白夜館

 

 

 

幻想館

 

狼と豚と人間

 

三國連太郎、高倉健、北大路欣也が極貧生活から脱出しようとあがく3兄弟を演じた犯罪もの。

ヤクザに取り入り出世した長男が、自分が捨てた兄弟に仕返しされると言う皮肉が描かれている。

低予算風に見えるのでオープンセットとも思えず、舞台になっている集落はどこかでロケしたものと想像するが、本当の貧民窟に見える。

当時はまだこういうロケーションが残っていたのだろう。

若き北大路欣也さんの熱っぽいキャラクターが強烈で、それを取り巻く石橋蓮司さんたち当時の若者たちの無鉄砲さと弱さのギャップも良い。

劇中、急に歌い出したりと云ったミュージカル風の演出も、「ウエストサイド物語」(1961)辺りに影響された演出なのか、時代を感じさせる。

意外だったのは江原真二郎のヤクザ役で、他にも悪役風のキャラは演じられているが、この作品でのキャラクターが一番迫力があるように思える。

甘いマスクと、切れたときのギャップがなかなか良い。

健さんと三國さんは大体いつもの感じで、そう印象に残ると言う感じではない。

中原早苗さんは日活からフリーになり、東映作品に出始めた時期のようだが、この翌年、この映画の深作監督と結婚なさっている。

この映画が監督との初顔合わせのようなので、ここからお付き合いが始まったのかもしれない。

前半の犯罪劇から一転して、裏切り、拷問、仲間割れ、三兄弟の再会…と展開する緊迫感はただ事ではなく、どろどろとした人間の欲望と醜さをえぐり出した犯罪ドラマの傑作だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1964年、東映、佐藤純彌脚本 、 深作欣二脚本+監督作品。

小舟が浮かぶ汚い川のほとりに立ち並ぶ多くの掘建て小屋…

タイトル

ここが俺たち兄弟が生まれた町…、豚小屋だ!

人間らしい暮らしがしたくて10年前上の兄貴が出て行った。

5年前、2番めの兄貴が逃げて俺におふくろ押し付けやがった。(と三男のナレーション)

俺は俺のやり方で生きることにした(と次男の声)

どうせ食うか食われるか、食った方が勝ちさ! 畜生!搾りかすのたまり場がこの町だ!

俺たちはのし上がった! その頃からある組織が目をつけた。

兄貴が色目使ったんだろう…

(岩崎建設の看板)

(水原商事の看板)

畜生、ハメやがったな!俺はサツにパクられた!

それから何年かな? ここは逃げ後れた豚共の町だ!

貧しい町に戻って来た次男黒木次郎(高倉健)は、三男三郎(北大路欣也)が友達と棺桶を車に積み込んでいる姿を見かける。

しばらくだったな、サブ!と次郎が声を掛けると、いつ出て来たんだ?とぶっきらぼうに三郎が聞くので、3日前だと次郎は答える。

棺桶を見ながら、すぐに来ていたら間に合ったかな?と次郎がつぶやくと、おふくろが喜ぶと思うか?青山おふくろが兄ちゃんたちのことを何て言ってか知ってるか?泥棒だとよ! なけなしの米代を盗んで逃げたってよと三郎が怒りも露に言うので、なるほど、それで兄貴も寄り付かなかったのか…と次郎は合点するが、どいてくれよ!と三郎は次郎を押しのけると、仲間たちと一緒に棺桶を車に乗せ出発する。

それを見送る貧しい住民の目線に気づいた次郎は、ばつが悪くなったのかその場を立ち去る。

ジャズのレコードがかかるの室で、ベッドに寝ていた杏子(中原早苗)は、ベランダから外の景色を見ている次郎に、どうしたの?何を見ているの?と聞くと、おめえも行ってみねえか?一緒に…、あの海の向こう…、行ってみりゃ何かあるさと次郎が言うので、何かって何さ?と聞き返すと、自由って言うのかな?ここじゃ俺たちの手に入らないものさ…と次郎は答える。

そうね…、私はお金持ちのおじいちゃんの妾…、あんたはヒモ…、どうやって出て行くの?と杏子がからかうように聞くと、後2日経ったら2000万入ると次郎が言うので、危ない橋渡るのね…と杏子は聞く。

