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夢のハワイで盆踊り

舟木一夫主演のアイドル映画

本間千代子さん以外、東映所属俳優らしき人がほとんど出ていないため、見ていて東映っぽさがほとんど感じられないのが特長。

タイトルにもある通り、ハワイが「夢の島」として日本人の憧れの対象だった時代の作品である。

一見、東宝の若大将もののような展開なのだが、歌手である舟木さんは、加山雄三のスポーツのように、歌以外のアピール部分がないため、映画としては、後半、観光映画風になっているだけで、やや見せ場に乏しい展開になっている。

アイドルものとしては平均作くらいだろうか?

ものすごく面白いと言うほどではないが、かと言って、つまらないと言うほどでもない。

ただ、喧嘩やアクションシーンなども皆無なので、全体的に真面目と言うか、おとなしい印象しか残らない。

そもそも、男らしさを祖父に認めさせるために「盆踊り」を開催すると言う展開が若者らしくないと言うか、イマイチピンと来ない。

もちろん、来日した祖父が盆踊りを見たがっていると言う伏線があるのは分かるのだが、それと祖父が言う根性とか男らしさとの結びつきが、正直馴染めないのだ。

クライマックスは、盆踊りのやぐらの上で太鼓を叩いたり、歌を歌うだけでは、舟木さんの大ファンならともかく、一般人にとっては、やや物足りないのではないだろうか?(この手のアイドル映画を一般の人はまず見ないか…)

今も昔も、青春ものを作っている現場側はおじさんだったりするので、時代錯誤な表現があるのは良くあることだが、青春スターと盆踊りと言うアナクロな組み合わせが何とも言えない。

しかも、1人でやり遂げている印象は薄く、仲間たちに助けられているだけと言う風にしか見えないので、余計に爽快感がないのだ。

舟木さんが劇中で歌っている曲も、大ヒットしたような聞き慣れたものではないので、こちらもピンと来ない部分がある。

又ちょっと気になるのは、ゲストのコロンビア・ローズさんや、後の「うっかり八兵衛」こと高橋元太郎さんには歌うシーンがあるのに、マチャアキ(堺正章)さんには歌のシーンがないこと。

当時、もうスパイダースは結成されていた時期だと思うが、マチャアキさんは、この映画のためだけなのか七三分けだし、この作品では歌手と言うより、コミカル演技だけで出ている印象である。

ちなみにマチャアキさんは、子供時代にも「ハワイ珍道中」(1954)に出ており、この当時には既にハワイ慣れしていたのかも知れない。

そのマチャアキさんの父親を演じているのは、当時、TVに若手落語家として良く登場していた10代目桂文治師匠。

高橋元太郎さんはこの当時からぽっちゃりしており、何だかTV「忍者部隊月光」時代の水木襄さんにぽっちゃり具合が似ている。

ハワイの娘マリを演じている高見理紗さんと言う人は、ちょっとふっくらしたベッキーみたいな風貌なのが印象的。

舟木さんの母親役を演じている加藤治子さんも若々しくきれいなので驚いた。

ちょい役で「月光仮面」の大村文武や、司会役でロイ・ジェームスなど、懐かしい顔ぶれも登場している。

劇中で登場している「象印 歌のタイトルマッチ」と言う番組は、NETの番組と言うことになっているのも興味深い。

この時代から、東映とNET(今のテレ朝)が関係していたことが分かるからだ。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1964年、東映、長谷川公之+山本英明脚本、鷹森立一監督作品。

高校を卒業した舟田夏夫(舟木一夫)、高木源一郎(高橋元太郎)、松井正也(堺正章)は、校舎の屋上に集まって将来の夢を語り合う。

寿司屋の息子正也は、小中高計12年も学校行って飽き飽きしたよ。お前ら良く大学行くな〜…、俺は寿司屋の跡取りは嫌なのでレストランをやるつもりだけど、その時はお前に設計頼むよと、建築家希望の源一郎に声をかける。

源一郎は、南米かアフリカへダム作りたい!と夢を語る。

舟田、お前、大学行って何するんだ?と正也が利くと、舟田は、俺はハワイに行くつもりだ。スカットした空気を腹一杯吸うんだ!と言い切る。

タイトル

小田急デパートの配送のバイトを自転車でしていた舟田は、住宅地の角を曲がった所で、坂を下って来たスポーツカーと接触しそうになり転倒する。

その後、何故か気絶したのは車を運転していた風間美代子(本間千代子)の方で、彼女が入院した病院では、診察した医者が、撥ねた相手が大した怪我でなくて良かったななどと、幸い何の怪我もなかったので、美代子に付き添って来た舟田に言うので、撥ねられたのは僕の方ですと訴えるが、事故で動転していると思われたのか、後で鎮静剤を打ってやろうなどと言われてしまう。

