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童貞先生行状記

漱石の「坊ちゃん」や石坂洋次郎作品を連想させる新任教師の奮闘話で、どこかで見たような展開になっている。

後の石原慎太郎原作「青春とは何だ」辺りの原点なのかもしれない。

江戸っ子で短気な新任教師を演じているのがフランキー堺で、その憎めないキャラで女性にモテモテと言う設定になっており、小沢昭一演じる地元ヤクザの関係など、全体的に軽いコメディタッチで描かれている。

校長先生を演じているのは、老け役の北林谷栄さん。

眼鏡をかけた嫌みなインテリ風の教師を演じている高品格さんや、山猿とあだ名されるバンカラ風の教師を演じている河野秋武さん辺りは、ぱっと見、誰なのか分からなかったりする。

主人公を巡る女性達が美人ぞろいなのもパターン通りと言えばそうなのだが、この当時の日活にもきれいな女優さんが揃っていたことが分かる。

劇中で、主人公が、初対面の山猿から太陽族呼ばわりされたので憤慨し、君たちはすぐ都会者と見ると月光族とか太陽族だと言うが…と言っているのだが、月光族と言う言葉は初めて聞いたような気がする。

夜遊びをする一団のことだったのだろうか?

ちなみに、キャストロールの中に「清水まり」さんのお名前があったが、鉄腕アトムの声を担当されていたあの清水マリさんなのか?別人なのか?

当時の年齢からすると女子高生役を演じられても不思議ではない。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1957年、日活、宮下幻一郎原作、柳沢類寿脚色、春原政久監督作品。

切り絵を使ったアニメ技法で、山の中を走る機関車 「長野行」と書かれた行き先表が付いた書き割りの車窓の一つがアップになり、中に乗っていた野々宮普輔(フランキー堺)がスクリーンの方に顔を向け、考えるとこあって童貞を守っています。 信じないって?これからその証拠をお見せします!と言うと、窓の中にタイトル文字が出現

又切り絵のアニメに変わってキャスト、スタッフロール。

ユリ!ダメよ!人が見ているじゃない!と座席でキスをしようと迫る高村青年(加藤博司)に、隣に座った女性が拒否をする。

向かいの席では、雑誌を顔にかけた客がいびきをかいていた。

念のため、男がそっと雑誌を退けてみると、いびきをかいていた野々宮は、目をぱっちり開いていたのでぎょっとする。

しかし、その目の前で手のひらを振ってみても目が動かないので、まぶたを開いたまま寝ているのだろうと判断した男は、再び雑誌を野々宮の顔の上に置き、強引にユリとキスをする。

目を開けたままいびきをかき続けていた野々宮は、自ら雑誌を下に降ろし、いびきをかく真似を続けながらその様子をしっかり見ていた。

軽井沢駅に着いた時、駅には、マミー!と呼びかける外国人の子供達とその父親が迎えに来ていた。

野々宮の隣には、大胆なワンピースを着たサングラスをかけた女性が座り、足を組んでタバコを吸い始める。 野々宮は、その女性の胸元をちらちら覗き見る。

そこにスーちゃんじゃないのよ?デートか?社長に2人の話、しても良いのか?などとからかいながら強引に女と前のカップルの席に割り込んで来たヤクザ風の2人辰公(小沢昭一)と丑公(近江大介)に、思わずそっとの席空いてるでしょう?と隣の席を野々宮が指すと、文句あるのか?来いよ!と2人はデッキ部分へ野々宮を誘う。

スーちゃんと呼ばれた女が制止するが、又会いそうなんで…と言い残し、野々宮はデッキに向かうと、辰公と丑公相手に喧嘩を始める。

相手は意外に弱く、勝負はあっけなく片がつくが、ついデッキ部分に寄りかかろうとした野々宮は、ドアが開きっぱなしだったのでバランスを崩し、そのまま列車の外に振り落とされてしまう。

土手に転がり落ちた野々宮は、列車がそのまま通り過ぎてしまったので、やむなく線路沿いに歩き始め、途中で出会った線路工夫に、小諸までまだありますか?と声をかける。

工夫は、まだかなりあるよと教えると、線路なんか歩いちゃ困るよと注意して来るが、だって電車の切符持っているんだから歩いても良いでしょう?と野々宮が反論すると、これに乗ってけと軌道自転車を勧める。

