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猿飛佐助('55)

フランキー堺とブーちゃんこと市村俊幸コンビによる真田十勇士誕生までの話。

井上梅次脚本、監督だけに、歌が随所に登場するオペレッタみたいな雰囲気になっている。

当時のポスターを見ると「浮気道中の巻」「忍術修行の巻」 と書かれている。

前半は有島一郎が出ておりお馴染みのハイテンション演技やおねえ言葉などでそれなりに楽しませてくれるが、後半、真田九勇士が登場すると、三木のり平や千葉信男、内海突破と言った当時の人気者が出ているにしては喜劇として全く生彩がなく、九勇士と言いながら、宴会している白雲斎の部屋の天井裏に潜んでいたくせ者に誰も気づかないなど、単なる間抜けにしか見えない。

三木のり平さんなどは、ひょっとしたら似た別人なのだろうか?と目を凝らして見直したくらい存在感がないし、面白さのかけらも感じられない。

この当時ののり平さんや一緒に九勇士を演じている名和宏さんは、名が出る前の新人扱いだったのだろうか?

正直な所、ブーちゃんこと市村俊幸さんも、私には単なる脇役の人と言う以上のイメージがなく、面白い人と言う印象は全くない。

本編中で披露している東北弁なども、別に面白くもおかしくもない。

では、喜劇ではなく普通のドラマとして面白いのかと言えば、これもそうとは思えず、アクションとして魅力があるとも言えず、トリック映画のような面白みも少なく、低予算と言うだけではなく、全体的にアイデア不足を感じる。

ただし、全く見どころがないかと言うとそうでもなく、ただ1人まれに見る醜女として登場している女優さん以外は、出ている女性陣が総じて清純そうできれいなことは確か。

山賊の大頭の種明かしも、この後「忍びの者」辺りから有名になる設定ではあるが、この当時としてはまだ珍しかったアイデアではないかと思う。

劇中で披露される「最近、京や大阪で流行っている安木ルンバ」と言うのは「安木節」が流行っていたと言うことなのだろうか?

さらに、主役のフランキー堺が若くて元気で走り回れていた頃の作品だけに、一種の青春喜劇として楽しめなくもない気はする。

エンディングから考えると、続編がありそうな設定になっているのだが、その後、日活で続編が作られた気配もなく、興行的に不振だったのかもしれない。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1955年、日活、西沢裕脚本、 井上梅次脚本+監督作品。

マンガイラスト(猿飛佐助の顔の所だけはフランキー堺の写真が貼ってある)をバックにタイトル

キャスト・スタッフロール

信州新手村 牛に引かれた荷車に乗った雑兵らが、松平藩の募兵の旗を立てて田んぼ道をやって来る。

隊長の滋野蛸十郎(有島一郎)がミュージック!と命じると、荷車に乗った雑兵たちが、味方になるなら勝つ方へ♩徳川家の天下になると聞いたからにゃ♩などと歌い始める。

その時、側の田んぼでは、娘に手をつけられた農民が、女癖が悪い若者猿飛佐助(フランキー堺)を追いかけ回していた。

しかし、追われている佐助は、村一番の色男〜♩頼みもしないのに娘が惚れる〜♩などと歌いながら器用に逃げ回る。

その頃、同じ村の檀家でお経を上げていた三好清海入道(市村俊幸)は、お供え物の饅頭をお経を上げながら懐へしまい込んだり、その場で味見をしたりしていた。

そこに太った子供が、佐助さんが追いかけられているよ!と知らせに来たので、これは一大事と座を立つと、佐助の元に加勢に出向く。

佐助は俺の友達だ!と言うと清海は佐助をかばおうとするが、佐助は側にあった肥やしを柄杓で撒き始める。

ちょうどその側に通りかかった蛸十郎は、あっぱれな腕前!野に置くには惜しい、どうだ二人とも兵隊にならんか?と佐助と清海に声をかける。

しかし佐助は、自分は争いは嫌いだと言うし、清海も村でただ1人の坊主なので、いなくなると村が困るだろうと佐助から言われると、それもそうか…と諦める。 それを聞いた蛸十郎は、惜しい若者だ…と残念がる。

その後も、追ってくる農民たちから逃げ続けた佐助と清海は、何やら偉そうな一団と遭遇し、農民たちは道の両脇に土下座する。

その農民たちが鷲塚様のお嬢様だ!婿選びに帰って来られただ!と言い合っているのを聞いた清海は、あの女は俺が頂くと言い出したので、負けじと佐助も俺が頂く!と言い出し、又、出しゃばる!と互いににらみ合う。

