白夜館

 

 

 

幻想館

 

君の名は。

新海誠監督の最新アニメ

新海さんのアニメは、以前1〜2度見ただけで、残念ながら面白かった記憶がない。

オタク作家にありがちな「テクニックは持ってるけど、ドラマは描けない人」と言うイメージがあった。

それが今回、新作を見て驚いた。 実に良く出来ている。

ドラマも面白い!

人物デッサンは若干危なっかしくも見えたが、背景は色々なエフェクトを使用し情報量の多いファンタジックな絵になっている。

物語構成も複雑で、一見良くある男女の心と身体が入れ替わるパターンと思わせて、途中から、がらっと違った時空サスペンスへと変化する。

正直、頭がこんがらがるような複雑さなのだが、何となく付いて行けるし、基本は男女の純愛物語なので、その部分さえ理解できれば多少理解できない部分があっても構わない世界だと思う。

都会も地方も夢のように美しく描かれており、互いに住むものの自分にない世界への憧れが反映されているかのようだ。

長澤まさみさんが声を演じている先輩キャラなど、あまり活躍していないようにも思えるし、いなくてもドラマは成立しそうな感じもしないでもないが、話を膨らます要素として作者が必要と感じたと言うことなのだろう。

「シン・ゴジラ」と同じく情報量が多く、一度見ただけでは全てを理解できないような描き方になっているので、何度かリピートしたくなる作品である。

「シン・ゴジラ」もそうだが、東宝の若いプロデューサー達の製作意欲が垣間見える佳作である。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2016年、「君の名は。」製作委員会、新海誠原作+脚本+監督作品。

彗星がいくつも砕けて落ちる 雲海を抜け、地上に落下する欠片…

朝目が覚めると、何故か泣いている…

でも、見ているはずの夢は思い出せない…

何かをなくしてしまったと言う感じがしている…

ずっと何かを探し続けている気がする…

あのとき、星が降った日から…

それはまるで夢の景色のように美しい眺めだった…

タイトル

スマホが鳴っている…

その横で寝ている宮水三葉(上白石萌音)

(夢)瀧君!覚えてない?と電車の中で呼びかけた三葉だったが、駅で降りかけた時、名前は?と車内に残っていた立花瀧(神木隆之介)から聞かれたので、三葉!と言いながら、自分の髪を結んでいたリボンを降り際に投げる。

目覚めた三葉は、自分の胸の膨らみをもみ出すが、ふすまを開けた妹の四葉(谷花音)が、お姉ちゃん、何しとるの?と不思議そうに聞く。

本物らしいな?と三葉が言うので、ご飯!と告げてさっさと四葉は座敷に戻って行く。

起き上がって鏡の前で服を脱いでみた三葉は、自分の身体を見て驚愕する。

翌日の朝、起きて来た三葉を見て、昨日はヤバかったもんな…と妹はぼやく。 町役場では20日糸守町の町長選挙がある。

彗星が一ヶ月後に見えるようになるなどとテレビでニュースが流れている中、祖母の一葉(市原悦子)と朝食を済ませた四葉と三葉は、一緒に学校へ出かける。

翌日、1人で高校に向かっていた三葉は、テッシーこと勅使河原克彦(成田凌)が、サヤチンこと名取早耶香(悠木碧)をチャリに乗せて近づいて来たので、あんたたち、仲良いの〜とからかう。

テッシーは、早う降りんか!と恥ずかしがって、早耶香を降ろすが、三葉、今日は髪、解かしとるね?おばあちゃんにお払いしてもらった?あれ絶対狐憑きやなどと早耶香が言って来たので、何の話?と三葉はきょとんとなる。 やがて3人は、三葉の父宮水トシキ(てらそままさき)が選挙演説をしている場所の前に来る。

その場で見物していた同級生は、三葉とテッシーに気づくと、子供も町長と土建屋は仲が良いの〜と憎まれ口を聞いて来る。

高校での授業が始まったので、自分の机でノートを広げた三葉は、そこに「お前は誰だ」と見知らぬ筆跡で書かれた文字を見つけ驚く。

古典の授業ではユキちゃん先生(花澤香菜)が、「黄昏時」の語源を解説し「誰そ彼?」と言う意味だったと教えていたが、その時、生徒の1人が「かたわれ時」と同じですね?と質問する。