野々宮は線路工夫と軌道自転車を漕ぎ、小室駅まで何とか到達する。

野々宮は工夫に謝礼としてタバコを箱ごと渡す。

すると、駅には、野宮先生では?と駆け寄って来たスーツ姿の男達がおり、駅の外へ案内しようとするので、荷物は?と野々宮は困惑するが、駅長に頼んでいますと言う。

駅の外に出ると、「歓迎 野々宮先生」と書かれた幕が付けられた乗用車に乗せられるが、後から同情して来たものが多いので、野々宮は反対側のドアから押し出されてしまう。

そのまま車が出発したので、慌てて追いかけて車の後部に飛び乗ってしがみつく野々村。

「原田別館」と言う料亭に連れて来られた野々村は、上座に座らされ、土建屋の成田社長と言う人物から名刺を差し出される。

さらに商工会議所の藤山、観光協会の吉田、聖心女学園のPTA代表宮川(天草四郎)、教頭の山下なども次々に集まって来て挨拶をするので、僕みたいな新米教師にこんなに歓迎していただくとは…と野々宮はすっかり恐縮してしまう。

すると、集まった連中は何をおっしゃいます!大学の先生に見ていただかないと…、聖心女学園の校庭に温泉を掘るためにはなどと言い出すので、敷地に温泉を?と野々宮は話が分からず困惑する。

今計画中と言うことでして、温泉が出たら、女学園を他に移すことになります。今日は懇親会と言うことで、話は明日と言うことにしましょうなどと山下らが言い、芸者を呼び入れる。

そのとき、真っ先に野々宮の側に近づいて来た芸者は、先ほど列車の中で隣に座ってタバコを吸っていた女だった。

鈴代(高友子)と名乗ったその芸者は、あなたのお荷物はお預かりしていますと笑顔で話して来たので、野々宮は安堵するが、そんな2人の様子を見ていた招待者達は既に2人が顔馴染みらしいので驚く。

野々宮はすっかりうれしくなり、小諸には良い人が多いですねと感激する。

そんな座敷の側の通路に集まった教頭ら3人は、「本日行かれぬ 野々宮」と書かれた電報を広げてみて、では、あの人物は何者だ?そう言えば、今日来る数学の教師ですよ!と慌て出す。

大変な人間違いをしてしまったことに気づいた3人だったが、今騒げば今日のことが表沙汰になってしまうので、今夜はあの先生を訳も分からず酔わしてしまいましょうと教頭は提案する。

そんなことは知らない野々宮は、太鼓を叩き陽気に騒いでいたが、外では雨が降り始める。

宴会の後、鈴代が預かっていた荷物を引き取って料亭を出ようとしたの飲み屋だったが、他の芸者達に引き止められ、とある座敷に連れて行かれる。

連れて来た芸者は、私、先生の教え子になりますわ、3年A組座間ミロと言いますと名乗ると、そのまま出て行く。

代わって部屋に入って来たのは鈴代で、やっと2人きりになれたわね?と笑顔でタバコを勧め、先生、恋人ある?1人や2人はもうあるわね?好きになっちゃったのよなどとモーションをかけて来る。

そんな様子を、少し離れた部屋から覗き込んでいた若い芸者達がからかうので、邪魔すると承知しないよ!と叱りつけながら障子を閉める鈴代。

野々宮は、訳あって僕は童貞を守り続けていたものですから…と言うと、その声を聞いたらしい若い芸者達は、童貞だってよ!と又騒ぎ出す。

憮然とした野々宮は、僕は失礼します!と言うとふすまを開けて外へ出ようとするが、そこは押し入れだったので、倒れかけて来た布団に押しつぶされる。

それでも玄関口にたどり着くと、そこにあった自分の荷物を二つ下げて、雨が降る外へ出て行く。

その後を、傘を持った鈴代が追って行く。

翌日「聖心女学院」 校門の所に集まった女子高生達が、新任の野々宮のことに付いて噂し合ってる。

そんな中、夕べ芸者として座敷に参加した座間ミロら2人だけが会ったわと自慢すると、石原裕次郎みたいな人?葉山良二みたいな人?まさか、フランキー堺みたいじゃないでしょうね!などと大騒ぎ。

