白夜館

 

 

 

幻想館

 

サザエさん 七転八起の巻

キネ旬のデータベースにも詳細が載っておらず、長らく「謎の作品」として個人的に気になっていたのだが、今回「発掘された映画たち2005」という特集でようやく観る事ができた。

製作したマキノ映画とは、マキノ眞三と宮城千賀子夫妻が1948年に作った会社らしい。

そのせいか、本作も途中から、宮城千賀子が歌い踊る「狸御殿」の現代版みたいなレビュー風映画となっている。(音楽担当は服部良一。ただし、サザエさんは一切歌のシーンには登場しない)

オールバックに男装の宮城千賀子は、この当時さすがに凛々しく美しい。

宝塚出身だという事は知っていたが、こういう扮装をした宮城千賀子を観たのは、おそらくこれがはじめて。

映画の冒頭部分は、後に江利チエミ主演で作られた「サザエさん」第一作(1956)と重なるネタがいくつも出てくる。

サザエさんは庭付きのかなり裕福な家の娘といった感じでまだ独身、見習いながら出版社勤めをしており、そんな彼女に惚れているケイスケ君という放送局に勤める美青年がいるという設定になっている。(何故かマスオさんは登場しない)

サザエさんを演じている東屋トン子という人は、ちょっとタレ目がかわいらしい普通のお嬢さんといった感じ。

いくつかのエピソードが、波ガラスを使ったワイプ手法で転換して行く。

ところが中盤になると、サザエさんはそっちのけの歌のオンパレード。

町のタバコ屋、肉屋、魚屋、花屋らがストーリーには関係なく、各々勝手に美声を披露して行くのが何とも珍妙。

宮城千賀子の登場場面は、完全に彼女のレビューショーといった印象で、エキゾチックな南洋のイメージの歌を、踊り子たちに囲まれて気持ち良さそうに披露している。

このシーンが見られるだけでも、この作品は貴重といえるかも知れない。

その楽屋をサザエさんが訪れるシーン等、どっちが主役なのかわからないような撮り方になっているのも御愛嬌か。

さらに映画として気になるのは、おとぼけコメディタッチだった最初の調子が、途中から何やら湿っぽいお涙調の話に変化してしまっている点。

お金に困った親友を助けるために、サザエさんが思いきって人肌脱ぐのだが、それが文字どおりの意味なのだから驚かされる。

どうやら「絵のヌードモデル」のようだが、そのアトリエに社会探訪の収録に来ていたケイスケは、声を聞いても、日頃良く会っていたせつ子とサザエさんだと気づかなかったと言う事なのだろうか?

気づかずに、自分の作った放送がある事をとみ子たちに知らせており、とみ子たちは喫茶店で2人が仲直りをする計画を立てたと言うことなのか?

そう解釈しないと、自分の恋人がヌードモデルのなる現場にいながら、それを阻止しない方が不自然である。

しかし、サザエさんが、ヌードモデルになるのも厭わないドライな現代っ子であると言うのも意外な気がする。

ラジオから聞えて来る自分の声に、サザエさんが動揺するような描写もないし、当時としては、物怖じしないと言うか、常識破りのイメージとしてのアプレ(戦後派)娘と言う表現だったのだろうか?

当時はまだ、女性がまとまった現金収入を得るのは難しかった事もうかがえる。

いつ復員してくるか分からぬ夫を心配して待ち続ける女性友達という設定も時代を感じさせるが、サザエさんとケイスケくんが、喫茶店で周りの友人たちから冷やかし半分に勧められて飲まされるのが「初恋の味カルピス」というのも、今となっては珍しく映る。

「銀座カンカン娘」(1949)にもその歌が登場するように、この時代、最もおしゃれな飲み物だったという事だろう。

とにもかくにも、レビュー映画としての江利チエミ版「サザエさん」の原型ともいえる本作は、色々な意味で大変興味深いものであった事は確かである。

戦後間もない頃の、庶民の暮らしぶりなどがうかがえる所も貴重だと思う。

冒頭の磯野家の大掃除のシーン、畳の虫干しや、瓦屋根の草むしりなど、今まで実際に観た事がないような気がする。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1948年、マキノ映画、長谷川町子原作、京都伸夫脚本、荒井良平監督作品。