その後、村に高札が立ち、来たる3月3日午の刻、鷲塚邸で婿選びの武芸大会を行うので、17歳から27歳までで武芸百犯を誇るものは鷲塚邸へ出頭されたしと書かれてあった。

その武芸大会の日、出場した佐助と清海は共に順調に勝ち進み、決勝戦は2人が争うことになる。

しかし、買った方がご息かめ女殿の婿に選ばれると言われ面と向かった2人は困惑し、我らは小さい頃から喧嘩友達で、勝負がついたためしがないと打ち明ける。

それを聞いた屋敷の主人鷲塚は、困ったことよなと考え込むが、御簾の背後から勝負を見ていたかめ女が何やら家人に耳打ちする。

鷲塚は佐助は天性なる動きがあり、余が姫をマモルにはふさわしく、姫はことのほか気に入られたらしいと言うので、それを聞いた佐助は得意顔になる。

しかし鷲塚はさらに、清海の鋼のような肉体はすばらしくわしは気に入った。

姫もことのほか気に入ったと申しておるので、2人ともかめ女の婿養子にすることに決めたと発表する。

すぐさま佐助と清海は酒宴の席に呼ばれる。

清海の方は、僧侶の身で妻帯して大丈夫か?との家人からの質問があったが、生来の生臭坊主、女と肴なら何でも来いですなどと鷹揚に笑う。

しかし、なかなか花嫁であるかめ女が姿を見せないので、2人とも様子を見に行こうとするので、又出しゃばる!とにらみ合う。

すると、清海が銭占いをしようと言い出し、自分の巾着袋から小銭を取り出し、表が出たら佐助、裏が出たらわしが見に行くと決め、銭を放る。

手のひらに落ちて来た小銭は裏だったので、先に清海が席を立ち、奥の部屋にいるかめ女の様子を見に行く。

すると、奥にいたのは凄い醜女だったので、佐助の元に戻って来た清海は、姫はいなかった、代わりに凄いブスがいた!でっかいオカメみたいな女がいただけとおかしそうに話す。

次いで佐助が様子を見に行くことにするが、やはり奥の座敷にいたのは凄い醜女だったので、笑いながら戻って来ると、姫はいないよ、こんな顔してた!と自分で変顔を再現してみせる。

ああいう女には万金を積んでも婿は来んでしょうななどと清海も同情する。 すると家人が、花嫁の婿はこの席で決まりました。めでたいことに2人も決まりましてな。

本日がその祝言でござるなどと言うので、それを面白そうに笑っていた佐助と清海は、見目麗しく才長けて?才色兼備?などと復誦しながら顔が引きつって来る。

事態に気づいた二人は慌て出し、節操はやはり妻帯は許されぬ身!などと言い出し逃げようとするので、佐助も逃げようとし、またしても銭占いで決めようと言うことになる。 裏が出たらお前が諦める。

表が出たら俺が諦めると決めた清海が銭を投げると、落ちて来た小銭は又しても裏だった。

すると、奥から、待て!と言いながら長刀を持ったかめ女が出て来て、先刻から聞けば憎っくき侮辱の数々!かくなる上は2人とも婿にしてみせる!ならんとなると引っ捕らえて八つ裂きにしてくれるぞ!と凄む。

婿になるか!八つ裂きを選ぶか?と二者選択を迫られた佐助と清海は、八つ裂きの方が良いです!と叫ぶと、脱兎のごとく座敷を飛び出す。

歌人たちが追ってくる中、屋敷から逃亡していた2人は、又しても、滋野蛸十郎の募兵部隊と出会い、兵隊にならんか?と勧めて来たので、わしは兵隊になる!と清海は即答する。

佐助の方は、わしは争いは嫌いだと断ろうとしていたが、長刀を持ったかめ女が迫って来たので、俺もサインする!と言うと、契約書にその場で記名する。

その直後、かめ女が2人に斬り掛かろうとするが、契約書を書いた以上、この二人は松平の家臣!滅多なことで手は出せませぬぞ!と蛸十郎が制止したので、おのれ、憎っくき奴!とかめ女は悔しがるが、荷車に腰掛けた佐助と清海は、うれしそうにその場を立ち去って行く。

