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サラリーマン 続・目白三平

 

目白三平シリーズの続編で、東映版はこれで最後になる。

レギュラー陣は前作から引き継ぎが多いが、中原ひとみさんのように、前作とは違う役での登場もある。

前作では口を開く台詞がなかった中原さんだが、今回は、目白家を混乱させるお茶目な娘役として大いにしゃべって目立っている。

前作も東映っぽさが希薄だと感じたが、今回も、主人公の故郷信州で登場する飯田蝶子さんや左卜全さんなど、後の東宝イメージの役者さんが目立つこともあってか、あまり東映らしい!と言う印象はない。

典型的なホームドラマなのだが、今とは違う当時の風俗などが色々分かる楽しさがある。

当時はまだ、隣近所で物を貸し借りすると云う習慣が、お返しなどと言う厄介な行為とともに残っており、これがいくつかのエピソードに絡んでいる。 ミソ醤油、砂糖、塩などの貸し借りもやっていたような記憶があるが、ここでは、ミシンを近所の娘に貸したり、アイロンを借りに来たりしているのが珍しい。

劇中でも、三平の給料の額を知りたがる老人が出てくるように、物価の話が色々出てくるのも面白い。

意外に感じたのは、地元の店でうなぎが高くなったと奥さんが言うと、デパートで安く買えるだろうと亭主が言ったり、ミソ漉しの特売をデパートでやっていると言った台詞が出てくる所だ。

当時は、デパートで売っている商品は、後のスーパーみたいな感覚で安いと言うイメージだったのだろうか?

主人公の三平の家には、どうやらまだ電気洗濯機やクーラー、電気冷蔵庫、テレビまでもないように見える。

1955年ではテレビ開局の2年後くらいなので、まだテレビは高価で、とてもサラリーマンが簡単に買える時代ではなかったかもしれない。

月賦で買うにしても当時は相当負担になったはずだ。

その代わり、劇中では、松下キネマと言う、どうやら邦画専門館のポスターを塀に貼っておくと、ただ券がもらえていたらしい描写がある。

しかし、若い娘役の中原ひとみさんは、そんな映画館で見るのではなく、洋画の恋愛ものを見たがっていることからも分かるように、若い女性は昔から、そうした大衆演劇の延長のような邦画時代劇などは見なかったのかもしれない。

そう云う描写を、錦之助ブームなどをきっかけに時代劇王国を築くことになる東映がしていることが興味深い。

またこの当時から「丑の日にはウナギを食べる」と言う風習があることや、それに対抗して牛肉のセールスが行われていたりと、食べ物の話も興味深い。

PTAへの主婦たちの進出や、家事の役割分担などと言った戦後の女性たちの主張と、それに困惑する男たちの姿もユーモアも交え描かれている。

クライマックスの、急に母親が家を飛び出し、子供たちが探しまわる所などは、ちょっとあざとい展開に見えなくもないが、幼い子供たちが泣くシーンや、一家団欒のシーンは、今見ても心に響く物がある。 正に「子はかすがい」を描いたようなハートウォーミングなエンディングになっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1955年、東映、中村武志原作、沢村勉脚色、千葉泰樹監督作品。

岩に荒波、右肩の雲海から光が射す東映クレジット

鉄道信号機のイラストなどを背景にタイトル、キャスト、スタッフロール

東京駅校舎口にあるこの8階建ての建物こそ、国鉄本社である。

私は、そこの厚生局厚生課の一級課員 戦前から戦後にかけ、黄疸で一週間休んだ以外は無遅刻無欠勤 国鉄の機関誌「国鉄」の校正に携わっています。(と目白三平の独白)

厚生課で隣り合って座っている中島(堀雄二)と目白三平(笠智衆)は、ボーナスをもらったものの、既に新聞記事などに金額0.8ヶ月分と公表されたことをぼやいていた。

いくら組合が賃金アップを要求したと言っても、これでは女房に隠しようがなかったからだ。

周囲の課員たちを見回した三平は、ボーナスの一部を帽子のリボンの内側に隠したりと、涙ぐましい努力をしているものを見ては微笑み、独身者たちが、彼女とのデートや山登りの計画でも立てているのか、楽しそうに語らっている姿を見て、今のうちに大いに自由を満喫しておくが良い、もう私たちになると自由などないのだから…と心の中でぼやいていた。

帰宅時、時々利用する飲み屋の主人が入り口付近を掃除していたので、今夜払いに来ますので、計算しておいてくださいと三平は声をかける。 しかし三平は、「たこ八」に2000円借金があることは女房の文子(望月優子)には言えそうにもなかった。

また、それだけあったらどうして私たちにくれないのか?お酒も飲めないあなたがそんな無駄遣いするなんてなどと文句を言われるに決まっていたからだ。

しかし、毎日会社で、回りからあれこれ言われていると、退け時には人間嫌いになるので、一人だけの時間が欲しくなるのであって、そう云う事情を察してくれ。(と三平は心の中で考える)