筆で描いたサザエさんのマンガイラストを背景にタイトル、キャスト・スタッフロール

サザエさん(東屋トン子)が窓ガラスに大きな口を開けて息を吹きかけている、その隣ではカツオ、ワカメが、横並びで同じように窓ふきのお手伝い。

家の前には、くず屋が通って行く。

母親のフネは、畳を玄関先に立てかけ、虫干ししながら、家の中のゴミを表に運んで来る。

父親波平は、屋根の上に生えた草むしりをしている。

今日は一家総出の大掃除

そんな磯野家の庭に野球のボールが飛んでくる。

塀越しに顔を出した子供が取ってくれよと上から目線で言うので、サザエさんは「謝りなさい」という。

すると、塀の下から「すみません」の声が…。

実は、父親が子供を肩車していたのだ。

サザエさんは、拾い上げたボールを足で蹴って外に出すのだが、その際、はいていた片方の下駄まで飛んでいってしまう。

サザエさんが庭から、下駄を帰してちょうだい!と声をかけるが、外で子供の父親が父親「謝ったら帰してやるよ」と言うので、その声を聞いたザエさんは意地になって、けんけんしながら家に入ってしまう。

昼食時が近づいて来たので、サザエさん、台所で何か斬新な代用食を作ろうと思案を始めるが、ちょうどそこへ、お腹が空いたというワカメがやって来てラジオをつけると、ちょうど代用食の作り方を放送している。

渡りに船とばかり、まず、キュウリを一本用意して、それを切り始め、ワカメちゃん、素敵な代用食が出来るわよ!とサザエさんは大張り切り。

しかし、煮干し粉とぬかを入れ、水を入れてかき回して下さいとラジオが言うので、その通りに作っていると、何とそれは「鶏のエサの作り方」だった。

それを聞いたサザエさん、今日は代用食中止!昼食は我慢しましょう!等と言いだしたので、おなかを空かせていたワカメは泣き出してしまう。

フネが昼食の準備を終え、サザエさんにテーブルに運んでと頼むと、サザエさんがもうつまみ食いをしていたので、フネは叱る。

テーブルで待っていたカツオとワカメの前に、ダンゴか大根の煮たもののような料理の皿を持って行くと、カツオがすぐにつまみ食いしたので、自分の事は棚に上げ、お行儀が悪いわよ!と叱るサザエさん。

フネはサザエさんに波平を呼びに行かせるが、ちょうど波平はその時屋根の上、外に出て来たサザエさんは、お父さん!と呼びかけながらも、いないわね〜?と言いながら屋根に立て掛けてあったはしごを持って帰ってしまう。

屋根の上の草むしりを終えて、いざ降りようとした波平、梯子がないことに気づき、降りられなくなってしまう。

庭先では、カツオがワカメをモデルに絵を描いていた。

ワカメは、オシッコがしたくなったと言うが、カツオはもうちょっとだからと我慢させる。

家の中には、お見合いの話を持って来ていた仲人の女性が、フネから、サザエさんはちょうどお茶の稽古に行っているため不在だと知り、残念そうに玄関口から帰ろうとしていた。

ちょうどその時、玄関のガラス戸を片足で開け、中に入ろうとしていたのが帰って来たサザエさんだった。

サザエさんは、何故か両腕一杯にジャガイモを抱えており、その二三個が、仲人の足下に転がり落ちてしまったので、仲人はあっけにとられてしまう。

茶の間に入って来たサザエさんは、ワカメが、カツオから受け取った絵を持って、カツオを追いかけているのを目撃する。

訳を聞くと、お兄ちゃんが私の事をお猿さんに描いたのよとワカメは言う。

確かに、画用紙に描かれていたのは猿の絵だったので、人権蹂躙になる所ね!とサザエさんもカツオを捕まえようとする。

そこにやって来たフネが、そんなサザエさんを睨みながら、せっかく縁談の話を持って来て下さったのに、あんな恰好して!と、先ほどの玄関での醜態を叱る。

それを聞いたサザエさん、あの方仲人さんだったの!と驚く。

冷や汗三度とはこの事よ、母さんは…などとフネが愚痴るので、古い表現ね!とばかにしたサザエさん、ワカメに買って来たワンピースを着せようとするが、首が全く入らない事に気づく。

