白夜館

 

 

 

幻想館

 

東京アンタッチャブル

 

三國連太郎と高倉健さんのバディもの。

続編もあるが、微妙に設定が違っている。

所轄も、本作では遊園地や最後に新宿歌舞伎町が登場していることからも分かる通り、都内が舞台だと思われるが、続編では八王子の方になっている。

健さんと三田佳子さんが恋人同士と云う設定は同じなのだが、続編の方では三田さんは府警になっており、主任役の三國さんは二人の関係を知らないことになっている。

つまり三田さんは両方の作品で同名なのに別人設定なのだ。

同じように続編では、丹波哲郎さんが本作と同名の役で登場し、同じように刑務所を脱獄するのだが、本作では最後死んだことになっているので、同名だが別人設定と云うことになる。

さらに本作では、三國さん演じる主任は妻に先立たれ、子供を塩原の方に預けて仕事を続けていると云う設定になっているが、続編ではその子供と同居している。

本作では、そんな三國さんに気のあるバーのママとして渡辺美佐子さんが登場しており、大人の恋愛をかいま見せてくれる。

丹波さんはデビュー作「殺人容疑者」のような冷酷な悪人役を演じているのだが、端正な二枚目なので、あまり怖そうに見えないのが難と言えば難かもしれない。

三國さんは過去に訳ありと云う設定だが、それを陰のように背負った屈折した感じでもなく、普通の真面目な上司と云った感じ。 健さんも真面目一筋の青年刑事と云った印象で、二人のコンビは好感が持てる。

本作に出ている三國さんは、まだ涙袋が目立ったりしておらず、今の佐藤浩市さんにそっくりである。

犯人役を演じている潮健児さんは、もちろん後の「地獄大使」である。

ジェームズ・キャメロンを見いだしたプロデューサーとしても知られる筑波久子さんが、ストリッパー役としてキュートな魅力を見せてくれているのも見所だろう。

余談だが、キネ旬データのキャスト表では、三田さんと同居している祖父の清造役は加藤嘉となっているが、加藤嘉さんは本作には登場していない。

清造役を演じている老人は、もっと太った人だが、他で見た記憶のない俳優さんである。

事件展開は刑事物に慣れた東映作品と云った感じで、今でも安心して見ていられる。

特に重厚な大作のような作品ではないが、十分楽しめる作品だと思う。
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1962年、東映、長谷川公之脚本、村山新治監督作品。

他の囚人に混じり、はしごの上で刑務所内の建物の二階の窓の鉄枠のペンキ塗りをさせられていた囚人の川本五郎(丹波哲郎)は、雷鳴が聞こえて来たので、気にするように空を見上げる。

その時、現場を監視していた係官(山田甲一)が、川本に、しっかりやってるか!と声をかけてくる。

やがて稲光が走り、土砂降りの雨が降り出したので、看守は作業をしていた囚人たちに建物へ戻るよう命じる。

そんな中、わざと帰るのを送らせた川本は、はしごを持って建物の側へ戻ってくるが、中には入らず、そのままそのはしごを使い、側の建物の屋根に上ると、隣の建物の間にはしごを渡し移動する。

さらに、その建物の屋根から塀にはしごを斜めに立てかけ、それを伝って塀の上にたどり着くと、はしごを回収し、反対側の地面にそっと降ろすと、そのはしごを伝って地面に降り立つ。

タイトル キャスト・スタッフロールのバックで、刑務所から逃げる川本の様子

戻って来ない川本が脱走したことに気づいた刑務所内ではサイレンが鳴り響く。

それに気づいた川本は作業用の帽子を脱ぎ捨て、金網の破れ目を抜けて小川に出ると、線路脇まで逃げてくる。

列車が通り過ぎると、その後部車両を追いかける。

監督名

城西署刑事の原田芳夫(高倉健)は前夜泊まりだったので、朝、洗面所で顔を洗った後、ロッカーでワイシャツに着替えていた。

そこに、やって来たのが捜査主任の西山直人(三國連太郎)で、泊まりか?と声をかけて来たので、どうしても変わってくれと言われたものですからと原田は答える。

原田はすぐに、脱獄した川本が関西方面に逃げたようですと報告するが、自分がパクった奴か…と思い出した西本は、僕はそうは思わんね、すぐに戻ってくるはずだ、ブツだよ、奴はブツをこの管内に隠しているんだと言う。

僕が赴任してくる前ですね?と原田が聞くと、2年前の夏だ…と西本は当時のことを語り出す。

(回想)白昼、シャッターの閉まった宝石店の店先に停まるトラックと乗用車 乗用車から降り立った3人は、トラックから牽引ロープを伸ばし、その先のフックをシャッターに引っ掛けると、トラックに引っ張らせ破壊する。