銭と命どっち取る?って言われたら、今の俺なら迷わず銭を取る!それでおれたちの自由を買おうじゃないか?思い切って賭けてみないか?と次郎が言うので、良いわ!賭けるわ、あなたに!と答えた杏子は次郎とキスをしながらベッドに横たわる。

その頃、三人兄弟の長男市郎(三國連太郎)は、岩崎組の中で自分が企画した「クラブ フェニックス」の店舗前に車から降り立つと、今、社長が御見えになっていますと子分から知らされ、満足そうに中に入って行く。

岩崎組の社長岩崎(沢彰謙)は、一通り見せてもらった。おめえにこんなセンスがあるとは思わなかったと感心したように市郎の仕事ぶりを褒めると、次郎に会ったか?出てきたそうじゃないか、二日前…と聞いて来る。

うっかりしましたと市郎が謝ると、すぐに会った方が良い、妙ないたずらさせんことだ、お前の将来のためにもな…と岩崎は忠告する。

そこへやって来たのが三郎で、匂うか?2年以上もおふくろの世話をしているとうんこの匂いが付いちゃうんだ、最後は垂れ流しだったぜ…と睨みつけるように言うと、これ頼むよと骨箱を差し出す。

何故知らせなかったんだ?と責めるように市郎が言うと、生きてたおふくろを捨てた奴が、死んだおふくろに会いたかったてか?と三郎は皮肉で返して来る。

銭やるからどこかの寺に預かってもらえと市郎は言い、金を三郎に渡す。

三郎はその金を持って、仲間たちが待っていた水門の所へかえって来ると、骨箱を海に放り込む。

ぷかぷか波間を漂っている骨箱を見ながら、すぐには沈まないものだな…と感心したように見る若者たち。

だけど、おめえ良く面倒見たな、2年間も…と三郎に声をかける仲間。

気楽にぷかぷか行っちゃったな…、当てなんかないんだよ!と紅一点マコ(志麻ひろ子)が言う。

すると三郎たち仲間は、おさらば~♩と全員で即興の歌を歌い出す。

その最中、骨箱は波間に沈んで行く。

それを見送った三郎は、良い葬式だったな…とつぶやくので、どうするんだ?と仲間が聞くと、どうにかなるさ、金あるんだ!と三郎が言うので、全員急に元気になる。

三郎たちは、ゴミの山に向かうと、そこにいた犬を追いかけ始める。

無人の元水原商事ビルの中では、次郎が水原(江原真二郎)と作戦を練っていた。

2000万の取引に用心棒3人ってことは、奴ら3人を押さえる奴、ぶつ運ぶ奴、最低4人いるな…と次郎が作戦を練っていると、兵隊がいるんだ、おめえの弟仲間がいたな?と水原が言い出す。

奴らだと安上がりだし、後始末も簡単だぜ…、大体、大将逃がすってのが兵隊の役目だからなと水原はうそぶく。

そこに突然やって来たのが市郎で、岩崎様に楯突いちゃいないな?と次郎に聞いて来たので、何の用だ、兄ちゃん?と次郎が聞くと、おめえの旅費だよと言いながら市郎は金を渡す。

そんなに目障りかよと次郎が不機嫌そうに聞くと、おめえ、良い兄貴持ってるよと水原が冷やかす。

この前イにはおめえの住むシマはねえんだ、早くずらかれってことだと市郎が次郎に言い聞かすと、分かったよと、あんたの飼い主に言ってくれよと次郎は答える。

三郎と仲間たちは、捕まえた犬を倉庫の中に持ち込むと、大きな鍋を取り出し、犬鍋の準備をしながら、どうしたら良いんだ?俺たちは~♩とまた陽気に歌い出す。

この後何する?と言いながら、マコを抱こうと仲間が近づくと、今日はダメ、公休日、アンネの日!とマコは拒否する。

町の者をかつあげやってよ、ジャズ喫茶は?とヒロシ(石橋蓮司)が提案するが、あっさり全員から拒否される。

岩崎組なんてぶっつぶしてやりてえことやりてえんだよ!などとわめいていると、そこに水原と次郎がやって来て、岩崎組叩き潰したいんだって?とにやつきながら聞いて来る。

何の用だよ?立ち聞きなんてしやがって…と仲間たちは突然の闖入者に警戒するが、仕事やらねえか?1人頭と言いながら、水原が片手を広げて見えると、5000か…とヒロシはがっかりしたような顔をする。

