白夜館

 

 

 

幻想館

 

極道ペテン師

野坂昭如原作の映画化。

映画館人口が激減する映画斜陽化の時期で、撮影所が変革を迫られていた時代の作品らしく、配給は日活だが、製作はノーベルプロダクションと言う独立プロらしい。

梶芽衣子さんがちらり登場しているので、一見日活作品のように見えなくもないが、俳優は全員フリーの立場での参加ではないかと思う。

考えてみれば、フランキー堺さんからすると日活は古巣に当たるはずだが、この当時の日活は、もう自社作品としてフランキーさんを使う余裕はなかったのかもしれない。

話は戦後から高度成長期に世の中が激変する中、いつしか自分を見失っていた男が、現実の色々な矛盾を体験して行くうちに、戦争の傷跡をいまだに引きずっている事を実感するというもの。

最初は手慣れた詐欺師グループの艶笑譚的な痛快話が展開するのだが、途中から謎の子供が加わり、その子供に主人公を含めた詐欺グループ全体が振り回され始め…、やがては自滅の道を辿る事になると言う風刺劇のような展開になっている。

その子供は、大人も顔負けの詐欺師の才能がある手の付けられない悪ガキのようであり、ある時は大人たちを諌める天使のような振る舞いもし、大人を翻弄しがらも大切な物に気づかせる象徴的な存在になっている。

子供が登場してからは、徐々に喜劇的な側面は影を薄めて行く反面、戦後の日本人全体への問いかけが投げつけられる。

子供と同じく象徴的な存在として画面に出てくるのが、空き地に放置されっぱなしにされている不発弾で、喉元過ぎれば熱さを忘れるのたとえ通り、終わってしまった戦争を深く考えないまま栄華に浮かれていた当時の日本人への警告なのかもしれない。

ストリッパーのユリ役を演じているのは、川喜多純子さんと言う新人女優で、フランキーさんや伴淳さんと絡む芝居も披露しており、単に裸を披露するためだけの起用ではなかった事が分かる。

それにしても、前半の温泉宿で登場する数十人の女生徒の入浴シーンは圧巻である。

タイトルバックに出て来る女風呂を描いた浮世絵の再現のようだが、今では考えられないような大胆な演出である。

今村昌平監督のいわゆる「重喜劇」に近い雰囲気もあり、軽いドタバタ喜劇を期待して見ていると、途中から徐々に笑えない展開になって行くので、人によって好みは別れるかもしれない。

独立プロ作品だけに、日活風でも松竹風でもなく一種独特の作風になっており、この時代の雰囲気は良く出ているしパワフルで、成功しているかどうかはともかく、それなりの意欲作なのではないかと感じる。

劇中に登場する共栄の赤マムシドリンクなど、タイアップ商品も懐かしい。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1969年、ノーベルプロダクション、野坂昭如原作、村井良雄+千野皓司脚本、友田二郎監督作品。

浴場を描いた浮世絵の上にゴキブリが這っている様子をバックにタイトル、キャスト、スタッフロール

B-29の空襲の記録映像

昔の古傷を穿り返すようだが、思い出すね~、24年前…

その後は景気、景気で、貧乏なのかそうでないのか分からなくなった…

万事、詐欺に引っかかったようなものだ…

ここは大阪釜ヶ崎 戦争中の空襲で爆発しなかった不発弾が空き地で見つかった…

しかし、その処理は誰も行わず、今では子供が土から少し出ているその爆弾に向かって立ち小便していたりする。

世の中には、馬鹿げた爆弾があるものだ… カンパイ(フランキー堺)は、ネグリジェ姿のミチコ(松井康子)から迫られていたが、8月の交通事故以来インポになったと言い訳していたが、欲求不満な女はそんな言葉を信じようとしなかった。

そこへ朝っぱらから色事ですか?と苦笑しながらやって来たのが、ヤクザのキンちゃん(島米八)で、川内にぴったりの寺があったと言うので、仕事か!と張り切ったカンパイは、一緒に出かけようとする。

逃げられた女は薄情もん!と文句を言うが、家の前に見知らぬ中年男(殿山泰司)が立っていたので、誰だ?カンパイが聞くと、MHKですと言う。

キンちゃんに連れられて目当ての寺にやって来たカンパイは、寺の住職は数年前女房に逃げられ、今は小僧と2人だけだと言う。

1200坪あり、坪8万として…とキンちゃんが時価を計算しだすと、やってみよう!とカンパイはやる気になる。

競馬場にやって来た和尚(曽我廼家明蝶)は、前を歩いていた男が落とした財布に気づき、拾おうとした時、いきなりカンパイから、その財布、誰かが落とした物では?と声をかけられたので、驚きながらも、今から交番に届けに行く所だったんやと言い訳する。

