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警視庁物語 ウラ付け捜査

 

警視庁シリーズ第20話で上映時間58分の中編。

別件で捕まっていた男が突如自供した過去の迷宮入り事件を裏付けして行くと言う異色の展開になっている。

自供をする犯人を演じているのは井川比佐志さんで、重要な役所だけに登場シーンも少なくない。

刑事部屋の面々はお馴染みのレギュラー陣だが、太田刑事を演じている二枚目の大木史朗さんは出番も少なく、後からの追加メンバーかも知れない。

後年悪役イメージが強くなる神田隆さんは温厚そうなおじさんだし、山本麟一さんも真面目そうな青年である。

最後の方でちらり登場する今井健二さんも、黒めがねをかけた一見真面目そうな青年を演じている。

もう一人のノビ仲間を演じている地獄大使こと潮健児さんも、のびのびと演じている感じ。

怪談めいたエピソードも交え、自供の信憑性自体が怪しい前半の疑心暗鬼な状況から、徐々に薄幸な女性の半生が徐々に浮かび上がってくる後半の展開がそれなりに面白い。

池田内閣の所得倍増計画、安保闘争、三河島事故、既婚者がミスコンに応募…、当時の世相が色々出て来る所も興味深い。

地味と云えば地味な内容だが、東映の手慣れた手腕が伝わってくる安定した作品になっていると思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1963年、東映、長谷川公之脚本、佐藤肇監督作品。

浅草署の留置場 深夜2時17分頃 看守(滝沢昭)が留置場の前を通り過ぎた直後、牢の中で並んで寝ていた中の一人が、急に悲鳴を上げ、許してくれ!俺が悪かった〜!と大声で寝言を言い出したので、看守が慌てて牢の前に駆けつけ、回りで寝ていた連中も何事かと驚いて目覚める。

タイトル

桜田門の警視庁本庁に一緒にやって来た長田部長刑事(堀雄二)と北川刑事(南廣)は刑事部屋に入ってくる。

入ってくるなり北側刑事が新聞を広げたので、林刑事(花澤徳衛)が訳を聞くと、電車が満員で読めなかったので…と苦笑した北川刑事は世田谷強盗強殺未遂事件の記事に目を留める。

その時、電話がかかって来たので捜査主任(神田隆)が出ると、それは浅草署の捜査係長(菅沼正)からで、夕べ、牢の中でうなされていた男が、一昨々年の迷宮入り事件のホシは自分だと言い出したのだが、自供に要領を得ない所もあり、当時の捜査担当に連絡してみたと言う。

始業サイレンの音と同時に渡辺刑事(須藤健)がやって来て、危なかったと苦笑するので、夕べ飲み過ぎたんでしょうと若手からからかわれる。

電話を終えた主任からことの次第を聞いた刑事たちは、オートレース場の裏で発見された腐乱死体の若い女性の事件のことを思い出す。

夏だったこともあり顔の腐乱が激しく、身元も判明せぬまま、55日で捜査は打ち切られていた。

最後の日は土砂降りでしたね…と渡辺が思い出す。

自分が行くと長田が言い出したので北川にも付いて行くように命じた主任は、長田は解散する時、最後まで反対していたからな…とつぶやく。

浅草署の着いた長田と北川は、出迎えた捜査係長から、ホシは川村正直と云う25歳の男で、管内の飲み屋で無銭飲食をしたのでパクったもので、過去、窃盗が4件あり、一度鑑別所に送られていると教えられる。

一方、本庁の刑事部屋では、迷宮事件の被害者は20歳くらいで、発見時死後3週間、死因は扼殺で、体重42kg、身長150cmの小柄な女性だったと当時の記録を金子刑事(山本麟一)が読み上げていた。

身元を調べるため、唯一の証拠品である被害者のシュミーズとパンティの写真を3000枚配ったな…と主任も思い出す。

死体は空井戸の中で見つかった…と金子刑事が、当時の捜査報告署を読み続ける。

浅草署の取り調べ室に呼ばれた川村正直(井川比佐志)は、本庁の刑事さんだと捜査係長から紹介された長田から、もう一度話を聞かせてくれと云われる。

名前は?と北川刑事から確認された川村は、正直と書いてまさなおと読むと答えたので、その名の通り正直に答えてくれと北川は頼む。

殺したのは?と長田が聞くと、一昨々年の七夕の晩で、実はユキと心中するつもりだったんです!でも、ユキが死んだのを見たら怖くなって…と川村は答えたので、さらにユキの奴、化けて出て首を絞めるんです。一昨日の夜から…などと奇妙なことを言い始める。

