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でかんしょ風来坊

「東京の暴れん坊」(1960)に次ぐシリーズ第2弾

歌が巧く、喧嘩が強く、女にモテる明るい好青年の主人公が活躍する日活版「若大将」みたいなシリーズである。

主人公の次郎、恋人秀子、両親、千吉らメインのメンバーは同じだが、一本槍鬼左衛門役が小川虎之助から殿山泰司に代わっている。

これは、本作には一本槍の若い頃の回想シーンがあるためかもしれない。

小川虎之助では、若い頃を本人が演じるのは無理がありすぎる。

殿山泰司も学生を演じるのは無理があるのだが、まだ笑える。

面白いのは、当時老け役で老婆を演じていたはずの北林谷栄さんが娘時代も演じているのだが、これが少しも若く見えないのがおかしい。

やはり、元々老け顔なのだろう。

ストーリー自体は御都合主義でつなげたナンセンスになっており、若い旭さんやルリ子さんが元気一杯張り切っているのが楽しい。

金持ちのおばあさんが大胆な計画を若者に手伝わせて実現しようとする展開は、北林さん後年の「大誘拐 RAINBOW KIDS」(1991)などを連想させる部分がある。

銀座は本物のロケと日活銀座のセットを併用して表現しており、当時の本物の銀座の様子が楽しめる。

いつもの通り、キネ旬データのキャスト表は間違いだらけなので困るのだが、 冒頭、「ピンク・アパッチ団」に脅されている若い男は待田京介ではないような気がする。

「ピンク・アパッチ団」の1人が金井克子さんだったらしいのだが、これはさすがに確認できなかった。

気軽に楽しめる肩の凝らない娯楽映画の1本だろう。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1961年、日活、松浦健郎原作+脚色、今村文人脚色、斎藤武市監督作品。

書き割りの町に男女の人形が左右から中央で出会う。

アップになった人形の上半分が前方に倒れ、人形の後ろにいた清水次郎(小林旭)と松田秀子(浅丘ルリ子)が姿を現し、タイトル。

花のパリの~♩と陽気なメロディに乗せ、町の書き割りの前や窓の背後に、キャストロールに合わせるように俳優たちが次々に登場する。

都電が走る銀座の路上は車で一杯。

前総理大臣一本槍鬼左衛門(殿山泰司)は、外国の要人と会うため、車で向かっていたが、渋滞に巻き込まれ全く車が進まなくなったので苛立つ。

後30分!もっと急ぎたまえ!と運転手に命じるが、運転手は動きようがない。

ラッパを鳴らしたまえ!と命じると、助手席に座っていた道子(小園蓉子)が、騒音防止法に違反しますと忠告するんで、そんな法律誰が決めたんだ!と一本槍が憤慨すると、一本槍総理第一次内閣の時ですと秘書が言うので、黙ってしまう。

そんな銀座のど真ん中、レストラン「ジロー」の店の前の路上で若い男相手に啖呵を切っていたのは、春子(中原早苗)、夏子(千代侑子)、秋子(清水千代子)、冬子(金井克子)のズベ公4人組「ピンク・アパッチ団」だった。

周囲には野次馬が集まる中、そんな騒ぎを写真を撮っていたのはアルバイトで出版社で働いている女子大生松田秀子だった。

若い男が親切ごかしに銀座を案内すると見せ掛けて、女性から金を巻き上げるつもりなんだろう!と言うのであった。

そこで怯えていると言うその女性とは、野次馬の背後に隠れていた老婆(北林谷栄)であった。

ピンクたちは、効いて来た、ドンドン!と言いながらスカートをまくり揚げて男に凄むが、そのスカートから露になったガーターに目を取られた運転手が突っ込んできたのが一本槍の車だった。

急ブレーキをかけた車のフロント部分にスカートを引っ掛けられ破けてしまったお春は、私ゃまだ嫁入り前なんだよ!と文句を言い出す。

運転手も降りて来て路上で騒いでいる春子たちに文句を言うが、車に乗っているのは誰だい?降りて来てもらおうじゃないの!と春子は啖呵を切り、埒が明かないと見た一本槍も車を降りて来て春子と言い合いになる。

