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水戸黄門海を渡る

この大映版「水戸黄門」は、全く知らなかった。

雷蔵と勝新の助さん格さんは、何となく新人コンビが演じる定番キャラとして分かるものの、二枚目のイメージが強い長谷川一夫の水戸黄門と言うのは想像できなかったキャスティングである。

さらに、長谷川一夫は二役をこなしている。

黄門は老けメイク、アイヌの大酋長役の方は異様に濃いメイクで、どちらとも不自然と言えば不自然なのだが、この作品では、2人がそっくり設定にすると勘違いしそうな部分があるので、あえて違いを際立たせているのではないかと思う。

似た背格好のダブルが背中を見せて、本物と対峙している場面もあるし、合成で2人の長谷川一夫が、同一が面に登場しているシーンもあるが、合成はかなり巧い。

助さん役の市川雷蔵、格さん役勝新太郎、揃って見せ場が用意されており、2人のファンにとっても見応え十分だろう。

タイトルから想像すると、座頭市シリーズの一作「座頭市海を渡る」のアイデアはここから来ているのかも知れないし、北海道へ渡る設定ながら、船の外観のシーンは全く出て来ないのも興味深い。

甲板と船室のセットだけで、海の旅を表現しているのも珍しい。

又、黄門、助さん、格さんと共に、十手持ちの三枚目金次が旅に同行しているのも興味深い。

真面目な黄門一行の雰囲気を和らげるうっかり八兵衛的キャラになっている。

金次を演じているのは、当時、大村崑さんなどとテレビで人気があった佐々十郎さん。

物語前半のコメディリリーフとして活躍するが、後半は出番が少なくなるのが残念。

全体としては、ものすごい超大作と言う感じでもないが、それなりの大作である。

話も、後半に向かって、ものすごい見せ場が用意されている訳でもなく、やや平板な印象がないではないが、それなりに楽しめる出来だと思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1961年、大映、川内康範原作+脚色 杜松吉脚色、渡辺邦男監督作品。

※作られた時代の関係で、今では放送禁止用語のような言葉も登場しますが、他の言葉に置き換えるとニュアンスが違って来たりすることもあり、そのまま文中に使用しているものもあります。ご寛容に。

崖下に広がる海岸

蝦夷

幌馬車を引いてアイヌの村にやって来たのは、松前藩の測量隊

そこに、馬の乗った一団が攻めて来たので、アイヌの襲撃だ!と叫ぶ先頭の侍。

その襲撃の様子を崖の上の馬上から見守る蝦夷の大酋長シャグシャイン(長谷川一夫)

アイヌの一団は測量隊を壊滅させる。

組酋長、勝ち戦だ。シャモの部落に行って来ると、横の馬に乗っていたギルタン(千葉敏郎)が言い、出向いて行く。

息も絶え絶えに蝦夷松前藩の城に帰って来た竜崎は、お~い!と助けを求め、駆けつけて来た仲間たちに、アイヌにやられた!と伝える。

城主は、甚左、そちの言うとおりであったと、松前藩城主松前泰久(林成年)は集まった家臣たちを前にやって来て言い放つ。

殿!アイヌの酋長シャグシャインの陰謀をこのまま捨てておく訳には参りません!と一柳甚左衛門(石黒達也)は進言する。

哀れな民と思えばこそ、本日まで情けをかけておったが、もう容赦はならん!松前藩の面目、引いては御公儀の御威光にかけてアイヌを征伐してくれるわ!と松前泰久は怒りも露に告げる。

その後、アイヌと松前藩との壮絶な戦が始まる。

蝦夷の山河は先祖代々の地、シャモの手に渡すことは出来ん!と崖の上の馬上から戦を見下ろしながら言い、又しても、アイヌの勝利に終わる。

仙台

子供たちが歌う七夕祭りの歌が聞える町中の宿の窓から外を観ていたのは水戸黄門(長谷川一夫)であった。

その頃、明日はいよいよ水戸へ出発だな…、四国漫遊の旅を終えるにはふさわしい晩じゃないかと、町中を散策しながら格さん(勝新太郎)に話しかけたのは助さん(市川雷蔵)

助さんは、話の決まった娘さんがいるからな…と格さんはからかうので、そんなつもりで言ったんじゃないが…と助さんは苦笑する。

そんな中、と女スリ雷門のお新(藤原礼子)が笛を吹くと、覆面姿の犬山陣十郎(小堀明男)が物陰から出て来て引き上げの合図だ!と同じく覆面姿の仲間に命じる。

そこにやって来たのが格さんたちで、忍び強盗にしてはちょっと物々しいようだなと言いながら、相手をする。

その直後、陣十郎から小柄を投げられて格さんがひるんだ隙に賊は逃げ去ってしまう。

格さんは、小柄を抜くと、注意深く周囲を見渡す。

一方、助さんの方は、女スリにぶつかられ、お前さん、男っぷりは良いけど、随分間抜けだね…と、その場でからかわれ、掏られた巾着袋を投げて返される。

しかし、女スリが人ごみの中に消えた後、どっちが間抜けだい…と言いながら、助さんは、女スリから逆に掏り取った笛を確認する。

そこに格さんがやって来たので、助さんが女スリの一件を話すと、実はな、今そこでこれを投げられたと格さんの方も小柄を見せる。

その直後、祭りの民衆が騒ぎ始めたので、事情を聞くと、幽霊船がそこの浜に流れ着いたと言う。

その頃、覆面の男と合流した女スリは、確かに何か持っていると思ったんだが…、あの男が気になるんです。間違いなく侍ですよと格さんのことを教えるが、覆面の侍は、町のものが騒ぎだした。早く引き上げろ!と女スリに言い、一緒にその場を立ち去る。

浜に流れ着いた幽霊船には、既に役人たちが乗り込み、取調べをしていた。

助さん、格さんも、その現場にやって来ると、互いに別れて、調べ始める。

そんな現場の野次馬をかき分け、見張り番の役人の前に出た男、十手を見せびらかしながら、あっしはね、江戸の目明し駒形佐吉の片腕で、ひょっとこの金次(佐々十郎)!ちょいと手を貸すぜ!と一方的に言うと、勝手に現場に入り込む。

その舟は松前藩の御用船で、乗組員は全員殺害されていた。

役人は、直ちに松前藩に知らせるため使者を向かわせる。

その後、船内を調べていた役人は、アイヌのものを発見する。

同じ船内をひそかに調べていた助さんは、瀕死の侍砂田重助(浜田雄史)を発見した助さんは、俺だ、佐々木助三郎だ!と呼びかける。

重助、何があった?仔細を申せ!と助さんが聞くと、測量図…、公儀の命で松前藩が苦心して作った蝦夷地の測量図を…、金のために…と言い残し、倒れたので、助さんは、この笛に見覚えがないかと、先ほど女スリからスリ取った笛を取り出して見せるが、それは…と見覚えがあるかのように目を見開いた重助だったが、その直後に息絶えてしまう。

そこに、どうした?と格さんがやって来たので、柳生道場で一緒だった砂田重助だと助さんが、目の前の遺体の正体を証すと、格さんも知っていたので、砂田!と抱き起こそうとする。

宿に戻って来た2人が持ち帰った笛と小柄を行灯の灯で確認した黄門は、これはアイヌのものだと言う。

重助が言ったのもアイヌ…と助さんが言うと、蝦夷に行って確かめんと分からんな…と黄門は言う。

そこに突然入って来たひょっとこの金次は、さっきから聞いていれば、てめえら3人、どうやら、幽霊船の一件に関係あるようだな?と言って来る。

江戸の目明し佐吉の片腕ひょっとこの金次だ!神妙にしろい!と十手を差し出して来たので、とんでもない、私たちは、江戸の瓦版屋でございますと黄門が取りなす、

何?瓦版屋だと?だったら、俺の商売と関係深いじゃないか?と金次は急に態度を変える。

松島見物に来た所、こんな大事件にぶつかったので、出来るだけ詳しく調べて江戸に帰って一儲けしようと相談していた所ですなどと黄門は話をごまかす。

黄門は、駒形の親分さんのお話をうかがえば箔がつくなどと金次をおだてるので、任しときな、幽霊船の一件なら俺に任せときな。お前たちには派手に書き立ててもらおうかななどと金次は乗って来る。