城に着いた2人は、ただちに兵隊としての訓練をさせられるが、その途中、美女が通りかかったので訓練をさぼり、美女に近づこうとする。

しかし、その美女あざみ(広岡三栄子)は、隊長蛸十郎も懇意らしく、馴れ馴れしい笑顔を見せる佐助と清海に気づくと、訓練をせんか!と叱りつける。

2人は鎧を脱ぎ捨てると、もう嫌になった!と言い出すが、お前たちは3年契約だぞ!と蛸十郎は契約書のことを言い出す。 その後、佐助と清海は、罰として、地下牢の側で槍を両手で掲げっぱなしにして立つよう命じられる。

しかし、佐助は、両手を離すと、用を足して来ると言い残し、さっさとその場から出て行く。

見ると、槍の穂先を柱に突き刺し、水平のまま空中に浮かせていたので、それに気づいた清海は感心し、自分も同じように槍を柱に突き刺す。

あざみがいる飯女たちの宿にやって来た佐助だったが「男子禁制」と立て札が出ていたので、一計を暗示、女物の着物を頭からかぶり、女に化けて中に侵入する。

台所の大根を切ったりしながら周囲の目をごまかし、奥の座敷にいたあざみを見つけたので近づくと、あざみは佐助に気づき一瞬悲鳴を上げかけるが、何事かと他の女たちが近づこうとすると、ムカデがそこに!と言ってごまかし、佐助には、この裏で待っててねとささやきかける。

佐助がなかなか戻って来ないので、清海も柱に刺した槍をその場に残し地下牢を出ると、女たちの宿に来る。

そして同じく、女物の着物をかぶって中に侵入、あざみにちかづくと、又してもあざみは悲鳴を上げる。

又ムカデ?と言いながら女たちが近づこうとすると、今度は大きなネズミがそこに…と言ってごまかしたあざみは、米蔵で待っててねと清海にささやきかける。

同じ米蔵で待っていた佐助は、女物のかぶり物をした清海がやって来たので、あざみと思い、隣に腰掛けさせると、甘い言葉をささやきながら相手の手を握る。

しかし、あまりにも太くて毛深い手なので驚いているうちに、互いに相手の声に聞き覚えがあることに気づき、かぶり物を取り合って互いの正体に唖然とする。

互いににらみ合っている所にやって来たあざみは、だらしないね、私ゃ、どっちも同じくらい好きなんだよなどと笑いかける。

清海は、又しても銭占いをやろうと言い出し、またもや裏を出したので、負けた佐助が米蔵からで抵抗とした時、隊長だ!と戻って来る。

側にあった大つづらの中に身を隠した佐助と清海だったが、そんなことを知らずやって来た蛸十郎は、あざみ、この間の文を読んでくれたか?などと聞いて来る。

捨てたよとあざみがすげなく答えると、あざみ、誰もおらん、ちょっとかけて…と横に座らせた蛸十郎は、黙ってちょっとは話を聞いてくれても良いじゃないかとあざみを口説き始める。

しかし、背後の大つづらの蓋があき、中に隠れていた佐助が蛸十郎の頭を殴る。

それに気づいた蛸十郎は激怒し、2人とも営巣だ!と怒鳴りつける。

営巣に入れられた佐助は、一緒に入れられた清海がさっさと寝入ってしまったので呆れる。

佐助はその時、前々からおかしいと思っていた清海の巾着袋をそっと懐から取り出し、中の銭を改めて見ると、案の定、両面が裏のインチキ銭だった。

トリックの秘密を知った佐助は、巾着袋をそっと清海の懐に戻しておく。

その後、牢を出された2人は、蛸十郎から白菊姫(遠山幸子)の警護を仰せつかる。 何と、警護は2人だけなのだと言う。

白菊姫が神社に参拝しているので、何を祈っているのです?と佐助が侍女松乃(長谷川照容)に聞くと、白菊姫の父親は花隈の城主で豊臣方なので、姫はこの松平藩に人質のためいるのだと言う。

父親はその後、人里離れた山に入られ行方知れずになったので、父との出会いと尾家の最高を祈っているのでしょうと松乃は言う。

神社の帰り、白菊姫の駕篭の前に、忍び装束の賊が現れたので、佐助と清海は大暴れする。

城に戻り、敵の首領らしき男を殴ってやりましたと報告をしていた2人は、聞いている蛸十郎の額に大きなこぶが出来ているので不思議がると、これはこぶではない、イボよと蛸十郎はふてくされたように言うので、報告を終えた佐助と清海は首を傾げる。

