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私と私

シリーズ最高の動員数を誇る「キングコング対ゴジラ」の併映作なのだが、今までなかなか観る機会に恵まれなかった作品。

実は「キングコング対ゴジラ」自体は、封切時、親に観に連れて行ってもらった記憶があるのだが、併映のこの作品は全く記憶がなかった。

併映を観た記憶自体がないので、おそらく、当時の私自身が幼かったので、二本観るのは無理と判断した親が、ゴジラだけを見せて帰ったのかもしれない。

その後、「キンゴジ」の方は何度も観る機会があったが、「私と私」の方はなかなか名画座などにもかかることはなく、今日まで出会えなかったと言うことになる。

ザ・ピーナッツの主演映画は日活映画にもあり、そちらの方は白黒で、上映時間も60分前後という典型的な添え物扱いなので、この作品も「キングコング対ゴジラ」と言う注目度抜群のイベントムービーの単なる「添え物映画」だと思い込んでいたのだが、実際に観てみると、かなり印象が違っていた。

ストーリー自体は、日活の中編「可愛い花」(1959)に似ている。

自分に双子の姉妹がいる事を知らず、それぞれ別々の家で片親に育てられたザ・ピーナッツの二人が、歌手を目指す途中、偶然にも出会い、自分たちの歌手への夢を果たすと同時に、互いの親をもとの鞘に納めるという他愛のないサクセスストーリー。

違うと言えば、「可愛い花」の両親が、訳あって別居している本当の両親なのに対し、こちらでは、別々に双子を引き取った他人設定になっていると言うことくらいだろうか。

では、作品の印象もそっくりな添え物風なのかと言えば、かなり違ったものになっている。

こちらはカラーになっていると言う見た目の違いもあるけれど、一番の違いは出演者の豪華さである。

役者サイドからは、「ゴジラ」の宝田明、「キングコング対ゴジラ」の多湖部長こと有島一郎、駅前シリーズなどの常連淡路恵子、テレビ「ウルトラQ」の一平役でお馴染みの西条康彦と言った面々で、大スタークラスは出ていないものの安定した顔ぶれ、一方、歌手側のゲストは凄く、クレージーキャッツ、中尾ミエ、伊東ゆかり、井上ひろし、田辺靖雄…と言った、当時の最大手芸能プロダクションだった渡辺プロ所属の人気者たちが勢揃いしている。

この作品、一応製作は東宝なのだが、ひょっとすると、製作費を含め、ナベプロがかなり絡んでいるのではないか?と感じる。

当時のザ・ピーナッツや他のゲスト歌手たちの人気、映画での動員力は、今となってはなかなか想像し難い部分があるが、「ニッポン無責任時代」(1962)がヒットした直後の植木等がマネージャー役として全編に登場していることを考えると、単なる新人歌手たちのプロモーションではすまされない、とてつもない動員力があったのではないかと想像する。

劇中で、当時大ヒットしていた「スーダラ節」なども披露しており、下手をすると、キングコングやゴジラ並みの話題性、集客力があったのではないか?

つまり、「キングコング対ゴジラ」の動員数が、シリーズ最大と宣伝されている裏には、この併映作の力もかなりあるのではないかと言うことだ。

二本立ての一方だけの成績など調べようがないからだ。

従来、「キングコング対ゴジラ」を語る時、その有名キャラ同士の対戦が客を呼んだとか、「ゴジラの逆襲」(1955)以来6年振りのゴジラ復活という話題性が客を呼んだと言った、好成績は全部「キングコング対ゴジラ」の功績みたいな論調がほとんどだったと思うが、この併映作の存在に目を向けた論調は観たことがない。

もちろん、この作品が「キングコング対ゴジラ」と一緒に上映されたのは、当時の記録で確かめても2週間だけで、それ以後の「キングコング対ゴジラ」は、別の作品と組み合わされ下番館で上映されているので、「私と私」が「キングコング対ゴジラ」の好成績全て支えたとは思わない。