家の前の長椅子にカツオと並んで座っていたサザエさん

犬を連れた浴衣姿の青年が通りかかった路期、ケイスケって言うんだよとカツオが言うので、犬の名前と思い込んださざえさん、つい、ケイスケや!と呼びかけると、振り返ったのは、飼い主の青年の方だった。

ケイスケと呼ばれた青年は、かなりのイケメンだったので、勘違いして失礼な事をしてしまったサザエさんは、困ったわ…と恥ずかしがる。

サザエさんの住む町の商店街の住民は、みんな歌が上手。

喫茶店「NOBARA」のウエイトレスとみ子は、今日も、九官鳥は知っている〜♪と店の前で、得意の歌を披露していた。

近くのタバコ屋の主人も、何と皆さん、タバコを吸うのも命がけ〜♪と歌いながら、正ウィンドーを磨き、肉屋も歌いながら肉を売り、魚屋も歌いながら、魚をさばいていた。

花屋の女性も、歌っていた。

出版社に勤めはじめたサザエさん、午前中からアクビの連続、それを観ていた同僚たちはあきれ顔。

時計を見ると11時55分、サイレンも聞えたので、サザエさんは机の上に置いていた弁当に目をやる。

大きなお弁当箱は、カツライスセットのイメージとダブり、さっそくハンカチを広げて食べ始めるが、部屋に戻って来た同僚社員のみどりは、サザエさん、もうお昼食べてるの?と驚く。

だって、もう12時だし、サイレンも鳴ったでしょう?とサザエさんが答えると、男子社員が掛時計に「故障」の貼紙を貼り、サイレンも工場のものだとみどりが教えたので、勘違いしていた事に気づいたサザエさんはバツが悪くなる。

編集長から呼ばれたサザエさん、そろそろ仕事にも慣れただろうし、婦人警官になったつもりで、良いスクープ写真を撮って来なさい。分からないことがあったらみどりさんに聞きなさい。と命じられる。

早速カメラを手に、街角に繰り出したサザエさん、街角でサラリーマンに何か薬のようなものを売っている、赤ん坊を背負った婦人を見つけたので、その場で写真を撮ると、撮られた事に気づいた婦人は傘を振り上げて怒りだす。

その後、何やら腕まくりして列をなしている男たちを発見、先ほどの事もあるのでサザエさん、覚せい剤かも知れないと思い、すぐさま近くの交番の警官たちに通報するが、それは「発疹チブス予防の注射」を待つ列だった。

勘違いに気づいたサザエさんは、現場にやって来て困惑している警官たちを他所に、そそくさと逃げ出す。

喫茶店「NOBARA」では、オーナーのせつ子さんの夫が、まだ戦地から帰って来ないと聞いていた、常連客のMHK職員ケイスケが、調べてみたが、ご主人は相当奥地の部隊にいるらしい…と言う報告をしていた。

そんなケイスケに、あんた、サザエさんのこと、どう思ってるの?しっかりしてちょうだい!ライバルが現れたのよ。放送局にサザエさんの素敵な人が出来たらしいの。まだ会った事はなくて、声だけらしいけど…、私はあなたを応援するわよ!とせつ子はケイスケを励ます。

その話を一緒に聞いていたウエイトレスのとみ子も、いつもの九官鳥の歌を歌いだす。

その時、女性と2人で来店していた男性客がアイスを注文すると、「劇団支配人 牛尾三郎」と書かれた名刺をとみ子に渡し、来週の水曜日に待っているよと声をかけて来る。

それは、

男装の麗人、宮城野ちづる(宮城千賀子)の劇団での歌唱テストへの誘いだった。

翌週、劇団へ行き、ピアノの前で得意の歌を披露したとみ子は、その場で聞いていた宮城野ちづるに気に入られ、明日から稽古にかかりますからねと、舞台に参加する事を許させる。