さらに、ショーウィンドーを割って中の宝石を次々に盗み出して行く。 騒ぎを聞きつけ駆けつけて来た警官に、川本が拳銃を浴びせ、乗用車に乗り込むと仲間とともに逃走する。

撃たれた警官が川本の顔を知っていたので、その証言から、川本が立ち回りそうな先を片っ端から張っていた所、パチンコ店から出て来た川本はあっさり捕まってしまう。

しかし川本の口は堅く、トラックの運転手や乗用車の運転をしていた仲間のことを西本が吐かせようとしても、手荒に扱うと人権蹂躙で訴えるぜと逆にからかわれる始末。

川本は自分だけの単独犯行としか話さず、彼の身柄だけが刑務所に移送されることになる。

護送車に乗せられる川本は、立ち会っていた西本の顔を見ると、西山警部補殿、いつか仕返ししてやるぜ、俺は義理堅いからなと嘲りながら言い捨てて行く。

(回想明け)大した奴ですね、そんな捨て台詞吐くなんて…と、話を聞き終えた原田は妙な関心をし、明け番なんでと言うと帰ってゆく。

入れ替わるようにやって来た片桐課長(伊沢一郎)にも、川本はまだこの管内に戻ってくると思うと云う自分の推理を明かした西山だったが、ブツはもう関西に送られており、大阪辺りで受け取るに違いない、この管内で奴の顔は知られているからね…と反論されてしまう。

その頃、原田は恋人の井上百合子(三田佳子)と赤坂プリンスのプールで久々の逢瀬を楽しんでいた。

プールでひと泳ぎした二人は、プールサイドのテーブルに座ると、君は7日に1日、僕は6日に1日の休みしか取れないので、こうして会えるようにするのは大変で、主任の方には俺の方が泊まりを代わってやったと言っといたよと原田は自慢げに苦労話を打ち明ける。

署にいた西山は、一応奴の出向きそうな所を手配しときましょうか?と課長に提案するが、手配は夕べのうちにすんでいるとあっさり交わされてしまう。

プールの後、原田は、百合子が祖父清造(加藤嘉)と二人暮らしをしている城西倉庫脇の住まいにビールを土産に戻ってくる。

西山は独自の判断で動くことにし、まずはストリップ小屋で踊っていた川本の元情婦サリイ・南(筑波久子)に会いに行く。

舞台を降りて来たサリイは、舞台袖で待っていた西本に気づくと、バタフライは付けてますよとからかうが、川本五郎から何か言って来ないか?匿ったりしない方が良いと言われると、五郎ちゃんと付き合うのはご免だわと無関心そうに答える。

清造とビールを飲みながら、百合子も一緒に夕食の席でTVの柏戸と新大関佐田ノ山戦を見ていた原田は、最近相撲が増えたねえと言う清造に、年6場所ですから4日ごとにやっているようなものですと教えていた。

ニュースが終わってテレビを消すと、今のニュースで言わんかった所を見ると川本はまだ捕まってないな…と清造は言い出す。

わしがここに来て17になるが、川本はその頃から不良で、18、9の頃、友達をここへ連れて来て、2人で倉庫の荷物を持ち出していたものだ。

その後、少年院に入れられたが、出てくると帰って度胸が増しており、とうとうあんな宝石強盗までやるようになった。

あんな奴は早く征伐して欲しいと清造が頼むので、おじいちゃん、そんなに芳夫さんをけしかけないで!もしもの事があったらどうするの!と注意するので、大丈夫だよと原田は苦笑する。

何の収穫もなく、馴染みのバー「リド(RIDO)」にやって来た西山を、ママの金子三枝(渡辺美佐子)が出迎える。

川本の奴が脱獄したらしいとぼやく西山に、まだお仕事中?今夜はゆっくりして良いんでしょう?坊ちゃん、お元気?と三枝は聞いてくる。

そう聞かれた西山は、いけね!グルーブ送るの忘れてた!と言うので、野球が好きなの?昨日はお母さんの命日だったわね、可哀想じゃない坊や…、そんなに亡くなった奥さんのことが忘れられないの?早いもんね、もう2年になるわ…、あの事件ね、あなたがこの店に来るようになったの…、この店はまだ改装中だったわ。

