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超高速!参勤交代 リターンズ

「超高速!参勤交代」の続編

一見、前作の繰り返しの趣向か?と思わせて、途中から続編独自の展開になっている。

お笑い要素は相変わらずだが、アクション要素が増えており、勧善懲悪のチャンバラ映画としても楽しめるようになっている。

悪役を演じている陣内孝則がなかなか良い。

従来のイケメンイメージとは違った大岡忠相や、頭が悪過ぎる敵忍者など、従来の時代劇とは違った部分もあるが、マンガっぽい軽さを狙っているのだろう。

地方礼賛、理想主義的な傾向が強く、リアリズムと言う訳ではないし、ものすごい傑作と言うほどではないが、気軽に楽しめる娯楽時代劇になっている。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
2016年、土橋章宏原作+脚本、本木克英監督作品。

下に~…、うり!下に~…、うり!

1735年、享保20年 江戸から故郷湯長谷藩藩に帰るため、橋の上を渡っていた湯長谷藩藩主内藤政醇(佐々木蔵之介)に、家老の相馬兼嗣(西村雅彦)が、路銀を片道分しか考えてなかったので、帰りも走らなければなりませんと申し出る。

すると内藤は、一番遅れたものは半年間俸禄なしだ!などと言い出したので、みんな真剣に走り出す。

一ヶ月後

時の将軍、徳川吉宗(四代目市川猿之助)は、日光社参に出立していた。

日光社参とは、日光東照宮に参拝する一大行事で、膨大な経費を要したことから長らく行われていなかったものを、8代将軍吉宗が65年振りに復活させた。

行列は13万人にも及ぶと言われ、最前列が出立したのが午前2時だとすると、最後尾が出立したのは午前10時であったと言われるほどだった。

内藤達との騒動で浜松藩江戸家式に蟄居を命じられていた松平信祝(陣内孝則)は、今に見ておれ…と内藤への復讐心をたぎらせていた。

そんな信祝に会いに来た叔父の松平輝貞(石橋蓮司)は、蟄居を命じられて何をしておった?覚悟は出来ているようだな…と話しかける。

どのような処分であろうともお受けする所存でございますと信祝は平伏して畏まる。

すると輝貞は、今回の上様の日光社参の恩赦で、蟄居を解く!と申し付けたので、ありがたき幸せ!と信祝は喜ぶ。 わしの甥故、お目こぼしされたのだろう…、今後は自らの責任を反省し、老中の責務に励めと輝貞は伝える。

磐城国湯長谷藩(今の福島県いわき市)

農民達は、殿様、いつ帰ってくるだっぺ?江戸まで5日で言ったと言うから、ゆっくりしたいんだろうなどと噂し合っていた。

江戸で土産買って来てくれるかな?家老がケチだから話だけだろうなどと話し合っている時、突如、見知らぬ農民達が「むしろ機」を掲げて畑に乱入して来ると、一揆だ!と叫びながら、家を壊し、中に積んでおいた米俵を強奪して行く。

その頃、内藤達は牛久宿のお染が勤めていた宿「鶴屋」で祝言を始めていた。

しかし、内藤は、またもや閉所恐怖症がぶり返したらしく、便所の戸を開けっ放しにして用を足していた。

そんな内藤を引っ張り出し、座敷の上座に座らせると、みんな、待たせたな!と内藤は詫びる。

相馬が、殿!このたびはおめでとうございます。

あのような側室を持たれるとは…と挨拶した上で、しかし身請けに30両もかかってしまった…と金のことを恨めしそうに言い出す。

しかしこの数日良く稼いだな~と列席した一同は思い出す。

(回想)荒木源八郎(寺脇康文)は道場破りをし、道場主が差し出す金を受け取っていた。

今村清右衛門(六角精児)は、自慢の料理の腕を宿の厨房で発揮し金を稼いでいた。

鈴木吉之丞(知念侑李)は、矢場で3本の矢を一気に3つの的に当てると言う芸当を見せ、賞金を稼いだ。

増田弘忠(柄本時生)は、猿の菊千代を使った猿回し芸で稼いだ。

(回想明け)雲隠段蔵(伊原剛志)はどうしたか?と噂すると、土浦の家に妻と娘に会いに行ったと言う。

(回想)まだ幼い娘から、水の入ったお銚子を酒に見立てて注いでもらい、にやける雲隠段蔵の姿。

(回想明け)嫁と子供か…、良いなあ~と、芸を披露するため席を立った増田は今村にぼやく。

そんな座敷の外で固まっていたお咲(深田恭子)に、殿がお待ちですよと背後から声をかけたのは、馴染みのお富だった。 遠慮気味にお咲が内藤の横に座ると、悔しい!と相馬が嫉妬する。

やがて、増田が太鼓を叩き、今村が踊りながら座敷に入って来たので、みんな喜んで手拍子を始めるが、止さんか!念仏踊りを止めろ!めでたい席で縁起でもない!と相馬が注意する。

内藤様…、私…とお咲が言いかけた時、神主様が来られましたよとお富が知らせに来る。

それは、宿の番頭が変装した姿だった。

その番頭が祝詞の真似事を始めようとしたとき、もう1人来られましたけど…とお富が再び声をかける。

誰かとみんなが不思議がっている中入って来たのは、瀬川安右衛門(近藤公園)だった。

瀬川は一同の様子を見て、この一大事に何を酔っておられるのだ!と叱責すると、殿!大変でございます!一揆が起こりました!湯長谷に一揆が起こったのです!国元の福田より知らせが来ました。けが人が出たようですと内藤に伝える。