その頃、野々宮は、下宿をしている寺の一室でまだ寝ていたが、地震のような地響きがするので目が覚めてしまう。

何事かと窓から庭先を見ると、住職の呑海和尚(小杉勇)が巨大な石のバーベルを持ち上げているではないか。

では自分もと、張り切って庭先にパジャマ姿のまま出て行った野々村は、3つあったバーベルのうちあえて1番重いものを選び、持ち上げられると自慢する。

ところが、やはり重すぎて、ふらついているとき、寺から和尚の老妻(田中筆子)が、もう9時15分前だが学校に行かなくて良いのか?と声をかけて来たので、いかん!遅刻だ!と焦った野々村、持ち上げていたバーベルをそのまま側にいた和尚に渡して、部屋に戻って行く。

いきなり重いバーベルを持たせられた和尚はバランスを崩し倒れ込んでしまう。

その頃「聖心女学院」の職員室には、三々五々教師達が集まっていたが、やって来た教頭に、いかがでしたか?温泉の打ち合わせは?と、腰巾着の細井先生(高品格)が聞いてくる。

そこにやって来た校長先生(北林谷栄)は、新任の先生はまだですか?と聞く。

急いで学校へ向かっていた野々宮は、途中、立ち小便をしていた男に、聖心はどこですが?と道を聞くが、振り返った相手は辰公で、相手が野々宮と気づくと組み付いて来たので、驚いたのの宮は何とかそれを振り払い、逃げ出す。

しかし、逃げ切ったと安堵した野々宮が、また道を聞いた男も他の道を回って来た辰公だったので、慌てて逃げる。

橋の所まで逃げて来た野々宮は、転がって来た子供のボールを拾おうとして、そこにスクーターでやって来た女性が野々宮を避けようとしてハンドルを切り損ね、川に落ちてしまう。

驚いた野々宮は、自分も川に飛び込み、女性を助けようとするが、ボールを持った少年の母親が橋から女性を見つけると、霧川先生!と呼びかける。

立ち上がると浅瀬だったことに気づいた野々宮は、助けた相手が霧川冴子(香月美奈子)と言う教師だと知ると、自分も先生なんですと川の中で挨拶する。

聖心女学院の校庭では、全校生徒を前にして、校長先生が、新任教師が遅れている挨拶をしていたが、そこへ飛び込んで来たのが、霧川先生を後ろに乗せ、自分が操縦してバイクに乗って来た野々宮だった。

しかし、ブレーキの掛け方を知らなかったのか、野々宮のバイクは全校生徒の列の間に突っ込んで来たので生徒達は逃げ回る大騒ぎとなる。

挙げ句の果てに、途中で霧川先生を振り落とし、そのまま校庭の間を抜けて、プールの中に野々宮は弾き飛ばされてしまう。

川に落ちて濡れ鼠の霧川先生は、宿直室で着替えることになるが、そこへ、何と言う非常識な先生でしょう!と野々宮の悪口を言いながら細井先生(高品格)が着替え用の運動着を持って来てやる。

一方、プールに落ちた野々宮の方は、学校の医務室に寝かされていた。

校医は村田由起子(中原早苗)と言う女医で、気がついた野々宮が立ち上がろうとすると、毛布の下は裸よ、洋服はびしょぬれだったので洗濯屋に出しておいたわと言う。

そこにやって来たのが弘中先生(河野秋武)で、通称山猿。

寺を下宿先として紹介したのも彼だった。

これを用務員から借りて来たと用務員服を渡すと、どうだ寺は?都会の太陽族にはちょうど良いだろうなどと言うので、あなたの計画ですか?大体、都会ものと聞くと、すぐに月光族とか太陽族と言うけど、僕はそんなんじゃない!と野々宮は憤慨する。

すると、夕べ、酔って芸者と歩いとったそうじゃないか?などと山猿が言うので、鞄を取りに行っただけです!私は公明正大です!と野々宮は反論する。

由起子先生に座を外してもらい、用務員服に着替えた野々宮だったが、ぱっつんぱっつんだったこともあり、山猿が手を引っ張ると左肩の縫い目から袖口が取れてしまう。

とりあえずその格好で、校長先生に挨拶に行った野々宮だったが、我が校は、父小山啓太郎が創立して65年、「真善美」をモットーに、婦人教育を目指しています。

当校には型破りな先生を必要としており、教育をする上に束縛はしません。

君が正しいと思ったことをやってください。期待していますよ。ただし、女子高校と言う性格上、婦人問題、女性関係には身を処して欲しい。芸者と酔って歩くことなど許しませんぞと校長は釘を刺して来る。