デパートの配送係に戻って来た舟田は、こともあろうにお得意様のお嬢様を入院させるなんて!と上司からお目玉をくらい、即刻首を言い渡されてしまう。

がっかりして家に戻って来た舟田は、なよなよした踊りの師匠立花宏(大村文武)から声をかけられる。

TVの振り付けの仕事でてんてこ舞いなのなどとしなだれかかって来た立花は、小料理屋「ふなだ」の隣の松寿司の店の前に来た時、水を撒いていた主人の松井徳兵衛(桂伸治)からわざと水をかけられる。

徳兵衛は口先だけで詫びるが、着物に水をかけられた立花は憤慨して「ふなだ」の店に入って行く。

立花のお目当ては、舟田の母で未亡人の静江(加藤治子)だった。

日本酒を注文された静江から特級ですか?と聞かれた立花は、二級が私には生理学的に合っているのなどと貧乏臭いことを言う。

その「ふなだ」の二階の自室に戻って来た舟田は、デパートでもらって来たバイト代の封筒の中味を見ながら、10日分の給料でこれっぽっちか…と額の少なさにがっくりしながらも、ギターを弾きながら歌い始める。

舟田の部屋の壁には、ハワイのポスターやイラスト地図、「Dole」のジュースポスターなどが所狭しと貼られていた。

大学にやって来た舟田は、掲示板に貼られているバイト情報を見ていたが、そこにやって来た建築家の源一郎が、先週分のノートの写しを舟田に渡し、契約料を要求する。

舟田は100円玉を渡すが、源一郎が契約は契約だと言うので、仕方なくもう100円渡す。

源一郎は、正也が働いているホテルで、1日5時間で800円の雑益の仕事があると教える。

その話に興味を持った舟田だったが、そこへ近づいて来たテニス部の女子学生の姿を見て驚く。

轢かれそうになった車の運転をしていたあの美代子だったからだ。

美代子の方も舟田に気づいたようで近づいて来る。

もう、頭の方大丈夫か?と舟田が聞くと、あなたって人は介抱もしないで帰っちゃって!幸い、私の運転技術が良かったのであなた、助かったのよ!などと言いがかりをつけて来る。

そんな美代子に、源一郎は自己紹介する。

舟田はそんな美代子に呆れて源一郎と共に去るが、後に残った美代子に、同じテニス部仲間が、あの人に会ったら謝るって言ってたでしょう?と話しかけると、美代子は、あの人オステリーよ!などと去って行く舟田を睨みつける。

東京ヒルトンホテルの雑益のバイトとは、ホテルの調理室の掃除のことだった。

コックが舟田に、そこ!ネギが落ちている!君、拾いたまえ!ここは衛生が第一だ…などと注意して去って行くと、コック見習いで働いている正也が近づいて来て、そっくり同じことを舟田に行って来たので、去りかけた所をわざとモップでひっかけ転ばしてやる。

バイトが終わった舟田は、そんな正也と一緒にホテルの玄関口の方へ出て来るが、そのホテルの前で、タクシーの運転手から荷物を放り出され、英語で怒っている外国人風の若い娘と日本人風の老人の姿を見かける。

タクシーが去った後、どうしたんです?と訳を聞くと、チップを余分に寄越さないと怒ったのですと娘が日本語で答えたので、雲助タクシーだと正也は気づく。

老人の方は、すぐに広島に行こう!何だ、この東京と言う町は!ハワイから来たと言うのに…などと娘に話しかけていたので、それを聞いた舟田は、あなた方はハワイから来られたのですか?と話しかける。

何でも、50数年振りに日本に帰って来たと言うので、舟田と正也は、老人たちの荷物をホテルに運んでやろうとする。

荷物を持って玄関口にやって来た舟田は、前からやって来たスポーツカーに驚き転倒する。

車から降りて来たのは美代子で、マリ!と外国人風の娘と抱き合う。

どうやら二人は旧知の間柄で、美代子は彼女たちを迎えに来たらしく、マリと呼ばれた娘はマリ・スミス(高見理紗)、同行していた老人の方は遠山剛造(笠智衆)と言うらしかった。