「彼は誰時(かはたれどき)」と言う言い方はあるから、この辺独特の言い方かも…とユキちゃん先生は答える。

その直後、宮水さん!と呼ばれた三葉は慌てて返事をするが、今日は自分の名を覚えとるのねとユキちゃん先生は笑う。

昼休み、校庭で弁当を食べながら、昨日はリボンしとらんかったし、記憶喪失みたいやったよとサヤチンが言い、前世の記憶や!昨日はマジ変やったよとオカルト雑誌見せながらテッシーがからかって来る。

ストレスとかじゃない?例の儀式もうすぐじゃない?とサヤチンが聞いて来る。

それを聞いた三葉は、もうこの町嫌い!狭くて濃すぎる!と叫ぶ。

電車は2時間に1本しかないし、コンビニはないのに、スナックは2軒もある! 雇用はないし、日照時間は短い…とぼやきながら、下校していた三葉だったが、途中でテッシーが、カフェに行かないか?と誘う。

この町にそんなのあったかな? テッシーの言うカフェとは、自販機で買ったジュースを側のベンチに腰掛けて飲むことだったと知ったサヤチンは、三葉帰ったよとバカにしたように言いながらも付き合う。

テッシー、高校卒業したらどうするの?と突然サヤチンが聞くので、別に…、普通にこの町で暮らしていると思うよとテッシーは戸惑ったように答える。

家に帰った三葉は、祖母の一葉から、妹の四葉と一緒に、伝統の組紐作りの練習をさせられていた。

まだ幼い四葉に対し、意図の声を聞いてみない!と一葉は叱りつける。

組紐の歴史は、200年前、眉五郎と言う人が火事を出し村の大半が焼けてしもうて、…といつもの話を一葉が始めたので、これが眉五郎の大火と三葉が続けると、眉五郎さん可哀想…と四葉は同情する。

何もかも焼けてしもうて、村の祭りの意味も分からんようになってしもうた…、その養子のくせに、宮水神社に楯突いた親不孝者め!神職の身で政治家になるなどと…と一葉はトシキのことをなじる。

その頃、テッシーは、自宅で土建屋の父親が、自宅に役場の人間を集めて酒盛りしていたので、これは汚職の匂いがするな…などと台所でぼやいていたが、そこにやって来た父親は、母親に酒の追加を頼むと、克彦!今度の週末、現場来て手伝え、発破使うでな…と命じる。

たまらんな…、お互い…と1人になったテッシーはぼやく。

後日、宮水神社では、巫女姿になった三葉と四葉が舞を披露していた。

それを遠くから、テッシーとサヤチンも見ていた。

三葉と四葉は、やがて、三方(さんぼう)に白紙で包んだものを置くと、その紙を開いて、中にあったご飯をそれぞれ口にする。

そして、噛み砕いた飯粒を、用意されていた壷の中に吐き出す。 世界最古の酒「口噛み酒」であった。

そんな神事を興味本位で見に来た同級生たちは、良く人前でやるよな、信じられんわ…と三葉たちの行為を揶揄する。

神事の後、三葉と一緒に帰っていた四葉は、お姉ちゃん、口噛み酒、一杯作ったら、東京行きの運賃にならんかいね?などと言うので、一瞬、三葉もマニア向けの「巫女の口噛酒」のイメージを一瞬思い浮かべるが、すぐに打ち消し、酒税法違反になる!と叱る。

そして又、こんな人生嫌や…、来世は東京のイケメン男子にしてください!と神に祈ったので、それを聞いていた四葉は、アホやな〜と呆れる。 一方、スマホが鳴ったので、それを止めようとしてベッドから落ちたのは立花瀧だった。