するとカンパイは、交番に届けるつもりでっか?と確認しながら和尚に近づくと何事かを耳打ちする。

そして、人気のない建物の隙間に来ると、財布の中身を確かめ、23万入っている。

あんたが見つけたので3分の2、わいが3分の1などと言いながら、札束を分けようとしていると、突然、それ、わいの財布やないか!何さらしてんねん!色付けてもらおうか?1人10万や!と和尚とカンパイに因縁をつけて来たのはキンちゃんやった。

そこへ、社長、どないしたんでっか?とカンパイに声をかけて来たのは、ブック(伴淳三郎)と挨拶屋(南利明)だった。

形勢不利を見たキンちゃんは、地獄組や!と捨て台詞を残して逃げ去ると、最初から金目当ての護摩の蠅みたいな連中やねと挨拶屋が解説し、ネタ割れ忘れて行った…と財布の中身の札束を持ったカンパイが嘲笑する。

カンパイは大阪経済研究所の伊集院と名乗ると、和尚にブックと挨拶屋のことも専務の下川と営業部長の明石君と紹介し、ミナミで飲みましょうか?とビビっていた和尚を誘う。

クラブでカンパイや和尚に合流した印鑑屋(大辻伺郎)は、がっぽり儲けさせてもらいました!とうれしそうにボックス席で礼を言うので、それを聞いていた和尚はカンパイを何者かと不思議がる。

カンパイが印鑑屋に川内の信大寺のご住職と和尚を紹介すると、印鑑屋は、金儲けだったらこの人に任せると良い、経営コンサルタントやっている人だからと和尚に吹き込む。

そこにやって来たのが、総務部長の大前田を名乗る葬式屋(世志凡太)だった。

すっかりカンパイのことを金儲けが巧い社長と信じた和尚は、一緒にやって来たトイレでカンパイに、私の回りはしぶちんばかりで金ないんですよと打ち明ける。

和尚を完全に騙して信用を勝ち取ったと感じたカンパイたちは、ブックの娘ユリ(川喜多純子)が踊っていたストリップ小屋にやって来る。

後方の客席の一角を陣取ったカンパイらは、新しい計画はインポ直しの新興宗教や!などと提案し、仲間達はみんな乗り気になるが、そんな中、葬式屋だけは、今回の仕事に乗り気ではなく降りると言いだす。

御神体は男の一物象るんや!と言いだしたカンパイは、ブックはデカチン探しや!と命じ、ナイチンゲール今日と名付けようと思いつく。 そこにキンちゃんが合流し、競馬場での芝居をみんなが褒める。

その流れを見ていた葬式屋も、やっぱりやりますと変心する。 ブックと葬式屋は銭湯に行くと、デカチンの持ち主を見つける。

印鑑屋は、茶碗作りの陶芸家(加藤武)に会いに行き、男の一物の陶芸を作ってくれと頼むが、陶芸家は損な下品な物は作らないと頑固に断る。

しかし、印鑑屋が側にあった秤の上に札束を積んで行くと、あっさりやりましょ!と快諾する。

寺の庭先で薪割りしていたカンパイの所にやって来た挨拶屋は、女房族相手に巧くいったと報告する。

ブックもやって来るが、デカチンはいたが承知しなかったと言うので、一計を案じたカンパイは、風呂に入っていた和尚の所に自分も無理矢理裸で入り、裸の付き合いをしましょうなどと言いながら、相手の一物の品定めをしようとする。

ブックや挨拶屋も風呂の外から覗き込み、和尚の一物を確認しようとするがなかなか見えない。

カンパイは、今まで女子商売で損した物はない!と太鼓判を押し、自分は女房に逃げられたと言う話をすると、和尚は乗って来て、わいもかかに駆け落ちされたんや!と告白するが、そのとき、外の気配に気づき、誰や!覗いているのは!と怒鳴りながら立ち上がった和尚の股間を湯船からまじまじと見たカンパイは、ご立派!と感心する。

その後、寺の名は「珍大寺」と変え、女房族たちが続々とやって来る。

麦わら帽を改良したようなおかしな帽子と胸当てを付けたブックや挨拶屋が、女房族を前に、悩み事ご相談を受け付ける旨挨拶をし、カンパイと葬式屋が幕を引くと、その億には黄金の巨根の置物と和尚が控えていた。