俺は一関のお袋に会いに来たんだが、これで親分への土産が出来たってものだな…なとと金八が言うので、それじゃあ、もうホシは…と黄門が聞くと、それが分からなくて、ひょっとこの金次様と言えるかよ、下手人は蝦夷の地に住むアイヌの奴だよ!と断定する。

そのアイヌと御用船を襲った一味がどこでどう繋がっているか、こいつは面倒でも蝦夷まで行って調べてみなければ分からないね…などと金次が言うので、さすが駒形の親分さんだね…と黄門はおだてる。

知らないだろうが、蝦夷って言うのは恐ろしく遠い所なんだ、どうしても行きてえって言うんなら、俺が何とか知れやるぜ。おい、親父!お前さんなんか気の毒だが、着いた途端にお陀仏かも知れねえぜなどと金次が失礼なことを言うので、助さんは。これ、御隠居様になんてことを!少しいきり立つが、金儲けの話だよと黄門がなだめ、お前さんは蝦夷に行きなさるのかい?と格さんが聞くと、あたりきしゃりき、馬のケツよ。この金次はいっぺん怪しいと睨んだら、北の果てまでって言うんだと金治は即答し、ま、今夜の所は寝た方が良いよ、ごめんよ!などと勝手にしゃべり、部屋を出て行く。

黄門は、助さんや、水戸に待たせてある人には気の毒だが、又しばらく帰れなくなったようだな…と言うと、な~に、5年や10年待たせておいても大丈夫ですなどと助さんは答える。

これ2人とも、わしを差し置いても、砂田重助のため、蝦夷へ行くつもりであろう?と黄門が言い当てると、砂田重助の非業の最期を観ました以上…と助さんは答え、格さんも、せっかく持って来たこの形見の印籠を何とか届けようと思いまして…と言いながら、差し出して見せる。

すると黄門は、砂田が盗まれた測量図、わしには心当たりがある…と言い出す。

(回想)五年前、江戸幕府

蝦夷地は、日本を守る北の拠点、ただ今御下命の測量図は万全を期して作りまするが、その大部分が未開地につき、その達成には数年を要すると存ぜられます…と松前泰久が将軍の前で言うと、将軍の横で聞いていた黄門が、松前公、蝦夷にはアイヌ族がおる。政の要点は、アイヌを日本人として取り扱うことじゃ、良いの?と提案する。

すると松前泰久も又、副将軍様のお考えと同じく、アイヌに対しては仁政を持ってかかる覚悟でおりますと答える。

(回想明け)奪われた測量図が、万一、異人の手にでも渡ることがありましたら一大事でございますと格さんは黄門に進言する。

松前藩や幕府だけの問題ではない。日本の国家存亡の危機じゃ…。こりゃ、どうあっても蝦夷に渡らねばならぬな…と黄門は言う。

(海を背景に)黄門遂に蝦夷へ(の文字)

ごらんよ、あたしが言うとおり、船はもう出てしまったよ!と海にやって来たお新が悔しがると、間違いなく、あの船に怪しい奴が乗っていたのか?と陣十郎が聞く。

そうです!あたしの目に狂いはないわとお新が教えると、良し!船頭!蝦夷へ着く前にあの船に追いつけ!金はいくらでも出す!と陣十郎は、連れて来た漁師たちに命じる。

夜中、船室にいた黄門たちの元へやって来た金次は、おい、親父!上に上がって観て来いよ。夜目にも蝦夷の山をぼんやり観て来た!等と言うので、そりゃ、ご苦労じゃったな…と黄門がねぎらう。

上がって観てみろよと金次がしつこく勧めるが、わしはここで結構じゃよ…と黄門は相手にしなかった。

金さん、そうせかせかしいで、ここで休んでりゃ、船は着くよと格さんがなだめるが、江戸っ子の俺にはそうはいかないんだよ!と金次は答えるが、その時、船が大きく揺れたので、金次は様子を観に上に上がって行く。

様子が変ですね?と助さんが語りかけると、助さん、格さん、こりゃ、何か出たぞ…と黄門は言う。

次の瞬間、階段を降りて来た金次を追って来たのは、荒くれ男たちだった。

助さんも格さんも、黄門を取り囲んで来た男たちと戦い始める。

黄門は、構わん!斬りなさい!と声をかける。

松明を片手に襲って来る敵を斬り始めた助さんと格さんは、相手が床に落とした松明の火も踏み消して行く。

甲板に上がった助さんは、次々に敵を海に突き落として行く。

翌日、松前藩

兄が殺されたのでございますか?と、松前泰久に呼ばれて駆けつけたこずえ(宇治みさ子)が聞くと、あいすまぬ…、伊達藩から知らせがあった。これが形見として届けられた…と泰久は、重助の遺品を前に伝える。

でも、測量図は?兄が携えし測量図は奪われたのでございますか?と案ずるこずえ。

重助には誠に気の毒なことをした。測量図は幕命によりそちの兄が測量奉行となって三年の歳月をかけ作りしもの、しかもこの土地の産業法規あらゆることを書き記した秘密の地図なのだ…と泰久は告げる。

その測量図が異国のものの手に入れば、日本の不利になることは火を見るよりも明らかなことじゃ…と泰久が続けると、何としても取り返さねば、亡き兄上が浮かばれまいと、側に控えていた一柳甚左衛門も口を挟む。

重助が出立に際し、何か言い残しておいたことはないか?と泰久が聞くと、いいえ、何もございませぬ…、お殿様に弓引くような者と言えば…とこずえが答えたので、アイヌとでも申すのか?アイヌに対しては、幕府の命に従って日本人と同じ扱いをして来たが…と泰久が言うと、それもほどほどでございますと甚左衛門が口を挟み、このたびの件は、シャグシャイン、奴の仕業に違いありませんと断定する。

その時、殿!と駆け込んで来た家臣が、申し上げます!ただ今、江戸よりの使者、村上半太夫殿、御着きでございます。蝦夷地測量図の督促とかで…と伝言する。

それを聞いた泰久は、地図の督促!と緊張する。

その頃、海岸では、漂着し、大変な目に遭いましたな…と嘆く黄門の着物を絞っていた格さんが、助さんはどうしました?と聞いていた。

あの潮の流れでは、海の藻くずになっているかもしれませんと黄門は嘆く。

助さんほどの人が溺れたとも思えませんが…と格さんが言い返すと、格さん、そう力を落としなさんな…、1人くらい欠けたって、この金次がついてらあ…、今日から助三の替わりになって、2人分働いてやらやらあなと、同じく濡れ鼠で漂着した金次が慰めるので、もう、助さんのことは言うな…、松前藩に頼んで必ず探してみせる…と黄門が言うが、それを聞いた金次は、大きく出やがったな、松前藩を子分のように言いやがると嘲笑する。

そんな黄門たちの前にやって来たのは役人で、貴様たちは海賊の一味か?等と言うので、とんでもない、あっしらは海賊に襲われた方で怪しい者ではございませんと格さんが言い、金次も、十手を取り出し、こいつらは自分の連れの瓦版屋ですと説明する。

手形は?と聞かれた黄門は、ここは親分さんの力の見せ所だ。何とか通させてもらってくれなどと頼むので、金次はええっ!そんな無茶があるかい!と驚き嘆く。

こうしたやり取りを聞いていた役人は、怪しい奴!第一、その方、十手など持って、御上を騙す気か?などと言い出し、3人は捉えられそうになる。

金次と格さんは抵抗しようとするが、格さんや、下手に手出しをしてもしようがない。こうなったら出る所まで出るまでじゃ…と黄門が言い聞かせる。

その頃、松前城の中では、村上半太夫(伊達三郎)が、約束の期限はとうに過ぎておりまする。今だ測量図をお収めにならぬは何としたこと?よもや公儀に対して二心あってのこと…と松前泰久の前に来て問いただしていた。