そこにやって来たのが次郎だった。

この人誰だか分かってるのかよと次郎が春子に聞くと、過去の人でしょうなどと春子は知らないようだったので、元総理大臣、一本槍鬼左衛門だよ!と次郎は教える。

ああ、あのワンマン爺さん!などと春子は全然動じなかったが、そこに警官が駆けつけて来たので、一本やりは警官に抗議する。

次郎は「ピンク・アパッチ団」をレストラン「ジロー」に招き、ごちそうをしてなだめることにする。

でも高いんだろう?いよいよ払えなかったら脱げば良いんだわ!などと春子が心配そうに言うので、さっきの爺さんに全部付けとくよと次郎は笑い、ところでずべ公なんか辞める気ないのか?と聞く。

あんたと爺さんの関係は?と春子が聞き返して来たので、大久保彦左衛門と一心太助みたいなもんかな?と次郎は答え、こちらの元台風クラブの千吉さんだと次郎は教える。

その千吉(近藤宏)は春子たちに、お前らは「コンゴ会」だったな?と聞くと、千ちゃんだって真面目になったんだから、後は本人の気持だよ、みんな真面目になるのなら、俺に任せてくれないか?と次郎は言い聞かす。

しかし春子は、ご遠慮しようかと言うと、食事を食べ終える前に立ち上がったので、「ピンク・アパッチ団」たちもごちそうを前に仕方なく店を後にする。

キッチンにいた次郎は、まだこれから色々出そうと思っていたのに残念がる。

店から出たアパッチ団は、何故ごちそう食べなかったんだよと文句を言うが、こんなこと知れたら、次郎さんの店叩き潰されてしまうよと春子が言うので、お春、次郎さんが好きなんだ!効いて来た、ドンドン!とからかい、自分たちのミニスカートをめくるあげる。

その頃、雑誌「あなた自身」の写真現像室で、たった今撮って来た一本槍、老婆、「ピンク・アパッチ団」を写した3枚の写真を現像して金井編集長(金子信雄)に売り込んだ秀子だったが、良く撮れていると言うだけで、「ピンク・アパッチ団」も新しくない。君も間もなく女子大を卒業してマスコミ志望なんだろう?と言い聞かせる。

週刊誌は深く広く!と言いながら、写真に写ったこの婆さんは一本槍の40年前の初恋の人だった!などと金井編集長が言うので、本当ですか!と秀子は驚くが、信じる信じないは読者が判断すること! 所得倍増計画なんてもう誰も信じない! 今、銀座の一角を買い占めようとしている奴がいるらしい! 一本槍の三角関係を突き止めて、後ははさみで料理次第!分かったね!と金井編集長は発破をかける。

秀子は実家の「松の湯」の番台に座り、老婆の写真に鉛筆で修正を加え、若い頃の面影を探ろうとしていた。

そこへふらりとやって来たのが件の老婆で、抱いて来た黒猫を預かってくれと秀子に預けて来たので秀子は驚く。

その夜、店を終えた次郎と千吉は、馴染みのリラ子(宮城千賀子)のバーで酒を飲んでいたが、リラ子は、そろそろこの店を手放そうかと思っているの。次郎さんの所で雇ってもらえるとうれしいんだけど…などと言い出す。

バーは畳んで、堅気のお店を始めたいの…と言うので、効いていた千吉は、若い女の下着専門店ってのはどうだ、それなら俺ちょっとばかし詳しいんだなどと言う。 次郎は、新しい仕事始めるのなら「ピンク・アパッチ団」を使って欲しい。

更正させて欲しいんだと頼む。 それを効いたリラ子は、変ね?ズベ公なんかに肩入れして…と不思議がるが、そこに秀子がやって来て、「週刊あなた自身」に写真が売れそうなの!などとうれしそうに言うので、あんた結婚しないの?とリラ子が聞くと、もらってくれるんなら大学中と退学でも良いのよ、でも次郎さんてそんな甲斐性ないしね!などと秀子は嫌みを言うので、好きなくせに会えば喧嘩…、いっそのこと2人きりで旅行でもしたら?とリラ子は呆れたように言う。 翌日、次郎と秀子は同じ列車で向かい合っていた。