あの人がうちにいたのだって半月だったけど、真面目なバーテンだと思ってたわと三枝が言うと、必ず奴は戻ってくる。

今度こそけりをつけてやる!と西山は吐き捨てるように言う。

「映光宣伝KK」と云う会社名のヌードスタジオが入っている豊岡ビルから、ヌードも出るらしき女たちがぼやきながら数名帰ってゆく。

それを物陰から伺っていた男がビルの中に入ると、スタジオに残っていた親爺(志摩栄)に、おい、相変わらずだな!と声をかける。

川本と知り驚く親爺に、明日までここにいさせてもらう。

サツがここを嗅ぎ付ける前には遠くへ行っているから心配するな、鍵!と有無を言わせず親爺を追い払うと、壁に貼ってあったヌードポスターを剥がし、持ってけ!こんなものがあったんじゃ体中かゆくなると投げつける。

深夜0時、まんじりともせず部屋で待機していた川本は、表で物音がしたので、窓から下をのぞき、そこにいた3人吉井久一(織本順吉)吉井金次(滝川潤)佐々木鉄男(潮健児)らに紙に包んだ鍵を落とす。

それを拾い上げた3人は、鍵でビルの中のスタジオに入ってくる。

彼らを迎えた川本は2年間、ムショの中で計画を立ててたんだと言うので、一体宝石はどこに隠したんだ?と久一が聞くが、心配するな、俺が一度でもお前たちを騙したことがあるか?と川本はうそぶく。

確かに、あんたがあの時しゃべらなかったから、俺たちこうして暮らして来れたんだけど…と哲生が答えウると、そうだろ?と言った川本は、久一に奴に話付けたか?と確認する。

15万だと久一が答えると、やるのはいつだ?と川本が聞き、明日の朝の10時頃と久一が答える。

西山は「リド」から帰る。

翌朝、現場に向かう車の中で川本がハジキは手に入ったか?と聞くと、運転していた久一がラッシュの中だと答える。

拳銃を取り出した川本は、弾丸が7発入っていることを確認する。

それだけ買うのが精一杯だったんだと言う久一に、後で金はたっぷり返してやるぜと川本はうそぶく。

「木元興行」と言う会社が入ったビルの前に到着した川見とと久一は、逆方向からライトバンに乗ってやって来た金次と鉄男の車を確認する。

車の中からビルの二階の「木元興行」の様子を見守っていた久一は、窓が開いたので、合図だ!と叫ぶ。

ビルから、男性社員細川良助(浜田格)とバッグを持った女性事務員菊地すみ子(小笠原慶子)の二人が出てくると、棍棒を手にした鉄男が車を降り、さりげなく男性社員の背後に近づくと、後頭部をいきなり殴りつける。

川本と鉄男は、驚く菊地すみ子を拉致し、久一の運転する車の中に押し込むと、自分たちも乗り込んで車を発車させる。

事件を知った片桐課長は、署内にいた西山と原田たちに直ちに現場に向かうよう指示する。

後部座席に拉致したすみ子が暴れるので、拳銃で殴りつけ気絶させた川本だったが、鉄男がバッグを取ろうとしても、すみ子が握りしめておりなかなか外れなかった。

「木元興行」にやって来た原田が、救急車が到着するまでソファに寝かせられていた被害者の細川に誰にやられたんですか!と聞くと、脱獄囚の男らしいと、側にいた細川の父親が証言したので、川本ですか!と西山は驚く。

そこに救急隊が到着し、細川を運び出して行く。

目撃者の証言を聞いて来た刑事が西本に、犯人の車はブルーの車らしいですがナンバーまでは分からなかったようですと報告すると、緊急手配をしくよう西本は指示する。

そこに、「木元興行」社長の木元茂治(須藤健)がやってくる。

鉄男が吉井!と助手席に座っていた久一に呼びかけると、名前を言うな!そいつは気づき始めていると気絶しているすみ子のことを気する。

車を運転していた金次はどこへ行くんだよ?と狼狽していた。

その時、すみ子が気づき、逃げ出そうと暴れ出したので、川本は躊躇せず拳銃で射殺してしまう。

それを見た久一は仰天し、俺はこのハンドルを握っていただけだと言い、鉄男も、俺もちょっと押さえていただけだと逃げ腰になったので、お前たち分け前欲しくないのか?と川本は睨みつける。

その頃、原田は、盗まれた12万円は全部千円札だったと主任に報告していた。

「木元興行」の社員小坂健(関山耕司)は、盗まれたその千円札の中に一連の番号があったので珍しく思い、一応後で銀行で聞いてみようと控えておきましたと云うので、その番号を原田は記録する。