目覚めて部屋の中を見回した瀧は、どこ?と驚き、自分の身体に違和感を覚える。

何やある…とつぶやきながら、股間を触ってみると驚愕する。

左頬に包帯を当てた瀧が隣の部屋に行くと、そこに兄がおり、瀧、今日はお前がメシ当番だったろう?寝坊しやがって、後片付けしておけよ、俺行くからな…と、自分で作った瀧の分の朝食を残し、勤めに出かけて行く。 変な夢…と戸惑いながら、スマホのメールを確認してみると、ツカサなる相手からのメールが届いていたので、ツカサ?誰?と瀧は不思議がる。

そのとき、急にトイレに行きたくなったので駆け込んだ瀧だったが、出て来た瀧は、リアル…とつぶやく。

マンションのドアを出て東京の町並みを見た瀧は、東京や!と感激する。

高校に着いたのは昼時だったので、恐る恐る自分の教室の中を覗き込んだ瀧に、いきなり首に手を回して来て、瀧!まさか昼からとはな…、メール無視しやがって!と文句を言って来た同級生らしき男がいたので、ひょっとして司くん?と瀧が聞くと、くん?と藤井司(島崎信長)は意外そうに聞き返す。

昼休みなので、高木真太(石川界人)も誘い3人で屋上で弁当を食うことにした司は、おくれた理由が、道に迷たと瀧が言うので、通学でどうやって道に迷えるんだ?と呆れる。

私…、僕…?と言うたびに司と真太が妙な顔をするので、俺?と言い直した瀧は、楽しかったんだ、毎日祭りみたいで…と言い訳をする。

しかも、弁当を忘れたと言うので、司と真太は、互いに材料を提供し合い、卵コロッケサンドイッチを作って瀧にくれてやる。

放課後、3人で下校時、カフェ行かない?と言うことになったので、瀧は、え?カフェ!と驚く。

カフェでメニューを見た瀧は、1品1900円とか書いてあるので、俺一ヶ月暮らせるとつい漏らしてしまう。 それを不思議そうに聞いていた司と真太の前で、夢やし、良いかも…と瀧はつぶやく。

しかし、そのとき又スマホが鳴り出し、それを読んだ瀧は、俺、バイト、遅刻だって!と言い出す。

今日、当番だっけ?と司が言うと、俺のバイト先ってどこやった?と瀧は恐る恐る聞く。

バイトはレストランのボーイだった。

あまりの忙しさに、この夢、いつ醒めるんやさ!と瀧はぼやく。

てんてこ舞いの瀧は、1人の客から呼ばれ、ピザに楊枝が刺さっていた。

知らずに食ってたら怪我してるよね?などとクレームを言われたので、イタリアンの厨房で楊枝が入るなんて…とつい言い訳をしかけるが、客が怒り出したので、先輩バイトの奥寺ミキ(長澤まさみ)が出て来てマニュアル通り詫びて、代金は頂きませんと頭を下げる。

その時、客がカッターナイフを取り出したのに気づかなかった。

客が帰った後、助けてもらった礼を言おうと瀧が声を掛けると、マニュアル通りただにしてやったけど、さっきのあいつら言いがかりよとミキは言いながら、テーブルのセッティングをしていた。

