため、どっかに引っ越しましたと千恵は打ち明ける。

早速手口捜査係で陳の洗い出しを始める。 一方、誘拐されたとし子に関する情報も集められていたが、該当者はなかなか見つからない。

陳の前科もないことが分かる。

そんな中、呉羽が渡航の手続きを始め、17時の便で羽田から飛び立つという情報が入って来る。

後5時間しか残っていなかった。

畜生!いつもこうだ!5年間も迷宮の苦い酒を飲んで来たんだ!今度こそと思ったのに…と滝村が悔しがる。 そんな本部にいたは田中は入り口の方からは行って来た人物を見て驚く。

アルファ電機の高木社長だった。 高木は、これが共犯者の住所ですとメモ書きを主任に渡す。

世田谷区用賀町だった。

中島君が死ぬ2時間前に教えてくれた…、私には経営者としての責任があります…と高木社長が無念そうに言うので、マスコミに漏れないように配慮しますと主任が礼を言うと、それより早く妹さんを!と高木社長は頼む。

陳は竹林と名前を変え用賀に住んでいたので、押売りに化けた佐川が単身乗り込んでみる。

すると、コレラが発生したニュースがラジオで流れている中、シミーズ姿の女が出て来たので、ゴムひも買ってくれないか?20円で良いよと申し出るが、うちには若い衆が4人もいるよと言い、その内の2人が玄関に顔を見せ、女も帰らないと警察呼ぶよ!などと威嚇して来たので、慌てて逃げ出す振りをして、外で隠れていた主任に、中には4人いますと報告する。

畑中は近くの床屋に行って上っ張りを貸してくださいと頼む。

その白衣を着て保健所員に化けた畑中が屋敷に乗り込み、液の近くで旧制コレラが発生したので、大至急保健所で注射を打ってくださいと女に伝える。

羽田では、陳がうちにいなかったらどうしますと張り込んでいた滝村が案じていた。

やがて、用賀の家から用心したのか、女と男が2人出て来て保健所へ向かおうとする。 張っていた刑事たちがその3人を逮捕する。

やがて、羽田には、呉羽と陳が揃ってやって来たのを滝村たちが確認していた。

用賀の家の奥には誘拐されたとし子が猿轡をかまされ、身体も縛られていた。 家に残っていた林は、どうします?あれ…ともう1人の見張りから妹のことを聞かれると、入って来たらすぐバラす!と答える。

主任も元に戻って来ていた畑中は、後360分で飛行機が出ます。やりましょう!妹がいるかいないかと話す。

そんな中、見張りの男が、さっきの保健所、薬屋のデカだ…と、実地検証していた時見かけた刑事の1人ではないかと気づく。

を見た見張りは、貴様、やっぱりデカか!と気づく。

それに気づいた林がライフルを撃って来て、1人が撃たれる。

しかし、妹がいた部屋に、張り込んでいた刑事たちが一斉に飛び込んで来る。

林は外の草むらに逃げ込みながら、ライフルを撃って来るが、すぐに弾切れになったのでライフルを投げ捨てて来る。

足を撃たれた刑事が、大野とし子さんですね?と解放されたとし子に確認し、羽田に連絡しろ!と呼びかける。

羽田で待機していた刑事が滝村に、連絡が入りました!呉羽を押さえましょう!と声をかける。

草むらに逃げ込んだ林は拳銃で撃って来るが、拳銃を捨てろ!抵抗は辞めろ!と呼びかけながら、畑中らが追って来る。

銃を持って接近した畑中と林が決闘のように対峙する。 やがて銃を撃ち合い、林が落とした拳銃の上に血が滴る。

その拳銃を拾おうとした林に畑中が飛びかかり、他の刑事たちも飛びかかる。 佐川は押収した手形を主任に渡す。

夜の町に出た佐川と畑中は、事件解決の電光ニュースを見上げる中島の妻と幼い娘の姿を目撃する。

良かった、良かった…、みんな捕まったのよ、さ、お父さんに御報告しましょうと娘に語りかける母親。

お元気で!と畑中は佐川に声をかける。

事件は解決したが、永久に消えぬ傷跡を幾多の人の心に残した…(とナレーション)


 


 

 

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