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フランキーの宇宙人

劇中で博士役を演じている菅井一郎さん自身が監督した作品。

作品冒頭でも語られているように、50年代の海外では円盤ブームがあったらしく何本もの宇宙映画、円盤映画が作られている。

日本でも、1956年に大映が「宇宙人東京に現わる」、本作が作られた1957年には、東宝で「地球防衛軍」、新東宝では「スーパー・ジャイアンツ」などが作られている。

本作は純粋なSFというよりも、SF風「社会風刺コメディ」ともいうべき内容なのだが、空飛ぶ円盤始め、SF風小道具や特撮はふんだんに登場しており、SFマニアが見ても十分見ごたえはある。

主人公達が地球以外の惑星へ行き、そこの様子が描かれるのは、日本映画では本作が最初ではないだろうか。

美術セットなどには、どことなく「宇宙水爆戦」(1955)や「禁断の惑星」(1956)などの影響がうかがえたりする。

一人の人間の細胞から、いくらでも同じ人間を作る事ができるなどと、今のクローン技術と同じような事をすでに説明しているのにも驚かされる。

フランキー国の女性たちもみんなフランキーと同じクローン顔と言うアイデアは、後の「怪獣大戦争」のX星人の女性たちが、全員、水野久美であると言うアイデアの元になっているのではないだろうか?

又、新興のテレビに対する批判も含まれているのが興味深い。

一応、原水爆実験への警鐘みたいなメッセージも読み取れるが、これは「世界から戦争をなくしましょう」と言った類いの当時良くある「きれいごとテーマ」と云った印象で、むしろ国内の社会風刺、マスコミ風刺的な色合いの方が濃いような気がする。

悪役イメージが強い安倍徹さんが、こうしたコメディに出ていると言うのも貴重な気がする。

顔がすすで真っ黒になったり、ミニスカートが付いた珍妙な宇宙服を着たり…とコントみたいなことをやっている。

おそらくこの当時の安倍さんは二枚目としての認識だったのではないだろうか。

また、この当時は、月の世界もまだ手の届かぬ夢の世界と言った感じで、呼吸できる程度の空気がある説などがまことしやかに紹介されているのが興味深い。

空飛ぶ円盤は、アニメとミニチュア技法の併用と言った感じ。

フランキーさん扮する人工衛星人が同時に複数画面に登場する場面は、合成とスタンドインの併用である。

しかし、この作品で何よりも驚かされるのは、劇中で披露されるドラマーとしてのフランキー堺の本物のテクニックである。

どんな奇想天外な空想要素も、この本物の才能の前では色褪せてしまうような気がする。

ラストのエピソードは、直前までの夢の続きとも解釈できるし、現実でのエピソードとも解釈できる。

劇中ギャグは永六輔さんらが担当しているのだが、喜劇としての完成度云々という前に、ただただ、1人何役もこなしているフランキー堺の多才振りに驚かされる一編になっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1957年、日活、キノトール原案、棚田吾郎脚本、菅井一郎監督作品。

宇宙空間に突如出現した空飛ぶ円盤

1947年6月24日、アメリカのアイダホ州で最初の空飛ぶ円盤が目撃されて以来、ヨーロッパ各国でも頻繁に円盤の発見例が続くようになる。

さて、我が文化国家日本では?(とナレーション)

木下博士(菅井一郎)の新発明、光波エネルギーで飛ぶ宇宙ロケットの実験が海岸で執り行なわれようとしていた。

人類2000年来の夢、宇宙ロケット! これは、ドイツのオイゼンゲガー博士の理論を改良したもので、反陽子を人工的にぶつけて物質を光のエネルギーにするものである!

これが完成すれば全人類を幸福にもするが、悪用すれば人類の破滅に繋がるのであります。

ここにピカ1号と名付けましょうと挨拶を下木下博士は、本書に報告!スタートしよう!と娘の愛子(高友子)に命じ、テント内に置かれた装置のカウントダウンを始める。

浜辺に集まった夕陽新聞社会部の安部(安部徹)を始め、マスコミ各社と野次馬を前に発射ボタンが押した木下博士だったが、小型ロケットは発射台の上からぽろりと砂浜に力なく落ちてしまう。

実験は見事に失敗。

予算が足りなかった!と嘆く木下博士。

誠に残念だった…(とナレーション)