そのとき、ミキの履いていたスカートの背後が切られていることに気づく。

先輩ちょっと!と控え室に呼び込んだ瀧は、スカート脱いでください!と言い出したので、ミキはさすがに驚くが、向こう向きますからと瀧はフォローする。

そして、ミキが脱いだスカートの切り口を器用に刺繍仕立てで縫ってやる。

瀧君、凄い!、前より可愛い!瀧君、女子力高いねとミキは感心する。

良く出来た夢やな〜、良いなあ〜東京生活…、片思いかな…と、写真を見ながらその後つぶやく瀧。 みつはと手のひらにサインペンで書いてみる。

私の女子力凄いかな?などとメールにも色々打ち込んでみる瀧。

翌日、そのスマホを読んだ瀧は、何だこれ?と驚き、一緒に登校する司に俺のケイタイに何かしたか?と聞くと、今日は普通だな…、昨日は変だったと司は答える。

バイト先でも、先輩男子アルバイター3人から、昨日お前ら、一緒に帰っただろう?と睨まれる始末。

そこに、当の奥寺ミキがやって来て、瀧君!と親しげに呼んでくれる。

瀧は、自分の手のひらに書かれていた「みつは」と言う文字を見て、お前は何だ?と不思議がる。

美術の授業中、自分の悪口を言われていると気づいた三葉は、あれって私のことよね?と言うなり、書いていたイーゼルを蹴って、ミニスカートなのに大胆に足を組む。

それからも、三葉と瀧は、次々に不思議なことが身の回りで起こるので、これってもしかして、俺たちは夢の中で入れ替わってる?と気づく。

だんだん分かって来た… 同じ事は週に二三度起きる。

眠ると不鮮明になる。

お互い生活を守るため、その日に起きたことはメールに残すなど、いくつかの約束事を決めた。

この謎現象を突き止めるために! しかしその後も三葉になった瀧は、ついいつもの粗暴な行動が出てしまい、スカート注意!などとサヤチンから嗜められる。

一葉に組紐を教わる時には、さすがに、組紐とか無理だろう?と三葉になった瀧は絶望する。

さらに、奥寺先輩とも順調よなどとメールに残っていたので、瀧は呆れる。

その後も、三葉になると必ず、胸を触る癖がついたので、本当に自分のおっぱい好きやねと、四葉からからかわれる始末。 テレビでは「ティアマト彗星」の報道をしていた。

ある日、三葉と四葉は、一葉に連れられ御神体のある場所へ向かうが、その場所は人里離れた場所だったので、おばあちゃん、どうして御神体ってこんなに遠いの?と四葉はぼやく。

三葉は一葉の前にしゃがみ込み、おんぶしてやる。 すると一葉は、結びって知っとるか?と離し出す。

組紐も時間の流れを表しとる… それが結び…、それが時間… 途中で水を飲む3人 水でも糸でも酒でもみんな魂… やがて3人は、大きな窪地の淵に到達する。 その中央部分に、樹木を生やした大きな岩があった。

ここから先はあの世のことや…と一葉は教える。

戻るためには、あんたたちの一等大切なものをなくさんといけんよ。

口噛み酒を岩の中の祠に置いた三葉と四葉に、それはあんたたちの半分やからね…と一葉は言う。

帰り道、もう「かたわれ時」やな…と一葉が言うので、彗星見えるかな?と三葉が口にすると、おや?三葉、今、夢を見とるな?と一葉は指摘する。

次の瞬間、瀧は目覚める。

涙が溢れ出ていたので、何で?と思わずつぶやいた瀧だったが、奥寺先輩とのデート!とメールに残っていたのを見て慌てて起き上がる。

走りに走って四谷駅前に到着した瀧だったが、その直後、待った?とミキが声をかけて来たので、今来た所です!と間を置いて、正直に答える。

一方、目覚めた三葉の方は、良いな…、今頃2人一緒…とぼやきながら鏡の前に行くが、自分が泣いていることに気づくと、何で?とつぶやく。

私が行きたいぞ! 「郷愁 飛騨」と言う写真展にやって来た瀧は、そこに飾られていた地方の風景に釘付けになる。 瀧君ってさ、今いるのは、何だか別の人みたいだね?とミキは言う。

今日は解散しようか?瀧君?違ってたらご免ね…、前は私のこと好きだったでしょう? 今は好きな人いるでしょう? デート終わる頃には、ちょうど彗星見えるね…、何言ってるんでしょう… 思わず我に帰った三葉は、スマホがかかって来たので出ると、相手はテッシーで、今日の祭りのことを知らせる電話だった。