葬式屋が、7日目の旦那の一物に赤チンを塗り、魚拓ならぬチン拓を取れば効果覿面などと適当なことを女房たちに吹き込む。

女房たちが帰った後、1日で54万も設けたので、コンサルタント料は5%程度頂きましょうかとカンパイが報告すると、和尚はホクホク顏になって喜ぶ。

すると挨拶屋が、道路に面した所は駐車場にしたらどうでしょう?と和尚に提案し、すっかり信用した和尚がお任せしますと言うと、ブックが用意していた委任状を差し出し判子を求める。

すっかりこの商売が気に入ったらしい和尚は、女てほんまにアホやなぁ!と哄笑するが、数日後、突然寺にやって来た業者から、この寺が不動産やに買われたと聞かされ、詐欺に引っかかった!檀家に申し訳ない!バカバカ!と和尚は自分を責める。

儲けた金でカンパイらは「元湯 玉川館」と言う温泉宿に遊びに来る。

カンパイと一緒に湯船に浸かっていた印鑑屋は自分の胸の傷を見せながら、戦時中特務機関にいたんやなどと言いだしたので、カンパイが感心すると、嘘やと言う。

呆れたカンパイが、じゃあその傷どうしたんや?と聞くと、ほんまは左翼運動をやっていたので特高にめちゃめちゃ叩かれたんやと言うのでまた感心して聞いていると、それも嘘やと印鑑屋は真顔で答えるのでカンパイは呆れてしまう。

そこに葬式屋が靴下を履いたまま湯船に入って来て、湯船の中で靴下を脱ぎ始めたので、何してるんや?と印鑑屋が聞くと、水虫でんねんと葬式屋が言いながら靴下を外に出そうとしたので、印鑑屋とカンパイは慌てて湯船から飛び出す。

そんな「玉川館」に、瀬戸清心女学院から大量の女生徒たちがバスで乗り付けて来る。

番頭は、まだ印鑑屋が入っていた男湯を確認せず、無人と勘違いしたまま、入り口に女生徒以外の立ち入り禁止の札をかけてしまう。

そんな女生徒たちを興味深げに外で見ていたカンパイが、昔を思い出すようなことを言うので、カンパイはんにも思い出す女がおったのかと印鑑屋が意外そうに聞くと、忘れられんあの味…、俺好みやった…、少年航空兵に行く時、焼き芋持たせてくれたんや…と乾杯は懐かしがる。

一方、1人で湯船に浸かっていた葬式屋は、突然大量の女生徒たちが裸で入って来たので、慌てて窓から外へ飛び出すと、部屋で待っていたカンパイと印鑑屋に、男湯に若い娘たちが入って来たと報告する。

それを聞いたカンパイと印鑑屋は、三助に化け、どうどうと男風呂に入り、熱い湯をかき回したりしながらたっぷり女生徒たちのヌードを眺めるが、慌てて、石けんで転んだりする。

その後、部屋で昼寝をしていた葬式屋は、庭先から「キンタマ、セイシン!」と叫ぶ女生徒たちの声に驚いて飛び起きるが、一緒に寝ていたカンパイと印鑑屋が葬式屋から促されて良く声を聞くと、「良い玉!清心!」と叫んでいるだけだった。

どうやら、ソフトボールの応援の練習をしているようだった。

しかし、その声がうるさく、昼寝も出来ないので、意趣返しとして、鳥かごに入ったオウムを持って来たカンパイが、何かこいつに猥雑な言葉を覚えさそうと提案する。

女生徒たちの出身校の地方でのた女性器の呼び方「ゾッペ」を印鑑屋と葬式屋から聞いたカンパイは、繰り返しオウムに聞かせ始める。

翌朝、クリスチャン系の女学院だったその女生徒たちがみな集まって敬虔な祈りを捧げているとき、突然、「ゾッペ!」と鳴くオウムの鳴き声が聞こえて来たので、女生徒たちに動揺が走る。

尼姿の教師とともに女生徒たちがその鳥かごに近づいたとき、部屋から出て来たカンパイが、それはわいの鳥です、勝手に触らんといてくださいと声をかけ、文句を言う教師や女生徒たちに、ゾッペって何です?と知らん顔をして聞き、女生徒たちが、その鳥殺して!などと言うので、あんたらクリスチャンの人やと聞いたが、残酷な人やな〜とわざとらしく嘆いてみせる。