荒っぽい綱渡りしてもらうんで1人頭5万円だよと水原が言うと、何やらかすんだよ!詳しい話聞かねえとな…と仲間たちはさすがに顔色を変えて聞いて来る。

しかし水原は、乗らない奴に聞かせられねえなと言うと、聞こうじゃないかその話…と仲間たちは乗って来たので、1人だけ無関心そうな三郎に、おめえはどうなんだよと水原が聞くと、俺も乗るよ、ただ…と三郎は答える。

おめえの言いたいことは分ってるよ、俺は昔、おめえを捨てた。

俺が信用できねえって言うんだろ?おめえが兄弟の中で一番ワリ食ったって考えてるんだろうが、やり返せば良いんだ!自分の敵は自分ってこった、人様に頼ろうってのが間違っているんだ。

今旨いえさがぶら下がっているんだ。まあ、ひと様々だから、無理にとは言わねえがよ…と次郎は言う。

仲間たちの勧めもあり、良いよ、話を聞こうぜと三郎は承知する。

みんな集まってくれと水原は三郎の仲間たちを呼び集める。

その後、杏子の部屋に戻った次郎は、行くの、もう?と杏子が言うので、ああ、色々準備があるんでな…と言いながら、それ預けとくぜとパスポートを手渡す。

あら?私たちのパスポート!香港行きね!と杏子が喜んだので、晩飯は向こうだよ、しくじったらパスポートがいらねえ所へ行くだろうな、車頼むぜと頼む。

きっと巧く行くわよね、私たち…と杏子がすがりつくと、見ていてくれ、俺は美人の見ているレースには強いんだと言い残し、次郎は出かけてゆく。

美豆良ら商事の廃ビルに来た次郎と水原は、用意した銃に弾を込め、サイレンサーを装着する。

さらに、2つのサングラスの内側レンズ部分に黒いビニールテープを貼り、目隠しを作る。

後1時間だと言いながら、ラーメンを食う次郎。 その次郎に、忘れないように今のうちにもらっとこうか、俺のパスポートと言いながら、水原は手を差し出す。

次郎がパスポートを渡すと、飛行機の切符は?と傷腹が怪しんだので、俺の名前で預けて来た、空港に…、そうちゃやばい理由ないだろ?と次郎が言うと、いきなり銃を突きつけて、動かないでくれよと言いながら、次郎の服を調べた水原だったが、本当らしいなとつぶやく。

スタートラインはきちんとしてたいんだと次郎が言うと、後は何をしても良いんだな?早い奴が勝つのが競争さと水原は笑う。

人でごった返す駅の乗り換え通路 ボストンバッグを持った男(八名信夫)がやって来たのを次郎が上の通路部分から見ていて、下で待機していた三郎に合図する。

木村(室田日出男)と野田(菅沼正)もその通路にやって来たのを、近くにいた水原が確認する。

その時、側で待機していた弘たちがいきなり通路に飛び出して来て派手な喧嘩を始める。 ボストンバッグを持った男と木村、野田は、柱の所で合流するが、すぐ側で喧嘩が始まったので困惑する。

ボストンバッグを持った男は、木村たちが持っていたボストンバッグと自分のボストンバッグを床でさりげなく交換し立ち去る。

その時、木村と野田の背後に近づいた次郎と水原は銃で動きを制し、用意しておいた目隠し用のサングラスを2人にかけさせる。

喧嘩を止めに警官が駆けつけるが、目が見えない状態の木村たちに近づいて来た三郎とマコは、彼らが持っていたボストンバッグを奪い取り逃げ去り、次郎と水原も喧嘩を見ていた野次馬の中に逃げ込む。