舟田に気づいた美代子が何してるの?と聞くので、このホテルで働いているんだと答えると、この間のバイトは?と言うので、君のお陰で首になったよと舟田は皮肉を言う。

その会話を聞いていた遠山は、部屋まで荷物を運んでくれた舟田に、君は苦学生か?若い頃は苦労する方が立派になるなどと言って来る。

50何年振りの東京の印象が悪くて残念ですと舟田が言うと、マリは、自分のパパはハワイのホテルの総支配人をしており、遠山が死ぬまでに日本へ行きたいと言うので一緒に来た。息子さんは昔日本に来た後、戦争で死んだが、そのお嫁さんが広島にいたはずなので探しに来たのだと打ち明ける。

おそらく広島のピカドンで死んでいるだろう…と、遠山はその息子の嫁との再会を半ば諦めているようだった。

遠山と一緒に「松寿司」に帰って来た正也は、父親の徳兵衛にいいとこ握ってよとねだる。

お前、寿司嫌いじゃなかったのか?と徳兵衛が皮肉を言うと、喰うのは好きだと、特に父ちゃんが握ったの…などと正也はお世辞を言うが、喰いたきゃ自分で握れと言われたので、自ら穴子を握り始める。

その握り方に文句を言う徳兵衛は、舟田に、実は良い話があるんだ。お母さんの縁談だよと話しかける。

徳兵衛が握ってくれた寿司を土産に隣の「ふなだ」に帰宅した舟田は、母さんにとっても良い縁談があるんだってさと教える、良い人だったら結婚すれば?などと勧めるが、生意気なこと言って、お前はまだ一人前じゃありませんよと静江に軽くあしらわれてしまう。

18年も育ててくれたから…、母さん、まだ父さんのこと忘れられないの?魅力あったの?そうじゃないと、ハワイくんだりから駆け落ちしない?と父の遺影が飾ってある仏壇の方を見ながら舟田は聞く。

ハワイのおじいさんってどんな人?と聞くと、今思うと懐かしい気がするわ…と静江が言うので、仲直りしたいんだね?と舟田が聞くと、もうあれから20年にもなるのだから、無理かもしれないわね…と静江は遠い過去を思い出すように答える。

暗くなった外の高架線を電車が通り過ぎる。

翌日、ヒルトンホテルでは、せっかく来たのに東京見物しないなんてつまんない!第一、お嫁さん、見つけられないじゃない!とマリが遠山に文句を言っていた。

あれだけ新聞広告出したのに何も言って来ん。もう広島に行こう…、田舎の盆踊りが見たいと遠山は答える。

盆踊り?とマリが不思議がったので、ジャパニーズフォークダンス。わしはやぐらの上で太鼓を叩いたものだと遠山が説明すると、おじいちゃん、ドラマーだったの?と驚く。

わしのドラムじゃないと、みんな踊らんと言うとった。わしのバチさばきに村中の娘がうっとりしまってな…と遠山は自慢し始める。

そこに美代子がやって来たので、困ってるの、おじいちゃんが東京嫌いって、見物しないのよとマリが打ち明けると、今や、ニューヨークに次ぐ大都市ですから一度ご覧になっては?と美代子も勧めるが、じゃあ、マリを連れて行ってくれと遠山は言う。

その後、調理室で働いていた舟田の元にやって来た美代子は、あなたはたった今、ここを首になったのと言うので、そんなこと、支配人の娘でもない限りできっこないよと舟田がむくれると、ご名答!と美代子は笑う。

美代子は、この東京ヒルトンホテルの支配人の娘だったのだ。

私服に着替えた舟田をマリの部屋に連れて来ると、この人がガイドよと美代子が紹介する。

ユーが案内してくれるのか…と遠山は喜ぶ。

浅草、上野公園の西郷像、皇居、靖国神社…と、遠山が喜びそうな所へ舟田は案内する。

靖国神社までついて来たマリは、鳩に餌などやっていたが退屈そうで、夏夫さん、今度は私にサービスして!と舟田に甘えて来る。

ここはオール・ソルジャーを祀ってあるんじゃと遠山が、無関心そうなマリに教えると、オー!日本のパンチボールねとマリは理解する。

舟田が、僕の父もここに祀られているのです。本当はパンチボールに祀られていたかもしれませんと教えると、それを聞いた遠山は、君のペアレンツが日本に来たのはいつ頃?と聞いて来る。