その時、松乃が2人に声をかけ、姫がお呼びなので、今宵屋敷の方へお越し下さいと言う。 その会話を物陰から聞いていたのはあざみだった。

屋敷に参上した佐助と清海を前した白菊姫は、頼もしい今日の働き心より礼を言います。

訳あってこのような詫び住まい、せめて言葉だけでも言いたいと思いまして…と言うので、2人は恐縮し、今後とも警護は私たちにお任せくださいと申し出る。

そう言ってくれるのは、この広い世に二人だけ、これ以上情けを受けると、かえって2人の命が危ないと白菊姫が言うので、訳を聞くと、松乃が代わって訳を説明する。

実は今日襲ったのはこの城の侍たちで、松平はんの城主はこの世にたった一枚しかない大阪城の絵図面を姫が持っていると狙っているのですと言う。

それを聞いた佐助と清海は、そう云うことだったのか、姫もろとも俺たちまで殺そうと思っていたんだな…と蛸十郎の陰謀を知る。

何て事だ、こんな優しい姫を襲うなんて、わしら命を賭けて姫をお守り申します!と清海が言うと、戦国の大名の娘と生まれて来たものの運命として諦めておりますと白菊姫が言うので、おいたわしい…と佐助と清海は涙ぐむ。

それを見た白菊姫は、男が泣くのは恥ずかしい。世が世なら、何でも褒美を取らせるのですが…と言いながら、せめてこの簪を…と言いながら、大降りの簪を二人に差し出す。 それを自分が受け取ろうと前に進み出た佐助と清海は、また出しゃばる!と互いににらみ合いながらも簪を手に取る。

いつまでも私と思って大切にしてください…と言うので、感謝しつつ屋敷を辞去した2人だったが、途中で、どっちが預かるか、これで行こうか?と佐助が銭占いのジェスチャーで誘い、今日は裏にすると先に言う。

それを聞いた清海は、お前、知ってるな?と怪しむので、何かインチキでもあるの?と佐助が答えると、やむを得ず、いつもの通り銭を放り、予想通り裏が出る。 佐助が簪を預かることにする。

そんな2人の前に姿を現したあざみは、あら?女の匂いがする?などとからかい、お姫様の御用は?などと聞いて来る。

さらに、米蔵にお酒の用意をしてるの、いらっしゃいなと誘うので、のこのこ付いて行った2人は、用意されていた酒を飲んだ途端、眠り薬のせいで寝込んでしまう。

甘い二人だね…と嘲りながら立ち上がったあざみに近づいて来た山賊たちは、巧くいきやしたねと言うと、大事な客だから壊れないようにしなと命じたあざみの前で、眠り込んだ2人の身体を大つづらの中に入れ、米蔵から外へ運び出す。

その後、目覚めた2人は身ぐるみ剥がされた裸の状態で、見知らぬ場所に連れて来られていた。

そんな2人の前に女性が料理の乗った膳を2つ運んで来ると、大勢の女性たちは目の前で踊り始める。

そこへ出て来たのは、夜叉丸(小林重四郎)と言う山賊の頭目と、飯炊き女の時とは雰囲気が違うあざみ。

どうやらあざみは、山賊の女だったらしかった。

おとなしく出せ!白菊姫からもらったものだ!出さぬと息の根を止めるぞ!と夜叉丸が言うので、佐助が簪を取り出すと、この夜叉丸様は女子供の玩具など欲しくない!大阪城の絵図面を出すのだ!と迫るが、佐助たちがそんなものは知らないと言うと、たわけ!こんな頼りない奴らに渡すはずがないと思っていたんだ!と夜叉丸はあざみを叱りつける。

その間、側に置いてあった着物を着込んだ佐助と清海が山賊共を蹴散らしながら逃げようとすると、突然、洞窟内に煙が舞い上がり、その中から現れた黒頭巾の男が、なかなかの腕前、褒めてやる!争った後に地獄へ送ってやる。