とは言え、最初の二週間(当時の日本映画は、基本、一週間から〜二週間上映が普通)の成績には、かなりの影響があったと思われる。

浅間山の絵合成のシーンとか、夢の中の合成シーン、ラストのダンサーズたちとの踊りのシーンなどを観ていると、やはり大ヒットしたらしい「モスラ」(1961)を連想しないではおられないし…、宝田明とザ・ポーナッツの組み合わせは、続く「モスラ対ゴジラ」(1964)を連想させる。

登場するテレビ局が架空のものではなく、フジテレビであることも注目したい。(フジテレビの名前がしっかり出て来る)

つまり、この当時から、東宝とフジテレビは関係があったと言うことである。

大手の映画会社、大手の芸能プロダクション、テレビ局という組み合わせは、この頃からあったと言うことだ。

その一方で、劇中には、明治チョコレートや明治スカットと言った商品が堂々と登場しており、明治製菓が提携していたことが分かり、同じように明治チョコレートが登場していた少し前の3人娘(美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみ)映画から、後のザ・タイガース映画などに続く東宝アイドル映画の伝統の流れを汲む作品だと言うことも分かる。

こうした、何気ないプログラムピクチャーでも、その内容を注意深く観ていると、当時の映画作りの内情を含め、色々、興味深い部分が見えてくる。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1962年、東宝、中野実原作、笠原良三脚色、杉江敏男監督作品。

ドット模様のアニメバックにタイトル

伊豆半島の海岸沿いの道を走る伊東行きの西部バス

そのバスの車掌をやっているのは赤城増美(伊藤エミ)だった。

バス会社では、運転手で増美の父親赤城庄吉(有島一郎)が、同僚相手に将棋を指していたが、そこに次に同乗する車掌のハル子が、そろそろ時間ですよと呼びに来る。

しかし、勝負に勝ちかけていた庄吉が止めるのを惜しそうに立上がったので、相手が、発車までまだ3分あるぜ?決着をつけて行かないか?と誘うと、ついそれに応じそうになる。

そこに戻って来たのが増美で、ハル子の様子を見て、父親がさぼっていることに気づき、注意しに行くと、あんまり世話焼かせないで!等と言いながら、ネクタイを直してやったりする。

バスに向かう父親に、夕食はどうするか聞いた増美は、外食して来るというので、じゃあ、自分も外ですませると答え、馴染みの食堂「ラーメン王」に向かう。

増美の顔を見た主人の息子吉田三郎(田辺靖雄)は、まだ増美が注文をしないうちからラーメン!と父親平吉(沢村いき雄)に呼びかけたので、呆れた増美は、今日はチャーハンにしようかカツ丼にしようかなどとわざと迷い始める。

しかし、こののカツ丼のカツはボール紙みたいに薄いのに120円は高いわなどとぼやき、結局、平吉が作ったラーメンを食べはじめる。

そんな増美に三郎は、又歌の練習やろうか?と誘う。

2人は音楽好き同士だったのだ。

一方、庄吉の方は、馴染みの小料理屋「のんき」で夕食をすませた後、明日は早番だからと言って帰りかけていると、ママの里子(北川町子)が付いて来て話があると甘えかけて来る。

こんな所を増美にでも観られたら困るよと庄吉は困惑するが、しっかり帰宅途中の増美の目撃されていた。

ねえ、庄さん、私と一緒になってよ、結婚してよなどと里子が言い出したので、君には旦那さんがいるじゃないか!と庄吉が驚くと、あんたさえ良ければ、あんなのチャイしちゃうわよなどと里子は言い、相手にしないで帰る庄吉に、意気地なし!とバカにして来る。

家の前でそんな庄吉と会った増美は、サブちゃんと練習してたのと遅くなった言い訳をすると、今の人、「のんき」のママでしょう?と聞く。

庄吉が相手にしないでいると、私もう18よ!子供扱いしないで!と増美が文句を言うので、この間までオシメをしてたくせに…と庄吉は言い返す。

家の中に入った増美は、お父さん、今が最後の花を咲かせる時よと再婚を勧めるが、庄吉は、増美、今さらお前に新しいお母さんを持たせるつもりはないよ。今のまま親子水入らずの方が幸せなんだと真顔で答える。