宇宙空間に浮かぶ円盤が、「宙」のうかんむりの下の部分に変化しタイトル 一方、ここに一人の青年がいた。

名前は境田栄(フランキー堺)、宇宙に異常な興味を抱いている煙突衛生夫(煙突掃除屋)である。

今日も高井煙突店の仲間A(花村典克)と仲間B(光沢でんすけ)の二人が部屋で将棋をさしているのに、境田一人は物干台で望遠鏡から目を離さない。

月の世界か…、行ってみたいな~…、見渡す限り灰色の世界と言うけれど、そこには多分女の子がたくさんいるんだろうな~…、男はいないんだろうなどと1人でぶつぶつ言っていると、そんな柄かい!と将棋を指していた仲間が声をかけ、でも、付きに行って帰って来るとモテるだろうな~…、南極探検の比じゃないよ…などと混ぜっ返して来る。

その直後、流星を目にした境田は、望遠鏡をのぞきながら後ずさり物干台から落下してしまったので、将棋を指していた2人は驚いて、下に降りて行く。

物置のトタン屋根を突き破り、地面に逆さまに落ちて気を失っていた境田を、死んでるらしいなどと言いながら2人が揺すってみると、気がついた境田は、緑色の円盤を見ましたか?天文台でもきっと見たはずです!などと興奮しながら話し出す。

しかしその直後、物置のトタン屋根から落ちて来た金属パイプが境田の頭を直撃する。

木下宇宙研究所と書かれた天文台では、木下博士が愛子を呼び、又例の円盤だ。

目撃時間は7時49分。

夕陽新聞の安倍君にも知らせてくれと頼む。 生温い記事ばかりではダメだ!などと星野編集長(清水将夫)が記者たちに発破をかけていた夕陽新聞社会部編集室の安部は、東京上空に円盤出現との電話を愛子から受け、推定処理20km、推定直径130m!などとメモを取り、空飛ぶ円盤東京上空に現る!世界的な特ダネだ!などと大声を上げながら窓から外を見るが、星野編集長は、例のロケットの博士だろう?木下博士は実験に失敗して気が変になったんだなどと始めからバカにしているような態度で相手にしてくれない。

結局、その円盤騒ぎは地上光線の暖冬気温による屈折だったと夕陽新聞に載ってしまう。

その記事を読んだ高井煙突店の仲間Aが、その新聞を仕事に出かけようとしていた境田に見せる。

同じく、天文台でその記事を読んだ木下博士も、空飛ぶ円盤を興味本位で見ているのは日本だけだ!アメリカやヨーロッパでは真面目に研究しているのにと憤慨していた。

天文台にやって来た安倍は、あれは僕が書いた記事じゃないんですと必死に弁解する。

しかし木下博士は、例のロケットの博士とは何だ!と怒りは収まらなかった。

空飛ぶ円盤がいないとどうして言い切れる!宇宙には人間が住める星が何万もあると言われているんだ! 月にも呼吸できる程度の空気があると言う説すらある!と木下博士が捲し上げるので、1953年ハーバード大学のシェープリー教授の説ですね!などと、相づちを打ちながら部屋に入って来たのは境田だった。

君は誰だ?と突然の闖入者に驚いた安倍が聞くと、自分は見たんです!夕べ、博士が見た空飛ぶ円盤を!と境田が答えたので、そら見たまえ!と木下博士は安倍に詰め寄る。

先生!自分はいつでも証人になります!自分は煙突衛生夫ですと境田が自己紹介すると、そう、煙突屋さんなの…と愛子はうれしそうに答える。

境田は、先生をお慰めするために煙突を掃除させていただきますと申し出、勝手に外から屋根の昇って作業を始める。

一方、安倍と別の部屋に来た愛子は、あんな風に書かれたら、父も科学者として可哀想だわと抗議し、私、科学者の所へお嫁さんに行かない!などと言い出す。

すると安倍は、じゃあ新聞記者は?新婚旅行は光波ロケットで月の世界へ!などと誘いかけたので、いい気なものね…と愛子は呆れ、安倍は帰ることにする。

天文台の外に出た安倍は、屋根で煙突掃除をしていた境田が落としたすすが頭からかかったので、何をしとるんだ!と上に向かって怒るが、すみませんと頭を下げて謝ろうとした境田は、持っていた煙突の中につまったすすをさらに落としてしまう。