連絡口から外に出た水原はタクシーに乗り込み、次郎の方は、杏子が運転して来て待っていた車に乗り込む。 対抗馬は?と杏子が聞いて来たので、水原だ!と次郎は答える。

先にいつもの倉庫に戻って来ていた三郎は、バッグの中身を見て驚くと、マコに、ここで待っててくれと言い残し、バッグを持って出て行く。

倉庫に杏子の車でやって来た次郎は、後ゴールまでひとっ飛びだ!とうれしそうに言い、運転席の杏子を残したまま車を降りると、銃を取り出し倉庫の中に入る。

そこにはマコしかいなかったので、おめえ!サブはどこだ?と聞くと、1度帰ってきてすぐに出て行ったわとマコが言うので、どこへ?と聞くと、知らないと言う。

あれどこにやった?とか番のことを聞くと、サブが持って行ったわよとマコは言い、本当に事情を知らないようだった。

そこにやって来たのが水原で、倉庫内で懸命にボストンバッグを探していた次郎を見ると、何の真似だよ?裏切る気か?ブツを隠そうとしやがったな!と睨みつけて来る。

サブが持って行ったんだと次郎が答えると、舎弟と何か企んだな!と水原は切れる。

その時、外からクラクションが聞こえたので、見て来る、おめえは女見張ってろ、俺はタクシーを返すから…と言いながら外に出て行く。

やがて、オート三輪でヒロシたちが帰って来て倉庫の中に入って来たので、入口の戸を閉めた次郎は、てめえたち!何企んだ!と怒鳴りつける。 するとマコが、サブがブツ持って逃げたんだよと事情を打ち明けたので、言え!ばらすぞ!と銃を突きつけながら次郎が凄む。

知れねえよ!と仲間たちは怯えるが、殺されたくなかったらちゃんと答えろ!サブはどこへいるって聞いてるんだ!と次郎は迫るが、サブは必ずお前たちをやっつける、お前たちはペテン師だって!とマコが答える。

その時、アキラ(泗水誠一)がナイフで斬り掛かって来たので、水原が殴りつけると、アキラは倒れてあっさり死んでしまう。

倉庫の周囲には町の住民たちが集まり、何事かと取り巻いていたが、そんな中を縫って車から降りて来た杏子が倉庫の中に入る。

どうしたの、その人?死んだの?と倒れて動かないアキラを見た杏子が聞いて来たので、そうだよ、人殺し!とマコが水原にわめく。

おい次郎、おめえ、杏子仲間に入れたんだろう?と水原が言うので、アパートへ帰ってろと次郎は恭子に言う。

しかし杏子は、私、ここにいるわ、もう始まっているんだもの…、どうする?ここの人たちたかっているわよと外の様子を教えたので、外に出た次郎は、俺は岩崎組の黒木って言うんだ。今、組に不義理している奴を調べているんだ。関わりたくなかったら帰れよ!と野次馬たちに呼びかける。

倉庫に戻って来た次郎は、こうなったら持久戦だ…とつぶやき、タケシ!それ連れて行けとアキラの死体を運ぶよう命じるが、その時、突然入って来た三郎が、動くな!動いたらぶっ殺すぞ!と銃を向けて来る。

水原は抵抗しようと仕掛けるが、止めろ、水原、こいつは本気だぞと次郎が忠告したので、諦めて2人とも銃を捨てる。

やられたのか、アキラ!と三郎が驚くと、こいつが殺したんだ!とマコが水原を指差したので、そいつはてめえが殺したんだ、おめえがおとなしくしてたら死ななくてすんだんだと水原は答える。

何でハジキ持ってるんだ?と次郎が聞くと、ボストンバッグの中には2000万の札束と2000万分のヤクが入っていたんだと三郎が言い出したので、それで俺たちには30万か?と驚く仲間たち。

しかも岩崎組は俺たちに罪にかぶせてよ!と三郎が言うと、卑怯者!と言いながらマコが水原の頬を叩く。

その瞬間、マコの手を握り引き寄せて捕まえた水原は、捨てねえとこいつ殺すぞ!と脅したので、マコは思わず床に倒れているアキラの死体を見る。

てめえらチンピラに人を撃てるのかよ!と水原が挑発したので、三郎は、畜生!と銃を水原に向けるが、その時次郎が三郎に飛びかかり銃を奪い取る。 てめえの弟だろ?と水原が言うと、こいつのケリは俺が付けると次郎は答える。

プールサイドで、バッグを奪われて戻って来た木村たちから報告を受けた岩崎組の幹部たち(志摩栄、片山滉、内藤正)は、サングラスに貼ってあったビニールテープを調べながら、手がかりにはならんな…と相談していた。

しらみつぶしに当たっているんですが…と恐縮する幹部たちに、奴らも急いでいるだろうから、くれぐれもサツに気づかれないようにな…と指示を出した岩崎は、黒木!次郎に会ったか?と聞く。