翌日、貸し切りバスの運転手は庄吉、ガイド役は増美という親子コンビとなる。

増美は、伊豆大島の解説をしていたが、その日の客は東京からやって来た芸能関係者たちだった。

昼食時間、荒木プロダクションのマネージャーの上田(植木等)は、庄吉と増美が一緒におにぎりを食べている前の海岸で、仲間たち(クレージーキャッツ)と共に「スーダラ節」を披露していた。

歌い終わった上田は、おにぎりを食べていた増美に、仲間になって一緒に歌ってくれとねだって来ると、名前を尋ねる。

赤城増美と名乗り、戸惑いながらも、庄吉も勧めるので、みんなの前に出て行った増美は、「チャッキリ節」を披露し出す。

側でそれを聞いた荒木社長(ハナ肇)と新進作曲家の衣笠昭彦(宝田明)は、増美の歌の巧さに驚く。

歌い終わり、本職の前で歌っちゃったなどと照れながら庄吉の元に戻って来た増美に近づいて来た荒木社長は、同伴していた衣笠を増美に紹介すると、今聞いたけど大したものだ。東京で本格的にやってみないかと勧める。

増美は困惑して父親の顔を見るが、庄吉は、お前さんがその気なら俺は構わないよと言ってくれたので、増美は東京に出てみる決意をする。

その頃、噴煙が上がる浅間山が見える道を自転車に乗って歌いながら走っていた娘がいた。

歌が上手な山本まゆみ(伊藤ユミ)だった。

その背後から同じく自転車に乗って追って来た従兄弟の松井弘二(西条康彦)は、真弓の歌声を褒め、もっと歌ってくれよとせがむ。

まゆみが歌ってやると、喜んだ弘二は、自転車を手放しで拍手したため、バランスを崩し転んでしまう。

近くのゴルフ場で今バイトをしている弘二は、今日は東京から芸能界の連中がコンペに来るんだと、心配して自転車を止めて振り向いたまゆみに教えると、又自転車に乗って一緒にゴルフ場へと向かう。

弘二がキャディとして付いたのは作曲家の衣笠だった。

ゴルフバッグのネームプレートでそのことに気づいた弘二は、自分は衣笠のファンであることを打ち明け、自分は城南大に言っているが、自宅がこっちなので今アルバイトをしていることなどを教える。

売店の売り子をしているまゆみの元に戻って来た弘二は、今、君がさっき歌っていた曲の作曲家と会ったと報告するが、まゆみは興味がなさそうだった。

そこに、当の衣笠がやって来て、ホープを購入するが、まゆみの顔を見て、いつこっちへ?と聞いて来る。

側にいた弘二が、まゆみちゃん、知ってたのかと声をかけるが、まゆみはきょとんとしている。

衣笠は、この間伊豆で会ったばかりじゃないか?と話しかけても、まゆみは何のことだか分からないので否定すると、弘二が、この子は自分の従兄弟で山本まゆみと言い、歌が巧いんですよなどと教える。

それを聞いた衣笠は、伊豆の娘さんも歌が巧かったよ。双子って言っても良いくらいだと、目の前にいるまゆみが別人とは信じられないような顔つきだったが、それを聞いたまゆみは、私は1人娘です!と不機嫌そうに抗議する。

その日のバイトの帰り道、自転車で帰りかけていたまゆみを途中の草むらで呼び止め、話があるんだと弘二は言い出す。

何ごとかと自転車を降りて、弘二に近づいて来たまゆみに、何言っても怒んないでくれよと前置きした弘二は、さっきの衣笠先生の話なんだけど、前におばさんに、まゆみちゃん、もらいっ子だって。双子の姉妹がいるって聞いたんだ。だから、伊豆の子って姉妹かも…、まゆみちゃん、おばさんには似てないし…と告げる。

しかし、それを聞いたまゆみは怒り出し、私は死んだお父さんに似たんですって!弘二さんの嘘つき!と言うと、さっさと自転車で先に帰ってしまう。

まゆみの実家は「国鉄指定旅館 からまつ」だった。

帰宅したまゆみは、母親の山本よし江(淡路恵子)を自室に呼ぶと、正直に言って!まゆみはもらいっ子で、双子の姉妹がいるんでしょう?と聞く。

誰に聞いたの?と驚いたようなよし江だったが、どうやらまゆみが真実に気づいてしまったらしいことに気づくと、本当はあなたが言った通りなの、色々なことがあって、他所からもらった子なの。でも、まゆみだって、急にお母さんが違う風に見える?今まで通りのまゆみとお母さんよ…と答えたので、まゆみも納得するのだった。