一方、女(福地トモ)連れで北海道へ遊びに行っていた挨拶屋が伊丹空港に戻って来る。

そんな中、ブックは、キンちゃんの地獄組が仕切っている賭場で負け続けていた。

ブックはキンちゃんに無理を言って20万貸してもらう。

挨拶屋が自宅に戻って来ると、ちょうどおかんのオタケが(清川虹子)が茶漬けを食おうとしている所だった。

そこにユリが、お父ちゃん来んか?と聞きにやって来たので、オタケが、こいつらには気をつけんと、処女むちゃくちゃされるよと注意する。

するとユリは、うちの処女は再生やからなんぼでも作ったるなどと真顔で答える。

そんな町に、母ちゃん、どこ行くんや?などと言いながら1人の子供がやって来る。

アパートのベッドでキンちゃんと寝ていたアケミ(梶芽衣子)は、突然カンパイが帰って来たので、旦那や!と慌ててキンちゃんを窓から逃がす。

そこへ帰って来たカンパイは、約束の指輪やと言いながら、買って来た土産を渡す。

そして、ほな頂こかと言うと、アケミをベッドに押し倒しことに及ぼうとするが、アケミは、あかん?やっぱり…と同情するような声で聞く。

さっぱり身体が言う事を聞かないことを悟ったカンパイは、畜生!交通事故め!と悔しがる。

その頃、帰って来たブックにユリは、3分の1は戦争の兵隊、3分の1は刑務所暮らし、3分の1は詐欺師…、父ちゃん、わてほんまに男狂いになるで!と父親の暮らしぶりを諌めていた。

アケミのアパートから帰りかけたカンパイの前に立ちふさがった子供は、突然、おっちゃん、わいの父ちゃんやろ?と話しかけて来る。

そんな子供は無視して立ち去ったカンパイは、ユリは頼りにならん!と言いながらストリップ小屋から出て来たブックを誘い、屋台で一杯飲み始める。

ブックは、あの子は母親が死んでからどさ回りの世界しか知らんのや、今は芝居小屋が潰れてしまってストリップばかりや…と嘆く。 そこりふらりと現れたのは葬式屋だった。

カンパイは葬式屋に、いつもの泣きが始まったとブックのことをからかいながら酒を勧める。

そんな中、ミチコの経営する美容室に660円の受信料を集金に来ていたMHKの集金人は、あんた、暇ある?遊んで行かない?共栄の赤マムシ飲みなさいよと誘われていた。

そこにカンパイがやって来ると、父ちゃん!と先ほどの子供が付いて来たので、フーテンの子供やとカンパイはミチコに説明する。

しかし子供は、お母ちゃんが父ちゃんと言うたんや!と下がらない。 そこへ印鑑屋が、またもめ事ですか?と言いながらやって来たので、カンパイは印鑑屋の外車に乗って去って行くが、そんな車に向かって子供は父ちゃん!と呼びかける。

ブックとその後も飲み続けていた葬式屋は、へべれけに酔っぱらって、一緒に軍歌を歌いながら、不発弾が顔を出している空き地へやって来る。

不発弾につまずいたブックは、この野糞を始末しろ!などと無茶を言いだし、挙げ句の果てに、葬式屋に、その場で蝉をやれ!などと無茶振りをする。

やむなく、側にあった棒をよじ上った葬式屋は、蝉の鳴き声を真似し始めるが、その時、近づいて来た男を発見した葬式屋は、敵機来襲しました!と下にいたブックに呼びかける。

それは、MHKの集金人だった。 ブックが棒を持って殴る真似をしながら、お前、誰や?と聞くと、MHKですと答えたので、日銭2億もふったくりやがって!とブックは怒るが、そのとき突然、似てるな…と言いだす。

MHKの集金人が、時の経済大臣伊藤不作にそっくりだと気づいたのだ。

翌日、挨拶屋の家の二階に呼ばれた集金人の顔を見たカンパイたちは、新しい作戦を練ろうとするが、あの子供が又してもやって来たので、お前の母ちゃんをここへ連れて来い!と怒鳴りつけ、挨拶屋にこの子を遊びに連れて行け!と頼む。

結局、タクシーで子供を連れ出したのは挨拶屋で、道沿いの砂山に子供を突き落として立ち去る。

その頃、印鑑屋は、日本所得倍増新聞を名乗って伊藤大臣のスケジュールを聞き出していた。

そこに挨拶屋が、捨ててきましたぜと言いながら戻って来る。

カンパイは、詐欺の片棒を担ぐことになってビビる集金人に、嘘はほんまと思い込め!と言い聞かせていた。

集金人は、カラーテレビ買えるくらい儲かりまっか?と聞くので、あんたの名前は?とカンパイが聞くと、前向進と本名を言うので、もう一度言い直させ、伊藤不作です!と集金人は訂正する。