教頭とともにその話を謹聴していたの飲み屋は、夕べは歓迎会に引っ張って行かれただけで、教頭先生もおられました。何でも温泉を掘られるとか…と言い訳した野々宮は、一礼をして退室しようとするが、その際、ぴちぴちの用務員服の背中も破れてしまう。

見かねた校長は、自分がアメリカの大学でフィロソフィーを取った時着ていたガウンです。 これなら正式な衣装ですから問題ないでしょうと言い、大学のアカデミックドレスを貸してくれる。

一緒に校長室を出た教頭は、夕べの宴会は間違いだったんだ、他で口外しないでくれと命じて去って行く。

そこへやって来た山猿は、何だ?その格好と若いながら、君は3年A組担当だと教える。

教室に入ると、黒板に「観迎 童貞先生」と書かれ、その横には、霧川先生を後ろに乗せてバイクを飛ばしている自分のマンガが書き添えてあった。

このガウンは正式な儀礼なんだ。君たち生徒達に礼を尽くしたつもりなんだが、それに対し、君たちのこの行為は少し非礼に過ぎないか?僕は公明正大で、このニックネームはありがたく頂いておくが、この中に僕を揶揄するような意味があるのだとするとそれは違う。これは厳粛なものだ。

僕は結婚する思想の女性にこれを捧げるつもりだと言うと、女生徒達から歓声が上がる。

さらに野々宮は、この「観迎」の「観」の字は間違っている!正しくは「歓」だ!と書き直す。

すると女性との中から「観」で良いんですと言う意見が出るが、その後、先生、良い人だから、喜ぶに訂正しますなどと言う意見が出る。

野々宮は続いて出席を取り始める。 その頃、音楽の授業でピアノを弾いていた霧川先生は思わずくしゃみをしていた。

野々宮もくしゃみをしながら出席を取っていたが、葉山ユリ!と読んだとき、2人の女性とが同時に返事をしたので、代返ならもっと巧くやれ!葉山君は病気なのかね?と聞く。

すると、代返をした座間ミロたちが手を挙げ、もしかしたら病気になるかもしれません。先生、今日家庭訪問しませんか?私たちも今日行ってみようと思っていたんですと返事する。

その日の授業の後、野々宮は葉山ユリの家を、座間ミロらに案内され訪問してみることにする。

葉山の家は牧場だったので、僕は大学時代馬術部のキャプテンだったんだからなどと自慢する。

働いていたユリに近づいた野々宮は、代返させたな?と言いながら彼女の顔を確認するが、葉山ユリ(稲垣美穂子)は、昨日列車の中でキスをしていた女性だったと分かる。

ユリは、汽車の中のこと、さやからには黙っていてくださいと頼み、何故か突然失神してしまう。

驚いた野々宮はさやかとミロを呼び寄せると、自分は校医先生を呼びに行くからと言い、馬にまたがり牧場から去ろうとする。

それを見た女学生達は、牧場に電話があるのに…と呆れる。

馬を走らせようとした野々宮だったが、すぐに振り落とされてしまい、俺は馬には乗れなかったんだ…と思い出す。

落馬したとき、腰を痛めた野々宮は、翌日の授業ではかがんだ状態のまま黒板に数式を書いていたが、そんなの飲み屋に、明日ハイキングしませんか?と強引に女性とが誘いかけて来る。

野々宮は、明日1日、寝ているつもりなんだと断る。 翌日、報国寺にやって来たのは、鈴代、由起子、霧川先生の3人で、3人は門前で互いに牽制し合っていたが、やっぱりハイキングを誘いに来た女学生らが門を平然とくぐって寺の中に入っていたので、彼女らも遅れじと後を追う。