翌日、軽井沢のグリーンホテルに泊まっていた衣笠を訪ねて弘二とやって来たまゆみは、母親から双子の姉妹がいることを聞いたことを打ち明け、その娘に会いたいと打ち明ける。

僕の勘に狂いはなかったんだな…と衣笠は納得し、伊豆の赤城増美の名前までは思い出すが、どこに住んでいるのかは知らないと言うので、まゆみはがっかりするが、会うチャンスはあるよ!来月の3日、東京の荒木プロに、その子は歌のオーディションに来るんだと教える。

翌月の3日、衣笠に場所を教えてもらった東京の荒木プロダクションに、弘二と共にやって来たまゆみだったが、会社の入口から出て来た上田が、待ってたんだよ!先生お待ちかねよと一方的に言いながらいきなり中に招き入れると、斎藤(石橋エータロー)が座っていたピアノのあるスタジオに連れて行き、テストを始めようとする。

ブースの中には荒木社長も待ち構えていたが、衣笠先生の計らいで歌のテストをしてくれるんだと一緒に付いて来た弘二は勝手に思い込む。

しかし、その弘二の勧めで、軽井沢で歌っていた衣笠の曲を歌おうとしたまゆみだったが、ピアノ演奏が始まっても、突然のことで全く歌えなかった。

その様子を見た上田や荒木は、どうしたんだ?と怪訝そうにスタジオ内に入って来るが、僕たち、あんたたちに会うの始めてなんだと弘二が説明しても理解できないようだった。

そこに、女子社員が、伊東から赤城増美さんと言う方が見えてますけど…と伝えに来て、当の増美と三郎がスタジオに入って来る。

まゆみは増美に近づくと、増美ちゃんね?私、軽井沢から来た山本まゆみって言うの。あなた、誰かからもらいっ子って聞いたことない?と話しかけると、スタジオ内の鏡の前に連れて来て、互いの姿を写しながら、昭和19年8月10日って知ってる?と聞く。

私の誕生日よ増美が戸惑いながら答えると、私たちの誕生日なのよ!私たちは双子の姉妹なのよ!とまゆみは教える。

話を聞いた増美は、まるで夢を見ているみたい…と呆然となる。

その様子を観ていた上田は、やっぱりこれだけ似ているのは、他人のそら似か本物の姉妹かと思ってましたなどと言い出したので、他人か親戚のどっちかに決まってるだろ!と突っ込んだ荒木社長は、旅館が取ってあるからそこでゆっくり話しなさい、今日はこんな状態ではテストは無理だと言ってくれる。