しかし2人は旅行ではなく、偶然目的地が同じ一本槍の屋敷であったため、たまたま鉢合わせしたことを互いに迷惑がる。 秀子の方は、老婆の写真のことを確かめに行くのであり、次郎の方は「ピンク・アパッチ団」を更正させる相談に行くのだった。

一本槍は屋敷の庭先で、その名の通り一本槍を突く稽古をしていた。 そこに次郎たちが訪ねて来たので、次郎長良く来たな!お秀ちゃんも来たのか、若い恋人同士が来ると若返るなどと言って歓迎してくれる。

座敷に招かれた秀子は、先生にも若い時、恋人いたの?と無遠慮に聞き、この方じゃございません?と一枚の写真を差し出す。

それを見た一本槍は、この写真は!一体この写真をどこで手に入れたんじゃ!と一本槍は驚くが、その写真を受け取ってみた次郎は、これは大分書き込んであるな?と見抜いたので、秀子は自分が修正した老婆であることを明かす。

すると一本槍は、こんなおばあちゃんじゃない!偶然であると言うが、その後、次郎を廊下に呼び寄せると、男と男で腹を割ってお願いがあると言い、一緒に別室へ行こうとするので、秀子も付いて行こうとすると、男の話に女は邪魔!と次郎が拒否する。

座敷に残された秀子は、茶を持って来た秘書道子に、男と男の話って何かしら?臭いわ…と話しかける。

別室にやって来た一本槍は、一枚の写真を次郎に見せる。

それは、先ほど秀子が見せた修正写真と瓜二つだった。

さっきのはこれと同じ人間とは思えないが、念のため、40年前、わしとの恋に破れて不幸になった女かどうか調べて欲しい、こっそり会って、40年前の思い出に浸りたいんだと一本槍は次郎に頼む。

しかし次郎が、名前は?と聞くと、食い物の名前に似ていた…と言うだけで忘れてしまった様子の一本槍は、次郎長頼むよ!調べてくれたらら何でも言うことを聞くから!と言い、頭を下げて来る。

そんな一本槍の姿を、秀子は庭先からこっそり写真に撮っていた。 これで一つは出来たっと…、後はあのおばあちゃんがどこに住んでいるか突き止めるんだわと秀子は喜ぶ。

その後、松の湯の男風呂で、いい気分で次郎が歌っていると、一緒に入っていた千吉が兄貴は巧えな~…と感心し、自分も真似をして歌い出すが、女湯の脱衣所で服を着ていたリラ子が、千ちゃん、ぬかみそが腐っちゃうわよ!と大声で声を掛けると、一緒にいたあの老婆が、ナイスフィーリング!と次郎の歌を褒めたので、おばあちゃん、英語出来るの?とリラ子が驚くと、これでも昔は銀座のモガでしたからねと老婆は笑って答える。

二人の会話を男湯から聞いていた千吉が、ぐっと生かすグラマー女か?と期待すると、40年前イカしたのねとリラ子が説明したので、ババアか…と千吉はがっかりする。

しかし、その会話を聞いていた次郎は、40年前?と思わずつぶやく。

そんな松の湯の入り口から中を覗き込んでいた怪しげな男がいたので、外から帰って来た秀子が写真に取って睨みつけるが、その男は調査に来たんですと言いながら「大銀座土地開発 出羽亀三」と書かれた名刺を差し出す。

それを見た秀子は、今、家の土地を買いたいって人が来てるんだけど!と大声で風呂場の中に呼びかける。

それを浴場で聞いた次郎と千吉は、慌てて服を引っ掛けただけの姿で入り口に出て来る。

ここは土地一升が金一升と言うくらいの銀座だ!松の湯だって5億はするぜ!と次郎が脅かすと、分かっております、当方では建物込みで6億3000万と見積もっておりますと出羽は落ち着いて答えるので、銀座の人間は金では動かないぜと次郎が答えると、レストラン「ジロー」の若旦那でしょう?と出羽は次郎のことを知っているようだった。