真っ黒になって視界を失った安倍は、側に置いてあった境田の自転車に躓き転倒してしまい、この馬鹿者!これどうしてくれるんだ!と逆上する。

はしごを下りて来た境田は、懸命に安倍の顔や服に付いたすすを拭ってやろうとするが、かえってすすを塗り固めてしまう始末。

そこに出て来た愛子が境田の顔の汚れに気づきハンカチを渡すと、横に立っていた真っ黒けの安倍にも気づき、顔を洗って行きなさいと勧めるが、憤慨した安倍はそのまま帰ってしまう。

そこに木下博士もやって来たので、月世界に旅行できるようになれるのでしょうか?と境田が聞くと、月世界か…、月には行ってみたいね…と木下博士もつぶやく。

夜、車を運転し帰っていた安倍は、突然車の前方に空飛ぶ円盤が出現したので、慌てて車を停め、後から近づいて来た車を止め、今、光る円盤を見なかったか?と聞くが、運転していた日本人の女連れの外国人は、ノーと言い、さっさと走り去ってしまう。

車に戻った安倍だったが、またしても円盤が出現したので、後部座席に積んでいたカメラを取り、円盤が飛んで行った方向へ走って向かう。

草原の中を進むうちに小川に落ちてしまった安倍だったが、やがて着陸している円盤から誰かが降り立ったのを目撃、近づこうとすると、円盤は突然縮小して消え去ってしまい、何者かが組み付いて来て、安倍を投げ飛ばすと逃げ去って行く。

立ち上がった安倍は、カメラが壊れてしまったことに気づくが、その破片を見ているうちに、小さな灰皿を二枚貼り合わせたような小さな円盤のようなものを発見する。

その小さな円盤のようなものと不鮮明にしか撮れなかった宇宙人の写真を持って夕陽新聞社に戻った安倍だったが、星野編集長は、そんな灰皿が円盤だと言うのかね!とはなから馬鹿にして来たので、きっと本物を探してみせます!後になって慌てるな!と安倍は言い返す。

木下博士にその小さな円盤のようなものと不鮮明な宇宙人の写真を見せに行った安倍は、これは人工衛星人によって区つられたもので、日本で発見されたのは5枚目だよ、シラノ・ド・ベルジュラックの時代からあるんだと聞き、では5人の人工衛星人がいると言うことですか!と驚く。

見つかったのは日本の四カ所だ、仙台、東京、大阪、長崎…と木下博士が云うので、何の目的で日本へ来たのだろう?と安倍は首を傾げる。

不鮮明な写真を見た愛子は、東京フランK劇場に出ているフランキー堺と云うドラム叩きに似てるわ!と指摘する。

さっそく写真を持って、東京フランK劇場に出演中のフランキー堺に会いに行った安倍だったが、これが僕?人工衛星人なの?とフランキーは写真を見ながらとぼけ、一緒にいた愛人の艶子(藤代鮎子)も、私たち、昨日ずっと一緒だったのよなどと口を出して来る。

すると君は…と安倍が艶子のことを確認しようとすると、フランキーのことなら彼自身より知ってるくらいよなどと艶子は自慢する。

そこへ、後2分!と進行係が声をかけて来たので、フランキーは舞台に出て行く。

劇場を出た安倍は、すぐ目の前の路上を縦一列に並んで歩いて行く、「プラタン製薬」のプラカードを持った宇宙服姿の3人のサンドイッチマンがフランキーに似ていることに気づき、後を付けると、後ろから1人ずつ宇宙マスクを脱がせて行く。

しかし、中から出て来た顔(柳谷寛ら)はフランキーとは似ても似つかぬ男たちだった。

がっかりしてサンドイッチマンを見送った安倍だったが、手に持っていたマッチに貼られた紙に「仙台、東京、大阪、長崎」と言う文字を見て、そうだ!と気がつく。

その日から、安部は飛行機に乗って羽田を飛び立つ。

木下博士の家の屋根の煙突掃除をしていた境田は、どこからともなくきれいな女性の歌声が聞こえて来たことに気づく。

自転車に乗って買い物に出かけるらしき愛子の声だと気づいた境田は、自分も仕事を切り上げ、道具を積んだ自転車で後を追うと、お嬢さん、お使いですか?歌がお上手ですね?と声をかける。