それまでゆっくり高みの見物としようと佐助たちに言い、又次の瞬間姿を消してしまう。 夜叉丸が言うには、山賊の大頭らしかった。

もっと強くなって来い!さすれば相手をせぬこともないと佐助たちを嘲るような声だけが洞窟内にこだます。

山賊の山砦を逃げ出した佐助と清海は、互いに山賊と戦いながらいつしか二手に分かれてしまう。

崖っぷちに追いつめられた佐助は、鉄砲で狙っていた夜叉丸が撃ったために右肩を射抜かれ、崖から谷へ真っ逆さまに墜落してしまう。

それを崖の上から見下ろした夜叉丸と山賊たちは、ざまあみろ!と高笑いする。

何やら小川の側で目覚めた佐助は、側に「三途の川」と書かれた道標が建っていることに気づくと、自分の右肩の傷を思い出し、あれ?山賊に追われて、鉄砲に撃たれて…、何だ分かった!ここは地獄だ!と気づく。

すると、3匹の鬼が、えんま大王がお呼びだと言いながら近づいて来て、佐助を閻魔大王の元へ連れて行く。

閻魔(市村俊幸-二役)の顔を見た佐助は、清海じゃないか!と喜ぶが、わしは閻魔大王であるぞ!わしは東北生まれなんでこんなしゃべり方なんだと言う。

姓名、生年月日を述べよと閻魔に言われた佐助は、猿飛佐助、昭和30年5月1日生まれと答える。

これより、お前の人権裁判を行うと言い出した閻魔は、佐助の目の前に置いてあった巨大なガラス球の中を見るように命じる。

ガラス球の中には白い煙が充満し、これがお前の罪業だ!と閻魔が言うと、煙の中に、女を口説くため、腹の中に入れておいた大根に刀を差しただけの切腹の真似をした佐助に、それほどまでに私のことが好きなのかい!と泣いて抱きついて来た女の様子を見せる。

これは一例だと閻魔は言い、背後に控えていた鬼が騙された女は15人おりますと報告すると、当の佐助が18人ですよ!と自ら訂正する。

すると、閻魔の前に置かれていた「地獄」「極楽」の二つの重しを乗せた天秤秤が「地獄」の方に傾く。

それを見た佐助は、片手落ちですよ!私だって良いことしてるんですから!と訴え、ガラス球の中をのぞくと、火事が起きた言えから娘を救助した時の様子が映し出される。

天秤秤が「極楽」の方へ傾くが、その後日物語を忘れてはいまいな?と閻魔が指摘すると、ガラス球の中に、助けた女をだいている佐助の様子が映し出される。

命の恩人と感謝する女をお前は誘惑したではないか!と閻魔が叱ると、またもや天秤秤は「地獄」の方に傾く。

佐助は、私が死んじゃったら、私の主演映画を作れなくなるじゃないですか!数千、数万のファンが悲しみます!と訴えるが、お前の主演映画など、ろくなものにはならん!と閻魔は言い捨てる。

すると佐助は、一緒に出ているくせに!と嫌みを言う。

お前の未来の姿を見せてやると閻魔が言うと、ガラス球の中に、ドラムを叩いているフランキー堺の姿が浮き出て来る。

何です?と佐助が聞くと、これはフランキー堺と言う、お前の24代目の子孫で、やっているのはジャズと言う愚かな音楽だと閻魔が説明するので、こんな子孫を持つより地獄に行った方が良いよと佐助は落ち込む。

こうなったら俺も男だ!死んでやろうじゃないか!ただし、最後に思い切り賭けがやりたいんだ!と佐助が言い出すと、わしも賭けは嫌いじゃない!と乗って来たので、表が出たら地獄、裏が出たら元に戻してくださいよと言いながら、佐助が清海の小銭を懐から取り出すと、面白い!やろう!と閻魔はうれしそうに身を乗り出す。

しかし、佐助が放り上げた小銭はいつも通り裏が出たので、あら、裏だ!と閻魔はがっかりする。

次の瞬間、目が覚めた佐助は、どこかの家の座敷で布団に寝かされていた。

側にはきれいな娘が付いており、ここは鳥居峠の山奥で、あなたが川の側に倒れていたのでお連れしましたと言うので、すんでの所で地獄でしたと佐助は安堵する。

すると、そこに白髪の老人がやって来て、楓(雨宮節子)の父、戸沢白雲斎(小川虎之助)と言う世捨て人ですと名乗ると、後はゆるりと養生なさいませと言葉をかけて来る。

白雲斎が退室した後、残っていた楓は、私は本当の娘ではありません。若気の至りで村を飛び出した所、賊に襲われました。

それを助けてくれたのが父で、生き別れた娘さんに私が似ていると言うことで、養女にしてもらいましたと説明する。

貴方様がいてくだされば、寂しく暮らしていた私もうれしゅうございますと楓が恥じらいながら言うので、どうやら私もあなたを好きになりそうですなどと佐助は調子の良い返事をする。