その話を聞いていた秀子は、そうだ!銀座の一角を買い占めている人間がいるんだったわ!と言うと、帰って行った出羽の後を追いかけてゆく。

その直後に、リラこと一緒に女湯から出て来た老婆が、この人がさっきの歌の主だねと次郎を見る。

マダム、どうして知ってるの?と老婆のことを次郎が聞くと、今初めて口聞いたばかりよとリラ子は言う。

そこへ母親チヨ(田中筆子)が駆けつけて来て、次郎早く来ておくれ!父ちゃんが喧嘩している!と呼びに来たので、驚いて店に戻った次郎だったが、店の前で父長五郎(森川信)が、俺も三代続いた江戸っ子だ!と啖呵を切って追い返した相手は、やはり店を売れと言いに来たらしい。

長五郎が次郎に見せた名刺には「大銀座土地開発 山形虎三」と書かれてあった。

「大銀座土地開発株式会社」の社内で電話に出た課長の出羽が、2、3難しい地主がいまして…と話をしていたが、私では話にならん?と言われ、部長の山形虎三(藤村有弘)に電話を代わってもらう。

しかし、山形も、私では話にならん?と同じように相手からいなされたので、社長の秋田鹿三(雪丘恵介)が電話を代わるが、解約?今更そんなこと言われても…、手数料だけでも5億はかかりますと答える。

次郎と千吉は、そんな「大銀座土地開発」の会社の前までやって来るが、「本日休み」の札がかかっていた。

仕方がないので、近くで一休みすることにした千吉は、この問題は俺たちには荷が大きすぎるぜと弱音を吐く。

それでも次郎は、俺たちが最初に探していたのはあの婆さんだろ?この銀座に住んでいるのは間違いないんだ、とにかくおばあちゃんから見つけに行こう!と励ます。

そんな2人は、背後のホテルの屋上に、あの黒猫を抱いた老婆が立っていることに気づかなかった。

夜、婆さんが1人街角を歩いていると、出羽が子分を従え老婆を取り囲み、お迎えに参りました!と丁重に挨拶するが、老婆は、あなた方はどなたですか?と分からぬ模様。

ちょうどその側を通りかかった次郎と千吉が老婆に気づき、何やらもめ事に巻き込まれているらしい婆さんを助けようと出羽や子分たちと喧嘩を始める。

老婆は近くの公衆電話ボックスに入り込み、もしもし警視庁さんですか?と呼びかけるが、消防署?どこで間違ったのかしら?ととぼける。 間もなくパトカーがやって来て、警官が暴れていた次郎と千吉の方を逮捕してしまう。

翌日、次郎と千吉は牢から出され、警察署主任(河合健二)の部屋に秀子が来ていたんで、彼女が引き取りに来てくれたんだと思い込む。

しかし、主任が言うには、事件の目撃者がおり、その猫のおばあちゃんが相手のことも教えてくれたのだと言うので、不動産屋の周旋屋ですよと次郎は補足する。

秀子も、私、記者をしているのと主任に頼み込み、老婆の居所を教えてもらうことにする。

主任は、食い物のような名前だったな…と書類を確認し、井手タマ子さん!と教えてくれる。 折しも同じ頃、一本槍も屋敷で、井手タマ子さん!とかつての恋人の名前を思い出していた。

レストラン「ジロー」に帰って来た次郎に、どうして一本槍のおじさん、あなたに頭下げたの?と秀子は聞いていたが、そこに駆け込んで来た一本槍自身が、名前を思い出した、井手タマ子さんだ!と大声で叫んだ後、その場に秀子がいるのに気づいて慌てて口を塞ぐが、秀子は事情に気づいてしまう。

その後、次郎と秀子は、警察に聞いて来た井手タマ子の住むホテルにやって来て、受付で901号室と告げるが、このホテルは8階建てなので、901号室などないと受付は困惑する。

警察で聞いて来たんですが?と念を押すと、ようやく思い出したのか、屋上になりますが…と受付は教えてくれる。

屋上に上がってみると、そこにはシャレた洋風の一戸建ての家があったので、得体の知れないおばあちゃんだな…と次郎がためらうと、初恋の人とは限らないじゃないと秀子が言うので、それを確かめるために一本槍先生に頼まれて来たんだと次郎は膨れ、その場でじゃんけんして、どっちが先に入るか決める。