彗星、今夜が一番明るく見えるんだっけ?と三葉は答える。

浴衣姿で先に祭りの現場に来ていたサヤチンは、テッシーが着ている浴衣を見て、あんた、三葉の浴衣着とるやろ!と妬む。

そこにやって来た三葉が、ばっさり髪を切っていたのを見たサヤチンとサッシーは、やっぱ男関係かな?何となく切るか?などとこそこそ噂し合う。

彗星の一部が割れて分離する。 瀧はスマホに残っていた三葉の番号に電話をかけてみるが、電波の届かない地域なのか通じなかった。

いつしか瀧は夢の中で見た景色のスケッチを描くようになっていた。

そして、何枚か描いたスケッチをリュックに入れると駅に向かう。

すると、そこにミキと司がいたので、何でこんな所にいるんですか!と瀧は驚く。

司!お前に頼んだのはバイトのシフト変更とかアリバイ作りだけだったはずだろう?と瀧は怒るが、司はごめん!バイトは高木に頼んだと言うだけ。

メル友に会いに行くんだって?離れておいてやるからなどと司は言い、図々しくも司とミキは、瀧と同じ列車に乗り込んで当たり前のように同行して来る。

司とミキは、お気楽な旅行気分満載で、瀧は少々苛ついて来る。

しかし、飛騨に到着し、自分が描いたスケッチを頼りに周辺で聞き込みを開始したものの、一向に手がかりは掴めず、やっぱ無理か…と瀧は諦めかける。

昼食に立ち寄ったラーメン店で、胸中に東京に帰れるな…などと瀧がつぶやくと、瀧君、それで良いの?とミキが言い出す。 そのとき、高山ラーメンを運んで来た店の女将が、おや兄ちゃん、それ糸守やろ?と瀧がテーブルに出していたスケッチを見て言う。 店の主人も出て来て、糸守やなと賛同する。

この人、糸守出身者!と女将が言う。

それを聞いていた司とミキは、糸守って、あの彗星の?と声を上げる。

瀧たちが、店の主人の軽トラで連れて行ってもらったのは、復興庁の立ち入り禁止テープが貼られた山の中の一角だった。

確かにそこから見えたのは、瀧が夢の中で見ていた湖のある町だったが、無惨にも壊滅していた。

本当にこの場所なの?とミキも唖然として光景を眺める。

間違いない!この高校だった!と瀧は崩壊した高校跡を見て答える。 糸守町は3年前彗星の墜落で壊滅し、500人が死んだ…、瀧だって覚えてるだろう?と司が言う。

あいつの書いたメモがあるんだ…と言いながらスマホを取り出すが、画面の文字はドンドン文字化けしやがて全て消えてしまう。

町の図書館に行き、糸守町の歴史をひもとく瀧達。 その日は、秋祭りの晩の午後8時42分 祭りに集まっていた500人以上が被害者となった。

被害者名簿を探して行くと、勅使河原克彦、名取早耶香、宮水一葉、宮水三葉、宮水四葉ら、馴染みのある名前も載っていた。

名簿を見ている滝に、どの子なの?と聞いてくるミキ。 つい2〜3週間前、彗星が見えるなんて言ってたのに…、俺は何を…と瀧は呆然となる。

町の旅館で泊まることにした3人だったが、風呂上がり、浴衣姿でソファで煙草を吸っていたミキが、部屋から出て来た司に、瀧君は?と聞くと、糸守の記事読んでますと答え、どう思います?あいつの話…と司は逆に聞いて来る。

好きだったんだ、ここ最近の瀧君…、必死で可愛かった… 誰かに出会って、その誰かが瀧君を変えたのよ… 瀧の部屋に来たミキが、おかしなことになったわねと言葉をかけると、今日1日すみませんと詫びた瀧だったが、その左腕に腕輪をしていることに気づいたミキが、組紐だね、きれい!と褒める。

ずっと前にもらって…、誰から? あの場所なら! 糸守湖の風景… いつしか眠っていた瀧は、瀧君!覚えてない?と言う三葉の声を聞いたような気がして翌朝目覚める。

その後、瀧は1人、ラーメン屋の主人の車で再び糸守まで連れて行ってもらう。

目的地に着き車から降りた滝に、手作りの弁当を差し出し、上で食べろ。

あんたの描いた糸守…、あれは良かったと褒め、主人は車で帰って行く。 雨が降って来た中、糸守の中心部へ向かう瀧は、途中、洞窟の中で雨宿りをし、弁当の握り飯を頬張る。