それで酒でも飲まなければおられなくなって…と無線印象に至った軽易を話、でもダメだった…、ここの泊めもんまで追ってきたがったなどと言うので、ユキの名字は?と聞くが、知らねえんです、何だか訳ありのようで、自分のことをしゃべらなかったんでと川村は言う。

ユキとは知り合って3〜4ヶ月くらいで、六区で知り合った。前は勝兄いのスケだったんだが、兄いには新しいスケができたんで、俺が譲り受けたのだと言う。

勝兄いと言うのは4年近く前のノビ仲間なのだと川村は打ち明ける。

そこに林刑事がやって来て川村を取調べていた部屋で合流する。

どうして心中することになったのかと聞くと、ユキが死のうって言ったからで、何とはなしに…と川村は言う。

その時、北川くん、ちょっと…と林刑事が北川を部屋の外に誘い出す。 廊下で林刑事は、主任が、これで試したらどうかと言ってね…と封筒の中の写真を北川刑事に見せる。

服はどうした?と聞かれた川村は、脱がして隅田川にしてましたと答えていた。

この中から、被害者が着ていた下着が分かるか?と言いながら、封筒の中から北川が数枚の写真を取り出し、1枚が当時の検証写真なんだと川村に伝える。 川村はその中から、1枚選び出すが正解ではなかった。

背は高い方か?とユキの体格の方を聞くと低い方でしたと川村は答える。

何か身体に特長は?傷があったとか…と林が水を向けてみるが、そんなものは…と川村が否定するので、ここんところにこのくらいの傷があったぜと北川が、気分の頭部を指差して指摘する。

君が言っていることなんて当時の新聞を読めば分かるじゃないか、証拠はあるのかね?お前とユキの関係を知っている奴とか…と長田は川村に詰め寄る。 すると川村は、質屋に盗品を二度ほどユキに持って行かせたことがある。

一件は松屋裏の金田とか言う店でもう一件は谷中のかぎ屋とか言った。金谷はスイス製の腕時計とライカ、かぎやでは真珠の首飾りを入れたと言い、いつ頃だった?と林が聞くと、6月の中頃に首飾り、その一週間ほど前に腕時計とライカを売ったと言う。

すぐさま林は金多丸質店、北川はかぎ屋にやって来て、昭和35年6月頃の記録を見せてもらうことにする。

昭和35年6月と云えば、所得倍増を池田内閣が始まった頃でしたな。安保闘争があった頃で、池田総理もあの頃と今ではずいぶん変わりましたな…などと金多丸質店の主人(藤山竜一)は思い出しながら林刑事に話しかける。

当時の帳簿を調べていた林刑事は、西田ユキなる名前を見つけるが、それはこの先のご隠居はんで、嫁に財布を握られてしまったため、時々金目のものを売りに来て小遣いにしているのだと主人が言うので別人だと分かる。

一方、かぎ屋を当たっていた北川刑事の方は、その頃売りに来た女性と云えば、木村もと子と云う女性と坂巻と言う2人だけであることを突き止めていた。 どちらも、米穀通帳か身分証明がないと引き取らないので住所は分かっていると女将(山本みどり)は言う。

そこに林から電話が入り、ユキに該当する名前が見つからないとの連絡があったが、木村もと子と云う女性がライカを入れていると聞いた林は驚く。

林は正に本庁の主任に電話を入れ、金多丸質店とかぎ屋の両方に木村もと子と云う客が来ており、住所は台東区の希望荘と分かったのでこれから北川と二人で行ってみると連絡する。

希望荘に着いた林と北川は、ちょうど部屋に戻って来た管理人の女(沢村貞子)に木村もと子と云う女性が住んでいないかと声をかける。

すると、1週間前まで上の12号室に住んでいた。今はここを引き上げて国で結婚したと言う。

もと子さんの身長は?と聞くと、背は高かったので自分はミスになったらと勧めていたと管理人は言い、昨年、人妻なのにミスになった人いたけど、あれは罪にならないんですか?などと聞いて来たので、林は、ちょっとそっちの方は…と苦笑いする。

すると管理人は、もと子さんのことなら、お店に行って聞いたらどうです?七と言う雷門の側の美容院に勤めているのだと言い出す。

美容院から林とともに本庁に戻って来た北川は、木村もと子は今夜遅くでないと、新婚旅行から戻って来ないそうですと主任に報告し、川村をもう一度叩いてみたらどうかと提案する。