そのとき三平は、近所の北村夫人(清川玉枝)とその娘(根本和子)が揃って出かけているのとすれ違い、会釈する。

肉屋の前に近づいた三平は、幼稚園児の次男冬木(日吉としやす)が、豚の細切れ30円分買いに来ているのを見つける。

肉屋の奥さんがちょっと待ってね!と声を掛けると、細切れ~30円♩と冬木が「カモメの水兵さん」のメロディで歌い出したので、他の客の若奥さん連中が笑い出す。

見かねた三平が、こら冬木!そんなに大きな声で歌っちゃダメだろうと声をかけ、笑いながら肉屋の奥さんに頭を下げる。

家では文子がカレーライスを作っていた。 冬木はお遊戯と一緒に「カモメの水兵さん」の正しい歌を三平に披露してやっていた。

本当はこうやるんだよと冬木が歌い終えると、おかしいと思った、細切れの歌なんて…と三平は笑顔で答える。

そこに、お使いから戻って来た長男の春木(杉本修)がアイスキャンデーを嘗めているので、どうしたの?文子が聞くと、お使いのお小遣いとして店の人からもらったんだよと言うので、冬木が欲しがり、今度のお使いは僕に行かせて!と頼む。

文子は、あなたにはかりんとうを上げますからねとなだめ、兄弟共々手を洗うように言いつける。

今日は北村の奥さんに会ったよと、カレーを食べながら三平が言うと、娘さんと同じような服を着ていたと言うと、あの人もう50になるのに、娘さんと同じものを着たがるのよと文子がちょっと呆れたように言うが、そのとき洗面所に行った2人が洗面器が壊れているよと言うので、今度、鋳掛け屋さんに直させますと文子は答える。

娘さんと同じ服を一ヶ月交代くらいに着ているんじゃないか?その方が安上がりだし…と三平が言うと、あの奥さんには毎月デパートから何とか会と云うデパートのPTAみたいな所から案内が来るのよ、そして売り場では娘に買うような振りをして買った服を自分が着て、又同じように買いに行くのよと文子は言う。

お前が子供に豚の細切れを買いに行かせて涼しい顔しているのと似ているね…と三平が混ぜっ返すと、涼しい顔ってどんなの?と冬木が聞いて来たので、涼しい顔なんてしてませんよ、ほらこんなに汗かいてる…と、カレーの辛さで吹き出た汗を文子は見せる。

夜9時

横になっていた三平に、そろそろお出かけにならないとと文子が声を掛けると、面倒くさくなったな…などとぼやきながら三平が着替え始めたので、ビールなんか飲むから!と文子は嫌みを言いながら、今日おもらいになったんでしょう?と聞いてくる。

思い出したようにボーナスの袋を三平が渡すと、はいお小遣いと1000円だけ文子が渡し、後はあなたの上着を買いたいと言うので、それより俺にくれないか、もっと重要なことに使いたいんだと三平は頼む。

しかし心の中では、「たこ八」の借金のことを言うとまた愚痴を言うだろうと三平は考える。

使い道をおっしゃってください!と案の定文子が追求して来たので、俺を信用してくれないかと三平は答えてみるが、残りのお金で私の服も作りますからと文子は言い出す。

今度、春木の学校のPTAで文化部長に選ばれたんです。細川さんが厚生部の部長で…、それで外出用の服が必要です!と文子は言う。

あなたの上着もこんな継ぎ当てだらけでは体裁が悪い、まるで私があなたをお尻に敷いていると思われてしまいます!などと言うので、お前が良い女房と言うのは近所の皆さんみんな知ってるから…と言って文子を一瞬喜ばせた三平は、だから2000円と催促するが、その手は通用しなかった。

そんな所にやって来たのが遠い親戚の村上(小林桂樹)で、三平は明日の日曜に国の信州でお父さんの法事があるのでこれから出かける所なのだと応対に出た文子が説明する。

玄関口に立った村上は、前に仲人をお願いしてたけど、僕たちの結婚、無期延期になりそうなんですと言うので、もう喧嘩したの?と文子が聞くと、そうなんですと言いながら、玄関の外から姿を現した敏子(三笠博子)は、村上さんったら、私の言うことに反対ばかりして…と膨れっ面で訴える。 今日発表を知ったんですが、前に応募していた公営団地がダメになりまして…と村上が言うと、新しい住まいが見つかるまで私の家の二階で我慢すれば良いのよと敏子が横から口を挟む。

そうよねと文子は敏子に賛同するが、聞いていた三平は、養子でもあるまいし…とぼやく村上に、のっけからあんたの家の厄介になると一生頭が上がらなくなる、男ならそんな気骨がないとと村上に賛成する。

すると文子が男女同権よ!と三平を睨みつけてくる。

三平は、もう出かける時間だと言って、村上が政府がどんどん団地を作れば良いんだなどと言いだしたどさくさにまぎれ、おい、さっきの2000円!と文子に要求し、何とか手に入れることに成功する。

夜行列車で故郷の信州に到着した三平は、翌日、兄(浅野進治郎)夫婦や母(飯田蝶子)と共に、亡父の墓参りに出かける。 兄さん、あの辺でワラビ採ったなぁ〜などと子供時代を懐かしがる三平。

母はすっかり耳が遠くなっており、何を言っても話が噛み合なかった。

兄の話では、母はいつも杉山の爺さんに、三平の給料が上がったことばかり吹聴していると言うので三平は、母さん、困るな…と言って気が重くなる。

そこに、当の杉山の爺さん(左卜全)が息子と一緒に近づいてくる。 すると母が、三平がまた給料が上がって帰ってきただ!などと自慢するので、杉山の爺さんはいくらになっただ?と三平に聞いてくる。

困りきった三平が、定期昇給で36号号棒になっただけなんですと答えると、金で言うといくらになるかな?と爺さんは食い下がってくる。

一緒について来た杉山の息子が、うちの太一は元気でやっとりますかな?親父はあの弟ばかりかわいがり、あんたが先に偉くなりはしないかとそればかり心配しとるんで…と聞いて来たので、同じ東京でも滅多に会わないので…と、太一に近況は分からない旨、三平はすまなそうに教える。