そのとき、寄り集まって形作って、ねじれて…、それが結び…、それが時間…と言う一葉の言葉を思い出していた。

その後、雨の中をさらに進んだ瀧は、大きな外輪山の淵から、中央の岩の上に木が生い茂った御神域を目の当たりにする。

あった!本当にあった!夢じゃなかった! ここから先はあの世…と言っていた一葉の言葉を思い出しながら、瀧は川の中を進み、木が生えた岩の下の帆頃の部分に到達する。

そこには三葉と四葉が運んで来た口噛酒の壷が置いてあった。

俺たちが運んで来た酒だ! こっちが俺!あいつの半分…、結び…、本当に時間が戻るのならもう一度だけ…と言うと、瀧は壷のふたを開け、蓋を盃にして中の酒を酌み、それを飲む。

立ち上がろうとした瀧は酔ったのか、足が滑り仰向けに転んでしまう。

天井には彗星の絵が描いてあった。

まだ幼かった三葉と四葉を前に、2人はお父さんの宝物やとうれしそうに言っていたトシキの若い頃 ごめんね…、みんな…と、入院したベッドの母親が見舞いに来たトシキと三葉、四葉に詫びる。

妻の死後、神社を飛び出したトシキに、養子のくせに!と罵声を浴びせる一葉 その後、今日からあんたたちは、おばあちゃんと一緒やな…と三葉と四葉に話しかける一葉

その後、おばあちゃん、お願いがあるんやけど…と一葉の部屋に来る三葉 髪を切ってもらう三葉

今日は一番彗星が明るく見える日や…

三葉!逃げろ!

目覚めた瀧は、三葉にまたなっていることに気づく。

お姉ちゃん、またおっぱい!とふすまを開けた四葉を見ると、妹だ!と喜ぶ。

そんな三葉の奇妙な様子に嫌気がさした四葉は先に出かける。

7時40分頃、彗星が接近しますと言うテレビニュースが流れている。

今夜、まだ間に合う! おや?あんた、三葉やないね?と一葉は見抜く。

知っとったの?と三葉と入れ替わった瀧が聞くと、ここんところのお前見とったら分かった…、わしも少女の頃、不思議な夢を見たことがある…、どんな夢やったかは忘れてしもうたが、少女の頃のお母さんも、先祖代々同じような経験があったらしい。

それって全部、今日のためのような気がする!と三葉は気づくが、今日、糸森町に彗星が堕ちてみんな死ぬ! と言う一葉は三葉の話を信じなかった。

家を飛び出した三葉は高校に向かうと、そこにいた同級生達の前で、みんな死ぬ!だから私たちで何とかしなきゃ!と呼びかける。

放送部のサヨチンに、放送室から防災無線を流すようテッシーが提案すると、含水爆薬があるんやと言い出す。 避難場所は高校の校庭と決める。

三葉は、町長である父親の説得に行くことにする。

娘の自分が離せばちゃんと分かると信じたからだった。

糸寄湖も、千年前に一度ここに引責が落ちた跡らしいんだ。やろうぜ俺たちで!とサッシーは張り切る。

夜までに避難させないとみんなが死ぬ! 町長室にいた父親に事情を話した三葉だったが、良くもそんな嘘話を…、病院へ行くんだ!と電話をかけようとしたので、逆上した三葉の中の瀧は、バカにしやがって!とトシキのネクタイを掴んで締め上げようとする。

三葉…、いや…、お前は誰だ?と驚いたように問いかけるトシキ。

役場を飛び出した三葉は、近寄って来た子供を避難させようとするが、もちろん相手にされるはずもなく、お姉ちゃん、何しとるの?と声をかけて来たのは四葉だった。

俺じゃダメなのか!夕方までおばあちゃんとこの町を出るんだ!と警告すると、昨日は東京に行ってしまうし、お姉ちゃん、変やよ!と四葉は呆れたように言う。

そこにテッシーがチャリでやって来るが、山の方を見ていた三葉は、そこにいるのか!とつぶやくと、テッシーが乗っていたチャリを借り、計画準備急いでくれ!とテッシーに言い残し、自分はチャリで山奥へと向かう。