それを聞いた内藤は立ち上がり、皆のもの、祝言は終わりだ。

悪いけど、帰ってくれ!と厳しい表情で頼む。 タイトル 「鶴屋」では瀬川が、ぐずぐずしてはおられません。

一揆が起こったとなれば、公儀が見聞のため、一夜内に目付を送り込み、二日後までに事が明らかになれば、藩がお取り潰しになるは確実!と内藤に説明していた。

しかし牛久から湯長谷までは40里はあり、とても目付の見聞までに間に合いそうにもなかった。

内藤は相馬に、すぐ策を考えろ!三つ数えるうちに考えろ!と無茶振りをする。

追いつめられた相馬は、不眠不休、さらに丸腰で走り続ければ間に合うかも…と苦し紛れに答える。

それを聞いた瀬川は、今は参勤交代の途中です。そんなことをすれば行列の威光が失われますと反論する。 お咲は、私、もう一度ここで働きます。

身請け料の30両を使ってくださいと内藤に申し出るが、すぐに鈴木が、そんなこと誰も考えていませんよとたしなめる。

夜道に出た内藤は、これより湯長谷へ帰る!走っど!と声を掛けると、走る出す。

そんな内藤達の様子を、物陰から伺っている男があり、後を尾行し始める。

翌朝、お咲は、呼び寄せた早駕篭に乗り出立、護衛役の瀬川がその後を走り始める。

水戸、大沼とひた走る内藤達は、先を走っていた飛脚を追い抜いたので、飛脚は何事かと驚く。

その頃、江戸の松平信祝は、内藤政醇の名前を書いた呪い人形を紙で作っていた。

そこにやって来た尾張柳生の柳生幻道(宍戸開)から内藤の動向を聞いた信祝は、内藤め…、ネズミのように走らせてやると憎々しげにつぶやく。

その頃、その内藤はぼろ小舟に乗り水を掻い出し、相馬が竿を使い、他の連中は全員裸で船を押して川を下っていた。

そんな中、内藤が力余って川に転落、それを見た内藤は、列を乱すとは何事か!と叱責する。

内藤はドンドン流されて行くので、忘れてましたが、御家老は泳げません!我らには御家老が必要です!と叫んだ鈴木が、相馬を救出しようと泳いで近づくが、そこに流れて来た大木が鈴木にぶつかり、鈴木は気を失って流されてしまう。

相馬の方は、その流木にしがみつき、やがて浅瀬へと流されて助かる。

そこに小舟で乗り付けた内藤が、鈴木はどうなった?と聞くと、流されてしまいました!と相馬は無念そうに答える。

それを聞いた今村達は、これは死んだな…とあっさりつぶやくが、荒木は、大丈夫だ、奴は泳げる!と断定する。

大沼宿 たどり着いた内藤達は、30人臨時に雇った人間と他の大名が置いて行った壊れ物の道具類を使い、100人の行列に見せかけねばなりませんと相馬から言われ、出来るのか?と不安がるが、相馬は、やるしかありませんと答える。

関所にいた役人(斉藤暁)が、行列来た!と同僚に伝える。

猿の菊千代を肩に乗せた相馬が代表として役人の前に出て、湯長谷藩の参勤でござると挨拶をする。

その猿は?と聞かれると、殿から授かった神猿菊千代でございますと相馬が恭しく答えたので、それはそれは…と役人2人も畏まる。

列の全員が、黒幕を垂らした笠をかぶり、顔を隠しているのを怪しんだ役人が訳を菊と、神君家康公の喪に服しているのですと相馬は答える。

5列に並んでおられるのは?と聞かれると、我が藩のしきたりで、五列五行で20列、計100人になり申すと相馬は説明する。

挨拶を終え、一礼をした相馬の肩から、菊千代が役人達の方へ逃げ出したので、役人2人は大慌てになる。

その隙に、案山子のように竿に繋いだ複数の人形を使った割り増し行列の部分が通り過ぎる。

菊千代が戻って来た相馬は詫びを言い、未知でこのようなものを拾ったと言い、折り畳まれた紙を役人に差し出す。

それは足が絡み合っている図が描かれており、枕絵と思い込んだ2人の役人は、自分が始末しておくと言って奪い合いを始める。

しかし奪い合ううちに畳まれた絵が広がったので良く見て見ると、それは相撲で取り組み合っている図であった。

その頃、久々に登城した松平輝貞は、廊下ですれ違った御用人たちからわざと足を引っかけられ無様に転んでしまう。

通り過ぎて行った御用人たちは、湯長谷藩は良くやった。もはや老中も面目丸つぶれだなどとわざと聞こえるように悪口を言って行く。

その頃、相馬は、20両も札止しから借りてしまった…と、行列を偽装するために出費した話を内藤にしていた。

江戸城内では、他の老中たちが集まっていたが、そこに遅れてやって来た信祝は、遅参致し申し訳ござりませぬと詫びて同席する。

老中達は、一揆が起きたと言う湯長谷藩の処分について話し合っていたが、小さなものなら見逃す手もある…と穏便に済まそうと言う形勢になっていた。

しかし、内藤ほどの男を見逃されるおつもりですか?責任はある!と突然信祝が発言したので、それは私怨ではないか?と他の老中達は眉をひそめるが、上様お留守の折、お取り潰しの上、別のものに治めさせるのが筋かと…と信祝は真顔で答える。