杉山親子が去って行くと、爺さんに勝った気分になったのか、三平の母は得意げになる。

実家で、三平の姉(石井房江)や三平の弟(杉本昭)らも交え、三平は、中学4年の時、弁当のことで父親に叱られ家を飛び出したら、郵便局の所まで母さんが追って来た思い出話をしていたが、母親はさっぱり耳が遠くて、見当違いの返事をするだけだった。

ワラビが好きならまた送ってやるなどと言うので、来年の春で良いよ、今、ワラビを採るには山の上の方まで行かなければいかないからと三平は断るが、母にはさっぱり通じていなかった。 そんな所に、また杉山の爺さんが1人で杖をついてやってくる。

何事かと思えば、さっきの36号棒のことだが、金額はいくらかな?隠し立てすることもあるまい…とまたしつこく聞いてくる。

三平は困って、家族手当とかいろんなものが入っているので、僕にも良くわからないんですよとごまかすしかなかった。

しぶしぶ爺さんが帰ってゆくと、去年もあの爺さんは、駅長の所へ国鉄の給料のことを聞きに行ったそうだと弟が教える。

三平はいつまでいるのかね?と母が聞いて来たので、今夜の夜行で帰りますと答える三平だったが、明後日かね?などと又話が全く通じなかった。

月曜日、新宿駅から直接国鉄本社に出社した三平は、さすがに夜汽車の二日連続の疲労がたまり、あくびばかりしていた。

だったら休めば良いじゃないですか、無遅刻無欠勤に拘らないで…、目白さんは他に能がないから無欠勤に拘っているなんて陰口も良く聞きますよと中島が言うので、それは失敬だねとちょっと憤慨した三平は、今校正中の国鉄の駅員の詩を読んでみせる。

それは、駅で輸送用の牛やひよこと接している様を描いたもので、こういう仕事の中のちょっとした息抜きがあるからこそ、列車の安全につながっているんじゃないかね?と三平は言い、さらに、顔中すすだらけになった機関士(波島進)が、汽笛で助手(船山汎)を走行中の運転席に呼び寄せ、両手が塞がっている自分に代わり、つばをつけたタオルで目の炭塵を採ってもらうと言う詩も読んで聞かせる。

今までの無欠勤のおかげで妻子は暮らせて来たんだ。この仕事だっておろそかにはできないんだよと三平は中島に言い聞かせる。

細切れ♩30円!と冬木が歌っていた「カモメの水兵さん」の替え歌を歌いながら帰宅途中の三平は、隣の細川夫人(宮川玲子)と一緒にやってくる文子に出会ったので、もう服買ったのか?変な型だな〜と、文子が着ている見慣れぬ洋服のことを指摘すると、これYラインって言うのよ、あちらから来る女性が着ているのがAラインと言うものでちょっと古いのよなどと文子は解説する。

そんな文子と一緒に帰宅する途中、三平は、8頭身が着たら似合うだろうが、お母さんのような4頭身じゃ…と思わず失言したので、私でも5頭身…、いえ6頭身はあるわよ!などと文子は言い返して来る。

君がPTAに行くと、娘さんが来るのかね?と聞くと、ミシンを使ってもらおうと思って…と文子は言う。 自宅に帰り着くと、知恵子(中原ひとみ)、幸枝(深見恵子)、杉子(春日とも子)ら近所の娘3人が来てミシンを使っていた。

三等サラリーマンの娘でチコですと千恵子が挨拶して来たので、僕と一緒だねと三平は苦笑すると、子供っぽく見えるけど高校卒業してるのよと言う。

3人の娘が帰って後、隣の松下夫人がやって来て、松下キネマのポスターが20cmくらい家の塀にかかっていますから入場券1枚受け取る権利があるはずですなどと難癖をつけてくる。

家の前の塀の様子を見に行くと、確かにポスターの一部が隣の塀にかかっていたので、面倒なので2枚とも差し上げますと三平が言うと、1枚で結構です、当然の権利を申し上げただけですと言って帰る。

自宅に戻った三平は、キネマの入場券松下さんに譲ってやってくれと頼むが、あれ貼っていると、ヤマシンさん、大分負けてくれるのよと文子は不平そうに言う。

そこに春木と冬木が帰ってくる。

おばあちゃんがわらび餅たくさん作ってくれたぞと三平が伝えると、子供たちは喜ぶが、ダメですよ、すぐに夕食なんだから!と文子が喜んだ子供たちに注意する。

食後、新聞を読みながら、飯台に置かれたわらび餅に手を伸ばして食べていた三平だったが、文子が急にその皿をどかしたので、手探りするうちに、側に置いてあった火の点いた蚊取り線香を掴んでしまう。

ダメですよそんなに食べちゃ!などと言いながら自分も食べる文子。

そのとき、蚊帳の中の布団の上にいた冬木が、丑の日は「う」の付くものを食べるんでしょう?何だっけ?と聞いて来たので、三平はふざけて、「う」の付くもの…「牛」「馬」「うぐいす」などと答えると、「うぐいす」なんて食べないよ!と冬木が怒るので、おもしろがって、じゃあ「うどん」だろ?と三平はからかう。

すると、同じ蚊帳の中にいた春木が「うなぎ」だろう?いつかお客さん来たとき食べたね?美味しかったね?などと余計なことを言い出したので、お前は好き嫌いが多すぎるぞ!と三平は注意する。