ある日の夕暮れ、ケイスケは、土手の下のベンチに一人腰掛け、口笛を吹いていた。

そこへ近づいて来たサザエさんが、えへん!と咳払いすると、驚いたケイスケは振り返り、その拍子に椅子から落ちそうになる。

そんなケイスケの横に座ったサザエさん、これなら落ちないでしょう?と笑いかけるので、ケイスケも嬉しくなって、口笛で「宵待草」のメロディを吹き始める。

そんな2人の背後の土手にやって来たのが、2人の酔っぱらい。

よお、よお、ご両人さん!などとからかって来たので、最初は、ケイスケとサザエも、酔っぱらいの真似などして笑っていたが、しつこい背後の酔っぱらいを追い払おうとついケイスケが立上がった途端、ベンチのバランスが崩れ、サザエさんは滑り落ちて、地面に尻餅をついてしまう。

サザエさんは、バツが悪いのと恥ずかしさから、怒ったまま帰ってしまう。

それを観ていた酔っぱらいは、振られて帰るか…と、1人残されたケイスケをからかって来る。

その後、喫茶店「NOBARA」にサザエさんがやって来ると、せつ子の妹ユリが怪我をして入院したのだとウエイトレスが教える。

病院に駆けつけて来たせつ子は、担当医に、妹は元の身体に直るでしょうか?と聞いていた。

手術をすれば直るが、しなければ、一生カ○ワになるのだと知ったせつ子は、治療費はいくらくらいかかるんでしょうか?と聞く。

退院するまでに三ヶ月、その入院費も含め5万円もの大金が必要なのだと言う。

喫茶店「NOBARA」に戻って来たせつ子を、ウエイトレスやサザエさんが慰める。

せつ子は、夫が無事帰って来るまで、百合ちゃんの身体に間違いが内容に頑張って来たのに、百合ちゃんがカタワになったとしたら、主人になと言って詫びれば良いのか…と落ち込む。

ユリは、夫の実の妹で、せつ子の義理の妹だったのだ。

とみ子は、舞台の出演料1万円を寄付すると言い出し、他のウエイトレスたちも何とか金を工面しようとするが、後3万4000円足りなかった。

そんな中、宮城野ちづるの特ダネ写真を撮るとお金になるのではないかとウエイトレスが言い出す。

宮城野ちづるは、大の写真嫌いで通っており、世に写真が出回ってなかったからだ。

劇団では、宮城野ちづるの南方ショーが行われていた。

ちづるは船員服を来た男役で、腰ミノを着た現住民の娘役の踊り子たちとステージで踊っていた。

そんな劇団にサザエさんと一緒にやって来たミドリは、舞台が終わって戻って来たとみ子と抱き合う。

サザエさんもつい、近づいていた男性に抱きつくが、それは支配人の牛尾だったので、サザエさんは、又バツが悪い顔になる。

控え室で千鶴と支配人たちが話し合いを始めると、ミドリとサザエさんはこっそりその部屋の前まで忍び足で近づき、宮城野ちづるのスクープ写真を撮ろうとカメラを向けるが、すぐさまレンズを手で隠されてしまう。

それは支配人の牛尾の手だった。

宮城野先生の写真はお断りしていますと牛尾が言うので、そこを何とか一枚だけでも…、特ダネ写真を撮ると、5000円の褒美が会社から出るのだととサザエさんとミドリは頭を下げて頼む。

2人の事情をとみ子からも聞いたちづるは、牛尾さん!と支配人を部屋に呼び入れる。

その直後、諦めて劇団の玄関から帰りかけていた2人を呼び止めた牛尾は、宮城の先生が、写真はダメだけど、入院費の足しに…と説明し、神に包んだ金を渡してくれる。

良いとこあるわね!宮城野ちづる!と思わず叫んでしまったサザエさん、とみ子が近づいて睨んで来たので、すみません!と謝る。

それでも、まだ5万円には届かず、せつ子は、最後の着物を質屋に入れ、金に変えてしまう。

病院へ戻ったせつ子は、やって来たサザエさんから、少ないけど、入院費の足しにして…と金を渡される。

そんな会話をベッドで聞いてしまったユリは、戻って来たせつ子に、もう自分は手術等しなくても良い。すぐ元気になるわ!と言い出す。

手術をしないと一生カ○ワになってしまうのよ!ユリさん、あなたをカ○ワにしたら、あなたの兄さんに何と言ったら良いのか!と嘆くせつ子。

それでもユリは、費用が5万円もかかる事を看護婦から聞いて知っていたので、これ以上、お義姉さんに心配かけたくないの。最後の着物も売りに行ったんでしょう?と哀しそうに言うので、身体に触るわ、心配しなくて良いのよ…とサザエさんも説得する。