別のものと言って、誰か心当たりでもあるのか?と家老達が聞くと、うってつけのものがおりますと信祝は言う。

その後、先ほど足を引っかけて来た御用人の部屋にやって来た信祝は、先ほどは失礼…と低姿勢で挨拶すると、一気の沙汰が決まったと言いながら書状を手渡す。

相手が、確かに承ったと書状を受け取ると、帰りかけた信祝は振り返り、おぬしらの名を思い出すのに苦労したなどと嫌みを残して去る。

その後、城から、いい気味ですな…などと信祝の悪口を言い合いながら帰っていた御用人達は、突如、駕篭の前に立ちふさがった、赤い仮面の男に全員斬殺されてしまう。

その後、本陣前に出て来た御用人田中の前に丸い玉が転がって来て大爆発を起こす。

その現場近くにいた僧侶姿の森極蔵(中尾明慶)は、すぐさま柳生幻道と松平信祝の屋敷に来ると、木っ端みじんでござったと暗殺を報告し、それを聞いた信祝は、良しと言うと、火鉢の中に入れていた呪詛の相手の名前を書いた紙人形を火箸で貫く。

このたびの計画が成就した時には、ぜひとも尾張柳生の悲願を叶えてくださいませ。日の目を見とうございますと幻道は信祝に願い出る。

極蔵から、内藤達が今、大沼にいると聞いた信祝は、早いな…のつぶやくと、不眠不休で走っているそうですと極蔵は伝える。

信祝は幻道に、馬を使え!望み通り、事を成し遂げたら、湯長谷藩1万5千石、そっくりくれてやろうと言うと、あの田舎侍め…、今度こそ本気で行く!と信祝は言い切る。

二日目

内藤達は、道中、今までなかった関所が出来ていることに気づき愕然とする。

そこにいた役人達は、似顔絵付きの手配書を持っており、それで通行人の顔をいちいち確認しているようだった。

千里眼の増田が離れた所から目を凝らして手配書を見ると、そこに描かれていた似顔絵は自分たちのものだと分かる。

謀反人故、通すべからずと言う文言が描かれていると聞いた内藤は、なんで我らが謀反人なんだ?と不思議がる。

その時、背後から近づいて来た大きな桶を積んだ荷車二台を見つけた相馬は、ここで死ぬしかありませんな…と言い出す。 人相書きを見ていた役人達は、猿を連れているそうだ。捕えたらご褒美が百両もらえるそうだなどと話し合い、やって来た薬売りと二台の桶を積んだ荷車を見て警戒する。

これは何だ?と役人が桶を指して聞くと、薬売りに化けていた相馬は、死体でやすと答える。

一つの桶の中には、閉所恐怖症の内藤と今村は、死体に化け入っていた。 役人は怪しみ、桶の中をのぞこうとするので、コロリ(コレラ)で死んだのです。

触ると伝染るぞ!と相馬は脅すが、役人は、内藤と今村が入っていた桶を荷車から引き摺り下ろすろ足蹴にして転がす。

すると蓋が取れ、中に入っていた死化粧姿の今村と内藤が転がり出る。

内藤は思い切り舌を出し、目を見開いて、必死に死体の演技をする。

それを見た役人は、内藤の身体を蹴りながら、確かに死んでるな…と納得する。

その時、もう一つの樽に増田と共に入っていた菊千代が思わず鳴き声をあげてしまう。

それを聞いた役人は、もう一つの桶に近くので、開けてはなりませぬ!と相馬は必死に制止するが、今、何か言ったか?と言うだけで役人は相手にしなかった。

その時、菊千代が、樽の内側を引っ掻き始めたので、得体の知れぬ不気味な音が響いて来る。

それを聞いた相馬は、祟りじゃ!と大げさに騒ぎ、さすがに役人も気味悪がって樽から離れる。

その隙に、内藤と今村は転がっていた樽の中に戻り、相馬が急いで蓋をする。

尾張藩 江戸屋敷 御改革と言う割には日光社参に20万両とも使うとは…と、訪ねて来た松平信祝を前に将軍吉宗への皮肉を言っていたのは松平宗春だった。

吉宗め…、御三家をないがしろにするとは言語道断!父は謙虚であったため、吉宗に将軍職を奪われてしまったなどとぼやく宗春を前に、次の将軍はぜひ宗春様に!と信祝は世辞を言う。

そんな信祝に、頼むぞ!と宗春は信頼を寄せる。 その頃、宇都宮城にいた吉宗の元に、信祝が不穏な動きをしておるとの知らせが届く。

吉宗は、改革で余裕が出て来た。今こそ我らは民の拠り所とならねばならんと言う。

その頃、川に洗濯に来ていた4人の女達が、川の浅瀬に引っかかっていた半裸の鈴木吉之丞を発見していた。

可愛い仏様だ…、若えな…、身体が水を弾いている…などと冷やかし半分で拝んでいた女達だったが、いきなり気がついた鈴木が、中川の私は?と聞くと、生きていたことで驚いた女達は、あっちだと指差す。