すると、お父さんだって、らっきょとカボチャ嫌いじゃないか!僕は両方とも好きだよと逆襲してくる。

冬木は、早く「丑の日」にならないかな〜…と楽しみにし出したので、三平も文子もちょっと困る。

松下キネマの入場券、隣の奥さんに持って行ったかい?と三平が言うと、あの人、失礼なのよ、あなたのこと私より5つくらい若く見えるんですってなどと文子が言い出したので三平が喜ぶと、私が老けてるってことじゃないですか!と文子は不機嫌になる。

洗濯だって1月6万カロリー使うんですって、1年で72万カロリーあなたより余計に働いたのよ、洗濯機買ってください!と文句を言う。

三平は上半身裸になり、身体を拭こうとして洗面器がないことに気づいて聞くと、春木の学校に持って行きました、廃品回収の費用にするために…と言うので、まだ使えたじゃないかと文句を言うと、ホーローは鋳掛けではなおらないそうです。良いじゃありませんか、学校だってお金がいるんです!と文子は言い返してくる。 この前もPTAの会合で林間学校の費用のことでもめたんですよと文子は言い出す。

その席で、今、子供の旅行は、洞爺丸や紫雲丸の事故もあるので止めた方が良いのでは?と言う意見が出て、その際、国鉄はこうした事故の責任に付いてどう思っているんでしょう?と文子に非難めいた目を向けられたと言うのだ。 どう答えたんだ?と聞くと、主人に聞いときますと言っときました!と文子は三平を睨んで来る。

洗面所で立ちすくんでいた三平は、皆さん、洞爺丸や紫雲丸のことは申し訳ありませんでした。

総裁は辞職しましたが、私は平社員なので辞職はしません。再び起こしませんのでどうか勘弁してくださいと心の中で詫びる。 丑の日がやってくる。

文子は出かける前の三平に、今日は丑の日ですよ、うなぎはこのところ急に高くなって、4〜5日前は70円だったのが120円になって!120円を四人分だと480円もかかりますよ、どうします?と聞いてくる。

三平は、俺が買ってきましょう、デパートだと安いのがあるはずだから…と言い残し外に出ると、子供二人が一緒に遊びに行くらしく、お父さん、電車道に出る時は気をつけるんだよ!と冬木が、いつも自分が言われていることを言い返して来たので、こら!と叱る。

国鉄本社に来た三平は同僚に、君、土用の丑の日にウナギを食べるなんて誰が考えたんだ?と愚痴ると、お酉様にカシワなら分かるんですけどねと言われ、全くだよと雑談していたが、そこに中島が戻って来て、新潟の管理局に行ってくれないかと今言われて来たと言う。

2〜2000円くらいの昇給で都落ちすることもないと思うんですが…、さみしいな…、こんな景色も見られなくなるし…と、窓から外を見ながら言うので、老後の恩給が違ってるくるし…と三平は言い聞かし、もし君の部屋が空くんだったら確保しておいてくれないか?と思いついたように言い出す。

10月になってからって言うんだけど…と中島が言うので、それで良いよ!と答えた三平は、すぐさま、日本ビールの宣伝部の村上に電話を入れる。

仕事中だった村上は、電話の受話器を縦に固定する台に置いて電話を聞き始めるが、三平の話を聞くと、本当ですか!と受話器を手に取り喜ぶ。 そして、仕事の指示をしに来た同僚を無視してすぐに部屋を飛び出すと、エレベーターに乗り込む。

そのエレベーターガールをしていたのが敏子だったからだ。

部屋が見つかったんだよ、代々木の6畳と四畳半の二間らしいんだ、いよいよ結婚できるね!と村上はうれしそうに話しかけるが、敏子は無関心そうに、何階に行くの?と聞いて来たので、誤解だよ!と村上は答える。

すると敏子は本当に5階でドアを開けたので、君こそ誤解してるんだよ!と村上は困惑する。

退社後、デパートの食料品売り場に行ってみた三平だが、うなぎは予想以上に高く250円もしたので、金持ちそうな夫人が買うのを横目に見ながらすごすごと三平は店を出ようとする。

そのとき、表の通りを、カウボーイ姿の男たちと西部劇風のワゴンが通り過ぎながら、「丑の日には牛を食べましょう!」とキャンペーンパレードをやってたので、それを見た三平は何かを思いつく。

帰宅して、三平が買って来たステーキ肉4枚で160円と言うのを聞いた文子は、でも可哀想ですわ、子供たちがあんなに楽しみにしてたのに…と表情を曇らせる。

どうせうなぎはすぐ安くなるんだし…などとごまかしていた三平だったが、棚の上に置いてあるそうめんなどの三種類の食品に気づき、これは何だ?と聞く。

3人の近所の主婦からもらったものらしく、お返しにかりんとうを一袋ずつ差し上げたと文子が言うので、そいつは残念だな…、食べようと思っていたのに…と三平がぼやくと、何ですか子供みたいに!と文子から叱られる。

そこに帰ってきた息子たちは、案の定、ビフテキか…などと文句を言い始めたので、「丑の日」には牛を食べるんだよ、「丑の日」にうなぎなんておかしいだろ?と三平は必死にごまかす。

困りますわ、嘘をつくなんて…と三お栄の側に寄って来た文子が耳元で文句を言うので、子供の頃から贅沢なことをさせるのは良くないと三平は答える。

すると、春木までもが、大人っていい加減なこと言うからねなどと生意気なことを言い出す。

そこに村上と敏子がやって来たので、10月に結婚するんですって?お勤めは?と文子がうれしそうに敏子に聞くと、敏子は村上さんが止めろって…と答える。

独占欲が強いのね、村上さんってと文子がからかうと、食卓でビフテキを食べていた春木が封建的だよと言い出し、意味は良くわからないけど、こういう使い方するんでしょう?と言うので、三平はまあそうだな…と答えるしかなかった。