市郎は、金を渡して町から出しましたが?と答えると、確かだろうな?と岩崎は念を押す。

気になった市郎は、自分で車を運転し、高架下の水原商事の廃ビルにやって来る。

中に入って室内を見回した市郎は、そこに残されていた銃弾の空箱を見つける。

さらに、何かをテーブルから落としたので、何かと思って拾い上げると、それは黒のビニールテープの束だった。

倉庫の中では、次郎が三郎を殴りつけ、ボストンバッグの在処を吐かそうとしていた。

俺はこの仕事に命を賭けてるんだ!てめえらの小遣い稼ぎとは違うんだぞ!と次郎は怒鳴りつけるが、殴られた三郎は、体裁の良いこと言うな!尻尾撒いて、この町逃げるつもりじゃねえか!俺、子供の頃から殴られ慣れてらあ!あんた、5年前も1問なしで逃げたじゃないか!と三郎は三郎を睨みながら言う。

それを側で見ていた杏子は、欲を欠かないで、とっとと逃げちゃおうよ。

いくら殴っても無理みたいね。サブはいつも何かを憎んでいる。

殴られているのはサブの中のあんたよ。このまま言ったら共倒れになるわと杏子が口を挟む。

拷問が行われていたとなりの部屋に閉じ込められていたヒロシは、サブの奴、殺されちまったんじゃねえのか?と案じていたが、でも、サブは俺たちに相談もせずにやっちまったからな…と他の仲間が答える。

その時中扉を開き、水原が気を失った三郎の身体を投げ込んで来る。

仲間たちは三郎を介抱し、生きてる!サブ!俺たちが分かるか!と呼びかける。

大丈夫だよ…、奴ら俺を殺せねえよ、俺殺したら、ブツと金、パアじゃねえか…と三郎が教えると、そんなら俺たちが殺されるぜ!俺たち、関係ねえしな…、教えてくれよ!と仲間たちは三郎に頼むが、皆に教えない方が良い、拷問されるだけだと三郎が言うので、じゃあ俺たち、どうすりゃ良いんだよ!と仲間たちはパニックになる。

安心しろ、サブは殺されない限り、俺たちは殺されないと仲間の1人が言い、これ以上仲間殺されたら俺死んでみせるよと三郎も約束したので、サブに俺たちの命預けねえか?と仲間たちは顔を見合わせる。

マコは?と聞くと、マコは自分のシャツで、血まみれの三郎の血を拭いているだけだった。

夜、倉庫の前に市郎が車でやって来る。

車から降り立った市郎は、町の匂いに堪り兼ね、ハンカチで鼻を押さえる。

そこに、何かの禁断症状の女(安城百合子)が逃げて来て、追って来た母親らしき女(山本緑)と目の前で喧嘩を始めたので、近所の住人たちがゾロゾロと見学に集まって来る。

市郎は、おっさん、サブ見なかったか?と側にいた男に聞いてみるが、野次馬たちはゾロゾロと帰って行ったので、その場につばを吐く市郎。

倉庫の中に入り、ライターで照らしてみるが誰もいなかったのでそのまま市郎は車で立ち去る。

その直後、岩崎組の車が別にやって来る。

倉庫の中では、もう一回、サブを叩くんだ!と次郎にけしかけていたが、次郎が動こうとしないので、どうした?あんたの中のサブが殴るのが嫌になったのか?とからかうと、良し、連れて来ようと次郎は動き出す。