西山は木元社長に、毎朝大金を銀行へ運ぶんですか?と聞くが、木元は何故か、これ以上はビジネスの話なので…と言葉を濁す。

人気のない所へやって来たのを確認した川本は、車を止めさせ、すみ子の死体を近くの草原に遺棄する手伝いをするよう久一と鉄男に銃を突きつけ命じる。

死体を棄てた後、車は再び走り出すが、久一と鉄男が急に黙り込んだので、みんなどうした?スケ1人殺したくらいでおどおどするんじゃない!と川本は叱りつける。

その時、前方にパトカーが止まっていることに気づいた川本は、金次!飛ばせ!スピードを落とすとかえって怪しまれる!と指示したので、金次はパトカーの横を通り過ぎるが、それが手配のブルーの車だったことに気づいた警官は直ちに追跡を始める。

やがて、パトカーは近道の方を選び並走を始めたので、それに気づいた川本は、畜生!金次!俺の言う通りにしろ!と命じ、道が合流する所でわざと車をパトカーに接触させ、バランスを失ったパトカーは道路脇の草むらに突っ込んでしまう。

追突されたパトカーの警官からの連絡で、逃走車は練馬ナンバーの0255のセダンと判明、ただちに片桐部長に報告が入る。

原田は一連のナンバーだと言う5枚の千円札の手配を命じられ、銀行に電話を入れる。

西山は片桐課長に、木元興行と言う会社はどうも怪しい、会社ぐるみの犯行か内部に内通する人間がいるのかもしれません、全員しょぴいてきますか?と提案するが、引っ張るネタがないと言われる。

そこに、現場に乗り捨てられていたライトバンは盗難車だったことが分かったとの報告が入る。

その時電話がかかってきたので西山が取ると、菊池すみ子の死体が発見されたとの連絡だった。

木元社長を伴い現場に向かった西山たちだったが、草むらの中で発見された死体はすみ子に間違いないと木元社長は証言する。

それを聞いた西山は、川本の野郎!とつぶやく。

工事現場の事務所のような所に逃げ込んでいた川本たちの所に、「木元興行」の内通者の老人竹沢武(滝謙太郎)がやって来たので、川本は分け前を手渡す。

竹沢は、サツが来たよと教え、警部補が来た、西山とかって言う…と教えると、こりゃ面白いや、俺をパクった奴か…、今度こそ奴の鼻を明かしてやる!山ほど貸しがあるからな…と川本は喜ぶ。

そして、宝石が手に入ったら連絡してやるからなと言い残し、先の小屋を出て行く。 鉄男も、透けを待たせてあるんだ、ハイ、チョロバイ!と言い、小屋を後にする。

城西署の刑事部屋では、やはり川本の仕業では?と刑事が話していたが、他人のそら似と云うこともあると片桐課長は慎重な姿勢を崩さなかった。

原田は課長に、盗まれた金の出所には不審な点があり、どうやら別の署が犯人探しのためにわざと連番を使ったと言うんですと報告する。

そこに、バックナンバー「0255」の逃走車が川越街道に乗り捨てられていたそうですと警官が報告に来る。

原田は手配した札を見つけたと言う署に向かうと、出迎えた森課長(北山達也)は、西山は元気にやっているか?俺とは同期だったんだが、奴は貧乏くじを引いたんだ。

2年ほど前の事件でしくじって…、それさえなければ今頃、刑事課長でもやっているだろうね…と話しかけてくる。

さらに森課長は、盗まれた千円札30枚の内、使用されたのは捕まえた笹井が使った2枚だけで、君の方で奪われた札だと言うので、連番は5万円分だったそうです。盗まれたのは木元興行と言う会社ですと原田は教える。

それを聞いた森課長は、興行師か…とつぶやき、そこに連れて来られた笹井太吉(相原昇三郎)に、木元興行を知っているか?預けたのか?と聞く。

すると笹井は、預けたんじゃない、持って行かれちまったんだ…、相撲の賭けで…と言う。

城西署に戻って来た原田は、木元興行は「相撲トトカルチョ」をやっており、賭け用の券を一枚千円で売っていたようで、幕内の取り組みだけで毎日21万も儲けますと片桐課長に報告する。

遺書にその報告を聞いていた西山は、課長、賭博容疑で引っ張りましょうと提案する。

ただちに「木元興行」に乗り込んだ西本は、賭博容疑で逮捕します!と木元社長に声をかけ、原田は抵抗する小坂たちもその場で逮捕する。

「木元興行社長の逮捕」は、翌日の新聞売り場の広告に載る。

城西署の刑事部屋で部下の刑事たちと一緒に夜食を食べていた中西は、木元興行の中で内通する奴と云えば、被害者の細川良助は問題外だね…と言うと、プロレス崩れの小坂が臭いですねなどと刑事たちも応ずる。

そこへ管内の交番の警官(上田定光)から電話が入り、今学生が来て、事件前夜、「アルスヌードスタジオ」と云うビルの前でライトバンが停まっているいるのを見たと云う連絡があったので、スタジオの親爺を問いつめた所、川本五郎を一晩泊めたと吐きましたと言う。