数日後、体力が戻った佐助は、白雲斎と楓に暇乞いをしていた。

ご親切は一生忘れませんと佐助が頭を下げると、いきなり白雲斎が、囲炉裏の前においていた柄杓で佐助の頭を叩こうとしたので、佐助は囲炉裏にかけてあった鍋の蓋を素早く取り、頭を防護する。

お見事!実はこれには訳があり、わしは甲賀流忍びの術を極めたが、わしは後継者が欲しい。

あなたは立派な忍術使いになると言うので、佐助はちょっとその気になるが、みっちり3年修行すれば…と白雲斎が付け加えると、失礼致します!と頭を下げ屋敷を出る。

おさらばでございますと見送りに出て来た白雲斎と楓に挨拶をした佐助だったが、楓の楓の婿として祝言させるつもりだったのに…と白雲斎が惜しむ言葉を言うと、そうですか!と急に笑顔になった佐助は、その場に旅支度を捨てる。

それからの佐助は、来る日も来る日も走る、飛ぶ、木遁、水遁、土遁の修行に励み、わずかの1年で卒業するはずだったが、5年経っても免許皆伝はもらえなかった。

すっかり意気消沈し、白菊姫からもらった簪を手に哀しげに歌う佐助を物陰から見ていた楓は、佐助の前に姿を現すと、3年経てば免許皆伝をもらい、私と夫婦になるはずだったのに、あの人のことを好きなんでしょう!いつまで経っても上達なさらないのは、私のことを好きではない証拠!と責める。

その直後、佐助の後頭部を殴って来た白雲斎に、その場で姿を消してみせた佐助だったが、お前はそれで消えてつもりか?と言いながら白雲斎に、近くの草むらに頭だけを突っ込んでいただけの佐助は、丸見えの尻を叩かれる。

お前が1流になるには後3年かかる…と白雲斎はため息をつくが、その直後、誰か来て!と叫びながら近づいて来た女がいた。

佐助がその女の前に出ると、松乃であることに気づく。 姫が途中で山賊に襲われたと言うので、急いで山を駆け下りた佐助は、途中で二人の侍にぶつかる。

すまない!鳥居峠の佐助と呼べば分かるから!と言い残し、さらに山道を走って降りていた佐助は、さらに二人の侍にぶつかり、同じように謝りながら駆け下りて行く。

ぶつかった三好伊三入道(千葉信男)は、その言葉忘れるな!と去って行く佐助の背中に呼びかける。

山賊に囲まれていた白菊姫の所へたどり着いた佐助は、お久しぶりでござる!佐助でござる!と白菊姫に挨拶する。

その頃、佐助がぶつかった4人の侍は、上で待っていた真田大助(北原隆)や犬千代と合流する。 大助らは、鳥居峠に住むと言う戸沢白雲斎こそ大阪城の絵図面を持っていると信じ、訪ねて来ていたのだった。

そのとき、大力角兵衛(三木のり平)が、若殿!女がいますと言うので、山道を少し下ってみると、白菊姫を守ろうと佐助が1人で山賊と戦っていた。

それを見た大助は、皆のもの!あの御仁に加勢しろ!と命じる。

山賊共を蹴散らした大助が、白菊姫に近寄り、見れば由緒深き姫君とお見受けしましたが、何故にかような所へ?と聞くと、父白雲斎を頼って参りましたと白菊姫が答えたので、ではあなたは白菊姫!と驚く。

自分は真田幸村の一子真田大助と申しますと自己紹介する。

一方、佐助を取り巻いた大力角兵衛や三好伊三入道は、先ほどぶつかった佐助を痛めつけようとしていた。

もめてないで、みんなかかって来い!と佐助は言い、猿飛佐助だと名乗る。

すると侍たちも、穴山小助(名和宏)、海野六郎(有木山太)、根津甚八(山田周平)、筧重蔵、望月六郎、大力角兵衛、三好伊三入道とそれぞれ名乗ると、斬り掛かろうとするが、佐助は得意の忍術を使って、姿を消したかと思うと、次の瞬間側の木の上に出現、勇士たちをからかうように笑う。