その時杏子が、ちょっと!今度は仲間に聞いた方が良いのでは?拷問されれば仲間は悲鳴を上げるわ。

サブはそれを聞いて黙って見ているかしら?と言い出したので、それで行こう!と水原は乗り気になり、奴は粋がっているだけの世間知らずだと次郎も賛成する。

隣の部屋に行った水原は、マコにいきなり襲いかかり、悲鳴を上げろ!と言いながらシャツを引き裂く。

小屋の外に追い出されそれを聞いた仲間たちは、ちくしょう!マコを放っとくのかよ!どんなことが会っても、マコは俺たちの仲間だ!とわめき合う。

しかし、乱暴されているマコは決して悲鳴を上げようとせず、悲鳴を上げないわ、あの子!と杏子は驚く。

次郎は、てめえたち助けねえのか!と仲間たちに呼びかけ、この町から飛び出してやるんだ!と自らに言い聞かせる。

マコの拷問が終わると、今度はおめえの番だ!と次郎が仲間のイサオ(越前谷政二)を倉庫の中へ引っ張って行く。

次郎は、工具の万力で、連れ込んだイサオの指を一本ずつ潰して行く。

その悲鳴を隣の部屋で聞かされていた三郎は、畜生!卑怯だぞ!汚い真似しやがって!俺を拷問しろ!俺に白状させてくれ!と叫びながら入り口の扉を叩く。

それでも仲間の悲鳴が聞こえてくるだけなので、堪らねえ!おめえたちも聞いてくれ!拷問された奴がしゃべれば良いんだ!と三郎が提案すると、汚ねえよ!とタケシ(岡崎二朗)が言い、マコも言わねえよ!と反発する。

水原がイサオを隣室へ放り込んで来たので、俺、悲鳴あげちゃったよ…と恥じ入るようにイサオが言うので、俺たちゃ皆悲鳴を上げる。

サブは苦しむ。

俺たちは仲間だ!とタケシたちがかばうので、許してくれ、イサオ!俺たちゃ、こういうやり方でしか、奴らと戦えねえんだ!と三郎は詫びる。

倉庫の中では水原たちが、畜生!薄汚ねえチンピラめ、仲間を見殺しにしやがって!と、拷問作戦が効果を上げないので苛立っていた。

本当に見捨てたと思う?と杏子は聞くが、俺は疲れた!少し休もうじゃねえか、お前だって汗だらけだぜ!と水原に言う。



シンジは怯え、仲間たちは苦悩していた。 その頃、市郎は、黒テープの束を見ながら何事かを考えていた。

倉庫では、次の獲物としてヒロシが選ばれ、万力に指を差し込まれただけで悲鳴を上げていた。

物と金の隠し場所言うから!とヒロシがすぐに言い出したので、お前は何も知らねえんだろ?と聞くと、夕べサブから聞いたんだ!とヒロシは言う。

ジャズ喫茶ってどこにあるんだ!と次郎は責める。

隣の部屋にいた仲間たちは、ヒロシがすぐに釈放されたので、ヒロシ!大丈夫かと案じながらも、おめえずいぶん早かったじゃねえか…、10本とも潰されてねえじゃねえか!とヒロシの指を見ながらタカシが責め始める。

倉庫の中では、おめえは信用できねえ、タクシー待たせてたって言ってたな?じゃあ、杏子は誰を待っていたんだ?と、物を取りに行こうとする次郎に聞いていた。

じゃあ、お前行けよ!その代わりハジキ置いてけよ、お前が信用してるの、ハジキくらいだから…と次郎は言う。

水原は、お前もハジキ置いてけと言うので、次郎は銃を杏子に預ける。

1時間だぞと言う水原の言葉を聞き、次郎は外に出て行く。

お前たちは同じ穴の狢だ、ハジキの弾抜いとけと水原が命じたので、その場で杏子は次郎の銃の断層を引き抜くが、もう1丁あったはずだ?サブのハジキが…と水原が言うと、持ってたわよ、あの人が…と杏子が答えたので、畜生!と水原は悔しがる。

次郎は杏子の車を運転し出かける。 小屋の前にいたヒロシは仲間たちに、今なら上に男1人女1人だ。逃げるチャンスだ!一旦ここから逃げ出して相談しなきゃ、俺たち何やったか分からなくなるぜと言い出す。

ジャズ喫茶「ORNETTE」にやって来た次郎だったが、岩崎組の木村たちが尾行して来たとは気づいていなかった。 木村が店に入ると、次郎がボーイ(大木史朗)にバッグのことを聞いている所だった。

次郎に木村が詰め寄ると、いきなり暴れ出した次郎は逃げ出し、車で逃走する。

木村が店の支配人(ピエール瀬川)に奴が何しに来たのか聞くと、ボストンバッグを探していたと言うので、馴染みの客か?と聞くと、サブ!あの人、サブの兄さんよ!とウエイトレス(竹村清女、富士あけみ)が思い出す。

その頃、岩崎組の別働隊は、市郎の事務所で黒テープの束を見つけていた。

倉庫で次郎の帰りを待ちくたびれていた水原に、こんな町で育ったら、他の町憎むの当たり前ね…と杏子が言い出したので、次郎のことか?と聞くと、下の人たちのことよと杏子は答える。