半裸姿で河原を走り出した鈴木に、1人の女が、せめてこれを…と女物の着物を差し出して来る。

それを見にまとい、渡しの場所に来てみると、ふんどしと一緒に「鈴木 先に行く」と書いた紙が木の棒に付いていた。

内藤達は森を抜け、ようやく目指す湯長谷藩の城近くまで到達していた。

しかし、荒木が突然、みな、気をつけろ!と注意を促す。

内藤らは、飛び出して来た諸坂三太夫(渡辺裕之)や柳生幻道らに取り囲まれる。

何者だ?我らは参勤交代して戻って来た者、どこの者だ?と相馬が聞く。

諸坂が剣を抜いて構えると、その構えを見た荒木は、新陰流!柳生か!と見抜く。

その荒木と剣を交えた諸坂は、何で来んな使い手がいるんだ!と驚く。

そこにさらに、青い面を着けた新手が登場する。 面を取ると、それは雲隠段蔵だったので、内藤らは驚く。

段蔵と剣を交えた内藤は、何故じゃ?と問いかける。

段蔵…、わしは色々な剣は学んだが、仲間を切る剣は持っておらんと言うと、自ら刀を捨てる。

そこに姿を現した敵の1人が、段蔵の幼い娘おみよを人質にして剣を突きつけ段蔵を脅して来たので、それを見た内藤は、参った!段蔵は裏切ってねえ!帰って来たな段蔵!と呼びかける。

斬れ!段蔵!と幻道は命じる。

その時、側にいた菊千代が、落ちていた内藤の剣を拾い上げたので、それを受け取った相馬がおみよに剣を突きつけていた敵の背中にその剣を投げて刺す。

敵が倒れた隙に、すばやくおみよを助けた相馬は、段蔵!存分に斬れ!と叫ぶと、酒の入ったひょうたんを投げてやる。

その瓢箪を受け取った段蔵は、たちまち尾張柳生に斬り掛かって行ったので、敵は退散する。

その後、内藤らは湯長谷藩の城にたどり着く。

何とか間に合った…と相馬は安堵するが、その時、城の門前で煙が上がっており、何者かが家紋付きの長持ちなどを燃やしているのに気づく。

何事かとその側に近寄ってみると、ここは尾張柳生の城だぞ!と柳生の者が言い放つ。

勝手に旗を立てて!と相馬が憤ると、もう改易になりおった。

もう目付は帰ったと柳生の者が言うので、間に合わなかった…と内藤達は肩を落とすが、沙汰が早過ぎっぺ…と相馬は不思議がる。

そうした会話を何気なく聞いていた柳生の者は、ようやく、内藤じゃ!と気づき、慌てて城の中に駆け込む。

終わった…、湯長谷藩は潰えた…と相馬は落胆する。

そこに次席家老の福田弥之助(橋本じゅん)がやって来たので、福田!何があったんだ?と問うと、申し訳ございません!湯長谷を守りきれませんでした!と福田は詫びる。

事の次第を話せ!と相馬は命じる。 森極蔵から、内藤達のことを知らされた松平信祝は、江戸で愉快そうに笑っていたが、わしも行くぞ!内藤に直々に切腹を申し付けてやる!それにわしは今、江戸におらぬ方が良い。湯長谷の江戸侍達も叩き出せ!と命じる。

湯長谷藩江戸屋敷では、平藩に身を寄せるのじゃ!と琴姫(舞羽美海)を見送る秋山平吾(上地雄輔)が、屋敷を追い出された仲間に命じていた。

秋山は琴姫に「口上」と書かれた書状を渡す。

その後、松平信祝の屋敷前に単身やって来て、腰の刀に手をかけた秋山は、誰を殺すつもりだ?と背後から声をかけて来た侍がいたので、何者だ?と怪しむと、南町奉行大岡忠相(古田新太)である、刀を納めい!と言われる。

湯長谷では、近くの農家に案内して来た福田が、何の前触れもなく一気が押し寄せ、女子供も連れて行ってしまった。あれは百姓ではない、百姓に化けた手だれの武士の集団ですと説明していた。

それを聞いた相馬は、わしの妻と娘は無事なのか?と案ずる。

無事です、櫓に閉じ込められていますと福田は答える。

まずは飯を食おうと言うことになり、今村が飯の準備を始める。

場内の櫓の一室に閉じ込められていた相馬の妻冬美は、ちょっと厠へと見張りに申し出、厠へ行く振りをして、隣の座敷に来ると、もうダメです!と言い、自らの簪を抜いてそれを喉に突き刺そうとしたので、荒木の妻、富江(富田靖子)が必至に止めるが、でも荒木殿、殿様も旦那様もいつ帰って来るのです?と嘆く。