そこに遅れて合流したのが、三好清海入道と霧隠才蔵(内海突破)で、清海と佐助は何年振りかの再開を喜び合う。

それを見た伊三は、兄貴の友達?と驚き、俺はあれからこの伊三入道を訪ねて真田九勇士の1人になったんだ。

この方が真田大助殿じゃと清海は佐助に大助を紹介する。

今のは甲賀流忍術とお見受け致したが、拙者は伊賀流の霧隠才蔵と言うものと才蔵も佐助に挨拶をする。

術はどこで習ったんだ?と清海が聞くと、白雲斎殿じゃと佐助が答えたので、その方こそ、花隈城主だと教える。

戻った佐助と大助と九勇士を出迎えた白雲斎は、父も江戸図面を心配しておりますたと大助の言葉を聞くと、この下菊も厳しく折檻されたと聞くが、絵図面が姫が持っておると言う。

摂関に堪え兼ねて敵に渡したのではなるまいな?と白雲斎が聞くと、松乃、佐輔様を呼んでおくれと白菊姫は頼む。

外にいた佐助は、皆さんにごちそうしようと準備していた所で…と笑顔で言うが、佐助殿、あれから松乃と探しておりました。

ここで探し求めたあなたと会えるとは何と言う縁…と白菊姫が言葉をかけると、急にうれしそうに身をもだえる。

そんな佐助に、あのとき渡した簪は持っていますね?まさか捨てたりしてないでしょうね?と白菊姫は言い、佐助が懐から取り出した簪を見ると、ちょっと貸してくりゃと頼む。

そして簪を受け取った白菊姫は、お父上、お喜びくださいませ、絵図面はこの中に!と良いながら、簪の珠の部分を開けてみせる。

その中には確かに大阪城の絵図面が入っていた。 佐助殿礼を言いますと白菊姫が言うと、何だ、そう云うことか…、どうも話が旨すぎると思ったと佐助は落胆する。

幸村殿に一刻も早くお渡しください!と白雲斎がその図面を大助に渡す。 その夜、無事任務を負えた九勇士は、黒田節などを歌って陽気に騒いでいた。

そんな中、外で寂しげにしていた佐助の元に近づいて来たのは白菊姫で、どうしてみんなと騒がないのですか?と問いかけて来る。

色々なことがごっちゃになって…、意外とデリケートなんですと佐助が答えると、詫びの印にこの簪を受け取ってくれますかと白菊姫が再び簪を取り出したので、喜んでちょうだいしますと佐助は受け取る。

でも私は苦しい…、あなたは恋をしたことがありますか?と白菊姫が言い出したので、佐助はありますと答える。

すると姫は、恋とは辛いものです。あなたが好きな人はどんな人ですか?と紀伊いて来たので、上品で美しく、ノーブルで、僕の仕事を見守ってくれる人ですと佐助は答える。

すると姫は、私の好きな人は極近くにいます。

聞けば、あなたは楓様と祝言なさるとのこと…、楓とのとは義姉妹ですから、祝言を挙げれば私は妹と言うことになります。 どうか、寂しい妹のことを聞いてください…、私の好きな人を…、あの方を連れて来てください…、大助様!お願い!と白菊姫が頼むので、所詮俺は三枚目だ…と肩を落とす佐助。

そのとき、みんなが騒いでいたとなりの部屋に、それまで潜んでいた天井裏から降りて来た賊が文机を開ける。

その気配に気づいた白雲斎が、くせ者!と叫ぶと坂月を隣の部屋のふすまに投げつける。

九勇士たちも驚き、隣の部屋に駆け込むが、絵図面を盗まれたことに気づく。

佐助と才蔵は、賊の後を追うが、山砦の前で見失ったと報告に戻って来る。

それを聞いた白雲斎は、あそこには術者がいて、わしを狙っていると告げる。

一方、山砦に絵図面を奪って戻って来た大頭を迎えた夜叉丸は、私に策があります。百万両にはなりましょうと言うと、黒覆面の大頭は、百万両より欲しいものがこの山にはある。女だ!ぼつぼつと出かけるとしようかと言うと姿を消す。