次郎がグーで勝ったので、恐る恐るノックしてみると、今、お風呂に入っているの、一間きりだから遠慮なく御入りくださいと言うタマ子の声が聞こえて来たので、次郎は入るのをためらう。

仕方なく、秀子の方がそっとドアを開けてみると、タマ子が猫をお風呂に入れているだけだった。

松の湯さんに次郎さん!と二人の顔を見て喜んだタマ子は、今日は天気が良いので応接間でと言いながら、マジック水洗の蛇口で手を洗うので、シャレてるのねと秀子は感心する。 応接間とは、外に置かれたベンチのことだった。

どちらか1人に私の使用人になってもらおうと思っていたの?セキュレタリーねなどとタマ子が急に英語を使ったので秀子が驚くと、一番使い慣れているのはポルトガル語なの、セクレタリア!実は昔ブラジルに行ってたのよ、40年前にね…とタマ子は打ち明ける。

何の仕事をさせる気ですか?と聞くと、この銀座の一角を買い占めるんです!とタマ子は周辺のビルを見ながら言う。

次郎は驚き、長い間外国行ってたらしいから、江戸っ子のべらんめえ口調なんか分かりゃしないよ、このおばちゃん、頭おかしいんじゃないの?などと秀子に話しかけるが、宵越しの金は腐るほど持ってるんでえ!と次郎も驚くべらんめえ口調で口を挟んで来たタマ子は、私はあなた方が好きだから喧嘩はしないわと言い、実はもうこのホテルを買ってしまったのと言う。

でも私が部屋を全部使うとホテルの売り上げが落ちるから、901号室を作ったのと言うタマ子は、周辺のビルを指差しながら、あのビルは買ったの、あれとあれは交渉中などと教えるので、あの側は松の湯だわと秀子は驚く。

今までは周旋屋を入れてたんだけど、一番手強かったあなた方に仕事を手伝ってもらうことにしたのですとタマ子は言う。

何故買い占めるんですか?と聞くと、これからケネディさんと昼食の時間ですとタマ子は言い出す。

食堂へ行くと、何人ものコックが恭しく自慢の料理が乗った皿を持って来てタマ子に見せるが、タマ子は一皿ごとにチャックして、最後の料理だけに頷くと、同じテーブルの一席に座らせた自分のペットの黒猫ケネディに差し出す。

同じテーブルに座った次郎と秀子はそれをあっけにとられて見るしかなかった。

やがて、何しろ40年前のことですから、カフェ華やかりし時代でしたから、銀座にもたくさんカフェがありました。

私はそんなカフェの一軒「ライオン」で女給だったのですとタマ子は打ち明ける。

(回想)店内で歌を歌う若き日のタマ子(北林谷栄-二役) 当時私は恋をしました。

初恋でした。 相手は名門の御曹司で、帝国大学の学生でした… カフェ「ライオン」にやって来たのは、まだ学生服姿の一本槍鬼左衛門(殿山泰司-二役)だった。

2人は将来を固く約束していたのよ。 でも、相手のお父さんが許してくれません…

「ライオン」にやって来たのは、鬼左衛門の父一本槍牛左衛門(殿山泰司-三役)だった。

支配人(山田禅二)が差し出した椅子に腰を降ろした牛左衛門だったが、その椅子が壊れて転んだので、慌てて支配人は別の椅子を差し出すが、それもあっさり壊れてしまったので、癇癪を起こした牛左衛門は、その壊れた椅子を他の客のいるテーブルに向かって投げつける。

これに怒った客と大喧嘩が始まったので、楽団は「天国と地獄」を演奏し始める。

店内は大乱闘になるが、そこに警官が駆けつけて来たので、牛左衛門が文句を言うと、巡査民尾守(加原武門)はおタマことタマ子を見て、この女給は不良の女であります!本館は逮捕したことがあります!と牛左衛門に教える。

月に群雲…、立てば芍薬、座れば牡丹…、涙涙の映画全巻の終わり!