富江は、戦いましょう!と言い聞かせ、相馬の娘の小梅も、もう少し持ちこたえましょうと母親をなだめる。

江戸の南町奉行所に連れて来られた秋山は、家老を狙っておったのだな?と大岡忠相から確認されていた。

秋山は、信祝に潰されましたから…と無念そうに答え、大岡様は何故止めたのです?と聞く。

信祝には手だれの護衛がいると言うので、信祝を討つ機会を失してしまった…と秋山は嘆くが、江戸市中で騒ぎは許さん!と大岡は叱責する。

大岡様は何故あそこに?と秋山が聞くと、老中を見張っておったのだ。

幕閣暗殺の疑いがあるのだ。私は信祝にも療養所にもかが聞くのだ。おぬし手を貸さぬか?と大岡は言う。

湯長谷では、出来上がった飯を食いながら、一気は誰の仕業か?信祝しかねえ!と話し合っていた。

そこにやって来た段蔵は、娘は古い知り合いに預けて来た。信祝は蟄居になったが、今は蟄居が解かれた。

参勤の恨みで、我々の後を追い、復讐の機会を狙っていたのだと教える。

それを聞いた相馬は、全て信祝の仕業だったか…と合点すると、信祝はこれまでにもいくつものハンデ一揆を起こし、潰していたのです。

今回、その仕事を勤めたのは尾張柳生…と段蔵が言うと、これでは釈迦の手のひらだな…と今村はあきらめ顔になる。

内藤は、夜が明け次第、村の様子を探ると言うと、段蔵は、城の様子を探りに出かける。

福田が、このままでは正体がばれてしまうので、百姓の姿に化けようと提案する。

翌朝、農民姿で村に出かけた内藤は、こったなこと…と唖然と立ち尽くす。

村が無惨にも荒らされていたからだ。

茂吉!と内藤が呼びかけると、茂吉(神戸浩)も気づき、殿様!と呼び返して来る。

大事なかったか?と聞くと、何とか1本残っただと、大根畑の惨状を茂吉は訴え、種植えて又作って行かないと…と嘆く。

そこに、他の農民達も集まって来て、水道も壊して行った。

刈ったばかりの米もみんな持って行った…、殿様が留守にしてたから…、今頃戻って来ても遅いぞなどと好き勝手なことを言う。

しかし内藤は、すまねえな…と詫びるだけだった。 そんな内藤は、早駕篭に乗ったお咲がやって来たのに出会う。

お咲が、駕篭酔いをしたらしく、降りるや否や、気持悪いと言ってしゃがみ込む。

そこへ、瀬川も疲労困憊の姿で到着する。 その頃、江戸では、松平信祝が駕篭に乗って出立していた。

一方、大岡と秋山は森極蔵を尾行していた。 大岡は、刺客はあの坊主、殺しの現場を見た物がおると言う。

その時、秋山は、つけられています。二手に分かれましょう。ここは私が引き受けますから、私にもしもの事があったら、平藩の琴姫様に心より思っておりましたと伝えていただきたいと頼む。

しかし大岡は、断る!生きて自分で言えと答えると、自分は森極蔵を追って行く。

秋山は追って来た尾張柳生の一派と戦い始める。 その小太刀、織田流か?と相手は見抜く。

一方、付けられていたことに気づいていた森極蔵は、爆弾を手にすると、追って来た大岡に対峙する。

柳生一派と斬り合っていた秋山は、逃げた相手が落として行ったと思われる、謎の文字が書かれた紙を拾っていると、時ならぬ爆音に気づき、急ぎ現場に駆けつける。

大岡は、極蔵が投げた爆弾を避けながら、投げた十手で、相手の顔面を打ち据えていた。

秋山が来ると、仕留めた…、久しぶりに投げたが、良う当たってくれたと十手が当たったことにほっとした様子で話す。

その頃、湯長谷では、相馬や今村たちが、水源を失った農民達のために、古びた井戸を発見しに行っていた。

中に水があるかどうかを調べるため、小石を落としてみた相馬だったが、古井戸の一角が壊れ、自ら中に転落してしまう。

井戸の底から、助けてくれ~!と助けを求める相馬が、溺れっちまうと叫ぶのを聞いた今村達は、水があるなと安堵すると、やってみるしかあんめえと荒木が言い、そのまま相馬をうっちゃったまま去って行ってしまう。

お前達~!と井戸の中の相馬の呼び声がむなしく響く。

祭壇を拝んでいたお咲は、一緒にいた内藤が押し黙っているので、どうしたんだい?と聞くと、おっかねえだと内藤は言う。 湯長谷の行く末がこの手一つにかかっていると思うと…と情けない顔で言うので、内藤様、弱音吐いとる時でねえ、生きてりゃどうにかならないと言うことはないよ。巧くいかなかったときは、私も一緒に斬られるよとお咲は励ます。

私は内藤様に会う前は色がなかったよ。みんな夢の中のように灰色で、早く終われば良いと思っていた。 牛久で内藤様に助けられてから、初めて生きていると思ったんだとお咲は感謝する。

村さ、金も米もねえ…、炊き出ししてやりたいんだが…と内藤が言うと、手伝うよ!やっと役に立てるんだね…とお咲は笑顔で答える。

その夜、荒木が小さな温泉に浸かっていると、諸坂三太夫もやって来て、一緒に横に浸かる。

我らは江戸の柳生に比べずっと日陰で暮らして来た…と諸坂は言うので、1万5千は貧しいぞ、おぬしは柳生の庄で剣を極めれば良いのだと荒木は答える。 今は剣など極める時代ではない。