ところが、肝心の野々宮は不在だった。

老婆が言うには、夕べ腰に湿布したら今朝はぴんぴんしており、人手が足りんので、お経のお手伝いに出ているらしい。

町の法事で、呑海和尚が経を読む隣で木魚を叩き、自分も一緒に読経をしていた野々宮は、その帰り、ぽんこつ自動車に乗った村田老先生(菅井一郎)に呑海和尚が呼び止められたので、一緒に立ち止まる。

かねてよりの悪友らしい呑海和尚は、去年お前が殺した婆さんの一周忌だなどと憎まれ口を聞く。

村田老先生は、娘から聞いてますと野々宮のことも知っているらしかったので、野々宮も、校医先生から聞いてますと挨拶を返す。

そんな村田老先生が呑海和尚に、今日は真面目な話がある乗らんか?と言うので、和尚はぽんこつ車に乗り込むが、なかなか発進しないので、野々宮がクランクを回してやるが、子供達が集まって来た中、村田老先生の車は、煙を吐きながらよたよたと走り出す。

「濁り酒」を出す汚木豆腐に来た呑海和尚は村田老先生に、あの男に良い嫁を持たそうと思うんだが、お前の娘はどうだ?と聞くと、ありゃアプレだと村田老先生は言い、娘の話じゃ、ありゃ慌てもんらしいな?と逆に聞く。

「千曲錦」を飲んでいた村田老先生が、何かつまみはないのか?と奥へ怒鳴ると、豆腐を持って来た親爺(山田禅二)が、神経痛には冷泉が聞くと言い、とっくりに入った温泉水を飲み始める。

それを聞いた村田老先生は、成田と宮川が温泉掘る計画を始めたそうだな?東京の先生が、確実に湯があると証明したと話を切り出す。

すると呑海和尚は、拙僧は反対だと答えたので、市の発展のために…と村田老医師が続けると、お前、誰かに踊らされているな?と和尚は怪しむ。

その時、店の下の方から車のクラクションが聞こえて来たので、村田老先生が何事かと出てみると、自分の車のクラクションを鳴らしていたのは聖心女学院の校長だった。

彼女は時々、血圧を下げる注射を打ってもらっていたが、今日は村田老先生の姿が見えないので今まであちこち探していたのだと言う。

血圧はどうなる?と文句を言うので、ここで打ってやると村田老先生が声を掛けると、坂道を上って酒屋に入って来た校長は、朝っぱらからこんな所で飲んだくれて…、しようがない医者だ…と文句を言う。

校長、大変な事件が起きましたな…、正義が勝つか策謀が勝つか?と呑海和尚が話しかけると校長は先刻承知しているようだった。

温泉が出たら金になる。学校は移転すれば良いだけだと村田老先生は言う。 校長はただ、社会の公正なる判断を待ちますと答えるだけだった。

血圧の注射を受けた校長は、いつまで経っても下手だなと村田老先生に文句を言う。

その頃、寺に戻った野々宮は、待っていた女生徒や霧川先生、由起子先生、鈴代らとともに布引温泉へハイキングに出かけていた。

そんな中、途中の道で隠れていた葉山ユリが野々宮をこっそり呼び寄せ、先生、お話があるんですと物陰に連れ込む。

校医先生から何も聞いてないんだが元気そうで良かった…と野々宮が言うと、私、妊娠してるんです。

でも正式に結婚してるんです。でも学校に知られたら退学させられます。私たち、学校だけは卒業するって約束したんですと言う。

その後、野々宮は呑海和尚に招かれ、由起子先生とともに琴の演奏会にやって来る。

いつでも仲人をしてやるなどと呑海和尚が言うので、由起子との見合いをさせられたのだと気づいたのの宮は、引っかかったな…と言うと、正座を崩してあぐらをかく。

そんな野々宮に由起子は、前列の真ん中はいかが?と耳打ちして来る。

それは霧川先生だったと気づいた野々宮が、じっと演奏を見つめ出したので、野々宮の左腕を取って脈を計った由起子先生は驚く。

今日は集団見合いをさせたのよ、呑海和尚と家の父は町の冠婚葬祭を一手に引き受けているから…と由起子は教え、先生にも恋愛初期症状が現れているようですわとからかい、私は往診がありますから…と言い残し、先に帰ってしまう。