戦争が終わる直前ですと舟田が教えると、じゃあ、おじいさんがハワイに?と遠山は確認する。

頑固爺さんらしく、その頑固爺さんに色々言ってやりたいことがたくさんあるんですと舟田が答えると、遠山は考え込む。

その時マリが、大変!時間がないわ!美代子との約束タイムよ!と急かす。

ホテルに帰って来た遠山は、部屋の椅子に腰掛け、一人沈み込んでいた。

そして、内線で受付を呼びだした遠山は、舟田夏夫と言うボーイのアドレスを教えてくれんか?このホテルで働いている…と頼む。

その住所を頼りに、小料理屋「ふなだ」を探し当てた遠山は、店の中で準備中の静江を見つける。

静江の方も、いらっしゃい…と言いかけ、相手の顔をまじまじと観ると、お父さま!と驚く。

どうしてこちらに?と言いながらも奥の座敷に招き入れる静江。

上がっても良いかの?と聞きながらも、奥の間に上がった遠山は、息子幸一の写真が飾ってある仏壇に気づき鈴をならす。

もう20年になるかの〜…と遠山が感慨深気に呟くと、お手紙も差し上げませんで…と静江は詫び、子供がいてくれましたから、今日まで何とかやって来れましたと言うと、夏夫はええボーイじゃ。全くの偶然じゃった。幸一の引き合わせかもしれんと遠山はホテルで会ったことを教える。

その頃、夏夫は、美代子の家のパーティに、正夫と共に参加していた。

正夫は、総支配人さんの家とは知らなかったもので、土産も持ってきませんで…と美代子の母親友子(風見章子)に恐縮しながら挨拶していた。

美代子は夏夫に踊りを誘おうとするが、マリに横取りされたので膨れてしまう。

「松寿司」の徳兵衛は、隣の小料理屋「ふなだ」に「本日休業」の札が下がっていたので、気になって、そっと玄関戸を開けると中の様子をうかがう。

奥から、お父さまは、あの人が死んだのは私のせいだとおっしゃるんですか?あの時、お父さまが反対しなければ、日本に来ることもなかったんですと静江の興奮した声が聞こえて来る。

旅回りのレビィー・ガールなどに息子をやれると思うか?わしは跡取りだけ連れて帰る。ユーはミーから大事な息子を連れて行った。今度はわしが夏夫を連れて行くと遠山が言うので、それだけはさせません!と静江は拒否する。

しかし遠山は、第一、こんな所にいたら、夏夫の教育にも良くない!と言い捨て帰ろうとするが、そこに見知らぬ徳兵衛が立っていたので、何だ!君は?と驚く。

遠山が帰った後、大変なことになったね、おしずさん…と徳兵衛は静江に声をかける。

美代子の家のパーティでは、夏夫が踊りながら美代子に笑顔で近づこうとしていたが、美代子はまだ不機嫌そうだった。

その後、マリをホテルに送って来た学生服姿の夏夫が、では又…と挨拶して帰りかけると、部屋にいた遠山が、夏夫、待ちなさいと呼び止める。

ユー、本当にハワイに行きたかったら、わしが連れて行っても良いと言い出すが、せっかくですけど、僕、自分の金で行く事にしてますから。その代わり向うに行ったら、ガイド料をサービスしてくださいと言うので、遠山は、それは良いと笑顔になる。

しかし、夏夫が部屋を出て行くと、又急に落ち込んでしまったので、事情を知らないマリは、どうしたのおじいちゃん、元気ないよと案ずる。

それには答えず、遠山は、ホテルの窓から帰って行く夏夫の後ろ姿をいつまでも見送るのだった。

帰宅した夏夫は、母親の静江がカウンターに突っ伏していたので驚いて抱き起こすが、1人で酔っていたのだと気づく。

腹減った…と言いながら、店の奥からバナナを取り出して食べ始めた夏夫に、夏夫、お前、母さんと暮らしていて満足?と急に静江は聞いて来る。

どうしたんだい急に?満足に決まっているじゃないかと夏夫が答えると、母さん、それ聞いて安心したよ…と涙ぐみながら静江が言うので、母さんが泣き上戸だったなんて知らなかったよと夏夫は苦笑しながら、コップに水を汲んでやり手渡す。