そろばんを使う部署の方がはるかに重宝される…。

本音を言えば、わしは藩のことなどどうでも良い、思う存分戦ってみたいのだ…と諸坂が言うと、多分その時は近い…と荒木は答える。

翌日、お咲は、村のおかねらとともに握り飯を作る手伝いをしていたが、巧く握り飯を作ることが出来なかった。

しかし、そんな自分のふがいなさを悲しむお咲に、出来なかったら出来るようになりゃ良いだけ…、よく働くな…とおかね達はお咲を褒める。

私のような身分の低い物が殿様の嫁になるなんて…とお咲が恥じると、殿様はいつも何もしねえで田んぼにやって来る。

子供はみんな殿様にだっこされてるだ。飾らない良い殿様だよ、今頃、殿様、かけずり回っているんだろうねぇ…とおかね達は内藤のことを褒める。

そこへ現れた鎖鎌を操る柳生一味が、お咲に向かい、内容の女だな?一緒に来てもらおうと睨みつける。

一方、茂吉たち農民の元へやった来た柳生一派は、さっさと立ち退け!ここは柳生の道場にするのだ!と乱暴をされていた。

田んぼにいた内藤達の元へ戻って来た段蔵は、連れ去られた者達はみんな場内に捕われている。

藩主は明日、打ち首にするそうです。

さらに、信祝が湯長谷に来るそうですと伝える。

そこへ、茂吉の息子の佐助がやって来て、父ちゃんの畑が悪い奴らに荒らされているだと知らせる。

すぐさま、茂吉の田んぼに駆けつけた内藤は、大丈夫だと気丈に答える茂吉に、お前がずっと耕して来た畑ではないか!と言葉をかけると、悔しいだ…と茂吉は本音を吐き出す。

あまりの悪行に堪え兼ねた内藤が、信祝!許さねえ!民をないがしろにするような公儀はもういらねえ!柳生から城を取り戻す!と言うと、側に致そう間が、策は100通りもあります!と力強く答える。

そこに駆けつけて来たおかねが、お咲さんがイェンな奴に連れて行かれて!と知らせる。

江戸、南町奉行所 お白州

大岡様、御出座!

白州に座らされていた森極蔵は、目の前に座した大岡忠相に対し、わしを放免したら、もっと高い地位に付けてやる…などと話しかけて来る。

それを聞いた大岡は、興味を持ったように身を乗り出し、裏付けはあるのか?と聞く。

もっとも天下に近いお方に口添えをしてやると極蔵が自慢げに言うので、誰だ?と聞くと、あの方は、きっと肥子あげてくださるだろう…、何せ御老中だからな…などと極蔵は語る。

実はわしにも昵懇の方があって松平信祝様だと大岡が言うと、何だ、おぬしもか!とうれしそうに極蔵が答えたので、やはり黒幕は信祝であったか!と大岡は納得する。

罠にはめられたと悟った極蔵は、たばかったか!と悔しがるが、この大岡と白州で取引するとは言語道断!ひったてい!と大岡は命じる。

その時、脇に控えていた秋山が、お待ちください!と大岡に声をかける。 まだ一つ、謎が残っております。

何故この者が湯長谷にいなかったのか?と秋山が指摘すると、柳生の刺客が落として行った紙を取り出し、今謎が解けましたと大岡に伝える。

「鳩五川九岩八」と書かれた意味は、上様が通られる鳩ヶ谷、川口、岩渕と地図を出して大岡に見せ、数字は上様がそこを歩まれる時刻… 奴らは上様を待ち伏せ、亡き者にせんと企んでいるため!江戸から信祝が発ったのも、謀反の折、自分は江戸にいなかったことにするため!と秋山は解き明かす。

その頃、輿に乗った尾張柳生の柳生としともから良きに計ろうてちょうがやと上機嫌で頼まれた信祝は、水戸藩の本陣から出立しようとしていた。

一方、湯長谷藩では、相馬が城奪還作戦をみんなに伝授していた。 湯長谷城に駆けつけて来た馬に乗った使いが、開門!としとも様より火急の知らせでござる!と呼びかけたので、城門が開く。

磐城で殿が湯長谷の者達の抵抗にあっているだと! 使いの知らせを聞いた柳生幻道たちは、直ちに馬で城を出立する。

それを見送った使いの者は、段蔵の変装であった。

その直後、棒の先に包丁を縛り付けた槍を、今村が城の外から投げ込む。

その槍は、櫓に幽閉されていた女達の部屋に到達する。 その槍に着いていた書状を読んだ富江は、婿殿!と歓喜の声を上げる。

何事かとやって来た見張りを、数名の女が取り押さえる。

小梅は、板敷の床の一部を剥がし、その下に隠してあった刀類を取り出す。 そして、表に出る戸から、もし!子供が熱を出しまして!と富江が外の見張りを呼ぶ。

我慢致せ!と外の見張りがやって来て声を掛けると、我慢できませぬと言いながら戸の内側から槍を突き、相手の太ももを傷つけると、戸を開いて外に飛び出す。

そして、城門を内側から開いた女達は、そこに待っていた内藤らの姿を見て、殿!と感激する。

良く無事であったなと内藤はねぎらい、相馬は武器を持って立っていた娘の小梅に駆け寄ると、母上は?と聞く。 母上は櫓で無事ですと小梅は気丈にも教える。

富江から刀を受け取った荒木は、やっぱりこれを差さないとなと言いながら腰に差すが、富江は、婿殿!と睨みつけると、今まで何をしてたんです!などと文句を言い始めたので、荒木はペコペコし出す。