側で聞いていた一柳甚左衛門は、聞き捨てられぬ一言!何を証拠に申されるか!といきり立つ。

事実でなければ幸いでござるが…と、それをいなした半太夫は、当藩に不穏な動きがあるのではないかと、江戸表では案じておりますと付け加える。

そのようなことがあるはずがない!泰久、断言致す!と松前泰久は否定する。

では何故、測量図をお収めにならぬ?と半太夫が問うと、それは…と挙手した甚左衛門が、御公儀においてもご承知のごとく、何分僻地のこと故、思うように測量が進まず、未だ完成に至らぬ…と口を挟んだので、それは真でござろうな?と半太夫が確認する。

誓って、偽りは申さん!と甚左衛門が強弁すると、ではいつ出来上がる?松前殿、身の証しを立てるためには、向う二ヶ月の内に測量図をお収め下さい。さむなくば、松前藩お取り潰しの沙汰にまで及びましょうと半太夫は迫る。

洹治ない、必ず収めると伝えるが良い…と泰久は回答する。

そこへ、御家老!狼藉者でございますと、甚左衛門に家臣が伝えに来る。

二ヶ月のうちに…と案じながら廊下を歩いていたこずえは、慌てて走って来た家臣に、何ごとでございます?と聞くと、狼藉者にございますと聞かされる。

当藩内情を探りに来た江戸の隠密であろうが?と、後ろ手に縛られた黄門、格さん、金次らは、庭先で甚左衛門から尋問を受けていた。

それを聞いた黄門は、隠密に探られるとまずいことでもあるのか?と逆に聞くので、黙れ!と甚左衛門に怒鳴られるが、怒る所をみると図星か…と黄門は笑う。

不敵な奴!その減らず口も今の内じゃ、構わん!不法入国の咎により斬り捨ててしまえ!

それを聞いた金次は、斬る?冗談じゃないよ!と慌てて立上がるが、黄門と格さんも立て!と命じられる。

格さんが黄門をかばおうとしたので、やはり隠密だな?と甚左衛門は吐き捨てるが、押し倒された金次は、この始末はどうしてくれるんだ!と黄門に息巻く。

まあ落ち着け、鯉でもまな板の上に乗せられたら落ち着くものだ…と黄門はなだめる。

それでも、金次は、これが落ち着いておられるか!畜生!と暴れ始める。

そこにやって来たのが松前泰久で、甚左!公儀の隠密とはその者たちかと問いただす。

は!生かしておいてはためになりませぬ故…と甚左衛門は答えるが、振り返った黄門の顔を見た泰久は驚愕し、控えい!この方をどなたと心得る!畏れ多くも、水戸の御老公なるぞ!頭が高い!控えい!と甚左衛門や家来たちを叱りつける。

そして、自ら庭に降りた泰久は、黄門の捕縛を解き、他の2人の縄も解けと命じると、御老公!と言いながら、黄門の前に平伏する。

黄門は、とうとうバレたか…と笑い出すが、金次は呆然とした顔になる。

しかし、家老の甚左衛門は、何か含むものがあるような表情を変えなかった。

その後、着替えをすまして、場内で泰久と対峙した黄門は、江戸で別れたときと比べ、随分と立派になったもんじゃのう…と言葉をかける。

しかし、御老公には、いかなる理由で、蝦夷の地までお越し頂きました?と泰久が聞くと、ちと、蝦夷見物をしたいと思うての…と黄門ははぐらかす。

では、当藩を御案内して、楽しんで頂いては?と甚左衛門が進言するが。いや、そのような堅苦しいことはお嫌いでございますと格さんが口を出す。

しかし、万一間違いでもございましては…と甚左衛門は案ずるが、いや、良い良い、気ままが何よりじゃ…と黄門も笑い、助さんや、格さんや、ぼつぼつ出かけようか…と言いだす。

お発ち!と声がかかり、泰久に手を添えられ黄門が歩き始めると、助さん、おいでと呼びかけられた金次は、立上がって後に続く格さんからも手招きされたので、興奮し、佐々木助三郎、一生の不覚!などと言いながら感激する。

あっしは、こんなありがたいことはない!などと、廊下でも格さんに感謝をする金次だったが、そこに、渥美様!と声をかけて来たのが、砂田重助の妹こずえだった。

お噂はかねがね兄からうかがっておりました。実は、兄が…とこずえが言うので、そのことに着きましては、何と申し上げて良いか…、まことに気の毒なことをしました…と格さんも口が重くなりながら、持参した印籠を手渡す。

それを観たこずえは、これは兄の印籠でございますと驚く。

その夜、「北海屋」と言う店にやって来たのは、女スリと賊たち。

店に全員入ると、虚無僧姿の男が、何気に店の様子をうかがう。

訪ねて来た一柳甚左衛門から話を聞いた「北海屋」の主人北海屋藤三(嵐三右衛門)は、何!水戸の隠居が?と驚く。

蝦夷見物などと申しておるが、油断はならんぞ!と甚左衛門が釘を刺すと、来ましたな。この伊賀山弾治、町人にまで成り下がり、長年苦労したのも、徳川幕府を倒し、豊臣家の恩顧を受けたる者を救護し、その再興を計らんがための一念。水戸の隠居ごときに邪魔されてなるものか…と答える。

それを聞いた甚左衛門は、分かった、分かった、いずれにしろ目的は同じじゃ。蝦夷地の財宝とアイヌの兵法があれば、松前藩は愚か、幕府も恐るるに足らん!飼い犬共には水戸の老公が先の中納言などと言っても、何の効き目もないわと笑うが、その時、誰だ!と藤三が誰何し、庭先の障子を開けると、そこには集まった犬山陣十郎とその一味が控えていた。

首尾は?と藤三が聞くと、お望みの品はこれに!と犬山陣十郎は持参した箱を見せる。

うん、でかした!と褒めた藤三は、その箱を受け取ると、御家老、これをご覧下さいと見せる。

それを確認した甚左衛門は、間違いなく砂田重助の測量図だと喜ぶ。

陣十郎、手柄じゃ!その内、わしが蝦夷の地を収めるようになる、その時はその方を熱く召し抱えるぞ!と甚左衛門が声をかけたので、ありがたき幸せ!恐れ入ります!と陣十郎たちは平伏する。

御家老、これさえ我が手にあれば、赤蝦夷の奴らから銃を思うがままに買い取ることができます

この赤絵はかも知れぬぞ…と

誰も測量図がわしの手にあるとは知らぬ。水戸の隠居に見つかるようなことでもあれば一大事だ。

その点、抜かりはありません。しかし、事成就の暁は、この蝦夷地の半分は頂きたいものですな…と藤三は要求する。

半分か?呆れたのう…と言った甚左衛門は、その場で測量図をまっ二つに引き裂くと、その半分を、念のためじゃと言いながら、藤三に手渡す。

藤三は、恐れ入りますと礼を言い、陣十郎は、アイヌを手なずけるよう甚左衛門から命じられる。

その甚左衛門が、この女か?と女スリの事を藤三に聞くと、お新と申しますとお新が挨拶し、拙者たちと一緒に砂田重助を殺しに松島まで来る途中、良く働いてくれますと陣十郎も褒める。

そんな北海屋の前で尺八を奏でる虚無僧

その頃、旅籠「山城屋」に泊まっていた黄門たちは、夕食の膳を運んで来た女中に、アイヌの村はそんなに近いのか?と聞いていた。

女中は、2、3里くらいですと女中は答える。

その時、黄門が金次に、足を崩しなさいと声をかけると、あっしの事ですかい?どうも窮屈で敵わねえ、おう姉さん、部屋はないかね?と金次は恐縮する。

そんなに気兼ねをするなと格さんも金次に言う。

御隠居さん、これからあっしがひとっ走りアイヌを観に行ってみますと金次は黄門に提案するが、それを聞いた女中は、とんでもない、シャモが1人で行ってごらん!毛をみんな引き抜かれてしまうなどと女中が言うので、シャモって何だよ?と金次が聞くと、アイヌが日本人ことを言うのさと言う。

シャモってそんなに嫌われているのか?と格さんも聞く。

ねえ、親分!いや、御隠居さん、ことによると、あの一件はアイヌの奴が…と金次が余計なことを言いかけたので、黄門は軽くたしなめ、アイヌの総大将は何と言う男かね?と女中に聞く。