(回想明け)不良少女なんてよくもバカにしたな!今に金を稼いで、この銀座を買い占めてやる! そうだ!ブラジルへ行こう!そしてお金持ちを見つけよう!…と私は誓い、その願い通り莫大な財産を手に入れて帰国したのだのとタマ子は話し終える。

その後、留置場に捕まっていた「ピンク・アパッチ団」の春子は、良い保証人が来てくれたと警官から言われ、牢から出される。

待っていたのは次郎だった。

警察署の主任も、この子が更生するのなら言うことはないと釈放を許してくれる。

警察署を出た春子は、早く足を洗って、良いお嫁さんになるんだと言い、仕事考えてるんだと言う次郎の言葉を聞くと、夢みたいだわ、次郎さんの店に勤めるなんて!と感激するが、違うよ、本当は俺たちが頼まれたんだけど、俺はレストランの大将だし、秀子は松の湯や勉強があるだろ?それで君に頼むんだと次郎は打ち明ける。

すると春子は、やっぱり足洗えそうにないわ…、だってコンゴ会が怖いから…と言うので、良し!俺が行って話付けたやる!と張り切るが、でもこの話ばかりは…と春子は二の足を踏む。

「大東京事件情報社」と看板がかかったビルにやって来た次郎と千吉は、前に一遍来た感じだな?と首を傾げながら中に入る。

それもそのはず、そのビルは「大銀座土地開発」の看板を付け替えただけのビルだった。

すると出迎えたのは山形虎三で、コンゴ会を訪ねて来たのだが?と次郎が聞くと、確かにうちの外郭団体ですと言うので、「ピンク・アパッチ団」の春子君と縁を切って欲しい。彼女を引取っても良いんですがね。真面目な勤め先があるんだと次郎が頼むと、あの子は親元から預かっているので本人の承認も親の承認もいる、お返事は明日まで待ってくれないかと山形は慇懃に言う。

次郎は、任した!と相手にゆだね帰ることにする。

その後、春子の話が社長の秋田鹿三から黒岩会長(小泉郁之助)、そして総裁の白坂(松本染升)にまで上がり、名案です。おやんなさいと承諾する。

翌日、レストラン次郎にやって来たのは、いつもとは打って変わり、普通のスーツに身をまとったお春こと春子だったので千吉も次郎も驚いてしまう。

コンゴ会を出て来たの、やっぱり次郎さんにお願いに来たのと言うので、すっかり見違えた千吉は、馬子にも衣装とは良く言ったものだねなどと妙な関心をする。

その後、春子を連れてタマ子に会いに行った次郎と秀子だったが、残念です、お2人に秘書をやってもらえればと思っていたのですが…、いわば身代わり候補ですねと、春子を秘書にして欲しいと言う話を聞いて答える。

「ピンク・アパッチ団」のお春さんはズベ公ですね?断じて行けません!と本人を目の前にして言うので、おばあちゃんも昔はそうだったんでしょう?と突っ込むと、だから私は初恋に破れたんですとタマ子が言うので、更生しようと思って来たんです、彼女の後ろには20人ものズベ公が待っているんですよと次郎は説明する。

昔を思い出します…、そこであの人に会えたんです…、でも感傷に浸っていてはいけません。大事業をやらねばなりません。 社員を雇うからには確実な身元調査を引き受けてもらえませんか?私も40年振りに旅行に行かなければ行けないので、その間に調べてくださいとタマ子は次郎と秀子に頼む。

その後、確実な話があると書かれた次郎からの電報が一本槍の元に届く。 次郎と秀子、そして千吉の3人は、春子が生まれたと言う大室高原にバスでやって来る。

バスの中でも、秀子と次郎の口喧嘩が続くので千吉は呆れてしまう。 サボテン高原か…とバスの窓から見える景色で気づく3人。 大東館と言う旅館に泊まった3人だったが、千吉と一緒に露天風呂に入った次郎は、でかんしょ〜て♩得意の歌を歌い出す。

その時、湯加減どうかね?背中長そうかね?と宿の三助らしき老人が声をかけて来たので、間に合ってるよと次郎は断る。

部屋に戻って来ると、1人で待っていた秀子が、観光気分になっていた次郎たちに、肝心の仕事を忘れちゃダメじゃないと説教する。 次郎は仕方なく、内線電話で、こちらに岩田金助さんっていますか?部屋に来てもらえますか?と頼む。