すると愛子は、私、声楽家になりたかったのと言うので、僕も歌は大好きですと答えた境田は、五木の子守唄を頓狂な声で歌い始める。

それを聞いた愛子は、面白い人ね…と笑うが、そこで天文台を訪ねて来た安部と出会ったので、いつおかえりになったの?と聞く。

昨日と安倍は答えるが、愛子は、後でお伺いするわと言い残し、境だとともに自転車で去って行くが、その際、また、境田の自転車の後ろに積んでいた煙突掃除用のブラシが安倍の顔をかすめ、安倍の顔にすすが付く。

天文台に着いた安倍は、自分が仙台、東京、大阪、長崎の各都市にいた同じような顔をした人物の写真を木下博士に披露する。

仙台にいた世界平和教教祖蘭木蘭平(フランキー堺)、大阪にいたジプシー舞踊のフラメンコ坂木(フランキー堺)、長崎にいた中国古代医学博士フー・ラン・キー(フランキー堺)、みんなドラマーのフランキー堺に似ているだけではなく、名前にも「フ」「ラン」「キー」が含まれると言う共通点があった。

編集長をぎゃふんと言わせたかったんです。例の太鼓叩きをもう一度探るつもりですと安倍は言う。

再び「フランK劇場」へ向かった安倍は、舞台袖から、ティンパニーの上に乗って演技していたフランキーの様子を監視していた。

その時、妙な帽子をかぶり、マントを付け、口ひげを生やしたフランキーそっくりの男がやって来たことに気づき、後を付けると、フランキーの楽屋に入って行くではないか。

その部屋の前に立ち、中の音を聞こうと耳を澄ました安倍に聞こえて来たのは、「F2号「異常なし」「長崎F3剛、記者行くよ、警戒せよ」と言う無線の声と、承知、承知とそれに答えるフランキー似の密一号(フランキー堺)の声だった。

その時、艶子と連れ立ったフランキーが戻って来たので、安倍は身を隠す。

楽屋に入ったフランキーは、そこにいたじぶんそっくりな口ひげの蜜1号に、東京へ全部お呼びになったので?と聞く。

例の在処が分かったと蜜1号が言うので、ピカ1号が?とフランキーは驚く。

F3号が、夕陽新聞の記者に警戒するよう報告して来たと蜜1号が言うと、承知、承知!とフランキーは答える。

その時、ノックの音が下ので、入り口の所にいたフランキーがドアを開けると、安倍が中の様子をうかがいながら入って来る。

しかし、部屋の中にはフランキーの姿しかいなかったので、どこへ隠したんだ!君たちが人工衛星人であることは分かっているんだ!と言いながら安倍は部屋中を探しまわる。

やがて、そんな安倍の目の前に蜜1号が出現! フランキーと蜜1号が楽屋を抜け出し逃走した直後、楽屋を訪ねて来たのが艶子で、部屋の中に、巨大な面をかぶった男が椅子に座らせられて気絶しているのを発見し、大変よ!助けて!と騒ぎ出す。

その時、気がついた安倍が頭にかぶせられていた抽象画の書かれた巨大な面を外し、楽屋の外に飛び出すと、フランキーはどこだ!フランキーが人工衛星人だ!と大声を出しながら辺りを探し始める。

楽屋裏にいた芸人やスタッフたちも辺りを見渡し、階段を上って屋上に上がって行くフランキーと密1号を見つけ、安倍を先頭に後を追う。

屋上に出たフランキーと蜜1号は、そこで練習していた合唱団に気づき、気づかれないように建物の裏側に逃げる。

そこに安倍やスタッフたちが追って出て来たので、合唱団のメンバーたちも追跡劇に加わる。

そんな中、蜜1号は梯子を使い屋上のさらに上に上ろうとするが、フランキーは1人だけ太っているため追跡に遅れていた合唱団員とぶつかり、その後、蜜1号を追って梯子を上っている所も、遅れて来たデブ女に発見されてしまう。

デブ女が騒いだので、すぐに梯子の下に駆けつけた安倍は自分も上に上るが、最屋上にいた蜜1号とフランキーは、灰皿サイズの円盤を一気に巨大化させ、それに乗って飛び去ってしまう。