翌日、大学の屋上で夏夫に会った美代子は、2人は昨夜帰ったわよと伝え、預かって来たガイド料を手渡す。

突然の話で驚いた夏夫だったが、帰るんだったら、おじいさんのことで頼みがあったんだけどな…と残念がる。

まだ見ぬ祖父を訪ねて何千里か…、お母さんを追い出したおじいさんなんてどうでも良いじゃないと美代子が茶化すと、君には6時間で行ける島かもしれないけど、僕には2〜3年かかる所なんだ。心理学科なら分かるだろう?などと夏夫は言う。

身分の違いとか生活の違いって言えば私が泣くとでも思ってるの?私って、好きになったら、手鍋下げてもってタイプなのよと言いながら美代子は舟田に迫るが、舟田は屋上の柵を飛び越え、そんな美代子から逃げ出してしまう。

その後、父親の風間完二(北竜二)にバーに呼びだされた美代子は、パパ、どういう神経してるの?こんな所に呼びだしたりして!と憤慨する。

すると風間は、こう言う所で一人前になったお前に話がしたかったんだと答える。

お前には好きな人はいるのか?と行きなし話を切り出した風間は、そんな顔している所をみると、まだ傷は浅いな…などと1人で合点し、若いと期は自分と違う世界に住んでいるものを憧れるものだなどと言うので、それって舟田君のことを言ってるの?と美代子が気づくと、ママが気にしていてね…、複雑な家庭だそうじゃないかと風間が既に舟田の身辺調査までしているらしかったので、私が結婚するなんて言い出したら大騒ぎね、ゾクゾクするわと美代子はおどけてみせる。

その頃、帰宅した舟田は静江に、隣のおじさんに聞いたよ、おじいさんに会ったことどうして黙ってたんだよ?遠山剛三って言う人だろ?と聞き、母親が黙っているのを見て、母さん、仲直りできなかったんだね…と察する。

おじいさんはお前を引き取りたいって言うのよと静江が言うと、じゃあ、お母さんを息子の嫁と認めてくれたんじゃないか!と舟田は喜ぶが、お前だけを引き取るって言うのよと聞くと、絶対ハワイに行って、おじいさんをとっちめてやるよ。それから母さんと仲直りさせるよと舟田は決意する。

その後、外務省から出て来た舟田の表情は晴れやかだった。

自宅の近くまで帰って来た所で正也と出会い、今もらって来たパスポートを見せる。

注射も打ったし、もう大丈夫だ!と張り切る舟田だったが、そこへ駆けつけて来た正也の母で「松寿司」の女将のたみ(山本緑)が、夏夫ちゃん、大変だよ!お母さんが倒れたよと告げる。

病院に駆けつけてみると、病室で静江は寝ており、付き添っていた徳兵衛が、狭心症の発作だよ、最近、昼間内職したりして無理していたから…、夏夫ちゃんがハワイに行く費用の足しにと思ってたんだろうねと言う。

その事を知らなかった舟田は、一晩中母の側に付き添い、翌朝目覚めた静江に、母さん、どう気分は?と話しかける。

パスポート取って来たんでしょう?ごめんねと静江は詫びるが、良いんだよ、半年間効くんだから。それより、早く良くなってくれないとハワイに行けないよと舟田は励ます。

その頃、「松寿司」の集まっていた美代子、正也、源一郎、源一郎のガールフレンドさくら(浜田たえ子)らは、何とか舟田のハワイ行きを応援しようとアイデアを出し合っていた。