するとすぐにやって来て岩田金助ですと頭を下げて来たのは、先ほど風呂場であった三助の爺さん(河村信夫)だった。

実は、父っつぁん、春子さんのことなんですけどね?と切り出すと、とてもしらふでは話せないと金助は言うので、仕方なく酒を注文することにする。

酒を飲み出すと急に饒舌になって来た金助は、いつもあの子には泣かされてきました。時々警察の世話になっては寿命が縮む思いでしたが、我が子でも何でもありません。

うちの子は11人いるのですが、お春は12人目の子として育てましたと言うので、本当の親は?と次郎が聞くと、又黙り込んでしまったので、秀子は内線で酒を20本ばかり追加注文する。

さらに酒が入った金助は、お春の母さんは自分の幼なじみだったお時と言う女で、父親が分からねえ子供を産んだ後、死んでしまった。 その赤ん坊がお春で、年頃になると家を飛び出して行った…と言うので、何かあると思ったんだ…と次郎はつぶやく。

金助は座敷で寝込んでしまったので、無理矢理起こして、春子の母と言うお時の墓に案内させる。

酔った状態で墓まで付いて来た金造は、お時の母さんはまだぴんぴんしているんだなどと怪しげなことを言っていたが、そこに花を持ってやって来たのがタマ子だった。

それに気づいた次郎たちが、どうしてこんな所に?と聞くと、亡くなった娘の墓参りに来たんですよ、これは私の娘のお時の墓ですとタマ子は言う。

それに気づいた金助が、おタマさん!金助ですよ!あんたの娘を預かった金助ですよ!あんたは成功なさったようだが、俺は落ちぶれて、今じゃ三助だよ…と呼びかける。

私はあんたの行方を探していたんだよ、あんたには孫がいるんだよと金助が言うと、お時は21の時に死んでいるんですよとタマ子は言い、信じようとしない。

しかし金助が、お時もあんたと同じで父無し子を生んでいたんだよ、血は争えないよと言うと、タマ子は衝撃のあまりその場で気を失ってしまう。

そんな墓の前の様子を、近くから密かに監視していたのは出羽亀三だった。

タマ子を旅館に連れて行き、医者(阪井幸一朗)の往診を頼んだ次郎たちは、タマ子の容態を診た医者が、もう大丈夫と言ってくれたのでほっとする。

床に寝かせられていた春子は、お時は私と鬼左衛門さんの愛の証なのです。もうこれを言ってしまったら思い残すことはありません…などと気弱なことを言う。

その直後、宿の廊下に出た千吉は山形虎三の姿を発見し、コンゴ会か!と叫び、駆けつけた次郎がコンゴ会の連中を追い返す。

次郎はその足で一本槍の屋敷に向かうと、先生!一大事!おタマ婆さんは確かに先生の恋人だった人で、先生の孫があり、それがズベ公のお春なんですよ!と伝えると、すぐに帰ってゆく。

秀子と春子はタマ子の指示で、タマ子の全財産を電子計算機で計算させられていたが、機会は信用できないからと、その側でタマ子自身がそろばんを弾いていた。

の後、レストラン「ジロー」にやって来た秀子は、そこにいた次郎に、おばあさんが全財産をお春さんに譲るんだって!と教える。

そこに遅れてタマ子がやって来て、財産贈与の書類と判子を渡して一緒に帰って来ていた春子が、途中、人ごみにまぎれていなくなりました。昔のズベ公はもっと人情がありましたなどと嘆く。

これは一大事!と感じた次郎は、そろそろ町の大掃除を始めなくちゃいけないなと言うと、千吉に人集めを頼む。 服部時計店の時計が夜の7時を指している。

「大東京事件情報社」 出羽に連れられてやって来た春子が、タマ子から受け取った書類の入った鞄と判子を出すと、山形部長、秋田社長、黒岩会長、そして最後に白坂総裁が姿を現す。

