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旅路('67)

 

放送当時、「おはなはん」に次いで大人気だったと言うNHK朝ドラの映画化で、TV版とはキャストが違っている。

室伏雄一郎(TV版)横内正→仲代達矢

室伏有里(TV版)日色ともゑ→佐久間良子

室伏嘉一(TV版)宇野重吉→登場せず

室伏しの(TV版)岸旗江→原泉

室伏はる子(TV版)久我美子→小山明子

室伏千枝(TV版)長山藍子→樹木希林

千枝の夫・岡本良平(TV版)山田吾一→鈴木ヤスシ

佐々木三千代(和田三千代)(TV版)十朱幸代→宮園純子

塩谷駅長・南部斎五郎(TV版)加東大介→伊志井寛

駅手・伊東栄吉(TV版)名古屋章→木村功

庶民派風のキャスティングになっているTV版に対し、仲代達矢、佐久間良子と言う典型的な美男美女コンビになっているのが映画版の特長だろうか?

松竹の「おはなはん」も、庶民派タイプのTV版樫山文枝さんが美人女優の岩下志麻さんになっているし… TV版に馴染んで来た人には映画版のキャストは違和感があるだろうし、朝ドラを支えている主婦層が、生活感があまり感じられないばりばりの美人を好むかどうかは疑問がないでもないが、テレビと比較しなければ映画版は映画版で成立していると思う。

当時、悠木千帆名だった樹木希林さんは、TVドラマ「七人の孫」(1964~1965)のお手伝いさん役でお茶の間の人気者になっていただけに、この映画の中でもコメディリリーフ的な活躍を見せている。

準主役かと思えるほど登場シーンも多く、丸顔で可愛らしい当時の希林さんを知る上では貴重な作品になっている。

浮世離れした世間知らずのヒロインの姉役を演じているには吉行和子さん。

ほんのちらりと登場する令嬢風の美人は「キャプテンウルトラ」のアカネ隊員こと城野ゆきさんである。

お話的にはおそらくTV版の前半部分をかなりはしょっている感じがあるのに加え、長編ドラマの途中で話が終わっている印象がある。

芸術祭参加作品としては、真面目だがやや通俗で中途半端な気がしないでもないが、娯楽映画としてみるならば、確かに人気を博しただけのことはあり、今見ても面白いと言わざるを得ない。

零落気味の地方の旧家に育った素直な娘が、結婚を機に未知の新たな新天地で夫とともに波瀾万丈(大半は嫌な女に翻弄されるだけなのだが)の人生を歩むことになる…と言う展開は、女性ならずとも惹き付けられるものがある。

ただ、中盤以降のヒロインが夫の行動を懸念して苦悩する辺りの件は、女性に取ってはヒロインに自分を投影し、一番身につまされてハラハラする所かも知れないが、男からすると通俗で退屈な痴話喧嘩でしかない。

劇中、嫌な女が続々と出てくるのは、やはり女性原作者特有の感覚なのかもしれない。

当時、朝ドラなどほとんど見る機会がなかった中高年世代、または当時の朝ドラを見てなかった若い人たちのとってのダイジェスト版のようなものと考えれば、それなりの価値がある作品だと思える。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1967年、東映、平岩弓枝原作、田中澄江脚色、村山新治監督作品。

昭和42年芸術祭参加作品

昭和3年夏

室伏雄一郎(仲代達矢)は、両親の遺骨を抱いて、両親の故郷である紀州へやって来る。

連絡船の甲板から初めて見る紀州須賀利の海は、見慣れた登別の海に比べ明るく優しかった。

雄一郎の両親は北海道の塩谷に住み着いた。 当時の積丹半島の海はニシンで銀色に染まると言われた。

(回想)

塩谷駅 駅の横の柵に上り、駅に止まっていた貨車を見ていた少年雄一郎(小池修一)は、ニシンだって牛田って馬だって運ぶんだ!と仲良しの三千代(植田多華子)に教えていたが、そこへ姉のはる子(黒川志保美)が駆けて来て、雄一郎!父ちゃんが! と叫ぶので、帰って来たの?と雄一郎が無邪気に聞くと、船から落ちたんだよ!と教え、三千代をその場に残し、雄一郎の手を引いて家に帰る。