大酋長ですか?シャグシャインと言う男です。シャモをみれば、こいつがみんな毛を抜いてしまうんですよと教えると、女中は部屋を出て行く。

どうだい、助さん、行ってみるかい?と黄門が勧めると、とんでもない!あっしはお頭様とご一緒だとどこでも行きますが、1人じゃ…と、臆病風に吹かれた金次は断る。

格さんは、そのシャグシャインと言う男に会ってみたくなりましたと答える。

アイヌの村では、シャグシャインを中心に、祭りが行われていた。

そこにやって来たシャグシャインの妹ノサップ(野添ひとみ)が、兄さん?ギルタン様が見えましたと伝える。

シャグシャインの前に来たギルタンは、大酋長のお招きだ。槍が降っても来ずばなるまいと冗談めかして挨拶をする。

ギルタンがシャグシャインの横に座り、盃を受け取ると、祭りは絶好調を迎える。

そんな中で踊り始めたノサップを見つめるギルタンの目は燃えていた。

そんなアイヌの村の近くまで、格さんはひそかに様子を観に来ていた。

大酋長、シャモを討つには今が絶好の時だ。一挙に松前橋を責め落とそうとギルタンが提案すると、ギルタン、トマリ部落の精鋭を引き連れ、江差の港を攻めるのだとシャグシャインも答える。

松前の軍勢が江差の港に動いた隙に、俺が松前の城を攻める!とシャグシャインは計画を明かす。

しかし、ギルタンは、嫌だと言うので、なぜだと?とシャグシャインが聞くと、大酋長らしくないぞ、手柄を独り占めにするつもりだろう?などと言い出す。

お前と俺は、アイヌの民を盛り立てるために、兄弟の契りを結んだ仲ではないか!とシャグシャインは大声を張り上げたので、ノサップは何ごとかと2人の方を見やる。

アイヌの幸せのためにお前も力を貸してくれとシャグシャインは頼むが、シャグシャイン、お前の父親はシャモだ!お前の身体にはシャモの血が流れているんだ!みんながそれを知っている。

俺はお前が、心の底からシャモを憎んでいる証拠を見せるまでは、お前を信じることができん!とギルタンはなじる。

そんなギルタンに何を言う!とつかみ掛かったシャグシャインを止めに来るノサップ。

興奮したシャグシャインは、一瞬、止ってしまった民たちに、踊れ!踊らんか!と怒鳴りつける。

その後、1人、民の踊りから離れ、祈っていたノサップに近づいたギルタンが、何を祈っているのだ?と聞くと、あなたはなぜ、兄をあのように責めるのです?日本人を父に持った事は兄の罪ではないはずです!と問い返す。

するとギルタンは、シャモは卑怯だ。それはお前が一番知っているはずだ…と言いながら、馴れ馴れしく顔を触ろうとしたので、嫌がったノサップは逃げかけるが、それを捕まえたギルタンは、俺はお前を妻にするんだと告げる。

俺と来いと、無理矢理ノサップを連れて行こうとしたギルタンは、助けに来たウララ(小町瑠美子)を突き飛ばす。

言うことを聞かんか!とギルタンが刀に手を欠けたその時、待て!と姿を現したのは、木陰に身を潜めていた格さんだった。

あ!シャモ!と驚いたギルタンは、刀を抜いて斬り掛かって来るが、それを押さえつけた格さんは、砂田重助を斬った奴がいるはずだ。そいつを教えてくれと頼む。

しかし、ノサップが、お待ち下さい!と格さんを止めた隙に、逃げ出したギルタンは、シャモがいたぞ!と村人たちに告げに行く。

その時、落とし物をしていた事には気づかなかった。

ノサップは、逃げて下さい!ギルタンは恐ろしい男ですと格さんに教え、租かの村人たちも騒ぎだしたので、格さんは一旦退却する事にする。

アイヌはホラ貝を吹いて仲間を集め、馬に乗った追手が後を追う。

昨日もアイヌの部落を探ってみたが、何の手掛かりもなかった…、ま、今しばらく待ってもらいたい…と、無事に宿に戻っていた格さんは、訪ねて来たこずえに報告する。

兄のためにお手数をかけて申し訳ありませんとこずえは詫びる。

それより、こずえさん、この印はどこの店の印だ?と格さんは聞く。

これは北海屋の…とこずえは教える。

松前一番の運上屋です。アイヌとの取引を手広くやっているお店でございます。御家老の一柳様は、大層肩入れをなすっていると聞きましたけど…と言う。

アイヌ…、北海屋…、松前藩か…、何かありそうだな…と格さんはつぶやくと、いや、ありがとう、徐々に糸口がほぐれて来たと言うので、渥美様!私にも何かお手伝いできることがあれば、お言い付け下さいませ、お願いです、女でなければ出来ないようなこともあるはずです!とこずえは言い出す。

渥美様、兄の死を聞いた時から覚悟は出来ております。あなたが御言いいつけ下さらなければ、私一人でもやります!とまで懇願して来るので、何をやると言うのです?と格さんが聞くと、北海屋を探ります。アイヌと繋がりのある北海屋を探れば、測量図の行方もあるいは…とこずえは言う。

こずえさん、お願いします。御老公もきっと喜ばれるでしょうと格さんは、こずえに頼む事にする。

しかし、そこに、これ、待ちなさいとやって来たのが黄門で、北海屋へ行くと、命はない斧と覚悟しておるな?とこずえに聞く。

はい!とこずえは答え、じゃあ、御老公はもう北海屋の事を?と格さんも驚く。

その時、尺八の音が聞こえて来たので、まあ、珍しいとこずえは驚き、今まで蝦夷では聞いたことがなかったか?と黄門はこずえに聞き、何事かを思案し始める。

虚無僧が尺八を吹きながら歩く町の店から出て来たお新を待ち構えていて捕まえた金次は、ちょいとお前に話があると言う。

誰かと思えば金さんかい?蝦夷くんだりで会うとはね…、まさか私を追って来たんじゃあるまいね?とお新が聞くと、ところが、そのお前に話があるんだよ!と金次は、お新の手をひねる。

どっからだい?とお新が聞くと、お前、ちらっと松島の宿で…と金次が言うので、そんな所知らないよとお新はとぼけるが、今日はおめえをスリとして扱ってるんじゃないんだぞ!おめえ、ちらっと北海屋と…と金次が凄むと、お新は金次の財布を素早く抜き取り、相変わらず間抜けだね~と嘲りながら、その財布を投げ捨てる。

金次が財布を拾う隙に、お新は手を振り払って逃げ出す。

待てい!スリだ!と叫びながら、お新の後を追っていた金次だったが、それを邪魔したのは虚無僧だった。

そんな金次と虚無僧の争いを側で観ていた犬山陣十郎は、運の良い奴だ、虚無僧に突き当たらなければ、わしに斬られていた所だ…とお新に笑いかける。

一方、金次の手を掴んで話さない虚無僧は、命冥加な奴だ。あまりチョコチョコ走るな!などと言うので、やい、助さんに向かって、なんてことしやがるんだい!と金次は文句を言う。

お前が助か?と虚無僧が聞くので、そうだ、俺が助さんだと答え、知らねえだろうがな。あの女は悪い奴で、北海屋とぐるなんだ!と金次が口にすると、その言葉をかき消すように、虚無僧は殴りつけ、口を慎め!無駄口を叩くな!と叱りつける。

その頃、北海屋は、赤蝦夷との取引が巧くいきました。10日後に鉄砲を積んだ赤蝦夷の船が着く手はずですと一柳甚左衛門に教えていた。

そういか、だが、合図は良く手なずけてあろうな?と甚左衛門が聞くと、あのギルタンは、大酋長のシャグシャインに大変不満を持っております。今夜ここに、ギルタンが来ることになっている。御家老からなだめて頂きたいと北海屋は頼む。

そこに、ギルタンが離れで待っておりますとの知らせが来たので、北海屋と甚左衛門は会いに行く。

アイヌ仲間では一番信頼できる男ですと陣十郎から紹介された甚左衛門は、なかなか良い面構えをしていると気に入ると、話と言うのは何だ?と聞く。

実は、砂田重助を殺した奴がいないかとユーカリ部落に聞きに来た者がいますとギルタンは言うので、甚左衛門は、何!何者じゃ?松前藩の者か?と驚く。

いいえと答えたギルタンは、ところがシャグシャインは北海屋ならその男を知っているだろうと言っていますと続けるので、尋ねって行った男は年寄か?