その時、オタケが、カンパイ!おまわりさんやで!と声をかけて来たので、一瞬、もうばれたか?とビビったカンパイが恐る恐る玄関口へ降りてみると、警官が連れて来ていたのはあの子供だった。

警官はカンパイのことを子供の父親だと信じ込んでいるようで、一言注意しただけで帰って行く。

ぼろは着てても心は錦〜♩と子供が歌う中、集金人は大臣に化ける服を着替え始める。

東洋ゴムのアストロシューズも履かせる。 挨拶屋は押し入れに子供を押し込むが、まだ歌い続けているのでタオルで口を塞ぐ。

いよいよ2台の白バイに先導させ、乗用車二台に分乗して出発することになるが、集金やが途中で、酒を飲ませてくれ、ガタ来ちまって…と言いだしたので、やむなく途中の酒屋に立ち寄り缶ビールを1本購入し、集金屋に飲ますことにする。

集金屋は、ぼろは着てても〜♩と上機嫌になって歌いだす。

その日の大臣の視察予定地は、ヘソナル電気東大阪工場だった。

後方の乗用車に乗っていたブックは、本物が来よったぞと背後から迫って来た大臣の車一行に気づく。 本物は、あらかじめ用意していた偽の看板に騙され、別の道へ進んで行く。

工場に案内された集金係は、すっかりなれたようで、喉が渇いたな…、キューっと一杯などと工場関係者の前で言いだす。

その時、部屋に入って来た1人の女性事務員は、大臣秘書として部屋に座っていたカンパイにお電話ですと告げに来て、その顔を見ると仰天したようだった。

その女性が出て行った後、電話に出たカンパイは、相手が赤電話から、もう本物たちの車をごまかすのは無理だと知らせて来たブックだと知ると、部屋に戻って来て、府長から電話が入りましたので大阪へ戻らねばならなくなりました。何せ70年安保を控え、大臣はお忙しくて…と工場関係者に告げる。

すると、そこに寸志ですので…と封筒を持って来たので、それをありがたく頂いたカンパイと挨拶屋、印鑑屋、そして集金係たちは、乗用車へと戻ろうとする。

その時、そっとカンパイに近づいて来た先ほどの女性事務員が、ゆっくりお話ししたいわ…と耳打ちして来てメモを渡す。

車に乗り込んだカンパイたちは、先ほど受け取った社長や工場長からの寸志が、計500万にもなると知り大喜びするが、集金屋が小便をしたいと言いだす。

さっきの女、誰や?と印鑑屋たちから聞かれたカンパイは、あれが焼芋や!と感激したように教える。

その後、車を停め、集金屋が降りて道ばたで小便をしだすと、本物の大臣の車が近づいて来たので、集金屋をそこに残したままカンパイたちの車は走り出す。

後日、ブック、挨拶屋、印鑑屋たちは部屋でブルーフィルムを見ていた。

印鑑屋は、戦争中、外国兵たちに次々にカマを掘られたなどと言う思い出話をする。

その頃、カンパイは、メモに書いてあった場所で、あの女子事務員八重ちゃん(朝丘雪路)に出会っていた。

一緒に、「うどんすき」の店に行くと、互いの近況を聞き合う。

カンパイが結婚していると打ち明けると、八重ちゃんも、うちも1人やと言うので、ご主人可愛がってる?とカンパイは確認する。

そんな中、ブックたちの部屋にやって来たあの子供が、お医者さんごっこしている!とブルーフィルムを見ながら言うので、大人たちは慌てるが、あっ!お母ちゃんや!とブルーフィルムを指して子供が叫んだので驚く。

少年航空兵のとき、目の前に爆弾が落ちて来たけど爆発せんかった…、そのときからわいは何でも出来ると思うようになったとカンパイが話すと、うちはすっかりおばあちゃんになってしもうた…と卑下するので、やっぱりきれいやとカンパイは褒める。