それで披露宴のことなんですが?と村上が言い出したので、金がかかるぞと三平は忠告するが、課長か上役に掛け合って、ビアガーデンでやろうと思いますと村上は答える。

そのとき、今日は丑の日だからビフテキだよと春木が言い出したので、それはね…と村上が勘違いを糾そうと答えかけたので、慌てた文子は、今度PTAでビール工場の見学をさせて欲しいわと願いで、三平も村上の側に来ると、披露宴のことだがね…と言いながら、目で言うなと懸命に合図をしようとする。

ある日、三平は留守番にやって来た千恵子と道で会ったので、これから仲人をしに行くんだと説明し一緒に歩く。 おじさんたち見合い?恋愛と千恵子が聞いて来たので、見合いだと答えると、やっぱりね、愛し合っているようには見えないもの。

おじさま、奥さんのこと愛してないでしょう?などと一方的に決めつけて来たので、三平は面食らいながらも、時には煩わしくなることもあるさと答える。

すると千恵子は、私は恋愛だけで止めとくわ。おじさまたち見ていると、結婚ってつまらなそうですもの…、みんなどうして結婚したがるのかしら?バカみたいね。 私は毎日違う相手と遊んでいる方が良いわなどと千恵子が言うので、三平は唖然としてしまう。

神社での結婚式の後、村上と敏子が結婚写真を撮っているのを見ていた文子は、私たちも二人で撮りましょうか?と三平にささやきかけてくる。

その後、披露宴での挨拶をすることになった三平は、私たちの結婚式は国民服ともんぺ姿で、式の途中で空襲警報が鳴り出すと言うものでした…と言う自分たちの自己紹介から始める。

先ほども、家内が、一緒に写真を撮らないかと言いましたが、結婚写真一枚撮ることもできませんでした。

今日、近所の娘さんに、おじさんはおばさまを愛してないわねと言われました。

終戦からインフレへの時代でした。家内にサービスしている余裕はありませんでした。

今日の私たちの衣装も貸衣装です。こんな晴れがましい席に出てこともありませんでした。 その娘さんは、おじさんとおばさまの生活をみると結婚したくないとも言うので狼狽しました。

今後は人から見て幸せに見えるよう暮らしたいと思います。

今は空襲はない平和な時代ですから、仲良く正しい秩序を守り、男は気骨を持ち、女はしとやかに願いたいものです。 女が威張り散らすのは感心しません。

村上くん、お尻に敷かれないようにしてくださいと三平が挨拶を終えると、新郎の村上は、親友の佐伯に声をかけ、その場で三平と文子のツーショット写真を撮ってやるように頼む。

二人は照れながらも指示通り部屋の壁に寄り添い、文子はブーケに戸惑うが、今更恥ずかしがるお年でもないでしょう?と村上から言われると、失礼ね!とむっとしながらも、まんざらでもない様子で写真に納まることになる。

自宅に戻って来た文子は、酒に酔ってモーニングのまま仰向けになっている三平に、あなたってお酒飲むとすぐ脱線なさる。でも今日の挨拶は良かったわ、あの写真どう撮れているでしょうね…とちょっとうれしそうに話しかける。

水くれと言いながら三平が起き上がると、ビールがありますわ、ボーナスが出たとき買ったものが余っていたのと文子が珍しく笑顔で言うので、良いのかい?と三平が戸惑うと、今日は特別と文子は笑う。

僕たちの結婚式は、一晩中防空壕の中に入っていて…と三平が思い出すと、あなた思えてる?あのとき、死ぬなら一緒に死のうっておっしゃって…と文子が言うと、そうだったかな…、しかし、こうなると、そう簡単には死ねないね…と、億の部屋で二人並んで眠っている春木と冬木の寝顔をみながら三平は言い、この子たちが大学を出るまで頑張らないと…と文子も答える。

三平はそんな文子にもビールを勧めながら、人間たまには脱線することも大事だよ、生活も大事だが、あまりあくせくしていると老けてしまう。

たまには羽目を外して若返ろうじゃないかとつぶやく。 後日、村上は、文子たちの学校のPTAを招き、ビール工場を案内していた。

瓶の洗浄から詰め込みまで全てこの工場でやっており、1日40万本を生産していますと説明する。

女子作業員が顔にかぶっているフェンシングの面のようなものは?と参加者から聞かれた村上は、ビール瓶が時々爆発する事がありますのでと説明していると、奥様からお電話がありまして、今朝のことをお忘れなさらないようにとのことでしたと女子社員が村上に伝言に来る。

敏子さんから?と文子が気になって聞くと、ミソ漉しを買って来てくれと言われたんです、デパートの特売なら20円安いって…と村上は照れくさそうに答える。

10円の電話賃を払ってもまだ10円安いって訳ねと文子がからかうと、遠くでビール瓶が破裂する音がする。

以前、中島が住んでいた家でラジオを聞きながら1人待っていた敏子の元に、村上が約束通りミソ漉しを買って帰ってくる。

文子も一緒について来て、毎日どう?と聞くと、時間が余って困っちゃうわと敏子は言う。 家事をすることが少なくて時間を持て余しているらしいので、金魚や花を買ってあげるんですが、それじゃ僕の代わりにならないって言うんですよと村上がにやけるので、ごちそうさまと文子は笑う。