そんな様子を監視していた鎖鎌の男は、城から狼煙を焚く。

馬で磐城に向かっていた幻道は、その狼煙に気づくと、あれは!罠だ!と気づき、急いで馬を城へ向かわせる。

そんな幻道たちの後から城へ向かっていたのは鈴木吉之丞で、何事ですか?と驚きながらも追尾する。

お咲!と城内を探していた内藤は、足で雨戸を叩く音が聞こえたので、雨戸を開くと、そこに縛られたお咲を発見する。

又、足手まといになって…とお咲は悔やむが、聞いたぞ、他の者をかばったんだってなと内藤は笑顔で声をかけ、捕縛を解いてやる。

しかし、すねたお咲は、牛久に帰ります。

私なんていても足手まといになるだけだから…などと言い出す。 そんな2人の様子を、近くに来た弾蔵は呆れたように見つめる。

お前の気持はどうなんだ?と内藤が聞くと、内藤様の気持は?殿のお気持ちを聞かせてくださいとお咲が聞き返す。

そこへ現れたのが鎖鎌使いで、鎖を内藤の刀に絡めて来る。

そんな最中にも、お咲は、内藤様言って!はっきり言って!と迫る。

内藤は、鎖鎌に苦しめられながらも応戦し、想うていなければ側室にせぬ!と答えるが、お咲は、その答えに満足しない様子。

そんな内藤の首に鎖が巻き付いて来たので、内藤は、うるさい相手を斬り捨てながら、お咲に会うたと気からずっと想ていた。

この想いはこれからも変わらぬ!とお咲に言う。

その一部始終を見ていた段蔵は、それ、今ですか?と呆れる。 直に戻る!とお咲に言い残しその場を立ち去る内藤。 その直後、戻って来た柳生幻道たちが、開門!と叫んでいた。

門を開けて中に入ろうとした柳生一派に、その背後から襲いかかる鈴木吉之丞。

城の中では女達が立ちふさがるが、その前にやって来た今村と増田が、女達には指一本触れさせねえぞ!と幻道を睨みつける。

今村達が戦い始めた中、城壁の上に登っていた鈴木が矢を放ち、遅れました!と詫びる。

しかし、1人の柳生は鎧を着込んでおり、効かぬわ!この鎧を貫けるものか!と石垣の上にいた鈴木を嘲る。

しかし、鈴木は、そんな鎧に向かい、ネジのような渦巻き状の溝が付いた鏃の矢を放つ。

その矢は鎧に刺さると回転しながら貫いて相手を倒す。

そんな鈴木に女達は駆け寄り、鈴木様!おっかなかった!などと甘え始めたので、努力など無駄だな…と増田がつぶやく。 段蔵は護身用の懐剣をお咲に渡して、自らも戦いに向かう。

温泉で会話した諸坂三太夫と荒木源八郎が対峙し、互いに名乗り合う。

互いの剣がぶつかり合い、腕は互角に見えたが、その時、一方の剣が折れてしまう。

折れたのは諸坂三太夫の剣であった。

良い戦いであったと内藤は褒めるが、それを見ていた柳生幻道は、この恥さらしが!と諸坂を蔑んだので、幻道!と内藤は睨みつける。 柳生のために命を賭けたであろうに…、人の心の痛みが分からぬとは不憫よな…と内藤は哀れむ。

そんな内藤の言葉も聞こえぬように、これで一国一城の…と幻道が叫んでいた時、横から近づいた諸坂は、小刀で幻道の心臓を貫く。

それが誇り高き柳生の言うことか! 倒れた幻道は、三太夫…、裏切ったか…と呻くが、下らん私欲の為に剣を磨いたんじゃねえ!と諸坂は言い返し、柳生の庄に帰るぞ!これ以上恥をさらすな!一からやり直しだ!と仲間達に呼びかけると、内藤には、信祝は上様の命を奪い、天下を取る気だ、お気をつけなされ…、ではごめん!と言い残し、仲間達と共に立ち去ってゆく。