やはり、川本が潜伏していたと知った西山は、手分けして立ち回りそうな所を張り込もう!と刑事たちに伝える。

その時、又電話がかかって来て、それに出た原田は、菊池すみ子の死体から見つかった弾丸から、使用された銃は22口径のルガーと判明したとの鑑識からの報告を聞く。

深夜、自宅マンションでシャワーを浴びていたサリイは、ドアブザーが聞こえたので、誰?パパ?と答えながら、バスタオルを身体に巻いた姿でドアを開ける。

入って来たのは川本五郎だった。 五郎ちゃん!と驚くサリイに、パパ?木元なら今日捕まったぜ、木元の親爺にはずいぶんかわいがってもらったんだろうな…と川本はからかう。

お金なら少しあるわとサリイが言うと、金?いらない!俺はお前が欲しいんだと言うと、川本はその場でサリイのバスタオルを取り去る。

そして抱いてキスをした川本は、サリイ、何か食うものを用意してくれ、俺はひと風呂浴びてくら…、ただし、おれにこんなものを使わせるような真似はしないでくれよな…と良いながら拳銃を突きつけてみせる。

中西は、川本が立ち寄りそうなバー「リド」に再びやってくる。

一方、原田は、サリイのマンションを訪れていた。 川本とベッドを共にしていたサリイは、刑務所に入っている時、私のこと、思い出してた?と聞くと、昼も夜もだよ…と答えた川本は、まさかこんな贅沢な暮らしをしているとは思わなかったぜ、もうすぐ俺もこのくらいの贅沢はさせてやるがよと笑いかける。

サリイは、良いのよ、あんたとなら、昔のままで良いのよと答えるが、その時ドアブザーが鳴る。

サリイがドアを開けると、そこにいたのは原田で、サリイさんですね?お客さんですか?中を見せてもらいますと言うと、部屋の中に入って調べ始める。

その間、川本は浴室に隠れていた。 寝室なども見回った原田は、風呂場を開けようとするが鍵がかかっているので、ここの鍵は?と聞くと、サリイはそれは…と口ごもる。

怪しいと感じた原田は拳銃で鍵の部分を破壊し、中をのぞくと、浴室の窓が開いていた。 外を覗くと、川本が、マンションの外壁の出っ張りを伝って逃げる所が見えたので、原田もその後を追って外壁を移動する。

川本は階段部分に到着し、そのまま下に降りて逃げたので、原田も川本!と叫びながら後を追うが逃げられてしまう。

「リド」で飲んでいた西山は、原田から電話が入り、川本に逃げられたと報告を受けたので、ただちにサリイのマンションに向かう。

城西署の刑事部屋に戻って来た西本は、川本に逃げられたことを報ずる新聞を読み終始不機嫌だった。

その時、東都銀行の預金から、手配していた1000円札が見つかったと云う電話を受けた西山は、竹沢を呼べと言いながらすぐに取調室に向かう。

そんな西山の様子を見ていた刑事が、どうしたんです?主任…と聞くので、俺が逃がしたからむくれてるんだろと原田も憮然とした表情で答える。

取調室に呼ばれた木元興行の竹沢武は、あっしはすみちゃん殺しには関係ないですよと言うので、それは残りの4人をパクってみないと分からないね、レツは誰なんだ?言った方が良いよ、君一人が罪を背負うことになるからね…と西山は親切そうに攻める。

その言葉に怯えた竹沢は、川本と佐々木鉄男とポンコツ屋ですと教える。

ポンコツ屋?と西山は聞き返す。

吉井兄弟の修理工場にやって来た西山は、同行して来た原田たちに、野郎、拳銃を持っているかもしれないから気をつけろと注意する。

しかし、吉井兄弟はあっさり捕まったが川本はいなかったので、署に連れ帰った西山は、昨日、あれから川本五郎はどこへ行った?と久一に尋問する。

肝心の金が見つからないので、他の刑事とともに修理工場に残って探していた原田は、修理中の車のエンジン部分に隠してあった金を発見し、署に持ち帰る。

昨日は朝からうちで働いていたし、川本五郎なんてあったこともないとぼけていた久一だったが、ありましたよ!と原田が金を持って来て、吉井!これでも事件に関係ねえって言うのか!と怒鳴りつけた西山は、そこに警官が鑑識結果を持って来たので、お前盗んだライトバンのバックミラーを直したろう?その時、お前の左手の親指の指紋が残ってたんだよ。