家に帰ると、妹の千枝が、兄ちゃん、お父ちゃんが死んじゃったよと言うので、思わず外へ飛び出した雄一郎をはる子が慌てて追って来る。

海に向かって雄一郎は、バカ!ニシンなんか嫌いだ!おらの父ちゃんを返せ!おら機関士になるぞ!と叫んでいるのを、追いついたはる子は目撃する。

その後、49日が済んだ時、母のしの(原泉)が、里に帰って来たらどうかって…、あの人はニシン漁も成功せんまま死んでしまった…と寂しげに言う。

それを聞いていたはる子は、雄ちゃん、機関士になりたいって言ってたと教え、南部駅長に預けたら?と提案する。

大正8年 春

塩谷駅に帝国大卒の関根(村井国夫)が助役見習いとして赴任して来る。

大正14年 冬

雄一郎(仲代達矢)は電信係見習いになる。

その年、三千代が東京の銀行員と結婚することになる。

千枝(悠木千帆=樹木希林)は、三千代さんは兄ちゃんのお嫁さんになると思ってたと言い、南部駅長の妻節子(三宅邦子)は、孫に三千代が家にやって来るのを心配し、道が悪いかも知れないので見てくれと雄一郎に頼む。

はる子(小山明子)は伊藤栄吉(木村功)と付き合うようになっていた。

栄吉は、仮祝言でもしたいんですが…と、南部斎五郎(伊志井寛)に打ち明けていた。

その後、母しのが危篤状態になったと聞き、雄一郎が自宅に駆けつける。

しのは、父ちゃん…、やっぱり、尾鷲に帰りたかった…とうわごとのようにつぶやいていた。

(回想明け) 父も母もこの海に生まれ、北へ行ったのか… この年、張作霖事件が起こり、治安維持法が改正され、世の中は不景気だった…(と小松方正のナレーション)

後何年したら駅長になれるのか…? 伯父夫婦の家にやって来た雄一郎は、自分のことを自嘲気味に答える。

世間では酷い就職難で、満州では戦争が始まったらしい…と世間話をしていた伯父(浮田左武郎)は、中里さんの娘の話だが…、母さんから頼まれていたんだ。

嫁は尾鷲からもらいたいって、姉さんもいつも言ってた…、明日は尾鷲の祭りだと言い出す。

その後、中里家の家に伯父と出向いた雄一郎は、通された部屋にある舶来の時計や螺鈿細工の戸棚などに驚いていた。

雄一郎も、凄い竹やぶですねと感心していると、どこからともなく琴の音が聞こえて来る。

そこに、母親みち(吉川満子)とともに現れたのは長女弘子(吉行和子)だった。

大変ですね、人の命を預かる仕事で…とみちが切り出し、昇進試験が大変で…と裕一郎が答えると、いきなり弘子が、私、試験嫌い!と言い出す。

私のように、親の遺産を守って田舎にこもっているものにはうらやましい…と、弘子の兄の勇介(片山明彦)が言う。

裕一郎に付き添って来た伯父も、十分な援助はするつもりですと先方に伝えると、裕一郎に竹林でも見て帰ったらどうや?と勧める。

その言葉通り、竹林を見に行った雄一郎は、側にやって来た美しい娘から、何か竹を?と聞かれたので、こんな太い竹初めて見たもんですから…、北海道にはありませんから…と答える。

それを聞いた娘は、じゃあ、あなたが今日家に来られた方ですのねと微笑むと、私はここの娘ですのと自己紹介する。

弘子の妹の有里(佐久間良子)だった。 じゃあ、さっき琴を弾いてたのはあなたですね!と雄一郎も笑顔になる。

翌日、尾鷲の祭りを見物に出た雄一郎は、踊っている有里の姿を発見する。

有里の方も雄一郎を発見する。

小樽駅 駅前の売店で働いていた千枝は、同僚のおばさん(山本緑)に、東京の伊藤さんにも会って来るって…と兄の旅行のことを話していたが、そこに保線区で竈焚きやっている岡本良平(鈴木ヤスシ)がやって来たので、いつもあんぱん3個買ってくれるの!とうれしそうにおばさんに紹介する。

その頃、東京駅前で伊藤栄吉と待ち合わせていた雄一郎は、やって来た栄吉がきれいな礼状同伴だったので驚く。

3時に日比谷ビルの前で!と伊藤に告げ立ち去った令嬢和子(城野ゆき)は、緒方次官のお嬢さんだと教え、三千代さんも盛大な結婚式をあげたそうだなと聞く。

雄一郎は栄吉と近くの蕎麦屋に入ると、姉が手紙を差し上げてもあなたからの返事がないと言っとりましたと伝える。

それを聞いた栄吉は、さっきは若い娘と一緒だったが、実はあの家に住んでいるので、土曜の活動に連れて行ってくれと言われれば断れない…、伊藤栄吉が高官の無辜になるようなケチな男に見えるかな?と言い訳しながらも、手紙が着かんのは変だな?あの家を出よう…と真顔で言う。

その時、琴の音が聞こえて来たので、東京では蕎麦屋で琴弾いてるんですね!と雄一郎が感心すると、ラジオだよ!と栄吉が教えたので、そうですか、ラジオですか…と納得しながらも、雄一郎は有里のことを思い浮かべていた。