東京上空に出現した空飛ぶ円盤に、都民たちが驚いて見上げる。

畜生!惜しいことをした!特ダネ逃がした!と後一歩の所まで追いつめていた安倍は悔しがる。

その時、安倍は最上階の煙突掃除をしていた境田に気づき、こら!化けやがって、降りて来い!宇宙人がいた!引き摺り下ろしてやる!と大声を張り出す。

仕事中だった境田は、突然安倍に怒鳴りつけられ、何事かと戸惑うが、わけも分からないうちに捕まってしまう。

「フランキー堺は宇宙人」「煙突掃除夫が人口衛星人」「スパイか?友好か?」などと新聞が書き立てる。

境田は、科学者たちから徹底した身体検査を受ける。 艶子にも新聞記者が取材で殺到する。

木下博士も取材を受け、東京のど真ん中に、真っ昼間から空飛ぶ円盤が出現するとは!地球上の人類にとって由々しき問題だと答える。

やがて、人工衛星人と疑われた境田を取り調べるための法廷が設けられる。

裁判長(浜村純)が、証人として前に立った境田に、君が地球上の日本生まれだと証明できますか?と聞くと、いえ、生まれは台湾ですと境田は答える。

では台湾人なのですか?と裁判長が聞くと、いえ日本人ですと言うので、では本籍は日本ですか?と裁判長が聞くと、本籍は朝鮮です。育ったのは広東ですなどと境田が答えるので、裁判長は面食らう。

続いて証人として呼ばれた高井煙突店の仲間AとBは、境田の仕事着を見せられ、確かに境田のですと答えた後、いつも月の世界へ帰りたい、帰りたいと言ってました。地球上に身寄りはいないとも言っていましたなどと証言する。

その時、裁判長は、隣の外国人裁判官が望遠鏡で女性の足を覗いていることに気づく、自分もその望遠鏡を奪い取り室内を覗いてみるが、見えたのは男の汚いすね毛であった。

続いて呼ばれたのは艶子で、あなたはフランキー堺とは恋愛関係であるらしいが、そこにいる男は境田栄と名乗っているが…と裁判長が聞くと、私には分かるわと艶子が言うので、どう言う点で?と聞くと、もう2年も一緒にあれしてるんですもの…と艶子は訳あり気ににやつきながら答える。

人工衛星人と断定されるが、その証拠は?と裁判長が聞くと、だって…、私…、嫌だわ…、この人ね、とっても変なのとこあるのよ、夜…、あら嫌だ!と艶子は自分で言って自分で恥ずかしがる。

人工衛星人対策委員会では、人類の威信にかけて真相を究明することになる。 天文台に来た安倍は、今回のことで編集長を三拝九拝させたので溜飲が下がった訳ですと愉快そうに木下博士と愛子に報告していた。

今に尻尾を出します!と安倍は境田が人工衛星人と信じて疑わなかった。

その時、安倍が円盤が飛び立った屋上で拾ったマイクのようなものから、F1!F2!F3!例の場所に集まれ!と言う声が聞こえて来る。

それを聞いた安倍は、博士、これで人工衛星人が4人いることが分かりますとうれしそうに話していると、愛子がかかって来た電話の受話器を安倍に手渡す。

電話を聞いた安倍は、境田が釈放!そんな馬鹿な!と叫ぶと、これをお預かりしますとマイクを手に取り、夕陽新聞へ戻る。

星野編集長は、境田の釈放は国連の決定だ、特に害はなさそうだと言う理由だと言うので、いっそのこと、奴をかっさらって本社で独占といきますか?と安倍は言い出す。

すぐさま安倍、星野は艶子とテーブルクロスを頭からかぶせて正体を周囲に見せないようにした境田を連れて、山王ホテルにやって来る。

部屋に入り、テーブルクロスを取ってやった安倍は、僕たちは日本人として君に悪いイメージを持たれたくないと境田に話しかける。

夕陽新聞だけに情報を話してもらえば良いんだと聞いた境田だったが、困ります…、そんなこと言われても…と困惑しているので、君の国、人工衛星人には迷惑かけないから…と安倍は説得する。

違いますです!と境田は自分は人工衛星人ではないと否定するが、独占契約してくれれば月100万!…いや115万出そう!と星野編集長が言うと、その金額に仰天した境田は気絶してしまう。