演奏会の帰り、和服姿の霧川先生と一緒に帰ることになった野々宮だったが、由起子さん、東京医大の研究室に婚約者がいるんだそうですと霧川は教える。

その時、道ばたの崖からこの前のおとしまえを付けようじゃないか!と声をかけて来たのは辰公だった。

どなたなんですか?と霧川先生が聞くと、顔なじみで…と答えた野々宮は、霧川先生に先に帰るように言うと、自分は崖を降りて来た辰公と近くの橋の上で戦うことにする。

辰公は、鈴代から手を引け、あれはうちの社長のものだ!などと因縁をつけて来たので、関係ない!と野々宮は答える。

鈴代は社長だけに惚れてるんだ!などと辰公が言うので、知ったこっちゃない!と野々宮は反論する。

2人が組んず解れず転げ回っている所に駆けつけたのが山猿で、霧川先生が青い顔をして注進に行きたんだぞ!と言いながら加勢すると、辰公はその場を逃げ出す。

そこに霧川先生も駆けつけ、倒れていた野々宮を助け起こそうとするが、何ともなかった様子で立ち上がった野々宮は、緊張の糸が切れたのかその場で失神する。

後日、聖心女学院では女生徒達の身体検査をしていたが、浴衣姿で並んでいた葉山ユリは、小川先生(初井言栄)が脱いでと言っても脱ごうとしなかった。

診察をしていた由起子先生が、私がやりましたから…、校医の私の責任で…、理由は後で説明しますと説明するが、小川先生はなおも脱ぐように迫ったので、ユリは耐えかね泣き出すと、部屋から飛び出してしまう。

そこに通りかかった野々宮が事情を聞くと、追って来た小川先生が、身体検査を拒否したんです!と言うので、担任として良く聞いときます。

生徒のわがままは許しません!と小川先生は睨んで来る。 野々宮にすがりついて来たユリは、言わないで!でないと死んでしまう!と言って逃げ出してしまう。

その後、野々宮に近寄って来た霧川先生は、あの子は妊娠していますと教えるので、野々宮は知っているとも答えられず、曖昧に頷くのだった。

そんな噂を聞き込んだPTA代表宮川は成田社長の所に来ると、女学院の女生徒の中に腹が膨れて来た奴がいるらしいと教えに来る。

それを聞いた成田社長は、校長に詰め腹を切らせ、教頭を校長に押し上げられると都合が良いなとにやつく。

相手はあの新任教師だと言うんだと宮川がうわさ話をする。

その噂は、学校の細井先生の耳にも入り、この前布引に行ったときも2人はこっそり会ってたそうですよなどと邪推をする。

街の飲み屋で辰公も、丑公からその噂を聞いていた。 そんな中、何も知らず教室へ授業にやって来た野々宮は生徒が誰もおらず、黒板に「真相が分かるまで授業には出ません」と書かれてあるのに気づく。

すぐに職員会議が開かれ、退学反対です!とユリをかばう野々宮に対し、街に噂が広がっており、このままでは当校の名誉に傷がつくと教頭は言う。

無事、卒業させてやってください!と野々宮が食い下がると、どうしてそんなにかばうんです?と教頭は嫌みを言う。

その時、責任はあげて私にあります。不徳の致すところであります。私もよく考えましょうと校長が紋切り型の詫びを言う。

あなたは、この女学院に赴任してくる前からあの女学生を知っていたのですか?と教頭から詰め寄られた野々宮は、知ったいたかと言われれば、知っていたとお答えしましょう。

すると細井先生が、前から親しくしていたそうですが?などと邪推を含んだ嫌な聞き方をして来たので、怒った野々宮は、怒ると言うことは、認めていると言うことですね?などとねちっこく絡んで来た細井に詰め寄る。

山猿がそれを止めに来るが、こんな学校に1日たりともいられない!と憤慨する野々宮に、江戸っ子は短気だな〜…、今夜発つ前に俺の打ちに来てくれ!送別会をやろうと誘うが、野々宮は断る。

寺に帰り荷造りを始めた野々宮だったが、様子を見に来た呑海和尚は、学校を乗っ取ろうとする策謀があるぞと話しかけて来るが、人に不潔な疑いをかけるような所にこれ以上はいられない!と野々宮は拒絶する。