中里家での庭先で洗濯物を干していた有里の元へやって来た弘子は、困った、有里ちゃん、どうしても北海道まで行かないとならん。

お兄さん、気に入ったらしいわと嫌そうに言うので、姉さんにはふさわしいかも…、啄木好きなんでしょう?と有里がおだてると、飛鳥短歌賞取るかも…、私はお裁縫したり料理したり…、そんな生活嫌や!あんたも連れてってあげるわなどと弘子は言う。

塩屋駅では南部駅長が楠本助役の後任に関根を昇進させることと、明日、三重県から室伏君の見合い相手が来ると駅員たちに教えていた。

青函連絡船に乗っていた弘子は、あんたは北海道が近づくほど元気になると、妹の有里を呆れたように言う。 有里は、私の兄さんできるかもしれないんですもの…と有里はうれしそうだった。

その後、甲板を散策していた有里は、1人の女性がしゃがみ込んでくる死んでいたので、どうしたんですか?と声をかけると、良いんです、つわりなんです。子供の父親待っているんです、すみませんお嬢さんと、その女は礼を言う。

千枝と一緒に港に弘子を迎えに来ていた雄一郎は、有里の姿を発見して、やあ、あなたも!と笑顔を見せ、荷物係ですと妹の千枝を紹介する。

千枝が愛想を振りまいて挨拶すると、有里は私じゃないんです、お姉さん!とまだ甲板上にいた弘子を呼ぶが、弘子は空を見ながら短歌をひねり出していた。

その後、弘子の希望で啄木の碑などを見に出かける。

その後、旅館で食事一緒にしようとお膳が並べられた前で待っていた雄一郎と千枝だったが、千枝は、兄ちゃん、私、有里さんって人の方が好きだわと打ち明ける。

そこにすまなそうに有里がやって来て、母や姉は疲れ切って自分たちで食べたいと申しておりますの…とすまなそうに打ち明け、私だけはこちらでご一緒させてくださいと頼む。

それを聞いた雄一郎は、じゃあ、これを運びましょうと2人分のお膳を運ばせる。

まだ、函館の〜…などと短歌をつぶやいている弘子と一緒に、自分たちの部屋で早めに布団に入っていたみちは、なかなか戻って来ない有里を案じ、あの子、いつまであっちにいるんだろう?ち苛立たしそうにつぶやく。

その頃有里は、北海道って尾鷲より物価が高いんですねと聞き、運賃がかかりますと雄一郎から教えられていた。

翌日、塩屋駅にはる子が迎えに来ていたが、駅に到着した途端、みちは次の下りのことを駅長に聞く。

どうやら長居をするつもりはないらしかった。

弘子もまた、小さな町…、村かしら?などとあからさまに町を見下したようなことを口走る。

前日、はる子や千枝たちが懸命に掃除をした自宅にやって来た弘子は、この辺は熊は出ないのかしら?熊だって可愛いわ、ずいぶん天井がすすけてますねなどと言いたい放題だった。

みちも又、国鉄では、帝大出と小学校卒とでは先行きが違うんでしょうね?などと露骨なことを言うので、将来管理局長にもなろうとする男もいますし、一生線路工夫もいます。お嬢さんは鉄道には関心ないようですな…と雄一郎はきっぱり答える。

台所では千枝がはる子に、嫌い、あの人!と弘子の悪口を言っていた。

みちは、すぐに帰ろうとするので、むさ苦しい所ですが、ここでおくつろぎいただけませんか?とはる子は止めようとするが、みちと弘子に最初からその気はないようだった。

塩屋駅でみちから話を聞いた南部駅長は、お断りになる!と驚く。 ご縁のないものと…、人は住む所に縁があると言いますから…とみちはけんもほろろ。

自宅に残っていたはる子は泣いていた。

歌はたくさん作りましたなどと弘子も結婚には全く無関心そうなので、忘れ物があると雄一郎の家に戻った有里のことを待ちくたびれたように、何を忘れたんやろ?とつぶやく。

みちも、まあ、雪!まだ10月だと言うのに!と外の様子を見て、北海道の冬の到来の早さに驚いたようだった。

雄一郎の元へ戻って来た有里は、母も姉も悪い人じゃないんです。成り行きでこんなことになって、一言お詫び致さなければ行けないと思い…と頭を下げたので、全力で歓迎したのよと千枝も哀しげに答える。

私、もう一度だけ、お姉さんにお目にかかりたかったんですと有里が言うと、お嬢さん、その言葉だけでうれしいですとはる子は礼を言う。

雄一郎が駅まで送って行くことになり、皆さん、仲良くてうらやましい…、うちの方がもっと貧乏かも…と有里が言うので、僕、もっと金になるパルプ工場に行こうとしていたことがあるんですが、姉が全力を挙げて止めてくれたんですと雄一郎は言う。

良い兄さんになってもらえると思っていたんですが…と有里が哀しむと、僕はあなたが見合い相手だったら…、て下見出して良いでしょうか?と雄一郎は打ち明け、有里も、どうぞとうれしそうに答える。