それを見た安倍は、人工衛星人にもて○かん持ちがあるのかな?とつぶやく。 境田をベッドに寝かせた艶子は、契約は私が代行するわ…、115万じゃ安すぎない?と言い出したので、星野編集長は150万出そう…、152万!と少しずつ値上げするが、500万よ!と吹っかけた艶子は、少し休ませて頂戴よと命じる。

安倍と星野が部屋を出て行くと、度胸がないわね、115万くらいでひっくり返ってと気がついた境田に文句を言う。

僕は人工衛星人じゃないんですと境田が言うと、分かってるわよ、そんなこと!500万入るのよ! 誰も人工衛星人なんて知らないんだから…、あんた、一生、煙突掃除やって行くつもりなの?好きな女の人だっているんでしょう?と艶子が言うので、一瞬言葉に詰まった境田だったが、いません…とか細い声で答える。 私がなってやろうか?と艶子が言うと、境田は恥ずかしがり、自分でテーブルクロスを頭からかぶってしまう。

疑ってるの?私、証拠見せてあげると言った艶子は、テーブルクロスの一部をめくって自分も顔を突っ込みキスをしてやる。

すると、又、境田は気絶したので、良くひっくり返る男ね…と呆れながら、艶子は部屋にあった水差しの水を顔にかけようとする。

しかし、すぐに目覚めた境田は、決心しましたです!と答えたので、言うこと効くのね?あんたは人工衛星人になるのよと言いながら、再び艶子はキスをしたので、境田はまた気絶する。

人工衛星人を演じることにした境田は、一躍マスコミの寵児となり、パレードや野球の始球式、船の進水式などに駆り出され、みな人工衛星人の生態記録として残されて行く。

そんな境田のニュースを映画館で見ていたのは、あの蜜1号だった。 その後、ホテルにやって来た安倍は、蜜1号から境田に届いた「偽人工衛星人 1人で今夜21時日比谷モータープールへ来れ 蜜1号」と言うメッセージを読む。

艶子は、これまでの記事がみんなねつ造だとばれるかもしれないと怯える星野編集長に、編集長さん、首だけじゃすまないわよと脅す。

考えていた安倍は、これまでの記事は、本物の人工衛星人をおびき寄せるためだったと言うのはどうでしょう?と提案し、星野もそれに乗ることにする。

艶子は怯える境田に、私のためにやってちょうだい、私は勇気のある男が好きよと説得し、星野も暗い所に入っても良いのか?詐欺で捕まりたいのか?などと嚇し付ける。

安倍は宇宙人が落として行ったマイクを境田に渡し、境田はその夜、日比谷モータープールへやって来る。

すると、何台も停まっていた車の中の1台から、蜜1号が出て来て乗るように勧める。 車の中には、F1、F2、F3、フランキー堺らが既に乗り込んでいた。

境田が車に乗り込むと、私たちと同じような顔をしているが、君は何者かね?いつから地球にいるのかね?と蜜1号が効くので、ずっと…と境田は答える。

君は同士F4号を助けた行為は称賛に値する。 我々には尊い指命がある。

ピカ1号を奪って原水爆として使用させないようにするのだ。 君たちは狭い日本に5人もいて何をやっとるんだ!と蜜1号は、F1号らを叱りつける。

木下博士の研究は、予算の不足がなければとっくに完成していたはずだ。

今、某国が狙っている。 君には博士の所へ行ってもらうと蜜1号は境田に頼むが、その声は、境田が持っていたマイクを通じ、安倍たちに届いていた。

巧くやれ!ピカ1を確認したら連絡せよと蜜1号は境田に命じ、車から降ろされる。

木下宇宙研究所に着いた境田は、車が停まっており、天文台からトランクのようなものを車の後部トランクに詰めている見知らぬ外国人の姿を目撃する。

草むらから見張っていた境田は、博士とお嬢さんが連れて行かれます!とマイクで安倍たちに報告する。

木下博士は、突然天文台にやって来たベレー帽をかぶった外国人に、君たちの狙いは分かっとる!日本人を見くびるな!と抵抗していたが、愛子と共に車の所へ連れて来られる。

境田は、何とか、後部座席からトランクを取り上げようとするが重くて持ち上がらない。

そこに天文台から外国人と木下博士らが近づいて来たので、慌てて車の下に潜り込んで身を隠す。

車に乗せられた木下博士は、トランクはどこへやった?激震を与えてはいかん!と注意するが、確認に行った部下たちは、後部トランクに入れははずのトランクがなくなっていることに気づく。