さっき、お前の指紋も採ったろう?この二つは同じだったんだよ!川本五郎はどこだ!と攻める。

さすがに観念した久一は、川本の行方は知らねえが、佐々木鉄男ならアパートにいるかも…と白状する。

アパートの部屋で、ヌード写真の整理をしていた鉄男はノックが聞こえたので、誰?美代ちゃん?などと言いながら戸口に近づきかけるが、異変を察知し、裏窓から逃げ出す。

その気配を察した原田はドアに体当たりし、窓を乗り越える。

裏道に飛び降りた鉄男だったが、裏で待機していた別の刑事に難なく捕まってしまう。

取調室に連れて来られた鉄男に、竹沢も吉井も吐いた、1人頭15万ずつもらったそうだな?と西山が攻めると、俺はちょっと押さえただけだよと菊池すみ子殺害に付いて漏らしたので、川本五郎は?と聞くと、とんずらしたようだ、2年前の宝石を持ってよ…と言うので、あの事件にも関係してるのか!と西山が問いつめると、え?吉井たちが吐いたんじゃ?と鉄男は余計なことまで吐いてしまったことに気づく。

ブツをどこに隠したか知っているだろう?と聞くと、知ってりゃ、俺たちがムショに入った川本をずっと待ってる訳ないだろ!と鉄男はふてくされ、奴はどうせ独り占めするつもりなんだろう?俺は最初からそう思ってたけど…、川本の奴、夕べ捕まりかけたんだろ?モタモタしていると思うかい?などと鉄男が言うので、一緒に取り調べ室にいた原田は気まずい顔になる。

西山も、野郎の言うように、夕べのうちに君が捕まえとけば良いんじゃないかと嫌みを言って来たので、それはもう謝ったじゃないですか!それを何度も…、僕も好きで逃がした訳じゃないんですよ!と言い返した原田は取調室を飛び出してゆく。

その夜、原田から呼び出された百合子は、誘われるままに遊園地についてくるが、原田の表情が暗いので、どうしたの?芳夫さん、急に遊園地に以降と誘ったのに、つまらなそう…と案ずる。

原田はむっとしたように、そんなことないよと否定する。

一方、西山は、1人残業していた刑事に、君、泊まりかい?と聞くと、先に帰ることにする。 遊園地を出た原田は、「吾妻荘」と云うホテルの前で、行こう…、ね?良いだろう?と誘うが、百合子は、私、嫌!と拒否する。

どうして?僕を信用しないのかい?と原田が聞くと、そうじゃないけど…と口ごもるので、じゃあ、良いじゃない…、百合ちゃん!と原田はなおも百合子をホテルに連れ込もうとする。

しかし、嫌、嫌!と断った百合子は、その場から逃げるように走って帰ってしまう。 その後ろ姿を見た原田はがっくりする。

一方、西山の方は、又、バー「リド」に来ていた。

いつもの奴もらおうかと頼むと、坊ちゃんのグルーブ買われましたか?とバーテンの野村(豊野弥八郎)が声をかけてきたので、それどころじゃないよと西山はぼやいてみせる。

どうせいつかは捕まるんでしょう?と慰めようと三枝が話しかけると、捕まるさ、この俺の手じゃない、誰かの手で…と西山は、面白くなさそうに答える。

ここに来たら、そんなこと忘れましょう。坊や、塩原だったわね?今度一緒にどう?私も行こうかな?などと三枝が言うので、君の方はいかんだろうと西山が苦笑すると、どうして?私、さっぱりするには良い潮時だと思うの…と三枝は聞いてくる。

そして、いつ?今度のお休み…などと積極的なので、分からんね、ちょっと…と西山はごまかす。

その頃、原田は寮に帰らず、刑事部屋に戻って来て、主任は?」と聞くので、泊まりの刑事は、さっき帰ったよと答える。 すると原田はそのままソファに横になったので、寮に帰って寝たらどうだ?と泊まりの刑事は呆れたように声をかける。

「リド」では、西山以外の客がみんな帰ってしまったので、ブランデーでも飲みましょうか?と三枝が誘うが、西山は立ち上がり帰るよと言い出す。

すると三枝は、送ってよ、叱る人がいる訳でもないでしょう?と言い、帰りの支度をすますと、バーテンに後を頼み、西山と一緒に店を出る。

タクシーで三枝の家の前まで送り届けた西山は、三枝だけ降ろして自分はまたそのタクシーで帰宅しようとするが、先に降りた三枝は運転手に自分で支払うと、ダメ!と言いながら西山の腕を取り再び乗り込むのを阻止する。