正夫が、今度、僕がハワイのホテルに行くかも知れない交換ボーイの権利、船田に譲っちゃうと言えば、僕が今出ている歌のコンテストで優勝したら金を船田に渡すよと言う。

みんな、どうしても夏夫君をハワイにやるんだから頑張ってよ!と美代子は檄を飛ばす。

後日、美代子は花束を持って病室に見舞いにやって来るが、静江は、夏夫はバイトで空港に行ってますと教える。

おば様、もう宜しいんですの?と聞くと、明日退院できるんですと静江は答える。

夏夫君、そんなにハワイに行きたいのかしら?と美代子が言うと、何かあなたに話しました?と静江が効いて来る。

おば様とおじいさんを仲直りさせるんだって…と美代子が答えると、それだけ?と静江は気になるようで、どんどん私から離れて行くようで…と不安がる。

すると美代子は、もしそんなこと考えているんなら、私、絶好よ!と言う。

羽田空港には、パンナムの飛行機が到着していた。

見送り場に整備員姿でやって来た舟田は、そこにいるのが美代子から呼びだされ、戸惑う。

あなた今、パスポート持ってるでしょう?と聞いて来た美代子は、マリのパパにこれを届けて欲しいのと言いながら封筒を差し出して来る。

本当なら家の人が行かなければいけないんだけど急病になったので、はい、切符と旅費と一方的に美代子は説明して渡す。

あの飛行機に乗って行くの。お母様には私から連絡しておくわ、急いで着替えて来て!と急かすので、訳も分からず舟田は言うことを聞くしかなかった。

その頃、高木源一郎は10週勝ち抜きの「象印 歌のタイトルマッチ」と言うNETの番組に、9週勝ち抜きのチャンピオンとして出場していた。

チャンピオン席に座っていた源一郎は、緊張で堅くなっていた。

司会者(ロイ・ジェームス)が登場し、チャンピオンの緊張を解きほぐすために、ゲストのコロンビア・ローズさんに歌って頂きましょうと紹介すると、コロンビア・ローズが中央に進み出て歌い出す。

その後、舞台中央に進み出た源一郎は、「青い夜」と言う曲を披露し、審査員の船村徹さんとコロンビア・ローズが協議した結果、10週勝ち抜きと言うことになる。

源一郎には、コロンビア・ローズから花束の贈呈があった後、ハワイ旅行の目録と副賞10万円、そして象印のオール商品が贈られる。

その目録を手に、さくらと一緒に静江に会いに行った源一郎は、おばさん!夏夫君は?ハワイに行けるのよ!よ報告するが、静江は戸惑いながら、何ですか、美代子さんのお父さんのお仕事を頼まれたとかでさっきハワイに行きましたよと教える。

それを聞いたさくらは、抜け駆けしたな、美代子の奴!…とピンと来る。

翼つけて〜♪

ホノルル空港にやって来る赤いスポーツカー

到着するパンナム機

降り立った舟田は、美代子から電話がありましたと言い、迎えに来ていたマリと再会を喜びあう。

パパにこの書類を渡してくれ。重要な書類らしいんだと舟田が預かって来た封筒を渡すと、マリはその場で封筒の中から一枚の手紙を取り出して舟田に見せる。

そこには「早くおじいさんに会って、おじいさんとおば様を仲直りさせるのよ 美代子」と書かれてあるだけだったので、これだけかい?重要書類は?と舟田は戸惑う。

そうと分かれば、おじいさんと所へ行きましょう!と自分の赤いスポーツカーに舟田を乗せると、これに着替えて!と青いアロハシャツを手渡す。

マリと舟田を乗せた車は、庭の氏ばかりをしていた遠山の家に到着する。

夏夫!と驚いた遠山は、やっぱり気おったか…、早く中へ入れ!と嬉しそうに家の中に案内する。

家に入ると、あんなママがそんなに良いのか?と遠山が言い出したので、僕を育てるのに苦労したんですよと舟田は弁解する。

しかし遠山は、自業自得だ。わしから大事な息子をひっさらって行ったんだから…などと言うので、だからと言って、母さんと父さんの愛を壊しちゃいけないよと舟田は言い聞かせようとするが、無一文でハワイに渡って来たわしは、土にへばりついて朝から晩まで働いたもんだ。愛だの恋だの言っている暇はなかったわい!第一わしには根性があった!口先ばかりで立派なことを言ってもダメだと遠山は頑固に言う。

おじいさんの言う根性のある男と言うのはどういうことなの?と効くと、何ごとも自分でやり遂げることだと遠山が言うので、じゃあ、僕が何かを成し遂げれば良いんですね?と舟田は念を押し、何をしたら良いんですか?と聞くが、自分で考えろ!と遠山に言われてしまう。