それを知った外国人ボスも降りて後部トランク内を探すが見当たらない。

周囲を見渡すと、自転車の後ろにトランクを積み逃げている境田の姿を発見する。

ピカ1号を取ってきました!安倍さん!助けてください!とマイクに呼びかける境田。

ホテルで状況を把握した安倍は、急ぎましょう!と星野編集長と艶子に呼びかけ、出かける。

境田は、脇道にそれると、側にあった工事用通行止めで道を塞ごうとしていたが、そこに、安倍らが乗った車が反対方向からやって来る。

境田を見つけた安倍と星野は、急いでトランクを持って近くの草むらに身を隠す。

そこに通りかかった外国人たちは、工事用の柵を越え、安倍たちが乗っていた車が停まっているのに気づき中をのぞく。

中に乗っていた艶子は、一緒に乗っていた境田の顔を隠すようにキスをし始めたので、外国人は、エクスキューズミーと断って、その場を立ち去る。

その直後、草むらから出て来た星野編集長が、接近して来る別の車を見つけ、あれ、何だ?と聞く。

それは、蜜1号ら人工衛星人が乗った車だった。 木下博士と愛子は、外国人たちの車を降ろされ解放されていた。

その木下博士に近づいた蜜1号は、木下博士、ピカ1号をお預かりにきましたと言う。

博士が奪われたと言うと、存じていますと蜜1号は答える。

そこに安倍と境田も近づいて来てピカ1号は安心ですと教える。 星野編集長は、先生、人工衛星人に地球を占拠されるのでは?と不安を口にするが、私は、地球や太陽系が破壊されるのを恐れていると蜜1号は言う。

そんな蜜1号に、グズグス言わず、例の皿を広げて衛星国へ案内しろと安倍は迫る。 木下博士も、私を人工衛星国へ連れて行ってくれと頼む。

星野編集長は安倍に、人類の大特ダネのため行ってくれと頼み、艶子も境田に、私、勇気がある人が好きよと言うので、境田はピカ1号を蜜1号に渡す。

愛子は父に、万一の事があったら…と引き止めようとするが、私は科学者だ、行かしてくれと木下博士は説得する。

愛子は諦め、境田に、お父様をお願いしますと託す。

かくして、境田、安倍、艶子、木下博士は、巨大化した空飛ぶ円盤に乗り込み、円盤は出発する。

地上から手を振ってそれを見送る愛子と星野編集長。

やっと静かになった…、偽り、裏切り、乱暴店、何と地球とは派手なことよ…と嘆きながら、ハンドルを操作する蜜1号 やがて円盤は月を通過する。

35秒で25万キロ飛んで来た!と木下博士は感心する。 一緒に並んで椅子に腰掛けていた安倍は、このまま静かにしていた方が良いかな?とつぶやく。

やがて、彼らゲスト4人の身体が透明になり、月の横を通過する。

今、雪が振っている。透明の地域も過ぎた、諸君、起きたまえと蜜1号が指示したので、境田たちは椅子を立ち上がるが、その時、四人ともミニスカートが付いた珍妙な衣装を着ていることに気づく。

やがて、正面にフランキー衛星国が見えて来るが、それを見た艶子は、ちっぽけな星ねと思わず口走る。

地球にあるものは何でもあると蜜1号は言うが、フランキー国に到着し、テレビ局に出演した4人は、ここには自然がなく、人間は全て単一で男女とも同じ顔をしていることを聞かされる。

4人には、フランキー国の土産が紹介される。

宇宙わさび漬け、フランキー饅頭、宇宙タオルに、名酒「宇宙正宗」… さらに、人工衛星国国定公園の絵はがきも見せられる。

ピラミッドの前にナイアガラの滝が写っていたり、エンパイアステートビルトエッフェル塔が一緒に写っている写真だった。

そんなありきたりのものを見せられた艶子は、もっと面白いものはないの?と言うので、テレビでは、男女の人工衛星人による歌謡曲が始まる。

2人ともフランキー堺と同じ顔であった。 次に、宇宙太郎の朝から夜までと言う紹介ビデオが始まる。

7時に起床した衛星人は、電話の受話器型のひげ剃りでひげを剃ると、大根を洗濯機型の調理器に投げ込み、たった1個のカプセル料理を取り出すと、それを朝食にする。

それでカロリーは十分で一ヶ月は保証されていると言う。

その後出勤した先は、「赤ん坊製造会社」フランキーそっくりの赤ん坊にミルクを与える様子が映し出されるが、それを見ていた安倍は、安っぽいテレビ映画は止めろ!と文句を言う。