「山田屋」と言う旅館の一室に落ち着いた増美と三郎、まゆみと弘二は互いに自己紹介し合うが、まゆみは、お母さんに黙って出て来ちゃったから帰らないと…と案じ始める。

それで、気を利かした弘二が、僕が先に帰ってお母さんに言っとくよと帰ると、増美も三郎に、あんたも気を利かして、お父さんに話して来てよ!と注意する。

三郎は食べかけていた茶菓子の栗まんじゅうを頬張りながら名残惜しそうに部屋を後にするので、増美とまゆみは自分の栗まんじゅうも持たせてやる。

ようやく2人きりに慣れた増美は、あんたも歌が好きなんて…と驚きながらも、こうして会えることができたきっかけを与えてくれた衣笠って良い人!と褒める。

そこに、仲居さんがやって来て、何か召し上がりますか?と聞いて来たので、二人揃って「カレーライス!」と答える。

その直後、増美に荒木プロから電話が入り、明日の朝10時にテストしてくれるそうで、衣笠さんも来てくれるんですって!と、電話に出た増美はまゆみに教える。

翌日、弘二とよし江、増美、まゆみらが待っていた「山田屋」に、話を聞き伊豆からやって来た庄吉が合流する。

互いに自己紹介をすませると、このたびは飛んだことで…と庄吉は言うしかなかった。

奥様も驚かれたでしょう?とよし江が聞くので、増美が物心つく前に妻は亡くしましたと庄吉は打ち明ける。

それを聞いたよし江の方も、主人をシベリアで亡くしましたと答えたので、抑留で…と庄吉は事情を察する。

かねがね主人は女の子が欲しいと言っていたものですから、戦災孤児の収容所に行って主人に似た女の子をもらって来たのです。その時、その子に双子の姉妹がいることは知ってましたと打ち明ける。

すると、庄吉も、自分は戦死した遺族が残した子を引き取りに行ったのですが、その時は増美だけが残されていました。まゆみさんを引き取られた後だったんですねと話す。

そこに仲居がやって来たので、荒木プロの場所を聞くと、虎ノ門だと言う。

さらに、増美とまゆみが同じような行動を取り、嗜好も同じだと仲居が教えたので、なるほどな…、お互いに特別の愛情を感じるのかもしれませんねと庄吉は納得する。

翌日、荒木プロの録音スタジオにやって来た増美とまゆみを前にした衣笠は、取りあえず1人ずつの歌を聴いた後、今度は2人一緒に歌ってみないか?と誘い、僕の作ったこういう曲知ってる?とピアノで軽く弾いてみせると、2人とも知っていたので、その曲を歌い出す。

その見事なデュエットを聴いた衣笠や荒木社長は感心してしまう。

ブースから出て来た荒木社長は、うちのプロの来て本式に勉強してみる気はないかね?と2人に誘うが、2人は親の許可を取らないと…と戸惑う。

荒木社長は、何なら僕が親御さんを説得してあげようか?と提案するが、そこに、山田屋旅館から2人に手紙が届いたと女性社員が持って来る。

互いにその中味を読んでみた2人は、庄吉たちは都合で先に帰るので、日曜日までの3日間、お前たちは残ってなさいと書かれており、封筒の中には金まで入っていた。

それを知った衣笠は、日曜日は僕も暇だから付き合ってあげようか?と言ってくれる。

その日曜日、衣笠を伴って銀座にショッピングに出かけた2人は、ウィンドーに飾られていたお揃いの服とお揃いのペンダントを買い、その場で着てみると、2人はそっくりになる。

衣笠に連れて行ってもらったフジテレビのスタジオで、踊る若者たちの中、歌っていた伊東ゆかりと中尾ミエの2人の現場を見物。

続いてジャズ喫茶で歌っていた 井上ひろしのステージを観る。

井上に憧れる二人に衣笠は、君たちも勉強次第でこのステージに出られるよと励ます。

「山田屋」旅館に戻って来た2人は、庄吉とよし江が来ており、2人を歌手にさせようと説得しに来た荒木社長と上田も同席している所に出くわす。

上田は、衣装が同じになり、2人の見分けがつかなくなったことに驚く。

どうやら、庄吉の方は、娘を歌手にすることに反対ではないようだったが、よし江の方が反対しているようだった。

歌手のような浮ついた道に進むなんて反対です!とよし江は荒木社長の申し出を断る。

それを横で聞いていた庄吉は、頭から反対するのも無理矢理では?才能がないのならともかく、専門家が認めて下さっているものを…と言い聞かそうとするが、お宅とうちとでは育て方が違います!男親と女親とでは、気持ちの深さが違いますとまでよし江が言い出したので、庄吉はむっとしてしまう。

父親から気持ちを聞かれた増美は、まゆみちゃんと一緒でないなら嫌と言い出したので、庄吉は、当人がこう言ってますから、連れて帰りますと荒木社長に詫びる。

まゆみと増美はそっと立上がり、2人して縁側に立つと、庭の方を観ながら泣き出す。

伊豆に戻り、バス乗務を再開した増美だったが、松尾の停留所を出た所で、次ぎは松尾と言ってしまい、運転していた庄吉に違うよと注意されるし、会社に戻って来てからの運賃の精算も80円足りないと言い出す始末。