今日は僕が腕をふるってごちそうしますから上げってくださいと村上が言うと、お肉のパイって案外美味しいんですよと敏子も褒め、今材料買ってきますからと村上が出かけて行ったので、親切な旦那さんね、家の旦那は炊事何てしてくれないから…と文子は敏子をからかい、用事があるから村上さんには断っておいてと言い残し帰ってゆく。

その途中、文子はパチンコをやっている三平と冬木の姿を通りから発見する。

パチンコ初心者の冬木に一度打たせてみたら、ビギナーズラックで玉が出たので、三平がもう一度やってごらんと勧めている所だった。 そこに入って来た文子は、困りますわ、いらっしゃい!と言いながら、文子は冬木の手を引いて帰ってゆく。 冬木は、お父ちゃん、キャラメルもらって来てね!と三平に頼んで店を出て行く。

キャラメルをもらい、文子と冬木の後からついて来た三平は、冬木にキャラメルを渡しながら、PTAのたびに夕食を待たされたんじゃたまらないなと愚痴ると、コロッケ買ってきましてよと文子が言うので、今日もコロッケ、明日もコロッケ♩と歌い出す。

それを聞いた文子は、何ですって!と睨みつけ、余裕があればシュウマイでも買ってきますわ!と三平の収入の少なさを責める。 帰宅すると、留守番をしていた娘が、さっきこれ来たんだけど?と、信州から届いた荷物を差し出して来たんで、またくるみ餅だねと冬木は喜ぶ。

そこに、松下夫人がやって来て、アイロンを借りにくる。 さらに松下夫人はミキサーが2割安く手に入るので買わない?と誘ってくるので、家はミキサーより洗濯機が欲しいわと文子は言う。

すると松下夫人は、家は洗濯機必要ないの、主人が洗濯機代わりなの。洗濯機って襟や袖口はもみ洗いしないとダメなそうね?その点、家の主人はもみ洗いもちゃんとやるんです。今日もロードショーの切符を買わせたのよなどと自慢げに話して帰る。

信州からの贈り物は大量のワラビだったので子供たちはがっかりする。

子供たちにソースを買って来て!と文子が声を掛けると、冬木がアイス屋さんお駄賃くれるからと言って立ち上がったので、春木も僕が行くと言い出す。

小橋さんの話を聞いてたけど、あれは子供がないからだよと三平が言うと、村上さんもお料理は作るんですって、ああいうのを民主的って言うんでしょうねと文子は言い返す。

三平が、ワラビをこの間のお裾分けのお返しに持って行けば?と提案すると、文子はそんなものでは気が引けますと言うので、お裾分けって好意だろう?これおふくろの好意だよと三平は抗議する。

しかし文子は、今頃、ワラビなんかで喜ぶ家はありません!と文子は反論する。

俺に配れって言うのか?と三平が聞くと、バカにされるだけですよ!と文子は不機嫌なままだった。

まずは、細川さんの家に持って行くと、奥さんが旦那(須藤健)も呼び、その旦那がワラビは大好きなんですよと言ってくれたので、外に出た三お栄は、ワラビが好きなんて人はいないなんてお前は言ったけど、いるじゃないか!と心の中で憤慨する。

続いて、北村さんの家に持って行くと、北村夫人はちょっとお待ちになてくださいと奥に下がるが、何?ワラビ!長野はリンゴでしょう?と不満そうに言う娘の声が聞こえて来たので、私の郷里でリンゴができるのはほんの一部の地域でして…と心の中で弁解しながら、そっと家を出る三平。

ほらごらんなさい!バカにされるだけですよ、だから嫌だと言ったのに!と言う文子の声が脳裏を横切る。

結局、三平は、三つ目の包みはお裾分けの返礼ではなく、村上の家に持って行くことにする。 村上はエプロン姿で、夕食用のパイ生地を伸ばしている所だった。

三平がワラビを渡すと、村上は鉱物だと喜び、敏子も、私たち好きなもの同じでなどとのろけた来たので、すぐに帰ることにした三平だが、村上をちょっと外に呼び出すと、君は敏子さんに大変サービスが良いみたいだな?仲良しなのは良いことだが…と話していると、車が横付けし、中から着飾ったご夫人と、その後から山のように大量の買い物を持たされた主人らしき人物が降りてくる。

あっけにとられてその二人を見送った三平は、まるで外国人そっくりだねと嘆くと、君はもっと気骨のある男かと思っとったけど、そんな君がああいう風だと僕が迷惑だよ、君のおかげでさんざん家内から文句を言われる。今後は男同士、共同戦線を張ってもらいたいんだと申し出る。

でれでれしているとその内君もひどい目に遭うぞ!と三平が忠告すると、そういうもんですかね〜と村上は気のなさそうな返事をする。

その頃、家にいた文子は、隣の松下家の窓が明るいのを見つけ、火事よ!と叫ぶ。

春木と冬木も、文子に言われ、外に出ると洗面器などを叩き、火事だ!と大声で叫ぶ。

文子は水を入れたバケツを持って外に飛び出すと、誰か電話!と大声を出す。

近所中が出て来て消火に当たる。 松下夫人は、文子から借りたアイロンを点けっぱなしにしたままロードショーに行ったらしい。

後日、雨の中、新品のアイロンを買って詫びに来た松下は、お借りしたアイロンを焼いてしまいまして、これでご勘弁を願います。

本来なら家内が伺う所ですが、面目ないって申しまして…、家内にあんな純朴な所があったとは思いませんでした。

これも火事のおかげかも知れません…などと言いながら帰ってゆく。

ある日曜日 三平が一人で留守番をしていると、千恵子がやって来て、おばさんは?と聞くので、出かけてるよ、PTAだそうだ、日曜日と言うのに…、子供たちは松下キネマに見に行った、錦之助だと教えると、おじさま一人ね、可哀想にと千恵子は同情する。