その時、隣の部屋でヒロシたちが突然騒ぎ出したので、何だ?うるせえぞ!静かにしろ!畜生!ふざけやがって!叩き殺すぞ!と言いながら、水原が中扉を開けると、扉のすぐ横に身を潜めていた仲間らが水原を殴りつけて来る。

そして一斉に逃げ出す仲間たち。 そこに次郎が帰って来る。

仲間たちの中で左指を潰されていたイサムが逃げ後れ水原に捕まる。 次郎は、そのイサオの左手を握りしめ、悲鳴をあげさせる。

すると、逃げ出した仲間たちが戻って来る。

しかし、ヒロシの姿が見えないことに気づいた水原が、待て!もう1人はどうした?と聞き、嘗めた真似をしやがって!と仲間たちを睨みつける。

その時杏子が、何?あの人たち!と叫ぶ。 水原組の連中が近づいて来たのだ。

三郎たちも慌てて倉庫の中に逃げ込む。

倉庫の中から窓ガラスを割って、外の様子をうかがう水原。

どうしたんだよ、このざまは!物も金もそのままか?と水原が聞くと、罠に引っかかったんだよ、とことんまで足引っ張る気だな…と次郎が答える。

倉庫に逃げ込んだタケシたちも事態の変化に動揺していた。

大体俺たち何やったんだよ?町ぶっ壊すとか言っといて!5万で手を打っときゃ良かったんだ!と不満を言うので、もし金とぶつがあそこにあったら、みんなこうなったんだぞ!とタケシを見る。

タケシ!今更あんた卑怯だよ!サブ!何であんた戻って来たの?イサオ捕まった時…とマコが聞く。

分からねえ…、何となく、逃げちゃいけないって思ったんだ…、それじゃあ、昔、兄貴たちがやったことと同じことになるって…、ヒロシ見ろ!今頃、岩崎組にやられてるよ! 1人ぽっちで、仲間もなしでな…と三郎は言う。

その頃、市郎も「クラブ フェニックス」のロッカールームで岩崎組に捕まっていた。

店の前に連れ出された市郎は、岩崎組に捕まっていたヒロシが車の後部トランクに押し込められる現場を目撃する。

プールサイドにいた岩崎の元へ連れて来られた市郎は、お前が今度の事件に関係ないことは分かった。

俺は言ったはずだ、弟たちを見張ってろと…、ブツと金を取り戻す話だ。しかも絶対にサツに知られてはいかんと言われ、私にやらせてくださいと申し出る。

倉庫の中では、サブは俺たちが押さえているんだ。奴らだってうかつに手は出せない、俺たちにも手を出せないって訳だと次郎が水原に言う。

岩崎は、良しやらせてやる!巧くやることだと市郎に許可していた。 倉庫の中では、又、次郎はタケシの指を万力ではさみ拷問にかけていた。

サブ!仲間がこんなになっても良いのか?と水原が側にいた三郎に迫り、タケシも、サブ!言ってくれ!助けてくれ~!と悲鳴を上げる。 その時、タケシ!見てろ!と言った三郎は、そこにあったハンマーで自分の左手を潰し始める。

驚いて止めようとする次郎を杏子が止める。

タケシ!痛くねえよ!と三郎は、つぶれた自分の左手を差し出しながら言う。

そこに市郎がやって来たので、とうとう来たなと次郎が苦笑すると、どうしたんだ三郎!次郎にやられたのか?と市郎は、三郎の怪我を見て驚く。

そうさ、俺がやったんだよ…、ブツと金の場所を吐かせるためによと次郎が自嘲気味に答える。

お互い、肥だめから這い上がり、競争なんだよ!あんたみてえに偉くなって、そのきれいな服が汚れねえうちに帰りな!と次郎が言うと、サブ、行こう!と三郎に優しく声をかけ、市郎は外に連れ出そうとする。

金と物、どうするんだよ!と次郎が呼びかけると、おめえ、みんなにそそのかされているんだと市郎は三郎をかばうので、水原が銃を突きつける。

市郎が、俺に命乞いさせてえのか?おめえ、蜂の巣になるぜと脅すと、俺も噛んでるんだ、俺抜きのやみ取り引きはなかろうって話だと水原は言う。

俺はこいつと取引するぜと市郎が三郎の方を抱くと、やってみろよ!と次郎が気色ばむ。

待てよ、次郎!とそれを制した水原は、10分くれよ、俺たちだって相談してえよと言い出す。

良し、10分やろう、お互い命に関わることだからな、変な小細工するなよ…と言い残し、倉庫の外に出た市郎は、そこにいた岩崎組の連中に、10分待ってくれ!と頼むと、周囲を取り巻いていた野次馬たちを追い払う。