その時、主任にかかって来た電話は世田谷署の赤木捜査係長(石島房太郎)からだった。

世田谷の強殺未遂事件で盗品のカメラのナンバーを手配していた所、前科三犯の吉本勝吉と云う男がひっかかったのでパクってみたら、主犯は浅草署に捕まっている川村正直だと言い始めたのだと言う。

それを聞いていた刑事たちは、川村が自白したのは、その世田谷の事件に対する良心の呵責かも渡辺刑事が言い出し、今度は自分が浅草署に向かうことにする。

浅草署で川村の相手をしていた長田に合流した渡辺が、日課ほど前浅草で国産カメラを含む30万円ほどの盗難で捕まった吉本がパクられて、口を割ったんだよと伝えると、兄貴が!と川村は驚く。

昔のノビ仲間か?最近会ってないと言ってたじゃないか!と長田が責めると、10日ほど前まで会ってなかったんですと川村は言い訳する。

勝吉はお前が主犯だったと言ってるぞと渡辺が教えると、冗談じゃない!俺はただ見ていただけなんだ!と川村が否定するので、オートレース場裏の犯行は?と再度長田が聞くと、あれは俺がやりましたと言うし、夕べ化けて出たのは?と聞くと、ユキですと川村は証言を変えない。

殺されたのは一昨年なのに、どうして今頃になって化けて出るんだ?と長田が追求すると、世田谷のせいなんです。兄貴に首を絞められた奥さんがもがきながら俺の方を見たんで、それでユキのことを思い出したんですと川村は言う。

その報告を本庁で受けた主任は、お化けの出方も筋が通っているねと、川村の主張に一応の納得をしながらも、世田谷署の方から川村の身元を引き取りたいと云って来てるんだが?と刑事たちに伝え、意見を聞く。

すると北川刑事が、ガセじゃないかと思いますと言い出し、下着の写真を間違えたし、頭の傷のことも知らなかった。さらに、質屋にユキの名前もなかったなど理由を述べる。 ユキの住所を知らないって言うのもどうでしょうね?と太田刑事(大木史朗)も、川村証言への疑問を口にする。

世田谷の事件でうるさくなりそうになったんで、急に迷宮事件を思い出してガセったんですよ?と北川は言う。

法廷で自供を覆し、あれはでっち上げられたと云えば刑事保証金をもらえますし…と北川が言うと、最近そう云うのが増えたねと林も同調する。

川村はそんな知恵が働くような奴にも思えんが…と主任が首を傾げると、自分を浅草の留置場にやってくれませんか?うなされ方で何か分かるかもしれませんと金子刑事が言い出したので、その結果を見て世田谷署に電話をすることにしようと主任は決断する。

その夜、留置場の前で一晩中待機することになった長田と木村。

深夜1時20分…、2時8分になった時、またもや、留置場で寝ていた川村がうなされ始め、助けてくれ!ユキ!と叫ぶなり、目を覚まして、牢の前に来た長田たちに爪より、刑事さん!出してくれ!指輪のことを言うからよ!ユキの奴が、どうして隠しているんだって…と懇願して来たので、すぐに牢の外に出し、その騒ぎで目が覚めた他の容疑者たちが騒ぐ中、取調室に連れて行く。

取調室に座った川村は、二灯式の電気スタンドを点した長田が、聞こうかね?と水を向けると、昨日は隠したけど、ユキを殺した後、奴がはめていた金ぴかの指輪を取ったんですと川村は自供する。

指輪は18金で、その後、六区の「張福来」のみどりにくれてやりました…、さっきユキの奴が、本当のことを言わないと許さないと乗りかかって来たもので…、本当は心中じゃないんですと川村は続ける。

あの頃俺、ノビで飯食ってたんですけど、しょっちゅう兄貴にかつあげされたんで、ユキが密告してたと思ったんです。

それで、レース行こうって誘ったらふてくされたんで、首を絞めたら、あんた、殺すの!って暴れたんで、力を込めたら、足ばたばたさせその内動かなくなって…、早く俺を処分してください!と川村は頼むが、そうはいかないんだ、ユキが本当にいたことにならんとな…と長田は冷静に教える。