何か気晴らししないとね、近頃パチンコが問題になっているが…と三平が言い訳がましく言うと、私たちのうちで誰が好きなの?と突然千恵子が聞いて来る。

恋人を選ぶとするとなどと言い出すので、君はまだ子供じゃないかと三平は呆れる。 じゃあ、幸枝さん?杉子?などとしつこく聞いてくるので、自分の子供みたいに思っているよと無難な返事をすると、だって悔しいじゃない!杉子さんたちに負けるとなどと千恵子はふくれる。

そこに、当の杉子がやって来たので、私ちょっと出かけてきますからと言い、靴箱から靴を取り出し履こうとした三平だったが、その靴があまりに汚れていたので、私磨きましょうか?と杉子さんが言ってくれる。

最近、家内はPTAに行くので、靴磨きどころじゃないんだよと言い訳し、三平はそのまま出かける。

その後、パチンコをしていると千恵子がやって来たので、良くここがわかったな?と驚くと、サラリーマンが来る所なんてパチンコ屋くらいでしょう?などと生意気なことを言う。

そして、ねえおじさま、映画に連れて行ってくださらない?と言うので、松下キネマに行こうか?と誘うと、嫌よ!ものすごいラブシーンがある映画が良いわなどと千恵子はねだる。

仕方がないので、フランス映画を見に行くと、ちょっと楽しいじゃありません?二人だけの秘密が持てて…などと千恵子が隣の席からささやきかけて来たので、時代が違う!時代が違う!と三平は心の中で自重するのだった。

映画では、ベッドの上で男性が女性に濃厚なキスをするシーンが映し出されたので、すごいわね〜…と千恵子はうっとりしたようだった。

その後、喫茶店で、紅茶とケーキ、ソフトをごちそうした三平だったが、私たちのこと人はどう思うかしら?と千恵子が言うので、親子か親戚だろ?と三平が答えると、おじさま、もっと若ければ良いのに…、そしたら恋人に見えるでしょう?おじさま、もう少しハンサムだとすてきなのにな…などと千恵子は勝手なことを言ってくる。

そのとき、店に入って来たのは、国鉄の厚生局長(宇佐美淳也)とその奥さん(大谷あき子)だったので、三平は慌てて会釈をする。

誰?お友達?などと千恵子が聞いて来たので、えらい人だよと教えた三平は、気まずいので急いで帰ることにする。

一方、離れた所のテーブルに付いた局長の奥さんもどなた?と聞くので、うちの課員だよと局長は教えるが、あんな大きな娘さんがあるの?と聞かれると、さあ?と答えるしかなかった。

10月24日、文子は地元下落合の消防署で、火事の早期発見に協力した功績で表彰され、金一封も貰い受ける。

消防自動車の側で待っていた春木と冬木は、駅前でお寿司でも食べましょうと笑顔で署内から出て来た文子を出迎えると、いくらもらったの?と聞く。 文子は物陰でこっそり封筒の中を調べてみると、たった200円しか入っていなかったのでがっかりする。

国鉄本社では、厚生局長室に来ていた三平に、君の奥さんはPTAの部長をやっているようだな?うちのもやっていたが、PTAは女のリクレーションだよ、会合の席で男と対等に話せるのがうれしいようだ。

あれに出るようになって、女房は昔のように文句を言わなくなったと言う。

春木と冬木は、金一封があまりに少なく、寿司も食べられないと知りがかりして帰っていた。

お米屋さんに借りがあったのよと文子も不機嫌そうに言い訳する。

千恵子の家の前を通りかかったとき、千恵子の母親が出て来て、昨日はありがとうございました、映画にごちそうまでしていただいたそうで…と礼を言って来たので、文子はにわかに機嫌が悪くなる。

その日、給料袋をもらって帰ってきた三平は、消防署の表彰状をみると、金一風かと喜ぶが、たった200円だったと聞くと、今は立ち小便の罰金だって1000円くらい取られるのに…とぼやくが、文子の様子がおかしいので、どうしたんだ?と聞く。

あなたチコちゃんに映画とお紅茶とケーキとアイスまでごちそうなさったそうね?そんなお金があるのなら、どうして私たちにくださらないの?全然うちの経済考えてくれない!と文句を言い出す。

私たちが行くのは、松下キネマのただばかり!とぼやくので、PTAは楽しかったか?と三平が話をそらそうとすると、遊びで行っている訳じゃありません!外で無駄遣いばかりして!とあんまり文子の文句が多いので、いい加減にしてくれ!と三平は少し怒るが、私なんていなくても良いと言うんですか!と文子は逆上する。

帰って早々、うるさいことは止めてくれ!と言いながら、着替えを始めた三お栄は、飯にしてくれ!腹がすいてるんだと声を掛けるが返事がない。 おかしいとろもって台所を覗くと、今までそこにいたはずの文子がいなくなっているではないか! 外に出て探しまわる三平だったが、文子はどこにもいなかった。