出前にやって来た三郎が歌の練習に誘っても、私、もう歌なんか止めたわと、東京で買ったペンダントを寂し気に見つめながら増美は言うのだった。

一方、ゴルフ場の売店勤務に戻ったまゆみの方も、客がチョコレートをくれと言って来たのに、ゴルフボールを出すような単純ミスが多くなっていた。

そこに、弘二がやって来て、明日東京の下宿に帰るので一緒に帰らないかと誘うが、私、今日、早退けするわとまゆみは言い出す。

帰宅したまゆみは、三面鏡を開き、自分の顔を見ながら、増美ちゃん…と呟く。

同じ頃、増美の方も鏡台の前で鏡を見ながら、まゆみちゃん…と遠く離れた姉妹の名を呼びかけるのだった。

2人は夢の中で再会していた。

1人ぼっちの2人~♪を2人は夢の中で歌って踊る。

まゆみちゃん!と思わず寝言を言った増美の声を聞いて部屋を覗いた庄吉は、どうしたんだ?そんなにうなされて…、お前、まゆみちゃんって言ってたぞ。そんなにあの子のことが忘れられないのか…と声をかけ、お父さんも気にかけてたんだが、世の中、ままにならないこともあるんだ…、今までのような保型かな子になっておくれ…と優しく言い聞かせる。

寝床の中で目覚めた増美は、これからまゆみちゃんの話はしないで、お父さんに心配かけて悪かったわ…。お父さんが私のことばかり考えて、事故でも起こされたら大変だから…と、そっぽを向いたまま答える。

一方、軽井沢のまゆみは原因不明の病気になってしまい、往診に来た医者(伊藤久哉)は、別段身体的には異常がない。一種のノイローゼですな。その原因を突き止めれば良いのですが…、まゆみちゃんにも悩みがあるんでしょうとよし江に伝え帰って行ったので、残されたよし江は考え込んでしまう。

その後、バス会社でバスの洗車をしていた庄吉に面会者が来たとの知らせが来る。

やって来たのはよし江だった。

会社内では同僚たちの目もあるので「ラーメン王」に連れて行き、「明治スカット」などコップに注いで、庄吉はよし江から話を聞くことにする。

あれからまゆみは、普段から無口になってしまって…、その姿を観ていると、いじらしくなってしまって…とよし江が打ち明けると、そうですか…まゆみちゃんもですか…、やはり2人は好きな道に進ませてあげるべきではありませんか?ただ困ったことがあるんです。うちの増美は強情な所がありまして、まゆみちゃんのことをきっぱり忘れると言ってたんですよ。そちらの方は、私が何とか言い用に話しておきますから…、こんな時、女房が生きていてくれたらと思いますよ。ちょっと愚痴っぽくなってしまいました…と詫びた庄吉は、バスの仕事があるので…と言い店を出て行く。

残っていたよし江に、出前から帰って来た三郎が、まゆみちゃんのお母さんですか?いつか東京に行った時会いましたと声をかける。

その日の夕食時、庄吉は増美に、荒木先生がお前が来るのを待っているよ。お前にはうちを出て行ってもらいたいんだ、前にお前が言っていたように、お父さんも最後の花を咲かせようと思って「のんき」のママと…、年頃のお前がいては、色々その~…、元々お前が進めてくれたんじゃないか。早く出て行ってもらいたいんだよなどと突然言い出す。

それを聞いた増美は覚悟を決め、分かったわよ、私、もうお父さんに迷惑はかけないわと答える。

一方、寝込んでいたまゆみの方も、母親のよし江から、増美と一緒に歌手になっても良いと言われ驚いていた。

でもお母さん、あの時、あんなに反対してたじゃない?ひょっとして、私が病気になったからじゃないの?私だって、お母さんの側を離れるのは嫌!と言うなり、布団を頭からかぶってしまう。

お互いのためよ、高崎のおばさんの口利きで、お母さん、再婚しようと思うの。あなたが他所に行ってくれた方が、あなたも幸せになれるし、母さんも幸せになるの。あんたも、増美さんとしっかり勉強し、立派な歌手になってね。あなたも、もっと大人にならなくちゃ…とよし江は言い聞かせる。