すると川村は、兄貴に聞いてくれよ、スケになったったんだからと川村が言うので、吉本勝吉だな?と長田は念を押す。

浅草六区にやって来た林刑事が「張福来」と云う中華料理やの前で掃除をしていた女性に、みどりさんっている?とが聞くと、私の前にいた人?と女性は言いながら店の中に入って行く。

世田谷署に捕まっていた吉本勝吉(潮健児)は、本庁から来た主任にユキのことを聞かれると、ユキ?六区で拾ったんですよ、間もなく川村に譲ってやったと答えるが、昭和35年の7月頃のことはムショに入っていたから知らないと言う。

川村とは10日ほど前、ドヤで会ったと云うので、その時ユキのことは聞かなかったかと聞き、ユキは本当の名前か?とも確認するが、あいつは身の上話をしねえ奴だったんで…、名前は知らなくても女はだけますからなどと云うので、そう云うもんかね?と赤木捜査係長(石島房太郎)が聞くと、そう云うもんですと吉本は真顔で答える。

その時、美容院で女中をやっっと言ってました…と吉本が言い出したので、どこで?と主任は聞く。

その頃、金子と林料刑事は、「ナナ美容院」の木村もと子(八代万智子)に、二軒の質屋に行った覚えはないか?と確認していたが、もと子は全く知らないと言う。

質屋に入れるには、お米の通帳とかいるんじゃないですか?私、身分を証明するものってそれくらいしか持ってないんですけど?ともと子が言うので、誰かそれを持ち出せるような親しくしている人と買いませんでしたか?と林が聞き、ユキってお手伝いがいませんでしたか?と金子が聞くと、いました!和わしのアパートにも時々来てました。何でも田舎で失恋したとかで可哀想な人でしたが、辞める少し前あたりから人が変わったようになり…ともと子は思い出す。

打ち明け話はしない方だったんですが、相手は東都大学の人で、一昨々年のお正月過ぎくらいに下宿に訪ねて行ったら冷たくされたそうで、それ以来、お化粧が派手になって…ともと子が言うので、田舎はどこですか?と聞くと、ここの先生が知ってるかも…ともと子は答える。

2年前から日暮里の用心棒とやらと暮らしているらしいと長田が主任に報告していると、そこに林から電話が入り、ユキと云う女中がいて、身元は台東区の国民年金係に聞けば分かりそうだと言ってくる。

渡辺刑事と北川刑事は、麻雀屋「南北荘」にみどりを訪ねてくる。

ちょうど、二階の「南北荘」から階段を降りて来た女(小林裕子)がおり、指に金の指輪をはめていたので、みどりさん?と林が声を掛け、ここで働いている人の奥さんになっているかもと北川が補足すると、その女は店にいる男(杉義一)を呼ぶ。

階段を降りて来た男に、六区の「張福来」にいたみどりのことを聞くと、死にましたよ去年、三河島列車事故で…と言うので、生前18金の指輪をしてませんでしたか?と聞くと、急に男は、その場にいた絹子と云う女にタバコを買って来いと命じ、追い払う。

実はあいつがしていた指輪がそれで、みどりの死体とともに手に入れたんですと男は言う。

その時、タバコを買いに行く振りをして物陰で話を聞いていた女が飛び出して来て、聞いちゃったわよ!5000円も出して買ったなんて!と男につかみ掛かると、指輪を抜き取ってその場に投げ捨て、そのまま怒って「南北荘」へ上がって行ってしまう。

男は慌てて、絹子!愛しているよ!と詫びながら後を追いかけて行く。

渡辺刑事は、今女が棄てて行った指輪を拾い上げる。

本庁の刑事部屋に戻っていた林刑事は、国民年金係はユキと深い関係ではなく、ふらふらしていたので注意しただけで、その後、まともな働き口としてナナを紹介したらしいですと主任に報告していた。

3月25日に転移届けを出している、本名は木下ユキと聞いた長田は、新潟に帰ったのか?と聞く。

金子刑事が、指輪、どうだったんです?と聞くと、川本に確かめて帰ると連絡があった。世田谷の助かった奥さんの話によると、首を絞めたのは吉本勝吉と云うことだと主任が教える。

そんな話を聞いていた林刑事が、世の中変わりましたね…、戦前なら、ホシがやりましたと云えば、それだけでクロにしたものですが、今はこうして証言を調べている…と苦笑する。