御神域の外輪部で目覚めた三葉は、自分が瀧の身体に入れ替わっていることに気づくと、どうして瀧君がここに?と不思議がる。

立ち上がって外輪部から糸守町を見た三葉(身体は瀧)は、彗星落下で壊滅した町を見て、町がない!私、あのとき、死んだの?とつぶやく。

瀧(身体は三葉)は、テッシーの自転車を漕ぎ御神域へ向かっていた。

瀧君、覚えてない? (回想)三葉は1人で電車で東京へ向かう。 私、ちょっと東京へ行って来ると四葉に言い残す三葉。

デート、私のデートやらして! 急に訪ねて行ったら驚くかな? 瀧君、嫌がるかな? 東京駅に着き、ケイタイをかけてみるが電話は通じない。

もしかしたら少し喜ぶかな…? しかしいくら探しても瀧は見つからない。

駅のホームで諦めかけていた時、やって来た電車の車窓の中に見覚えがある人影を感じた三葉は急いで乗り込む。

単語カードを熱心に見ていた瀧のすぐ前まで接近する三葉…

(現在)山道をチャリで進んでいた瀧(身体は三葉)は、チャリを崖から落としてしまい、やむなく徒歩で進むしかなくなる。

3年前のあの時…

(3年前の電車の中)瀧君!あの…、私…、覚えてない?と三葉が話しかけると、誰?お前?と瀧は驚く。

返事をしたことで、瀧君なのね…と確信した三葉は、四谷駅で降りようとする。

そのとき、瀧が、あのさ…、あんたの名は?…と聞いて来たので、名前は三葉!と言いながら、頭に巻いていたリボンを滝に向かって投げて渡す。

(現在)3年前、あのときお前は俺に会いに来たんだ! 必死に山道を走りながら考える瀧(身体は三葉) 外輪山の淵にやって来た瀧(身体は三葉)は、三葉!と呼びかける。

瀧君!と答える三葉(身体は瀧) 三葉〜!いるんだろう?俺の身体の中に! 瀧君!どこ? 二人は同じ場所ですれ違うが、時空が違うためか互いの姿は見えない。

かたわれ時だ!と気づいた瀧は、目の前に三葉の姿が見える。

瀧君がいる!と三葉も泣き出す。 二人は身体と心が戻った状態で対峙していた。

お前に会いに来たんだよ。大変だったよ… 遠くにいるから…、口かみ酒飲んだんだよ…と瀧が打ち明けると、あれ…、飲んだの?変態!と三葉は怒り出す。

そんな三葉も、瀧の左手に巻かれていた自分のリボンを見つけて感激する。

瀧は、知り合う前に会いに来るなよ…、3年俺が持ってた…、今度は三葉が持ってろと言い、リボンを渡す。

それを受け取った三葉は、短く切ったばかりの髪には束ねる部分がないのではちまきのように頭に結ぶ。

三葉!もう一つやることがある!まだ間に合う!と瀧が言うと、やってみる!と三葉は答える。

かたわれ時がもう終わる!目が覚めても覚えてるように名前を書いておこう!と瀧は提案し、持っていたサインペンで三葉の手のひらに何かを書く。

三葉も瀧の手に一本横線を書きかけた所で、三葉の姿は消えてしまい、サインペンだけが落ちる。

言おうと思ってたのに…、世界のどこにいても会いに行くって…と瀧は、一本線だけが残された自分の手のひらを見つめながらつぶやく。

三葉、覚えてる?君の名前は?… 落ちたサインペンを拾い上げ、自分の手のひらに書き足そうとした瀧だったが、もう相手の名前を思い出せなかった。

あいつを助けなければ…、誰に会いに行く?大事な人…忘れたらダメな人…、誰だ?名前は? 瀧にはもう思い出せない。

瀧君、大丈夫?覚えてない?(三葉の声)

君の名前は? 瀧君? 心が戻った三葉は糸守変電所前で、バイクでやって来たテッシーと合流したので、自転車を壊したことを詫びる。

堕ちるんか?あれ…、マジで…とテッシーは上空に大きく見えている彗星を見ながら三葉に確認すると、町が停電したら非常電源に切り替わると言う。

変電所の鍵をペンチで切断し、爆薬を仕掛けた後、バイクでその場を離れるテッシーと三葉。

やがて変電所内で爆発が起こり、祭りの屋台の電灯が消え、役場も停電し、防災用サイレンが鳴り出す。

サヨチンが放送室から、糸守役場です。爆発事故で山火事の危険があります。

すぐに糸守高校へ避難してくださいと放送を始める。 祭りの現場にやって来たテッシーは、見物客達に、みんな逃げろ!山火事になっとる!と呼びかけるが、みんなはそんな言葉には半信半疑で、これではとても間に合わん!とテッシーは焦る。