わしをアッと言わせることをやってみろ!と遠山は言う。

遠山の家を出た舟田は、マリの車でパンチボールにやって来る。

その墓に花輪を置く舟田。

その後、見晴らしの良い場所からパールハーバーやダイヤモンドヘッドをマリから教わる舟田。

何かアイデアないかな〜と舟田が考え込んでいると、あるわ!ビッグアイデアね!と言い出したマリは、教えるけど条件があるわと言う。

「アロハ アウ ヤ オエ」アイラブユーの意味のハワイ語を言ってくれと言うのだった。

仕方なく、舟田は、何度か「アロハ アウ ヤ オエ」と言ってやる。

すると、満足したかのようなマリは、おじいさんにドラムを叩かせ、みんなを踊らせるのよと教える。

盆踊りのことかい?と舟田が確認すると、そう!きっと喜びます。日本にいた時、盆踊りを見たがっていたよ。でも見れなかった…とマリは打ち明ける。

そうか…、そんなに見たがったのか…と舟田は呟くと、それを実現することを決意する。

その後、マリの家に赴き、ハワイのホテルの支配人をしているパパ(ジェームズ・ベアード)に盆踊りのことを話すと、自分も知って言い、その場で怪し気な盆踊りを踊ってみせる。

マリのママにも、おじいちゃんのために夏夫君が本格的な盆踊りをやろうとしているの。ワイキキの大きなねぐらを立てるのよと教えるので、やぐらだとと舟田は訂正する。

大勢の人が集まるのよと言うので、とても良いアイデアねとママが感心すると、夏夫1人でやるのよとマリは自慢げに言う。

マリの日本人のママはそのことを遠山の家に来て知らせてやる。

太鼓も借りるんですって。やぐらも一生懸命準備しているのよと伝えたママは、仲直りしておあげになったら?と勧めるが、そうはいかん。何ごとも男らしく成し遂げんといかん。わしの若い頃は…といつものように話し始めたので、聞き慣れていたマリのママは、根性ありましたよねと自分から言う。

ハワイのラジオ局「RADIO KOITO」にマリに連れて来てもらった舟田は、ここに中継を頼もうと思いつく。

その頃、東京の「松寿司」の店では、マリからの電話を受けた美代子から、静江や源一郎や正夫、さくららが盆踊りの話を聞いていた。

早く行って手伝いしないと、マリは積極的だから、今頃派手にやってるわよとさくらは美代子をからかう。

アイラブユ〜!と正也がおどけると、側にいた母親のたみが、何もかもパパにそっくりなんだから〜と呆れたように言うので、正也と徳兵衛は互いの顔を見つめあう。

さくらは、パパに頼んで、源一郎君と一緒にハワイに行くことにしたわ!とさくらが言い出すと、これで夏夫君の応援体勢ね!と美代子も喜ぶ。

すると正也も、僕も昨日、交換ボーイで行けることになったんだ!と自慢する。

翌日、連絡を受け、ホノルル空港で待ち受けていた舟田は、空港から出て来た、美代子、源一郎、さくらよ再会するが、正夫は?と探すと、観光バスの横で現地の美女からレイをかけられ、キスもされたのですっかり舞い上がっている正也を見つける。

盆踊りの方は?と聞かれた舟田は、後は人集めだけだよと答える。

すると、日本から用意して来た「夢のハワイで盆踊り参加募集」と書いた大きな横断幕を拡げてみせる源一郎たち。

その後、ワイキキビーチにやって来た正也は、水着の美女を見てぼーっとしていたので、何、薄ぼんやりしてるんだよ!と一緒に歩いていた源一郎が喝を入れる。

何か、スカッとした宣伝ないだろうか?と源一郎が頭をひねっていると、あるわよ!と美代子が言い出す。

そのアイデアとは、全員が浴衣を着て、帯の後に「BON」「ODORI」「LETS」「DANS」「AT」「WAIKIKI」と文字が書かれた団扇を挟み、横並びで町を練り歩くと言う方法だった。

浜辺では、ハワイ名物のフラダンスショーが行われていた。

そのショーの合間に、浴衣を着た舟田たちが横並びで登場し、一斉に後ろ向きになって、背中の団扇の文字を披露すると、見物客たちは大喜びをする。

円陣を組んだ舟田たちは、良し!大成功だ!と喜び、その後、全員でマリの赤い車に乗り、僕は呼んでる青い波よ~♪と歌いながら島のドライブに出かける。

海で泳いだ後、ビーチでココナッツジュースを飲んだりして楽しむ。

これで盆踊りも成功間違いなしだ!ありがとう!みんなのお陰だ!と舟田たちは喜んでいたが、そこにやって来たポリスが、何故か全員の名前を聞いて来る。

マリが通訳する所では、さっき町でみんなで横並びで歩いたのが違反だったので逮捕すると言っているのだと知り、全員仰天する。

盆踊りまで後3時間と言う時に、彼ら全員留置場にいれられてしまう。

その頃、東京の静江は、夏夫からの絵はがきを受け取り、逮捕騒ぎなど知る由もなく、「マリちゃんの手紙で知っていると思うけど、おじいちゃんのために盆踊りをやることにしたんだ。身体に気をつけてね」とだけ書かれた内容を読み、喜んでいた。