それを聞いた太田刑事が、憲法38条の精神ですかと口を挟む。

戦争を境に捜査はがらっと変わったよ…と感慨深げに林は言う。 そこに、指輪を持った北川が戻って来て、川村に見せた所、大体これに間違いないそうですと報告する。

金の指輪を取り出した渡辺刑事が指輪の内側に彫ってあった文字を指差し、「K18」ではなく「KIS」と書かれてあるだけなので、これは偽物なんですよと呆れたように教える。

つまり、ユキが18金だと言ったので、川村はその気になってと云う訳か…と金子も納得する。

そんな金子と長田に、君たちで小千谷に行ってくれ、今夜の夜行で発ってくれと主任は頼む。

小千谷に着いた2人は、ジープでユキの実家近くの駐在所前に来ると、駐在巡査(相馬剛三)を乗せ道案内を頼む。

しばらくジープで雪道を進むと、ユキの実家に到着する。 家の前にいたさと(岸輝子)に、母さん、工場に働きに行ってるか?と気さくに駐在が声をかけながら近づき、東京から来た長田たちを紹介する。

ユキさんは、2年半ほど前、家出したそうだって?と聞くと、転出証明を送って来ただけですと答える。

実は、一昨々年の7月に迷宮事件がありまして…と金子が説明すると、殺されちまったって言うんですか!とさとは驚く。

まだそうと決まった訳では…、ユキさんには何か傷はありませんでしたか?と聞くと、子供の頃、前科者の子と言われ、石をぶつけられ、この辺に傷が…とさとは頭を指す。

これに見覚えは?と言いながら指輪を見せると、 坊ちゃんに頂いた…、夏田さん、あんた知らんかの?町長さんの坊ちゃんと仲を裂かれた時…とさとが言い出したので、夏休み、東京から帰ってきた時もらったんでしょう。

だが、相手の父親が町長だったので、身分違いと仲を裂いたんですわ…と駐在が長田たちに説明する。

これ偽物なんですよ…と指輪のことを金子が打ち明けると、あの坊ちゃんが…、結婚するつもりだったと思っていたのに…とさとは驚く。

吉島と言うその息子はもう結婚しており、今は妻の実家の高の井酒造と言う会社を継いでいるのだと駐在は説明し、長田たちをその会社に連れて行く。 何か祝い事の最中だった吉島(今井健二)に会った長田と金子は、応接間に招かれ、指輪を見せる。

こんな古いものをどうして?と吉島が戸惑うと、これは木下ユキさんに?と金子が聞く。

僕も若かったんですね…と吉島は苦笑するが、そこへ事務員が酒をお茶代わりに持って来る。

18金の偽物なんですが?と長田が聞くと、若気の至りと云うか…、わざわざ18金じゃないと云うこともないので…、東京の下宿に訪ねて来た事があったので、はっきり婚約相手がいると言ったんですと吉島が答えていると、そこに玩具を取りに来た子供と、それを連れに来た妻(月村圭子)が長田たちに詫びてすぐに出て行く。

金子刑事は、あなたの話で、木下ユキさんが殺されたことが確認されたんですと伝えると、えっ!と吉島は驚く。

そこに、酒造倉庫の前で越後獅子の舞をやっている音楽が聞こえてくる。

ユキの母、さとも、貧しい自宅前でその演奏を聴いていた。 本庁の主任は、木下ユキの生前の写真を見ていた。

そこに連れて来られた川村が、認めてくれたんですか?と聞くと、今日のあんた次第だよと新潟から帰って来た長田が言い、ユキの写真を混ぜた数枚の女性の写真の中から、本当のユキを選ばせる。

川村は1枚の写真を選び、ユキ!と呼びかける。

それは間違いなく、木下ユキの生前の写真だった。

その後、川村を連れ、オートレース場裏の犯行現場にやって来た主任たちは、案内して来た地元署の刑事(山之内修)から、この辺もあの当時からずいぶん変わりましたと説明を受ける。

川村に犯行場所を聞くと、あの辺に小屋があって、その中でやって、この空井戸に棄てました…と言いながら井戸の中を覗き込むと、底に水が溜まっていたので驚く。

あれから間もなく水が湧きましてね…、この辺の老人たちは、被害者が成仏できず、呪い涙が溜まって湧いたなどと言っとるんですが…と説明すると、井戸を覗き込んでいた川村は、ユキ!ユキ!を井戸の底に向かって呼びかけながら泣き出す。

その様子を側で見ていた北川刑事や主任は神妙な顔になる。 近くではオートレースが始まっていた。
 


 

 

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