シャグシャインは、違いますと答えると、あなたを非常に嫌っていますと北海屋に教えるので、おのれ!今に息の根を止めてやる…と北海屋は悔しがる。

するとギルタンは、私に策略がありますと言い出す。

策略とは?と甚左衛門が聞くと、私が全部落をおだてて、戦いを始めます…とギルマンは言う。

その頃、北海屋の座敷に忍び込んでいた虚無僧は、欄間の辺りから何かを抜き取っていたが、気配に気づいた甚左衛門と陣十郎が部屋に戻って来るなり、曲者!北海屋!と騒ぎ始める。

その時、庭に忍び込んでいた金次が甚左衛門に発見され慌てて逃げ出す。

後を追おうとした甚左衛門は、御家老!北海屋から呼び止められ、部屋の欄間の隙間に隠しておいた測量図の半分を盗まれた!と聞かされる。

たわけ!と叱りつけた甚左衛門だったが、今のは確か水戸老公の家臣、確か、佐々木助三郎!かくなる上は老公を斬るもやむを得んぞ!と言い出す。

宿を探せ!と三河屋は陣十郎たちに命じる。

そこにやって来たギルマンに、部落に探りに行ったのはあの男か?と甚左衛門は聞くが、ギルマンは違うと言い、一緒に出て来たお新が、あれは金次と言う江戸の岡っ引きで、私を狙っているんですよ、佐々木助三郎って男は海に落ちて死んじゃったでしょう?と教える。

この土地では見慣れる風体で、その男は水戸の百姓と名乗っている!と陣十郎は町中で聞いて廻るが、誰も宿は知らないと言う。

その後、ギルタンにそそのかれたポイサパ(阿部脩)らアイヌの一党が、松前に向かって攻め込んで来る。

今日こそ抜かるな!1人残らず生け捕りにせい!と、予め情報を知っており待機していた甚左衛門が家臣たちに命じる。

そんなアイヌの一群を丘の上で発見したシャグシャインは、ポイサパはどこに行くんだ?と仲間に聞く。

一方、黄門、金次と一緒に別の丘に来ていた格さんは、御老公、砂田は測量作成に五六年かかると言うのに、無理に終えようとしてたんですな…と話していた。

その時、黄門が下界の異常に気づき、あれは何じゃ?と覗き込む。

松前藩領の町中に乗り込んだアイヌの一党は、日本人の姿が見えないので、シャモはどこに逃げたんだ?と戸惑う。

そこに、隠れて待ち伏せしていた松前藩の家臣たちが一斉になだれ込んで来る。

アイヌの一党は逃げ道を失い、町中で戦わざるを得なくなる。

その頃、ギルタンを捕まえたシャグシャインは、なぜ俺に断らずシャモに仕掛けた?俺は大酋長だぞ!と問いただしていた。

しかし、ギルタンは、俺はしらんと言うので、噓を言え!副酋長もポイサパも仕掛けたのはお前ではないかとシャグシャインは責める。

そんな噂を聞き込んで来た金次から事情を聞いた黄門は、困ったことじゃ…、格さんや、シャグシャインのいる部落はどこだ?と聞く。

あの森影になりますと困惑しながら格さんが教えると、黄門がその部落へ行こうとするので、いけません!部落民の興奮は相当なものだと思われます!御老公に万一の事がありましては…、しばらく!本日まではどのような御言いいつけに従いましたが、これだけは…と格さんは必死に止めようとする。

どうしてもお行きになるのなら、松前藩の護衛を連れ…と格さんが言うと、愚か者!そのようなものを連れて行けば、火に油を注ぐようなものじゃと黄門は諭す。

しかし、ここは蝦夷でございます。内地とは違います!と格さんも引き下がらない。

アイヌは聞きません!と金次も止めようとするが、控えろ!人の心は違わぬわと黄門は叱りつける。

傷ついたアイヌたちが部落に戻って来ると、部落中では、シャモと戦おうとする気勢を上げている所だった。

そこにギルタン酋長が来たぞ!と言う声が挙り、やって来たギルタンに近寄ったシャグシャインが、ポイサパを取られた。松前の城に攻め込んでポイサパを奪い返すんだ。ギルタン、お前一人か?部落のものはどうした?と声をかけるが、ギルタンは、俺は犬死にしたくないと言い出す。

何?ポイサバを見殺しにするのか?とシャグシャインが驚くと、今攻めても勝ち目はない。おれは行かん!行きたければ勝手に行け!とギルタンは冷笑を浮かべ答える。

ギルタン!お前は何を企んでいるのか?とシャグシャインが聞くと、シャモが来た!との呼び声が部落に轟く。

やって来たのは、黄門、格さん、金次の3人だった。

アイヌに取り囲まれ、緊張しながらシャグシャインに近づく3人。

その中の格さんの顔を観たウララは、ノサップが寝ていた家に行き、いつか助けて下さったあの方が来られましたと教える。

え!あの日本人が!と驚いて起き上がるノサップ

大酋長は?シャグシャインはどこにおるのかな?と部落民の中に進み出た黄門は、おお、どうやら、お前さんらしいな…とシャグシャインを見つける。

己は誰だ?とシャグシャインが聞くと、わしか?わしは水戸光圀と言うものじゃと黄門は答える。

日本の副将軍だったと言うのはお前か?とシャグシャインが聞くので、そうじゃと頷いた黄門は、見れば、出陣の準備をしているようじゃが、無駄な戦は止めてくれるかと頼む。

ポイサパは、わしが城に帰ったら必ず引き渡すようにすると黄門が提案するが、いらぬ!ポイサパは、腕に賭けても奪い返す!とシャグシャインは意地を張る。

その時、ギルランの横にいたアイヌが矢を射かけようとしているのに気づいた格さんは、ギルタンを取り押さえ、卑怯な真似は止めろ!矢を放ったら、こいつを殺すぞ!と部落民に言い聞かす。

その手を離せ!とシャグシャインが格さんに詰め寄ると、離さん!こいつは御老公を殺そうとした!と格さんは説明する。

互いに血を流して、何の利益があるのじゃ?と黄門は言うが、黙れ!貴様の言う事は信用できん!日本人は嘘つきだ!俺は日本人を憎む!日本人が蝦夷の地から離れるまで戦は止めぬ!とシャグシャインは興奮する。

お前さんが付き合った日本人は、よくよく悪い人間じゃったと見えるな…と黄門が同情すると、その悪い人間が俺の父親だ!とシャグシャインが言い出したので、黄門は、何じゃと!と驚く。

俺の身体の中には、汚れた日本人の血が流れているんだ!俺たちを見捨てた父親の血が流れている!とシャグシャインは訴える。

(回想)母ちゃん、父ちゃんはいつ帰ってくるんだい?と妹ノサップを膝に抱いた母親に聞く少年時代のシャグシャイン

もうすぐ帰って来るよと母親が答えると、父ちゃんが帰って来るって、母ちゃん、噓ばかり言って!とノサップも文句を言う。

もう帰って来ないんだろう?母ちゃん、父ちゃんを探しに行こうよと言い出し、家を飛び出そうとした少年シャグシャインを捕まえ、父ちゃんは必ず帰って来るって言ってるじゃないかと言い聞かせる母親

父を捜し、雪の中、家に戻って来た母親は、途中で疲労のため跪き、少年シャグシャインと幼女ノサップが抱きつく。

それから俺たち兄妹は、どのくらいお父っあんを探し歩いたと思う?

その上、俺たちの仲間からは…(と、シャグシャインの独白が重なる)

アイヌの子供たちから、シャモの子と虐められる少年シャグシャインたち

それに気づいて、家から出て来た母親が、いけない!と2人の子供をかばうが、その場に倒れ込む。

それからお袋は、親父を待ち抜いて死んでしまった…(と、シャグシャインの独白が重なる)

俺たち兄妹は、ててなし子、間○子と、仲間たちからばかにされて来たんだ!