しかし、柳生の一部は、高萩宿の本陣にいた信祝に、湯長谷を奪い返されただけではなく、幻道が討たれたことを注進しに行く。

それを聞いた信祝は激怒し、戦の支度を整えよ!謀反人内藤を討つのじゃ!と命じる。

左手を負傷した相馬や内藤達は城内に集まり、信祝が上様を狙っているとはな…と話し合っていた。

前に、我が藩の金山を狙ったのもそのためなのか…と今村が合点する。

そこにやって来た増田が、殿!信祝が来ます!と知らせる。

内藤は、来たか…と顔を引き締め、どのくらいだ?と聞くと、およそ千人と増田は答え、ろう城して戦いますか?と聞く。

しかし内藤は、これまで大儀であった。わしのようなものに良く付いて来てくれた…、うれしく思うぞと礼を言うと、ここは1人で行く。

わしの首を獲れば老中も喜ぶだろう…、民にも怪我をさせてしまった…、藩主失格だ…、この責めは追わねばならぬ…と言う。

それを聞いていた相馬が、私もお供しますと言うと、某も…と荒木も続く。

湯長谷の底力をとくと見せてやるぞい!と今村が言うと、腕が鳴るぞと増田も答え、わしも混ぜてもらおうと段蔵も言い出す。

ここにおる女は頼んだぞと瀬川に託した内藤は、揃いも揃ってバカばかりだな…と一同を見渡し、狙うは信祝の首のみぞ!と念を押す。

内藤達が城を出て行くのを見送るお咲が、私は待つことしか出来ません…と嘆くと、待つのもまた仕事ですと瀬川が言い聞かせる。

内藤様、どうかご無事で…とお咲は声をかける。

列を組んで湯長谷に進軍していた信祝は、内藤ら7人の侍が立ちふさがったのを見て、面白い…、さすがは貧乏侍…と嘲る。

我らは一騎当千の強者揃い!と叫んだ段蔵が、隊列から1人離れる。

信祝は馬上から、内藤政醇!謀反の罪にて切腹を申し付ける!と言い渡すが、それを聞いた内藤は、断る!戦をすっぺ?我々は今より磐城の武士だ!と答える。

さらに、老中信祝こそ、上様の命を狙い、天下を奪おうとする大罪人である!と内藤が叫んだので、激した信祝は、斬れ!と命じる。

それに対し、相馬は煙撒け!と命じる。

存分にお相手致す!と良いながら剣を抜く内藤達。

段蔵が敵の列に煙玉を投げ込んだので、周囲は白煙が立ちこめ、敵軍は煙幕で視界を失う。 そんな中、荒木は敵陣に踏み込み斬りまくる。

馬上の信祝は、情け無用じゃ!斬りまくれ!と叫ぶ。 鈴木は射つ矢が切れたので、剣を取り敵陣へ向かう。

信祝の前には盾が壁のように並べられるが、今村や増田が、その一角を崩して信祝に近づこうとすると、前後を盾に阻まれ周囲を囲まれてしまう。

信祝は内藤らに向かい、この世は生まれが全てよ!貧乏人は全て我らに差し出せば良いのだ!と傲慢に言い放つ。

しかし内藤が、人間の価値は誰と出会ったかだ!人は金だ!友は宝だ!と言い返したので、笑止!人は必ず裏切るもの!と信祝はあざ笑う。

内藤は、そんな信祝を哀れんだのか、信祝!おぬし、罪を償うて、湯長谷さ来ねえか?人間らしく生きられっど!と呼びかけたので、ふざけるのもいい加減にしろ!こやつらを皆殺しにするのだ!と信祝は絶叫する。

わしらは裏切んねえぞ!と内藤は反論する中、何をしている?討て!と信祝は命じるが、背後の輿に乗っていた柳生としともは、時期尚早…、尾張に帰ろう…とつぶやくと、輿を反転して帰り始める。

それに気づいた信祝は、あの老いぼれが…と睨みつけるが、内藤の方には農民達が、おらたちの殿様を守るだ!と叫びながら加勢に駆けつけて来る。

それを目の当たりにした信祝は、この虫けらめ!と吐き捨てる。

そこへ、久しぶりだな、御老中…、江戸が非番になった故、おぬしを捕えに来た。

江戸の土産だ!と声をかけて来たのは大岡忠相で、土産と言うのは、秋山が引き連れて来た森極蔵であった。

こいつが全て吐きおった。側用人田中様を暗殺したと…と秋山が言う。

さらに、信祝!もう止めい!と言いながら近づいて来たのは、伯父の松平輝貞であった。

伯父上!と驚く信祝に、もう終わりじゃ!と言いながら、輝貞は「下」と書かれた書状を差し出してみせる。

老中松平信祝、その任を解き、今後、古賀郡、本多忠長の預かりとすると輝貞は告げると、おぬしのようなものはもう身内とは思わんと言い、鞭で信祝を打つと、内藤に対しては、たびたびすまんと詫びる。

それに対しない等は、望みは一つ、湯長谷を戻していただきたいと申し出る。

武士の風上にも置けぬ!引っ立てい!と大岡忠相が命じると、わしは負けてはおらん!と言い放った信祝は、自ら兜を脱ぎ、笑いながら大岡らに同行する。

後に残った内藤は、皆のもの!参勤交代はこれにて終いとする!と周囲の者達に告げる。

段蔵は、玉も切れたし、酒も切れた…と瓢箪を逆さまにして笑う。

その知らせを受けた吉宗は、あっぱれ内藤、又湯長谷の土を守りおったか…、江戸の土も同じ事…とつぶやく。

信祝遠投の処分が軽すぎはせぬかとの声もあるが、肝要こそ肝心、無事長久の元よ。しかし世襲ばかりでは幕府も危ういの…と吉宗は反省する。

湯長谷の里では、今村や増田が、好きな女子はいるのか?お前ならよりどりみどりなんだろうな?などとうらやましがりながら鈴木をからかっていた。

すると鈴木は、なかなか言い出せなくて…と恥ずかしがりながら、おかねさんですと打ち明ける。

それを聞いた今村たちは、あの年増をか!と驚き、我々は仲間だ!と増田も急に機嫌良くなる。

そこに、みんな、ご飯が出来ましたよ!と言いながら当のおかね達がやって来ると、恥ずかしそうに握り飯を今村に渡す。

茂吉が自慢の大根を持って来る。

やがて、村で祭りの太鼓が聞こえてくる中、段蔵は、おみよの手を引き帰ってゆく。

おみよは、父ちゃん、どこ行くの?と聞く。

内藤とお咲は、一緒に、祭りの踊りに参加し、うれしそうに踊っていた。
 


 

 

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