やむなく、行こうと言い、家に入ろうとした西山だったが、その口にくわえていたパイプを取り上げた三枝は、その場で目をつぶって顔を近づける。

迷った西山だったが、覚悟を決めその場で三枝にキスをする。

バー「リド」の看板の明かりが消え、一人残っていたバーテンが最後の片付けをしていた時、こっそり店に忍び入った陰が、背後からバーテンの首を締め上げて気絶させる。

それは川本だった。

川本は、床に倒れたバーテンをよそに、用意して来たドライバーとトンカチで、壁の一部を外し始める。

そして、レンガ状の石を一つ外すと、中の空洞から宝石を取り出す。 その時、気絶していたバーテンの野村が気づき、誰だ!と声をかけて来たので、川本は迷わず射殺する。

その銃声に気づき、誰かが店に近づいてくる足音が聞こえ、戸を叩いて、もしもし!と呼びかけて来たので、川本は裏口から慌てて逃げ出す。 しかし、追って来た警官が、待て!と制止しながら発砲する。

三枝の自宅でブランデーを飲んでいた西山は、ねえ、お風呂入りなさいよと三枝から勧められるが、ちょっと署に連絡してみると立ち上がる。

三枝は湯船の湯加減を見て誘ってくるが、電話を聞いていた西山は、えっ!うん!すぐ現場に行くよ!と答えると、君の所のバーテンが殺されたんだよ!詳しいことは分からないけど、拳銃で即死だ!と見えに声をかけ家を飛び出して行く。

「リド」では、先に到着していた原田が、穴が空いた壁の中に残っていた宝石の一部を発見していた。 やって来た西山に、川本は警官に撃たれて負傷しているらしいです。この周辺は30名で固めていますと報告する。

それを聞いた西山は、ずいぶん早く駆けつけたね、寮から?と聞いて来たので、原田は、いや…、はい!と答える。

左胸から出血した川本は、浅い川伝いに逃亡しようとしていた。

そして、城西倉庫にやって来た川本は、電気の消えた住居部の窓を拳銃で叩き、井上さん?と穏やかな声で呼びかける。

すると、中の電気が灯り、清造が誰かと思い窓を開けたので、川本はその窓から仲に侵入する。

川本!と清造は驚き、起きて来た百合子もふすまの陰で怯えていた。

静かにしろ!と川本は拳銃を突きつけるが、清増は、金でも何でもやるから出て行ってくれと懇願する。

しかし川本は、朝までいさせてもらうぜと言うと、部屋にあった救急箱を開いて中をのぞく。

さらに、アルコールはねえか?あのウィスキーを寄越せ!とタンスの上にあった酒を要求する。 部屋の真ん中にいすを置き、そこに大きな鏡を立てかけた川本は、上着とシャツを脱ぎ、左胸の傷口にウィスキーを吹き付けると、救急箱の中にあったピンセットを使い、鏡に映る自分の傷口から銃弾を抜こうとする。 その様子を凝視していた百合子は途中で気を失ってしまう。

一方、原田とともに周囲を探しまわっていた西山は、なかなか川本が見つからないので、おらんな…、そんなに遠くへ行けるはずないんだが…と不思議がっていた。

原田も、怪我していますしね…と同意し、近づいて来た警邏中のパトカーを止め、まだ見つからないか確認する。

すでに川本が姿を消して3時間20分ほど経っていた。 苛立った西山は、どうかね?もう野郎が土地勘がありそうな場所はないかね?と聞くと、城西倉庫!奴は若い頃、仲間と良くやって来たそうですと原田は思い出す。

回ってみるか?とつぶやいた西山と原田は、城西倉庫を管理する井上の家にやってくる。

ノックが聞こえたので、傷の手当を終え座っていた川本は緊張し、百合子を人質に取ると、清造に出るように声をかける。

清造がドアを開けるとそこにいたのは原田で、変わったことありませんか?いや、ちょっと…、灯りが点いていたので…と聞きながら、部屋の中の様子を何気なく観察する。

部屋の隅に血の付いた包帯の固まりがある上に、見慣れぬ男物の靴と血痕を玄関口に見つけた原田だったが、緊急手配で呼び出されたんですよと言い訳しながら、何もないと言う清造の言葉を信じたように帰ってゆく。

奥でその様子をうかがっていた川本は、おい、爺さん、巧いぞ、その調子だ!とからかう。 一方、少し離れた所で待っていた西山は、原田から話を聞くと、間違いないね?良し、踏み込もうと言い出す。