俺でも俺たちは、仲間に内緒で父親を捜し歩いた。

母親の墓を自分たちだけで作る少年シャグシャインと幼女ノサップ。

神様にもお願いした!日本人の声がすると、父親かと思って飛んで行った。

果てしない平原、川に向かって、父親を呼んだ事が幾度あったと思う!

(回想明け)涙ながらに語る少シャグシャインに身を寄せるノサップ

それほどばかにされたお前さんが、どうして大酋長になれたのかな?と黄門は聞く。

それは俺の腕力でしたんだ!力でしたんだ!もし俺に力がなかったら、俺たち兄妹はどんなにみじめになっていたと思う?帰らんと命はないぞ!とシャグシャインが刀に手をかけたので、兄さん!この人たち噓つかない!この方は私を助けて下さったんです!とノサップは格さんの横に立って教える。

噓だ!助けたなんて噓だ!とギルタンが口を出して来るが、シャグシャインはそれを押しのける。

兄さんお願い!ポイサパのために松島の城を攻めないで!とノサップが頼むので、一度だけ、お前の言う事を信じよう…、だが、この男は人質に置いて行け…とシャグシャインは格さんを顔で指して言う。

格さん、ああ言っている…と黄門が格さんに尋ねると、残りましょうと答えた格さんだったが、でも万一、城に戻るまで、御老公に万一の事があっては…と案じる。

それを聞いたシャグシャインは、俺を信じることができないのか!と怒るので、黄門は、出来る、お前さんには噓がないと答える。

明日の日の出まで、それ以上は半時たりとも待たんぞ!とシャグシャインは条件を言う。

御老公お帰り下さいと格さんが頼み、そんなに手間は取らんよ、行こうか、助さんと金次に声をかけ、一緒に部落を後にする。

松前城では、時ならぬ水戸黄門の来訪に、大太鼓で召集の合図が打ち鳴らされていた。

それに気づいた犬山陣十郎は、御家老!もしや測量図を証拠に我々を非難しに来たのでは?と声をかけると、一柳甚左衛門も、まずい!殿にお会わせしてはならぬ。万一の時には…、分かっとるな?と陣十郎に声をかける。

黄門を廊下で先に出迎えた甚左衛門は、御用の趣がありましたら私めが…と声をかけるが、黄門は、いや、松前公に会おうと言う。

そんな黄門を、庭先から狙おうと隠れていた陣十郎の背後から近づいて来たのはあの虚無僧で、老公は測量図を持っておらんと言うので、貴様、何者だ?と陣十郎は聞くが、混む宗は、早まらぬが良いと言い残し姿を消す。

せっかく休んでいた所を叩き起こししてすまぬの…と黄門が、起きて来た松前泰久に詫びると、何を仰せられますると恐縮した泰久は、そちは下がっておれと甚左衛門を所払いする。

しかし、御老公には、この夜中、いかなる御用向きがあって…と泰久が聞こうとすると、泰久殿、そちは将軍家の前で、わしが申した事を覚えておるか?と黄門は問いただす。

蝦夷地を治める要点は、アイヌも日本人として取り扱う…と泰久が答えると、覚えておらぬ!なぜそのようにせん?と黄門は睨みつける。

お言葉を返すようですが、アイヌはことごとくに盾をつき、一部の酋長だけが政に協力する次第にございますと泰久が答えると、その協力致しておる酋長の名を存じておるのか?と黄門が聞くと、ギルタンとか申しますが…と泰久は答える。

そちはその目で観たのか?部落へ参ったのか?と黄門が睨むと、参りは致しませぬが、家老甚左衛門始め家臣共の報告では…と泰久が抗弁すると、それを節穴と申すのだ!とこん門は叱りつける。

節穴と仰せられますか?と泰久は憤慨すると、そうじゃ!と黄門は断ずる。

泰久はただ、恐れ入りました…と恥じ入るしかなかった。

今日、部落で捉えられたアイヌをわしにくれぬか?と黄門が頼むと、いかがなされます?と泰久は聞き返す。

帰してやるのじゃと黄門は言う。

その間、甚左衛門の名を受けた陣十郎は、ポイサパの牢に一人向かう。

その直後、ポイサパが牢内で何者かの手にかかり!との知らせが、黄門と泰久に伝えられる。

牢に様子を観に来た黄門と泰久は、ポイサバばかりではなく、牢番役も全員斬り殺されているのを目撃する。

同じ頃、ユーカリ部落では、人目を忍んで牢に入れられた格さんに、先日の礼を言いに行くノサップをギルタンがひそかに見張っていた。

ノサップの言葉を聞き、そんな事は…と格さんが言うと、そうだ、言う必要はない!と突然声をかけ、ノサップを捕まえて連れ去ろうとするギルタン。

放して!ギルタン様!とノサップが哀願すると、俺たちと口を聞けば、お前の命はなくなるんだ!とギルタンは脅してくる。

なぜですそれは?とノサップが聞くと、シャモは我々アイヌの敵だ!とギルタンが言うので、私はそうは思いませんとノサップは答える。

するとギルタンは、何を言う!あんなシャモと通じて…などと言いがかりをつけるので、そんなことはありません!とノサップは否定するが、隠すな!お前を慕って会いに来たのが何よりの証拠だ!とギルタンは言う。

違います!と言いながら逃げ出そうとするノサップを捕まえたギルタンは、俺はお前が好きだ。俺の気持ちを汲んでくれれば、何も言わん!と言いながら、ギルタンは嫌がるノサップに迫ろうとするが、その時、突然、ノサップは気を失ってしまう。

シャグシャインもいる集会場に運び込まれたノサップを観た呪術師シラッキー(浅尾奥山)は、死の顔じゃ!息を引き取る前の顔じゃ!と言うと祈り始める。

牢の中の格さんは、牢の前の薪用の組木の周囲を祈りながら1人廻っていたウララに小石を投げ、近くに呼び寄せると、お祈りの邪魔をしてすまなかったな、ノサップ殿はどうしてる?と聞く。

ウララは、今、悪魔除けのお祈りをして頂いているのですが、悪くなるばかり…、高い熱が出て、死の顔をしておられますと哀し気に答える。

死の顔?それを押してまで、礼を言いに来てくれたのか…と感激した格さんは、立ち去ろうとするウララを呼び止め、これを飲ましてくれ、熱冷ましには良い薬なんだと言いながら、印籠を手渡そうとする。

しかし、ウララがダメです!と受け取ろうとしないので、どうしてだ?私が日本人だからか?お前たちも全部日本人じゃないか!と格さんは迫るが、ウララは、いいえ!この部落では病を治すのは祈祷師シラッキー様のお勤め、例えどんな良い薬でも、ウララから差し上げるわけにはいかないのですと言う。

その時、音楽が聞こえて来たので、格さんが何だ?と聞くと、ツレンの式が始まったのです。神様から御名指しを受けた人がノサップ様の額に口づけをして悪魔を払うおまじないです。あの歌が神様を呼ぶお祈りですとウララは言う。

神様にお名指しを受けた者?その役はまだ誰も決まってないのか?と格さんが聞くと、このウララが松明を持って部落の家々を廻り、その火が消えた所の男がその役に決まるのですと言い、帰りかけるウララだったが、そんなまじないで、本当に病が効くと思うのか?手遅れになったらどうするんだ?お前があのノサップの事を思うのなら、私を信じてその役を俺に廻してくれ!必ず病を治してやる!と格さんは、ウララの着物を掴んで頼む。

苦しむノサップを、ただ黙って見守るしかないシャグシャインは、その後、祈祷師シラッキー、松明を持ったウララの後を着いて、部落を廻りだす。

格さんの牢の前まで来た時、ウララの松明が消えたので、神のお告げは日本の男と決まった!と祈祷師シラッキーは宣言する。

ばかを言うな!シャモにそんな役目をさせられるか!とギルタンは祈祷師シラッキーにつかみ掛かるが、しかしギルタン様、ここで火が消えたのは、全て神様の思し召しです!一刻も早く、ノサップ様を苦しみからお救い下さいませとウララは頼む。