列車で帰る途中、尾鷲の竹林を移してあげたいと思いました…などと、有里は早速雄一郎に宛てた手紙をしたためていた。

その頃、東京に嫁にいたはずの三千代が塩屋駅に母の節子とやって来る。

有里にとって、雄一郎と別れて帰ってきた須賀利の海は暗かった。(とナレーション)

その後、当家は家作の上がりで生きて来て、自分の力で生きることを知りません。

駅長さんが雄一郎さんのことを縁の下の力持ちと言ってましたと言う有里からの手紙が届く。

ある時、雄一郎が、列車に乗って誘導中の貨車から線路に落ちて軽い負傷をする事故がある。

家に運び込まれた雄一郎の机の上にあった有里からの手紙を、はる子は発見して微笑む。

その後、中里家には、雄一郎から、有里さんの方を頂きたいとの連絡がある。

それを聞いたみちは、姉がダメなら妹をと言うのですか!犬や猫じゃあるないし! 勇介!私は許しませんよ!とみちは不快感を露にする。

しかし有里は、私は室伏さんの所へ参りとうございますと答えたので、有里さん!母さんは反対ですよ!中里家がいくら落ちぶれたとは言っても物には順序があります!とみちは頑だった。

姉が行かないのに妹が先になんて!有里!あんたがどうしても行きたいんなら、親子の縁を切って行きなさい!とまでみちは我を通そうとする。

しかし勇介は、有里、兄さんは賛成だよ。中里家はもう崩れさる運命なのだ。

誰かが幸せになってくれれば良いんだよと優しく言葉をかける。 お願いします!と言う有里の決意が固いのを見た勇介は、僕としてはどんなことをしてもやりたいのです!と母に訴える。

ただ1人のために、有里は北国に旅立った。 中里家の老婦人や姉を刺激しないように、中里家の人間は誰も出席しない結婚式だった。(とナレーション)

南部駅長の家で行われた結婚式では仲人を務めた南部駅長が、これで夫婦固めの盃を終わります…、ここで高砂屋でも歌う所ですが、あいにくわしは無芸大食で…と断った上で、上司として新郎新婦に一言、仮にも今後遅刻などしないように!と言うと、こちらにいる岡本新平さんは保線区の神様だと紹介する。

岡本新平(菅井一郎)は、奥さんが毎朝、にこにこして送り出せば良いんだと酒を飲みながらぽつりと言う。

途中、台所に向かった有里は、近所のお手伝いの主婦たちに、何かお手伝いを…と声を掛けるが、こんなきれいな嫁さん見たことないわ!と主婦たちは驚く。

はる子は有里に、今夜、私と千枝はこちらに厄介になりますから…、何にもない家に来てくれてありがとうと礼を言う。

座敷では、汽笛一声札幌を〜♩と、岡本が替え歌を披露し、関根たち他の客たちもそれに唱和する。

翌朝、早起きした有里は、三つ指をついて、雄一郎にお早うございます!と挨拶をする。

雄一郎は、お願いしたいのは姉のことなんです…と話し始めるが、夫婦ってもっとぞんざいな言葉で良いのでは?と苦笑し、姉だけは大事にして欲しいんですと有里に頼む。

ところが、その直後、千枝が、姉ちゃんが東京に行っちゃうんだって!と慌てて自宅に駆け込んで来る。

急いで塩屋駅に駆けつけてみると、すでに列車のデッキ口に乗り込んでいたはる子が、黙って行くつもりだったのよと笑って言うので、有里は、お姉さん!私、まだ何も分からないんです!と困惑したように声をかける。

雄一郎は、でも、東京に行けば、伊藤君に会えるからな…と言うと、私はこの日を待っていたのよ、有里さん、雄ちゃんの機嫌が悪い時には茶碗蒸しを作ってやって。

千枝には鉞カボチャ!今度はあなたが有里姉さんよ!と笑顔で言う。 私も行きたい!と千枝は言い、姉さん、僕たち2人が居づらくさせたような気がするよ…と雄一郎はすまなそうに言う。

姉ちゃんのバカ!と千枝が叫ぶ中、列車は笑顔のはる子を乗せ、駅を出発する。

昭和5年 冬

はる子は、横浜のクリーニング屋に勤めていると言う便りが届いた。

この年、失業者は32万人とも言われ、ストライキが各地で起こり、民の暮らしは苦しかった。(とナレーション)