(回想)空襲の最中、震える女学生時代の八重ちゃんを押し倒し、爆発からかばおうとする少年航空兵時代のカンパイ。

その時、倒れた八重ちゃんが握りしめていたのが焼芋だった。

(回想明け)もう会えへんやろな…、明日から四国から九州へと回らなあかんのやと大臣秘書を演じていたカンパイは最後まで嘘を突き通す。

翌日、印鑑屋のスポーツカーに子供と案内係のキンちゃんを乗せ、カンパイは子供の母親探しに出かける。

キンちゃんは、ブルーフィルムを撮影中の家に乗り込むと、地獄組や、この前見た作品のヒロインどこにいるんや?とカメラマンに聞く。

しかし、カメラマンは、企業秘密やと言って打ち明けようとしない。

そこでカンパイが部屋に上がり込み、あれはわいの女房なんや!子供に一目会わせたろう思うて…と泣き落としを演じてみると女と絡んでいたエロ事師(伝法三千雄)が、可哀想やないか、教えたらどうやとカメラマンに言う。

カメラマンに教えられたマンションに出向き、その女の部屋のチャイムを押すと、出て来たのは主婦(丹羽志津)だったので、お子さんの事でちょっと…とカンパイが説明していると、そこにその女の娘らしい小学生の女の子礼子が帰って来る。

子供に騙されたと気づいたカンパイは、坊主!と怒りながらマンションから帰ろうとすると、階段を追いかけて来た今の主婦が、写されたと知らんと…、これで内緒にして!と言いながら銀行通帳を手渡して来る。

このガキ!騙したな!と車で待っていた子供ケン坊(二宮博見)を叱りつけると、わいは母ちゃんに似ていると言うただけやとケン坊はしらっと答える。

これ以上はつきおうておられんとキンちゃんは帰ってしまい、カンパイと印鑑屋は、またケン坊に道を聞き、母親の家に行こうとするが、そこは行き止まりだった。

やむなく、ケン坊に後ろを確認させオーライ!と言う声を頼りにバックした印鑑屋だったが、すぐに塀にぶつかってしまう。

それでも知らん振りのケン坊は、父ちゃん、腹ペコやと言いだす。

その後も、ケン坊に道案内させ、母親の家を探し続けていたカンパイだったが、その内車に酔ってしまう。

するとケン坊がウンコしたくなって来たなどと言いだしたので、やむなく車を停め、印鑑屋は修理屋を呼んで2000円払うはめになる。

ケン坊が降りてウンコしている間に、カンパイと印鑑屋は車を発車させ、ケン坊を置き去りにする。

逃げる途中、カンパイは、あの子は話以来状の詐欺師や!と怯えるが、すぐにトラックの助手席の乗せてもらったケン坊が、こっちの方が早いで!などと言いながら、彼らの車を追い越して先に帰ってしまう。

その後、ブック、印鑑屋、挨拶屋、葬式屋たちは、麻雀をしながら、ケン坊の母親の事を探ろうと色々聞くが、その度にケン坊は、答えをはぐらかし、なおかつ麻雀をしている仲間の背後に回りながら、全員のパイの内容をバラしてしまう。

怒った大人たちは夫々喧嘩を始めるが、そんな中、ケン坊は、部屋の電話を取り上げ110番を呼んで、大人が血みどろの喧嘩をしてまっせ!と言い出したので、慌ててケン坊を押し倒し、受話器を取り上げると、それは天気予報の番号だった。

カンパイは呆れて、もういっぺんやり直そうと言うが、その時、葬式屋が、倒れたままのケン坊が動きまへんで!と言いだす。

医者に見せた所、軽い脳しんとうと分かるが、ボンの名前は?お父はんでっしゃろ?良う似とりますわとカルテを書く医者から聞かれたカンパイは唖然とする。

その頃、他の仲間達はホルモン焼き屋で食っていたが、みんな、自分もどこかに隠し子がいるのではないかと噂し合っていると、お父ちゃんしっかりしろ!と酔いつぶれた他の客を起こしに来た子供がいたので全員驚き、同時に食欲をなくす。

アケミのアパートにケン坊を連れ戻って来たカンパイは、部屋の中でアケミとキンちゃんが寝ていたので驚く。

極道の仁義知っとるやろ!とその場で土下座したキンちゃんに向かってカンパイが迫ると、わいがやったる!と言いながら、ケン坊がドスを抜いてキンちゃんに突き出す。

しかし、お前らの指をもらってっても男が廃る!とカンパイは怒鳴りつけると部屋を飛び出す。

その後、不発弾の埋まった空き地にやって来たカンパイは一升瓶の酒をヤケになって飲みながら、ずっと突いて来るケン坊に向かい、お前、どこの子や!と聞く。

するとケン坊は、あんたの息子や!父ちゃんは父ちゃんや!ガキガキ言うな!わいはケンジ言うんや!と名前を名乗る。

しかしカンパイは、わい、何でこんな目に遭うんや!と癇癪を起こし、地面から出ている不発弾に一升瓶を叩き付けて割る。

その後、ユリの楽屋に出向いたカンパイは、ごんたくれの親分!と驚くユリに、このガキ預かってくれ!と頼む。 そこへ葬式屋が駆けつけて来て、ミチコがMHKと駆け落ちしおった!と知らせる。