一方、三葉も走り回っていたが、どうして?あの人の名前思い出せんの…と気づく。

役場にいた町長のトシキは、今の所、山火事は起きてないんだな?と確認していた。

サヨチンの役場を騙った避難放送は続いていたが、みんな逃げろ!と周囲に呼びかけていたテッシーの元に父親が近づいて来て、お前、何やっとるんだ!と怒鳴る。 テッシーはさすがに万事休す!と感じる。

彗星は無数に割れ始めていた。

(3年前)その映像を東京にいた瀧はテレビで見ていた。

ねえ!あなたは誰? あの人は誰? 忘れたくなかった… 君は誰? 転んで坂を転がった三葉はしばし意識を失う。

目が覚めても忘れないように名前書いておこうぜ…と言う瀧の言葉を思い出した三葉は、目を覚ましたとき、思わず自分の手のひらを見るが、そこには「すきだ」とだけ書かれていた。 起き上がりながら、これじゃ、名前、分からないよ…と泣き笑いする三葉は、そのまま役場に向かい、お父さん!と町長室へ駆け込むが、そこには何故か、一葉と四葉が来ており、ソファーに腰掛けていた。

それはまるで夢の景色のように美しい眺めだった…

(3年前)東京の瀧は、無数に分かれた彗星を眺めながめていた。

(現在)外輪山の淵で気がついた瀧は、俺こんな所で何やってるんだ? 思わず手のひらを見つめた瀧だったが、そこには何も書かれていなかった。

東京に戻った瀧は、それから、電車の中で髪にリボンを付けた女性を見かけると電車を降りたりするようになる。

ずっと何かを探している… 瀧は、建設会社の面接に出席する。

高木真太はすでに内定2社決まったそうだし、司に至っては8社の内定が決まっていると自慢し、瀧の内定が決まらないのはスーツが似合ってないからじゃね?などと無責任なことを言う。

探しているのは誰かなのか、どこかなのかも自分でも良く分からない… その後、久々にミキと会った瀧だったが、やはりミキも、スー似合ってないからじゃない?と言う。

仕事でこっちに来たから…とミキは東京に来た理由を話すと、私たち、糸守まで行ったことがあるよね?5年前…と言い出す。

あの頃のことは俺も良く覚えてない。喧嘩でも下のか、別々に東京に戻って来たこと、1人で森で過ごしたこと… 一つの彗星の欠片が落下したとき、奇跡的に避難訓練中だったので被害者はほとんどいなかったこと…と瀧は思い出す。

あの町に知り合いがいた訳でもないのに… 君もいつか、ちゃんと幸せになりなさい!と結婚指輪をはめた左手を振って、ミキは去って行く。

ずっと何かを探している気がする… ある雪が降る冬の日、チャーン店でカップコーヒーを飲んでいた瀧は、側のテーブルで仲睦まじく寄り添って会話をしているカップルに目を留める。

テッシーとサヨチンのようだったが、互いに分かるはずもなく、2人は幸せそうに店を出て行く。

雪が降りしきる西新宿の陸橋を渡っていた瀧は、真知子巻きのマフラーをかぶった女性とすれ違う。

今はもうない町の風景に何故これほど胸を締め付けられるんだろう? ある日、電車に乗り込んだ瀧は、すれ違う電車のドアの窓に互いの姿を見つける。

ずっと誰かを探していた… 瀧と三葉は、次の駅で飛び降りると、駅を出て互いに戻って相手を捜し始める。

階段で互いに発見し合った2人だが、三葉は階段を降り、瀧は階段を上り、そのまま一旦すれ違う。

しかし一番上に到達した時、あの…、俺…、君をどこかで…と声をかける。

階段途中で振り返った三葉は、涙をぽろぽろ流しながら私も…と答える。

君の名前は?
 


 

 

inserted by FC2 system