テレビ文化は当てにならんな、酷い!と酷評する安倍。 TV画面には、いつの間にかコーンパイプをくわえている赤ん坊の映像がうるっていた。

そんな4人の前に、顔をベールで覆った男女のダンサーたちがやって来て踊りを披露し出す。

男性が女性をもてなすのは、何処も同じと見える… 艶子に、男性ダンサーたちが集まる。

安倍君は衛星国の女性を虜にしたようである。(とナレーション)

老いたりとは言え、木下博士も男性である。 安倍は、自分に近づいて来た女性ダンサーの顔のベールをちょっと取ってみると、やはりフランキーと同じ顔だった。

いつしか境田だけを残し、ダンサーたちに誘われ、他の3人は部屋を出て行ってしまう。

境田は、人工衛星人と同じ顔だったので全然モテなかったのである。

すぐに、木下博士が戻って来て」、僕は研究の徒だ、早く研究をしたいと言い、境田と二人でユートピアへ。

人工衛星人の望遠鏡をのぞいてみた木下博士は、この望遠鏡はパロマ天文台のより数万杯の威力だ!と驚く。

地球だ!東京が見えます!懐かしいな…、議事堂って立派な建物だな…と望遠鏡をのぞいた境田が喜ぶ。

望遠鏡にはデモ隊と警官隊の乱闘が写っていた。(犬と猫の鳴き声が重なる)

やがて、自分の仕事道具である、煙突掃除用のブラシを誰かが持って行くのを見つける。

それは、天文台に残っていた愛子だった。 お嬢さ~ん!と呼びかける境田。

その言葉が聞こえたはずもないのだが、何かに気づいた愛子は振り返り、境田さん?あなたどこにいるの?あなたのいる星はどこ?と周囲を見渡す。

境は望遠鏡に写る愛子に向かい、ここにおりますです!と呼びかける。

その時、笑いながら蜜1号がやって来るが、その時、部屋が揺れる。

地震?と境田は怯えるが、また水爆の実験だよ、地球の人は仕方ない…と蜜1号は嘆くが、地球に帰りたい…と境田が言い出したので、あんな地球に帰りたいのかね?と呆れたように蜜1号が聞く。

帰りたいです…と境田は頷く。 天文台にいた愛子は、どこからか自分の名を呼ぶ声が聞こえたような気がした。

すると、境田が天文台に帰って来たではないか! あら、境田さん!と愛子が驚くと、はい、お嬢さん!と境田もうれしそうに近づく。

待っていたわと愛子が言うので、自分もであります!と境田も答え、2人はしっかりと抱き合う。

その時、望遠鏡用の窓枠に蜜1号が笑って立っていたのに境田は気づく。

蜜1号さん!いつここへ?と境田が聞くと、君より一足遅れて来たと答えた蜜1号は、別の博士がピカ2号を作ったんだよ、それをもらいに来たと言って去って行く。

地球も、あなたがいれば安心ですね…と喜んだ境田は愛子と濃厚なキスをするのであった。

(現実)いつまで、寝ているんだ!いい加減にしろ!と高井煙突店の仲間たちからどやされた境田は、二階から落ちた物置の前で気がつくが、次の瞬間、又鉄パイプが頭を直撃したので、又続きが見られる…と喜びながら、再度気絶してしまう。

ある日、自転車に煙突掃除の道具を積んで仕事に向かっていた境田は、通勤して行く愛子とすれ違う。

お嬢さんだ!と気づいた境田は振り返り、去って行く愛子に、お嬢さん!と呼びかけるが、愛子はその声には気づかなかったようで、近寄って来た安倍と一緒に、うれしそうに立ち去って行く。

それを遮断機が下りかけた踏切内で呆然と眺めていた境田に、踏切の見張り番が、どっちに行きたいんだ!と呼びかけたので、電車が接近していることに気づいた境田は、慌てて遮断機の外へ出ようと焦る。
 


 

 

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