その時、お頭!お国歌舞伎の連中が道に迷った様子ですと子分が報告に来る。

興が湧いた様子の夜叉丸は、そのお国歌舞伎の一団を山砦に引き入れると、踊れ!踊れば命だけは助けてやる!と命じる。

踊り始めた億に歌舞伎の芸人と言うのは、実は九勇士たちの変装だったが、言われた通りに踊り出すと、変な踊りだな?と夜叉丸は不思議そうに見る。

最近、京や大阪で流行り出した安木ルンバと申しますと説明した九勇士たちは、ラインダンスを披露する。

そんな中、屋敷に残っていた白菊姫は佐助に、私は心配でならないの、不思議な術使いがいるそうなのです。どうか大助様を助けに行ってくださいませんか?と頼んでいた。 しかし佐助が、私は昔から争いごとは嫌いですと断ると、怒った白菊姫は屋敷の中に戻ろうとする。

そのとき、姫の前に現れた黒頭巾の大頭は、姫を背にからって逃げようとしたので、それに気づいて入り口の前に出て来て止めようとした白雲斎に、手裏剣を投げつける。

倒れた白雲斎の側に戻って来た佐助は驚くが、佐助!白菊姫を奪われた!あの山砦の恐ろしい男にだ…、佐助!頼む!行ってくれ!姫を…、姫を!佐助!と叫ぶと白雲斎は事切れる。

佐助は、側にいた楓と松乃に後のことを頼むと、山砦に向かってひた走る。

山砦では、夜叉丸とあざみが捕まっており、大助らから絵図面を出さぬか!と迫られていた。

そのとき、白菊姫を片手に抱えて出現した黒頭巾の大頭は、石川五右衛門とは俺のことだ!と見栄を切って自己紹介する。

そんな中、姿を現した佐助も見栄をきり、五右衛門と対決する。

大阪城の絵図面と白菊姫、欲しくば返してやる!取ってみろ!と五右衛門が挑発して来たので、斬り掛かった佐助は、大助様、姫を早く!と声をかける。

佐助と五右衛門は歌舞伎町のゆっくりした動きで剣劇をやる。 その途中、口にくわえていた絵図面を五右衛門が落としたので、佐助と五右衛門が一緒に拾い上げようとして絵図面は二つに裂けてしまう。

そこへあざみが邪魔をしに来て、逃げ出す五右衛門は、大助!命は預けたぞ!と捨て台詞を残しに得てゆく。

その後、鳥居峠の屋敷に戻って、白雲斎の墓前に手を合わせた白菊姫は、大助様と一緒に上田の城へ参ります。

絵図面の半分は佐輔様が取り返してくれました。残りの半分は真田九勇士の方が取り戻してくださるそうです。お寂しいでしょうが、しばしのお別れでございますと言葉をかける。

真田九勇士が帰ることになり、大助は佐助に一緒に城に来てくれぬか?と頼むが、佐助はやっぱり、私は戦いは好みません、ここで楓さんといますと断る。

しかしその楓は、私は国に帰ります。あなたの心はまだあの方に傾いております。それに気づいていながら絶えて行くのは、女の気持が許しません!と言うと、旅立とうとするので、楓さん、待ってくれ!旅支度するから!待っててくれよ!と止めた佐助は、急いで旅支度をすませると楓の後を追う。

村に降りて来て、道の両側に分かれることになった佐助に、佐助、もう一度言うが、真田十勇士にならぬか?と清海が頼むが、わしは争いは好まぬと拒否するので、又会えるよと言うと、2人は抱き合って別れを惜しむ。

才蔵も、猿飛、分かれるぞ!と言い、握手を求めて来る。

馬に乗った大助と白菊姫の後を九勇士の面々が付いて行く。 反対方向へ向かう楓の元に戻って来た佐助に、あんた、本当は行きたいんでしょう?大阪城の絵図面も取り返したいんでしょう?お行きなさい、父上もそれをお望みでしょう…、楓はいつまでも貴方様をお慕いしております、さようなら…と言い残し、歩き始める。

道の真ん中で、それぞれ逆方向に遠ざかってゆく真田九勇士一行と楓の姿を見ながら迷う佐助。

そうだ!銭占いをしよう!表が出たら楓さん、裏が出たら真田!と言うと、いつものインチキ銭を放り上げる。

手のひらに落ちて来た銭は予想通り裏だった。

楓さん!銭占いしたら裏が出たんだ!勘弁してくれ!と楓に呼びかけると、お〜い!清海!と呼びかけながら差棚大助の方へ走って行く。

その姿を涙ぐみながら見送る楓。
 


 

 

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