祈祷師シラッキーも、そうじゃ、例え日本の男でも、神のお告げは守らればならぬ!と毅然として言い張る。

どうするシャグシャイン大酋長?可愛い妹と額をシャモの唇で汚させるか?そんなことは出来ん!とギルマンが迫ると、シャモに汚されてたまるか!と他のアイヌたちも同調する。

そんな中、どうするんだ?とギルタンから言われたシャグシャインは、黙って、ギルタンの身体を押しのけると、格さんの牢の扉の綱を切ってやる。

シャグシャインに連れ出され、ノサップの元に連れて来られた格さんは、神の思し召しじゃ、額に口づけをせよ!と祈祷師シラッキーから命じられたので、急いでノサップの傍らに寄ると、熱冷ましの薬を口移しで飲ます。

それに気づいたシャグシャインが駆け寄り、何を飲ませた!とつかみ掛かって来たので、格さんは落ち着いて熱冷ましの薬だと答える。

何!と怒ったシャグシャインは格さんを殴りつけ、ノサップにしがみつく。

すると、ノサップの顔から苦しむ様子が消えたので、ノサップが死んだ!シャモが毒を飲ませたんだ!と部落民たちは騒ぎだすが、待て!死んだのではない、眠っているのだ。明日の朝の日の出まで眠り続ければ、目が覚めれば必ず直ってる…と格さんは説明する。

しかし、それを聞いたギルタンが、噓をつけ!と言うので、俺を信じろ!と格さんも言い返す。

ギルタンは、殺せ!と言い出し、部落民も騒ぎだすが、シャグシャインが静かに!と一喝し、殺すのは明日の朝まで待て!と命じる。

北海屋にやって来た一柳甚左衛門に気づいたこずえは、その会話を聞こうとする。

一柳甚左衛門が慌てて来たのは、赤蝦夷との取引は間違いなく明後日か?と確認するためだったのだが、しかし、肝心の測量図の半分は?と北海屋が戸惑うと、構わん、近い物を作って渡せ、猶予はならんぞ!と甚左衛門が焦るので、何かありましたか?と北海屋が聞くと、今宵、水戸の老公が突然城に参ったと甚左衛門は教える。

驚いた北海屋は、水戸の奴らが動きを勘づいたとしたら、今宵のうちにも片付けねばなりますまい…と進言する。

その部屋の中の様子を障子越しに聞いていたこずえだったが、茶を運んで来てお新がその気配に気づき、甚左衛門に目で知らせる。

こずえも、突然中から笑い声が聞こえて来たので、驚いて立ち去ろうとするが、障子を開けて現れた甚左衛門に捕まってしまう。

お前はこずえ!と甚左衛門が驚くと、えっ!こずえと言えば、砂田重助の妹!と、後から出て来た北海屋も驚く。

お前に頼んだ奴はおおよそ分かっておる。このような事をして命は惜しくはないか?と甚左衛門は迫るが、その手を振り払ってこずえは逃げようとする。

そんなこずえをかばうように現れ、逃げても無駄だと止めたのは虚無僧だった。

貴様、城中にいた奴だな!と犬山陣十郎は気づき、お新も、この人ですよ、この間、金次に追われたとき助けてくれたのは…と言う。

何だって!それにしても、人の家に無断で忍び込むとは何のためだ!と北海屋が文句を言うと、笑い出した虚無僧は、懐から測量図の半分を取り出す。

それを観た北海屋が、貴様が盗んだのか!と取り返そうとするが、それを測量図で叩いていなした虚無僧は、せっかく苦労して手に入れた品をただでは渡せんと言うので、いくら欲しい?言え!と北海屋が聞くと、一口仲間に入れてもらおうと虚無僧は言い出す。

この半分がなければ外部との取引も出来ぬはずと虚無僧が言うので、お前さん、どうしてそんな事まで知っているんだい?とお新が詰めよると、預かりものを返そうと言いながら、虚無僧が取り出したのは、お新が仙台で掏られたアイヌの笛だったので、お新は驚愕し、それじゃ、お前さんは?と聞く。

仙台城下で測量奉行砂田重助を襲ったその1人をつけていたらたぐりだしたと言ったらどうする?と虚無僧が言うので、犬山陣十郎がそのかぶり物を取れ!と迫る。

取る必要はない!と拒否し、虚無僧は斬り掛かって来た敵を尺八一本で相手をし始めたので、待て!とそれを制した甚左衛門は、話は分かった。同志の内に加える前に、その地図を渡せ!と声をかける。

残りの半分を持っているのはそこもとか?と虚無僧が聞くと、甚左衛門は、言う必要はなかろう!と拒否する。

では拙僧も、これは渡すわけにはいかない。この女ももらって行くぞ、嫌だと言えば、腕に賭けても連れて行くまで!と虚無僧は言い、帰すまいとする北海屋をいなしながら屋敷を出て行く。

ただちに、陣十郎とお新は、地図を取り返すためその後を追って行く。

外に出て来たこずえは、命を助けて頂いたのです、せめてお名前を!と聞くが、虚無僧は、早く行かぬか!と急かすだけだった。

こずえは何度も会釈しながら立ち去って行く。

1人になり尺八を吹き始めた虚無僧に駆け寄り、懐の地図を掏ろうとしたお新だったが、あっさり捕まり、お新、わしの懐ばかり狙わず、どうだ、今日からわしに手を貸さぬか?と虚無僧は言い出す。

わたしゃ、お前さんのような男を観たことがないとお新が言うと、赤蝦夷とのテッポyの取引の場所はどこだ?と虚無僧が聞く。

お新は、背後に隠れていた陣十郎の方を気にしながらも、虚無僧に付いて行こうとしたので、それに気づいた陣十郎は、裏切り者!と言いながらお新に斬り掛かって来る。

それを尺八で防いだ虚無僧は、津軽の海の仕返しじゃ!と言いながら陣十郎を斬り捨てる。

その時、あっ!お前さんは!と虚無僧の正体に気づいたお新は、あたしが悪かったんだ…と涙ながらに改心する。

宿で1人で待っていた金次は、こずえがやって来て、渥美様は?聞くので、大変なんだよ、天下の一大事なんだよ!人質になってしまったんだよ、助さんが…、いや、助さんは俺だから、格さんが…と慌てながら教える。

するとこずえが部屋を飛び出そうとするので、どこへ行くんだよ!と金次が止めると、部落へと言うので、金次は叱って止める。

その頃、黄門は1人でユーカラ部落へと向かっていた。

部落では、ノサップ様の病気は治るかしら?ダメらしい…と住民たちが噂していた。

そんな中、ノサップの枕元に座っていた祈祷師シラッキーが、日の出じゃ!と言う。

そくぇ、来たした!あの爺が!と連絡が来たので、ポイサパもか?とシャグシャインが聞くと、爺さん1人ですと言うではないか。

怒りに燃え、表に出たシャグシャインは、おお、大酋長!と呼びかけた黄門に、いきなり鞭を振るうと、お前は約束を破った!覚悟は出来ていような?と迫る。

わしが1人で来た事で分かるじゃろうと黄門が言うと、苛立ったようにシャグシャインは沙汰に鞭を振るう。

ポイサパはどうした!どうした!と怒鳴るシャグシャインに、黄門は、殺されていたのじゃ…、さ、わしの代わりに、あの若者を出してくれ…と答える。

しかし、シャグシャインは、出来ん!妹に毒を飲ました!と言うので、黄門は、何!あの男が毒など飲ませるはずがないと驚く。

その時、寝ていたノサップが目を覚ましたので、側についていたウララは喜び、祈祷師シラッキーも生き返った!と驚く。

部落民たちが、松明に火を点火するのを観た黄門は、ギルタンと言う男を呼んでまいれ、会えば分かる!と頼むが、ギルタンは自分の部落に帰ったと答えたシャグシャインは、この爺を縛れ!神に捧げる!と命じる。