近所付き合いにも慣れて来た有里は、路上市場に買い物に来た時、1人の赤ん坊を背負った女に目を留める。

その女は、青函連絡船の中でつわりに苦しんでいた女だった。

声をかけられた女千代子(安城由貴子)の方も、あの時、お世話になった!と有里を思い出したようで、突然泣き出す。

驚いた有里が、ご主人は?と聞くと、死にました…と千代子は答える。

家に連れて来て事情を聞くと、博打と喧嘩で殺されたと千代子は言う。

ヤクザの亭主を持った報いです…、この赤ん坊さえいなければ働きに出られるのですが… 浜の水揚げの手助けしたり、工場のお茶汲みやったり…、駅でコ○キみたいなことをやったこともあります…と今の不遇を打ち明けた千代子は、奥さんのご主人、お偉いんでしょう?などと言うので、下から何番目かと言った所よと有里は答える。

その頃、塩屋駅では、助役の関根が、雄一郎に参考書を貸すと言い、東京の教習所言った方が良いのでは?その方が出世の近道だよと勧めていた。

しかし雄一郎は、私は遠回りの方が好きなんですと答えると、強情な方が鉄道には良いのかも知らんな…と関根は苦笑する。

それでも、参考書を借りて自宅に帰った雄一郎が、関根って言う助役見習いの人が東京へ行ったら?と言ってくれたんだよと有里に話しながら勉強し始めると、私の恋人が兄ちゃんくらい勉強好きだと良いんだけど…、岡本良平さんって言って、5年も竈焚きしているのと打ち明ける。

一人前のことを言うな…と雄一郎がからかっていると、赤ちゃんの泣き声が聞こえませんか?と有里が言い出し、裏口の戸を開けてみると、そこに赤ん坊と手紙が置かれていた。 手紙には、お願いします。

いつかきっと引き取りたいと思います。私は出直したいと思います…と書かれており、昼間の千代子の仕業と知れた。

その千代子は、側の井戸の陰で様子をうかがっていた。 赤ん坊を抱いて来た有里に、この赤ん坊を育てると言うのか?と雄一郎が驚くと、乳児院なんかに入れるのは可哀想です、あなたにはご迷惑をおかけしません。

この子を捨てるなんてよくよくのことがあるんでしょう…、しばらくの間だけでも…、私とは不思議と縁のある子なんです…と有里は頼む。

雄一郎は呆れたように、とにかく赤ん坊を泣かさないでくれ、明日までに本一冊写さなければいけないんだ!と有里に言う。 翌朝、朝食にいきなり茶碗蒸しが出て来たので雄一郎は戸惑うが、お嫌い?と有里が聞くと、大好きだ!と言いながらむしゃぶりつく。

赤ん坊は千枝が抱いて牛乳を買いに行っていると有里は教えると、しばらく育てさせてくださいと頼む。

雄一郎は、茶碗蒸しを食べながら、良いよ!と答えるしかなかった。

しかし、若い有里に子育ては難しかった。 貧乏所帯のやりくりに困った。(とナレーション)

有里はミルク代を捻出するため近くの工場に働きに出かけることにするが、そんな有里の姿を見かねた雄一郎は、君が病気になったらどうするんだ?と案ずる。

赤ん坊が大事なのは分かるが、君に惨めな思いさせたくなかった…値雄一郎が言うと、私、惨めなんかじゃありませんわ!と有里が言い返したので、勝手にしろ!と、本を読みながら雄一郎はふてくされる。

しかし、有里が雄一郎に気兼ねして台所で赤ん坊をおぶっているのを見かねてか、そんな所で何してるんだ?風邪引くじゃないか!と雄一郎は注意する。 すみませんと有里は素直に謝る。

雄一郎は、関根から借りた本の移しに約束より5日も遅れたので、駅に返しに行った時詫びながら、関根さん、僕も近道を行こうと思います。

家族に貧しい生活をさせたくありませんから…、妻は内職に追われていて…と打ち明ける。

すると、南部駅長も、これ、奥さんに…、おむつ、三千代のために作っといたんだと言いながら渡して来る。

一方、売店で働いていた千枝は、いつものようにやって来た恋人の良平から、その赤ちゃんの噂聞いたよ!姉さんの昔の恋人の子供じゃないかって!などと言うので、千枝は怒り出す。

やがて、雄一郎は、機関士助手の試験に合格する。

車掌になったら、東京の教習所に行かないかって関根さんが言ってるんだと…と言うので、尾鷲の家のこと思い出したら可愛そう?私、とっても楽しいの!これまでやって来れたんですもの…と有里は答える。

その後、雄一郎は無事車掌の試験にも合格する。

南部駅長は引退し、札幌に住むようになっていた。(とナレーション)

軍需景気で世の中は活気づいていた。 列車の中で芸者といちゃついていた中年男の女房が突然乱入して来て、車中で亭主と喧嘩を始めたので、車掌の雄一郎は慌てて仲裁のため車両にやって来る。