それを一緒に聞いていたケン坊は、父ちゃん、落ち目やなと言い、葬式屋は、ゲン直しに仕事しよとカンパイに声をかける。

後日、四菱電気の社員2人を会社の事務所に仕立てた部屋に呼んだカンパイとブックは、いつものように言葉巧みに相手を引っ掛けようとするが、その時、相手の社員立川に電話がかかって来る。

それに出た立川が、社長が契約を心配して…、最近手の込んだ詐欺が流行ってますので…と席に戻って来ると急に慎重になったので、それを聞いた部長役のブックは、詐欺とは何です!と席を立ち上がって怒りだす。

そこへ、おっす!と乱入して来たのがケン坊で、慌てたカンパイはケン坊を抱えて部屋を出て行く。

すると、挨拶屋が、下曽根先生が偉いこっちゃ!とお電話ですと部長役のブックに知らせに来る。

ブックは部屋の電話を取り上げると、下曽根君はいるか!と言いながら、娘のユリを呼び出すと、電話の先のユリは、ケン坊が見えんのやけど…と言い、父ちゃん、今度捕まったら刑務所行きやで!と心配する。

隣の部屋では、印鑑屋が、テープに吹き込んだ電話音などを相手に、いかにも社員が仕事をしているような一人芝居をしていたが、トイレの掃除人が用具室を開けると、そこに閉じ込められていたケン坊が、モップを持って隣の部屋に乱入して来る。

そして、モップで印鑑屋の頭を殴ると、カンパイたちが四菱電気を相手に商談をしていた部屋との仕切りのガラス窓を次々に割り始める。

さらに、隣室から扉を開け入って来たケン坊は、お父ちゃん、これ玩具やろ?と言いながら、電話の偽ベルを鳴らしていた機械を持って来る。

それを見て驚いた四菱電気の立川たちは逃げ帰り、残ったカンパイは、このガキゃ!と怒鳴りつけるがもう手遅れだった。

空き地にやって来た挨拶屋たちは、仕事が失敗し、どないします?とカンパイに聞く。

ケン坊はのんきに、不発弾の上に乗って紙飛行機を飛ばしたりしている。

養護施設をもう一度考えるか…とカンパイは思いつきを口にするが、その時、ガキがいるうちは仲間外させてもらうぜと印鑑屋が言って去って行く。

窮地に陥って黙り込んだ仲間達に、方法はある!あるで、たった一つ!と挨拶屋が言いだす。

その内容に感づいたブックは、やめんかい、そんな事考えるのは!と止めたその瞬間、今まで踏んでも蹴っても無反応だった不発弾が突然大爆発を起こす。

上に乗って遊んでいたケン坊の靴が降って来る。

区役所の区民課に乗り込んだカンパイは、24年も空き地に爆弾を放置した責任は誰が取るんや!と訴えるが、職員は警察ですとあっさり言うので、B-29が落としたんやろが!アメリカにも責任がある言うんやったら、戦争を始めたのは国や!国の責任は誰が取るんや!とカンパイは怒鳴りまくる。

すると庶務課に回されるが、庶務課の職員(坊屋三郎)も秘書課に行ってくれと言うだけで、秘書課に行くと区民課へとたらい回しにされてしまう。

しかし、区民課は、前例がありませんと言うだけなので、もっと血の通うた返事をせい!と言うと、見舞金の事など聞かれたので、見舞金?そんなもん欲しゅうて来たんやない!わいをきりきり舞いさせたケン坊が何でこないな目に遭わんといかんのや!もう良い!と神尾愛は癇癪を起こす。

そして表に停まっていたバキュームカーのホースを引っ張って区役所内に戻ると、てめえら!糞でも浴びて、ど頭洗い直せ!と怒鳴りながら区民課の中に糞尿を噴出する。

その後、雨降る中、大きな穴が空いた爆発跡にやって来たカンパイは、濡れるのも構わずその場にしゃがみ込み塞いでいた。

そこにやって来たブックは、カンパイはん、あんた、区役所でえらい暴れはったんやね…と慰めるように話しかけて来る。

分からん…、全く分からん…と乾杯がつぶやくので、運が悪かったんや…とブックは言うが、わいはほっとしたわ、巧い事カタ付いたと思うたわ…、これからは女に気をつけましょう…と印鑑屋は言う。