その頃、舟田たちは、やけになって、牢の中でスクラムを組み、全員で歌を歌っていた。

すると、誤解が晴れたのか、すぐに釈放になる。

牢の外に出た正夫が、久しぶりに吸うシャバの空気は旨いな〜ととぼけたので、粋がるんじゃないよと舟田が突っ込む。

いよいよワイキキビーチで盆踊りが始まる。

やぐらの上で舟田が太鼓を叩き、マリや正夫が、その周囲で踊り出す。

そんな盆踊りの様子をラジオ局が中継してくれる。

その頃、自宅にいた遠山は、ラジオをつけようかどうか迷っていたが、とうとう辛抱できず、スイッチを入れると、盆踊りの音が聞こえて来たので思わず笑顔になる。

やぐらの上では、ゲストのコロンビア・ローズが佐渡おけさを歌っていた。

しかし、太鼓を叩いていた舟田は、会場内に遠山の姿が見えないので浮かない表情だった。

梯子を上って来た美代子が、おじいさん、まだ来ないわと教えると、良いんだよ、あんな頑固爺さん来なくても!と舟田は苛ついたように答える。

その後、マリの赤い車を飛ばして遠山の家にやって来たのは美代子だった。

家の中を覗くと、椅子に座った遠山が盆踊りのラジオを聞きながら上機嫌だったので、おじいさん、私、お迎えに参りましたと言いながら顔を覗かせる。

しかし、遠山は、わしは警察に捕まったり、新聞に載るような奴の所へは行かん!とすね、盆踊りの太鼓はこんなもんじゃない!と文句を言い出したので、だったら教えてやってくださいと美代子は勧め、それでも動こうとしない遠山を見ると、口ほどでもないんじゃありません?とわざとからかう。

すると遠山は、我慢が出来なくなったと言うように、じゃあ、わしが叩いてやっても良いと言って立上がる。

すぐに、ワイキキビーチに車で連れて来た遠山を、美代子は梯子の上まで案内する。

太鼓を叩いていた舟田の背中を見た遠山は、夏夫!貸してみい!そんな打ち方じゃ踊れん。良いか?良く観ておれ!と言うと、見事なバチさばきで太鼓を叩き始める。

それを横で見ていたコロンビア・ローズも感心する。

ひとしきり遠山が太鼓を打つと、美代子が拍手し、一瞬踊りを止めて聞き惚れていた正夫やマリや廻りの客たちも一斉に拍手する。

月の浜辺で揃いの浴衣〜♪と舟田がマイクの前で歌い出すと、太鼓を叩いていた遠山の表情もようやく緩む。

その後、東京では、おしずさん!ハワイから電話だよと徳兵衛が知らせに来る。

まあ!と驚いた静江が「松寿司」の電話に出ると、相手は遠山からで、静江さんかね?剛三だよ。夏夫はここに預かっとる。今度はユーも来てもらわんといかん。夏夫がわしのために盆踊りをやってくれたんじゃ。聞こえるだろう?盆踊り…と言う。

電話を代わった舟田は、おじいさんがね、仲直りをしてくれたんだ。母さんのことを、父さんの嫁と認めてくれたんだよ。すぐに帰るよ。そして又、一緒に来るんだと言うが、途中から黙り込んだ静江に、泣いているのかい?と聞いて来る。

夏夫、ありがとうよ…と静江は感謝する。

夜になり、盆踊りはまだ続いていた。

やぐらの上では、満面の笑みの遠山が太鼓を打ち続けていた。

翌日、ホノルル空港に見送りに来た遠山は、夏夫、今度はお母さんを連れて来るんだぞと声をかける。

パンナム期に乗り込む舟田や源一郎たち、見送るのは遠山、マリ、そして、ハワイのホテルに勤めることになった正夫の三人。

夏夫!元気にやれよ!と遠山が声援を送るが、隣で手を振っていたマリの表情はどこか寂し気だった。

やがて飛び立ったパンナム機からは、ホノルルビーチが眼下に見下ろせた。


 

 

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