そんな中、雄一郎は東京に嫁に行っているはずの三千代の姿を見かけたので、お久しぶりですね!いつ来られたのですか?と聞くと、一ヶ月になりますわと三千代は答える。

ご主人は?と聞くと、海外ですと言い、お話があるんです、明日、札幌の福地屋に1時に来てもらえますね?と三千代は言い出す。 翌朝、雄一郎が早く家を出ようとするので、有里が、今晩は夜間常務でしょう?と聞くと、札幌に用があるんで…と雄一郎は答える。

すると有里は、千枝ちゃんも、良平さんと札幌ですってと教える。

良平は千枝と札幌のウナギ屋で昼食を食べていたが、そんな店内に雄一郎がやって来て二階に上がるのを目撃する。

二階の座敷で待っていた三千代の話を聞いた雄一郎は、別れたい?と驚く。

もう一度帰れって、毎日責められて…、あの人、ケチで口やかましくて、顔を見るのも嫌だ!私は早くお嫁に行き過ぎたの!雄一郎さんは自分が仕合せなものだから!などと三千代は言い、泣き出す。

その頃、炉端焼き屋に河岸を変えていた良平は千枝に、ウナギ屋の二階はこれ同士が行く所だなどと雄一郎の行動を意味有りげに話していた。 しかし、千枝は、サザエのつぼ焼きや酒が美味しいらしく、食べるのと飲む方に夢中だった。

良平も、そんな千枝に付き合い、酒をがぶ飲みする。 雄一郎はその後、夜間常務に就いていた。

深夜、札幌の南部駅長の家に札幌警察から電話が入り、室伏千枝と良平が保護されているので、今すぐ貰い受けしてもらいたいとの内容だった。

電話を終えた南部は節子に、2人ともメートルあげて、道路上にぶっ倒れていたそうだと呆れたように伝えると、私が明日行きますと三千代が申し出る。

河原で不審尋問を受けたらしいと連絡を受けた有里も驚き、翌日、赤ん坊を背負って札幌警察署に出向くが、千枝と良平は、先に来ていた三千代の姿の方に気づき、うれしそうに駆け寄るのを目撃する。

あら!姉さんも来てくれてたの?と遅れて気づいた千枝は、こちら、南部駅長のお孫さん!と三千代を紹介し、三千代も初対面の有里に、私たち、姉妹みたいに育って来たんですよと挨拶する。

その後、駅で働いていた雄一郎の所へやって来た有里は、千枝ちゃん釈放されました。駅長さんが証言してくれたの。三千代さんも迎えに来てくれてたんですよと報告すると、幼なじみだからな…と雄一郎は答える。 何もかもやってくれて…、私寂しかったわ…、他人の家に入り込んだような気がして…と有里が言うと、人の親切は素直に受け取った方が良いよと雄一郎は言う。

三千代さん、今度ご飯でも御呼びしましょうか?と有里が提案すると、そうだな…と雄一郎も賛成する。 その後、ひょっこり雄一郎の家を訪ねて来たのは、赤ん坊を捨てて行った千代子だった。

今度、働いている店で知り合ったお客さんと結婚することになったので、勝手なんですけど、赤ん坊を返していただけないでしょうか?と言うのだった。

雄一郎が、すぐに返事をしない有里の名を呼ぶと、良かったわね、なっちゃん、本当のお母さんが来てくれたのよと少し大きくなった女の子の赤ん坊に話しかけながら泣き出す。

なつ子が可哀想で…、夢中になって育てて来たんです。なかなか乳離れしない赤ん坊を育てたんです。外でおぶったこともあります…と、雄一郎が、赤ん坊に情が移った有里をかばうように弁解すると、じゃあ、なつ子を返さないとおっしゃるんですか!と千代子は気色ばむ。

有里は、子供に取って生みの親が一番良いんですわ…、お返ししますと言い、又泣き出す。 赤ん坊がいなくなった後、なっちゃん、今頃何しているかしら…と有里が懐かしがるので、君が話さないんじゃないかとハラハラしたよ…、苦労したろう?君も…と雄一郎は慰める。

でも、なっちゃんのおかげで学んだわ、所帯のやりくり…と気丈なことを有里が言うので、いざ、いなくなると寂しくなるな…と雄一郎もつぶやく。

ね、私たちの本当の子供欲しい?と有里が言い出したので、うん!と雄一郎も答える。

後日、三千代を招いて食事会を開いた有里だったが、雄一郎があまりに三千代と仲睦まじそうな姿が気になっていた。

ブドー酒を雄一郎が三千代に注ごうとすると、ビールの方が好きなのと言うので、俺が買いに行くと雄一郎は有里を止めるが、その時急に三千代が泣き出す。

どうなすったの?と有里が驚くと、ごめんなさいと三千代は詫び、東京のご主人のことが恋しくなったんじゃない?と千枝がからかう。

その後有里は雄一郎に、あなた、三千代さんをお送りしてと頼む。

家を出た雄一郎と三千代だったが、側の井戸端でしゃべっていた近所の主婦たちは、返されたんだってよ!今、駅長さんの家に来てるんだってさなどと噂していたの。

ある日、千枝と会った良平は、千枝ちゃん、噂知ってるか?札幌のウナギ屋のこととか、色々言う奴がいるんだ…、俺の親爺にまで知りやがってよ、親爺機嫌が悪いんだと打ち明ける。