仕方がないので、おかずを買って帰り、良いもの買って来た、ご飯にしよう!と子供たちに声を掛けると、お母さんと一緒に食べる…と冬木が言い出し、お父さん叱っただろう!、だからお母さん出て行ったんだよ!お父さんのバカ!と春木が三平を責め、冬木と一緒に泣き始める。

三平は困惑しながらも慣れない食卓の準備を始めるが、気がつくと二人の息子たちもいなくなっているではないか! その頃、文子は村上の家も訪ねていたが、事情を聞いた村上は、僕は目白さんの気持は分かるような気がする。

若い娘と一緒にいるとうれしいですからねなどと言うので、それを聞いていた敏子は、あなた、今でもタイピストの青山さんと付き合っているのね!などと怒り出す。

そんな訳ないだろう、君のために金魚だって買って来たじゃないかと村上が困惑すると、金魚なんてデパートで安く買えるわ!などと敏子は言い返す。

いきなり夫婦喧嘩になった村上たちをなだめ、私は別にチコちゃんを誤解してるんじゃないのよ、PTAのことで晩ご飯が遅くなったりするとすぐぷんぷんしちゃって!と文子が言うと、おじさまもいけないとは思うけど、私もお勤めしていてたでしょう?そのとき、疲れて家に帰ってご飯ができてないとすぐお母さんに怒っちゃってたわ…、だからそう云う気持は分かってあげないと…と敏子も文子に言い聞かせる。

そのとき、思い出したように、写真できてますよと村上が言い、結婚式の日の三平と文子のツーショット写真を出して来てみせる。 それを見た文子は、まあ!と喜ぶので、ずいぶん気取っているな、花なんか持って!と村上がからかうので、あなたが持たせたんじゃないの!と文子は笑って抗議する。

三平は、細川の奥さんと一緒に、文子を探しまわっていた。 細川の奥さんは、奥様の立場も理解していただきたいわ。

義務教育の予算は本来政府の力でやってくれなければ困るんですけど、実際は色々足りなくて… 廃品回収のおかげで学校に図書館もできたんですよ、奥様が夜遅くなると怒るんですってね?みんな子供のためを思ってやっていることですから…などと言うので、三平は面目なく思う。

そんな二人が床屋の前を通りかかったとき、店の人が電話がかかってますよと三平に声をかけてくる。 三平は店の電話に出ると、村上からだったと知り、君の所に行ってたのかと安堵する。

目白さんも奥さんにはもう少しサービスしないと…、洗濯機くらい買ってやったらどうです?月賦でも買えるでしょうと勧める。

その頃、春木と冬木は母の姿を求めて近所を捜し倦ね、駅前のベンチで母親の帰りを待っていた。

冬木は疲れきっており泣いていたので、泣くなったら!と春木が頭をはたくとまた大泣きし出す。

そのとき、改札口の向こうから降車客が出て来て、その中に文子の姿を見つけた二人は飛びつき、バカバカ!お母ちゃんのバカ!とすがりつく。

ずいぶん待ったんだよ!と泣きながら冬木が言うと、2時間も待ったんだと春木も言うので、ごめんね、ごめんねと文子は謝る。

そのとき、ボーイフレンドと一緒に帰ってきた千恵子が、泣いている二人に気づき、どうしたの?これ上げるわ、ショートケーキ!と持っていた箱を二人に渡したので、文子が礼を言うと、良いのよおばさま、あの子が買ってくれたんだからと先に行っていた男の子を千恵子は指指し、その子の元へ走り添ってゆく。

家で待っていた三平が、夕食のおかずに買っておいた包みを開くと、そこには蒲焼きが入っていたので、春木も冬木も大喜びする。

全然すごい!今日はうなぎの日?と冬木が聞いて来たのと、本当はね、丑の日にウナギを食べるんだよと三平が教えると、先生言ってたよ、人間嘘を言ってはいけないってと春木が生意気なことを言う。

あの時はお金がなくて買ってあげられなかったんだ、嘘をついたお父さんを許してくれるかい?と三平は謝る。

2人ともお上がんなさいと文子が自分たちの分も子供に渡すと、春木は一串を三平の皿に戻し、冬木にも母さんに戻すように言う。

冬木はちょっとためらっていたが、やがて一串を文子に渡し、いただきます!と食事を始める。

おいしいかい?良かったねと目を細めた文子は、そうそうあなた写真が…と言い、村上からもらって来たツーショット写真を出してみせる。

子供たちもその写真を覗き込み、きれいだね、お母さん!と春木が言うと、よそのおばちゃんみたいだねと冬木も言う。

その写真に目を細めていた三平は、今度はお前に買ってやるよ、楽しみにしてろよ、今度の日曜日…と意味有りげに文子に言う。

次の日曜日、洗濯物を干していた松下夫婦は、文子と三平が一緒に洗濯をしているのを見て、何ですかそれは?と声をかけてくる。

うちの天気洗濯機ですと洗濯をしていた文子は笑顔で答える。

それは電気洗濯機ではなかったが、たらいと水道が一体化した手製の洗濯機だった。

それでも大分、洗濯が楽になった文子は、1年に1万カロリーくらいは節約できますと喜ぶ。

洗濯物を干していた松下が、お互い大変ですな!お互い主婦連合会から表彰されますよなどと声をかけてくる。

同じように物干竿に洗濯物を干してやっていた三平は、側の広場から飛んで来た野球のボールが洗濯物に当たってまた汚れたので、こら!と叱りながらもボールを投げ返してやる。

そのとき、自衛隊の戦闘機が上空を横切って飛んで来たので、全員空を見上げるのだった。
 


 

 

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