座間ミロとさやかが、リヤカーに積んだ荷物を駅まで引っ張っていた野々宮の手伝いをする。

ミロ達は、本当に学校を辞めるんですか?私たち、先生を信じています。

学校辞めるのなら押しませんと言い、急に坂道で手を離したので、重さに堪え兼ねた野々宮はリヤカーごと後ずさる。

そこに後ろから押して手伝ったのは辰公で、今度は差しで勝負しよう!と言って来る。

野々宮が、まずこの荷物を駅に届けてからだと答えると、お前さんと俺は宿命の決闘になるななどと辰公は言い、駅の小荷物預かり所まで付いて来る。

荷物がなくなったので、宿命の対決どうするんだ?と辰公は絡んで来るが、その前に一杯やらないか?でも俺今30円しかないとの飲み屋が言うと、金なら任しとけ!てめえ、女にモテるそうじゃないか!と辰公は気前の良いことを言い出す。

村田親子と霧川先生が寺に来ると、10時の夜行に乗っていると言って出かけたまま帰って来ないと言うので、せめて送別会でも野郎と思って来たのに…と村田老先生は残念がる。

その頃、辰公と野々宮は山猿の自宅で酒を飲んでいた。

どうだ?今晩はここに泊まって、明日帰ったらどうだ?この世の中、気楽なことはない。

あの学校には、君のような男が必要なんだ! このままでは女学院だって骨抜きになることになる。

女が怖くて男が勤まるか! 女みたいな男で逃げ出すようじゃ、男の名折れじゃ!と山猿は力説していたが、そこに息子が小便をしに来たので、慌てて縁側に立たせる。

さらに、他の息子2人も加わり、3人縁側に並んだので、君があの時助けてくれたのがこの子らだと言い、山猿は子供らに小便をさせる。

翌日、聖心女学院ではPTAの代表らも招き、総会が開かれていた。

葉山ユリは諭旨退学、関係教員は懲戒免職にすることに決定しましたと教頭が報告すると、出席していた呑海和尚が、事件の詳細を説明しろ!職員会議での飲み屋から聞きたいと申し出る。

京都は、当事者に弁明の機会を与えるべきかどうか…と返事をためらうと、学校としては責任は免れない!学校の責任に関し、校長の答えを聞きたい!と宮川が校長に迫る。

その時、泥酔した野々宮を運んで来たのは、担任の女生徒たちだった。 会議室に運び込む時、野々宮は頭を入り口の上部にぶつけてしまう。

会議室内に運び込まれて気を失った野々宮に、女生徒たちに洗面器に汲んだ水を持って来させた山猿が、頭から浴びせかける。

ようやくふらつきながらも目覚めたのの宮は、その場の状況を飲み込むと、校長先生だって辞める必要ないじゃないですか!事実無根じゃないですか!と訴えるが、君の辞表は昨日受理したよと教頭は言うだけ。

ユリの結婚証明書がありますと野々宮が言い出すと、学生の分際で!などと言う批判があり、この証明書は先月末に発行されたものだが、彼女は妊娠三ヶ月だ!などと言う反論が出る。

女生徒が妊娠したと考えるからおかしいのであって、婦人が妊娠中にも関わらず、勉学のため学校に通っていると考えたらどうです?と野々宮は答える。

話を聞いていた呑海和尚は、3年生と言えば数えで20じゃないか、教頭の嫁なんか17の時に来たんじゃと言い出したので、教頭は身を縮める。

今回の一件には誰にも責任はない!子供が出来たら、温かく見守るのがあなた達の責任じゃないか!と他の教師達に言い聞かせた野々宮は、こんな些細なことで騒いでいるのは金儲けしか考えない金の亡者だけなんだよ!と宮川に詰め寄ったので、怒った宮川の仲間達とその場で大乱闘が始まる。

その後、怪我の治療で医務室にいた野々宮の元へ、彼が昨日提出した辞表を持って来たのは校長で、野宮君、返す!と笑顔で渡す。 校長先生もお辞めにならないんでしょうね?学校を…と受け取った野々宮が聞くと。

感謝します。ただし、少し戦闘的すぎましたねと校長先生は答えたので、笑顔での飲み屋は辞表を破り捨てる。

後日、花火があがり、秋期体育大会が女学院で行われる。

一般参加者も含めたマラソン大会が始まり、呑海和尚や村田老先生も、野々宮と一緒に走り出すと、町内の橋を渡るのだった。
 


 

 

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