駅にやって来た三千代は、塩谷の町がもう一度見たかったの…、今度、旭川の知り合いの所へしばらく行くことにしたの…と言うので、また家に来ませんか?と雄一郎が誘うと、嫌よ!あなたの奥さんに会うのは!私、あなたと結婚していれば良かった…などと言い出す。

色々相談したいの、海岸の方まで連れてってくれません?と三千代が言うので、雄一郎は仕方なく、海岸へ連れて行く。

その頃、自宅にいた有里の所にやって来た岡本新平は、男は気をつけないといかん!あんまりおかしな噂立てられると、良平との付き合いも止めさせるぞ!と文句を言う。

あんたんところの旦那さんが帰ってきたら、あんまりあんまりじゃらじゃらしたこと嫌いだと伝えてください!駅長の孫たら言うても、男女の道を…などと言うので、踏み外したと言うのですか?どこのどなたが言ってるんです?と有里は気色ばんで聞く。

塩谷中の1人1人に、主人の潔白を話してきますわ!と有里が興奮して言うと、そんなことしたら、駅員辞めなくちゃならんぞ!と言い残し、新平はそそくさと帰って行く。

その後、雄一郎が帰ってきたので、岡本さんが見えて2列車待ったわ、南部さんの奥さんによろしくって…と嘘を教える。

雄一郎が夕食を食べ始めたので、あの人、いつお帰りになるの?と三千代のことを有里がさりげなく聞くと、東京の結婚が巧く行ってないことを雄一郎が教えたので、そんな嫌な人なら、行かなければ良かったのに…と有里はつぶやく。

この間も、三千代さん、家の近くに来てお寄りにならなかったそうね?私のこと、お嫌いなのかしら?すぐ泣いたりして…、男の人はそう言う人に惹かれるんじゃないんですの?私のようにはいはい言う女より、時々泣いたりする女の方が可愛いんじゃないの?などとねちねち嫌みを言うので、君はもうすんだのか?と雄一郎が夕食のことを聞くと、喉に通りませんわ!と有里は怒り出す。

今日、色々嫌なことがあったの…、とても言えないわ、ただね、三千代さんが来てくだされば良かったのよ。どうしてあなたとばかり一緒になって…。 今日、本当に尾鷲に帰りたくなったわ!こんな気持になったの初めてですわ!と勘定が高ぶった有里は泣き出す。

世間は君の顔色が変わるのを楽しんでいるんだろうと雄一郎が言うと、帰れないわ!私には帰る所なんてないわ!と有里はしつこく言うので、疲れているんだよ、寝たらどうだ?と雄一郎が勧めると、ごまかさないで下さい!となおもすねるので、いい加減にしろ!君らしくないぞ!と雄一郎も怒り出してしまう。

そんな2人の言い争いを、先に布団に入っていた千枝は、心配そうに聞いていた。

小樽駅

旭川への引っ越しの準備をしている最中だった三千代の部屋にやって来た千枝は、三千代さんのおかげで家はむちゃくちゃよ!このままでは私も良平さんと結婚できない! 三千代さん!あなたどうして私たちの幸せを壊そうとするの?どうして姉さんに会ってくれなかったの?やましいことがあるの?と詰め寄る。