しかし、百合子のことが気になる原田は、主任、今のあいつは追いつめられた野獣のようなものです、どうやるんです?と問いかける。

西山は少し考え、何とかして野郎の拳銃を空にするんだと言うと、銃を抜いて家に向かう。

原田も、分かりました!と言うと後に従う。 再び戸をノックし、井上さん!原田です。

すみませんが、もう一度開けてください!と原田は声をかける。

それを聞いた川本は、娘を人質に預かるぜと言うと、百合子を連れて裏口から倉庫の中に入って行く。

清造が戸を開けると、凶悪犯の捜査です!中を見せてくださいと言う原田と西山が銃を手に中に入ってくる。

百合子の姿も見えないので、すぐに事情を察した原田も拳銃を抜いて、裏口から倉庫内に入り込む。

倉庫内の電気を点けた原田と西山は、周囲を警戒しながら、川本の姿を探し出す。

西山は床に転がっていたビール瓶でバランスを崩しかけるが、拾い上げて遠くに棄てる。

川本は、二階部分で百合子の口を手で塞いで隠れていた。

西山と原田が近づいて来たので、思わず発砲した川本は、来るな!来たら撃つぞ!と威嚇してくる。

西山は原田に、弾は後4発だな?と小声で確認する。

俺はこの娘を連れ逃げるぞ!手を出したらぶち殺すぞ!と脅して来たので、一緒に倉庫内に入って来た清造が、追いかける二人の刑事に、止めてください!と立ちふさがる。

その時、西山!どこにいる?出て来ないと娘をぶち殺すぞ!と川本が呼びかけて来たので、西山は隠れていた木箱の背後から立ち上がる。

それに気づいた川本が銃を向けようとしたとき、反対側から近づいていた原田が飛びかかる。

川本はソレクォ振りほどき逃げ去るが、後に残った百合子に、怪我は?と原田が聞くと、百合子は横に首を振る。

原田に合流した西山は、弾は残り1発だな?と確認する。 無駄な抵抗は止めろ!回りは固めているぞ!と呼びかける原田。

畜生!とやけになった川本が、階段を上って来ようとする二人に3回部分から木箱を蹴り落としてくる。

3階に出口は?と西山が聞くと、非常階段がありますと百合子が教える。

非常口から外を覗いた川本は、確かに周囲を警官が固めていることに気づく。

非常階段を駆け上がった川本は最後の1発を撃って来たので、これで空だ!と気づいた西山と原田は、非常階段を上り屋上部分に来る。

川本は、屋上部分の屋根の上に潜んでいた。

原田は、そっと背後からその屋根の部分によじ上る。

屋上の建物に背中をつけ周囲を警戒していた西山だったが、そのすぐ上に川本がおり、拳銃を振り上げたことには気づかなかった。

背後からそれを見た原田が、主任!と声をかける。

西山は間一髪、上から銃で殴り掛かって来た川本の攻撃をかわし、その腕を取って引き摺り落とす。

すると、川本は、落ちた勢いで屋上の傾斜部分を滑り落ち、雨樋にぶら下がってしまう。

それに下で気づいた警官たちが、はしご車を呼べ!と叫ぶ。

雨樋は川本の重さを支えきれず折れ曲がってゆく。

西山は、自分も傾斜部分に身体を乗り出し、手を伸ばそうとするので、その足を原田が掴む。

西山の手が、落ちかけていた川本の片手を掴んだと思った次の瞬間、川本は落下し、地上に叩き付けられる。

事件が解決し、バー「リド」にやって来た西山は、カウンターの中でバーテン代理をしているホステスの姿を見つける。

川本、死んだんですってね?と三枝が聞いて来たので、取っ捕まえてやろうと思ったんだが…と西山は悔しがる。

同じ事でしょう?と三枝が言うと、違うんだよ、俺にとっては!と西山は言い返す。

そんな西山がカウンターに紙包みを置いているので、坊やのグローブ?あなたは良いパパよ、そして良い主任さん…、でもそれで良いのね、きっと…と三枝はどこか寂しげに言って、他の客の応対に向かう。

西山がいつものようにパイプを加えると、カウンターの中のホステスが火を点けてくれる。

すると西山が立ち上がったので、もうお帰りですか?とホステスは驚くが、コインを置いて店を出た西山は、店の前でタクシーを止め、上野駅!と言いながら乗り込む。

その時、百合子と腕を組んでデート中だった原田が横を通りかかり、主任!と呼びかけてくる。

お揃いだね?と西山が車中から笑いかけると、どちらへ?と原田が聞くので、急に子供に会いたくなってね…、今からだと列車に間に合うんだ。明日の晩までには帰ってくるから、後は頼むよと言い残し、タクシーは走り去る。

それを見送った百合子は、主任さん、良いパパなのねと言うので、原田は、うん!と答えると、手を組んだ百合子と共に、コマ劇場の横を歌舞伎町の門の方へ向かうのだった。
 


 

 

inserted by FC2 system