部落民たちが黄門に襲いかかるが、黄門は何とかそれを交わし、控えい!と叱りつける。

それでも、シャグシャインは、縛れ!と命じるので、若者を出せ!と黄門は頼むが、シャグシャインは、火をかけろ!と命じる。

その時、兄さん、止めて!とシャグシャインに飛びついて来たのはノサップだった。

シャグシャインは喜び抱きしめるが、そこへ駆けつけて来た格さんが、御老公に手を出すな!と仲裁に入る。

止めろ!と仲間を制したシャグシャインは、帰れ!早く帰らんか!と黄門と格さんを急かす。

黄門は、シャグシャイン、妹の喜びを無駄にするなよ…と言い残し、格さんと部落を後にする。

その後、ノサップを連れ、村外れの墓にやって来たシャグシャインは、ノサップ、お前は母の過ちを二度繰り返したいのか?と問いかける。

母ちゃん!と墓に呼びかけるノサップ

お前も俺も、日本人を父に持ったばかりに、今日まで苦しんで来た。その苦しみを、お前の子供にまで背負わせたいのか?と説くシャグシャイン

その頃、北海屋の庭先では、ギルタンが種子島で壺を撃つ練習をしていた。

側でその様子を見守っていた北海屋は、どうだギルタン?明日にはこの鉄砲が200丁入ると言う。

これさえあれば一日で松前の城が潰せる!と喜ぶギルタンに、狼煙を上げろ!と北海屋は命じる。

ユーカリ部落では、ノサップの姿が見えなくなったので、シャグシャインはウララに聞きに行くが、ウララは知りませんと頭を下げる。

祈祷師シラッキーに会うと、村の外を指差したので、あの男の所か?と聞いたシャグシャインは馬で後を追おうとする。

そこにやって来たギルタンが、シャグシャインはどこへ行ったと聞くが、祈祷師シラッキーは知らんと答える。

ギルタンは、シャモを倒す時が来た、いよいよこれから松前の城に攻め込むぞ!と部落民に告げると、大酋長は戦いはせぬ!と祈祷師シラッキーが言うので、良し、シャグシャインが嫌だと言うのならそれでも良い。今日ハラコのギルタンが大酋長だ!シャグシャインを選ぶか?このギルタンを選ぶか?どっちだ?と部落民に選択を迫る。

1人の男がギルタンと答えると、良し!シャモを討て!と雄叫びを上げたので、部落民たちもオーッ!とそれに応えるが、シラッキーだけは、待て!大酋長はシャグシャインだ!と反抗する。

しかし、その直後、シラッキーはギルタンが撃った銃弾で倒れ、ウララが嘆き悲しむ。

ギルタンは再び雄叫びを上げ、部落民たちは損も声に応じる。

シャグシャインが馬で部落を後にした直後、シラッキーが殺されたぞ!と部落民たちは騒ぎだす。

途中でノサップに追いついたシャグシャインは、お前はまだ母の苦しみがまだ分からないのか?と、馬を降り、ノサップに言い聞かす。

許して、兄さん!とノサップは詫び、さ、俺と帰ろうと言い聞かし、帰りかけた2人だったが、シャグシャインだな!と呼びかけられ、松前藩の家臣たちに取り囲まれてしまう。

そこへ馬で駆けつけたのが松前泰久で、待て!その男を討てと命じたのは誰じゃ?と問いただす。

御家老一柳(かずやなぎ)様で…と家臣が応えると、ならぬ!余は松前城主泰久じゃと名乗る。

しかし、シャグシャインは、それがどうした!と言いながら、物怖じもせず泰久に近づく。

すると泰久が、そちもこの泰久も陰謀の輩に踊らされていたのじゃと打ち明け、刀を引け!と命じたので、アイヌにそのような男はおらん!とシャグシャインは反発する。

ギルタンと言う男じゃ、その男は余の家老と結託し、この蝦夷地を売るつもりじゃ…と泰久は教える。

それを聞いたシャグシャインは黙り込む。

その頃、ギルタンは松前城に進行を続けており、北海屋は、海岸に小舟で乗り付けた赤蝦夷の使者たちに、おい、ハレンスキー!約束の時間に遅れたぞ、早く取引をしてもらおう!と急かしていた。

待ち構えていた一柳甚左衛門に一礼したハレンスキーは、鉄砲この通り持って来た。蝦夷の地図見せて下さいとハレンスキーは要求する。

良し!と甚左衛門が答えたとき、待て!と言いながら出て来たのは虚無僧で、先刻より待っていると虚無僧が言うので、持って来たか?と甚左衛門が聞く。

混む宗は自分の懐から測量図の半分を取り出すと、後の半分を出してもらおうと甚左衛門に要求する。

甚左衛門が懐から、残りの半分を取り出すと、いきなり斬りつけた虚無僧は、甚左衛門が落とした測量図を拾い上げると、確かに受け取ったぞと言う。

その方、何者だ?名乗れ!と刀に手をかけながら甚左衛門が聞くと、時の副将軍水戸光圀の家臣佐々木助三郎!と、編み笠を取った虚無僧は言い、甚左衛門!その方の悪行の数々、しかとこの目で確かめたぞ!と睨みつける。

その時、山に上がった狼煙を観た甚左衛門は、良し!と笑うと、観たか?アイヌの蜂起じゃ!と助三郎に言う。

助さんは、襲いかかって来た北海屋の子分たちと戦い始める。

海岸では、鉄砲を取られるぞ!早く船を沖へ出せ!と赤蝦夷の指示が出ていた。

逃げかけた赤蝦夷のハンスキーも、鉄砲は渡せん!と拒否したので、北海屋は怒って斬り掛かろうとするが、それを防いで、早く逃げろ!とハレンスキーに声をかけたのは、駆けつけて来た格さんだった。

助さんと合流した格さんは、御老公は部落に預けて来たと教え、ともに戦いだす。

一党を引き連れ、鉄砲を受け取りに来たギルタンは、森影にノサップと身を潜めていたシャグシャインから、ギルタン、待て!おのれ、シラッキーを殺したな!と声をかけられる。

お前は大酋長ではない!とギルタンは答えるが、おのれがアイヌの血を汚すんだ!とシャグシャインは一喝する。

しかし、ギルタンは、うるさい!今日から俺が大酋長だ!と言うと剣を抜いて来る。

斬り掛かって来た数人の仲間をいなしたシャグシャインは、その場でギルタンを斬り捨てる。

その時、ノサップは、戦いながら近づいて来た格さんに気づく。

格さんは、北海屋を斬り捨てる。

一方、甚左衛門を斬ろうと追いかけていた助さんは、鎮まれ!と逃げかけていた甚左衛門の前に現れたのが、松前泰久と知り驚く。

泰久は、甚左!自決せい!と命じる。

しかし、斬り掛かろうとするので、その場で斬りつける泰久

その泰久も控えると、松前藩の家臣を引き連れた黄門とこずえ、金次、お新がやって来る。

助さんは、こずえ殿、兄上に代わってこの地図を殿様へ!と言いながら、手にした測量図を手渡す。

兄上!と測量図を胸に当てて、泰久にこずえが手渡すと、かたじけないぞ!と泰久も礼を言う。

これで国の大命を救うことができたと黄門は嬉しそうに頷く。

これからは、アイヌもシャモもない、みな同じ日本人じゃと言うと、シャグシャイン!もし、そなたたちに父親が欲しかったら、わしがなってやっても良いぞ…と語りかける。

兄と共に膝まずいていたノサップは、感激して、兄の方に泣き伏す。

その後、ユーカリ部落では、松前泰久と家臣たちを前に、歓迎の踊りを披露するアイヌの民たちがいた。

蝦夷の発展のために、そちを頼りにしておるぞと泰久が声をかけると、シャグシャインは嬉しそうに会釈する。

踊りの輪の中には、金次とお新も混じっていた。

その後、哀し気な様子のノサップに、踊ろう!と声をかけるシャグシャイン

帰路についていた黄門一行

御老公、今度こそ水戸に帰れますなと助さんが言うと、よほど水戸が恋しいと見えますな、のう、格さん!と黄門が古と、それは助さんの方でしょう…と格さんは答える。

ふと3人が振り返ると、馬に乗って追って来たシャグシャインとノサップが手を振っていた。


 

 

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