その時、畜生!あいつの母ちゃん、どこのどいつや!と言いながら立ち上がった乾杯は、仲間を残して雨の中道路に飛び出して行く。

病院に戻ったカンパイは、ケン坊の棺が区役所の車で運び去られるのに気づき、おい!どこに持って行くんや!と叫びながら、車の後を追いかける。

途中、四つ角で横から走って来た車に引かれそうになりその場で転んだカンパイは、畜生!ガキ泥棒!ケン坊!堪忍や!と叫ぶ。

その後、ストリップ小屋の楽屋にいたユリを訪ねたカンパイは、ごんたくれの親分、ケン坊の母ちゃん、まだ分からんの?と聞いて来たユリに、好きや!と言いながらむしゃぶりついて行く。

何すんのや!気狂うたんか!と抵抗していたユリだったが、あんまりカンパイがむしゃぶりついてくるので、自らベッドの上に大の字に寝ると、どないでもせい!と開き直り、そやけど、インポにできるのか!と言い放つ。

それを聞いたカンパイは、はっと我に返ったようになり、そうや!わい、インポやったんや!インポやったんやと言いながら笑い出す。

そんなカンパイを見たユリは、頭、おかしゅうなったんと違うか?とバカにして来る。

爆弾なんて爆発せんと思うて…、そいで狂うたんや… 空襲でも死ななんだ…、戦後の闇市で銭儲かった…、20歳にならん男がぼろ儲けした… それから狂うてしもうたんや… いつまで戦争はつきまとうんや!24年も経ったのに…、わいは頭がおかしゅうなっていたんや…とつぶやくカンパイに、そんな難しい30男おらんで…とユリは呆れる。

そこにやって来た挨拶屋が、サツがみんなの家にやって来た!と教えたので、伊丹空港で落ち合うんや!と言いながらカンパイは出て行こうとするが、何でうちにあんなことやったんや?とユリが聞くと、魔が差したんや!とカンパイは言い残して行く。

ユリはその背中に、父ちゃんに言うたれ、このアホンダラ!とユリも捨て台詞を投げかける。

とあるホテルにやって来たカンパイは、別室から出て来た八重ちゃんにばったり会う。

八重ちゃんは、子供しばらく預かっといて!堪忍な…と恥ずかしそうに言うので、八重ちゃんの子供やったのか…と、ケン坊の母親を知ったカンパイは驚く。

その時、八重ちゃんの背後から外国人が出て来て、他の部屋から出て来たカップルと一緒に立ち去ってゆく。

八重ちゃんは、お暇だったらテレフォンちょうだいと言い残したので、その言葉遣いから高級コールガールだった事に気づく。

遠ざかって行く八重ちゃんに向かい、八重ちゃん!ケン坊はわいが立派に育てるで!あの子は良い子や!とカンパイは自分に言い聞かせるように言う。

その後、伊丹空港にやって来たカンパイと挨拶屋は、空港内でサツに追いかけられていた他の仲間達と合流し、一緒に空港から外へ逃げ出す。

ビルの上に逃げていた挨拶屋は、足を滑らせ、下に停めてあったトッラクの荷台の上に落下する。 そこには無数の豚の顔が積んであった。

葬式屋は、川に追い込まれ、そこに浮かんでいた丸太の上に乗って曲乗りのようになった直後、川に落下し、わいは泳げないんじゃ!と助けを求める。

伴淳は建設途中のビル現場の階段を上り詰め、何でこんなに高くするんだ!と息を切らせる。

印鑑屋は引き込み線に逃げ込むが、足を切り替えた線路に挟まれてしまい、そこに貨物車が接近して来る。

轢かれる直前の間一髪、靴を脱いで線路から逃れた印鑑屋だったが、駆けつけた警察にあえなく逮捕されてしまう。

カンパイはセスナ機に乗って空へ逃亡していた。 窓から大量の札束を空中に撒きながら、ケン坊!わい、腹ん中、煮えくり返っとるんや! 世の中、けったいな話ばかり! 金はいらん、これから暴れるで〜! 暴れるのは全学連だけやない! わいのゲバ棒も捨てたもんやない! どでかい詐欺、やらかすんや!ゲリラやったるで! そう叫んでいたカンパイは、人のやれない事をやれ〜♩と歌い始める。

すると、どこからともなく、頑張ってや!と呼びかけるケン坊の声が聞こえて来る。

セスナの眼下には、どこまでも町並みが続いていた。
 


 

 

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