かくして共に上京した増美とまゆみは、荒木プロで歌と踊りの本格的なレッスンに明け暮れる毎日が始まる。

いつか、2人が夢見ていたジャズ喫茶のステージに登場した司会者(犬塚弘)は、皆さん!南京豆を二つに割っても、中味は区別がつきませんね。その南京豆のようにそっくりな「ザ・ピーナッツ」です!と紹介する。

憧れのステージでデビューした「ザ・ピーナッツ」は「ふりむかないで」を歌う。

さらに、スマイリー小原の軽快な指揮の元、フジテレビの音楽番組でも歌う2人の姿は、白黒テレビを通じ「からまつ荘」の客たちも観ていた。

客たちは、よし江に向かって祝福の拍手を送る。

一方、庄吉も、一人晩酌を傾けながら、テレビに写る2人の姿を嬉しそうに観ていた。

そんなある日、東京のとあるジャズ喫茶の裏口付近を歩いていた弘二は、バンドボーイとして楽器をトラックに運んでいた三郎と偶然再会する。

弘二は懐かしがり、彼女たちどうしているかな?久しぶりに4人で会いたいなと言うと、彼女らは売れっ子だから、こちらから強引に押し掛けるしかないだろう。今いる場所は調べれば分かるよと三郎が答える。

その頃、ザ・ピーナッツの2人は、フジテレビの喫茶室で、マネージャーの上田から、明日は2人の誕生日なので、荒木社長が自宅で君たちの誕生会を開いてくれる。会費はもちろんいらないし、夕方6時までお休みだと教えられて喜んでいた。

その時、カウンターに電話がかかり、上田が出ると、松井と吉田さんという人が面会に来ているよと2人に教える。

すぐに、弘二と三郎の事だと分かった2人が喜んだので、上田は喫茶室に通すように電話で受付に頼む。

やがて弘二と三郎がやって来たので、上田は気を利かせて席を離れる。

三郎から庄吉のことを聞かれた増美は、お父さんには手紙を出さないようにしていると答え、まゆみの方も事情は同じで、うちを出る時、お母さんがそう言ったのという。

逆に庄吉の近況を聞かれた三郎が、1人でやっていると答えたので、「のんき」のママと再婚したんじゃないの?と増美は驚く。

「のんき」のママなら宿屋の番頭ととっくに駆け落ちしてずっといないよと三郎は呆れたように教える。

弘二の方も、よし江は相変わらず1人で旅館をやっていると教えたので、増美とまゆみは、互いの両親が、自分たちのためにわざと噓をついたのだと気づく。

バカよあなたのお父さんとまゆみが庄吉をけなしたので、良いお父さんよ!と増美は反論し、同じく、よし江があなたのお母さんはバカねと言うと、良いお母さんよ!とまゆみも反論する。

2人の話を聞いていた三郎は、君たちのお父さんとお母さんは独身なんだから、こうなると言いだけどな…と右腕と左腕の親指と小指をくっつけるジェスチャーをし、この前観たけど、二人は仲良さそうだったよと教える。

4人はその場で、庄吉とよし江をくっつける作戦を考え始める。

その後「からまつ荘」に三郎と共にやって来た増美を、出迎えた女中やよし江はまゆみだと一瞬勘違いするが、まゆみちゃんが大変なんです!過労とノイローゼで声が出なくなっちゃったんですと聞くと驚く。

一方、バス会社にいた庄吉にもとにやって来たのは、弘二とまゆみで、庄吉も増美と一瞬見間違えるが、増美ちゃん、病気で声が出なくなったんです。ノイローゼを治すには、お父さんのあなたがいてくれることが必要なんだって医者が言ってましたと弘二に聞くとこちらも驚く。

三郎と増美と一緒に東京へ列車で向かう事にしたよし江だったが、三郎は、庄吉はとにかく女にモテる人なんですよと大げさに褒め始める。

一方、同じく上京することにした庄吉に、まゆみと弘二も、よし江が庄吉のことを好きだと言っていたと噓を吹き込む。

しかし、「からまつ荘」の送迎をやってもらえれば助かると言ってましたなどと言うので、それじゃあ、お抱え運転手じゃないか!そんな、自分の好きな男を利用しようなんて人は大嫌いだよ!と怒り出す。