そんな軽々しいこと言って、兄さんまで傷つけたいの?と三千代は言い返す。

ある日、列車の車掌が、雨の中、3号車のデッキの扉を開けっ放しにして立っている奇妙な女性を発見したので、車掌室にいた雄一郎に報告に行く。

見て来ると言って出向いた雄一郎は、もしもし!と声を掛けるが、振り向いたその女が三千代だと気づく。

三千代も雄一郎に気づくと、デッキから飛び降りようとしたので慌てて雄一郎が止める。

放して!と三千代が暴れるので、三千代さん!どうしてこんな!さあ、話してください、何で?と雄一郎は問いただす。

その頃、帰宅した千枝は、思い切り言ってやったわ!あんな人が家のお嫁さんにならなくて良かった…などと打ち明けたので、そんなこと言ったの…と有里は驚く。

きっと兄さんに行くの止せって言ってもらいたかったのよ、旭川でしょう? 今頃、兄さん呼びつけて、私のこと言いつけているに違いないわ、構うもんか!と千枝は言う。

旭川駅 三千代を連れ、駅に降り立った雄一郎は、知り合いの者なんだと同僚に伝えるが、その隙に三千代が逃げ出したので慌てて後を追う。

その旭川に電話をして、雄一郎を呼び出そうとした有里だったが、知り合いとか何とか言ってましたな…と、女性と一緒に駅から出て行ったことを教えられる。

旭川市内の旅館に三千代と部屋を取った雄一郎は、5時半には乗務しなければ行けない。

しかし、あなたをこのまま放っておくこともできない!と苦しい胸の内を明かす。

それを聞いてまた三千代が泣き出したので、もうごめんだ!泣かれるのは!と雄一郎はうんざりしたように言う。

それでも三千代は、雄一郎さん!と呼びかけてくるので、君は子供の頃とちっとも変わらない!と雄一郎は呆れたように言う。

ごめんなさい…、私、甘ったれだったの。人にも甘い、自分にも甘えていたのよ…と三千代は言う。

心の隅では、やっぱり夫の元へ帰りたかったんですわ。それがいつの間にか籍を抜かれ、再婚したってことを聞いたので…

千枝ちゃんから色々聞きましたわ。すみません…、ご迷惑をおかけして…と、三千代は涙ながらに詫びる。

私がうかつだったんです。狭い田舎ってことを忘れ、自分のことだけにかかわらずって…、何とお詫びしたら良いのか…と三千代は机に泣き伏す。

三千代さん、帰りましょうと雄一郎が誘うと、大丈夫ですわ、1人で帰れますわ…、ひとまず札幌へ帰るんですと三千代は言う。

翌早朝 何とか5時半までに旭川駅に駆けつけた雄一郎は、無事上司に列車の報告をすます。

三千代も駅に来て1人で列車に乗り込む。

帰宅した雄一郎は、有里の姿が見えないので呼びかけるが、千枝が出て来て、休んだのと言うので、有里は?と聞くと、海を見てる…、姉さん、一晩中寝なかったのよ、さっき、私が帰ってっていったんだけど、放っといてって…と千枝は困ったように言う。

海岸に出てみると、有里が1人で海を見つめて立ち尽くしていたので、有里!と呼びかける。

すると有里は雄一郎に抱きついて来る。

旭川に電話したんだってね?と雄一郎が聞くと、三千代さんに?と有里が聞き返すので、うんと雄一郎は答える。

ね?私たちには関係ないこと?と有里が聞くので、ない!でも、放っとくわけにはいかなかったんだと雄一郎はきっぱり答える。

女の人に付き添って行ったって聞いた時、すぐに三千代さんだと思った…、駅員なら当たり前だけど、あなたを信じられなかった…と有里が告白すると、いや、僕の方こそ良い気になっていたんだと雄一郎は答える。

あなたと一緒になりたくて?と有里が言うので、 自殺しかけたけど、あの人は東京の旦那さんと一緒になりたかったんだ…、もう気持の整理ついたと思う。

子供の頃、結婚しようと思った。今は幸せになってもらいたくて、君に言えなかった…、そのために君を苦しめた…と雄一郎が詫びると、私は三千代さんのことを聞けなかった…と有里も打ち明ける。

僕がうかつだったんだ。君が信じてくれると思った…と反省していた雄一郎だったが、その時、有里の様子がおかしいことに気づき、有里!どうした?と抱きとめる。

その後、自宅に戻り、医者の往診を受けた雄一郎に、兄ちゃん、良かったねと千枝が微笑みかけ、私、卵と牛乳一杯買って来る!と言って家を出てゆく。

寝床に寝かせられていた有里に近づき、良かったなと微笑みながら手を握ってやる雄一郎に、私たちの子供が生まれるのね…と有里もうれしそうに答える。 有里…、今度な…、釧路ー網走の間に新しい鉄道ができるんで、転勤の話が来ているんだ。

新しい官舎にも入れるし、少しだが昇給もできる。ますます尾鷲から遠くになるな…と雄一郎が打ち明けると、あなたの行く所なら、どこへでも行くわ!と有里は答える。

夫婦ってレールのような物だね…と雄一郎が言うと、子供が枕木ねと答える。

レールが通じて新しい生活が生まれるんだと雄一郎は言う。

その後、雄一郎は、釧網本線の釧路へと転勤となる。

この頃、戦争は拡大しており、あの町からもこの町からも続々と若者たちが出征して行った。(とナレーション)

列車の客席から、出征を見送る人々の姿を見つめる雄一郎と有里。 あなた…戦争は大きくなるだろうでしょうね…と不安そうに聞く有里に、このまま戦争が治まるとも思えんな…と雄一郎も暗い表情で答える。

2人の傍らでは、千枝が良く眠っていた。

良平君の列車が来る夢でも見てるんだろう…と雄一郎が言うと、幸せそう…と有里も微笑む。

尾鷲にまだ1人でいる姉のことを思うと心配だけど…、幸せだったわ、とっても…と有里は言い、雄一郎と見合って互いに微笑むのだった。

汽笛が鳴り、列車が走り出す。


 


 

 

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