無声映画に、弁士が調子の良いセリフを重ねている作品。 浅香光代さんなどで、女剣劇と言う出し物があったことは知っていても、具体的にどんなものだったか良く知らなかったのだが、なるほどこういう見せ物だったのかと言うことは分かる。 この映画を観る限り、はっきり言えば、初歩的なストリップショーのようなものである。 着流しの浪人者がチャンバラをやれば、自然に着物の裾が割れ、下帯が覗いたりする。 それを女性が演じているのである。 立ち回りの際、わざと裾をめくって、片足を露出させたりする。 もちろん、白い猿股のようなものは履いているので、露出するのは太ももから下の部分だけなのだが、それでもかなり刺激的である。 さらには、片肌脱いだりもしているので、極端に言えば、水着を着てチャンバラごっこをしているとでも言いたくなるようなあられもない格好である。 もちろんこれは、この映画だけが極端なことをやっているのかも知れないが、「ちらリズム」の言葉の始まりは浅香光代さんの立ち回りからだったと言うような説もあるようなので、実際の舞台も、これに類した所作をしていたのではないかと想像する。 さらに、普通のストリップショーも登場し、全編、女性の肌を見せまくるキワもの映画である。 話はほとんど付け足しのようなもので、前半などは、ドタバタと、実際の撮影風景を組み合わせた楽屋落ちのような展開で、後半は、洋舞のストリッパーの登場のためだけの設定と言った感じである。 実際に客を入れた舞台を撮影しているようで、時折、かぶりつきの所に座っている子供たちが、ちらちら振り返ってカメラを気にしている様子も見える。 そもそも子供(坊主頭の小学生に見える)がストリップを普通に見ていると言うのが驚きである。 もちろん、パンティは履いているのだが、胸はニップレスを貼っただけで、全露出のストリップである。 老人や老婆も観ている所を観ると、当時は、普通の見せ物として許されていたと言うことなのだろうか? 「カルメン故郷に帰る」(1951)などを観ても、当時はこう言う感じだったのかも知れない。 ところで、ここで登場している空飛小助と言う役者さんは始めて観たような気がする。 白木みのるさんのような方なのか? 顔は本当に赤ん坊のようで、ぱっと見、赤ちゃんが演技をしているように見える。 三輪車に乗っている所なども、普通の子供が乗っているとしか見えず、かなり小柄だったことが分かる。 戦後の作品と言うことも考えると、珍品中の珍品と言った作品ではないだろうか。 |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
1953年、新大都映画、平澤譲二監督作品。 舞台上で踊っているストリッパーにタイトル 高場馬場に向かって走る男が、後ろから付いて来る赤ん坊のような侍、中山安兵衛(空飛小助)から、パパさん、パパさん、おっぱい!とねだられたので、立ち止まって、懐から哺乳瓶を取り出して渡すと、安さんは、その場に座り込み、チュパチュパ、哺乳瓶を吸い始める。 すぐに立上がった安さんこと安兵衛が、OK!千里もひとっ飛びのザトペック!等と言いながら又元気良く走り出す。 一方、待ち構えていたヤクザが、親分来ましたぜ!と雨尾の健太に報告すると、そこにやって来たのは国定譲りの剣を持つ女お万(大都あけみ)であった。 お万は、斬り掛かって来たヤクザたちを相手に、左足をはだけながら相手をする。 そこに、般若の竹蔵が千人足らず(20人くらい)の子分を引き連れて、雨尾の貸元の加勢に来る。 アプレ仁義のヤクザが!とバカにしたお万が、新たな敵にもひるまず戦っていると、そこに、姐さん!と呼びかけながら、もう1人の女おきんが駆けつけて来る。 おきんとお万は、群がる男共を相手に剣をふるい始める。 その頃、中山安兵衛の方は、パパさんに、今度はおんぶをねだっていた。 映画の撮影所前で、お万たちの立ち回りを撮影しているのを、近くに集まった100人近い野次馬たちが見守っている。 敵を全員斬り倒したお万が、強い味方があったのね!と刀を片手で掲げながら、国定忠治張りの決め台詞を言うと、そこにちっちゃな中山安兵衛が駆けつけて来たので、監督が、小助ちゃん、お前の出るのはここじゃない!高田馬場だろう!と文句を言う。 出番を間違えたと悟った安兵衛は、三輪車に股がると、バイバイ!と言いながら、パパさんと去って行く。 そんな中、あけみちゃん!とお万役の女優市松あけみ(大都あけみ)に声をかけて来た女性がいた。 ミミーちゃんのお姉さん!と驚くあけみ。 みんなあんたのお陰よ!とあけみが言うと、妹も映画雑誌を観て喜んでいるわとミミーの姉も嬉しそうに語りかける。 カットが終わり休憩に入ったので、2人は近くの土手に行き、あけみは苦しかった過去のことを思い出す。 (回想)当時、市松あけみは、待ち回りのしがない女歌舞伎役者だった。 11月25日の寒い時期、芝居の中味は時代遅れの時代劇と言うこともあり、客はまばらだった。 舞台では、子供のような役者(空飛小助)と痩せた役者が太田道灌ものを演じていた。 楽屋では、座元(?)の女性が看板女優であるあけみに、たった一晩我慢するだけでみんなが楽になるんだよ…などと説得していた。 それを、部屋の外で立ち聞きしていたのが小屋主だった、ミミーの姉だった。 座元が口説いていたのは、男と寝て稼いでくれと言うことだったので、他の座員たちは、座元さん、それは…と口を挟もうとするが、お前たちはだ口を出すんじゃない!お前たちを養うもばかにならないんだよ!と座元は叱りつける。 そこにやって来た小屋主は、座元さん、舞台の芸を四畳半にしろって言うのは…、実はすっかりうかがっておりましたと網元に話しかけると、どうだろう?私の妹が東京から帰っているので、一度舞台に出してみたら?と提案する。 しかし、素人じゃね〜…、芸を売るより身体を売るのが御当節ですから…などと座元は話を聞こうとしないので、妹は丸の内の劇場で洋舞のストリップを踊っているミミー・ローズですと小屋主が明かすと、それは是非とも!と座元は態度を豹変させる。 このミミー(キャロル都)の出演をきっかけに、あけみも売れるようになる。 三人吉三のお嬢吉三を演じるあけみ ミミーも、舞台でストリップショーを披露する。 場内は、老人から小学生まで満員 ミミーは、ハワイアンストリップも披露する。 座元は、この大入りに上機嫌となり、小屋主に礼を言うと帰って行く。 残ったあけみは、小屋主にあたら目て礼を言い、ミミーには、今日からあなたのお弟子にして下さいと頼む。 しかしミミーは、ダメよ、あけみちゃんにはあけみちゃんにお道があるはずよと言い、姉の小屋主も、こんな所で回り道しているようじゃダメだと思うわと言い聞かす。 中央に出ないと…とミミーが勧めると、でも、ツテがないものですから…とあけみは打ち明ける。 すると、ミミーが、じゃあ、私が新大都映画に紹介するわと言い出し、小屋主も、私も断然応援するわ!とあけみを励ますと、今日を記念に、あなたは私たちの妹と言う事にしましょうと言ってくれる。 (回想明け)アプレは別にして、女は清く正しく生きないといけないわ…と言い聞かせるミミーの姉 その言葉を聞いたあけみは、お姉さん、いつまでもいて下さいね!と頼む。 その時、あけみさ〜ん、ロケバスの用意が出来ました!と呼びかけるスタッフの声が聞こえて来る。 立上がったあけみとミミーの姉は、夕焼けの土手の上を一緒に歩いて行くのだった。 |