お前を組織の一員として婆さんの秘書にさせ、孫だって言うことにしたのは、全部我々が仕組んだ芝居だ。

飲んだくれの金助を丸め込むのは大変だった。これでその金は全部コンゴ会の名義になる!と白坂総裁は喜ぶ。

次の瞬間、春子は出羽に渡した鞄を奪って逃げ出そうとするが、すぐに捕まって、鞄が次々にリレーされ、白坂総裁の手に渡る。

お春!お前は仲間を裏切るのか?と総裁から睨まれた春子は、こうなったらアパッチ団のお春は、こう見えても嫁入り前だよ!やるならしっかりやりな!と啖呵を切り、その場にあぐらをかいて座り込む。

そこに入って来たのが次郎で、清水次郎長!と総裁が驚くと、お待ちどうさまって!って言いたいんだけど、今日は出前に来たんじゃないんだ!と次郎が言うので、いつかお礼参りに行くつもりだったんだ!と山形が言う。

次郎は、その書類は真っ赤な偽物だよ。 最初から見当付けてたんで、あのばあちゃんと相談して偽の書類を作ったんだと次郎が嘲るように言うと、畜生!と言いながら、白坂総裁は持っていた鞄を次郎に向かって投げつける。

それを受け取った次郎は、これが本物さ!さあ、銀座の大掃除を始めるぜ!と叫ぶ。 そこに、遅れてすまねえな!と言いながら千吉が駆けつけて来る。

窓から「ピンク・アパッチ団」も乗り込んで来て暴れ出すと、一本槍と長五郎もやって来て、フライパンを次郎に渡す。

コンゴ会の男たちと大乱闘が始まり、秀子は次々に写真に撮って行く。

一本槍もステッキで山形を殴ると、ポカラッチャ!と言いながら山形は気絶する。

そこに警官隊とタマ子もやって来て、この建物は私が買い取ったものだけど、ヤクザが立ち退かなかったの、これも次郎さんのおかげですとタマ子が言うので、もうもう買い占めも止めましょうや、銀座はみんな一人一人で生きているんだと次郎が言い聞かすと、春子さんも孫じゃないと正直に打ち明けたんだから仇討ちも止めましょうとタマ子は承知する。

実は、私の娘は一本槍さんとの愛の結晶じゃなかったの。一遍、あなたの子供を産んでみたいと思っているうちに、生んだような気になったのよとタマ子が打ち明けると、そんなもんかしらねと秀子は納得する。

そこに一本槍が近づいて、タマ子と一緒に椅子に座る。

ゆで卵!おタマちゃん!と一本槍が感激すると、あなたはお若いわとタマ子が褒めるので、こんなになっちゃったよと一本槍は自分の特等をなでながら、あんたの方が若いよなどと、互いに褒め合いを始める。

そこに、聞いたぞ、聞いたぞとやって来たのがリラ子で、もうお掃除してしまったのね…と、活躍する場面がなかったことを残念がる。

するとタマ子は、春子さんを始めズベ公の皆さんにここで働いてもらおうと思うの。1人2人は面倒だから、全国のズベ公を養子にするわと言い出したので、私も働かせてもらえません?いっそのこと、銀座デパートってどう?などとリラ子が提案すると、百貨店法がありますと、一本槍に付いて来た秘書道子が口を挟む。

しかしその後、無事、コンゴ会が占拠していたビルは「銀座デパート」として開業し、「本日開店銀座デパート」と書かれたアドバルーンが3つも上がる。

その屋上に来ていた次郎と千吉に、秀子は、雑誌社言ったら潰れてたの…と写真が売れなかったことを残念がる。

しかし、次郎にからから我ので、載せりゃ良いんでしょう!と又喧嘩を始める。

そんな2人の様子を見ていて、自分が邪魔だと気づいた千吉は呆れて、帰りゃ良いんだろ?とふてくされて立ち去る。

次郎も、機嫌直ったか?と秀子に聞き、じゃあ帰るよと言い残し立ち去ろうとするので、待ってよ!次郎さん!と秀子は追いかけ、粉々に破った写真を屋上からばらまく。

そのしたの路上を「銀座デパート」と書かれた看板を持った山高帽をかぶった宣伝マンが通って行く。


 


 

 

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