あなただけが頼りなのよ、あなたがいなかったら、姉さん、とっくに死んでいたわとせつ子は言い聞かそうとするが、嫌です!義姉さんを犠牲にしてまで手術をしたくないわ!と言い張る。

たまらなくなったせつ子は病室を飛び出すと、病院の外に掛けて行く。

それを追いかけるサザエさん。

その後、自宅の茶の間に寝そべり、2万円あったら良いんだけどな〜と考え込んでいたサザエさん、ふと起き上がり、テーブルの上に拡げていた新聞に何気なく目をやると、「1時間300円」という信じられないほど高額な求人が載っているではないか。

すぐさま、「ミモザ」と言うそのアトリエへ向かったサザエさんは、先に脱ぎかけていたせつ子に遭遇する。

一緒にポーズ取るのねとあっけらかんと挨拶して来たサザエさんにせつ子の方も驚き、ここは普通のモデルじゃないのよ、あなたまだ未婚じゃないの!とサザエさんに思いとどまるように説得する。

しかし,サザエさんは、知ってるわ、結婚してたら良くて、未婚だったらいけないの?私たち、別に身体を売るのじゃないのよ、画家にインスピレーションを与えるのよ、元気出しましょう!などと明るく答える。

そんなアトリエに取材に来ていたのがケイスケ、カーテンの奥から聞こえて来るサザエさんとせつ子の会話に思わずマイクを向ける。

その後、駅に、せつ子の夫が無事、復員して来る。

喫茶店「NOBARA」では、サザエさん、遅いわね〜、せつ子さん、良かったわね!ととみ子とミドリが噂していた。

実は、今日、サザエさんとケイスケをここで仲直りさせようと、2人で計画していたのだった。

みどりは、サザエさんには、ラジオの主人公に会わせてやると噓を言っておびき寄せているととみ子に明かす。

そこに、何も知らないサザエさんがやって来たので、何にしましょう?冷たいカルピスね!ととみ子とミドリは冗談を言いあうと、まだケイスケ君と喧嘩してるの?と聞く。

頑固なサザエさんは、後悔なんかしてないわ!とやせ我慢している様子なので、鼻息荒いわね〜とミドリが呆れると、どうせ、私の鼻息は荒いわよ!とサザエさんは開き直る始末。

彼氏来るわよ…とミドリはそんなサザエさんをなだめ、とみ子はラジオのスイッチを入れてやる。

すると、MHKラジオから聞こえて来たのは、「裸の女たち」と題された社会探訪番組で、あなた、未婚なんよ!と言うせつ子の声が聞こえて来る。

ヌードモデルをしに行った日に、こっそり録音されたサザエとせつ子の声だった。

結婚してたら良いの?やましい事なんかないわ!裸体が神聖な芸術になるのよ!もちろん、1時間300円のお金も欲しいわ!と聞こえて来たのはサザエさんの声だった。

社会探訪第一回「裸の女たち」でした…と聞こえて来た男性アナウンサーの声を聞きながら、まだ分からないの?あなたの声の恋人はケイスケ君だったのよ!と教えるとみ子。

まあ!と驚くサザエさんの背後に来ていたのは、当のケイスケだった。

サザエさんは恥じらいながら、こんばんわ!と声をかけ、ミドリがケイスケをサザエさんの隣に座らせると、とみ子が用意していたカルピスのグラスを一つテーブルに運んで来る。

初恋の味カルピスをどうぞ!ととみ子が勧めると、サザエさんとケイスケは、嬉しそうにはにかみながら、二本のストローで一杯のカルピスを飲み始める。

とみ子とみどりは、そんな2人を店の中に残し、店の外に出ると、「本日営業終了」の看板を出す。

サザエさんとケイスケがふと窓の外を見ると、そこには、みどりととみ子、それに商店街の店主たちが、みな嬉しそうに歌いながら、中を覗き込んでいた。

いつしか、2人も表に出て、商店街のみんなと一緒に輪になって踊りだすのだった。


 

 

inserted by FC2 system