三郎が、万力に挟まれていたタケシの手を外してやると、動くな!俺はおめえたち兄弟のごたごたに巻き込まれるのはまっぴらだ!仲間全部殺してやらあ!と興奮し、銃を次郎に向ける。

動くな!と水原は次郎を牽制するが、次郎の背後にいた杏子がそっと次郎に拳銃を渡す。

次の瞬間、水原と次郎は同時に発砲し、水原が倒れる。

肩を射抜かれていた次郎は、サブ、ハジキ持って来い!と、死んだ水原の銃を取るよう命じる。

倉庫の外に出て来た次郎に、そこで止まれ!と制した市郎は、おめえ、サブをやったな?と睨んで来たので、死んだのは水原だよと次郎は教える。

銃声を聞いた岩崎組が、サツが動き出す!と言いながら一斉に倉庫へなだれ込もうとしたので、市郎は慌てて、もう一度やらせてくれ!と哀願する。

倉庫の中では、次郎が三郎に、サブよ、おめえさっき痛くねえって言ったな?本当だな?痛かねえぞ俺も!と言葉をかける。

その時、外に立っていた市郎が、サブよ!おとなしく出てくるんだ!そこで死んだって無駄死にじゃねえか!あっちのまともな町にすみたかったんだろう?立派な仕事探してやる!早く次郎と手を切ってこっち来い!と呼びかけて来る。

行くなら行っても良いんだぜと倉庫の窓から外の様子をうかがっていた次郎が言うと、兄貴は?と三郎が聞くので、やり直し効かねえよと次郎は答える。

俺たちだけで自由買えると思ったの間違いだったな…、お前も言って良いぜと杏子に次郎が伝えると、まだゴールに入ってないわ、私たち…と杏子は答える。

サブ、ちゃんとやり直してみろ!と呼びかける市郎。 それを倉庫の中で効いていたマコは、でも、できなかった奴もいるよ、アキラみたいに…と、アキラの死体を見ながらつぶやく。

サブ!今お前たちが死んだら、ギャングの真似して死んだって笑われるだけだ!次郎はお前たちを利用する気だ!と市郎が呼びかけていると、タケシが突然倉庫から飛び出して行く。

そのタケシを背後から撃ったのは三郎だった。

助けてくれるって言ってたじゃねえか…と言いながら、タケシは倒れる。

それで良いんだ、サブ!世の中足の引っ張り合いなんだ、一緒にやってやろうぜ!と次郎は三郎に声をかける。

ブツと金の話してくれよと、倉庫の外から市郎が呼びかけると、その代わり頼みがある、聞いてくれるか?と三郎は言う。

こっちへ来て、俺たちと一緒に戦ってくれ!冗談じゃねえんだ!身内の足、引っ張るのかよ?身内にしか教えられねえんだよと三郎は良い、帰って来いよ、兄貴!と次郎も呼びかける。

俺たちはサブのこと置き去りにしたんだ!一生に一遍くらい喜ぶ顔見ようじゃないか!と次郎は続ける。

兄貴!思い切りやってみろよ!二三発くらったって思ったより痛かねえよ!と呼びかける次郎だったが、市郎が動こうとしないので、この豚野郎!と罵りながら次郎と三郎は発砲する。

応戦しながら倉庫に乗り込んでくる岩崎組。 そんな中、市郎は倉庫の外で1人、呆然と立ち尽くしていた。 倉庫の中では、杏子も次郎も死んでおり、アキラの側に立てられていたろうそくの火も消えていた。

岩崎組はすぐさま車に乗り込み立ち去ってゆく。

残った市郎は突然笑い出すと、またつばを吐き出す。

とぼとぼと町を去ろうとしたとき、その背後に集まっていた近所の連中の一人が何かを市郎の背中に投げつけて来る。

振り返って地面を見ると、それはネズミの屍骸だった。

市郎を見つめる町の人々。

市郎は無表情のまま何も言わず、そのまま町外れの橋を渡って行く。
 


 

 

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