よし江の方も、あんまり庄吉が色んな女と遊んでいると聞かれたので、増美さんのお父さんってもっと真面目な人だと思ってましたわ!あの方に言っておいて下さい、女の方にはモテるかもしれないけど、私は違うって!と三郎に抗議する。

増美とまゆみの住まいに、約束の5時半に両方の親を連れて来た三郎や弘二たちだったが、まゆみも増美も病気ではなく、声も出る事を知ったよし江と庄吉は、自分たちが騙されて連れて来られたことに気づく。

これは一体どう言う訳なの?とよし江が聞くと、増美はまゆみに、私がっかりよ!あなたのお母さんって物わかりが悪いんですもの!と文句を言い、まゆみの方も、あなたのお父さんこそ強情っぱりなんだから!と部屋の中で喧嘩を始め、あんたなんか大嫌い!覚えてらっしゃい!と互いにそっぽを向いてしまう。

その時、増美に荒木社長から電話がかかり、自宅で誕生パーティを始めようとしているが、肝心の君たちが来なくて困っているんだ。どうしたんだ?と言うので、私たち、口を聞かなくなったんです!さようなら!と一方的に返事をすると、増美は電話を切ってしまう。

すぐに電話が鳴り始めたので、今度はまゆみが出て、行きませんったら行きません!と言うと又切ってしまう。

荒木邸では、招かれていた衣笠も、2人に連絡付きましたか?と荒木社長に声をかけて来る。

無責任ですよね~と上田マネージャーは呆れ、仕方なく、2人を迎えに住まいに出向くことにする。

寝室で互いにそっぽを向いている増美とまゆみを観た衣笠は、こんな時喧嘩してもらったら困るよ。今日、君たちのために新曲を書き下ろしたんだから…、誕生日じゃないかと言い聞かせる。

それを聞いた2人はすみません…と謝り、誕生買いに行くことは承知するが、でも喧嘩は別よ!と頑固さはそのまま。

それを観た上田は、分かっちゃいるけど止められないってことですね…と呆れる。

これが最後です!とまで2人が言い張るので、2人はこの先どうなるんでしょう?2人の喧嘩の原因を発表願いましょう。もめ事の解決にはそれが一番ですと上田が珍しく良いことを言い出す。

仕方なく、おじさんとおばさんにこうなってもらいたかったんです…と三郎が、又、親指と小指をくっつけるジェスチャーをしてみせると、上田はなるほど…とすぐに納得する。

その場にいたみんなはすぐさま荒木邸に移動し、ザ・ピーナッツの二人は、用意されていたバースディケーキの蝋燭を吹き消す。

そして、来客たちを前に荒木社長が挨拶を始め、今度都内某所で行われるザ・ピーナッツの初ワンマンショーの主題歌となる新曲「幸せの尻尾」を初披露すると発表する。

衣笠が自らピアノで前奏を始めるが、仲が悪くなった増美とまゆみは歌い出しが巧く合わず、なかなか歌い出せない。

それを観ていた上田は、並んで様子を観ていたよし江と庄吉に何やら耳打ちする。

そして、ちょっと待って下さい!と曲を言ったん止めると、重大な発表をさせて頂きます。

これまでザ・ピーナッツのご両親は、どう言う訳か他人だった訳なんですが、今始めて婚約なさいました!と言い出すと、自ら、庄吉とよし江の手を組ませる。

それを観たザ・ピーナッツは、良かったわね~!と2人とも笑顔になり、互いに微笑み合う。

芝居のつもりで手を組まされたよし江は戸惑い、この手、どうしましょう?と囁きかけると、私の方はずっとこのままでも…と庄吉が言うので、そのまま組んだままにしておく。

その行動を観ていた荒木社長は、戻って来た上田に、今のマネージング振りは近年にない出来だったよと褒める。

すっかり和解したザ・ピーナッツは、先ほどとは見違えるように息がぴったり合い、大勢のダンサーたちが踊る中、新曲を見事に歌い上げるのだった。


 

 

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